説明

カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及び表示装置

【課題】生産性と画素部平坦性とが共に優れたカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを備えた表示装置の提供。
【解決手段】基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、インクジェット方式によりカラーフィルタ用インクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、前記カラーフィルタ用インクジェットインクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で前記加熱工程を終了させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用インクジェットインクを用いたカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ、及びこのカラーフィルタを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、カラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0004】
従来の製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0006】
さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
【0008】
これらの問題を解決したカラーフィルタの製造方法として、インクジェット方式で着色インクを吹き付けして着色層(画素部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
かかるインクジェット方式によるカラーフィルタの製造方法では、インク吐出時の画素面厚みムラが生じやすく、その帰結として完成したカラーフィルタのITO抵抗値が上がってしまい、高品位なカラーフィルタを得られないという問題があった。
【特許文献1】特開昭59−75205号公報
【特許文献2】特開平2004−339332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、生産性と画素部平坦性とが共に優れたカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
鋭意検討の結果、インクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で前記加熱工程を終了させることによって、上記の問題を改善できることを見出した。
即ち、上記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
【0012】
<1> 基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、インクジェット方式によりカラーフィルタ用インクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、前記カラーフィルタ用インクジェットインクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で前記加熱工程を終了させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0013】
<2> <1>に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたことを特徴とするカラーフィルタである。
【0014】
<3> <2>に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生産性と画素部平坦性とが共に優れたカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを備えた表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ、及び表示装置について詳細に説明する。
<カラーフィルタ用インクジェットインク>
本発明に用いられるカラーフィルタ用インクジェットインク(以下、単に「インクジェットインク」や「インク」と称することがある。)は、着色剤、有機溶剤及びモノマーを少なくとも含有したものである。前記カラーフィルタ用インクジェットインクは、平均厚みを1mmとした状態で5mmHg(0.67kPa)、45℃の条件で8時間乾燥して得られたインク残部の粘度が25℃で40mPa・s以上4000mPa・s以下であることが、カラーフィルタの平坦性の観点から好ましい。ここで、平均厚みとは、容器底面積とインク容積から計算で求めた厚みである。また、インクの物性値としては、25℃の粘度は20〜100mPa.sが好ましく、25℃の表面張力としては10〜50mN/mが好ましい。本発明に用いられるインクジェットインクは、本発明の効果を損なわない範囲内で、分散剤、バインダー、光重合開始剤、熱重合開始剤、界面活性剤、或いは、その他の添加剤を含有しても良い。
【0017】
(インク残部の流動性)
前記インク残部の25℃における粘度は、50mPa・s以上3000mPa・s以下であることがより好ましく、50mPa・s以上2000mPa・s以下であることがさらに好ましく、50mPa・s以上1000mPa・s以下であることが特に好ましい。インク残部の粘度が上記範囲内であると有機溶剤の乾燥後においても、平坦な画素部(着色層)を得ることができる。
【0018】
本発明における「インク残部」とは、カラーフィルタ用インクジェットインクを、平均厚みを1mmとした状態で5mmHg(0.67kPa)、45℃の条件で8時間乾燥して得られた残渣をいう。粘弾性測定装置を用いてインク残部の粘度を測定する場合、例えば、カラーフィルタ用インクジェットインクを平均厚みが1mmとなるようにアルミ製の受け皿に入れ、45℃で8時間真空乾燥(0.67kPa)を行い、得られた残渣(インク残部)を薬サジを用いてアルミ皿から集めて試料に供することができる。粘弾性測定装置を用いた粘度の測定は、例えば、Jasco International Co.Ltd製の粘弾性測定装置DynAlyser DAS−100を用いて温度25℃、周波数 1Hzの条件で測定できる。
【0019】
次に、本発明に用いられるインクジェットインクに含まれる各成分について詳しく述べる。
(着色剤)
本発明に用いられるインクジェットインクに使用される着色剤は、有機顔料、無機顔料、染料など、公知のものを使用できるが、十分な透過濃度や耐光性、基板への密着性、その他の諸耐性が要求されるため、種々の有機顔料が好適である。また、画素の保存安定性の点から、顔料が特に好ましい。該着色剤の具体例としては、特開2005−17716号公報[0038]〜[0054]に記載の顔料及び染料や、特開2004−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
本発明における着色剤の含有量は特に限定されるものではないが、所望の色相、濃度を得るという観点から、インク残部に占める着色剤の割合は20質量%以上が好ましく、20〜70質量%がさらに好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
【0020】
本発明において、併用するのが好ましい上記記載の顔料の組み合わせは、C.I.ピグメント・レッド254では、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド224、C.I.ピグメント・イエロー139、又は、C.I.ピグメント・バイオレット23との組み合わせが挙げられ、C.I.ピグメント・グリーン36では、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー139、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・イエロー138、又は、C.I.ピグメント・イエロー180との組み合わせが挙げられ、C.I.ピグメント・ブルー15:6では、C.I.ピグメント・バイオレット23、又は、C.I.ピグメント・ブルー60との組み合わせが挙げられる。
このように併用する場合の顔料中のC.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン36、C.I.ピグメント・ブルー15:6の含有量は、C.I.ピグメント・レッド254は、60質量%以上が好ましく、特に70質量%以上が好ましい。C.I.ピグメント・グリーン36は50質量%以上が好ましく、特に60質量%以上が好ましい。C.I.ピグメント・ブルー15:6は、80質量%以上が好ましく、特に90質量%以上が好ましい。
【0021】
本発明で用いる顔料は、数平均粒径0.001〜0.1μmのものが、分散安定性とコントラスの両立の観点で好ましく、更に0.01〜0.08μmのものが好ましい。尚、ここで言う「粒径」とは粒子の電子顕微鏡写真画像を同面積の円とした時の直径を言い、また「数平均粒径」とは多数の粒子について上記の粒径を求め、この100個平均値を言う。
【0022】
上記顔料は分散液として使用することが望ましい。この分散液は、前記顔料と後述する顔料分散剤及び有機溶剤とを予め混合して得られる組成物を、公知の分散機を用いて分散させることによって調製することができる。この際に、顔料の分散安定性を付与するために、少量の樹脂を添加してもよい。また、前記顔料と顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、後述するモノマーに添加して分散させることによって調製することも可能である。前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、朝倉邦造著、「顔料の事典」、第一版、朝倉書店、2000年、438頁に記載されているニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に該文献310頁記載の機械的摩砕により、摩擦力を利用し微粉砕してもよい。
【0023】
(顔料分散剤)
本発明に用いられるインクジェットインクには、顔料の分散安定性を得るために、顔料分散剤を添加することが好ましい。
その使用量はインクジェットインク全質量に対して0.1〜10質量%の範囲で分散剤を含有させるのが好ましく、0.1〜9質量%がより好ましく、0.1〜8質量%での範囲が特に好ましい。
該顔料分散剤として、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルとの塩、高分子量不飽和エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルりん酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体などを用いることができる。
【0024】
顔料分散剤の具体例としては、特開2005−15672号公報の段落番号[0021]〜[0023]に記載の例が、本発明も好適なものとして使用できる。
【0025】
(モノマー)
本発明に用いられるインクジェットインクは、モノマーの少なくとも1種を含有する。
本発明に用いられるインクジェットインクに含まれるモノマーは熱により重合反応可能であれば特に限定されるものではないが、膜減りや、膜の強度や耐溶剤性等の点から多官能であるモノマーがより好ましい。また、活性エネルギー線での重合能をもつことも生産性の観点で好ましい。
重合性基の種類としては特に制限はないが、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基等が挙げられる。このなかでも、インクの経時安定性、インクジェット方式での吐出安定性、膜減りの小ささという観点からアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
インクの粘度が大きくなりすぎないという観点から、モノマーの分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が特に好ましい。
【0026】
モノマーの使用量は、インク固形分中の20質量%以上が膜強度、透明導電膜を付与する際のレチキュレーション防止、耐溶剤性などの観点で好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
また、該モノマー全量のうちの50質量%以上が4官能以上のモノマーであることが好ましい。インク中のモノマー含有量、官能基数の割合が前記好ましい範囲内であると、インク打滴後のベーク工程での膜減り率が小さくなる。
モノマー全量のうちの、50質量%以上が4官能以上6官能以下であると、粘度が大きくなりすぎず、インクジェット方式により安定的に吐出でき、且つ膜減り率が小さくなるという観点で好ましい。
さらに、モノマー全量のうちの90質量%以上が3官能以上であることが、インク打滴後のベーク工程での膜減り率をより小さくする観点から好ましい。
【0027】
3官能以上の重合性モノマーの具体例としては特開2001−350012号公報の段落番号0061〜0063に記載の3官能のエポキシ基含有モノマーや、特開2002−371216号公報の段落番号0016に記載の3官能以上のアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー及びシーエムシー出版による「反応性モノマーの市場展望」に記載の3官能以上のモノマー等が挙げられる。これらの中で、特に好ましいものとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記3官能以上のモノマーを2種以上併用することも可能である。
【0028】
4官能以上のモノマーの具体例としては特開2002−371216号公報の段落番号0016に記載の4官能以上のアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー及びシーエムシー出版による「反応性モノマーの市場展望」に記載の4官能以上のモノマー等が挙げられる。
これら4官能以上のモノマーの中で、特に好ましいものとしては、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この他、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートやペンタエリスリトールテトラメタクリレートも特に好ましいモノマーである。
これら特に好ましい4官能以上のモノマーとして、例えば、UA−32P(新中村化学(株)製)、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)、V#400(大阪有機(株)製)等が挙げられる。
【0029】
インクおよびインク残部の粘度を低下させる目的で、単官能モノマーや2官能モノマーを適宜併用してもよい。この場合、膜減りが小さいという観点から、2官能モノマーである方がより好ましい。これらの単官能モノマーや2官能モノマーとしては、例えば特開2001−350012号公報の段落番号[0065]に記載の単官能のエポキシ基含有モノマーや、特開2002−371216号公報の段落番号0015〜0016に記載の単官能又は2官能のアクリレートモノマーやメタクリレートモノマー及びシーエムシー出版による「反応性モノマーの市場展望」に記載の1〜2官能のモノマー等が挙げられる。
【0030】
また、膜の強度を補ったり、基板との密着を付与するために、25℃での粘度が700mPa・s以上の高粘度の多官能モノマーやウレタンアクリレート等の高極性モノマー、オリゴマー等を少量併用しても構わない。併用する上で好ましい多官能モノマーや高極性モノマー、及びオリゴマーとしては特に制限はなく、汎用のものを使用可能であるが、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート(例えば東亜合成(株)製アロニクスM−1000、M−1200、M−1210、M−1600)、ポリエステルアクリレート(例えば東亜合成(株)製アロニクスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−7300K、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050)、等が挙げられる。これらの併用モノマーの添加量は、インク残部の粘度が25℃で4000mPa・s以下になる範囲内で適宜調節することができる。
【0031】
インク残部の粘度を25℃で40mPa・s以上4000mPa・s以下とするには、下記方法が挙げられる。
例えば、使用するモノマーとして、より低粘度のモノマーを使用することが挙げられる。また、バインダー成分として、高分子量や高極性の樹脂の使用量を減らし、インク中の高粘度成分を少なくすることが挙げられる。また、顔料に最適な分散剤を選択し、顔料分散液の粘度を低下させる方法が挙げられる。これらの中で、特に低粘度のモノマーを使用するのが有効である。画素の膜強度を付与する上では、重合性基を3つ以上有するモノマーを使用するのが好ましい。
【0032】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、アルコール等の水溶性有機溶剤及びエステルやエーテル等の非水溶性有機溶剤が挙げられるが、いずれも使用可能である。
これらの溶剤が本発明のインクジェットインク中に占める割合は、10質量%以上が画素内でのインク濡れ広がりの点で好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0033】
非水溶性有機溶剤を用いた場合、用いるモノマー、バインダー、分散剤などに高極性基がなくても溶解させることができるので、インクとしての粘度が高くなりすぎる可能性が小さい点で好ましい。非水溶性有機溶剤としては特に制限はないが、沸点が低くインクジェットインク中からの除去が容易な有機溶剤は、通常インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。インクジェットヘッドでのインクの乾燥を防止するため、常圧での沸点が160℃以上の有機溶剤を少なくとも含んでいることが好ましい。
溶剤として水を用いることは、VOC削減の観点で好ましい。
【0034】
また、本発明に用いられるインクジェットインクは、含有する溶剤の50質量%以上が、常圧下で(760mmHg)160℃以上の沸点を有する化合物で構成されることが好ましい。該常圧下で160℃以上の沸点を有する溶剤としては、特開2000−310706[0031]〜[0037]に記載の高沸点溶媒やアルキレングリコールアセテート、アルキレングリコールジアセテート等が挙げられ、中でもジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3−ブタンジオールジアセテート、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート等が特に好ましい。
【0035】
また、溶剤の沸点の上限は、上述のインクジェットインクを用いてインクジェット方式によりカラーフィルタを製造することができる限り、特に制約されるものではないが、インクの調製工程およびカラーフィルタの製造工程における操作性の観点からみると、沸点が290℃以下、好ましくは280℃以下の、常温(20℃)で比較的低粘度の液体である有機溶剤が望ましい。
【0036】
(重合開始剤)
本発明に用いられるインクジェットインクにおいて、モノマーの重合反応を促進する目的で、重合開始剤を併用しても良い。重合開始剤としては、画素部の重合を活性エネルギー線により行う場合には、光重合開始剤が用いられ、画素部の重合を熱により行う場合には、熱重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、例えば特開2006−28455号公報の段落番号[0079]〜[0088]に記載のものが挙げられ、好ましい具体例としては、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾールや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジンが挙げられる。
【0037】
また、熱重合開始剤としては、一般に知られている有機過酸化物系化合物やアゾ系の化合物を用いることができる。これにより、画素部の強度を向上させることが可能となる。また、熱重合開始剤の他にイミダゾールなどの硬化触媒を用いることもできる。有機過酸化物系化合物及びアゾ系の化合物は、一種単独で用いる以外に二種以上を併用することができる。ここで有機過酸化物は、過酸化水素(H−O−O−H)の誘導体であり、分子内に−O−O−結合を持つ有機化合物を言う。
【0038】
化学構造で分類すると、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。具体的には3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンゾイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、
【0039】
t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、メチルヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が好ましく、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール系化合物、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系化合物が好ましい。
【0040】
また、前記アゾ系化合物としては、例えば特開平5−5014号公報の段落番号[0021]〜[0023]に記載の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、好ましくは分解温度がある程度高く常温では安定なもので、熱をかけると分解してラジカルを発生し、重合開始剤となる化合物である。有機過酸化物系化合物又はアゾ系化合物(熱重合開始剤)の中でも、半減期温度の比較的高いもの(好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上)のものを使用すると、組成物の粘度が経時変化することなく好適に構成でき、例えば、アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等が挙げられる。
【0041】
光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤の含有量としては、モノマーの量に対して、0.5〜20質量%が反応促進性や粘度安定性、着色の観点で好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
【0042】
また、膜減り率が小さくなるとう観点からは、該開始剤の含有量がインクの全固形分に対して5.0質量%以下であることが好ましい。開始剤の含有量は少ないほど好ましく、下限は0質量%である。
【0043】
また、驚くべきことに、開始剤量が少ない程、電圧保持率をより高く保てることが判明した。具体的には開始剤量がインクの全固形分中の5.0質量%以下であると電圧保持率が良好であり、好ましい。
さらに驚くべきことに、開始剤量が少ない程、カラーフィルタを作成した際の膜の平坦性(画素の平坦性)が良いことが判明した。具体的には開始剤量がインクの全固形分中の5.0質量%以下であると、画素が平坦となり好ましい。
これらの開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0044】
また、前記成分以外に、本発明の効果を失わない範囲内で、バインダーや界面活性剤やその他の添加剤などを併用してもよい。
併用するバインダーの例として、特開2000−310706号公報の段落番号[0015]〜[0030]に記載のバインダー樹脂や、特開2001−350012号公報の段落番号[0041]〜[0050]に記載のバインダーなどが挙げられる。
【0045】
界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号[0021]や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、インクジェットインク全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0046】
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0047】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、インクジェット方式により本発明のインクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するものであって、カラーフィルタ用インクジェットインクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で該加熱工程を終了させることを特徴とする。
【0048】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、隔壁により囲まれた凹部に、既述の本発明のインクジェットインクをインクジェット法により付与して着色層を形成する工程(以下、「着色層形成工程」ということがある。)を有し、好ましくは更に、形成された少なくとも1色の着色層を活性エネルギー線の照射により硬化する硬化工程や、所望の色相の着色層の全てを形成した後に熱により硬化する硬化工程を有する。なお、隔壁は、着色層形成工程前に予め基板上に形成されたものであり、隔壁の形成方法の詳細については以下に述べる。
【0049】
(隔壁)
本発明では、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、インクジェット方式によりインクジェットインクの液滴を付与して着色層が形成される。この隔壁はどの様なものでもよいが、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。該隔壁は公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。例えば、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクスや、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020] や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。
前記公知の作製方法の中でも、コスト削減の観点から感光性樹脂転写材料を用いることが好ましい。感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも遮光性を有する樹脂層を設けたものであり、基板に圧着して、該遮光性を有する樹脂層を該基板に転写することができる。
【0050】
感光性樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている感光性樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層(本発明において「感光性樹脂層」とは光照射により硬化しうる樹脂をいい、それが遮光性を有するときには「遮光性を有する樹脂層」ともいい、目的の色に着色されているときには「着色樹脂層」ともいう。)/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。
感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、保護フィルムや、転写材料の作製方法については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066]に記載のものが好適なものとして挙げられる。
【0051】
また、前記隔壁は、インクジェットインクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。該撥インク処理については、例えば、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
【0052】
−着色層形成工程−
着色層形成工程は、隔壁(濃色離画壁)間の凹部に、インクジェットインクの液滴をインクジェット法で付与して着色層を形成する。この着色層は、カラーフィルタを構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の色画素となるものである。
着色層の形成は、既述のようにして基板上に形成された隔壁で取り囲まれた凹部に、着色画素(例えばRGB3色の画素パターン)を形成するためのインクジェットインクを侵入させて、2色以上の複数の画素で構成されるように形成することができる。
カラーフィルタパターンの形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0053】
インクジェット法としては、帯電したインクジェットインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。下記にインクジェット法の詳細を述べる。
【0054】
(インクの物性値)
インクの物性値としては、25℃の粘度は20〜100mPa.sが好ましく、装置で吐出する際にはインク温度を20〜90℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましく、そのときの粘度が2〜20mPa.sとすることが好ましい。また25℃の表面張力としては10〜50mN/mが好ましく、装置で吐出する際にはインク温度を20〜90℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力が20〜30mN/mとすることが好ましい。インク温度を所定精度で一定に保持するためにはインク温度検出手段と、インク加熱もしくは冷却手段、および検出されたインク温度に応じて加熱もしくは冷却を制御する制御手段を有することが好ましい。さらにあるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
【0055】
またインクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインク物性を所定に保持することが好ましく、このためには基板もしくは、およびこの近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは基板を支持する台の熱容量を大きくする等により、温度変化の影響を低減することも有効である。
【0056】
(システム構成)
上記インクを用いてカラーフィルタを作成するシステム構成の一例を図1に示す。
100はヘッド部であって、詳細を図2に示す。ヘッド部100は3個のインクジェットヘッド101,102,103を有しており、各々3色のインクを基板上に吐出させる。ヘッド部100の吐出は制御部200により制御され、吐出したインクは基板300上に着弾し、RGB各々の画素を形成する。ここで基板300は基板台400に載置されており、基板台400にはヘッドに対して基板300および基板台400を互いに直交するXY2方向に移動させるための図示しないモータが具備されている。モータの動作は制御部200により制御され、インク吐出と同期して画素を形成する。ヘッドメンテナンスステーション500は、ヘッド部100の吐出性能を良好に保持するための機構を有する。
【0057】
(ヘッド)
図2に示す3つのヘッド各々は図示しないインク供給部からR,G,B3色のインクをそれぞれ供給される。また110は顕微鏡カメラであって、基板上の隔壁(ブラックマトリクス、BM)パターンもしくは位置決め専用パターンもしくはインクが着弾した状態を撮像し、撮像された画像を処理することにより、インクが所望の位置に着弾するように基板台400の動作が制御される。
3つのインクヘッド101,102,103は同様の構成のヘッドであっても良いし、異なる構成のヘッドであっても良い。ヘッドの構成としては、たとえば特開平5−193140に開示されるように、インクに吐出エネルギーを付与する部分とインクを吐出するノズル部分を有する。
【0058】
(ヘッド駆動方式)
インクに吐出エネルギーを付与する方式としては、特開平7−81090号公報に開示されるように所謂コンティニュアス方式と呼ばれる、連続的にインク滴を吐出させ、着弾させるか否かに応じて滴を偏向して選択制御する方法であってもよいし、所謂オンデマンド方式を呼ばれる、必要な部分でのみインク滴を吐出させる方式であってもよい。オンデマンド方式は、特開平5−16349号公報に開示されるように、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させ、吐出させる方式であってもよいし、特開平1−234255号公報に開示されるように、熱エネルギーによる気化にともなう膨張により発生する圧力で吐出させる方式であってもよい。また特開2001−277466号公報に開示されるように、電界によりメディアへの吐出を制御する方式であってもよい。
【0059】
(高速化)
なお、このとき複数色のインクを吐出させるため、複数のインクジェットヘッド101,102,103は特開平6−71904号公報に記載されるように、一体に構成されることにより、小型で高速にカラー画像を形成することが可能となり、さらに複数のノズル列を有するヘッドユニットを複数配置することにより更に高速化が可能である。
さらに各色のノズルを、特開昭63−160849号公報に記載されるように画像の幅と同等以上の幅分配置し所謂ラインヘッドとなすことにより、さらに小型で高速に画像を形成することが可能となる。
【0060】
(ノズル)
ノズルの材質としてはニッケル、ステンレス等の金属であってもよいし、たとえばシリコンや樹脂であってもよい。ノズルの表面は、たとえば特開平5−116327号公報に開示されるような表面処理を施すことにより、吐出するインク滴の形成を安定に保ち、さらにノズル表面へのインク滴の飛沫の付着を防ぐことが可能となる。処理としてはインクが濡れやすくなる処理であってもよいし、インクが濡れにくくなる処理であってもよい。インクが濡れ易い処理を施した場合、ノズル表面はインクで被覆されるため、ノズル部分周辺でのインク物性が均一化され、高速吐出時にインクが円滑に供給される等の利点がある。一方、インクが濡れにくくなる処理を施した場合、ノズルプレートへのインクの付着が低減されるため、ノズルプレート上の付着インクが吐出の障害となる等の問題を軽減することができる。
【0061】
(移動制御)
ヘッドと基板の相対移動に関しては、上記のようにヘッド部が静止し、基板台が移動しても良いし、基板台が静止し、ヘッドが移動しても良い。ヘッドと基板の相対移動は、図1に図示されるノズル列と直行するX方向に基板を移動させ、始端から終端へ吐出された後、基板をY方向に所定量移動させ、さらにX方向に前記終端から始端側へ逆方向に吐出させても良いし、始端から終端へ吐出された後、ヘッドからインクを吐出することなく基板をX方向に終端から始端へ移動した後、前記と同様に始端から終端へ向かって吐出させながら移動させても良い。ここで始端から終端へ吐出させるときの吐出条件、たとえばヘッドと基板との相対的位置関係と吐出のタイミングや画素内の吐出インク量の分布など、を終端から始端へ逆方向に吐出させる場合の吐出条件と同一としても良いし、逆方向で着弾状態が異なる場合には、これを低減するべく吐出条件を異なるように設定してもよい。
また一枚の基板300を複数の領域に分割し、各々の領域で前記移動制御をしながら吐出させても良いし、一枚の基板をひとつの領域として吐出させてもよい。
【0062】
(基板交換)
一枚の基板300への吐出が終了した後、図示しない機構によりインクが着弾した基板を基板台400から排出し、あらたにインクが着弾していない基板を基板台400上に載置し、前記と同様の制御を繰り返す。
ここで、基板の排出、載置をする間、ヘッドからインクを吐出させなくてもよいが、吐出を休止させないようにすると、この間にヘッドのノズル表面のインクの乾燥が進行してノズル部分のインクの粘度が上昇することを防ぐことができる。これにより新たな基板への吐出を開始する際に、吐出初期のインク量が低減したり、吐出速度が低下することにより、ヘッドを駆動した後インクが吐出するまでの遅れ時間が長大化し、その間のヘッドと基板の移動距離分、インク滴の着弾位置がずれることを防ぐことができる。また休止後に吐出するときのメニスカスの挙動が物性変化に伴い変化し、過剰にノズル内部に後退することによりノズル外部から空気をヘッド内部に吸引し、これが以降の吐出の障害となることを防ぐことができる。
【0063】
(フラッシング)
フラッシングは、具体的には、休止中、特開平11−157102号公報に開示されるように、ヘッドが基板上の画素部分以外にあるときに画素形成に寄与することのないインク吐出を行い、新鮮なインクをノズル表面に供給し粘度変化等による弊害を防止し、メニスカスを安定に維持するものである。この吐出は基板上で行ってもよいし、図1に示すヘッドメンテナンスステーション500上までヘッド部100を図示しない機構により移動させ、ヘッドメンテナンスステーション500内で吐出させてもよい。ここで、吐出させるインク量は、インク物性を初期状態と同等に回復させる範囲内で少量であることがインクの無駄を低減させる上で好ましい。
インクを吐出させる手段としては、画素を形成させるための吐出エネルギー付与手段を駆動して吐出させることも可能であるし、ヘッド内のインクにインク供給側から圧力を付与することにより吐出させることも可能である。
【0064】
(キャッピング)
休止中には、さらに特開平11−138830号公報に開示されるように、キャップでノズル表面を略封止状態とし、インクの低沸点成分の蒸気圧が低下することを軽減し乾燥を遅らせることにより上記弊害を軽減することが可能である。あるいはヘッドメンテナンスステーション500内において、ノズル表面を図示しないインク溜りに浸すことにより、乾燥による物性変化を軽減することができる。
これらインクの吐出と略封止あるいはインクに浸す等の手段を併用することがさらに有効である。
【0065】
(ワイピング)
前記、ノズル表面に処理を施すことによりインクのノズル表面への付着を軽減できるが、長時間の連続吐出あるいは短時間内での大量吐出を行うとインクが付着する場合があり、このためヘッドメンテナンスステーション500内において特開平6−71904号公報に開示されるように、ブレードにより適宜払拭を行うことが好ましい。
【0066】
(不吐出検出)
また、ヘッドメンテナンスステーション500内において、各ノズルから適正に吐出が行われているか否かを、たとえば特開平2000−343686号公報に開示されるような手段により検査し、吐出しないノズルがある場合に処置をとることが有効である。
吐出しないノズルに対する処置としては、上記ブレードによる清掃に加えて、特開平6−71904号公報に開示されるように、ノズルプレート外側よりインクを吸引し、インク物性が変化したメニスカス近辺のインク、およびヘッド内の気泡を排出することが有効である。
ヘッド内に気泡が発生する原因としては、上記のようにメニスカスの形成不全により外気を吸引する場合に加えて、インク中に含有される気体、特に空気が、ヘッド内でのインクの圧力変動により、気泡に成長することがある。これを防止する手段として、例えば特開平8−34943号公報に開示されるような脱泡剤をインクに含有することが有効である。
また、特開2000−251689号公報および特開2002−45608号公報に開示されるようにインクを脱泡処理した後に供給することも有効である。脱泡手段としては特開平9−286943号公報に開示されるように、超音波を付与する手段や真空脱泡する手段、またこれらを併用する手段が好ましい。また特表平8−506540号公報に開示されるように、ヘッド近傍のインク流路中にインクに溶解した気体を吸引脱泡する手段を設けることがさらに有効である。
【0067】
(インク保持手段)
インクを保持する手段としては、大気に連通した状態でインク表面をノズル表面に対して所定の高さに維持する方法や、公知のインクカートリッジに充填する方法が好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382号公報に開示されるようなサブタンクを具備することにより、インクのヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。
【0068】
(インク供給路)
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。濡れ性が良好でない場合には、チューブ内でインクに濡れない部分が発生し、ヘッドへのインク供給が遅くなったり、気泡がチューブ内壁に付着し易くなる。
【0069】
(フィルタ)
インク保管中に、インク中に分散された色材が凝集し大きく成長する、あるいは塵が混入する、等の原因により、インク中に大きな固形物が存在すると、ヘッド内部特にノズル付近で吐出を阻害する。これを防止するため、インク保持部分からヘッドへの流路中に、固形物をトラップするフィルタを設置することが好適であり、フィルタのポア径としては、0.1〜20μmがあることが望ましい。
【0070】
(負圧)
ここで、ノズルでのインクの表面張力によるメニスカス形状を適正に維持するためには、インクの圧力を−1〜−3000Paの範囲で負に維持することが必要である。
これらのインク保持手段でインクに負圧を付与する方法としては、インク保持手段の高さを管理する方法、すなわち水頭圧差による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適用できる。
【0071】
(吐出条件)
ヘッド部100からのインク吐出が高周波であるほど単位時間あたり多量のインクを吐出でき、カラーフィルタの生産性を高めることが可能となる。ここで、インクを高周波で安定に吐出させるためには、インクの供給が安定であること、メニスカスの形状が安定していること、ノズルからのインク滴の吐出形状、吐出量が安定であることが必要である。
インクの供給を安定化させるためには、上記のように供給路のインクへの濡れ性を良好とすると共に、供給路の流路抵抗を低減することが有効である。またメニスカスの形状、インク滴の吐出形状、吐出量が安定であるためには、ヘッドの駆動条件が駆動周波数において最適化されている必要がある。
【0072】
最適な駆動条件を決定するには、以下の手順に従う。
以下、ピエゾによるオンデマンド方式での例で説明するが、熱駆動方式であっても、静電方式であっても同様の方法が適用可能である。
メニスカスの形状および吐出形状の安定性は、飛翔している滴の形状を観察し、安定な形状が得られる駆動条件を決定する。図3は、ピエゾ素子を駆動する最も単純な電圧波形を示している。Vはピエゾ電圧、tは駆動時間幅、t、tはそれぞれ駆動波形の立ち上がり、立下り時間であって、これら4つ各々を制御してもよいし、簡易的にVと、tもしくはt+tの2つを制御してもよい。これらのパラメータを変えながら飛翔している滴の形状を観察し、安定性を評価する。ここでは単純な台形駆動波形を示したが、たとえば特開平10−235859および特開2003−341048に開示されるように、さらに波形形状を変化させることにより、吐出量等をより良好に制御することも可能である。
飛翔している滴の形状は図4に示す構成で観察ができる。タイミング制御部600は、入力される吐出周波数f604とピエゾ電圧Vp602ピエゾ駆動時間幅tp603にしたがったピエゾ駆動波形を発生させ、ピエゾ波形発生回路610によりヘッド640が駆動される。
【0073】
ヘッドからはインク滴が吐出されるが、インクが飛翔する部分はLED650により照明される。ここでLEDが点灯するタイミングは、ピエゾ波形が発生した後、可変遅延回路620へ入力される遅延量621により決定される。ピエゾ駆動波形から遅延量にしたがって所定時間遅延した後にLED点灯回路630によりLED650が点灯されるため、ノズルから吐出し、飛翔中のインク滴形状を顕微鏡レンズ660を装着されたCCDカメラ661により撮影し、モニター670により観察することができる。このように観察された滴形状が、高周波でも安定となるようにVp,tpをモニターを見ながら決定することができる。ここで滴形状として安定とは、モニター上で複数滴を順次撮像したときの画像が揺らぐことなく安定であって、サテライトと称されるインクの微小飛沫が発生していない状態をいう。さらに吐出後、基板に到達する時間経過した後の形状は球形に近いほど、基板上での着弾形状は円に近く、画素内でのインク量の分布を良好に制御することができる。
次に吐出量が安定であることを確認するため、以下の方法で吐出量を計測する。図4の構成でヘッド640の所定ノズルから所定時間インクを吐出させ、吐出したインクを補足し重量を測定する。これを吐出時間×周波数×ノズル数で除することにより、ひとつのノズルから一回に吐出されるインク量を求めることができる。このようにして求めた吐出インク量が規定範囲内であるか否かを判断する。
ここで、複数のノズルを有するヘッドの場合であってノズル毎の吐出量が均一でない場合には、上記吐出エネルギー駆動手段のエネルギーをノズル毎に吐出量を均一とするべく個別に制御することが好ましい。
【0074】
(ヘッド基板ギャップ)
ヘッド部100から吐出するインクの形状が安定であり、吐出量が安定であっても、基板上の着弾位置の精度が高くないと良好な画素が形成されない。着弾位置精度を良好に維持するためには、上記微小飛散滴が発生しないこと、さらにノズルからの吐出方向が安定していることが重要である。ノズルからの吐出方向精度はノズル形状の工作精度とメニスカス部分のインク物性安定性、ノズル面が汚れなどが支配的である。メニスカスのインク物性を安定に維持するためには上記のように吐出休止時に高粘度化したインクをパージして新鮮なインクに置き換えること、またノズル面をきれいにするためにはブレード等によるクリーニングが有効である。
またインク吐出方向の誤差が所定量である場合、ヘッド部100と基板300の間隔を小さくすることにより、基板上での着弾位置精度を高めることができる。
【0075】
ヘッドと基板の間隔は、ヘッドのノズル面の平坦性及び基板300とこれを載置する基板台400の平坦性および図示しない基板台移動機構の直線性が良好であるほど小さくすることができる。一般的にこれらの機械的精度から、ノズル面と基板表面の間隔は200〜2000μmであることが望ましい。
ここで基板の凹凸がなだらかである場合には、ヘッド部100に図示しないレーザ測長器等の、基板との間隔を検出する手段を具備し、図示しないヘッド部高さ制御手段を駆動することにより、基板の移動中の凹凸に応じて基板とヘッドの間隔を所定量に保持するべく、高さを制御することによりさらに小さくすることが可能であって、間隔の検出手段と高さ制御手段の追従速度が十分速い場合には100μm以下にすることも可能である。
【0076】
(ノズル径・間隔、画素形状)
基板300上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、着弾径はインク滴の大きさと、インクの基板への濡れ性により決定される。インク滴の基板への接触角は0〜80度、飛翔インク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。ここでインク滴の基板への接触角は、協和界面科学製DropMaster700を用いて、BMが形成されていないプラズマ処理を施されたガラス表面上にインク約2μlを滴下し、500msec後の滴形状画像をθ/2法により処理して計測できる。
ノズル列方向の画素の周期とノズルの間隔とが整数倍の関係にある場合には上記ヘッドのノズル列方向と基板移動方向を直交させることで画素を形成することが可能であるが、互いに間隔が整数倍の関係でない場合には、特開平9−300664号公報に開示されるように基板移動方向に対してノズル列の方向を90度以外の角度に設定し、基板移動方向での見かけ上のノズル列間隔を変えることにより画素に着弾させることが可能である。このとき、各ノズルからの吐出制御は角度分の吐出タイミング補正を行うことが必要である。また、特開2000−89020号公報に開示されるようにノズル間の吐出量のばらつきを、異なるノズルを用いて打滴することにより軽減させることも可能である。
【0077】
(インク量)
基板上に隔壁で形成される画素の形状は限定されるものではないが、画素の長手方向が基板が高速に走査されるX方向であると、インクの吐出を長手方向に連続させることができるので、好適である。
基板上に着弾させるべきインクの量は、インク中に含まれる着色剤濃度と、カラーフィルタの性能を確保する上での必要着色剤量から決定される。通常、インク固形分(前記インク残部)中の着色剤濃度は20〜70質量%程度であって、フィルタ上に必要な色材量は0.5〜5.0 g/m程度であって、画素内でのインク着弾量は、1〜30 g/mであることが好ましい。
【0078】
画素ごとの着弾量変動が小さいと濃度むらが発生しにくく、画素内での着弾量の変動による着弾量が少ない部分での透過濃度の低下を防ぐことができ、フィルタ性能が低下することを防げる。また画素内でインク量が均一であると後工程での障害を引き起こしにくいため、インクを着弾させ、これを加熱処理したあとの画素内の高さの均一性は50%以下であることが好ましい。
【0079】
(着弾位置)
画素内での着弾量を均一化するためには、画素の端部まで均一に濡れ拡がること、さらに濡れ拡がったあとのインク量の分布が均一であることが好ましい。このためには、画素内で多数の小さな滴を均一に着弾させることが好適であるが、実現可能な小滴の大きさは1.5ng/滴程度で、多数を高速で着弾させる必要があり、吐出周波数は20KHz程度が好ましい。多数の滴を画素内に均一に着弾させるためには、特に画素周辺部分での着弾位置精度が良好であれば、隔壁上にインクが着弾したり、さらにこれが隣接する画素に流入する等の障害を起こりにくくなる。このため、上記のようにノズルと基板間の距離を小さくすることにより着弾位置精度を高くすることが有効である。
また、基板を移動させながら順次着弾させる場合、図5に示すように、先行着弾したインクと後から着弾するインク滴が合一する際に、表面張力により合一後のインクの表面積を小さくする力が働き、後から打滴されたインク滴が着弾すべき位置よりも先行着弾インク側に引き寄せられる現象が起こる。この現象を考慮し着弾位置を適正に設定することが好適である。
一方、基板上でのインクの濡れ性が良好である場合、すなわちインクの基板への接触角が小さい場合には、画素の中央付近で必要インク量を集中して着弾させても良い。
【0080】
本発明におけるカラーフィルタは、RGB等の少なくとも3色のインクを吹き付けて少なくとも3色の着色層からなる群で構成された形態が好ましい。
【0081】
本発明においては、打滴後、液滴に含まれる溶剤を除去してインク残部とした後に、前記インク残部を加熱することでインク残部を硬化させて着色層を形成する(いわゆるベーク処理)。この加熱工程は1段階で行うことも、多段階で行うことも可能である。
1段階での加熱とは、溶剤除去後、初めから完全にインクを硬化させる所定の温度にて加熱することで、多段階での加熱とは初めは比較的低温で加熱を開始し順次加熱温度を上げて最終的に完全にインクを硬化させる所定の温度で加熱することである。加熱方法としては、ホットプレート、電気炉、乾燥器等による加熱、あるいは赤外線を照射することによる加熱が挙げられるが、これに限るわけではない。
この加熱工程の前にインク残部に活性エネルギー線を照射してインクを硬化させる工程を行ってもよい。
【0082】
加熱工程での加熱温度及び加熱時間は、インクジェットインクの組成や着色層の厚みに依存するが、一般に充分な画素強度、耐溶剤性、耐アルカリ性などを確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0083】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、カラーフィルタ用インクジェットインクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で前記加熱工程を終了させるものであり、3%/hr以下となる領域で加熱工程を終了することが好ましく、2%/hr以下となる領域で加熱工程を終了することが最も好ましい。なお、加熱工程終了時点でのインク質量減少率は0%/hrであることが理想である。
加熱工程終了時でのインク質量減少率がこの範囲にある場合、画素内の平坦性が良好となる。
【0084】
ここで、インク質量減少率とは、カラーフィルタ製造に用いるインクの、加熱工程の設定温度における質量変化を、TG(熱重量分析計)を用いて測定し、その測定結果より、その設定時間における単位時間(h)あたりの質量減少率(%)として求めることができる。例えば、加熱工程が230℃2時間である場合、TGにて230℃に設定したときの質量変化を測定し、2時間経過時点での質量減少の微分値をもって、その加熱工程終了時の質量減少率(%/hr)とすることができる。途中で温度条件を変化させる場合でも、加熱工程と同じ温度条件でTGによる質量変化測定を行うことにより、加熱工程終了時の質量減少率を求めることが可能である。
【0085】
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、前記着色層形成工程から加熱工程までを、24時間以内で行う事が好ましく、12時間以内で行う事がより好ましく、6時間以内に行う事がさらに好ましい。着色層が形成された後、最終の硬化工程(加熱工程)まで長時間放置しないほうが、インク中の顔料の凝集や各種バインダー等の析出を発生しにくく、画素の面状が悪化しにくく、好ましい。
【0086】
上記のように着色領域(着色画素)及び隔壁を形成してカラーフィルタを作製した後には、耐性向上の目的で、着色領域及び隔壁の全面を覆うようにしてオーバーコート層を形成することができる。
【0087】
オーバーコート層は、R,G,B等の着色領域及び隔壁を保護すると共に表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは設けないことが好ましい。
オーバーコート層は樹脂(OC剤)を用いて構成することができ、樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性で優れており、カラーフィルタ用光硬化性組成物の樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としており、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
【0088】
本発明のカラーフィルタは、既述の本発明のカラーフィルタの製造方法により作製されたものであり、例えば、テレビ、パーソナルコンピューター、液晶プロジェクター、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの用途に特に制限なく好適に適用できる。本発明のカラーフィルタにおいては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)、紫色(V)等の色画素の少なくとも一つが本発明のカラーフィルタの製造方法により形成されていればよい。
【0089】
<表示装置>
本発明の表示装置としては既述の本発明のカラーフィルタを備えるものであれば、特に限定するものではなく、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などが挙げられる。表示装置の定義や各表示装置の説明は例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0090】
本発明の表示装置のうち、液晶表示装置は特に好ましい。液晶表示装置については例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。本発明はこれらのなかで特にカラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに本発明はもちろんIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0091】
液晶表示装置はカラーフィルタ以外に電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルムなどさまざまな部材から構成される。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行 )」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉 (株)富士キメラ総研 2003年発行)」に記載されている。
【0092】
本発明の表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest Host)のような様々な表示モードが採用できる。本発明の表示装置は、前述したようなカラーフィルタを用いることを特徴とし、これにより、テレビ、モニターに搭載したときに表示ムラが無く、広い色再現域と高コントラスト比を有することができ、ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の表示装置等にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0094】
[実施例1]
[隔壁形成用の濃色組成物の調製]
濃色組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダー1、フェノチアジン、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得られる。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0095】
<K顔料分散物1>、
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0096】
【化1】

【0097】
<バインダー1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0098】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ
500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA)76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0099】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0100】
【化2】

【0101】
【表1】

【0102】
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
【0103】
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色組成物層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmで隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0104】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cmにて上面からポスト露光を行って、オーブンにて240℃50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0105】
〔撥インク化プラズマ処理〕
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
(条件)
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0106】
−顔料分散液の調製−
ブロム化フタロシアニングリーン(C.I.Pigment Green36、商品名:Rionol Green 6YK、東洋インキ製造(株)製)に分散剤(上記化合物1)及び溶剤(1,3−ブタンジオールジアセテート)(以下1,3−BGDAと略す。)を下記の表2に示す如く配合し、プレミキシングの後、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを充填率80%で用い、周速9m/sで25時間分散し、G用顔料分散液(G1)を調製した。G用顔料分散液(G1)において、顔料及びその他の成分を表2に示す如く配合した以外はG用顔料分散液(G1)と同様にして、G用顔料分散液(G2),R用顔料分散液(R1),(R2),B用顔料分散液(B1),(B2)を調製した。尚、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、この顔料分散液の数平均粒径を測定した。
【0107】
【表2】

【0108】
次いで、下記表3に示す処方のとおり、溶剤、モノマー、界面活性剤成分を混合して、25℃で30分間攪拌したのち、不溶物が無いことを確認し、モノマー溶液を調製した。
次に、G用顔料分散液(G1)、G用顔料分散液(G2)を撹拌しながら、前記モノマー液をゆっくりと添加し、25℃で30分間撹拌し、G用インクジェットインク(インクG−1)を調製した。
以下同様に、R用インクジェットインク(インクR−1)、B用インクジェットインク(インクB−1)各色インクを調整した。
【0109】
用いた素材の詳細を示す。
・C.I.P.R.254(商品名:Irgaphor Red B−CF、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株) 製)
・C.I.P.Y.150 (商品名:Bayplast Yellow 5GN 01、バイエル株式会社製)
・C.I.P.B.15:6(商品名:Rionol Blue ES、東洋インキ製造(株)製)
・C.I.P.V.23(商品名:Hostaperm Violet RL−NF、 クラリアントジャパン(株)製)
・1,3−BGDA(1,3−ブタンジオールジアセテート;沸点232℃)
・DPHA(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA)、
・界面活性剤:前記界面活性剤1の欄に示した構造物1
【0110】
【表3】

【0111】
−インクジェット方式による画素部の形成―
本実施例では上記作成したインクセットR−1、G−1、B−1を用い、インクの打滴を以下の形態で行った。
図1に示すヘッド部100は3色のインクジェットヘッドとしてDimatix社製SX−3を3個具備し、吐出制御装置200は専用のピエゾ駆動回路およびステージ制御専用回路を用いた。SX−3はオンデマンド型ピエゾ駆動のヘッドであって、一つのヘッドに128のノズルが508μmの間隔で配置されている。 ピエゾを駆動するにあたり、電圧の中心値を50V、パルス幅を8マイクロ秒として、前述の飛翔形状観察及び吐出量計測により、各々のノズルからの吐出量の差が2%以内となるようにノズルごとの電圧を調整した。
吐出量の中心値は8ng/滴であった。
【0112】
上記工程で製作した基板を載置する基板台400は専用自動2次元移動ステージ上に置かれたアルミ製の板であって、移動ステージに固定されている。
ヘッドと基板の間隔は500μmに調整されており、ヘッドのピエゾが駆動されてからインク滴が形成され、基板に着弾するまでの時間は約63μ秒であった。
基板上の画素のサイズは、X方向が300μm、Y方向が100μmであって、X方向に対してヘッドを53.8度傾けることにより、Y方向の見かけ上のノズル間隔が300μmとなるように調整した。
ピエゾは連続打滴する場合の駆動周波数を10KHzに設定されており、基板を8.2cm/秒の等速度で移動させて画素のX方向270μmの区間内に33滴264ngを打滴した。
【0113】
硬化はホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で90分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。
【0114】
なお、ここで用いたインクの、230℃における質量変化をTG(島津製作所 DTG−60)を用いて測定したところ、90分経過時点での質量減少微分値は、1.7.%/hrであった。
【0115】
<表示装置の作製>
上記より得たカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びに隔壁の上に更に、ITO(IndiumTinOxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。別途、対向基板としてガラス基板を用意し、カラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施した。
前記ITOの透明電極上の隔壁の上部に相当する部分にフォトスペーサを設け、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられた隔壁外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、冷陰極管のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、実施例1の液晶表示装置とした。
【0116】
[実施例2]
実施例1と同様の手法にて隔壁形成、インク吐出を行った後、ホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で60分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。
なお、ここで用いたインクの、230℃における質量変化をTG(島津製作所 DTG−60)を用いて測定したところ、60分経過時点での質量減少微分値は、4.7.%/hrであった。
【0117】
<評価>
<表示装置の評価>
表示装置が正常に表示できているか、目視で確認した。
R,G,B単色画像を発色させることによりそれぞれについて面積10cm×10cmの範囲において10人が色むらの判定を実施した。
○:色むらがあると認識した人数 0人
△:色むらがあると認識した人数 1人〜2人
×:色むらがあると認識した人数 3人以上
【0118】
<平坦性評価>
各カラーフィルタ基板について、隔壁の端部から基板面と平行方向に10μm以内におけるR画素、G画素、B画素での厚み(基板法線方向における厚み)の変動幅を、触針式膜厚計(P10、ケーエルエー・テンコール(株)製)で測定し、下記の評価基準にしたがって評価した。
[評価基準]
○:0.1μm未満
△:0.1μm以上0.2μm未満
×:0.2μm以上
【0119】
<ITO抵抗>
ITO付きのカラーフィルタのITO抵抗を測定した(三菱化学(株)製「ロレスタ」;四探針法でシート抵抗を測定)。
【0120】
以上の評価結果を表4に示す
【0121】
【表4】

【0122】
[実施例3]
<隔壁の形成>
(濃色感光性転写材料K1の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1からなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、前記濃色組成物K1を塗布、乾燥させた。このようにして仮支持体の上に乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.3μmの濃色組成物層を設け、最後に保護フイルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)と濃色組成物層とが一体となった濃色感光性転写材料を作製し、サンプル名を濃色感光性転写材料K1とした。
【0123】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール 11.1部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.36部
・メチルエチルケトン 52.4部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、分子量=10万、Tg≒70℃) 5.83部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=63/37、
平均分子量=1万、Tg≒100℃) 13.6部
・2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン
(新中村化学工業(株)製) 9.1部
・界面活性剤1 0.54部
【0124】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、
鹸化度=88%、重合度550) 32.2部
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製、K−30) 14.9部
・蒸留水 524部
・メタノール 429部
【0125】
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
上記の製法にて作製された濃色感光性転写材料K1からカバーフィルムを除去し、除去後に露出した濃色組成物層の表面と前記シランカップリング処理ガラス基板の表面とが接するように重ね合わせ、ラミネータ(株式会社日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いて、100℃で2分間加熱したシランカップリング処理ガラス基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。続いてポリエチレンテレフタレートの仮支持体を、熱可塑性樹脂層との界面で剥離し、仮支持体を除去した。仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該濃色組成物層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した

【0126】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30質量%含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム株式会社製を、純水で12倍(T−PD2を1質量部と純水を11質量部の割合で混合)に希釈した液)を30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。引き続き、この基板上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
引き続き炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5質量%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し濃色組成物層を現像しパターニング画像を得た。
引き続き洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有、商品名:T−SD1 富士写真フイルム株式会社製)を純水で10倍に希釈して用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーで吹きかけ、更にナイロン毛を有す回転ブラシにより形成された画像を擦って残渣除去を行い、隔壁を得た。
その後、該基板に対して両面からマスクを用いない以外は、前記露光工程で用いた露光機で3000mJ/cmの露光量で上面からポスト露光後、220℃、15分間熱処理し、光学濃度3.9、膜厚2.0μm、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0127】
次いで、下記の方法により撥インク処理を行った。
[塗布法による撥インク化処理]
隔壁の形成された基板上に、予めフッ素系界面活性剤(住友3M社製、フロラードFC−430)が0.5%(感光性樹脂の固形分に対して)内添してあるアルカリ可溶の感光性樹脂(ヘキストジャパン社製、ポジ型フォトレジストAZP4210)を膜厚2μmとなるようにスリット状ノズルを用いて塗布し、温風循環乾燥機中で90℃、30分間の熱処理を行った。
次いで、110mJ/cm(38mW/cm×2.9秒)の露光量で基板の隔壁の形成された面とは反対の面から隔壁を介して露光し、無機アルカリ現像液(ヘキストジャパン社製、AZ400Kデベロッパー、1:4)中に80秒間浸漬揺動した後、純水中で30〜60秒間リンス処理を行い、隔壁上に撥水性樹脂層を形成することにより画素内外に表面エネルギー差を設けた。撥水性樹脂層形成後の画素内外の表面エネルギーは、画素外(樹脂層上)が10〜15dyne/cm、画素内(ガラス基板上)は55dyne/cm前後であった。
【0128】
次いで、実施例1と同様にインクR−1、G−1、B−1を用いてインクの吐出を行い、実施例1と同様の条件で乾燥とベークすることで、隔壁、各画素共に完全に硬化させ、カラーフィルタを作製した。
なお、ここで用いたインクの、230℃における質量変化をTG(島津製作所 DTG−60)を用いて測定したところ、90分経過時点での質量減少微分値は、1.6%/hrであった。
得られたカラーフィルタを用い、実施例1と同様にして液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0129】
[比較例1]
実施例1と同様の手法にて隔壁形成、インク吐出を行った後、ホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。
なお、ここで用いたインクの、230℃における質量変化をTG(島津製作所 DTG−60)を用いて測定したところ、30分経過時点での質量減少微分値は、7.1%/hrであった。
得られたカラーフィルタを用い、実施例1と同様にして液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0130】
[比較例2]
実施例3と同様の手法にて隔壁形成、インク吐出を行った後、ホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。
なお、ここで用いたインクの、230℃における質量変化をTG(島津製作所 DTG−60)を用いて測定したところ、30分経過時点での質量減少微分値は、6.8%/hrであった。
得られたカラーフィルタを用い、実施例1と同様にして液晶表示装置を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】カラーフィルタを作製するシステム構成の一例を示す図である。
【図2】ヘッド部の詳細を示す図である。
【図3】ピエゾ素子を駆動する最も単純な電圧波形を示す図である。
【図4】飛翔している滴の形状を観察するための構成を示す図である。
【図5】インク滴を順次着弾させたときのインク滴の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
100 ヘッド部
200 制御部
300 基板
400 基板台
500 ヘッドメンテナンスステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、インクジェット方式によりカラーフィルタ用インクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、
前記カラーフィルタ用インクジェットインクを加熱工程によって硬化/乾燥させる際に、インク質量減少率が5%/hr以下となる領域で前記加熱工程を終了させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−76693(P2008−76693A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255080(P2006−255080)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】