説明

カラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法及びそれを用いたカラーフィルター

【課題】カラーフィルター用青色顔料分散体として好ましく用いることのできる一次粒子の平均粒子径を有する分散体の製造方法の提供。更に粘度が低く、その低粘度の持続が可能な分散体の提供。
【解決手段】カラーフィルターに好ましく用いることのできる青色顔料分散体の製造方法であって、
(1)ε型フタロシアニン有機顔料を、顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体中で、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
(2)更に、前記顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体を追加して添加し、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
を有するカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のカラーフィルターの青色画素部の作製に好適な顔料分散体の製造方法及び当該顔料分散体を青色画素部に用いてなるカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルターは、赤色画素部、緑色画素部及び青色画素部を有する。これらの各画素部は、いずれも有機顔料が分散した合成樹脂の薄膜が基板上に設けられた構造であり、有機顔料としては、赤、緑及び青の各色の有機顔料が用いられている。
【0003】
これら画素部のうち、青色画素部を形成するための青色有機顔料としては、一般に、ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)が用いられており、必要に応じて調色のために、これに紫色有機顔料のジオキサジンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレット23)が少量併用されている。
【0004】
カラーフィルターを作成する際の有機顔料は、従来の汎用用途とは全く異なる特性、具体的には、液晶表示装置の表示画面がより明るくなる様にする(高輝度化)、或いは、同じく表示画面がよりハッキリ見える様にする(高コントラスト化)等が要求されている。
【0005】
特許文献1では、平均粒子径が100nmより大きい粗製ε型銅フタロシアニン顔料を乾式粉砕した平均粒子径が10〜100nmのプレ顔料に、上記顔料に対して結晶成長作用を有する有機溶剤を少量添加して乾式粉砕し、顔料の平均粒子径の変化を30nm以下に抑制しながら整粒させ、粒径100nm以上の顔料粒子が全顔料粒子の20質量%以下で、かつ粒径20〜100nmの範囲の顔料粒子が全顔料粒子の60質量%以上である粒度分布を有する有機顔料を得られると報告されている。ところが、この方法で得られるε型銅フタロシアニン顔料の平均粒子径は40nmと大きく、更に一次粒子径のばらつきも30〜70nmと大きく、カラーフィルターとした場合、近年要求されている高輝度化、高コントラスト化としては不十分であるという欠点を有していた。
【0006】
また、特許文献2では、粒径が0.3mmφ以下の微小メディアと顔料誘導体とを組み合わせて、湿式分散機により顔料を液状媒体に分散するため、微小メディア、顔料誘導体それぞれ単独に用いた場合の効果を大きく上回り、顔料を1μm以下のサブミクロン領域まで再凝集することなく、安定に微分散することができ、低粘度、高流動性であるカラーフィルター用着色材が得られると報告されている。ところが、この方法で得られる顔料分散体中の青色顔料粒子の平均粒子径は50〜100nmと大きく、同様にカラーフィルターとした場合、近年要求されている高輝度化、高コントラスト化としては不十分であるという欠点を有していた。
【0007】
以上のように、これまで、カラーフィルター用顔料分散体として十分な機能を発現する分散体を安定的に製造することが可能な方法は見出されていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2005−189672号公報
【特許文献2】特開2005−221804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
表示画面がより明るい高輝度で、表示画面がよりハッキリ見える高コントラストの液晶表示装置が得られる青色画素部を有するカラーフィルター及び当該カラーフィルターが得られる青色顔料分散体を得ることは重要な課題である。本発明では、当該課題の解決のため、カラーフィルター用青色顔料分散体として好ましく用いることのできる一次粒子の平均粒子径を有する分散体の製造方法の提供を課題とする。更に本発明では、粘度が低く、さらにその低粘度の持続が可能な分散体の提供をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、カラーフィルターに好ましく用いることのできる青色顔料分散体の製造方法について鋭意検討を行ったところ、
カラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法であって、
(1)ε型フタロシアニン有機顔料を、顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体中で、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
(2)更に、前記顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体を追加して添加し、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
を有するカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
更に、上記(2)更に前記液状媒体を追加して添加添加し、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程において、ε型フタロシアニン有機顔料100部に対して、液状媒体中の顔料分散剤の少なくとも1部を1回以上添加し、添加後の液状媒体中の顔料分散剤の総量が20部乃至200部である場合が、特に目的とするカラーフィルター用青色顔料分散体を提供することができ、メディアとしては、粒子径0.03〜0.1mmのビーズを用いることが、特に好適に目的とするカラーフィルター用青色顔料分散体を製造することができることをも見出した。
【0011】
即ち、本発明は、(1)ε型フタロシアニン有機顔料を、顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体中で、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程、(2)更に、前記顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体を追加して添加し、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
を有するカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法を提供し、本製造法によって得られる青色顔料分散体を青色画素部に用いてなるカラーフィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表示画面がより明るい高輝度で、表示画面がよりハッキリ見える高コントラストの液晶表示装置が得られる青色画素部を有するカラーフィルター及び当該カラーフィルターが得られる青色顔料分散体を提供することができる。更に、本発明による分散体は、粘度が低く、さらにその低粘度の持続が可能であることにより、カラーフィルター製造に際し、塗膜性が優れ、且つカラーフィルター製造上必要なレジスト樹脂との混合が容易となる等のカラーフィルター製造上極めて優れた特性を有する分散体の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いるフタロシアニン有機顔料は、カラーフィルター用青色顔料分散体として用いた場合に高コントラストの青色画素部が得られることから、ε型フタロシアニン有機顔料を用いることが好ましい。使用されるε型フタロシアニン有機顔料は、例えば、顔料化したフタロシアニン有機顔料を、少量のε型フタロシアニン有機顔料の存在下にソルトミリング法により結晶変換させる通常公知の方法により容易に得ることができる。
【0015】
使用されるフタロシアニンとしては、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、鉄フタロシアニン等を用いることができ、色相面から銅フタロシアニンが特に好ましい。
また、ε型フタロシアニン有機顔料の一次粒子の平均粒子径としては100nm以上の粗顔料、または粒子径10〜100nmに調整した顔料のいずれでも良いが、10〜100nmに調整した顔料を好適に用いることができる。
【0016】
ε型フタロシアニン粗顔料は、例えば、ニトロベンゼン溶剤中、無水フタル酸と尿素と銅塩及び反応触媒を銅フタロシアニンスルホクロリドとデヒドロアビエチルアミンとの縮合反応物の存在下に加熱攪拌して合成する方法(特開昭53−39325号公報)や、アルキルベンゼン溶媒中で、無水フタル酸と尿素と銅塩及び反応触媒を銅フタロシアニンスルホアミド誘導体とシード結晶としてのε型銅フタロシアニン存在下に加熱攪拌して合成する方法(特開昭57−149358号公報)等で製造したものを用いることができる。
【0017】
一次粒子の平均粒子径は透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定することができる。本発明における平均粒子径は、例えば、ε型フタロシアニン有機顔料を溶媒に超音波分散させてから、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定することができる。本発明において一次粒子の平均粒子径は、次の様に測定される。
【0018】
まず、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の内径の最長の長さ(最大長)を求める。個々の粒子の最大長の平均値を一次粒子の平均粒子径とする。一方、粒子の最大長となる線に直交する様に無数に引くことのできる仮想線のうち最短となる長さを最小長とし、これも50個につき求めることができる。アスペクト比は、この様にして得られた個々の粒子の最大長の平均値と最小長の平均値を求め、これらの値を用いて(最大長の平均値)/(最小長の平均値)に基づいて算出する。
【0019】
顔料分散剤を含む液状媒体は、顔料分散剤と溶剤との混合物、または、顔料分散剤と樹脂と溶剤との混合物で構成され、液状媒体100部中の顔料分散剤の量は、質量基準で5〜100部が好ましく、20〜60部がより好ましい。
【0020】
本発明の顔料分散剤は、顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有するものであり、ここでいう顔料吸着基は、顔料表面に、強く、持続的に吸着することのできる基であって、例えば、塩基性基、酸性基、有機顔料骨格基または有機顔料類似骨格基である。塩基性基を有するものとしては、ポリエチレンイミン、ポリエチレンポリアミン、ポリキシリレンポリ(ヒドロキシプロピレン)ポリアミン、ポリ(アミノメチル化)エポキシ樹脂、アミン付加グリシジル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸エステル化グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等を挙げることができる。
酸性基を有するものとしては、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)、ポリリシノール酸、ε−カプロラクトン等の開環重合体のポリエステル化合物等を挙げることができる。
【0021】
有機顔料骨格基としては、有機顔料の化学構造を有する無金属フタロシアニン骨格、金属フタロシアニン骨格、ジオキサジンバイオレット骨格、インダンスレンブルー骨格が挙げられる。
また、有機顔料骨格類似基としては、有機顔料が有する化学構造に類似する基であるフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。また複素芳香族基とは、例えばピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、無水フタル酸、フタルイミド、ナフタルイミドなどの複素環を含む芳香族基が挙げられる。
【0022】
樹脂相溶性鎖としては、顔料表面に吸着後その鎖を顔料から樹脂溶液中にできるだけ長く伸ばすことのできる鎖であって、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ベンジル等の芳香族ビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アリールアルキルエステル、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレン等のエーテルを挙げることができる。
これら、顔料吸着基と樹脂相溶性基は、ブロック結合や、グラフト結合で一つの分子とすることができる。
【0023】
このような顔料分散剤としては、例えば、ビックケミー社のディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150、エフカ社のエフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、LP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503、ルーブリゾール社のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000、ソルスパース71000、味の素株式会社のアジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111、などを用いることも可能である。また、アクリル系、ポリエチレン系のような樹脂型分散剤なども使用可能である。また、一般式(1)の顔料型分散剤も使用可能である。
【0024】
【化1】

【0025】
(但し、式中、Yは一般式(2)
【0026】
【化2】

【0027】
(ここで、nは4〜100の整数であり、Qは各々独立に水素原子またはメチル基であり、Q’は炭素数1〜6のアルキル基である。)
を表し、a、b、c、dは、各々独立に0〜2の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは1である。)
また、レベリング剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。本発明において、これらの分散剤は、2種以上を併用することもできる。
上記顔料分散剤の他に、特にアミノ基を有する分散剤への親和性の向上のために、フタロシアニン骨格にスルホン酸基が置換したフタロシアニン誘導体を用いることもできる。
【0028】
溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物の様なカルバミン酸エステル、水等が挙げられる。有機溶剤としては、特にプロピオネート、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系等の極性溶媒で水可溶のものが好ましい。水可溶の有機溶剤を使用する場合には、それに水を併用することもできる。本発明において、これらの溶剤は、2種以上を併用することもできる。
【0029】
樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ラクトン変性ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ポリエーテル樹脂、ポリチオエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ変性樹脂、シリコーン樹脂、またはフッ素樹脂などから選択することができる。ここで(メタ)アクリル樹脂とは、メタアクリル酸、アクリル酸、またはこれらのエステルを必須成分として重合した樹脂であり、メタアクリル樹脂とアクリル樹脂の総称である。以下、(メタ)アクリル又は(メタ)アクリレートと称する場合は、メタアクリルとアクリルの両方を包含する。本発明において、これらの樹脂は、2種以上を併用することもできる。
【0030】
本発明におけるカラーフィルター用青色顔料分散体の製造においては、ε型フタロシアニン有機顔料を液状媒体中に分散させた液に、更に顔料分散剤を含む液状媒体を追加して添加する工程を含むことが好ましい。
添加する工程の一例を示すと、ε型フタロシアニン有機顔料100部に対して、顔料分散剤を含む液状媒体を5〜15部添加した後、得られるε型フタロシアニン有機顔料と顔料分散剤が液状媒体中に分散した懸濁液の粘度が20℃で1〜100mPa・sになるように調節しながら、例えば、顔料分散剤を含む液状媒体を、ε型フタロシアニン有機顔料100部に対して5部ずつ添加していき、最終の添加終了時にε型フタロシアニン有機顔料に対して合計20〜200部になるようにする。その際、懸濁状態の粘度は、攪拌式ビーズミルのミル内圧と正の相関があるので、ミル内圧で液状媒体の添加量、添加回数を調整することが可能である。
【0031】
また、ε型フタロシアニン有機顔料と顔料分散剤を液状媒体中で分散した液が、有機顔料誘導体を含んでいてもよい。
このような有機顔料誘導体としては、例えば、無金属フタロシアニン誘導体、金属フタロシアニン誘導体、ジオキサジンバイオレット誘導体、またはインダンスレンブルー誘導体が挙げられる。具体例としては、無金属または金属フタロシアニンのフタルイミドメチル誘導体、無金属または金属フタロシアニンのスルホン酸誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、ジオキサジンバイオレットのスルホン酸誘導体、インダンスレンブルーのスルホン酸誘導体等がある。これらの顔料誘導体には、更に1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩、エチレンジアミン等のアミンを添加して用いることもできる。これら有機顔料誘導体の添加は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の向上、分散体の粘度特性を向上にも寄与する。本発明において、これら有機顔料誘導体は、2種以上を併用することもできる。
【0032】
分散方法は、ε型フタロシアニン有機顔料と、顔料分散剤を液状媒体中に、例えば、散布混入又は攪拌混入することにより該顔料や顔料誘導体を十分濡らして、例えば10℃から200℃、好ましくは50〜100℃の範囲で攪拌し懸濁させる。
【0033】
分散時間は、特に制限されないが、例えば30分間〜20時間を挙げることができる。
上記方法を実施するに当たっては、上記ε型フタロシアニン有機顔料、顔料分散剤を含む液状媒体、必要に応じて有機顔料誘導体を、磨砕空間1リットル当たり2.0KWより大きい出力密度で運転できる攪拌式ビーズミルを用いることができる。攪拌式ビーズミルでは、メディアの存在下に有機顔料や有機顔料誘導体が湿式微磨砕される特徴を有するので好適である。
【0034】
磨砕空間1リットル当たり2.0KWより大きい出力密度で運転される攪拌式ビーズミルは、バッチ式又は連続式の湿式粉砕装置であれば良く、例えば、磨砕空間に面している内筒及び外筒壁面にピンが装着されている型式が好ましい。好ましい装置として、例えばスーパーアペックスミル(コトブキ技研工業社製)、ウルトラアペックスミル(コトブキ技研工業社製)、ドライスヴェルケPM―DCP撹拌式ビーズミル装置(ドライスヴェルケ社製)、ピコグレンミル(浅田鉄工(株)製)中でもドライスヴェルケPM―DCP撹拌式ビーズミル装置(ドライスヴェルケ社製)等を挙げることができる。
【0035】
運転条件が、磨砕空間1リットル当たりの出力密度が2.0KW以下の場合、湿式微磨砕が不十分となり、得られる顔料分散体内に、原料である微粒状のε型のフタロシアニン有機顔料又は結晶成長しすぎた有機顔料(或いは有機顔料誘導体)が残留する傾向にあるので好ましくない。
【0036】
また、攪拌式ビーズミルの撹拌機外周速度は6.0m/秒以上が好ましく、撹拌機外周速度は6.0m/秒以下の場合、同様に湿式微磨砕が不十分となり、上記と同様の傾向にあるので好ましくない。
【0037】
湿式微磨砕の際に用いるメディアとしては、通常公知の物を用いることができるが、例えば、ジルコニア製又は鋼製のメディアが挙げられ、これらの中でも、耐摩耗性に優れるジルコニア製のメディアが特に好ましい。また、メディアの直径は、0.01〜3.0mmの範囲が好ましく、0.03〜0.1mmの範囲が特に好ましい。メディアの直径が3.0mmよりも大きい場合、湿式微粉砕が不十分となり、やはり、得られる顔料分散体に、原料であるε型のフタロシアニン有機顔料が残留する傾向にあるので好ましくない。
【0038】
本発明の製造各工程において、有機顔料または有機顔料誘導体がカラーフィルター用青色顔料分散体に最終的に所望される含有量となるように、ε型フタロシアニン有機顔料、顔料分散剤を含む液状媒体有機顔料誘導体の懸濁液に、必要に応じて、溶剤または樹脂を添加することができる。
【0039】
こうして得られたカラーフィルター用青色顔料分散体中の一次粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により測定することができ、平均粒子径は、10〜30nmである。一次粒子の平均粒子径の測定は、前記した方法により行うことができる。
【0040】
カラーフィルター用青色顔料分散体中のε型の確認は、分散体をアプリケータを用いてガラス板に塗布し、乾燥機で溶剤を揮発させた後、粉末X線回折装置でX線回折スペクトル(CuKα線)を測定することで結晶型を確認することができる。ε型フタロシアニンは、ブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=7.6度と9.2度に強いピークを有し、α型フタロシアニンは、ブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=6.8度に強いピークを有するので、この差により、ε型、α型の確認をすることができる。本発明において、顔料分散体中のε型フタロシアニン/α型フタロシアニンの比率は100%であることが望ましいが、100%以下でも可能である。
【0041】
本発明のカラーフィルター用青色顔料分散体でカラーフィルター青色画素部を製造した場合に、均質な塗膜を形成して輝度、コントラストおよび光透過率のいずれもが高いカラーフィルターを得ることができる。更に、本発明による分散体は、粘度が低く、さらにその低粘度の持続が可能であることにより、カラーフィルター製造に際し、塗膜性が優れ、且つカラーフィルター製造上必要なレジスト樹脂との混合が容易となる等のカラーフィルター製造上極めて優れた特性を有する。
【0042】
ここでコントラストとは、2枚の偏光板の偏光方向を平行にしてカラーフィルターを挟み込んだ時の透過光強度を2枚の偏光板の偏光方向を垂直にしてカラーフィルターを挟み込んだ時の透過光強度で除したものであり、消偏性とも呼ばれるものである。
【0043】
また本発明の青色顔料分散体だけをカラーフィルター青色画素部の青色顔料分散体として用いても良いが、必要であれば、ジオキサジンバイオレット顔料等の有機顔料の分散体と併用してもよい。
【0044】
本発明の顔料組成物は、従来公知の方法でカラーフィルター青色画素部の形成に使用することができる。この顔料組成物を使用してカラーフィルター青色画素部を製造するに当たっては、顔料分散法が好適である。
【0045】
この方法で代表的な方法としては、フォトリソグラフィー法であり、これは、後記する光硬化性組成物を、カラーフィルター用の透明基板のブラックマトリックスを設けた側の面に塗布、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、画素部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、光硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。
赤色、緑色、青色の色ごとに、後記する光硬化性組成物を調製して、前記した操作を繰り返すことにより、所定の位置に赤色、緑色、青色の着色画素部を有するカラーフィルターを製造することができる。本発明の顔料組成物からは、青色画素部を形成することができる。尚、赤色画素部および緑色画素部を形成するための光硬化性組成物を調製するには、公知慣用の赤色顔料と緑色顔料を使用することができる。
【0046】
赤色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同209、同254等が、緑色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、同10、同36、同47等が挙げられる。これら赤色画素部と緑色画素部の形成には、黄色顔料を併用することもできる。その後、必要に応じて、未反応の光硬化性化合物を熱硬化させるために、カラーフィルター全体を加熱処理(ポストベーク)することもできる。
【0047】
後記する光硬化性組成物をガラス等の透明基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0048】
透明基板に塗布した光硬化性組成物の塗膜の乾燥条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常、50〜150℃で、1〜15分間程度である。また、光硬化性組成物の光硬化に用いる光としては、200〜500nmの波長範囲の紫外線、あるいは可視光を使用するのが好ましい。この波長範囲の光を発する各種光源が使用できる。
【0049】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。光硬化性組成物の露光、現像の後に、必要な色の画素部が形成された透明基板は水洗いし乾燥させる。こうして得られたカラーフィルターは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、100〜280℃で、所定時間加熱処理(ポストベーク)することによって、着色塗膜中の揮発性成分を除去すると同時に、光硬化性組成物の硬化着色皮膜中に残存する未反応の光硬化性化合物が熱硬化し、カラーフィルターが完成する。
【0050】
カラーフィルターの青色画素部を形成するための光硬化性組成物は、本発明の顔料組成物と、分散剤と、光硬化性化合物と、有機溶剤とを必須成分とし、必要に応じて熱可塑性樹脂を用いて、これらを混合することで調製することができる。青色画素部を形成する着色樹脂皮膜に、カラーフィルターの実生産で行われるベーキング等に耐え得る強靱性等が要求される場合には、前記光硬化性組成物を調製するに当たって、光硬化性化合物だけでなく、この熱可塑性樹脂を併用することが不可欠である。熱可塑性樹脂を併用する場合には、有機溶剤としては、それを溶解するものを使用するのが好ましい。
【0051】
前記光硬化性組成物の製造方法としては、本発明方法の顔料組成物と、有機溶剤と分散剤とを必須成分として使用し、これらを混合し均一となる様に攪拌分散を行って、まずカラーフィルターの青色画素部を形成するための顔料分散液を調製してから、そこに、光硬化性化合物と、必要に応じて熱可塑性樹脂や光重合開始剤等を加えて前記光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0052】
ここで分散剤、有機溶剤は、前記のものが使用可能である。
【0053】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0054】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。市販の光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャルティーケミカルズ社製「イルガキュア−184」、「イルガキュア−369」、「ダロキュア−1173」、BASF社製「ルシリン−TPO」、日本化薬社製「カヤキュアーDETX」、「カヤキュアーOA」、ストーファー社製「バイキュアー10」、「バイキュアー55」、アクゾー社製「トリゴナールPI」、サンド社製「サンドレー1000」、アップジョン社製「デープ」、黒金化成社製「ビイミダゾール」などがある。
また上記光重合開始剤に公知慣用の光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、たとえば、アミン類、尿素類、硫黄原子を有する化合物、燐原子を有する化合物、塩素原子を有する化合物またはニトリル類もしくはその他の窒素原子を有する化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0056】
光重合開始剤の配合率は、特に限定されるものではないが、質量基準で、光重合性あるいは光硬化性官能基を有する化合物に対して0.1〜30%の範囲が好ましい。0.1%未満では、光硬化時の感光度が低下する傾向にあり、30%を超えると、顔料分散レジストの塗膜を乾燥させたときに、光重合開始剤の結晶が析出して塗膜物性の劣化を引き起こすことがある。
【0057】
前記した様な各材料を使用して、質量基準で、本発明の方法で製造された顔料組成物100部当たり、300〜1000部の有機溶剤と、1〜100部の分散剤とを、均一となる様に攪拌分散して前記顔料分散液を得ることができる。次いでこの顔料分散液に、本発明の顔料組成物1部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が3〜20部、光硬化性化合物1部当たり0.05〜3部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルター青色画素部を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0058】
現像液としては、公知慣用の有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することができる。特に前記光硬化性組成物に、熱可塑性樹脂または光硬化性化合物が含まれており、これらの少なくとも一方が酸価を有し、アルカリ可溶性を呈する場合には、アルカリ水溶液での洗浄がカラーフィルター青色画素部の形成に効果的である。
【0059】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルター青色画素部の製造方法について詳記したが、本発明の方法で製造された顔料組成物を使用して調製されたカラーフィター青色画素部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法、インクジェット法、反転印刷法、熱硬化法等の方法で青色画素部を形成して、カラーフィルターを製造してもよい。
【0060】
カラーフィルターは、赤色顔料、緑色顔料、ならびに本発明の方法で製造された顔料組成物を使用して得た各色の光硬化性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤、緑および青のいずれか1色から選ばれたカラーフィルター着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルター着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0061】
本発明の方法で製造されたカラーフィルター青色画素部用顔料分散体は、鮮明性と明度、優れたより赤味の色相を有する青色顔料分散体であり、カラーフィルター用途の他、塗料、プラスチック(樹脂成型品)、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、静電荷像現像用トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写インキ等の着色にも適用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、もとより本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」はいずれも質量基準である。
(実施例1)
大日本インキ化学工業(株)社製の「FASTOGEN BLUE EP−193」〔ε型銅フタロシアニン顔料;平均粒子径30〜50nm〕15部と、一般式(3)
【0063】
【化3】

【0064】
(但し、本化合物において、プロピレンオキシド/エチレンオキシド=29/6(モル比)、nの平均値=35である。)
で表される顔料分散剤を4.5部、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)80.5部を、ペイントコンディショナーで0.4〜0.6mm径のジルコニアビーズ(日本タイゴン社製)と共に30分間分散した後に、ビーズを分離する事で、プレ分散体を得た。
プレ分散体を浅田鉄工株式会社製ピコグレンミル装置を用いて、0.05mm径のジルコニアビーズ、循環流量340g/min、攪拌機外周速度12m/s、チラー温度−4℃の条件で、一次粒子の磨砕及び分散を行った。磨砕及び分散の開始後、15分毎に16回0.28部ずつ一般式(3)で表される分散剤を追加した。さらに420分後に分散剤4.5部を追加した後に、480分後に分散・磨砕を終了して、TEMから算出した1次粒子の平均粒子径が、17.7nmであるカラーフィルター用分散液を得た。また、この分散液の粘度は9.5mPa・sであった。
【0065】
この顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジぺンタエリスレートヘキサアクリレート(KAYARAD(商標名)DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE(商標名)BP−100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEFP13.5部を分散攪拌機で攪拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。カラーレジストは1mm厚ガラスに乾燥膜厚1μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後60℃で5分間予備乾燥して塗膜を形成させた。次いでフォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を0.5%の炭酸ナトリウム水溶液中で洗浄した後、純水で更に洗浄し、次いで得られた塗膜を230℃で15分間加熱処理して塗膜を硬化させ、カラーフィルターを得た。
【0066】
(実施例2)
実施例1において、一般式(3)で表される分散剤をアジスパー(商標名)PB814(顔料分散剤60%、トルエン40%、味の素株式会社製)に替えた以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルターを得た。
(実施例3)
実施例1において、磨砕及び分散の開始後、15分毎に16回0.28部ずつ一般式(3)で表される分散剤を追加し、さらに420分後に分散剤4.5部を追加した後に、480分後に分散・磨砕を終了する替わりに、60分後に分散剤4.5部添加し、さらに180分間分散・磨砕を継続し、240分後に分散・磨砕を終了する他は実施例1と同様にしてカラーフィルターを得た。
(実施例4)
実施例1において、磨砕及び分散の開始後、15分毎に16回0.28部ずつ一般式(3)で表される分散剤を追加し、さらに420分後に分散剤4.5部を追加した後に、480分後に分散・磨砕を終了する替わりに、120分後に4.5部添加し、さらに300分間分散・磨砕を継続し、420分後にさらに分散剤4.5部を追加し、分散・磨砕を終了する他は実施例1と同様にしてカラーフィルターを得た。
(実施例5)
実施例1において、ピコグレンミル装置を用いる替わりに、ドライスミルを用いる他は実施例1と同様にしてカラーフィルターを得た。
【0067】
(比較例1)0.3mm径ビーズミルを用いた場合
実施例1において使用した0.05mm径のジルコニアビーズの替わりに、0.3mm径のジルコニアビーズを用いた他は、実施例1と同様の操作を行い、カラーフィルターを得た。
【0068】
(比較例2)分散剤が無添加の場合
実施例2のアジスパー(商標名)PB814をメチルメタアクリレート/ベンジルメタアクリレート=1/1共重合樹脂40%、トルエン60%の液状媒体に替えた以外は実施例2と同様にして、撹拌式ビーズミル装置で湿式分散を行った。1時間分散で、メチルメタアクリレート/ベンジルメタアクリレート=1/1共重合樹脂40%、トルエン60%の液状媒体を添加しても、撹拌式ビーズミル装置のミル内圧が1.0MPaとなり、安全装置が働き、分散を停止した。この時点での青色顔料分散液を用いて、実施例1と同様の方法でカラーフィルターを得た。
(比較例3)液状媒体を追加添加しない場合
実施例2の撹拌式ビーズミル装置にかける前に、添加する一般式(3)で表される分散剤を4.5部から9部に代え、それ以降は分散剤を添加することなく、実施例2と同様に撹拌式ビーズミル装置で湿式分散を行った。なお、この時は、ミルの内圧が0.5MPa以上に上がっても分散剤を添加しなかった。2時間分散で、撹拌式ビーズミル装置のミル内圧が1.0MPaとなり、安全装置が働き、分散を停止した。この時点での青色顔料分散液を用いて、実施例1と同様の方法でカラーフィルターを得た。
【0069】
(試験例)
<性能試験及び評価基準>
【0070】
(コントラスト)
当該カラーフィルター青色画素部を2枚の偏光板の間に設置し、一方には光源を、更にその反対側にはCCDカメラを設置して輝度の測定を行った。偏光軸が平行になる時と垂直になる時との輝度(透過光強度)の比より算出した。
(粘度)
粘度(mPa・s)は、実施例1〜5、及び、比較例1〜3で得られた各カラーフィルター用顔料分散体について、東機産業社製R型粘度計を使用して測定した。
【0071】
上記実施例、及び比較例により得られたカラーフィルター用青色顔料分散体(平均粒子径、粘度)、及びそれを用いたカラーフィルターの評価(コントラスト)を行った結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果から、実施例1〜5で得られた青色顔料分散体は、比較例1〜3で得られた青色顔料分散体より、コントラストが高く、また、粘度は低く且つ低粘度が持続され、カラーフィルターの青色画素部として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法であって、
(1)ε型フタロシアニン有機顔料を、顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体中で、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
(2)更に、前記顔料吸着性基と樹脂相溶性鎖を分子内に有する顔料分散剤を含む液状媒体を追加して添加し、メディアの存在下に磨砕及び分散させる工程
を有するカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。
【請求項2】
前記顔料分散剤が、一般式(1)
【化1】

(但し、式中、Yは一般式(2)
【化2】

(ここで、nは4〜100の整数であり、Qは各々独立に水素原子またはメチル基であり、Q’は炭素数1〜6のアルキル基である。)
を表し、a、b、cおよびdは、各々独立に0〜2の整数を表すが、そのうち少なくとも一つは1である。)
で表される銅フタロシアニンスルファモイル化合物である請求項1に記載のカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
前記ε型フタロシアニン有機顔料が、ε型銅フタロシアニンである請求項1または2に記載のカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
前記液状媒体を追加して添加する工程において、ε型フタロシアニン有機顔料100部に対して、液状媒体中の顔料分散剤の少なくとも1部を1回以上添加し、添加後の液状媒体中の顔料分散剤の総量が20部乃至200部である請求項1乃至3に記載のカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
メディアが、粒子径0.03〜0.1mmのビーズである請求項1乃至4のいずれかに記載のカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載のカラーフィルター用青色顔料分散体の製造方法により得られるカラーフィルター用青色顔料分散体を青色画素部に用いてなるカラーフィルター。

【公開番号】特開2009−91480(P2009−91480A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264329(P2007−264329)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】