説明

カラーフィルタ及びその製造方法

【課題】 光漏れによる欠陥を十分抑制することが可能なカラーフィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 カラーフィルタの製造方法は、露光工程と、現像工程と、各噴射ノズル8bから透明基板100に対して透明基板100上におけるスプレーパターン8eが紡錘形となるように洗浄液を噴射する洗浄工程とを備える。洗浄工程では、洗浄液を各噴射ノズル8bから5〜35MPaの圧力で噴射させ、透明基板100の進行方向と各スプレーパターン8eの長手方向とが成す角度θが45°≦θ≦85°の関係を満たし、透明基板100におけるスプレーパターンの長手方向の長さをAとしたときに、隣り合う2つの噴射ノズル8bにおける透明基板100の進行方向から見たときの各スプレーパターン8e同士の重なる幅Xが(1/4)Asinθ≦X≦(3/5)Asinθの関係を満たすように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板上への感光性樹脂膜の形成、露光及び現像の後、感光性樹脂膜に付着し、あるいは残存した残渣を除去するために、ガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する工程を備えるカラーフィルタの製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、この種のカラーフィルタの製造方法として、残渣の洗浄時に噴射圧力が5〜40kg/cm(約0.49〜3.92MPa)の洗浄液を基板に噴射するカラーフィルタの製造方法が知られている。
【特許文献1】特開平7−211683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来のカラーフィルタの製造方法では、製造されたカラーフィルタに光漏れが生じる場合があった。
【0004】
本発明は、光漏れがなく、品質が極めて良好なカラーフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ところで、遮光剤を含有するネガ型の感光性樹脂膜を露光すると、感光性樹脂膜の表面ほど光の吸収量が大きく光硬化反応が進むが、感光性樹脂膜の表面から離れた深層部ほど光の吸収量が小さく感光性不良が起こりやすく、深層部での重合が進行しない。そのため、現像後の感光性樹脂膜の表面側の縁部分において庇部が生じてしまう。このような庇部が残存すると、この感光性樹脂によってブラックマトリクスを形成した場合、その後ブラックマトリクスを覆うように形成される他の感光性樹脂膜がブラックマトリクスの開口部分に十分入り込まずに遮られてしまい、カラーフィルタを製造したときに光漏れが生じてしまうこととなる。
【0006】
そこで、本発明者等は、光漏れがなく、品質が極めて良好なカラーフィルタ及びその製造方法について、鋭意研究を行った。その結果、遮光剤を含有する感光性樹脂膜に生じる庇部を良好に剥離することのできる最適な洗浄液の噴射圧力及び噴射ノズルの配置について見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かかる研究結果を踏まえ、本発明に係るカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された遮光剤を含有する感光性樹脂膜の所定部分を露光する露光工程と、感光性樹脂膜のうち露光部分以外の部分を除去する現像工程と、複数の噴射ノズルから基板に対して基板上における各スプレーパターンが紡錘形となるように洗浄液を噴射して、感光性樹脂膜を洗浄する洗浄工程とを備え、洗浄工程では、洗浄液を各噴射ノズルから5〜35MPaの圧力で基板に噴射させ、基板の進行方向と各スプレーパターンの長手方向とが成す角度θが45°≦θ≦85°の関係を満たし、基板における各スプレーパターンの長手方向の長さをAとしたときに、隣り合う2つの噴射ノズルにおける基板の進行方向から見たときの各スプレーパターン同士の重なる幅Xがそれぞれ(1/4)Asinθ≦X≦(3/5)Asinθの関係を満たすものである。
【0008】
本発明に係るカラーフィルタの製造方法では、このように、洗浄液の噴射圧力を従来の洗浄液の噴射圧力(約0.49〜3.92MPa)と比べて極めて高く設定しており、更に基板におけるスプレーパターンの長手方向の長さAに応じて基板の進行方向から見たときの隣り合うスプレーパターン同士が重なる幅Xをそれぞれ所定の範囲に設定している。そのため、現像後の感光性樹脂膜に生じる庇部が基板上の略全面においてムラなく削り取られ、残存することがほとんどなくなる。その結果、後に形成される感光性樹脂膜が庇部によって遮られることがなくなるから、カラーフィルタにおける光漏れがなくなり、品質が極めて良好なカラーフィルタを製造することが可能となる。
【0009】
ここで、洗浄液を各噴射ノズルから5〜20MPaの圧力で基板に噴射させることが好ましく、洗浄液を各噴射ノズルから5〜15MPaの圧力で基板に噴射させることがより好ましい。このようにすると、感光性樹脂膜の庇部をより容易に除去することが可能となる。
【0010】
また、洗浄液の液滴の平均直径が5〜20μmであると好ましい。このようにすると、洗浄効果の向上に伴い、感光性樹脂膜の庇部を更により容易に除去することが可能となる。
【0011】
また、洗浄液が純水であることが好ましい。このようにすると、界面活性剤を含む洗浄液と比較して配管内において気泡が生じにくい。
【0012】
また、非スピン式スリットコーターダイを用いて感光性樹脂を形成する工程を更に備えることが好ましい。従来は、基板を回転させて感光性樹脂膜を基板上に形成していたために、基板の回転によって多量の感光性樹脂が廃棄されてコストがかかると共に、大型の基板については回転させることができないという制約があったが、非スピン式スリットコーターダイでは基板を回転させないため、基板の大きさにかかわらず感光性樹脂を基板上に均一に塗布することができる。その結果、カラーフィルタの大型化を図ることが可能となると共に、感光性樹脂の使用量を必要最小限に抑えられるのでコストをより低減することが可能となる。
【0013】
また、基板における各スプレーパターンの長手方向の長さAが、50mm≦A≦300mmの関係を満たすことが好ましい。長さAが50mm未満であると、重なる幅Xとの関係から隣り合う噴射ノズル同士の設置間隔が小さくなり、噴射ノズルの設置数が増加して、設置コストが増加することがあり、長さAが300mmを超えると、特にスプレーパターンの中央部分とスプレーパターンの長手方向の両端部分とにおいて洗浄液の噴射圧力にばらつきが生じ、洗浄が不均一に行われることで洗浄効果が低下してしまうことがあるが、このように長さAを設定することでコストの低減及び洗浄効果の向上を図ることが可能となる。
【0014】
一方、本発明に係るカラーフィルタは、上記のいずれかの方法により製造されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光漏れによる欠陥を十分抑制することが可能なカラーフィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
(カラーフィルタ)
図1を参照して、本発明の実施形態に係るカラーフィルタCFの構成について説明する。図1は、本実施形態に係るカラーフィルタを模式的に示す縦断面図である。カラーフィルタCFは、透明基板(基板)100と、透明基板100上に格子状(マトリクス状)に形成された遮光層104と、透明基板100上に並んで配置された複数の着色樹脂領域102R,102G,102Bとを備える。カラーフィルタCFは、例えば、TFT液晶ディスプレイといった液晶表示装置に好適に用いられる。透明基板100としては、例えば、無機ガラス類(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミケイ酸塩ガラス、表面がシリカコートされたソーダライムガラス等)、人工石英ガラス等の透明なリジット材、透明樹脂フィルム、透明樹脂シート、光学用透明樹脂板等のフレキシブル材を用いることができる。
【0018】
遮光層104は、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、ペリレン化合物、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)に記されたC.I.アシッドブラック51、C.I.アシッドブラック52、C.I.ベイシックブラック2、C.I.ソルベントブラック123等の化合物といった有機顔料や、チタンブラック、マグネタイトといった無機顔料等の遮光剤を含有した感光性樹脂の硬化物から構成されている。遮光層104は、隣り合う各着色樹脂領域102R,102G,102Bを分離するようにマトリクス状に形成されており、ブラックマトリクスとして機能する。図1に示される遮光層104には、図3に示される感光性樹脂膜200の庇部200a(詳しくは後述する)が残存していないため、遮光層104の縦断面形状が、上底が短く下底が長い略台形状(以下、順テーパ形状という)となっている。そのため、マトリクス状に配置された遮光層104における複数の開口に、着色樹脂領域102R,102G,102Bが確実に埋め込まれるようになっている。よって、着色樹脂領域102R,102G,102Bを透過する光が遮光層104によって分離され、光漏れの発生が極めて抑制される。
【0019】
(感光性樹脂)
ここで、上記遮光層104の形成に用いられる感光性樹脂について説明する。ここでは、ネガ型の感光性樹脂が利用される。
【0020】
ネガ型感光性樹脂は、光の照射部分が現像液に対して不溶化し残存するものである。ネガ型感光性樹脂は、遮光層104のエッチングパターンを形成するために使用される。ネガ型感光性樹脂は、X線、紫外線、可視光又は赤外線を含むエネルギー線により重合するエネルギー線重合性組成物から構成されていることが好ましい。エネルギー線重合性組成物は、エネルギー線を吸収してラジカルを発生するエネルギー線重合開始剤、ラジカルにより重合が誘起される付加重合性のエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物(エチレン性化合物)、結合剤、溶剤及び分散剤等の添加物を含む。なお、遮光層104の形成の際には、エネルギー線重合性組成物に上述した遮光剤が配合される。
【0021】
(エネルギー線重合開始剤)
エネルギー線重合開始剤としては、例えば、エネルギー線としての紫外線を吸収してラジカルを発生する紫外線感応型の重合開始剤、エネルギー線としての可視光を吸収してラジカルを発生する可視光感応型の重合開始剤等が挙げられる。紫外線感応型の重合開始剤としては、例えば、ジアルキルアセトフェノン系、ベンジルジアルキルケタール系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系、チオモサントン誘導体、アルシホスフィンオキサイド系、ヘキサアリールビイミダゾール系、s−トリハロメチルトリアジン系等の重合開始剤が挙げられる。
【0022】
(エチレン性化合物)
エチレン性化合物は、例えば、単量体、二量体、三量体、オリゴマー、又は、側鎖若しくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体のいずれでもよい。具体的には、例えば、不飽和カルボン酸、エステル等が挙げられる。エステルとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、多価ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸及び多価カルボン酸とのエステル等が挙げられる。多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、脂肪族ピロヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0023】
(結合剤)
結合剤としては、例えば、メチル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、酢酸ビニル等の酸ビニル、アクリルニトリル等の有機物質が挙げられる。結合剤は、透明基板100との接着性の観点から、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリル酸、メトキシフェニル(メタ)アクリル酸、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルスルホアミド等のフェニル基を有する共重合モノマーと、(メタ)アクリル酸との共重合体を含有することが好ましい。フェニル基を有する共重合モノマーは、結合剤の全量に対して、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜70モル%、特に好ましくは30〜60モル%の割合で含有される。(メタ)アクリル酸は、結合剤の全量に対して、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは5〜30質量%の割合で含有される。なお、結合剤は、全共重合モノマーに対して2〜50モル%、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは10〜30モル%のエポキシ(メタ)アクリレートが付加された化合物と、(メタ)アクリル酸との共重合体を含有するとしてもよい。
【0024】
(溶剤)
エネルギー線重合性組成物を溶解するための溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、テトラハイドロフラン等が挙げられる。この溶剤にエネルギー線重合性組成物を溶解させると、透明基板100上に塗布したときに感光性樹脂膜200となるレジスト溶液を得ることができる。
【0025】
再び図1を参照して、本実施形態では、透明基板100上に着色樹脂領域102R,102G,102Bが設けられている。着色樹脂領域102R,102G,102Bは、光透過性を有しており、光学フィルタとして機能する。着色樹脂領域102R,102G,102Bは、例えば、顔料等の着色剤を含有した感光性樹脂から構成されており、公知の顔料分散法、印刷法、インクジェット法、転写法、染色法等を用いることにより形成可能である。感光性樹脂の材料としては、遮光剤を含有していないこと以外は、上述した遮光層104を構成する感光性樹脂と同様とすることができる。顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、緑色顔料等が好適に用いられる。本実施形態において、着色樹脂領域102Rは例えば赤色顔料と樹脂とからなり、着色樹脂領域102Gは例えば緑色顔料と樹脂とからなり、着色樹脂領域102Bは例えば青色顔料と樹脂とからなる。また、顔料としては、有機および無機顔料を用いることができ、具体的には、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)でピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられる。そのような化合物としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント、C.I.ピグメントバイオレット23:19等のバイオレット系ピグメント、C.I.ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント等が例示される。
【0026】
透明基板100上には、遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bを覆うように保護層106及び透明電極層108が順に設けられている。この保護層106は、カラーフィルタCFの使用中に遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bが溶出することを防ぐと共に、遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bにおける段差(ギャップ)を小さくすることで、液晶の駆動スピードを均一化する目的等で設けられている。保護層106は、例えば、酸素遮断性を有する樹脂から構成されている。そのような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、アクリレート系コポリマー等に、スチリルピリジウム基、スチルバゾール塩等をペンダント化させた樹脂等が挙げられる。
【0027】
透明電極層108は、液晶を駆動するためのものである。透明電極層108は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、又はこれらの合金等から構成されている。
【0028】
また、カラーフィルタCFは、透明基板100上に設けられたスペーサ110を備える。本実施形態では、複数のスペーサ110が透明電極層108上に設けられている。スペーサ110は遮光層104の上方に配置されることが好ましい。これにより、スペーサ110が遮光性を有する場合であっても、着色樹脂領域102R,102G,102Bを透過する光がスペーサ110によって遮られない。スペーサ110は、カラーフィルタCFと対向基板(図示せず)とを貼り合わせる時に対向基板に接触して、透明電極層108と対向基板との間に液晶が充填される空間を提供すると共に、カラーフィルタCFと対向基板とのギャップを制御する。なお、スペーサ110の材料も、上述した遮光層104を構成する感光性樹脂と同様とすることができる。
【0029】
(カラーフィルタの製造システムの構成)
図2を参照して、本発明の実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を実施するための製造システム1の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を実施するための製造システムの概要を示す図である。
【0030】
製造システム1は、主として、レジスト成膜装置2、露光装置4、現像装置6及び洗浄装置8により構成されている。
【0031】
(レジスト成膜装置)
レジスト成膜装置2は、透明基板100上に遮光剤を含む感光性樹脂膜(フォトレジスト)200を形成するための装置である。このレジスト成膜装置2としては、非スピン式スリットコーターダイを用いると好ましい。透明基板100が大きなものであっても、透明基板100上に均一に感光性樹脂を塗布することができるためである。
【0032】
(露光装置)
露光装置4は、透明基板100上に形成された感光性樹脂膜200に対して、所定の光のパターンを投影する装置である。露光装置4としては、例えば、コンタクト露光、プロキシミティー露光、ミラープロジェクト露光等を行うことのできる装置を利用することができる。また、露光装置4の光源としては、特に限定されないが、g線、h線又はi線であると好ましく、g線、h線又はi線とi線以下の波長の光との混合光であるとより好ましい。
【0033】
(現像装置)
現像装置6は、感光性樹脂膜200を現像してパターニングを行う装置である。現像装置6としては、公知の種々の現像装置を用いることができる。例えば、感光性樹脂膜200はネガ型であるから、この現像装置6により感光性樹脂膜200のうち露光装置4で露光されていない部分が除去されて感光性樹脂膜200の現像(パターニング)が完了する。このとき、感光性樹脂膜200には、その表面側の縁部分において庇部200aが生じる(図3参照)。これは、遮光剤を含む感光性樹脂膜200が露光装置4によって露光される際、感光性樹脂膜200の表面ほど光の吸収量が大きく光硬化反応が進むが、感光性樹脂膜200の表面から離れた深層部ほど光の吸収量が小さく感光性不良が起こりやすく、深層部での重合が進行しないためである。
【0034】
(洗浄装置)
洗浄装置8は、パターニングされた感光性樹脂膜200に対して洗浄液を噴射し、透明基板100及び感光性樹脂膜200に残存した残渣や、感光性樹脂膜200に生じた庇部200aを除去するためのものである。図2及び図4〜図7を参照して、洗浄装置8の構成について説明する。図4は、洗浄装置の概略斜視図である。図5は、洗浄装置の上面図である。図6は、洗浄装置を透明基板の搬送方向から見た洗浄装置の側面図である。
【0035】
洗浄装置8は、配管8aと、図示しない搬送部と、複数の噴射ノズル8bとを備えている。
【0036】
配管8aは、タンク8cからポンプ8dによって加圧された洗浄液(本実施形態では、純水)を各噴射ノズル8bに供給する(図2参照)。搬送部は、この搬送部に載置された透明基板100を、配管8aと交差する方向(図4及び図5に示される矢印a方向)に搬送する。
【0037】
各噴射ノズル8bは、配管8aに一列に配置されるように接続されており、配管8aから供給された洗浄液を透明基板100に対して噴射する。各噴射ノズル8bから噴射される洗浄液は、そのスプレーパターン8eが透明基板100上においてそれぞれ略紡錘状となっている。各噴射ノズル8bは、透明基板100の進行方向と洗浄液の透明基板100上におけるスプレーパターン8eの長手方向とが成す角度θが45°〜85°となるように設置されている(図4及び図5参照)。
【0038】
また、隣り合う2つの噴射ノズル8bにおける透明基板100の進行方向から見たときの各スプレーパターン8e同士が重なる幅X(図5及び図6参照)は、それぞれ(1/4)Asinθ≦X≦(3/5)Asinθの関係を満たすように設定されている。ここで、θは、透明基板100の進行方向(図3及び図4に示される矢印a方向)と各噴射ノズル8bから噴射される透明基板100上における洗浄液のスプレーパターン8eの長手方向とが成す角度である。重なる幅Xが(1/4)Asinθ未満である場合には、隣り合う各噴射ノズル8bが離れすぎることとなるために、洗浄液が噴射されない部分や洗浄液の圧力が極めて低くなってしまう部分が生じ、感光性樹脂膜200に形成された庇部200aが剥離されない部分が残り、パターニングされた感光性樹脂膜200の幅が不均一となる傾向があるためである。また、重なる幅Xが(3/5)Asinθを超える場合には、各噴射ノズル8bが密に配置されすぎるために感光性樹脂膜200に対して洗浄液が強く当たりすぎる部分が生じ、感光性樹脂膜200の庇部200aだけでなく感光性樹脂膜200自体も削り取られてしまい、パターニングされた感光性樹脂膜200の幅が不均一となる傾向があるためである。なお、重なる幅Xは、それぞれ(1/3)Asinθ≦X≦(1/2)Asinθの関係を満たすように設定されているとより好ましい。
【0039】
各噴射ノズル8bから洗浄液を噴射する際の洗浄液の噴射圧力は、5〜35MPaに設定されている。洗浄液の噴射圧力が5MPa未満の場合には、従来の洗浄液の噴射圧力(約0.49〜3.92MPa)とそれほど変わらなくなってしまい、感光性樹脂膜200の庇部200aを除去し難い。また、洗浄液の噴射圧力が35MPaを超える場合には、圧力が高くなりすぎてしまい、感光性樹脂膜200の庇部200aが剥離されるだけでなく、感光性樹脂膜200自体が削り取られてしまう。なお、この洗浄液の噴射圧力は、5〜20MPaであるとより好ましく、5〜15MPaであると更により好ましい。
【0040】
各噴射ノズル8bから噴射される洗浄液の液滴は、その平均直径が5〜20μmに設定されていることが好ましい。液滴の平均直径が5μm未満の場合には、液滴が極めて小さいので、感光性樹脂膜200の庇部200aの除去が十分行われない傾向があるためである。また、液滴の平均直径が20μmを超える場合には、液滴が大きいので、感光性樹脂膜200の庇部200aだけでなく感光性樹脂膜200自体が削り取られてしまう傾向があるためである。なお、この液滴の平均直径は、8〜15μmであるとより好ましい。
【0041】
各噴射ノズル8bから噴射される洗浄液の透明基板100における各スプレーパターン8eの長手方向の長さA(図5参照)は、50mm≦A≦300mmの関係を満たすように設定されていることが好ましい。長さAが50mm未満である場合には、隣り合う2つの噴射ノズル8bにおける透明基板100の進行方向から見たときの各スプレーパターン8e同士が重なる幅X(詳しくは後述する)との関係から、隣り合う噴射ノズル8b同士の設置間隔が小さくなり、噴射ノズル8bの設置数が増加して設置コストが増加する傾向があるためである。また、長さAが300mmを超える場合には、スプレーパターン8eが大きくなりすぎ、透明基板100上におけるスプレーパターン8eの中央部分とスプレーパターン8eの長手方向の両端部分とにおいて洗浄液の噴射圧力にばらつきが生じ、感光性樹脂膜200に形成された庇部200aが剥離されない部分が残る傾向があるためである。なお、この長さAは、50mm≦A≦250mmの関係を満たすように設定されているとより好ましい。
【0042】
なお、本実施形態では、透明基板100の進行方向(図4及び図5に示される矢印a方向)と各噴射ノズル8bから噴射される洗浄液のスプレーパターン8eの長手方向とが成す角度θ(図4参照)は、45°以上で且つ85°以下に設定されている。また、図5に示されるように、各噴射ノズル8bの噴射口の透明基板100からの高さhは、例えば80mm〜150mm程度とすることができる。さらに、図6に示されるように、各噴射ノズル8bから噴射される洗浄液の噴角αは、tan(α/2)=(A/2)/hを満たす値となる。
【0043】
(カラーフィルタの製造方法)
続いて、カラーフィルタCFを上述したカラーフィルタの製造システム1により製造する方法について説明する。
【0044】
まず、透明基板100上に遮光層104を形成する。具体的には、レジスト成膜装置2である非スピン式スリットコーターダイを用いて、透明基板100上に上述の遮光剤が配合された感光性樹脂膜200を塗布する。そして、露光装置4を用いて、感光性樹脂膜200の露光を行い、現像装置6を用いて、感光性樹脂膜200のうち露光されなかった部分を除去することにより感光性樹脂膜200の現像を行う。さらに、洗浄装置8を用いて、現像された感光性樹脂膜200に対して洗浄液を噴射し、透明基板100上及び感光性樹脂膜200上に残存した残渣や、感光性樹脂膜200の庇部200aを除去して、遮光層104を形成する(図1参照)。そして、カラーフィルタCFの使用中における変形等を防ぎ、遮光層104を図1に示されるような順テーパ形状とするために、パターニングされた遮光増104のポストベークを行う。
【0045】
続いて、マトリクス状に配置された遮光層104の複数の開口に埋め込むように各着色樹脂領域102R,102G,102Bをそれぞれ形成する。これらの各着色樹脂領域102R,102G,102Bについても、レジスト成膜装置2、露光装置4、現像装置6及び洗浄装置8を用いて、遮光層104と同様の手順でそれぞれ形成されることとなる。なお、ここでは、上述の着色剤を含有した感光性樹脂が用いられる。
【0046】
続いて、遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bを覆うように、透明基板100上に保護層106を形成する。
【0047】
続いて、保護層106上に透明電極層108を必要に応じて形成する。透明電極層108は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、コーティング法等の成膜方法を用いて形成される。
【0048】
続いて、透明電極層108上にスペーサ110を形成することで、カラーフィルタCFが製造される。このスペーサ110についても、レジスト成膜装置2、露光装置4、現像装置6及び洗浄装置8を用いて、遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bと同様の手順で形成されることとなる。
【0049】
以上のように、本実施形態では、洗浄液の噴射圧力を従来の洗浄液の噴射圧力(約0.49〜3.92MPa)と比べて極めて高く(5〜35MPa)設定しており、隣り合う2つの噴射ノズル8bにおける透明基板100の進行方向から見たときのスプレーパターン8e同士が重なる幅Xをそれぞれ所定の範囲に設定している。そのため、遮光層104となる感光性樹脂膜200に生じる庇部200aが基板上の略全面においてムラなく削り取られ、残存することがほとんどなくなる。その結果、後に形成される各着色樹脂領域102R,102G,102Bとなる感光性樹脂膜が庇部200aによって遮られることがなくなるから、カラーフィルタCFにおける光漏れがなくなり、品質が極めて良好なカラーフィルタCFを製造することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、洗浄液の液滴の平均直径を5〜20μmに設定している。そのため、洗浄効果を向上に伴い、感光性樹脂膜200の庇部200aを更により容易に除去することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、洗浄液として純水を用いている。そのため、界面活性剤を含む洗浄液と比較して、配管内において気泡が生じにくくなり好ましい。
【0052】
また、本実施形態では、レジスト成膜装置2として、非スピン式スリットコーターダイを用いている。そのため、従来は透明基板100を回転させて感光性樹脂膜を透明基板100上に形成していたために透明基板100の回転によって多量の感光性樹脂が廃棄されてコストがかかると共に、大型の透明基板100については回転させることができないという制約があったが、非スピン式スリットコーターダイでは透明基板100を回転させないため、透明基板100の大きさにかかわらず感光性樹脂を透明基板100上に均一に塗布することができる。その結果、カラーフィルタの大型化を図ることが可能となると共に、感光性樹脂の使用量を必要最小限に抑えられるのでコストをより低減することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、透明基板100における各スプレーパターン8eの長手方向の長さAを、50mm≦A≦300mmの関係を満たすように設定している。長さAが50mm未満であると、重なる幅Xとの関係から、隣り合う噴射ノズル8b同士の設置間隔が小さくなり、噴射ノズル8bの設置数が増加して設置コストが増加することがあり、長さAが300mmを超えると、特にスプレーパターン8eの中央部分とスプレーパターン8eの長手方向の両端部分とにおいて洗浄液の噴射圧力にばらつきが生じ、洗浄が不均一に行われることで洗浄効果が低下してしまうことがあるが、このように長さAを設定することでコストの低減及び洗浄効果の向上を図ることが可能となる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態ではレジスト成膜装置2として非スピン式スリットコーターダイを用いたが、透明基板100の大きさによっては、スピンコート装置、ロールコート装置、ドライフィルムレジスト積層装置等の公知のレジスト成膜装置を利用することができる。スピンコート装置を用いる場合には、感光性樹脂を透明基板100の中央に滴下して、その後透明基板100を回転させることにより透明基板100上に感光性樹脂膜を均一に形成してもよく、感光性樹脂をスリットコーターダイで透明基板100上に塗布し、その後透明基板100を回転させることにより透明基板100上に感光性樹脂膜を均一に形成してもよい。
【0055】
また、本実施形態では洗浄液として純水を用いたが、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤のうち少なくともどちらかを含む洗浄液であってもよい。
【0056】
また、本実施形態では遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102Bを覆うように保護層106を形成したが、保護層106を形成せず、遮光層104及び各着色樹脂領域102R,102G,102B上に透明電極層108を直接形成してもよい。
【0057】
また、本実施形態では遮光層104、各着色樹脂領域102R,102G,102B及びスペーサ110を形成する際に上述の洗浄装置8による洗浄方法を適用したが、遮光層104を形成する際にのみ上述の洗浄装置8による洗浄方法を適用してもよい。
【実施例1】
【0058】
以下、実施例1−1〜1−24及び比較例1−1〜1−2に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、図7は、実施例1−1〜1−24及び比較例1−1〜1−2の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【0059】
(実施例1−1)
縦横が1100mm×1250mm、厚みが0.63mmの透明基板(コーニング社製の1737ガラス基板)100上に、レジスト成膜装置2である非スピン式スリットコーターダイ(東京応化工業(株)製TR63240S−CPD−CLT)を用いて、厚みが1.5μmとなるように遮光剤を含有するアクリル系の感光性樹脂(東京応化工業(株)製CFPR−BK8000型)を均一に塗布し、感光性樹脂膜200を形成した。90℃で100秒間、その感光性樹脂膜200を予備乾燥した後、露光装置4であるプロキシミティー露光装置(日立電子社製プロキシミティー露光装置LE9100S型)を用いて、マスクを介して感光性樹脂膜200に光を照射した。露光量は100mJ/cmとした。
【0060】
続いて、現像装置6により、露光された感光性樹脂膜200を、23℃の0.1%KOH水溶液を用いて60秒間現像処理した。続いて、洗浄装置8により、各噴射ノズル8bから液滴の平均直径が10μmの純水を10MPaの圧力で、現像された感光性樹脂膜200に対して60秒間噴射した。このとき、スプレーパターン8eの長手方向の長さAはそれぞれ153.4mm、透明基板100の進行方向から見て隣り合うスプレーパターン8e同士が重なる幅Xはそれぞれ68.17mm(0.46Asinθ)、角度θは75°、各噴射ノズル8bの噴射口の透明基板100からの高さhは100mm、噴角αは75°であった。そして、この感光性樹脂膜200を乾燥した後、230℃で40分間ポストベーキングすることで、透明基板100上にブラックマトリクスとして機能する遮光層104を形成した。その後、透明基板100及び遮光層104上に各着色樹脂領域102R,102G,102B、保護層106、透明電極108及びスペーサ110を順次形成して、カラーフィルタCFを得た。なお、各着色樹脂領域102R,102G,102B及びスペーサ110を作成する際は、従来と同様に低い圧力(例えば、1.5MPa程度)でこれらの洗浄を行った。また、実施例1−1及び後述する実施例や比較例における各スプレーパターン8eの長手方向の長さAは、±2mm程度の誤差を有するものとなっている。
【0061】
(実施例1−2〜1−6)
長さAを50mmとして、実施例1−2〜1−6の順に重なる幅Xをそれぞれ28.3mm(0.59Asinθ)、25.3mm(0.52Asinθ)、18.3mm(0.38Asinθ)、15.3mm(0.32Asinθ)、13.3mm(0.28Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−2〜1−6のカラーフィルタCFを得た。
【0062】
(実施例1−7〜1−1−11)
長さAを150mmとして、実施例1−7〜1−11の順に重なる幅Xを84.9mm(0.59Asinθ)、74.9mm(0.52Asinθ)、59.9mm(0.41Asinθ)、44.9mm(0.31Asinθ)、39.9mm(0.28Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−7〜1−11のカラーフィルタCFを得た。
【0063】
(実施例1−12〜1−16)
長さAを250mmとして、実施例1−12〜1−16の順に重なる幅Xを141.5mm(0.59Asinθ)、126.5mm(0.52Asinθ)、106.5mm(0.44Asinθ)、76.5mm(0.32Asinθ)、66.5mm(0.28Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−12〜1−16のカラーフィルタCFを得た。
【0064】
(実施例1−17〜1−21)
長さAを300mmとして、実施例1−17〜1−21の順に重なる幅Xを169.8mm(0.59Asinθ)、154.8mm(0.53Asinθ)、124.8mm(0.43Asinθ)、89.8mm(0.31Asinθ)、79.8mm(0.28Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−17〜1−21のカラーフィルタCFを得た。
【0065】
(実施例1−22)
長さAを160mm、重なる幅Xを54.5mm(0.35Asinθ)と74.5mm(0.48Asinθ)との繰り返しとなるように設定して感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−22のカラーフィルタCFを得た。
【0066】
(実施例1−23)
長さAを350mm、重なる幅Xを163.1mm(0.48Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−23のカラーフィルタCFを得た。
【0067】
(実施例1−24)
長さAを30mm、重なる幅Xを14.0mm(0.48Asinθ)として感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−24のカラーフィルタCFを得た。
【0068】
(比較例1−1)
長さAを150mm、重なる幅Xを24.9mm(0.17Asinθ)として感光性樹脂膜の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−1のカラーフィルタを得た。
【0069】
(比較例1−2)
長さAを150mm、重なる幅Xを94.9mm(0.65Asinθ)として感光性樹脂膜の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−2のカラーフィルタを得た。
【0070】
(評価結果)
実施例1−1〜1−24のカラーフィルタCFをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、実施例1−1〜1−24のカラーフィルタCFには残渣や異物が残っていなかった。また、実施例1−1〜1−24のカラーフィルタCFでは、図7に示されるように、遮光層104の縦断面形状が「庇部無し」、「庇部は無いが、角部が若干削り取られている」又は「僅かに庇部が残っている」状態であり、遮光層104のパターニング状態が「幅が均一」、「幅がほぼ均一」又は「幅がほぼ均一で、やや細い」状態であった。以上より、実施例1−1〜1−24におけるカラーフィルタCFの品質の評価結果としては、「A:極めて良好」又は「B:ほぼ良好」のいずれかであった。
【0071】
一方、比較例1−1〜1−2のカラーフィルタをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、比較例1−1〜1−2のカラーフィルタには複数箇所において残渣が残っていた。また、比較例1−1〜1−2のカラーフィルタでは、図7に示されるように、遮光層の縦断面形状が「かなり庇部が残っている」又は「庇部は無いが、角部や底部が激しく削り取られている」状態であり、遮光層のパターニング状態が「幅が不均一」であった。以上より、カラーフィルタの品質の評価結果としては、「C:問題あり」であった。
【0072】
また、実施例1−1〜1−24のカラーフィルタCF及び比較例1−1〜1−2のカラーフィルタをそれぞれ用いて、公知の方法で液晶パネルを作成して点灯表示し、光漏れの状態を目視により観察した。その結果、実施例1−1〜1−24のカラーフィルタCFを用いた液晶パネルでは、いずれも光漏れが観察されなかった。一方、比較例1−1〜1−2のカラーフィルタを用いた液晶パネルでは、特にカラーフィルタの遮光層に庇部が残っている部分において、光漏れが観察された。
【実施例2】
【0073】
続いて、実施例2−1〜2−3に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、図8は、実施例2−1〜2−3の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【0074】
(実施例2−1)
実施例1−1と同じ条件で、縦横が1100mm×1300mm、厚みが0.63mmの透明基板(コーニング社製の1737ガラス基板)100上にブラックマトリクスとして機能する遮光層104を形成した。その後、透明基板100及び遮光層104上に、レジスト成膜装置2である非スピン式スリットコーターダイ(東京応化工業(株)製TR63240S−CPD−CLT)を用いて、厚みが2.1μmとなるように青色の着色剤を含有する感光性樹脂(住友化学(株)製YB−14)を均一に塗布し、感光性樹脂膜(以下、青色感光性樹脂膜という)を形成した。90℃で100秒間、青色感光性樹脂膜を予備乾燥した後、露光装置4であるプロキシミティー露光装置(日立電子社製プロキシミティー露光装置LE9100S型)を用いて、マスクを介して青色感光性樹脂膜に光を照射した。露光量は100mJ/cmとした。
【0075】
続いて、現像装置6により、露光された青色感光性樹脂膜を23℃の0.1%KOH水溶液を用いて60秒間現像処理した。続いて、透明基板100及び青色感光性樹脂膜上に、レジスト成膜装置2を用いて、厚みが2.2μmとなるように緑色の着色剤を含有する感光性樹脂(住友化学(株)製YG−13)を均一に塗布し、感光性樹脂膜(以下、緑色感光性樹脂膜という)を形成し、青色感光性樹脂膜と同様に現像処理した。さらに、透明基板100、青色及び緑色感光性樹脂膜上に、レジスト成膜装置2を用いて、厚みが2.1μmとなるように赤色の着色剤を含有する感光性樹脂(住友化学(株)製YR−14)を均一に塗布し、感光性樹脂膜(以下、赤色感光性樹脂膜という)を形成し、青色感光性樹脂膜と同様に現像処理した。そして、洗浄装置8により、各噴射ノズル8bから液滴の平均直径が10μmの純水を10MPaの圧力で、現像された青色感光性樹脂膜に対して60秒間噴射した。このとき、スプレーパターン8eの長手方向の長さAは160mm、重なる幅Xは74.5mm(0.48Asinθ)、角度θは75°、各噴射ノズル8bの噴射口の透明基板100からの高さhは100mm、噴角αは75°であった。そして、青色、緑色及び赤色感光性樹脂膜を乾燥した後、220℃で40分間ポストベーキングすることで、透明基板100及び遮光層104上に各着色樹脂領域102B,102G,102Rを形成した。
【0076】
(実施例2−2)
着色樹脂領域102Bとなる感光性樹脂(住友化学(株)製MY−B342)の厚みが1.7μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布され、着色樹脂領域102Gとなる感光性樹脂(住友化学(株)製YX−G512)の厚みが1.9μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布され、着色樹脂領域102Rとなる感光性樹脂(住友化学(株)製MY−R302)の厚みが1.8μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布される以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−2のカラーフィルタCFを得た。
【0077】
(実施例2−3)
着色樹脂領域102Bとなる感光性樹脂(住友化学(株)製YF−B016)の厚みが1.9μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布され、着色樹脂領域102Gとなる感光性樹脂(住友化学(株)製YF−G022)の厚みが1.8μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布され、着色樹脂領域102Rとなる感光性樹脂(住友化学(株)製YF−R017D)の厚みが1.8μmとなるようにレジスト成膜装置2を用いて塗布される以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−3のカラーフィルタCFを得た。
【0078】
(評価結果)
実施例2−1〜2−3のカラーフィルタCFをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、実施例2−1〜2−3のカラーフィルタCFには残渣や異物が残っていなかった。また、実施例2−1〜2−3のカラーフィルタCFでは、いずれの着色樹脂領域102B,102G,102Rにおいても、その縦断面形状が「庇部無し」の状態で、パターニング状態が「幅が均一」な状態であった。また、実施例2−1〜2−3のカラーフィルタCFをそれぞれ用いて、公知の方法で液晶パネルを作成して点灯表示し、光漏れの状態を目視により観察した。その結果、実施例2−1〜2−3のカラーフィルタCFを用いた液晶パネルでは、いずれも光漏れが観察されなかった。
【実施例3】
【0079】
続いて、実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−3に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、図9は、実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−3の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【0080】
(実施例3−1)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を5MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例3−1のカラーフィルタCFを得た。
【0081】
(実施例3−2)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を15MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例3−2のカラーフィルタCFを得た。
【0082】
(実施例3−3)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を20MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例3−3のカラーフィルタCFを得た。
【0083】
(実施例3−4)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を30MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして実施例3−4のカラーフィルタCFを得た。
【0084】
(比較例3−1)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を1.5MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして比較例3−1のカラーフィルタを得た。
【0085】
(比較例3−2)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を3MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして比較例3−2のカラーフィルタを得た。
【0086】
(比較例3−3)
各噴射ノズル8bから噴射する純水の圧力を40MPaとして感光性樹脂膜200の洗浄を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして比較例3−3のカラーフィルタを得た。
【0087】
(評価結果)
実施例3−1〜3−4のカラーフィルタCFをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、実施例3−1〜3−4のカラーフィルタCFには残渣や異物が残っていなかった。また、実施例3−1〜3−4のカラーフィルタCFでは、図9に示されるように、遮光層104の縦断面形状が「庇部無し」又は「庇部は無いが、角部が若干削り取られている」状態であり、遮光層104のパターニング状態が「幅が均一」、「幅がほぼ均一」又は「幅がやや細い」状態であった。以上より、実施例3−1〜3−4におけるカラーフィルタCFの品質の評価結果としては、「A:極めて良好」又は「B:ほぼ良好」であった。
【0088】
一方、比較例3−1〜3−3のカラーフィルタをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、比較例3−1〜3−3のカラーフィルタには複数箇所において残渣が残っていた。また、比較例3−1〜3−3のカラーフィルタでは、図9に示されるように、遮光層の縦断面形状が「かなり庇部が残っている」又は「庇部は無いが、角部や底部が激しく削り取られている」状態であり、遮光層のパターニング状態が「幅が不均一」であった。そして、カラーフィルタの品質の評価結果としては、「C:品質に問題あり」であった。
【0089】
また、実施例3−1〜3−4のカラーフィルタCF及び比較例3−1〜3−3のカラーフィルタをそれぞれ用いて、公知の方法で液晶パネルを作成して点灯表示し、光漏れの状態を目視により観察した。その結果、実施例3−1〜3−4のカラーフィルタCFを用いた液晶パネルでは、いずれも光漏れが観察されなかった。一方、比較例3−1〜3−3のカラーフィルタを用いた液晶パネルでは、光漏れが観察された。
【実施例4】
【0090】
続いて、実施例4−1〜4−3に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、図10は、実施例4−1〜4−3の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【0091】
(実施例4−1)
各噴射ノズル8bから噴射される純水の液滴の平均直径を3μmとして感光性樹脂膜200の洗浄を行った以外は、実施例1−1と同様にして実施例4−1のカラーフィルタCFを得た。
【0092】
(実施例4−2)
各噴射ノズル8bから噴射される純水の液滴の平均直径を20μmとして感光性樹脂膜200の洗浄を行った以外は、実施例1−1と同様にして実施例4−2のカラーフィルタCFを得た。
【0093】
(実施例4−3)
各噴射ノズル8bから噴射される純水の液滴の平均直径を25μmとして感光性樹脂膜200の洗浄を行った以外は、実施例1−1と同様にして実施例4−3のカラーフィルタCFを得た。
【0094】
(評価結果)
実施例4−1〜4−3のカラーフィルタCFをそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果、実施例4−1〜4−3のカラーフィルタCFには残渣や異物が残っていなかった。また、実施例4−1〜4−3のカラーフィルタCFでは、図10に示されるように、遮光層104の縦断面形状が「庇部無し」、「庇部は無いが、角部がやや削り取られている」又は「僅かに庇部が残っている」であり、遮光層104のパターニング状態が「幅が均一」又は「幅がほぼ均一」であった。以上より、実施例4−1〜4−3におけるカラーフィルタCFの品質の評価結果としては、「A:極めて良好」又は「B:ほぼ良好」であった。さらに、実施例4−1〜4−3のカラーフィルタをそれぞれ用いて、公知の方法で液晶パネルを作成して点灯表示し、光漏れの状態を目視により観察した。その結果、実施例4−1〜4−3のカラーフィルタCFを用いた液晶パネルでは、いずれも光漏れが観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係るカラーフィルタを模式的に示す縦断面図である。
【図2】本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を実施するための製造システムの概要を示す図である。
【図3】現像された感光性樹脂の一例を示す縦断面図である。
【図4】洗浄装置の概略斜視図である。
【図5】洗浄装置の上面図である。
【図6】洗浄装置を透明基板の搬送方向から見た洗浄装置の側面図である。
【図7】実施例1−1〜1−24及び比較例1−1〜1−2の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【図8】実施例2−1〜2−3の各実施条件を示す表である。
【図9】実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−3の各実施条件及びその評価結果を示す表である。
【図10】実施例4−1〜4−3の各実施条件を示す表である。
【符号の説明】
【0096】
1…カラーフィルタの製造システム、2…レジスト成膜装置、4…露光装置、6…現像装置、8…洗浄装置、8b…噴射ノズル、8e…スプレーパターン、100…透明基板、102R,102G,102B…着色樹脂領域、104…遮光層、106…保護層、108…透明電極層、110…スペーサ、200…感光性樹脂膜、200a…庇部、CF…カラーフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された遮光剤を含有する感光性樹脂膜の所定部分を露光する露光工程と、
前記感光性樹脂膜のうち露光部分以外の部分を除去する現像工程と、
複数の噴射ノズルから前記基板に対して前記基板上における各スプレーパターンが紡錘形となるように洗浄液を噴射して、前記感光性樹脂膜を洗浄する洗浄工程とを備え、
前記洗浄工程では、
前記洗浄液を前記各噴射ノズルから5〜35MPaの圧力で前記基板に噴射させ、
前記基板の進行方向と前記各スプレーパターンの長手方向とが成す角度θが45°≦θ≦85°の関係を満たし、
前記基板における前記各スプレーパターンの長手方向の長さをAとしたときに、隣り合う2つの前記噴射ノズルにおける前記基板の進行方向から見たときの前記各スプレーパターン同士の重なる幅Xがそれぞれ(1/4)Asinθ≦X≦(3/5)Asinθの関係を満たすカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄液を前記各噴射ノズルから5〜20MPaの圧力で前記基板に噴射させる請求項1に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記洗浄液を前記各噴射ノズルから5〜15MPaの圧力で前記基板に噴射させる請求項2に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記洗浄液の液滴の平均直径が5〜20μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記洗浄液が純水である請求項1〜4のいずれか一項に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
非スピン式スリットコーターダイを用いて前記感光性樹脂膜を形成する工程を更に備える請求項1〜5のいずれか一項に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記基板における前記各スプレーパターンの長手方向の長さAが、50mm≦A≦300mmの関係を満たす請求項1〜6のいずれか一項に記載されたカラーフィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された方法により製造されたカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−193029(P2007−193029A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10212(P2006−10212)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】