説明

カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物

【課題】本発明は、黄変が少なく、透明性および耐熱性に優れたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも含み、上記バインダ樹脂が、下記(A)〜(C)を共重合させてなる共重合体が有するカルボキシル基に、下記(D)のエポキシ基を反応させてなり、芳香環を含まないものであることを特徴とするカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を提供することにより上記課題を解決するものである。
(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ
(B)単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有する脂環式化合物含有モノマー
(C)カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するカルボキシル基含有モノマー
(D)エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するエポキシ基含有化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄変が少なく、透明性および耐熱性に優れたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタは、透明基板と、上記透明基板上に形成されたブラックマトリクスと、上記ブラックマトリクスの開口部に形成された着色層とを備えるものである。ここで、カラーフィルタにおける着色層は、各色の顔料を含むカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィー法等によりパターン状に形成されることが知られている。具体的には、各色の顔料、バインダ樹脂、多官能性モノマー、および光重合開始剤等を溶剤に分散させたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を透明基板上に塗布し、得られた塗膜を所定のパターン状に露光して硬化させ、アルカリ現像液で現像することによって、パターン状の着色層を形成する方法が用いられる。
【0003】
また、カラーフィルタとしては、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の着色層を有するカラーフィルタが一般的であった。このようなカラーフィルタの色特性としては、近年、特にカラーテレビの用途において、高色再現性、高コントラストおよび高輝度が要求されている。
【0004】
ここで、上記バインダ樹脂としては、一般的には、耐熱性(ポストベーク(加熱)時の形状安定性)に優れることから、芳香環を含む芳香環含有重合体が用いられる。
しかしながら、このような芳香環含有重合体を用いた場合には、ポストベーク時に黄変し、着色層の輝度が低いものとなるといった問題があった。
【0005】
このような問題に対して、黄変が少なく、透明性が高い多環状脂肪族炭化水素基を含有する多環状脂肪族炭化水素基モノマーからなる多環状脂肪族基含有重合体を用いる方法が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、このような多環状脂肪族基含有重合体を用いたとしても、耐熱性および透明性が不十分となる場合があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3887046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、黄変が少なく、透明性および耐熱性に優れたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、多環状脂肪族炭化水素基含有モノマーのなかでも、アダマンタンまたはアダマンタン誘導体を含むアダマンタン含有モノマーをモノマー成分として用い、芳香環を含まないバインダ樹脂を使用することにより、黄変が少なく、透明性および耐熱性に優れたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物とすることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも含み、上記バインダ樹脂が、下記(A)〜(C)を共重合させてなる共重合体が有するカルボキシル基に、下記(D)のエポキシ基を反応させてなり、芳香環を含まないものであることを特徴とするカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を提供する。
【0010】
(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ
(B)単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有する脂環式化合物含有モノマー
(C)カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するカルボキシル基含有モノマー
(D)エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するエポキシ基含有化合物
【0011】
本発明によれば、1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレート(以下、単にアダマンタン含有モノマーとする場合がある。)の少なくとも1つをモノマー成分として含み、芳香環を含まないバインダ樹脂を用いることにより、加熱時の黄変が少なく、かつ、透明性および耐熱性に優れるものとすることができる。
また、上記バインダ樹脂がカルボキシル基含有モノマーに由来するカルボキシル基に、上記エポキシ基含有化合物を反応させてなるものであることにより、上記バインダ樹脂を不飽和二重結合および水酸基を有するものとすることができる。その結果、露光後のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を耐熱性に優れたものとすることができ、さらに、現像性に優れるものとすることができる。
【0012】
本発明においては、上記バインダ樹脂中の(A)〜(D)の割合が、(A)10質量%〜50質量%の範囲内、(B)0質量%〜20質量%の範囲内、(C)10質量%〜60質量%の範囲内、(D)5質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましい。上記バインダ樹脂中の(A)〜(D)の割合が上述した割合であることにより、黄変が少なく耐熱性に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明においては、上記バインダ樹脂の重量平均分子量が、3000〜24000の範囲内であることが好ましい。上記バインダ樹脂の重量平均分子量が、上述した範囲内であることにより、耐熱性および現像性に優れるものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記顔料分散物が青色顔料を含む青色顔料分散物であることが好ましい。上記顔料分散物が青色顔料を含む青色顔料分散物である場合、すなわち青色の着色層の形成に用いられる場合、このような青色着色層に黄変した材料が含まれることにより青色光が吸収され、青色光の輝度が低下するといった問題があった。また、カラーフィルタの青色着色層は、設計上輝度が赤色や緑色着色層よりも低くなるように設定されるのが一般的である。このため、輝度のわずかな低下であっても、カラーフィルタとしての色再現性等の光学特性への影響が大きいものとなる。したがって、上記顔料分散物が青色顔料分散物であることにより、黄変を少ないものとすることができることによる効果をより効果的に発揮することができるからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、黄変が少なく、透明性および耐熱性に優れたカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を提供できるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物について説明する。
本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物は、バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも含み、上記バインダ樹脂が、下記(A)〜(C)を共重合させてなる共重合体が有するカルボキシル基に、下記(D)のエポキシ基を反応させてなり、芳香環を含まないものであることを特徴とするものである。
(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ
(B)単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有する脂環式化合物含有モノマー
(C)カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するカルボキシル基含有モノマー
(D)エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するエポキシ基含有化合物
【0017】
本発明によれば、1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ、すなわちアダマンタン含有モノマーをモノマー成分として含み、芳香環を含まないバインダ樹脂を用いることにより、加熱時の黄変が少なく、かつ、透明性および耐熱性に優れるものとすることができる。また、このように黄変が少なく透明性が高いバインダ樹脂を用いることから、輝度の高い着色層を形成することができる。
ここで、上記バインダ樹脂が、アダマンタン含有モノマーをモノマー成分として用い、さらに芳香環を含まないものであることにより、上述した効果を得られる理由については、以下のように推測される。
【0018】
すなわち、上記アダマンタン含有モノマーに含まれるアダマンタン骨格は、このようなアダマンタン骨格を含まない他の多環状脂肪族よりも融点が高いため、耐熱性が良好となる。また、芳香環のように二重結合(共役系)を含まないため、熱や紫外線による副反応を起こしにくい。
また、芳香環を含まないことにより、上述したような熱や紫外線による副反応を起こしにくいものとすることができる。
このため、上述したようなアダマンタン骨格を含むアダマンタン含有モノマーをモノマー成分として含み、芳香環を含まないバインダ樹脂を用いることにより、上述したような効果が得られるのである。
【0019】
また、上記脂環式化合物含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーをモノマー成分として含むバインダ樹脂を用いることにより、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分との相溶性および現像時の現像性に優れるものとすることができる。
【0020】
さらに、上記バインダ樹脂は、カルボキシル基含有モノマーに由来するカルボキシル基に、上記エポキシ基含有化合物を反応させてなるものである。これにより、上記バインダ樹脂を不飽和二重結合および水酸基を有するものとすることができる。このように上記バインダ樹脂が不飽和二重結合を有することにより、露光時に上記バインダ樹脂間、もしくは、上記バインダ樹脂および多官能性モノマーの間で重合することを可能とし、露光後のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を耐熱性に優れたものとすることができる。また、上記バインダ樹脂を水酸基を有するものとすることができることにより現像性に優れるものとすることができる。
【0021】
本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物は、バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも有するものである。以下、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0022】
1.バインダ樹脂
本発明に用いられるバインダ樹脂は、下記(A)〜(C)を共重合させてなる共重合体が有するカルボキシル基に、下記(D)のエポキシ基を反応させてなり、芳香環を含まないものである。
(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ
(B)単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有する脂環式化合物含有モノマー
(C)カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するカルボキシル基含有モノマー
(D)エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するエポキシ基含有化合物
【0023】
(1)共重合体
本発明における共重合体は、上記(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ、(B)脂環式化合物含有モノマー、および(C)カルボキシル基含有モノマーを共重合させたものであるが、上記各モノマーをランダムに共重合させたものであっても、ブロック共重合体となるように共重合させるものであっても良い。
【0024】
本発明においては、1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートのアダマンタン含有モノマーが上記共重合体のモノマー成分として用いられることにより、上記バインダ樹脂を加熱時の黄変が少なく、かつ、透明性および耐熱性に優れるものとすることができる。
【0025】
このようなアダマンタン含有モノマーとしては、1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートであれば良いが、なかでも本発明においては、1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレートを好ましく用いることができる。上記化合物をアダマンタン含有モノマーとして用いることにより、上記バインダ樹脂を透明性および耐熱性に優れたものとすることができるからである。
【0026】
本発明におけるアダマンタン含有モノマーは、1種類のみからなるものであっても、2種類以上からなるものであっても良い。
【0027】
本発明におけるアダマンタン含有モノマーの含有量としては、上記バインダ樹脂を所望の耐熱性を有するものとすることができれば良く、上記バインダ樹脂中に10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも20質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、透明性および耐熱性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記各モノマー成分の含有量とは、上記バインダ樹脂に占める、上記各モノマーに由来する成分の含有量をいうものである。
【0028】
本発明における脂環式化合物含有モノマーは、単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有するものであり、芳香環を含まないものである。
【0029】
ここで、単環状脂肪族炭化水素基とは、脂肪族環式炭化水素基であり、かつ、単環である官能基である。このような単環状脂肪族炭化水素基は、通常、カラーフィルタの着色層の形成に用いられるカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物に用いられる各成分との相溶性に優れ、さらに、現像液との相溶性にも優れるという性質を有する。
このため、本発明において、上記脂環式化合物含有モノマーが上記共重合体のモノマー成分として用いられることにより、上記バインダ樹脂を本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分との相溶性に優れ、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を現像性に優れるものとすることができるのである。
【0030】
このような脂環式化合物含有モノマーとしては、単環状脂肪族炭化水素基を有し、上記各モノマーと容易に共重合可能なものであれば良いが、具体的には、シクロヘキシル(メタ)クリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)クリレート、3−シクロヘキセニルメチル(メタ)クリレート、4−イソプロピルシクロヘキシル(メタ)クリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、3−メチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、4−メチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、4−エチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、2−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、メンチル(メタ)クリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)クリレート、シクロヘプチル(メタ)クリレート、シクロオクチル(メタ)クリレート、シクロノニル(メタ)クリレートおよびシクロデシル(メタ)クリレート等を挙げることができる。上記脂環式化合物含有モノマーが上記化合物であることにより、上記バインダ樹脂を上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分との相溶性や、現像性に優れたものとすることができるからである。
【0031】
本発明における脂環式化合物含有モノマーは、1種類のみからなるものであっても、2種類以上からなるものであっても良い。
【0032】
本発明における脂環式化合物含有モノマーの含有量としては、上記バインダ樹脂を上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分と所望の相溶性や、現像性を有するものとすることができれば良く、上記バインダ樹脂中に0質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分との相溶性や、現像性に優れたバインダ樹脂とすることができるからである。
【0033】
本発明におけるカルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するものであり、芳香環を含まないものである。
【0034】
本発明において、上記カルボキシル基含有モノマーが上記バインダ樹脂のモノマー成分として用いられることにより、上記バインダ樹脂をカルボキシル基を含むものとすることができる。カルボキシル基を有することにより、上記バインダ樹脂を現像に用いられるアルカリ現像液への溶解性に優れたものとすることができる。また、このようなカルボキシル基を有することにより、上記共重合体への上記エポキシ基含有化合物の導入を容易なものとすることができる。
【0035】
このようなカルボキシル基含有モノマーとしては、カルボキシル基を有し、上記各モノマーと容易に共重合可能なものであれば良いが、具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、(メタ)アクリロイルオキシフタル酸モノエステル等を挙げることができ、なかでも本発明においてはアクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸を好ましく用いることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸を好ましく用いることができる。上記カルボキシル基含有モノマーが上記化合物であることにより、重合および反応の制御を容易に行うことができる。その結果、上記共重合体を精度良く合成することができるからである。
【0036】
本発明におけるカルボキシル基含有モノマーは、1種類のみからなるものであっても、2種類以上からなるものであっても良い。
【0037】
本発明におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量としては、上記バインダ樹脂を所望のアルカリ現像性を有するものとすることができれば良く、上記バインダ樹脂中に10質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも20質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、アルカリ現像性に優れたものとすることができるからである。
【0038】
本発明における共重合体は、上記アダマンタン含有モノマー、脂環式化合物含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーをモノマー成分として合成されるものであるが、必要に応じて、上記各モノマー以外の芳香環を含まないエチレン性不飽和モノマーをモノマー成分として用いるものであっても良い。
【0039】
上記エチレン性不飽和モノマーとしては、上記各モノマーと共重合可能なものであり、芳香環を含まないものであれば良い。このような芳香環を含まないエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)エチルアクリレート等、および、これらのマクロモノマー類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド類等を挙げることができる。
なお、上記エチレン性不飽和モノマーは、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0040】
本発明における共重合体の合成方法としては、上記アダマンタン含有モノマー、脂環式化合物含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが所望の割合で含まれるように共重合させる方法であれば良く、一般的な重合方法を用いることができる。具体的には、上記各モノマーおよび重合開始剤を溶媒に溶解または分散させた後、重合させる方法を挙げることができる。
【0041】
なお、重合開始剤としては、共重合体の合成に一般的に用いられるものを使用することができ、例えば、後述する光重合開始剤を用いることができる。
【0042】
(2)エポキシ基含有化合物
本発明におけるエポキシ基含有化合物は、エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するものであり、上記共重合体が有するカルボキシル基に結合することにより、不飽和二重結合を有するバインダ樹脂を形成するものである。
また、芳香環を含まないものである。
【0043】
このようなエポキシ基含有化合物としては、上記共重合体に効率良く結合することができるものであれば良いが、具体的には、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、および4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができ、なかでも本発明においては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、および(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートを好ましく用いることができ、特に、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートを好ましく用いることができる。カルボキシル基との反応制御を容易に行うことができるからである。
【0044】
本発明におけるエポキシ基含有化合物は、1種類のみからなるものであっても、2種類以上からなるものであっても良い。
【0045】
本発明におけるエポキシ基含有化合物の含有量としては、所望の耐熱性を有するものとすることができれば良く、上記バインダ樹脂中に5質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、耐熱性および現像性に優れたものとすることができるからである。
【0046】
本発明における共重合体のカルボキシル基と上記エポキシ基含有化合物のエポキシ基との反応方法としては、上記共重合体のカルボキシル基と、上記エポキシ基含有化合物のエポキシ基とを精度良く反応させることができる方法であれば良いが、通常、エポキシ基含有化合物用触媒が用いられる。
【0047】
このようなエポキシ基含有化合物用触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルアンモニウムブロマイド、トリフェニルホスフィン、フェノチアジン等を挙げることができる。
【0048】
また、上記反応方法としては、共重合後の上記共重合体を含む溶媒中に上記エポキシ基含有化合物を添加し反応させる方法であっても良く、共重合後の溶媒から上記共重合体を精製した後に、上記共重合体と上記エポキシ基含有化合物とを新たに準備した溶媒中で混合した後に反応させる方法であっても良い。
【0049】
本発明における共重合体のカルボキシル基と上記エポキシ基含有化合物のエポキシ基とを反応させる際の温度等の反応条件については、用いる化合物やエポキシ基含有化合物用触媒等の種類に応じて適宜設定されるものである。
【0050】
(3)バインダ樹脂
本発明に用いられるバインダ樹脂の重量平均分子量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮することができるものであれば良いが、3000〜24000の範囲内であることが好ましく、なかでも4000〜21000の範囲内であることが好ましく、特に6000〜18000の範囲内であることが好ましい。上記重量平均分子量が、上記範囲内であることにより、耐熱性および現像性に優れたものとすることができるからである。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0051】
本発明に用いられるバインダ樹脂の酸価としては、20mgKOH/g〜120mgKOH/gであることが好ましく、なかでも、30mgKOH/g〜100mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。上記酸価が上記範囲内であることにより、現像性に優れたものとすることができるからである。
なお、酸価は上記バインダ樹脂1gあたりの酸価を示し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。
【0052】
本発明に用いられるバインダ樹脂の含有量としては、精度良く着色層を形成することができるものであれば良く、具体的には、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部あたり30重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも35重量部〜45重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲より少ないと、硬化性が不十分となり、良好なパターンを形成できないおそれがあるからである。また、上記範囲より多いと、現像性が悪化し、基板上に現像で洗い落としきれない残渣が発生し、カラーフィルタの品質を低下させるおそれがあるからである。
なお、カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分とは、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物に含まれる溶剤以外の全成分を指すものである。
【0053】
2.顔料分散物
本発明に用いられる顔料分散物は、顔料、顔料分散剤、および分散用樹脂を含むものである。
【0054】
(1)顔料
本発明における顔料分散物に含まれる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。本発明において使用可能な有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
また、用いることができる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。
【0058】
本発明においては、なかでも、上記顔料がピグメントブルー(PB)15,PB15:3,PB15:4,PB15:6,PB60,PB80,ピグメントバイオレット(PV)23等の青色顔料であること、すなわち、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物が青色の着色層の形成に用いられるものであることが好ましく、特に、PB15:6等のフタロシアニン系顔料であることが好ましい。
青色の着色層に含まれる樹脂等が黄変した場合、このような青色着色層に含まれる黄変した材料により青色光が吸収され、青色光の輝度が低下するといった問題があった。また、カラーフィルタの青色着色層は、赤色や緑色の着色層と比較して、設計上輝度が低くなるように設定されるのが一般的であるため、輝度のわずかな低下であっても輝度変化への影響が大きいものとなる。したがって、上記顔料が青色顔料であり、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物が青色着色層の形成に用いるものであることにより、本発明の黄変を少ないものとすることができるとの効果をより効果的に発揮することができるからである。
また、上述したフタロシアニン系顔料は、凝集しやすく、輝度が低いものとなりやすいという特徴がある。このため、このようなフタロシアニン系顔料を用いるものであることにより、本発明の黄変を少なくし、輝度の高いものとすることによる効果をより効果的に発揮することができるからである。
【0059】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば良く、通常、0.01μm〜0.15μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01μm〜0.10μmの範囲内であることが好ましい。本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、輝度、コントラストに優れた着色層とすることができるからである。
【0060】
本発明に用いられる顔料の含有量としては、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に所望の発色が可能なものであれば良く、用いる顔料の種類によっても異なるが、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部当り、1重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも5重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、光学特性が十分に発揮されない恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、顔料による紫外光吸収が著しく大きくなり、硬化が不十分となる恐れがあるからである。
【0061】
(2)顔料分散剤
本発明に用いられる顔料分散剤としては、上記顔料を均一に分散させることができるものであれば良く、公知の顔料分散剤を使用することができる。具体的には、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、変性ポリアミド等の高分子分散剤、リン酸エステル、アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤や顔料誘導体を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、変性ポリアクリレート高分子分散剤が好ましく、具体的な商品名としては、Disperbyk2000、Disperbyk2001、LP−N Disperbyk21116,LP−N Disperbyk21324(以上、ビックケミー社製)を好ましく用いることができる。
【0062】
本発明に用いられる顔料分散剤の含有量としては、上記顔料を均一に分散することができるものであれば良いが、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部当り、1重量部〜12重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも2重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、上記範囲より少ないと顔料の分散が不十分となり、所望の光学特性を得ることが困難になる恐れがあるからであり、上記範囲より多いと、現像性を低下させ現像不良を引き起こす恐れがあるからである。
【0063】
(3)分散用樹脂
本発明に用いられる分散用樹脂は、上記顔料を、上記バインダ樹脂、光重合開始剤および多官能性モノマー等と効率良く混合するために用いられるものである。具体的には、上記分散用樹脂中に上記顔料および顔料分散剤を添加し顔料分散物を形成した後、その顔料分散物を上記バインダ樹脂等と混合してカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を調製する目的で用いられるものである。
このような分散用樹脂としては、上記顔料および顔料分散剤との相溶性に優れ、上記顔料および顔料分散剤を均一に分散可能なものであり、アルカリ現像性を有するものであれば良い。
本発明においては、なかでも、上述した黄変防止の観点から、芳香環を含まないものであることが好ましく、なかでも、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく用いられる。
【0064】
このようなカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、上記カルボキシル基含有モノマーと、上記カルボキシル基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体が好ましく、さらに上記エポキシ基含有化合物を付加させ、側鎖にエチレン性不飽和基を導入したものも好ましく用いることができる。
また、上記その他のモノマーとしては、上記脂環式化合物含有モノマーや、上記エチレン性不飽和モノマー等を用いることができる。
【0065】
上記カルボキシル基含有モノマー、脂環式化合物含有モノマー、エチレン性不飽和モノマーおよびエポキシ基含有化合物については、上記「1.バインダ樹脂」の項に記載したものを用いることができる。
【0066】
上記分散用樹脂の含有量としては、上記顔料を均一に分散できるものであれば良いが、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部当り、通常、1重量部〜12重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも2重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、上記顔料の均一分散性に優れたものとすることができるからである。
【0067】
3.多官能性モノマー
本発明に用いられる多官能性モノマーは、複数の重合性の官能基を有し、光照射により、上記多官能性モノマー同士または上記バインダ樹脂と重合することにより、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を硬化させるものである。
このような多官能性モノマーとしては、通常、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが用いられる。
【0068】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
また、上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0071】
本発明に用いられる多官能性モノマーの含有量としては、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部当り、20重量部〜40重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも、25重量部〜35重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を十分に硬化させることができず、現像時に、露光部分が溶出したり、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の硬化物が剥離しやすくなる等、密着性が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、未露光箇所分でも現像できなくなる等の現像不良が生じる恐れがあるからである。
【0072】
また、本発明に用いられる多官能性モノマーの上記バインダ樹脂に対する含有比率としては、所望の硬化度とすることができるものであれば良いが、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーおよびバインダ樹脂の重量比(バインダ樹脂/多官能性モノマー)が30/70〜59/41の範囲内であることが好ましく、なかでも、35/65〜50/50の範囲内であることが好ましい。硬化性の最適化が図れるからである。
【0073】
4.光重合開始剤
本発明に用いられる光重合開始剤としては、一般的にカラーフィルタの製造に用いられるものを使用することができる。
【0074】
このような光重合開始剤としては、具体的には、α−アミノケトン系開始剤、およびチオキサントン系開始剤を好ましく用いることができる。また、必要に応じてその他の光重合開始剤を含むものであっても良い。
【0075】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量としては、カラーフィルタの着色層を形成することができるものであれば良いが、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分100重量部当り、5重量部〜25重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも、8重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、ラジカル重合を十分に進行させることができず、硬化が不十分となり、硬化性が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと黄変が顕著となり、輝度が低下し光学特性を損なうおそれがあるからである。
【0076】
5.カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物
本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物は、上記バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも有するものであれば良く、必要に応じて溶剤や添加剤を含むものであっても良い。
【0077】
上記溶剤としては、本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは均一に分散可能な溶剤であれば良い。具体的には、シクロヘキシルアセテート;メトキシブチルアセテート(MBA);エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等の他のエーテル類;シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;γ−ブチロラクトン、3−メトキシブタノール、3-メチル−3-メトキシブチルアセテート等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0078】
本発明に用いられる溶剤の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば良いが、通常、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物中に、70質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができるからである。
【0079】
上記添加剤としては、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0080】
本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の製造方法としては、上述した各成分を均一に分散または溶解させることができる方法であれば良く、公知の混合分散手段を用いることができる。
【0081】
本発明のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の用途としては、カラーフィルタの着色層形成に用いることができるが、なかでも、高輝度であることが要求される着色層の形成に好ましく用いられる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0084】
[実施例1〜6および比較例1〜5]
1.バインダ樹脂の合成
3Lのセパラブルフラスコに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)60重量部を加え、120℃まで昇温した後、モノマー成分としてメタアクリル酸(MAA)8.76重量部、メチルメタクリレート(MMA)8.56重量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)3.44重量部、1−アダマンチルメタクリレート(ADAMA)10.28重量部、ラジカル開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.66重量部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.54重量部を均一に混合し、3時間かけて滴下した。
滴下終了後3時間経過した後に10分間かけて130℃まで昇温させ、130℃一定温度で15分間保ち、共重合体を合成した。
上記の共重合体に所定量の重合禁止剤0.02重量部およびグリシジルメタクリレート(GMA)8.96重量部を添加して、110℃まで昇温し、110℃になった時点でN,N−ジメチルベンジルアミンを添加し、その後10時間加熱することによりバインダ樹脂Gを得た。
また、同様にして、MAA、MMA、CHMA、ADAMA、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、ベンジルメタクリレート(MzMA)、ターシャリーブチルシクロヘキシルメタクリレート(t−BuCHMA)を下記表3に示す割合としてバインダ樹脂A〜FおよびH〜Iを合成した。
また、得られたバインダ樹脂A〜Iについて重量平均分子量(Mw)および酸価(AV:mgKOH/g)を上述した方法により測定した。
なお、表3中の数値は、質量%を示すものである。
【0085】
【表3】

【0086】
2.カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の調製
上記バインダ樹脂(樹脂A〜I)、多官能性モノマー、光重合開始剤、顔料、顔料分散剤、分散用樹脂、溶剤および添加剤を下記表4に示すように配合してカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を調製した。
なお、配合に際しては、まず、顔料、顔料分散剤および分散用樹脂を混合しマスターバッチを調製した後に、このマスターバッチと、上記バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、溶剤、および添加剤とを混合することにより行った。また、表4中の数値は、重量部を示すものである。
また、顔料として、ピグメントブルー15:6(B15:6)およびピグメントバイオレット23(V23)を用いた。また、顔料分散剤として、Disperbyk2000(ビックケミー社製)(BYK2001)およびLP−N Disperbyk21116(ビックケミー社製)(BYK21116)を用いた。分散用樹脂として、上記バインダ樹脂Aを用いた。
また、多官能性モノマーとして、アロニックスM403(東亞合成製)(M403)を用いた。光重合開始剤としてジエチルチオキサントン(日本化薬製)(DETX−S)、および、イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ社製)(Irg907)を用いた。添加剤として、KBM503(信越シリコーン社製)を用いた。
溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(クラレ製)を用いた。なお、溶剤の添加量は、上記カラーフィルタ用着色層用樹脂組成物の固形分濃度が22.5質量%となるように調製した。
【0087】
【表4】

【0088】
3.評価
実施例および比較例で調製したカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を、スピンコータでガラス基板上に塗布した後、ホットプレート上で80℃で3分間加熱し乾燥し、厚みが1.5μm〜2.3μmの塗膜を形成した。次に塗膜をフォトマスクを介して高圧水銀灯を用いて露光し硬化させた。その後、温度23℃で0.05質量%の水酸化カリウム現像液で現像した。次いで、230℃のオーブン内で、120分加熱し、基板を焼成(ポストベーク)し、着色層を形成した。
得られた着色層について、オリンパス光学工業(株)製、分光測色計OSP−SP200により測色し、色度(xおよびy)および輝度(Y値)を求めた。結果を下記表5に示す。また、比較例1を基準とした際の輝度の変化率(Y値変化率)を下記基準により評価した。
△:+0.5%未満
○:+0.5%以上、+1.0%未満
◎:+1.0%以上
【0089】
【表5】

【0090】
表5より、実施例で作製したカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物を用いて形成した着色層が高輝度となることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、および顔料分散物を少なくとも含み、
前記バインダ樹脂が、下記(A)〜(C)を共重合させてなる共重合体が有するカルボキシル基に、下記(D)のエポキシ基を反応させてなり、芳香環を含まないものであることを特徴とするカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物。
(A)1−アダマンチル(メタ)クリレート、2−アダマンチル(メタ)クリレート、2-メチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)クリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)クリレートおよび1−パーフルオロアダマンチル(メタ)クリレートの少なくとも1つ
(B)単環状脂肪族炭化水素基と、不飽和二重結合とを有する脂環式化合物含有モノマー
(C)カルボキシル基と、不飽和二重結合とを有するカルボキシル基含有モノマー
(D)エポキシ基と、不飽和二重結合とを有するエポキシ基含有化合物
【請求項2】
前記バインダ樹脂中の(A)〜(D)の割合が、(A)10質量%〜50質量%の範囲内、(B)0質量%〜20質量%の範囲内、(C)10質量%〜60質量%の範囲内、(D)5質量%〜35質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物。
【請求項3】
前記バインダ樹脂の重量平均分子量が、3000〜24000の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物。
【請求項4】
前記顔料分散物が青色顔料を含む青色顔料分散物であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のカラーフィルタ用着色層用樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−243599(P2010−243599A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89430(P2009−89430)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】