説明

カラー固体撮像素子およびそれに用いるカラーマイクロレンズの製造方法

【課題】改良されたカラーマイクロレンズを用いることにより、レンズ自体の色分解性と集光性の適正化を図るとともに、周囲の画素からの光を遮断して、全体として色再現性の良好なカラー固体撮像素子を簡単な製造工程で提供すること。
【解決手段】半導体基板2上に複数の光電変換素子3を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面4に、光電変換素子の各々に対応して複数のマイクロレンズ6を設けた固体撮像素子1において、マイクロレンズが所定の分光透過率特性を有する複数色の内の1色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズを他の色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズと連ねて規則的に繰り返し配列してなり、隣接する異なる色のカラーマイクロレンズが、カラーマイクロレンズの高さより低い遮光性のブラックマトリクスのパターン7により隔てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー固体撮像素子に設けるカラーマイクロレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置は画像の記録、通信、放送の内容の拡大に伴って広く用いられるようになっている。撮像装置として種々の形式のものが提案されているが、小型、軽量で高性能のものが安定して製造されるようになった固体撮像素子を組み込んだ撮像装置が、デジタルカメラやデジタルビデオとして普及してきている。
【0003】
固体撮像素子は、撮影対象物からの光学像を受け、入射した光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する。光電変換素子の種類はCCD(電荷結合素子)タイプとCMOS(相補型金属酸化物半導体)タイプとに大別される。また、光電変換素子の配列形態から、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)と、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)との2種類に大別される。いずれのセンサにおいても光電変換素子の数(画素数)が多いほど撮影された画像は精密になるので、近年は特に、大画素数の固体撮像素子を安価に製造する方法が検討されている。
【0004】
また、光電変換素子に入射する光の経路に特定の波長の光を透過する各種のカラーフィルタを設けることで、対象物の色情報を得ることを可能とした単板式のカラーセンサーとしてのカラー固体撮像素子も普及している。カラー固体撮像素子は、1個の光電変換素子に対応して特定の色の1画素を設けて、色分解した画像情報を集めることができる。カラーフィルタの色としては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色からなる3原色系、あるいは、シアン色(C)、マゼンタ色(M)、イエロー色(Y)からなる補色系が一般的であり、特に3原色系が多く使われている。
【0005】
カラーフィルタは、フォトリソグラフィー法を用いて形成することが主流となっている。すなわち、基板上に所定の色の感光性着色透明樹脂を塗布した後、所定のパターンを有する露光用フォトマスクを介して感光性着色透明樹脂にパターン露光、現像を行い、所定の部位に着色透明樹脂からなるカラーフィルタを形成する。また、基板上への感光性着色透明樹脂の塗布としては、回転塗布法を用いることが多い。すなわち、基板上に感光性着色透明樹脂を滴下した後、基板を回転することで滴下した感光性着色透明樹脂を基板上に均一に塗り広げる方法である。
【0006】
固体撮像素子に要求される性能で重要な課題の一つに、入射する光への感度を向上させることが挙げられる。小型化した固体撮像素子で撮影した画像の情報量を多くするためには受光部となる光電変換素子を微細化して高集積化する必要がある。しかし、光電変換素子を微細化した場合、各光電変換素子の面積が小さくなり、受光部として利用できる面積割合も減るので、光を取り込む面積が小さくなるため、光電変換素子の受光部に取り込める光の量が少なくなり、実効的な感度は低下する。
【0007】
このような、微細化した固体撮像素子の感度の低下を防止するための手段として、光電変換素子の受光部に効率良く光を取り込むために、対象物から入射される光を集光して光電変換素子の受光部に導くマイクロレンズを光電変換素子上に形成する技術が提案されている。マイクロレンズで光を集光して光電変換素子の受光部に導くことで、受光部の見かけ上の開口率を大きくすることが可能になり、固体撮像素子の感度の向上が可能になる。図3は、着色透明樹脂パターンからなるカラーフィルタ画素上に1画素毎に1個の無色透
明なマイクロレンズを設けて集光し、色分解した光を光電変換素子の受光部に導く従来のカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。
カラー固体撮像素子1は、半導体基板2上に規則的に設けた複数の光電変換素子3を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面4に、透明平坦化層5を介して、複数色を繰り返し配列する着色透明画素パターン8を光電変換素子3に対応させて複数設け、さらに第二の透明平坦化層51により着色透明画素パターン8を配列した平面上の平坦化を行った後に、上記のマイクロレンズ60を設けてなる。
【0008】
また、マイクロレンズの集光機能を有するとともに、着色透明樹脂からなるカラーフィルタとしての機能も併せて有するカラーマイクロレンズを採用することにより、簡単な製造工程で、マイクロレンズとカラーフィルタとの2層構造あるいは前記第二の透明平坦化層51も含めた3層構造から、単層構造にして層膜厚を薄くして集光率の向上を図るカラー固体撮像素子も提案されている(特許文献1参照)。図4は、このようなカラーマイクロレンズを用いたカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。半導体基板2上に規則的に設けた複数の光電変換素子3を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面4に、透明平坦化層5を介して、光電変換素子の各々に対応した位置に複数の異なる色のカラーマイクロレンズ6を規則的に繰り返し配列したカラー固体撮像素子1を示す。カラーマイクロレンズ6は、一般に色分解性と集光性とを両立させることに難点があり、図の折線矢印で示すレンズの縁の膜厚の薄い部分を通過する光9に対しては色分解性が不充分となり、全体の膜厚を厚くして色分解性を向上すると曲率の制御が難しくなって適正な集光性が得られない。
【0009】
一方、カラー固体撮像素子の画素数が増えて画素サイズが微細化していくと、入射光の一部が僅かに斜め入射する影響が無視できなくなり、着色透明層の各色画素パターンと対応する光電変換素子以外の隣接する他の光電変換素子に入射して混色が発生する。その結果、カラー固体撮像素子の色再現性が著しく劣化する。
上述の混色を防止して、色再現性の良好なカラー固体撮像素子を提供するために、従来の無色透明なマイクロレンズを別に設けるタイプのカラーフィルタ着色透明層の各色の画素パターン間にブラックマトリクスからなる遮光パターンを安定して形成することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、マイクロレンズとカラーフィルタとの2層構造あるいは前記第二の透明平坦化層51も含めた3層構造を別に設ける構造であるため、製造工程が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−332407号公報
【特許文献2】特開2010−134352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、改良されたカラーマイクロレンズを用いることにより、レンズ自体の色分解性と集光性の適正化を図るとともに、周囲の画素からの光を遮断して、全体として色再現性の良好なカラー固体撮像素子を簡単な製造工程で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、半導体基板上に複数の光電変換素子を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面に、光電変換素子の各々に対応して複数のマイクロレンズを設けた固体撮像素子において、マイクロレンズが所定の分光透過率特性を有する複数色の内の1色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロ
レンズを他の色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズと連ねて規則的に繰り返し配列してなり、隣接する異なる色のカラーマイクロレンズが、カラーマイクロレンズの高さより低い遮光性のブラックマトリクスのパターンにより隔てられることを特徴とするカラー固体撮像素子である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカラー固体撮像素子におけるカラーマイクロレンズの製造方法であって、各色の画素となる位置の周囲にブラックマトリクスを形成した後に、アルカリ可溶性の感光性樹脂を含むカラーマイクロレンズ材料を固体撮像素子の受光面側にブラックマトリクスの厚さより厚く塗布し、露光、現像によるフォトリソグラフィー法により、所定の画素領域に対応するカラーマイクロレンズ層を選択的に残し、ブラックマトリクスのパターンに制限された画素内での樹脂の熱フロー挙動を利用して熱処理によりカラーマイクロレンズの曲面形状を形成することを特徴とするカラーマイクロレンズの製造方法である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、ブラックマトリクスのパターンの高さが、0.3〜2μmであることを特徴とする請求項2に記載のカラーマイクロレンズの製造方法である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、カラーマイクロレンズのブラックマトリクスを超える高さとブラックマトリクスに囲まれて設けたカラーマイクロレンズの平面サイズとのアスペクト比が、0.2〜7であることを特徴とする請求項2または3に記載のカラーマイクロレンズの製造方法である。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のカラー固体撮像素子におけるカラーマイクロレンズの製造方法であって、各色の画素となる位置の周囲にブラックマトリクスを形成した後に、カラーマイクロレンズ材料を固体撮像素子の受光面側に塗布、乾燥後、アルカリ可溶性の感光性樹脂を含むエッチングレジスト材料を積層してブラックマトリクスの厚さより厚くなるように塗布し、所定の画素領域に対応するレジストパターンをカラーマイクロレンズ層の上層にフォトリソグラフィー法で選択的に残し、ブラックマトリクスのパターンに制限された画素内でのエッチングレジストパターンの熱フロー挙動を利用して熱処理により所望の曲面形状を形成した後に、ドライエッチング法で所望の曲面形状を下層のカラーマイクロレンズ層に転写してカラーマイクロレンズの曲面形状を形成することを特徴とするカラーマイクロレンズの製造方法である。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、カラーマイクロレンズを構成する複数色が、3色以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のカラーマイクロレンズの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、カラー固体撮像素子を構成するカラーフィルタとマイクロレンズの機能をカラーマイクロレンズに薄型化して集約し、レンズ曲面の適正な曲率が確保できるので、高い集光率を有し、しかも隣接する異なる色のカラーマイクロレンズを有する画素間に遮光パターンを設けて干渉を防ぐとともに、画素内の着色膜厚を確保して充分な色分解性が得られるので、色再現性の良好なカラー固体撮像素子を、簡単な製造工程で高精度に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。
【図2】本発明のカラーマイクロレンズの製造方法の一例を工程順に説明するための模式断面図であって、(a)はブラックマトリクス形成段階、(b1)〜(b3)は1色目のカラーマイクロレンズ形成工程、(c1)〜(c3)は2色目のカラーマイクロレンズ形成工程、を示す。
【図3】従来のマイクロレンズを用いたカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。
【図4】従来のカラーマイクロレンズを用いたカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。
【図5】本発明のカラーマイクロレンズの製造方法の他の一例を工程順に説明するための模式断面図であって、(a)はブラックマトリクス形成段階、(b1)〜(b4)は1色目のカラーマイクロレンズ形成工程、(c1)〜(c4)は2色目のカラーマイクロレンズ形成工程、を示す。
【図6】本発明のカラーマイクロレンズの形状を代表するアスペクト比を定義するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に従って、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のカラー固体撮像素子の構造を説明するための模式断面図である。
【0021】
本発明は、半導体基板2上に複数の光電変換素子3を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面4に、透明平坦化層5を介して、光電変換素子3の各々に対応して複数のカラーマイクロレンズ6を設けたカラー固体撮像素子1であって、カラーマイクロレンズ6は、所定の分光透過率特性を有する複数色の内の1色の着色透明樹脂からなり、他の色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズと連ねて規則的に繰り返し配列してなり、隣接する異なる色のカラーマイクロレンズとの間が、カラーマイクロレンズの高さより低い遮光性のブラックマトリクス7のパターンにより隔てられることを特徴とする。
上記の特徴を有する本発明は、カラー固体撮像素子を構成するカラーフィルタとマイクロレンズの機能をカラーマイクロレンズに薄型化して集約するので、全体の製造工程が短縮されるとともに、パターン間の位置合わせ回数が減り、高精度の製品を得ることができる。また、カラーマイクロレンズ間にブラックマトリクス遮光パターンの仕切りを設けることにより、色再現性の向上が実現できるとともに、ブラックマトリクスに対するカラーマイクロレンズの位置と形状の制御に関しても、後述の製造方法の説明に述べるとおり、有利となる。
【0022】
図2は、本発明のカラーマイクロレンズの製造方法の一例を工程順に説明するための模式断面図であって、(a)はブラックマトリクス形成段階、(b1)〜(b3)は1色目のカラーマイクロレンズ形成工程、(c1)〜(c3)は2色目のカラーマイクロレンズ形成工程、を示す。
【0023】
図2(a)に示すように、ブラックマトリクス7は、光電変換素子3と1対1で対応する各色の画素となる位置60の周囲に遮光性の材料で形成されるが、ブラックマトリクス形成に先立って、平坦で均一な下地を提供する透明平坦化層5を、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.1μm程度の厚さで塗布し、熱処理して形成する。
次に、ブラックマトリクス7の形成は、黒色材料に感光性を付与した遮光性材料を塗布、乾燥後、選択的露光、現像し、熱処理により硬化するという一般的なフォトリソグラフィー法のプロセスを実施することにより、直接的にパターン形成することができる。
また、微細パターンの形成に有利なドライエッチング法を用いる方法も可能である。すなわち、予め形成した感光性を必要とはしない遮光性材料の上層に、別にエッチングレジストとなるパターンを、上記と類似のフォトリソグラフィー法で形成し、遮光性材料のパターン形成をドライエッチングにより形成することができる。後者の方法では、フォトリソグラフィー適性とドライエッチング適性とをレジスト材料と遮光性材料とに分担して最適化できるので、微細化パターンの形成に特に適している。ドライエッチング耐性を特に補強する目的で、レジスト材料の下層に無機膜を形成しておき、遮光性材料のドライエッチングをさらに良好な形状に完了させることも可能である。また、遮光性材料として無機膜を真空成膜し、上層にエッチングレジストパターン形成後に、下層の無機遮光膜をドライエッチングまたはウェットエッチングによりパターン化することも可能である。
【0024】
ブラックマトリクス7の厚さは、後述するように、カラーマイクロレンズを画素内に堰き止めて着色膜厚を確保して充分な色分解性が得られるようにするため、少なくとも0.3μm以上とすることが望ましい。一方、上限値としては、厚過ぎるとブラックマトリクスのパターン形成時に欠陥を生じ易く、製造工程での生産性や材料の利用効率上も好ましくないので、2μm以下とすることが望ましい。
【0025】
次に、1色目のカラーマイクロレンズ形成工程について説明する。
図2(b1)に示すように、図2(a)で準備したブラックマトリクスを形成した固体撮像素子画素部の受光面側の基板上に、カラーマイクロレンズ材料61mをブラックマトリクス7の厚さより厚く塗布する。カラーマイクロレンズ材料は、所定の分光透過率特性を有する特定の色の色素とアルカリ可溶性樹脂を含む感光性材料を含んで構成し、例えば、光照射された領域の樹脂が分解してアルカリ可溶性を呈するアクリル系のポジタイプの感光性樹脂を用いることができる。基板上への感光性着色透明樹脂の塗布としては、回転塗布法を用いることができる。
【0026】
上記塗布し、乾燥させたカラーマイクロレンズ材料61mに露光、現像のプロセスを行って、図2(b2)に示すように、フォトリソグラフィー法により選択されたカラーマイクロレンズ層61pを所定の画素領域に対応して残す。露光工程には、露光用マスクの拡大したパターンを縮小投影露光して繰り返しステップ送りできるステッパーを使用できる。本工程において、ブラックマトリクスに対するカラーマイクロレンズの位置と形状の制御に関して、精密なアライメント機構を用いて位置精度を保証することは当然であるが、次に述べる露光用マスクの工夫で、形状を改良できる。また、次の熱フローの工程での挙動も、本例でのカラーマイクロレンズの位置と形状の制御に有効である。
【0027】
露光用マスクとして、透過率階調を与えた中間濃度の領域を有するグレーマスクと呼ばれるフォトマスクを用いることにより、現像後、熱フロー前のカラーマイクロレンズ層61pの断面形状を、図示するよりもなだらかな形状にして、後述の熱処理によるフロー成形を助けることができる。現像工程は、アルカリ現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のような有機アルカリ現像水溶液を使用して行う。
【0028】
なお、前記露光用マスクとして使用できるグレーマスクは、グレートーンマスクまたはハーフトーンマスクが利用できる。グレートーンマスクは、ドット(網点)配列やライン・アンド・スペースのような遮光膜の微細パターンの集合により、微細パターン領域全体の平均として、半透光部を形成するタイプであり、ハーフトーンマスクは、半透過性の膜の直接成膜とパターニング手段で半透光部を形成するタイプである。真空成膜を、遮光膜材料と半透過性膜材料の少なくとも2種類に分けて実施する必要のある後者より、遮光膜1種類のみの真空成膜を行えば良い前者のグレートーンマスクのタイプの方が、製造工程上は簡便である。但し、パターン周縁部での光の回折干渉効果によりグレートーンマスクのタイプでは光の強度のバラツキが大きく、特に膜厚の大きな部分の形状品質を良好に保つことが困難な場合があるので、形成したいスロープの形状に応じて、適宜露光用マスクのタイプを選択する必要がある。
【0029】
フォトリソグラフィー法により選択されたカラーマイクロレンズ層61pを、図2(b3)に示すように、熱処理することにより、フロー成形されたカラーマイクロレンズ61sが良好な曲面形状を保持して得られる。熱処理の条件は、カラーマイクロレンズに使用する着色透明樹脂材料の熱特性に依存するが、通常は、100℃〜300℃の加熱温度に
よりフローさせる。熱フローに際して、カラーマイクロレンズを画素内に堰き止めて着色膜厚を確保して充分な色分解性が得られるようにするため、ブラックマトリクス7を単に遮光材料としてだけではなく、壁材料として機能させることができる。
【0030】
カラーマイクロレンズ材料の熱フローの動きが、ブラックマトリクス7の壁によって制限されるため、前の露光工程で僅かに位置ズレを生じたカラーマイクロレンズ層61pであっても、本工程の熱フローで一定の位置補正が可能である。また、ブラックマトリクスの壁に囲まれるカラーマイクロレンズの高さを、ブラックマトリクスの壁より高くすることで、熱処理によりフロー成形されたカラーマイクロレンズ61sの頂上部の曲面形状を最適化できる。曲面形状の最適化は、表面張力に起因するものと推察できる。
【0031】
次に、2色目のカラーマイクロレンズ形成工程について、図2(c1)〜(c3)により説明する。1色目の熱フローして硬化したカラーマイクロレンズ61sが形成された基板上に、2色目のカラーマイクロレンズ材料62mを塗布する。カラーマイクロレンズ材料62mは、1色目とは異なる所定の分光透過率特性を有する特定の色の色素と、1色目と同様のアルカリ可溶性樹脂を含む感光性材料であり、例えば、光照射された領域の樹脂が分解してアルカリ可溶性を呈するアクリル系のポジタイプの感光性樹脂を用いることができる。基板上への感光性着色透明樹脂の塗布は、1色目と同様の方法と厚さで行うことができる。
【0032】
以下、露光、現像工程(図2(c2)参照)、熱フロー工程(図2(c3)参照)を順次、1色目と同様に実施して、2色目のカラーマイクロレンズを形成することができる。工程実施に伴いカラーマイクロレンズが形成されるメカニズムも同様であって、3色目以降を形成する場合も、1、2色目と同様に可能である。本発明では、カラーマイクロレンズを構成する複数色が、3色以上であることにも容易に対応でき、多種のカラー固体撮像素子に、上記と同様の効果を保って適用できる。
【0033】
熱処理によりフロー成形されたカラーマイクロレンズ61sの形状を代表する指標として、アスペクト比を定義すると、熱フローを生じさせる熱処理温度に相当するフロー温度の可能条件を調査することによって、適正なアスペクト比の範囲を定めることができる。実際に採用するアスペクト比は、カラー固体撮像素子内に組み込むべきカラーマイクロレンズの寸法例から規制されることは言うまでも無いが、本発明による方法で作製可能なアスペクト比の最大範囲を知ることができる。
【0034】
図6は、本発明のカラーマイクロレンズの形状を代表するアスペクト比を定義するための模式断面図である。光電変換素子3に対応して、透明平坦化層5を介して設けたカラーマイクロレンズ6の形状は、ブラックマトリクス7に周囲を制限されて、図の両方向矢印a(レンズ径)とb(レンズ部の高さ)とで代表的に表すことができる。この時、b/aで表される値をアスペクト比と定義する。類似の材料を使用する範囲で、アスペクト比が同じであれば、カラーマイクロレンズ頂上部の曲率は同程度とみなすことができる。
【0035】
上記のように定義したアスペクト比を種々に変えて、本発明の製造方法でカラーマイクロレンズを作ろうとした場合に、適正なフロー温度条件がアスペクト比に応じてどのように定まるかを調べた結果を、カラーマイクロレンズの形成条件として(表1)に示す。表中の○印は、適正に形状が製造できた条件を示し、表中の×印は、適正に形状が製造できなかった条件を示す。120℃で全てのアスペクト比において×であることは、熱フローが不充分であるために、現像後の形状からレンズ形状に移行しきれないことを表し、220℃で全てのアスペクト比において×であることは、熱フローが過剰であるために、レンズ形状が崩れていることを表す。また、アスペクト比が低い形状を実現しようとする場合は、高温側で処理すると平坦化が過剰に進んでレンズ効果が小さくなるので、比較的低温側で時間をかけて熱フローさせた方が良好な形状が得られ、アスペクト比が高い形状を実現しようとする場合は、高温側で処理してできるだけ短時間にフローさせ、その後冷却して固める方が良好な形状が得られることを示している。
【0036】
【表1】

【0037】
図5は、本発明のカラーマイクロレンズの製造方法の他の一例を工程順に説明するための模式断面図であって、(a)はブラックマトリクス形成段階、(b1)〜(b4)は1色目のカラーマイクロレンズ形成工程、(c1)〜(c4)は2色目のカラーマイクロレンズ形成工程、を示す。
【0038】
図5(a)に示すように、ブラックマトリクス7は、光電変換素子3と1対1で対応する各色の画素となる位置60の周囲に遮光性の材料で形成されるが、ブラックマトリクス形成に先立って、平坦で均一な下地を提供する透明平坦化層5を、例えば、無色透明なアクリル樹脂溶液を0.1μm程度の厚さで塗布し、熱処理して形成する。
次に、ブラックマトリクス7の形成は、黒色材料に感光性を付与した遮光性材料を塗布、乾燥後、選択的露光、現像し、熱処理により硬化するという一般的なフォトリソグラフィー法のプロセスを実施することにより、直接的にパターン形成することができる。
また、微細パターンの形成に有利なドライエッチング法を用いる方法も可能である。すなわち、予め形成した感光性を必要とはしない遮光性材料の上層に、別にエッチングレジストとなるパターンを、上記と類似のフォトリソグラフィー法で形成し、遮光性材料のパターン形成をドライエッチングにより形成することができる。後者の方法では、フォトリソグラフィー適性とドライエッチング適性とをレジスト材料と遮光性材料とに分担して最適化できるので、微細化パターンの形成に特に適している。ドライエッチング耐性を特に補強する目的で、レジスト材料の下層に無機膜を形成しておき、遮光性材料のドライエッチングをさらに良好な形状に完了させることも可能である。また、遮光性材料として無機膜を真空成膜し、上層にエッチングレジストパターン形成後に、下層の無機遮光膜をドライエッチングまたはウェットエッチングによりパターン化することも可能である。
【0039】
次に、1色目のカラーマイクロレンズ形成工程について説明する。
図5(b1)に示すように、図5(a)で準備したブラックマトリクスを形成した固体撮像素子画素部の受光面側の基板上に、カラーマイクロレンズ材料61mを塗布して乾燥する。カラーマイクロレンズ材料は、所定の分光透過率特性を有する特定の色の色素を含んで、後工程でのドライエッチングが容易にされる材料により構成する。その後、引き続いて、例えば、光照射された領域の樹脂が分解してアルカリ可溶性を呈するアクリル系のポジタイプの感光性樹脂を含むエッチングレジスト材料81mを積層してブラックマトリクス7の厚さより厚くなるように塗布する。基板上への樹脂の塗布としては、回転塗布法を用いることができる。
【0040】
上記塗布し、乾燥させたエッチングレジスト材料81mに露光、現像のプロセスを行って、図5(b2)に示すように、フォトリソグラフィー法により選択されたエッチングレジスト層81pを所定の画素領域に対応して残す。露光工程には、露光用マスクの拡大したパターンを縮小投影露光して繰り返しステップ送りできるステッパーを使用できる。本工程において、ブラックマトリクスに対するエッチングレジスト層の位置と形状の制御に関して、精密なアライメント機構を用いて位置精度を保証することは当然であるが、前述の本発明のカラーマイクロレンズの製造方法の第一の例で述べた露光用マスクと同様の工夫で、形状を改良できる。また、次の熱フローの工程での挙動も、本例でのカラーマイクロレンズの位置と形状の制御に有効である。
【0041】
露光用マスクとして、透過率階調を与えた中間濃度の領域を有するグレーマスクと呼ば
れるフォトマスクを用いることにより、現像後、熱フロー前のエッチングレジスト層81pの断面形状を、図示するよりもなだらかな形状にして、後述の熱処理によるフロー成形を助けることができる。現像工程は、アルカリ現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)のような有機アルカリ現像水溶液を使用して行う。
【0042】
フォトリソグラフィー法により選択されたエッチングレジスト層81pを、図5(b3)に示すように、熱処理することにより、フロー成形されたエッチングレジスト81sが良好な曲面形状を保持して得られる。熱処理の条件は、エッチングレジストに使用する透明樹脂材料の熱特性に依存するが、通常は、100℃〜300℃の加熱温度によりフローさせる。熱フローに際して、エッチングレジストを画素内に収めて、次のドライエッチングのマスクとしての良好な形状を得るために、図示されていないが、ブラックマトリクス7付近のカラーマイクロレンズ材料の盛り上がりが役立つ。すなわち、エッチングレジスト材料の熱フローの動きが、ブラックマトリクス7の壁の間接的な影響である盛り上がりによって制限されるため、前の露光工程で僅かに位置ズレを生じたエッチングレジスト層81pであっても、本工程の熱フローで一定の位置補正が可能である。
【0043】
フロー成形されたエッチングレジスト81sが作る良好な曲面形状を、図5(b4)に示すように、下層に塗布されているカラーマイクロレンズ材料61mを、ドライエッチング法により加工して形状転写し、転写成形されたカラーマイクロレンズ61dとすることができる。ドライエッチングは、CF 、C等のガスを主として、膜厚方向のエッチングレートを重視した条件で行い、エッチングレジストの曲面形状と類似する曲面形状を有するカラーマイクロレンズを形成することができる。また、カラーマイクロレンズ形成後、適宜、硬化処理等の処理を行い、耐性向上を図ることができる。
【0044】
次に、2色目のカラーマイクロレンズ形成工程について、図5(c1)〜(c4)により説明する。1色目のカラーマイクロレンズ61dが形成された基板上に、2色目のカラーマイクロレンズ材料62mを塗布して乾燥する。カラーマイクロレンズ材料62mは、1色目とは異なる所定の分光透過率特性を有する特定の色の色素を含んで、後工程でのドライエッチングが容易にされる材料により構成する。その後、引き続いて、例えば、光照射された領域の樹脂が分解してアルカリ可溶性を呈するアクリル系のポジタイプの感光性樹脂を含むエッチングレジスト材料82mを積層して塗布する(図5(c1)参照)。基板上への樹脂の塗布としては、1色目と同様の方法と厚さで行うことができる。
【0045】
以下、露光、現像工程(図5(c2)参照)、熱フロー工程(図5(c3)参照)、ドライエッチング転写工程(図5(c4)参照)、を順次、1色目と同様に実施して、2色目のカラーマイクロレンズ62dを形成することができる。工程実施に伴いカラーマイクロレンズが形成されるメカニズムも同様であって、3色目以降を形成する場合も、1、2色目と同様に可能である。本発明では、カラーマイクロレンズを構成する複数色が、3色以上であることにも容易に対応でき、多種のカラー固体撮像素子に、上記と同様の効果を保って適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・カラー固体撮像素子
2・・・半導体基板
3・・・光電変換素子
4・・・固体撮像素子画素部の受光面側表面
5、51・・・透明平坦化層
6・・・カラーマイクロレンズ
7・・・ブラックマトリクス
8・・・着色透明画素パターン
9・・・レンズの縁の膜厚の薄い部分を通過する光
60・・・各色の画素となる位置
61m、62m・・・塗布されたカラーマイクロレンズ材料
61p、62p・・・フォトリソグラフィー法により選択されたカラーマイクロレンズ層61s、62s・・・熱処理によりフロー成形されたカラーマイクロレンズ
61d、62d・・・ドライエッチング法により転写成形されたカラーマイクロレンズ
81m、82m・・・塗布されたエッチングレジスト材料
81p、82p・・・フォトリソグラフィー法により選択されたエッチングレジスト層
81s、82s・・・熱処理によりフロー成形されたエッチングレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に複数の光電変換素子を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面に、光電変換素子の各々に対応して複数のマイクロレンズを設けた固体撮像素子において、マイクロレンズが所定の分光透過率特性を有する複数色の内の1色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズを他の色の着色透明樹脂からなるカラーマイクロレンズと連ねて規則的に繰り返し配列してなり、隣接する異なる色のカラーマイクロレンズが、カラーマイクロレンズの高さより低い遮光性のブラックマトリクスのパターンにより隔てられることを特徴とするカラー固体撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載のカラー固体撮像素子におけるカラーマイクロレンズの製造方法であって、各色の画素となる位置の周囲にブラックマトリクスを形成した後に、アルカリ可溶性の感光性樹脂を含むカラーマイクロレンズ材料を固体撮像素子の受光面側にブラックマトリクスの厚さより厚く塗布し、露光、現像によるフォトリソグラフィー法により、所定の画素領域に対応するカラーマイクロレンズ層を選択的に残し、ブラックマトリクスのパターンに制限された画素内での樹脂の熱フロー挙動を利用して熱処理によりカラーマイクロレンズの曲面形状を形成することを特徴とするカラーマイクロレンズの製造方法。
【請求項3】
ブラックマトリクスのパターンの高さが、0.3〜2μmであることを特徴とする請求項2に記載のカラーマイクロレンズの製造方法。
【請求項4】
カラーマイクロレンズのブラックマトリクスを超える高さとブラックマトリクスに囲まれて設けたカラーマイクロレンズの平面サイズとのアスペクト比が、0.2〜7であることを特徴とする請求項2または3に記載のカラーマイクロレンズの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のカラー固体撮像素子におけるカラーマイクロレンズの製造方法であって、各色の画素となる位置の周囲にブラックマトリクスを形成した後に、カラーマイクロレンズ材料を固体撮像素子の受光面側に塗布、乾燥後、アルカリ可溶性の感光性樹脂を含むエッチングレジスト材料を積層してブラックマトリクスの厚さより厚くなるように塗布し、所定の画素領域に対応するレジストパターンをカラーマイクロレンズ層の上層にフォトリソグラフィー法で選択的に残し、ブラックマトリクスのパターンに制限された画素内でのエッチングレジストパターンの熱フロー挙動を利用して熱処理により所望の曲面形状を形成した後に、ドライエッチング法で所望の曲面形状を下層のカラーマイクロレンズ層に転写してカラーマイクロレンズの曲面形状を形成することを特徴とするカラーマイクロレンズの製造方法。
【請求項6】
カラーマイクロレンズを構成する複数色が、3色以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のカラーマイクロレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256782(P2012−256782A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129933(P2011−129933)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】