説明

カリックスアレーン化合物およびこれを含むフォトレジスト組成物

【課題】高い解像度および低いLERを有し、かつ加工安定性を伴う、向上した解像度を有するカリックス[4]アレーンベースのフォトレジストの提供。
【解決手段】式(I):C(OR(I)の芳香族化合物と、式(II):Ar−CHO(II)の多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドとのテトラマー反応生成物;並びに芳香族化合物のヒドロキシ基、多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドのヒドロキシ基、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせとの付加物としての、酸により除去可能な保護基;を含む分子性ガラス化合物、分子性ガラス化合物を含むフォトレジスト、並びにフォトレジスト組成物の層を含むコーティングされた基体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年9月23日に出願された米国仮出願第61/538,672号のノンプロビジョナル出願であり、その出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
次世代マイクロリソグラフィ(すなわち、193nm液浸リソグラフィを超えて、かつeビーム(e−beam)、X線および13.4nmの非常に短い波長で操作する極端紫外線(EUV)リソグラフィのような次世代光学へ向かう)についての設計規則はますます小さな寸法、例えば、30nm以下に向かっていることである。一般に、焦点深度(DOF)は、より大きな開口数(NA)のせいで解像度が高くなるにつれて必然的に浅くなり、従って、レジスト厚さも、ますます小さくなるフィーチャサイズに対応して薄くなる。線幅がより狭くなり、かつレジスト膜がより薄くなるにつれて、解像度およびラインエッジラフネス(LER)のようなコンシステンシーの問題が、フォトレジストの性能および有用性の制限の有意性を増大させるようになる。これらの現象は半導体デバイスの製造において関心を持たれており;例えば、過剰なLERは、例えば、トランジスタおよびゲートアーキテクチャにおける劣ったエッチングおよびライン幅制御の欠陥をもたらす場合があり、潜在的に短絡および信号遅延を生じさせる場合がある。EUVフォトレジストを製造するために一般的に使用されるポリマー材料の旋回の半径は本質的にLER要件(すなわち、3nm未満)より大きいので、キャストされた場合に非晶質膜を形成し、かつ分子性ガラスとして一般的に知られている、小さく、離散しかつ充分に画定された分子はEUVフォトレジストプラットフォームを開発するための可能な候補物質と考えられてきた。
【0003】
ネガティブおよびポジティブトーンレジストにおいて分子性ガラスが使用されてきた。米国特許出願公開第2010/0047709A1号は、レゾルシノールもしくはピロガロールと、置換アルデヒドとから製造されるカリックス[4]アレーンをベースにした低ガス放出レジストを記載し、この置換アルデヒドは、例えば、ペンダントフェニルもしくはシクロヘキシル基を有し、レゾルシノール/ピロガロールのヒドロキシ基に結合される溶解制御基を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0047709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、望ましくは高い解像度および低いLERを有し、かつ加工安定性におけるさらなる改良を伴うフォトレジストについての厳しい要件を満たす向上した解像度を有するカリックス[4]アレーンベースのフォトレジストについての必要性が存在したままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
式(I):
(OR (I)
(式中、RはH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、RはH、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキルであり、xは6−yであり、並びにyは2もしくは3であり、少なくとも1つのOR基はヒドロキシ基であり、並びに少なくとも2つのOR基は互いにメタである)の芳香族化合物と、
式(II):
Ar−CHO (II)
(式中、Arは置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC4−20複素環式芳香族含有部分、または置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC8−20縮合多環式芳香族部分である)の多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドと
のテトラマー反応生成物;並びに
前記芳香族化合物のヒドロキシ基、前記多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドのヒドロキシ基、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせとの付加物としての、酸により除去可能な保護基;
を含む本発明の分子性ガラス化合物によって、先行技術の上記および他の欠点の1以上が克服されうる。
【0007】
フォトレジストは分子性ガラス化合物、溶媒および光酸発生剤を含む。
【0008】
コーティングされた基体は(a)基体の表面上にパターン形成される1以上の層を有する基体;および(b)前記パターン形成される1以上の層上のフォトレジスト組成物の層を含む。
【0009】
パターン形成された基体を形成する方法は前記コーティングされた基体を活性化放射線に露光することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において開示されるのは、ヒドロキシおよび/またはアルコキシ含有芳香族化合物と、縮合環芳香族もしくはヘテロ芳香族アルデヒドとから製造される新規カリックス[4]アレーンをベースにする、改良されたガラス転移温度を有する新規の分子性ガラス(molecular glass)化合物である。このヒドロキシ基の一部分もしくは全部は酸開裂性保護基および/または非開裂性ペンダント基と反応させられて付加物を形成し、この付加物は、この酸開裂性基が除去される場合にまたはこの付加物が架橋される場合に、アルカリ溶解性溶解速度コントラストを示すことができる。本明細書において使用される場合、「付加物」とは、他に特定されない限りは、酸開裂性保護基および/もしくは非開裂性ペンダント基と、カリックス[4]アレーンの芳香族ヒドロキシ基との付加または縮合生成物をいう。
【0011】
カリックス[4]アレーンは、フェノール系化合物とアルデヒドとの反応から生じる交互構造を有する個別の環式テトラマー化合物である。コア構造は好ましくは、ヒドロキシ基を有する芳香族化合物と、アルデヒド(好ましくはこれもヒドロキシ基を有する)とから形成されるボウル型テトラマーカリックス[4]アレーンである。カリックス[4]アレーンは4つの異なる配座異性体:シス−シス−シス、シス−トランス−シス、シス−シス−トランス、およびトランス−トランス−トランスで存在する。典型的には、熱力学的に最も有利な配座異性体はシス−シス−シスであり、この場合には、カリックス[4]アレーン分子がC4対称軸を有するように4つ全てのアレーン環が同じ方向に反っており、これはC2対称軸を有するトランス−トランス−トランス異性体とは対照的である。例えば、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)のようなヒドロキシ芳香族化合物を使用して製造される場合には、これらヒドロキシ基は、隣の芳香環上のヒドロキシ基との間での幾何学的に有利な水素結合相互作用によって配座を効果的に固定する。この固定された配座は「ボウル型」の構造を全−シスカリックス[4]アレーンに付与する。
【0012】
分子性ガラス化合物には、80℃以上の高Tを有するが、非晶質特性を保持するものが挙げられる。Tを80℃より上に上げることはコアカリックス[4]アレーンの構造修飾によって(例えば、縮合多環式芳香族またはヘテロ芳香族構造を有する立体的に嵩高な芳香族アルデヒドの含有によって)、またはコアカリックス[4]アレーンへの構造修飾と側鎖へのさらなる構造変化の組み合わせによって(立体的に嵩高なまたは硬質ペンダント基および/または保護基を含ませることによるなどで)達成される。これら分子性ガラス化合物は良好な膜形成特性および非晶質特性を維持しつつ、好ましくは100℃を超える、および120℃以上もの高さのTを有する。この分子性ガラス化合物および光酸発生剤を使用して製造されたフォトレジストの塗膜の露光の際に、アセタール保護基の酸加水分解はこのコアをアルカリ現像剤に可溶性にする。
【0013】
これら分子性ガラス化合物をベースにしたフォトレジストは良好な溶解性コントラストを提供し、かつその分子性ガラス化合物の上昇したTがよりロバスト(robust)なリソグラフィ処理条件をそのフォトレジストに付与するので、例えば、適用後ベーク(post−apply bake;PAB)、露光後ベーク(PEB)、典型的には後の基体エッチング中に遭遇する上昇した温度に対する安定性において、および増大したフォトレジスト膜弾性率に起因する、特に22nm以下のラインを現像する際の、向上したパターン倒壊マージンにおいても望ましい。
【0014】
よって、この分子性ガラス化合物は、ヒドロキシ基を含む芳香族化合物と、縮合多環式芳香族もしくはヘテロ芳香族アルデヒドとのテトラマー反応生成物であるカリックス[4]アレーンをベースにしており、好ましくは高Tを有する。
【0015】
好ましくは、芳香族化合物は、式(I):
(OR (I)
のものであり、式中、RはH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、RはH、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキルであり、xは6−yであり、並びにyは2もしくは3であり、少なくとも1つのOR基はヒドロキシ基であり、並びに少なくとも2つのOR基は互いにメタである。本明細書において使用される場合、接頭辞「ハロ」はその基が何らかのハロゲンまたはその組み合わせ(F、Cl、Br、I)を含むことを意味する。好ましいハロゲンはフッ素である。
【0016】
式(I)の典型的な芳香族化合物には、レゾルシノール、ピロガロール、3−メトキシフェノール、または3−エトキシフェノールが挙げられる。
【0017】
また、好ましくは、多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドは式(II):
Ar−CHO (II)
のものであり、式中、Arは置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC4−20複素環式芳香族含有部分、または置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC8−20縮合多環式芳香族部分である。好ましくは、式(II)のArはC8−30アリール、C8−30ヘテロアリール、C8−30ハロアリール、C8−30ヘテロハロアリール、C8−30アラルキル、またはC7−20ハロアラルキルである。本明細書において使用される場合、「置換されている」とはハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシラート、アミド、ニトリル、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C7−10アルキルアリール、C7−10アルキルアリールオキシ、もしくは前述の少なくとも1種を含む組み合わせのような置換基を含むことを意味する。「ハロ置換されている」とはその基が特にハロゲン置換基(すなわち、F、Cl、Br、I)を含み、かつこれらハロゲンをそれだけでまたは前記の他の置換基と組み合わせて含むことができることを意味する。本明細書において、前記式に関して開示されるあらゆる基または構造は、他に特定されない限りは、または得られる構造の所望の特性にそのような置換が有意に悪影響を及ぼさないであろう限りは、そのように置換されることができることが理解されるであろう。
【0018】
より好ましくは、式(II)の多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドには、式(III)または(IV)のアルデヒドが挙げられる:
【化1】

式中、XはC(R、NR、S、もしくはOであり、R〜Rはそれぞれ独立してH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキルもしくはC7−20ハロアラルキルであり、a、cおよびdはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、並びにbは1〜4+aの整数である。
【0019】
典型的には縮合環芳香族アルデヒドには、下記構造が挙げられる:
【化2】

【0020】
よって、カリックス[4]アレーンコアは、式(I)および(II)の化合物の縮合の反応生成物として形成される。典型的なこのようなカリックス[4]アレーンには、下記構造を有するものが挙げられる:
【化3】

【0021】
分子性ガラス化合物は、テトラマー反応生成物カリックス[4]アレーンとの付加物として、酸により除去可能な(acid−removable)保護基をさらに含む。この付加物は芳香族化合物のヒドロキシ基、多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドのヒドロキシ基、または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせを用いて形成される。この酸により除去可能な保護基は好ましくは、ビニルエーテル、第三級アルキルエステル、第三級アルキルカルボニル、または前述の少なくとも1種を含む組み合わせの付加物である。
【0022】
前記酸により除去可能な基には、式(V)におけるような、第三級炭素中心を有する部分が挙げられる:
−(L−C(=O)−O−C(R (V)
式中、LはC1−20連結基であり、mは0または1であり、各Rは独立して置換されているかもしくは非置換であって、かつC1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、またはC7−20ハロアラルキルであり、2以上の隣り合うR基は、場合によっては、単結合によって互いに連結される。典型的なこの基C(Rはt−ブチル基である(すなわち、Rがメチルである式(V))。例えば、Rがメチルであり、かつmが0の場合には、その酸により除去可能な基は、t−ブチルオキシカルボニル(t−BOC)基であることができ、またはRがメチルであり、かつmが1である場合には、その酸により除去可能な基は、ハロ酢酸t−ブチルエステルから得られるt−ブチルアセタートエステルである。
【0023】
択一的に、または追加的に、酸により除去可能な保護基は好ましくは、テトラマー反応生成物のヒドロキシ基と、式(VI)の芳香族ビニルエーテルとの付加物である:
C(R=C(R10)−O−(L)−R11 (VI)
式中、RおよびR10はそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにR11は置換されているかもしくは非置換の単環式、多環式もしくは縮合多環式C1−20脂肪族基またはC6−20芳香族含有基であり、ここで、RおよびR10のいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびR10はR11に連結される。
【0024】
少なくとも1種の上記酸により除去可能な基を含む組み合わせが使用されうる。
【0025】
典型的な芳香族ビニルエーテルには、下記式:
【化4】

【化5】

を有するもの、または前述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0026】
典型的な環式脂肪族ビニルエーテルには、炭素ケージ構造をベースにしたもの、例えば、内部もしくはペンダント環式脂肪族もしくはハロ置換環式脂肪族化合物:
【化6】

が挙げられる。
【0027】
さらに、典型的な芳香族ビニルエーテルには、一般構造:
【化7】

のもの、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、式中、アリールは、例えば、下記構造:
【化8】

の一つを有する芳香族部分、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0028】
択一的に、または追加的に、カリックス[4]アレーンは、酸により除去可能でない保護基を含むことができる。好ましくは、この酸により除去可能でない保護基には、非−第三級(すなわち、第一級、または第二級アルコールエステル)C1−20カルボン酸もしくはスルホン酸エステル、C6−20アリールカルボン酸もしくはスルホン酸エステル、および非−ベンジルC7−20アラルキルカルボン酸もしくはスルホン酸エステルが挙げられる。典型的なこのような基には、酢酸、安息香酸、ハロ安息香酸、メタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、並びにトリフルオロメタンスルホン酸およびペルフルオロブタンスルホン酸のようなペルフルオロアルカンスルホン酸の反応性誘導体から生じるものが挙げられる。
【0029】
特定のカリックス[4]アレーンコアの保護のレベルはコア上に位置するヒドロキシ基の数に基づいて変化しうる。保護化学は、保護のレベルが様々な分子性ガラス化合物の混合物を導き、所望の場合には、この混合物はクロマトグラフィもしくは他の分離方法によって分離され、保護のレベルが同じの個々の分子性ガラス化合物を単離する。択一的に、または追加的に、異なるレベルの保護を有する分子性ガラス化合物の混合物が直接フォトレジスト中に使用されうる。コアが、例えば、レゾルシノールおよびヒドロキシ非含有アルデヒドを含む場合には、与えられたコアについての保護基で覆われる部位の数は0〜8であることができ、またはこのコアがレゾルシノールの代わりにピロガロールを含む場合には、与えられたコアについての保護基で覆われる部位の数は0〜12であり得る。分子性ガラス化合物についての保護の平均レベルは1〜l2であり、好ましくは1〜8、より好ましくは3〜6である。
【0030】
少なくとも3つの保護基で、8つ以上の多さの保護基を有するカリックスアレーンコアはアルカリ現像剤(例えば、0.26Nの水性テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、略してTMAH)中で不溶性である。アセタール連結は光発生酸によって酸開裂可能であり、典型的なポジティブトーンリソグラフィ露光/現像プロセス下で、良好な溶解性コントラストを提供する。
【0031】
好ましくは、分子性ガラス化合物は80℃以上、より好ましくは90℃以上、および最も好ましくは100℃以上のガラス転移温度を有する。
【0032】
カリックス[4]アレーンは、酸性水溶液、酸性化アルコール−水混合物、または酸性化アルコール混合物のような酸性化極性溶媒中で行われる、上記芳香族化合物と、アルデヒドまたはその誘導体との縮合反応生成物である。この縮合を行うのに適する溶媒および溶媒混合物には、これに限定されないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、および上記アルコールと水との組み合わせ中の塩酸が挙げられる。好ましくは、この溶媒システムはカリックス[4]アレーンのシス−シス−シス異性体が優先的に沈殿するように選択される。この縮合は約70℃を超える、より好ましくは約80℃を超える温度で行われることができる。カリックス[4]アレーンは沈殿物として回収されることができるが、ここでは熱力学的生成物(このシス−シス−シス異性体)は水系溶媒中でより低い溶解性を有することができ、よって沈殿物として単離されうる。
【0033】
縮合は、バッチモードで、反応へのモノマーおよび酸性触媒のバッチ添加によって、反応混合物への成分(芳香族化合物およびアルデヒド)の1以上の別々のフィードの計量された添加によって、または反応物質を一緒にするのに適する他の方法によって行われることができる。本明細書において開示されるように、カリックス[4]アレーンは個別の分子であって、ポリマーではなく、単一種の芳香族化合物と単一種のアルデヒドとの縮合生成物である場合には均質な組成を有し;ポリマー中間体(縮合ホモポリマー)が当初は形成されるが、カリックス[4]アレーンはカリックス[4]アレーンを直接得るためのオリゴマー化、並びに熱力学的に不利な配座異性体(すなわち、シス−シス−トランス、シス−トランス−シス、トランス−トランス−トランス)または中間体ポリマーのテトラマーセグメントの末端基組み替えおよび鎖切断の双方の熱力学的生成物であることが認識されるであろう。
【0034】
カリックス[4]アレーンは2,000g/モル以下、好ましくは1,500g/モル以下の分子量を有することができる。縮合されたテトラマー生成物の性質のせいで、このカリックス[4]アレーンコア自体は個別でかつ特定された化学量論を有し、よって1の理論的多分散度を有することが認識されるであろう。分子量は、例えば、電界脱離質量分析法、レーザーアブレーション質量分析法、またはカリックス[4]アレーンコアおよび付加物の分子量を得るのに適する他の方法を用いる質量分析法を用いて個別の化合物について決定されうる。
【0035】
付加物は、芳香族ビニルエーテルとカリックス[4]アレーンとのさらなる縮合生成物である。
【0036】
カリックス[4]アレーンと芳香族ビニルエーテルとの付加物は、フェノール系ビニルエーテル付加物を形成する酸触媒の存在下での、カリックス[4]アレーン上のヒドロキシ基とビニルエーテルとの反応によって製造されうる。典型的な溶媒には、芳香族化合物もしくはエーテルをはじめとする、蒸留乾燥プロセスに使用されうる任意の適する非反応性溶媒が挙げられる。
【0037】
例えば、レゾルシノールと3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合からのカリックス[4]アレーンは、アニソール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランまたは1−メトキシ−2−プロピルアセタートのような溶媒中で、触媒量の酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の存在下で、かつ低水分量(<0.1%w/w)で、例えば、2−(2−ビニルオキシ)エチルナフタレン−2−カルボキシラート(NCVE)のようなビニルエーテルで、単独で、または2−(2−ビニルオキシ)エチルアダマンタンカルボキシラート(AdCVE)と組み合わせて処理されることができる。カリックス[4]アレーンの芳香族ビニルエーテル付加物(すなわち、分子性ガラス化合物)はフォトレジスト組成物を製造するのに有用な適切な溶媒中の溶液として使用されることができ、または沈殿もしくは噴霧乾燥によって固体として単離されうる。
【0038】
この分子性ガラス化合物からフォトレジストが製造される。フォトレジストはこの分子性ガラス化合物に加えて、溶媒および光酸発生剤を含む。
【0039】
溶媒には、フォトレジストにおける使用に適するものが挙げられる。典型的な溶媒には、アニソール、アルコール、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、および1−エトキシ−2−プロパノール、エステル、例えば、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、1−メトキシ−2−プロピルアセタート、メトキシエトキシプロピオナート、エトキシエトキシプロピオナート、ケトン、例えば、シクロヘキサノン、メチルヒドロキシイソブチラート、および2−ヘプタノン、並びに上記溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0040】
光酸発生剤には、一般的に、フォトレジストを製造する目的に適する光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤には、例えば、オニウム塩、例えば、モノ−もしくはジアリールヨードニウム、またはモノ−、ジ−もしくはトリアリールスルホニウム塩、ニトロベンジルエステル、スルホン酸エステル、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体およびハロゲン含有トリアジン化合物、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、ここで、塩のアニオンはフッ素化されているかまたはフッ素化されていないC1−40スルホン酸もしくはスルホンイミドアニオンである。
【0041】
フォトレジストに含まれうる他の成分には、光分解性塩基、クエンチャー(quencher)および/または界面活性剤が挙げられる。
【0042】
光分解性塩基には、光分解性カチオン、および好ましくは、例えば、C1−20カルボン酸のような弱酸(pKa>2)のアニオンと対になったPAGを製造するのに有用なものが挙げられる。典型的には、このカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、および他のこのようなカルボン酸が挙げられる。典型的には、光分解性塩基には、下記構造のカチオンとアニオンとを組み合わせたものが挙げられ:ここで、カチオンは、トリフェニルスルホニウムまたは下記:
【化9】

(式中、Rは独立してH、C1−20アルキル、C6−20アリールまたはC6−20アルキルアリールである)のもののいずれかであり、アニオンは
【化10】

RC(=O)−O、またはOH(式中、Rは独立してH、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールまたはC6−20アルキルアリールである)である。
他の光分解性塩基には、非イオン性光分解性発色団、例えば、2−ニトロベンジル基およびベンゾイン基などをベースにしたものが挙げられる。
【0043】
界面活性剤には、フッ素化および非フッ素化界面活性剤が挙げられ、かつ好ましくは非イオン性である。典型的なフッ素化非イオン性界面活性剤には、ペルフルオロC界面活性剤、例えば、3Mコーポレーションから入手可能なFC−4430およびFC−4432界面活性剤;並びに、フルオロジオール、例えば、オムノバ(Omnova)からのポリフォックス(POLYFOX)PF−636、PF−6320、PF−656およびPF−6520フルオロ界面活性剤が挙げられる。
【0044】
選択的に、または追加的に、他の添加剤には、光非分解性の塩基であるクエンチャー、例えば、水酸化物、カルボキシラート、アミン、イミンおよびアミドをベースにしたものなどが挙げられうる。好ましくは、このようなクエンチャーには、C1−30有機アミン、イミンもしくはアミドが挙げられ、または強塩基(例えば、ヒドロキシドもしくはアルコキシド)もしくは弱塩基(例えば、カルボキシラート)のC1−30第四級アンモニウム塩であり得る。典型的なクエンチャーには、アミン、例えば、トレーガー(Troger’s)塩基、ヒンダードアミン、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)もしくはジアザビシクロノネン(DBM)、またはイオン性クエンチャー、例えば、第四級アルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラメチルアンモニウム2−ヒドロキシ安息香酸(TMA OHBA)、もしくはテトラブチルアンモニウムラクタートが挙げられる。他の添加剤、例えば、当該技術分野において一般的に使用される溶解速度抑制剤および増感剤もフォトレジストに含まれうる。
【0045】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は分子性ガラス化合物を、固形分の全重量を基準にして50〜99重量%、好ましくは55〜95重量%、より好ましくは60〜90重量%、およびさらにより好ましくは65〜90重量%の量で含むことができる。フォトレジスト中の成分のこの文脈に使用される「分子性ガラス化合物」は本明細書に開示される分子性ガラス化合物のみ、またはこの分子性ガラス化合物とフォトレジストにおいて有用な別の分子性ガラス化合物もしくはポリマーとの組み合わせを意味することができることが理解されるであろう。光酸発生剤は、固形分の全重量を基準にして0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%、およびさらにより好ましくは2〜15重量%の量で含まれうる。使用される場合には、光分解性塩基は固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、およびさらにより好ましくは0.2〜3重量%で含まれうる。界面活性剤は固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%、およびさらにより好ましくは0.2〜3重量%の量で含まれうる。クエンチャーは、固形分の全重量を基準にして0.03〜5重量%の比較的少量で含まれうる。他の添加剤は、固形分の全重量を基準にして30重量%以下、好ましくは20重量%以下、またはより好ましくは10重量%以下の量で含まれうる。フォトレジスト組成物の全固形分量は固形分および溶媒の全重量を基準にして0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、およびさらにより好ましくは1〜20重量%でありうる。固形分は溶媒を除く、分子性ガラスおよび任意の関連するポリマー、光酸発生剤、並びに任意の光分解性塩基、クエンチャー、界面活性剤、および添加剤を含むことが理解されるであろう。所望の膜厚さを提供するようにフォトレジスト固形分が選択されるであろうし、よって溶液中のその全固形分は用途特異的であって、これら固形分量に限定されるものとは見なされるべきでないことがさらに理解されるであろう。
【0046】
フォトレジスト組成物はキャストされて基体上に層を形成することができる。好ましくは、よって、溶媒、並びに基体の表面に接触している界面活性剤および光分解性塩基のような添加剤の除去後に、フォトレジスト層は分子性ガラス化合物および光酸発生剤を含む。基体は任意の寸法および形状であることができ、かつ好ましくは、ケイ素、二酸化ケイ素、ストレインドシリコン(strained silicon)、ガリウムヒ素、コーティングされた基体、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルでコーティングされた基体、超薄型ゲート(ultrathin gate)酸化物、例えば、酸化ハフニウム、金属もしくは金属コーティングされた基体、例えば、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金およびこれらの組み合わせでコーティングされた基体である。好ましくは、本明細書においては、基体の表面はパターン形成される限界寸法層、例えば、1以上のゲートレベル層もしくは半導体製造のための基体上の他の限界寸法層を含む。このような基体には、例えば、直径が20cm、30cm、40cmもしくはより大きい寸法、またはウェハ製造に有用な他の寸法を有する円形ウェハとして形成されるケイ素、SOI、ストレインドシリコンおよび他のこのような基体材料が好ましくは挙げられうる。
【0047】
さらに、電子デバイスを形成する方法は(a)基体の表面上に分子性ガラス化合物を含むフォトレジスト組成物の層を適用し;並びに(b)このフォトレジスト組成物層を活性化放射線にパターン様(patternwise)に露光する;ことを含む。この方法はさらに、(c)露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ像を提供することを含む。
【0048】
適用はスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディングなどをはじめとするあらゆる好適な方法によって達成されうる。フォトレジストの層の適用は好ましくは、回転するウェハ上にフォトレジストが分配されるコーティングトラックを使用して、溶媒中のフォトレジストをスピンコーティングすることにより達成される。分配中に、ウェハは4,000rpm以下、好ましくは約500〜3,000rpm、およびより好ましくは700〜2,500rpmの速度で回転させられうる。コーティングされたウェハは回転させられて溶媒を除去し、そして適用後ベーク(post−apply bake;PAB)(当該技術分野においては「ソフトベーク」とも称される)において一般的にホットプレート上でベークされて、残留する溶媒をさらに除去し、そして膜から自由体積を除いて、膜を均一に密にする。好ましくは、上に述べたように、適用は適用後ベークをさらに含む。適用後ベークは任意の適する温度で行われうる。例えば、PABは約120℃以下、好ましくは110℃以下、およびより好ましくは100℃以下で行われうる。適用後ベークは任意の好適な時間にわたって、例えば、約120秒以下、好ましくは110秒以下、およびより好ましくは100秒以下にわたって行われることができる。
【0049】
次いで、ステッパのような露光ツールを用いてパターン様露光が行われ、露光ツールにおいてはパターンマスクを通して膜が照射され、それによりパターン様に露光される。この方法は好ましくは高解像が可能な波長で活性化放射線を発生させる改良型の露光ツールを使用する。よって、露光は、好ましくは、eビーム放射線もしくは極端紫外線(EUV)を使用して行われる。活性化放射線を使用する露光は露光領域でPAGを分解して、酸および分解副生成物を発生させ、次いでその酸はポリマーの化学変化をもたらす(酸感受性基をデブロッキング(deblocking)して塩基可溶性基を生じさせるか、あるいは露光領域において架橋反応を触媒する)ことが認識されるであろう。この露光ツールの解像度は30nm未満であり得る。
【0050】
露光後に、露光後ベーク(PEB)を行って、露光中に発生した酸を拡散させることによって、デブロッキングおよび/または架橋反応の触媒がさらにもたらされる。露光後ベークは任意の適する温度で行われうる。例えば、PEBは約150℃以下、好ましくは140℃以下、およびより好ましくは130℃以下で行われうる。露光後ベークは任意の適する時間にわたって、例えば、約120秒以下、好ましくは110秒以下、およびより好ましくは100秒以下にわたって行われうる。
【0051】
次いで、露光された層を、その膜の露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはポジティブトーンである)、またはその膜の未露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはネガティブトーンである)好適な現像剤で処理することにより、露光されたフォトレジスト層の現像が達成される。好ましくは、フォトレジストは、酸感受性(脱保護性)基を有するポリマーをベースにしたポジティブトーンであり、そして現像剤は好ましくは金属イオンを含まない、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、水性の0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。パターンは現像後に形成される。
【0052】
フォトレジストは電子および光電子デバイス、例えば、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップおよび他のこのようなデバイスを製造するために使用されることができる。
【実施例】
【0053】
ここで使用される全ての化合物は、手順が以下に提示されているものを除いて商業的に入手可能である。構造的な特徴付けは、バリアン(Varian)からのOMNI−PROBEを用いるINOVA 400スペクトロメータ(それぞれ、プロトンについて400または500MHzで操作する)における核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析によって行われた。分子性ガラスの分子量は、ウォーターズアソシエーテズによって製造されたウオーターズe2695LC/3100マスディテクター(Mass Detector)を用いて、C18カラムを有する逆相液体クロマトグラフを行って、アセトニトリル/水(80/20)〜(100/0)(v/v)グラジェントでのグラジェント溶離で、0.5mL/分の流量で、高解像質量分析検出器(LC−MS)を用いてm/zを提供することにより決定された。ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメントインコーポレーティドによって製造されたDSC Q2000示差走査熱量計を用いて、10℃/分の勾配速度で操作して決定された。他に特定されない限りは、全ての試薬は商業的に入手された。
【0054】
異なる数の遊離ヒドロキシ基を含むように、典型的なカリックス[4]アレーンコアが合成された。これら生成物は以下に提示される。
【0055】
カリックスアレーン例1〜5、8および9がそれぞれ以下の一般的手順に従って製造された。フェノール化合物(100mmol)が120mLのエタノールに添加され、次いで濃HCl(10mL)の添加が行われ、そしてこの混合物は室温で5分間にわたって攪拌された。所望のアルデヒド(100mmol)がこの混合物に滴下添加され、その後4〜6時間にわたって還流された。得られた混合物が室温まで冷却され、そして生じた固体がろ過によって集められた。粗生成物が水およびメタノール(3×50mL)で洗浄され、そして真空で60℃で一晩乾燥させられた。
【0056】
カリックスアレーン6(ベンゾチオフェン−レゾルシノールカリックス[4]アレーン)が以下の方法によって製造された。250mLの丸底フラスコに、レゾルシノール(2.00g、18.2mmol)、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(2.95g、18.2mmol)、エタノール(100mL)およびHCl(濃、10mL)が入れられた。窒素入口が備え付けられ、そして反応物が80℃で16時間にわたって攪拌された。反応は透明な溶液として始まったが、紫色の沈殿物をゆっくりと形成した。反応の完了後に、生じた溶液がフリット付き漏斗を通してろ過され、集められた固体が水(50mL)およびエタノール(50mL)で洗浄された。洗浄された生成物は真空で60℃で16時間にわたって乾燥させられた(収率:4.05g、88%)。LC−MS m/z=1017.2g/mol。
【0057】
カリックスアレーン7(ベンゾチオフェン−ピロガロールカリックス[4]アレーン)が以下の方法によって製造された。250mLの丸底フラスコに、ピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、3.89g、30.8mmol)、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(5.00g、30.8mmol)、エタノール(100mL)およびHCl(濃、10mL)が入れられた。窒素入口が備え付けられ、そして反応物が80℃で16時間にわたって攪拌された。反応は透明な溶液として始まったが、紫色の沈殿物をゆっくりと形成した。反応の完了後に、生じた溶液がフリット付き漏斗を通してろ過され、固体が水(50mL)およびエタノール(50mL)で洗浄された。生成物は真空で60℃で16時間にわたって乾燥させられた(収率:6.30g、76%)。LC−MS m/z=1081.2g/mol。
【0058】
例1−9のカリックスアレーンの構造が以下に示される:
【化11】

【0059】
例1〜9のカリックスアレーンについての物理データは以下の表1に示される。
【0060】
【表1】

【0061】
カリックスアレーン例1〜9のビニルエーテル付加物が以下のビニルエーテル化合物から製造された:
【化12】

【0062】
ビニルエーテル化合物であるNCVE、AnCVEおよびAdCVEを製造する手順が以下に提示される。
【0063】
2−ナフチルカルボン酸−2−エチルビニルエーテル(NCVE)が以下のように製造された。磁気攪拌装置を備えたオーブン乾燥された300mLの三ツ口丸底フラスコにおいて、2−ナフトエ酸(25g、0.145mol)および炭酸カリウム(24.0、0.170mol)が100mlのジオキサン中に懸濁され、そしてその混合物が室温で1時間にわたって攪拌され、濃厚スラリーを形成した。2−クロロエチルビニルエーテル(18.5g、0.170mol)が10mlのジオキサンに溶かされ、そしてこの反応混合物に1時間にわたってゆっくりと滴下添加された。薄層クロマトグラフィ(TLC)分析(シリカプレート;溶離液 クロロホルム中1%(v/v)メタノール)によって完全な反応が確認されるまで、この反応はさらに12時間にわたって還流で加熱された。この混合物をゆっくりと0.01%(v/v)塩酸(HCl)溶液400ml中に注ぎ込むことによってこの反応はクエンチされ、そしてこの粗生成物は300mlの酢酸エチル中に抽出された。この酢酸エチル抽出物が水およびブラインで中性のpHになるまで逐次的に洗浄され、次いで、この酢酸エチル抽出物は硫酸ナトリウムで乾燥させられ、ろ過され、ロータリーエバポレーションで濃縮されて(32.0g、92%収率)の琥珀色オイルとして生成物を得て、これは静値すると固化する。この生成物はさらなる精製なしに使用された。H NMR(500MHz、アセトン−d):δ8.64(s,1H)、8.08(d,2H,8Hz)、7.89(d,2H,8.5Hz)、7.64−7.59(q,2H)、6.56−6.52(d/d,1H,7Hz)、5.58(s,1H)、4.60(m,2H)、4.49(m,2H)、2.30(s,3H)、1.90(s,3H)。13C NMR(125MHz、CDCl):δ166.6、151.5、135.6、132.4、131.3、129.4、128.3、128.1、127.7、127.0、126.6、125.2、87.1、65.9、63.3。
【0064】
9−アントラセンカルボン酸−2−エチルビニルエーテル(AnCVE)および1−アダマンタンカルボン酸−2−エチルビニルエーテル(AdCVE)はそれぞれNCVEについて上で詳述された手順に従って製造され、それぞれアントラセンカルボン酸塩化物およびアダマンタンカルボン酸塩化物の分子量に対応する調節を伴った。
【0065】
分子性ガラス化合物を形成するために、以下の一般的手順に従ってビニルエーテル化合物(すなわち、NCVE、AnCVEまたはAdCVE)で保護された上記カリックス[4]アレーンの付加物が実施された。
【0066】
500mLの丸底フラスコ内に、例1〜9のベンゾチオフェン−レゾルシノールカリックス[4]アレーンコア(10mmol)およびビニルエーテル(20〜60mmolのNCVE、AnCVEまたはAdCVE)が入れられた。このフラスコは窒素でパージされて、無水ジオキサン(150mL)が添加された。この不均質溶液に、トリフルオロ酢酸(約10滴)が添加され、そして反応物が60℃に16時間加熱された。3時間後、この溶液は不均質溶液から透明暗色溶液に変わった。この反応の完了時に、この溶液は室温まで冷却され、そしてトリエチルアミン(20滴)が添加された。全ての揮発性物質がロータリーエバポレーターで除去され、粘稠なオイルがヘキサンで沈殿が形成するまですりつぶされた。この不均質溶液がフリット付き漏斗を通してろ過され、固体が集められた。アセトニトリルがこの固体に添加されて、50重量%固形分を有する溶液を調製し、そして逆相カラムクロマトグラフィが行われて、各成分を分離した。生成物は真空で50℃で16時間にわたって乾燥させられ(分離された成分もしくはブレンドの合計モル数を基準にして、収率85〜95%)、そして示差走査熱量測定(DSC)分析が行われて、ガラス転移温度(T)を決定した。各付加物についてのTデータが以下の表2に提示される。ブレンドが示される場合には、n=4、n=5およびn=6付加物の等モル混合物が使用される。
【0067】
【表2】

【0068】
NCVE付加物がフォトレジスト組成物中に配合されて、そしてリソグラフィーで評価された。
【0069】
リソグラフィー分析のための追加のポリマー(比較ポリマー1)が以下のように調製された。市販のポリヒドロキシスチレン/スチレン p(HS/Sty)(30g、90/10 HS/Sty比、Mw=5,444、Mw/Mn 1.28、東洋合成工業株式会社から入手)が100gの1,3−ジオキソランに溶かされた。約50gのこのジオキソランが減圧下で蒸留されて、このポリマー溶液から共沸的に残留水を除去した。この溶液は冷却されて、3.8g(0.016mol)の2−ナフトイルエチルビニルエーテルおよび0.28gのトリフルオロ酢酸(TFA)が添加された。この混合物は室温で8時間にわたって攪拌された。完了時に(ガスクロマトグラフィによって決定した)、0.24g(2.5mmol)のトリエチルアミンを添加することにより残留酸が中和された。生じたポリマーはこの反応混合物をジオキサン中で15%固形分まで希釈し、過剰容積のヘプタンに添加することによってポリマーを沈殿させることにより得られ、13C NMRによって決定して、それぞれ63/10/27のp(HS/Sty/NCVE)の組成比のこのポリマーのNCVE付加物を定量的収率で提供した。ポリスチレン標準へのユニバーサルキャリブレーションを用いたGPCによって、重量平均分子量(Mw)が5,700g/molであり、1.3の多分散度(Mw/Mn)であると決定された。
【0070】
比較および典型的なフォトレジスト組成物が以下のように配合された。
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(比較フォトレジスト1)が以下の手順を用いて製造された。市販のポリマーHSIIA2(0.215g;出光から入手可能)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックス(POLYFOX)PF656界面活性剤の1重量%溶液0.053g、乳酸エチル中の塩基添加剤(テトラメチルアンモニウムo−ヒドロキシベンゾアート;TMA−OHBA)の1重量%溶液0.215g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルフェニルスルホニウムシクロ−(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液0.646g、5.94gの乳酸エチル、および2.92gのヒドロキシメチルイソブチラート(HBM)が充分に混合されて固体を溶解し、そして0.1μmフィルタを通してろ過された。
【0071】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(比較フォトレジスト2)が以下の手順を用いて製造された。ポジティブトーンフォトレジスト組成物は、0.108gの比較ポリマー1(PHS/HS/NCVE)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックス(POLYFOX)PF656界面活性剤の1重量%溶液0.022g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液0.108g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート溶媒中のトリフェニルスルホニウムシクロ−(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液0.323g、2.98gの乳酸エチル、および1.46gのヒドロキシメチルイソブチラート(HBM)の混合物が一緒にされ、充分に混合されて固体を溶解し、そして0.1μmフィルタを通してろ過されることにより調製された。
【0072】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(フォトレジスト1)が以下の手順に従って調製された。NCVE保護された例7(n=4、5、6)のカリックス[4]アレーン0.054g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックスPF656界面活性剤の1重量%溶液0.011g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液0.054g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ−(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液0.161g、1.489の乳酸エチル、および0.731gのヒドロキシメチルイソブチラート(HBM)の混合物が充分に混合されて固体を溶解し、そして0.1μmフィルタを通してろ過された。
【0073】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(フォトレジスト2)が以下の手順に従って調製された。NCVE保護された例4(n=4)0.215g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックスPF656界面活性剤の1重量%溶液0.053g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液0.215g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ−(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液0.646g、5.94gの乳酸エチル、および2.92gのヒドロキシメチルイソブチラート(HBM)の混合物が充分に混合されて固体を溶解し、そして0.1μmフィルタを通してろ過された。
【0074】
ポジティブトーンフォトレジスト組成物(フォトレジスト3)が以下の手順に従って調製された。NCVE保護された例6(n=4)のカリックスアレーン0.215g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のポリフォックスPF656界面活性剤の1重量%溶液0.053g、乳酸エチル中の塩基添加剤(TMA−OHBA)の1重量%溶液0.215g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート中のトリフェニルスルホニウムシクロ−(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニル)イミド塩の5重量%溶液0.646g、5.94gの乳酸エチル、および2.92gのヒドロキシメチルイソブチラート(HBM)の混合物が充分に混合されて固体を溶解し、そしてろ過された(0.1μmろ過)。
【0075】
それぞれの比較のおよび典型的なフォトレジストは以下のようにリソグラフィ処理された。フォトレジストはTEL ACT−8コーティングトラック(東京エレクトロン株式会社)を使用して、市販の有機下層(AR9、ダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能)を有する200mmシリコンウェハ上にスピンコートされ、90℃で60秒間にわたって適用後ベークされて、約60nm厚さのフォトレジスト膜を形成した。得られたフォトレジスト層は、EUV−ES9000LTJツールを使用して(EUV放射線、13.4nm)、Eアレイを使用してフラッド露光された。パターン形成されたウェハは70℃〜90℃(以下の表3を参照)で露光後ベークされ、そしてそのイメージパターンは0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤水溶液で現像されて、ポジティブトーンフォトレジストパターンを形成した。Eデータは以下の表3に示される。
【0076】
【表3】

【0077】
表3に認められるように、フォトレジスト1〜3のフォトレジスト付加物はそれぞれ少なくとも、市販のコアと同等のE挙動を示した。例4のコアを使用して製造されたフォトレジスト2は、EUV波長で、最も早い比較フォトレジスト(比較フォトレジスト1)のよりも0.5mJ/cm低いEを示し、DUV波長において有意により早い(3.2mJ/cmだけより早い)Eを示した。
【0078】
本明細書に開示された全ての範囲は終点を含み、その終点は互いに独立して組み合わせ可能である。「場合によって」および「任意の」とはその後に記載された事象もしくは状況が起こってよく、または起こらなくてよく、そしてその記載はその事象が起こる例およびその事象が起こらない例を含む。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金もしくは反応生成物を包含する。全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書においては、順序、品質もしくは重要性を示すものではなく、1つの要素を他のものから区別するために使用されることもさらに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)式(I):
(OR (I)
(式中、RはH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、RはH、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキルであり、xは6−yであり、並びにyは2もしくは3であり、少なくとも1つのOR基はヒドロキシ基であり、並びに少なくとも2つのOR基は互いにメタである)の芳香族化合物と、
式(II):
Ar−CHO (II)
(式中、Arは置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC4−20複素環式芳香族含有部分、または置換されているか、ハロ置換されているか、もしくは非置換のC8−20縮合多環式芳香族部分である)の多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドと
のテトラマー反応生成物;並びに
B)前記芳香族化合物のヒドロキシ基、前記多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドのヒドロキシ基、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせとの付加物としての、酸により除去可能な保護基;
を含む分子性ガラス化合物。
【請求項2】
前記式(I)の芳香族化合物がレゾルシノール、ピロガロール、3−メトキシフェノールまたは3−エトキシフェノールである、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項3】
式(II)のArがC8−30アリール、C8−30ヘテロアリール、C8−30ハロアリール、C8−30ヘテロハロアリール、C8−30アラルキル、またはC7−20ハロアラルキルである、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項4】
前記多環式もしくは縮合多環式芳香族アルデヒドが式(III)または(IV):
【化1】

(式中、XはC(R、NR、S、もしくはOであり、R〜Rはそれぞれ独立してH、F、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキルもしくはC7−20ハロアラルキルであり、a、cおよびdはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、並びにbは1〜4+aの整数である)
のものである、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項5】
前記酸により除去可能な保護基がビニルエーテル、第三級アルキルエステル、第三級アルキルカルボニル、または前記のものの少なくとも1種を含む組み合わせの付加物である、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項6】
前記酸により除去可能な基が、
式(V):
−(L−C(=O)−O−C(R (V)
(式中、LはC1−20連結基であり、mは0または1であり、各Rは独立して置換されているかもしくは非置換であって、かつC1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、またはC7−20ハロアラルキルであり、場合によっては2以上の隣り合うR基は単結合によって互いに連結される)の部分;
前記テトラマー反応生成物のヒドロキシ基と、式(VI):
C(R=C(R10)−O−(L)−R11 (VI)
(式中、RおよびR10はそれぞれ独立して単結合、H、C1−20アルキル、C1−20ハロアルキル、C6−20アリール、C6−20ハロアリール、C7−20アラルキル、もしくはC7−20ハロアラルキルであり、LはC1−20連結基であり、nは0もしくは1であり、並びにR11は置換されているかもしくは非置換の単環式、多環式もしくは縮合多環式C1−20脂肪族基またはC6−20芳香族含有基であり、ここで、RおよびR10のいずれかもしくは両方が単結合であってかつnが0である場合にはRおよびR10はR11に連結される)の芳香族ビニルエーテルとの付加物;
または、前記酸により除去可能な基の少なくとも1種を含む組み合わせ;
を含む、請求項1に記載の分子性ガラス化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の前記分子性ガラス化合物を含むフォトレジスト。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項の前記分子性ガラス化合物、溶媒および光酸発生剤を含むフォトレジスト。
【請求項9】
(a)基体の表面上にパターン形成される1以上の層を有する基体;および(b)前記パターン形成される1以上の層上の、請求項7または8のフォトレジスト組成物の層;を含むコーティングされた基体。
【請求項10】
請求項9のコーティングされた基体を活性化放射線に露光することを含む、パターン形成された基体を形成する方法。
【請求項11】
露光がeビームおよび/またはEUV放射線を用いるものである請求項10に記載の方法。

【公開番号】特開2013−67612(P2013−67612A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202201(P2012−202201)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】