説明

カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの製法

本発明はエチレン系不飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンをオゾン分解することによりカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの製法に関する。
【0002】
カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの製法は公知である。こうしてY.Kwon等は、Macromolecules 2002,35,3348−3357中で、“リビング”ポリイソブテン−鎖と1,1−ジフェニルエチレンとの反応、引き続く1−メトキシ−1−トリメチルシロキシプロペンでの停止により、メトキシカルボニル基を末端に有するポリイソブテンにし、これをカルボキシ基を末端に有するポリイソブテンに加水分解することを記載している。この方法の欠点は、製造に費用がかかり、市販されていない1−メトキシ−1−トリメチルシロキシプロペンを使用することである。
【0003】
EP0123424はポリオレフィンと過酸化水素およびペルオキシドとを反応させ、カルボニル基およびカルボキシル基を末端に有するポリオレフィンからなる混合物を製造することを記載している。この欠点は、一つには爆発性のペルオキシドを使用することである。更に、得られるカルボキシル基を末端に有するポリオレフィンの収率は十分ではない。
【0004】
S.Nemes等はPolymer Bulletin 24,187−194(1990)に、基−C(CH)Clを末端に有するポリイソブテンをカリウム−t−ブタノレートおよびn−ブチルリチウムと反応させて相応するポリイソブテン−アニオンにし、引き続きこのアニオンと二酸化炭素とを反応させてカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンに変換することを記載している。この際の欠点は、高価で加水分解しやすい試薬の使用であり、このことは大量での使用に不適当である。
【0005】
US3427351はイソブテンと共役ジエンとの共重合により得られるコポリマーをオゾンと反応させ、引き続きオゾン分解生成物と強力な酸化剤とを反応させるか、またはハロホルム反応で、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンに変換することが記載されている。ここでの欠点は、使用したコポリマーを断片化し、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンを得るということである。狭い分子量分布を有する均質なポリマーはこの方法では得られない。
【0006】
R.F.Storey等はPolymer.Prepr.1997,38(2),283中に、基−C(CH)Clを末端に有するポリイソブテンをカリウム−t−ブタノレートと反応させて相応するエチレン系不飽和末端を有する脱離生成物とし、これをオゾンと反応させてメチルケトン基を末端に有するポリイソブテンに変換することを記載している。引き続き、これをハロホルム反応でカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンに変換する。
【0007】
更に、前記の最後に記載した3つの方法における欠点は、ポリイソブテンが多くの費用のかかる工程によってのみ相応するカルボキシル基を末端に有する生成物に変換されるということである。
【0008】
従って、本発明の課題はカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの簡単な製法を提供することであった。
【0009】
この課題は、式I
【0010】
【化1】

[式中、
Aは、重合開始剤から誘導された基を表し、
Mは、式II
【0011】
【化2】

の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
Bは、式IIIまたは式IVの基
−CH−CH=CH (III)
−CH=CR (IV)
(ここで、RおよびRはH、C〜C−アルキル基またはアリール基を表す)を表し、
nは、1〜6の数値を表す]の、エチレン系不飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンとオゾンとを反応させ、場合により、得られた反応混合物を引き続き60〜150℃の温度に加熱する、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの製法により解決する。
【0012】
カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンとは本願の発明の範囲においては、ポリイソブテン基の1つまたは複数の鎖末端にカルボキシル基を結合して含有するポリイソブテンであると理解される。本発明の範囲において鎖末端とは、ポリマー鎖の全ての末端のポリマー骨格の最も外側の炭素原子であると理解される。カルボキシル基とは、基−COOHまたは−COOm+1/mであると理解される。Mm+1/mとは、カチオン等価物を表す。有利なカチオン等価物はアルカリ金属カチオンおよびアルカリ土類金属カチオン、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムから、並びにアンモニウムカチオン[NR(ここで、R、R、RおよびRは相互に独立して、H、C〜C−アルキル、アリールまたはアラルキルを表す)から誘導されている。
【0013】
式IVにおいてRおよびRは有利に同じ基を表す。特にRもRもアリール、特にフェニルを表すのが有利である。選択的にRもRもメチルであるのが特に有利である。
【0014】
基Bの著しい特性は、二重結合のβ−炭素原子が、すなわちポリマー鎖のより内側に存在する炭素原子が、水素原子を有するということである。
【0015】
Aは重合開始剤から誘導された基を表す。この基の構造は、ポリイソブテン出発物質が製造される重合の種類に実質的に依存する。カチオン重合が、例えば加水分解により停止する場合、Aは例えばtert−ブチル基を表すことができる。ポリイソブテンが例えば開始剤分子(“Inifer”)の存在下に、リビングカチオン重合の条件下に製造される場合、Aは開始剤分子から誘導された基を表すこともできる。そのような開始剤分子およびこれから誘導された基の例は、例えばWO02/48215、EP0713883またはEP0279456中に記載されており、これらの文献に関しては全て本願に含まれる。
【0016】
ポリイソブテン出発物質が、少なくとも2官能性である開始剤分子、すなわちこれから少なくとも2本のポリマー鎖が出発することができる、開始剤分子の存在下にリビングカチオン重合の条件下に製造される場合、nは例えば数値>1である。nは1〜3の数値を、特に有利には1または2を表し、殊に有利には1を表す。
【0017】
本発明の範囲においては、C〜C−アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはt−ブチルを表し、有利にはメチル基を表す。C〜C−アルキル基は更にペンチル、ヘキシルおよびその位置異性体を表す。
【0018】
アリールは有利に場合により置換したフェニルまたはナフチルを表す。好適な置換基はOC〜C−アルキルおよびハロゲンを表す。アリールがフェニル、殊に非置換フェニルを表すのが特に有利である。
【0019】
アラルキルは有利にベンジルまたは1−または2−フェニルエチルを表す。
【0020】
ハロゲンは有利にフッ素、塩素または臭素を表す。
【0021】
式Iのエチレン系不飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンは当業者に公知である。こうして式中Bが基IVを表し、RおよびRがメチル基を表すポリイソブテンIは、例えば重合反応を加水分解により中断し、場合により引き続き、加水分解生成物に好適な条件下に脱離を実施することにより得られる。そのようなポリイソブテンおよびその製法は、例えばJ.P.Kennedy,B.Ivan“Designed Polymers by Carbocationic Macromolecular Engineering”、Oxford University Press,New York 1991に記載されている。
【0022】
式中Bが基IVを表し、RおよびRがフェニル基を表す式Iのポリイソブテンは、例えばイソブテンのリビングカチオン重合においてリビングポリマーを1,1−ジフェニル−エチレンおよび塩基と反応させることにより得られる、その際、ジフェニルビニルでキャップされたポリイソブテンが得られる。そのようなジフェニルビニルでキャップされたポリイソブテンおよびその製法は、例えばJ.Feldthusen、B.Ivan、A.H.E.MuellerおよびJ.Kopsにより、Macromol.Rep.1995,A32,639中に、J.Feldthusen、B.IvanおよびA.H.E.MuellerによりMacromolecules 1997, 30, 6989中におよびMacromolecules 1998, 31,578中に、およびDE−A−19648028およびDE−A−19610350中に記載されており、これに関してはここに完全に本発明に包含される。
【0023】
式中Bが基IIIを表す式Iのポリイソブテンは、例えばイソブテンのリビングカチオン重合においてリビングポリマーをアリルトリメチルシランと反応させることにより得られる、その際、アリルでキャップされたポリマーが得られる。アリルでキャップされたポリイソブテンおよびその製法は、例えばB.IvanおよびJ.P.Kennedyにより、J.Polym.Sci.PartA:Chem.Ed.1990,28,89中に記載されており、これは本願に完全に包含される。
【0024】
他のオレフィンを末端に有するポリイソブテンIは類似の方法により得られる。
【0025】
式Iのポリイソブテンは、有利に数平均分子量M100〜500000、特に有利に100〜50000、より有利には500〜20000、特に900〜12000であり、殊に900〜3000である。
【0026】
概念“ポリイソブテン”には、本願発明の範囲においてはオリゴマーイソブテン、例えばダイマー、トリマー、テトラマーイソブテンも入り、これはエチレン系不飽和二重結合を末端に有する。
【0027】
ポリイソブテンとは本発明の範囲においては、有利に少なくとも60質量%、特に有利には80質量%、より有利には少なくとも90質量%および殊に少なくとも95質量%のイソブテンを共重合して含有する、カチオン性重合により得られるポリマーであると理解される。その他にポリイソブテンは、その他のブテン異性体、例えば1−または2−ブテン、並びにこれらとは異なる、イソブテンとカチオン性重合条件下に共重合可能であるオレフィン系不飽和モノマーを共重合して含有することができる。
【0028】
本発明による方法のための出発物質として適しているポリイソブテンを製造するためのイソブテン供給物質としては、イソブテン自体もイソブテン含有C−炭化水素流、例えばC−ラフィネート、イソブテン−脱水素からのC−カット、水蒸気分解物からのC−カット、FCC−分解物(FCC:流動接触分解)が好適である、但しこれらは1,3−ブタジエンをほとんど含有しない。特に好適なC−炭化水素流は一般にブタジエンを500ppmより少量、有利に200ppmより少量含有する。使用材料として、C−カットを供給する際に、イソブテンとは異なる炭化水素は不活性溶媒の役割をはたす。
【0029】
共重合可能なモノマーとしては、ビニル芳香族、例えばスチレンおよびα−メチルスチレン、C〜C−アルキルスチレン、例えば2−、3−および4−メチルスチレン、並びに4−t−ブチルスチレン、炭素原子5〜10個を有するイソオレフィン、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1および2−プロピルヘプテン−1を挙げることができる。コモノマーとしては、更にシリル基を有するオレフィンを挙げることができる、例えば1−トリメトキシシリルエテン、1−(トリメトキシシリル)プロペン、1−(トリメトキシシリル)−2−メチルプロペン−2、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]エテン、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペンおよび1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]−2−メチルプロペン−2を挙げることができる。
【0030】
重合法により、得られたポリイソブテンの多分散性指数PDI(=M/M)はほぼ1.01〜10である。リビングカチオン性重合からのポリマーは、一般に約1.01〜2.0のPDIを示す。本発明による方法においては、有利に1.01〜1.5のPDIを有するポリイソブテンを使用する。
【0031】
式Iのポリイソブテンとオゾンとの反応は実質的に通常の公知技術水準、例えば
“Organikum”、第15改訂版、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften、330頁以降またはJ.March, Advanced Organic Chemistry,Wiley,New York,第3改訂版、第1066〜1070頁およびその中に引用された文献中に記載されている。オゾン分解は、一般に好適な溶媒中で実施される。好適な溶媒は例えばアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンまたは石油エーテル、シクロアルカン、例えばシクロヘキサンまたはシクロオクタン、ハロゲンアルカン、例えば塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタン、およびカルボン酸誘導体、例えば酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステルまたはジメチルホルムアミドである。更に、プロトン性溶媒、例えば水、C〜C−アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール、並びにカルボン酸、例えば酢酸またはプロピオン酸も好適である。前記溶媒の混合物も好適である。溶媒として、少なくとも1種のアルカン、特にヘキサン、および/または少なくとも1種のハロゲンアルカン、特に塩化メチル、クロロホルムまたは四塩化炭素を使用するのが有利である。
【0032】
オゾン分解は、有利に温度−100〜+40℃、特に有利に−78℃〜+30℃、殊に−25℃〜25℃および殊に有利に0℃〜20℃で実施する。
【0033】
通常の、本発明により使用したオゾンは常法により、例えばオゾン発生装置(オゾン発生器)を用いて、そこに空気または酸素を導入することにより生成する。オゾン発生器から流出する流体は一般にオゾンを約3〜4体積%、特に3.4〜3.8体積%含有する。
【0034】
ポリイソブテンIとオゾンとの反応は、例えば好適な溶媒中のポリイソブテンIを装入し、この溶液を所望の反応温度に調節し、引き続きオゾンもしくはオゾン含有ガス混合物を、例えばオゾン発生器で生じたオゾン含有ガス混合物を導入する。
【0035】
オゾン導入の速度は、特にバッチの大きさおよび導入されるガス流中のオゾン濃度に依存し、個別に調節する。この速度を、オゾンとポリイソブテンとの発熱反応の際に生じる反応熱を良好に導出することができるように選択するのが有利である。
【0036】
オゾン導入の期間は、特にバッチの大きさ、導入されるガス流中のオゾン濃度および導入速度に依存し、個別に調節する。しかしながら、少なくとも反応混合物が反応していないオゾンの存在に起因する青色を帯びるまで導入するのが有利である。
【0037】
オゾンの導入が終了した後に、反応混合物を有利に更に後反応させるが、その際、ここでも反応時間はバッチの大きさに依存させて、個別に決定しなければならない。この後反応の温度は、有利に−78℃〜40℃、特に−25〜25℃である。
【0038】
引き続き、なお存在するオゾンを場合により反応混合物から除去し、例えばその際酸素流、空気流または不活性ガス流を導通させる。
【0039】
オゾンの除去が終了した後に、例えばこのことは溶液の脱色により認識することができる、この反応混合物を一般に常法で後処理し、場合により熱的後処理を60〜150℃、有利に70〜120℃および特に有利に70〜100℃に加熱することにより実施する。反応混合物に予め後処理せずに熱的後処理を実施することも可能である。
【0040】
特に、Bが式IIIの基を表す、式Iのポリイソブテンを出発物質として使用した場合、熱的後処理を実施する。これに対して、Bが式IVの基を表し、特に、基IVにおいてRおよびRがフェニル基を表す式Iのポリイソブテンを出発物質として使用した場合、熱的後処理は必要なく、一般に直接カルボキシル基を末端に有するポリマーが得られる。
【0041】
オゾン分解からの反応混合物の後処理は、一般に、常法で、例えばオゾン分解で使用した溶媒を少なくとも部分的に除去し、場合により部分的にまたは完全に濃縮した生成物を好適な溶媒、例えばアルカン、例えばペンタン、ヘキサンまたはヘプタン中に取り込み、この溶液をオゾン分解生成物が溶解しない溶媒、例えばアルカノール、例えばメタノールまたはエタノールと混合することにより生成物を沈殿させることにより、実施する。オゾン分解をオゾン分解生成物が溶解するアルカンまたはその他の溶媒中で実施する場合、オゾン生成物の沈殿はもちろん反応混合物から直接実施することができる。後処理はクロマトグラフィーによってもまたは抽出によっても実施することができる。
【0042】
オゾン分解からの反応混合物の後処理の後に熱的後処理を実施する場合、一般に単離した生成物を好適な溶媒中に取り込み、温度60〜150℃、有利に70〜120℃、特に70〜100℃に加熱する。好適な溶媒は高沸点を有するもの、例えば芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼンおよびニトロベンゼン、DMSO、高級アルカン、例えばC〜C20−アルカン、例えばオクタデカン、鉱油留分およびその混合物である。芳香族炭化水素を使用するのが有利である。
【0043】
熱的後処理の時間は特にバッチの大きさおよび反応速度に依存し、個々の場合において決定する。
【0044】
オゾン分解からの反応混合物の予め実施する後処理なしに、熱的後処理を実施する場合、好適な方法で反応混合物から少なくとも部分的に溶媒を除去し、このことは例えば蒸留により、場合により減圧下に実施する。引き続き、この残分をすでに前記した高沸点溶媒の少なくとも1種中に取り込み、前記の温度に加熱する。この方法は、オゾン分解において使用した溶媒が熱的後処理を実施すべき温度を下回る沸点を有している場合に、特に有利である。しかしながら、このオゾン分解物から溶媒を除去することなく、全反応混合物を高沸点溶媒中に移すことも可能である。しかしながら、オゾン分解において使用した溶媒が熱的後処理のために十分に高い沸点を有している場合には、一般にこれを前記の溶媒により変える必要はなく、熱的後処理をこの溶媒中で実施することができる。
【0045】
熱的後処理による反応混合物の後処理は、多くの場合常法で実施される。例えば熱的後処理の際に使用された溶媒の少なくとも部分的な除去、場合により、部分的または完全に濃縮した生成物の好適な溶媒、例えばアルカン、例えばペンタン、ヘキサンまたはヘプタン中への取り込み、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンが溶解しない溶媒、例えばメタノールまたはエタノールのようなアルコールとの混合による生成物の沈殿により実施される。後処理はクロマトグラフィーによりまたは抽出により実施することもできる。
【0046】
本発明方法により得られるカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンは、公知技術の通常の方法により任意に誘導体化することができる。こうして、カルボキシル基は、例えば、カルボン酸塩、エステル基、アミド基、イミド基、アミジン、無水物またはカルボン酸ハロゲン化物に変換することができる。
【0047】
本発明による方法は、エチレン系不飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンから、ほぼ定量的な収率でかつ複雑な酸化工程なしに、オゾン分解により、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの簡単な製造を可能にする。
【0048】
次に実施例につき、本発明を説明するが、本発明はこれにより制限されることはない。
【0049】
実施例

1.式Iのポリイソブテンの製造
1.1 アリル基を末端に有するポリイソブテン(B=式IIIの基)のリビングカチオン重合による製造
n−ヘキサン600mlおよびジクロロメタン400mlからなる混合物中の、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)1.49g(0.01モル)、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)1.16g(0.01モル)および四塩化チタン30.35g(0.16モル)を、−78℃で不活性ガス雰囲気下に装入し、次いで撹拌下にイソブテン13.47g(0.24モル)この反応混合物中に供給する。この温度で3〜5分間撹拌した後、この反応混合物をアリルトリメチルシラン3.43g(0.03モル)と混合し、この混合物を更に30分間この温度で撹拌する。後処理のために、反応混合物をメタノール100mlで反応を停止させ、その際生じた2つの相から上方の相を分離し、これを濃度40〜50%に濃縮する。次いで、この濃縮したポリマー溶液を10倍体積量のメタノールに滴加し、その際生じたポリマーは沈殿する。メタノールの傾瀉除去後、この沈殿をn−ヘキサン200ml中に取り込んだ。この溶液を3回水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を除去した。沈殿を真空乾燥棚中で乾燥した後、生成物としてアリル基を末端に有するポリイソブテンが、数平均分子量Mn1300およびPDI1.04を有する、無色の高粘性油状物質の形で得られる。分子量はGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により測定した。
H−NMR(CDCl;400MHz):5.84(m、1H、−CH=)、5.00(t、2H、=CH)、2.02(d、2H、−CH−CH=CH)、1.0−1.6(m、ポリマー鎖のCH−基);0.99(−C(CH)。
【0050】
1.2 式Iのジフェニルビニル基を末端に有するポリイソブテン(B=式IVの基;R、R=フェニル)のリビングカチオン重合による製造
n−ヘキサン600mlおよび塩化メチレン400mlからなる混合物中のTMPCl 1.49g(0.01モル)、TMEDA 1.16g(0.01モル)およびTiCl 30.35g(0,16モル)を、−78℃で窒素雰囲気下に装入し、次いでこの温度で撹拌下にイソブテン13.47g(0.24モル)を供給した。この温度で5分間撹拌した後、1,1−ジフェニルエチレン3.60g(0.02モル)を添加し、この際、この反応混合物は黄色から赤色に変色した。この反応混合物を更に45分間撹拌した後、過剰のメタノールで反応を停止させ、その際、この混合物は脱色する。その際、生じた2つの相から上方の相を分離し、これから溶媒を除去した。残分をクロロホルム中に取り込み、約12時間室温で触媒量のHClの存在下に撹拌した。溶媒を減圧下に蒸発させた後、残分をn−ヘキサン中に溶かし、メタノール中に沈殿させる。メタノールを傾瀉除去し、残分をn−ヘキサン中に取り込んだ。この溶液を硫酸マグネシウム上で24時間乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下に除去した。沈殿を真空乾燥棚中で乾燥した後、生成物として2,2−ジフェニルビニルを末端に有するポリイソブテンが、数平均分子量Mn1700およびPDI 1.02を有する、油状物質の形で得られた。
H−NMR(CDCl;400MHz):7.1−7.4(m、10H、フェニル)、6.13(s、1H、CH=C(Ph))、1.0−1.6(m、ポリマー鎖のCH−基);0.99(s、9H、−C(CH)。
【0051】
2.オゾン分解
2.1 例1.1からの生成物のオゾン分解
オゾンの生成をFischer Scientific Co.のマイクロオゾン発生器(Mikro−Ozonisator)中に酸素(約5 l/h)を供給することにより実施した。このオゾン発生器は約100ml/分の酸素供給でオゾン約0.15ミリモル/分を生成した。
【0052】
n−ヘキサンおよび塩化メチレンからなる溶媒混合物(体積比2:8)10ml中の例1.1からのポリイソブテン1gを25℃で予め装入し、この反応混合物中にオゾンを貫流速度5l/hで4時間導入した。オゾン導入の終了後、溶媒を蒸発させ、残分をn−ヘキサン5ml中に溶かした。引き続き、この溶液を10倍体積量のメタノール中に添加し、これによりオゾン分解生成物が沈殿した。メタノールの傾瀉除去の後、沈殿を真空乾燥棚中で乾燥した。カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの他にカルボニル基を末端に有するポリマーおよびオゾニドも含有する生成物混合物を得た。
H−NMR(CDCl;400MHz):5.20(s、2H、CH−CH=C・O*)、5.18(m、1H、CH−C=CH・O*)、4.99(s、2H、CH−CH=C・O*);2.35(s、2H、−C−CHO);2.34(m、2H、−C−COOH);1.0−1.6(m、ポリマー鎖のCH−基);0.99(s、9H、−C(CH)。
IR[cm−1](KBr上のフィルム):2500−3500(OH);1712(CO);1707(CO);1105;1060(CH=CH・O*)
【0053】
【化3】

【0054】
熱的後処理:
オゾン分解からの生成物混合物0.4gをトルエン20ml中に溶かし、不活性ガス下に温度80℃に6時間加熱した。引き続き、40〜50%の溶液が得られるまで、トルエンを蒸発させ、これを10倍体積量のメタノールに滴加し、その際生成物が沈殿した。メタノールを傾瀉除去した後、沈殿を室温で、真空乾燥棚中で乾燥し、生成物としてカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンを定量的な収率で得た。
H−NMR(CDCl;400MHz):2.34(s、2H、−C−COOH);1.0−1.6(m、ポリマー鎖のCH−基);0.99(s、9H、−C(CH)。
IR[cm−1](KBr上のフィルム):2500−3500(OH);1707(CO)。
2.2 例1.2からの生成物のオゾン分解
オゾンの生成を前記のオゾン発生器中で実施した。
【0055】
塩化メチレン10ml中の例1.2からのポリイソブテン1gを室温で予め装入し、この反応混合物中にオゾンを貫流速度5l/hで4時間導入した。オゾン導入の終了後、窒素流を5分間、反応溶液中を貫通させ、過剰のオゾンを除去した。引き続き、溶媒を蒸発させ、残分をn−ヘキサン中に溶かし、メタノール中に溶液を導入することにより生成物を沈殿させた。メタノールの傾瀉除去の後、沈殿を真空乾燥棚中で乾燥し、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンが定量的な収率で得られた。
H−NMR(CDCl;400MHz):1.72(s、2H、−C−C(CHCOOH);1.0−1.6(m、ポリマー鎖のCH−基);0.99(s、9H、−C(CH)。
IR[cm−1](KBr上のフィルム):2500−3500(OH);1700(CO)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
Aは、重合開始剤から誘導された基を表し、
Mは、式II
【化2】

の繰り返し単位を有するポリマー鎖を表し、
Bは、式IIIまたは式IVの基
−CH−CH=CH (III)
−CH=CR (IV)
(ここで、RおよびRはH、C〜C−アルキル基またはアリール基を表す)を表し、
nは、1〜6の数値を表す]の、エチレン系不飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンとオゾンとを反応させ、引き続き、場合により得られた反応混合物を60〜150℃の温度に加熱する、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの製法。
【請求項2】
およびRがフェニル基を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
およびRがメチル基を表す、請求項1記載の方法。
【請求項4】
得られた反応生成物を温度70〜120℃に加熱する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
エチレン系飽和二重結合を末端に有するポリイソブテンをオゾンと温度−100〜40℃で反応させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
有機または無機材料の表面を変性するための、カルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの使用。
【請求項7】
燃料組成物および潤滑剤組成物中への添加物としてのカルボキシル基を末端に有するポリイソブテンの使用。

【公表番号】特表2007−502898(P2007−502898A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529826(P2006−529826)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005202
【国際公開番号】WO2004/101631
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】