説明

カルボジイミド変性組成物並びに紫外線や加熱装置で表面硬化させる方法並びに表面加工方法

【課題】被覆体を表面コーティングする方法であり、その被覆体の密着性及び耐熱性・耐水性・耐磨耗性を高めるために、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を用いて無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン樹脂をカルボジイミド変性したコーティング剤であり、それを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させること、また溶剤系接着剤として用いて張り合わせたフィルム・シート積層体、さらにはその硬化膜で被覆された合成樹脂成型品または金属成型品などの表面加工成型品を提供することを目的とするものである。
【解決手段】特定の非晶性ポリプロピレン系樹脂を無水マレイン酸で変性処理して得られた樹脂成分を反応溶媒に溶解させ、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を所定の配合比で20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物を難接着性被覆体にコーティングするコーティング剤として用いること、及びそれを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させることで、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆体を表面コーティングする方法であり、その被覆体の密着性及び耐熱性・耐水性・耐磨耗性を高めるために、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を用いて、無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン樹脂をカルボジイミド変性したコーティング剤であり、それを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させること、また溶剤系接着剤として用いて張り合わせたフィルム・シート積層体、さらにはその硬化膜で被覆された合成樹脂成型品または金属成型品などの表面加工成型品を提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
難接着性のポリプロピレンなど合成樹脂成型品やステンレスなど鏡面仕上げした金属成型品との密着性を高めるための塗装・表面コーティング剤として、環境配慮型非塩素系変性ポリプロピレン系コーティングが提案されている。
例えば、特許文献1には塗膜のべたつきがなく、低温ヒートシール性に優れ、ポリオレフィンと良好な密着性を示すコーティング剤が提案されている。
しかし、このコーティング剤は一部結晶性のある繰り返し単位のセグメントを保有するポリプロピレン系エラストマー構造のために、耐熱性や鏡面仕上げの金属に対する密着性煮沸試験(耐水性)が不十分である等の問題点があった。
また特許文献2には、耐衝撃性と耐熱性を向上させる新規な相溶化剤が提案されている。
この場合のポリプロピレン系重合体の結晶化度は、通常40%以上の結晶性を有しているために、鏡面仕上げの金属に対する密着性が煮沸試験(耐水性)にて不十分である等の問題点があった。
【0003】
また特願2007−190168号には、本発明者らが被覆体に密着性を高めるために専用プライマー組成物を用いて下地処理すること、及び常温にて表面硬化するコーティング剤を用いて表面硬化させること、さらにはその硬化膜で被覆された合成樹脂成型品または金属成型品などの表面加工成型品を提案しているが、ポリエステル基材での高温Z字折り曲げテストにおいて剥離する等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−311036号公報
【特許文献2】特開2005−307157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は被覆体を表面コーティングする方法であり、その被覆体の密着性及び耐熱性・耐水性・耐磨耗性を高めるために、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を用いて無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン樹脂をカルボジイミド変性したコーティング剤であり、それを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させること、さらにはその硬化膜で被覆された合成樹脂成型品または金属成型品などの表面加工成型品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の非晶性ポリプロピレン系樹脂を無水マレイン酸で変性処理して得られた樹脂成分を反応溶媒に溶解させ、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を所定の配合比で20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物を難接着性被覆体にコーティングするコーティング剤として用いること、及びそれを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させることで、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は重量平均分子量が40,000〜200,000、分子量分布(Mw/Mn)5以下のメタロセン系触媒で合成された非晶性ポリプロピレン系樹脂に対して、無水マレイン酸で変性処理をしたマレイン酸変性率0.3〜10.0重量%、重量平均分子量25,000〜150,000の無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂を10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物を用いること、あるいは重量平均分子量が20,000〜100,000、分子量分布(Mw/Mn)5以下のメタロセン系触媒で合成された低結晶性ポリプロピレン系樹脂に対して、無水マレイン酸で変性処理をしたマレイン酸変性率0.3〜10.0重量%、重量平均分子量12,000〜60,000の無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂を、請求項1の非晶性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して5〜40重量部の割合で配合した無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂合計量10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物を用いることで、問題が解決されるものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明の効果を説明すると、非晶性ポリプロピレン系樹脂に対して、無水マレイン酸で変性処理をした樹脂を反応溶媒に溶解させて、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を所定の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させることで、被覆体の密着性及び耐熱性・耐水性・耐磨耗性を高めたコーティング剤が提供される。
請求項2の効果を説明すると、非晶性ポリプロピレン系樹脂に対して無水マレイン酸で変性処理をした樹脂に、低結晶性ポリプロピレン系樹脂に対して無水マレイン酸で変性処理をした樹脂を、所定の割合で反応溶媒に溶解させて、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹と所定の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させることで、請求項1と同様に被覆体の密着性及び耐熱性・耐水性・耐磨耗性を高めたコーティング剤が提供される。
請求項3の発明により、コーティング方法が提供される。また請求項4の発明によりフィルム・シート積層体が提供される。
さらに請求項5の発明により従来は難接着性被覆体であったポリエチレン・ポリプロピレン等のポリアルケンやシクロペンテン系重合体やノルボルネン系開環重合体などのポリオレフィン樹脂、PETやPENなどのポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂などの合成樹脂またはアルミニウム、ステンレス、銀、銅、などの金属表面などの表面加工成型品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の被覆体に塗布するコーティング剤は、ポリプロピレン系樹脂を10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させることを特徴とする。
上記非晶性ポリプロピレン系樹脂はプロピレンおよびエチレン、ブテン他のモノマーを共重合して得られる。
非晶性ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量は、40,000〜200,000、好ましくは70,000〜150,000である。重量平均分子量が上記範囲であれば、無水マレイン酸変性処理がしやすく、高接着性の樹脂が得られる。分子量分布(Mw/Mn)は、5以下であり、好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。分子量分布が5以下であることで耐ブロッキング性が向上する。なお、該分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から算出される数値である。
非晶性ポリプロピレン系樹脂の極限粘度[η]は0.7〜10dl/gであることが好ましい。上記範囲であれば、樹脂組成物の接着性と耐ブロッキング性の両立が可能になる。上記観点より好ましくは0.9〜8dl/g、さらに好ましくは、1.2〜7dl/gである。
なお、該極限粘度[η]は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
本発明のポリプロピレン系樹脂は、一部結晶性のある繰り返し単位のセグメント保有のエラストマー構造ではない非晶性ポリプロピレン系樹脂である。上記非晶性ポリプロピレン系樹脂を用いることで、樹脂組成物の接着性とともに、耐水性が向上する。
非晶性の基準としては示唆走査熱量測定(DSC)が利用でき、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークおよび結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されないことが好ましい。結晶融解熱量および結晶化熱量は以下の条件で測定できる。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、その後5分間200℃に保つ。
(ii)200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温し、その後5分間−100℃に保つ。
(iii)−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する。
上記(ii)および(iii)で観測されるピークがそれぞれ、結晶化ピークおよび結晶融解ピークであり、本発明においては1J/g以上のピークがないことが好ましい。
【0009】
本発明において非晶性ポリプロピレン系樹脂はメタロセン触媒で製造されたものを用いることが好ましい。メタロセン系触媒で合成された非晶性ポリプロピレン系樹脂を用いることで、樹脂組成物の耐ブロッキング性が向上する。メタロセン系触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒が挙げられる。
【0010】
本発明において、非晶性ポリプロピレン系樹脂を無水マレイン酸で変性する方法は従来公知の技術を使用することができ、その方法は特に限定されない。例えば、非晶性ポリプロピレン系樹脂を溶融させた後、有機過酸化物および無水マレイン酸を添加する方法や、非晶性ポリプロピレン系樹脂をトルエン、キシレンなどの溶媒に溶解した後、有機過酸化物および無水マレイン酸を添加する方法が挙げられる。また、ポリオレフィン系エラストマーの酸変性・動的架橋で用いられる二軸押出機などを利用することもできるが、無水マレイン酸の付加反応率を上げる観点から、熱媒体で反応温度をコントロールする特殊攪拌翼付きの反応釜を用いることが好ましい。
無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂の分子量は、重量平均分子量が40,000〜150,000、好ましくは70,000〜120,000である。40,000を下回ると接着力性能が低下する可能性があり、150,000を上回ると、高粘度のため取り扱いが困難になる。また、マレイン化率は0.3〜10重量%であり、好ましくは1〜4重量%である。0.3重量%を下回ると、接着力性能が低下し10重量%を上回ると高粘度のため取り扱いが困難である。なお、本発明においてマレイン化率とは非晶性ポリプロピレン系樹脂成分に対する無水マレイン酸の割合を意味する。溶融粘度は好ましくは185℃で25,000〜45,000mPa・sであり、より好ましくは27,000〜33,000mPa・sである。25,000mPa・sを下回ると接着力性能が低下する可能性があり、45,000mPa・sを上回ると、取り扱いが困難になる。酸価は好ましくは5〜20mgKOH/gであり、より好ましくは8〜15mgKOH/gである。5mgKOH/gを下回ると水系エマルジョン化が困難であり、20mgKOH/gを上回ると、高粘度のため取り扱いが困難になる。
この無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂を、10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させてカルボジイミド変性組成物を得る。
脂環式炭化水素溶剤としては、シクロヘキサン・メチルシクロヘキサンなどが、エステル系としては、酢酸エチル・酢酸ブチルなどが、芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン・キシレンなどが、ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン・メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。反応溶媒の配合比は60〜75重量%が好ましい。60重量%を下回ると樹脂の溶解が困難となる。
【0011】
また無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂を5〜40重量部の割合で配合したポリプロピレン系樹脂10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させてカルボジイミド変性組成物を得る場合もある。
低結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、重量平均分子量が20,000〜100,000、分子量分布(Mw/Mn)5以下のメタロセン系触媒で合成された分子量分布のシャープな低結晶性ポリプロピレン系樹脂であり、具体的には出光興産(株)製のLMPPやClariant社製の「リコセン(Licocene)」PP1602などが挙げられる。
この樹脂の無水マレイン酸変性は、上述した非晶性ポリプロピレン系樹脂の無水マレイン酸変性と同様の方法でマレイン酸変性率0.3〜10.0重量%、重量平均分子量12,000〜60,000の無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂を得る。この無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂は、無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して5〜40重量部の割合で配合するのが好ましい。40重量部以上に配合すると結晶性が増加するため鏡面仕上げの金属に対する密着性が煮沸試験(耐水性)にて不十分となる可能性がある。
【0012】
カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂としては、脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤に溶解可能なものが好ましく、具体的には日清紡績(株)製の「カルボジライト」油性タイプのV−01、V−03、V−07などのグレードが好ましい。
ポリカルボジイミド系樹脂は1.0〜5.0重量%の配合比が好ましく、より好ましくは1.5〜3.5重量%である。無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂の酸無水基とカルボジイミド基の当量比では1.0対0.5〜2.0が好ましい。
反応は通常の攪拌機付反応釜で脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤の反応溶媒中で20〜100℃の温度範囲で反応時間を1.0〜3.0時間かけて行ない、カルボジイミド変性組成物のコーティング剤を得る。
【0013】
このコーティング剤は通常の塗布方法でコーティングすることができ、例えば刷毛塗り、スプレー、浸漬、ロール等の各種塗布方法を選択することができる。
また表面硬化の方法は、通常の紫外線や加熱装置を用いて高温にて溶剤を飛散させて行う。このとき形成する塗膜の厚みとしては、乾燥塗膜で5〜50μm程度とするのが好ましい。
また被着体成形品の形状は用途により適時選択しうるが、シート、フィルム、板状などが好適である。
以上特定の非晶性ポリプロピレン系樹脂を無水マレイン酸で変性処理して得られた樹脂成分を反応溶媒に溶解させ、カルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂を所定の配合比で20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物を、難接着性被覆体であるポリエチレン・ポリプロピレン等のポリアルケンやシクロペンテン系重合体やノルボルネン系開環重合体などのポリオレフィン樹脂、PETやPENなどのポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂などの合成樹脂またはアルミニウム、ステンレス、銀、銅などの金属表面をコーティングするコーティング剤として用いること、及びそれを紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させることで、コーティング方法が可能となる。
【実施例】
【0014】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0015】
なお実施例中の物性の評価は下記の通り行った。
(1)耐熱性 :136℃×7日間のZ字折り曲げテスト
評価◎(密着良好),△(一部剥離),×(完全剥離)
(2)接着試験:性能評価サンプル1〜4を15mm幅に裁断後、同一サイズの50μm
PETフィルムにヒートシール〔180℃で1秒間のホットプレス
(0.1MPa)〕した後、JIS K6854に従って引張り試験を 行った。
引張り試験条件は、25℃で100mm/分の速度、90度剥離
(試験片15mm幅)で行い、以下の基準で評価した。
評価(単位:N/15mm)
◎4.5以上, ○3.0以上〜4.5未満,
△2.5以上〜3.0未満,×2.5未満
(3)耐水性 :煮沸30分間
評価 ◎(変化なし),△(乳濁),×(剥離)
(4)耐磨耗性:500gf荷重100往復(耐スチールウール性)
評価 ◎(傷なし),△(多少傷あり),×(傷有り)
【0016】
製造例1(無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂組成物の製造)
オイルバス中で窒素供給配管および冷却器を備え、攪拌翼および温度計をセットした4つ口フラスコに、「タフセレンSCC25」(住友化学(株)製)100重量部を逐次投入し、窒素気流下で3時間かけて170℃まで昇温した。系内の樹脂温度が170℃付近になったところで、250rpmで回転し、系内を170℃の均一な温度に保った。この間滴下ロートを60℃に保温して、溶融した無水マレイン酸(日本油脂(株)製)4重量部および有機過酸化物「パ−ヘキサ25B」(日本油脂(株)製)1重量部を各滴下ロートに保持した。系内が均一で安定したところで、上記無水マレイン酸および有機過酸化物を4対1の重量比で、少量ずつ滴下開始した。滴下開始から10分後に、攪拌速度を500rpmに上げて高速攪拌に保ち、順次所定量ずつ滴下して、窒素雰囲気下にて約2時間、系内温度150〜170℃にて反応を行なった。滴下終了後も高速攪拌のまま、150〜160℃にて約1時間仕上げの反応を行なった。得られた無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂組成物の物性は、マレイン化比率が1.3%(未反応の無水マレイン酸は0.1%以下)、溶融粘度は185℃で27,100mPa・s、酸価は12.6mgKOH/g、重量平均分子量は81,610(GPC法にて測定)であった。
【0017】
製造例2(無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物の製造)
「タフセレンSCC25」の代わりに「リコセン(Licocene)PP1602」(Clariant社製)を使用した他は製造例1に記載の方法により無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂組成物を合成した。該樹脂組成物の物性は、マレイン化比率が1.3%(未反応の無水マレイン酸は0.1%以下)、溶融粘度は185℃で7,000mPa・s、酸価は11.6mgKOH/g、重量平均分子量は43,000(GPC法にて測定)であった。
【0018】
実施例1(カルボジイミド変性組成物の製造と性能評価サンプル1製造)
製造例1で得られた無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂組成物18.3重量部にトルエン64重量部を添加して1.5時間かけて80℃まで昇温し、さらに1時間かけて完全溶解させた後、トルエン4重量部に溶解したカルボジライトV−03 1.7重量部を一括で添加し、約5時間かけて加熱攪拌した。その後70℃に冷却し、メチルエチルケトン16重量部を追加添加して30分間攪拌し、250メッシュにてろ過して固形分20重量%、酸価11.1mgKOH/g、重量平均分子量は114,000(GPC法にて測定)のカルボジイミド変性組成物を得た。
このカルボジイミド変性組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み50μm)上に、バーコーター#12(ドライ膜厚5μm相当)を用いて、手塗りにて片面に塗布して、115℃で15分乾操させて性能評価サンプル1−A、1−Bを得た。
【0019】
実施例2(カルボジイミド変性組成物の製造と性能評価サンプル2製造)
製造例1で得られた無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂組成物11.3重量部に、製造例2で得られた無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物7.0重量部の混合物とトルエン64重量部を添加して1.5時間かけて80℃まで昇温し、さらに1時間かけて完全溶解させた後、トルエン4重量部に溶解したカルボジライトV−03 1.7重量部を一括で添加し、約5時間かけて加熱攪拌した。その後70℃に冷却し、メチルエチルケトン16重量部を追加添加して30分間攪拌し、250メッシュにてろ過して固形分20重量%、酸価10.1mgKOH/g、重量平均分子量は78,000(GPC法にて測定)のカルボジイミド変性組成物を得た。
このカルボジイミド変性組成物をPETフィルム(厚み50μm)上に、バーコーター#12(ドライ膜厚5μm相当)を用いて、手塗りにて片面に塗布して、115℃で15分乾燥させて性能評価サンプル2−A,2−Bを得た。
【0020】
比較例1(カルボジイミド未変性物の性能評価サンプル3製造)
製造例1で得られた無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂組成物20.0重量部をトルエン64重量部と混合し、1.5時間かけて100℃まで昇温し、さらに1時間かけて完全溶解させた後、70℃に冷却しメチルエチルケトン16重量部を追加添加して30分間攪拌し、固形分20重量%、酸価12.6mgKOH/g、重量平均分子量は81,610(GPC法にて測定)のカルボジイミド未変性物を得た
このカルボジイミド未変性物をPETフィルム(厚み50μm)上に、バーコーター#12(ドライ膜厚5μm相当)を用いて、手塗りにて片面に塗布して、115℃で15分乾燥させて性能評価サンプル3−A,3−Bを得た。
【0021】
比較例2(無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物100%使用での性 能評価サンプル4製造)
製造例2で得られた無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂組成物20.0重量部をトルエン64重量部と混合し、1.5時間かけて100℃まで昇温し、さらに1時間かけて完全溶解させた後、トルエン4重量部に溶解したカルボジライトV−03(日清紡績(株)製)1.7重量部を一括で添加し、約5時間かけて加熱攪拌した。その後70℃に冷却し、メチルエチルケトン16重量部を追加添加して30分間攪拌し、250メッシュにてろ過して固形分20重量%、酸価10.6mgKOH/g、重量平均分子量は78,000(GPC法にて測定)のカルボジイミド変性組成物を得た。
このカルボジイミド変性組成物をPETフィルム(厚み50μm)上に、バーコーター#12(ドライ膜厚5μm相当)を用いて、手塗りにて片面に塗布して、115℃で15分乾燥させて性能評価サンプル4−A,4−Bを得た。
【0022】
上記実施例1〜2および比較例1〜2で得られた試験片サンプル1〜4のA,Bで性能評価をおこなった。その結果を表−1に示す。
【表−1】

実施例−1および2はすべて要求性能を満足している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が40,000〜200,000、分子量分布(Mw/Mn)5以下のメタロセン系触媒で合成された非晶性ポリプロピレン系樹脂に対して、無水マレイン酸で変性処理をしたマレイン酸変性率0.3〜10.0重量%、重量平均分子量25,000〜150,000の無水マレイン酸変性非晶性ポリプロピレン系樹脂を10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物。
【請求項2】
重量平均分子量が20,000〜100,000、分子量分布(Mw/Mn)5以下のメタロセン系触媒で合成された低結晶性ポリプロピレン系樹脂に対して、無水マレイン酸で変性処理をしたマレイン酸変性率0.3〜10.0重量%、重量平均分子量12,000〜60,000の無水マレイン酸変性低結晶性ポリプロピレン系樹脂を、請求項1の非晶性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して5〜40重量部の割合で配合した無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂合計量10〜25重量%及び反応溶媒としての脂環式炭化水素とエステル及びケトン系の混合溶剤あるいは芳香族炭化水素とエステル及びケトン系混合溶剤60〜75重量%及びカルボジイミド基を含有するポリカルボジイミド系樹脂1.0〜5.0重量%の配合比で、20〜100℃の範囲で反応させたカルボジイミド変性組成物。
【請求項3】
請求項1、又は2記載のカルボジイミド変性組成物を溶剤系コーティング剤として用いて、被覆体に塗布して被着体とする被着体塗布手段と、
該被着体表面を紫外線や加熱装置を用いて表面硬化させることからなる表面硬化方法。
【請求項4】
請求項1、又は2記載のカルボジイミド変性組成物を溶剤系接着剤として用いて、張り合わせたフィルム・シート積層体。
【請求項5】
請求項1又は2記載のカルボジイミド変性組成物を溶剤系コーティング剤として用いて、表面を硬化させた表面加工成型品。

【公開番号】特開2009−62506(P2009−62506A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261363(P2007−261363)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(501350970)日本シーマ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】