説明

カロテノイドの吸収性及びバイオアベイラビリティの改善、製剤並びに用途

ミセルとして消化器系に容易に取り込まれ、微視的なカロテノイド結晶を含有する多様な調製物として摂取されるカロテノイドのバイオアベイラビリティと比較して、バイオアベイラビリティの改善をもたらす、ジアセテート又はジプロピオネート誘導体等の微視的な物理的状態のキサントフィル又はオキシカロテノイド誘導体の形態を得るためのプロセス、及びその適用方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[A 発明の分野]
本発明は、水の存在下にて脂質マトリックス中でカロテノイドミセルを得ることにより、カロテノイドのバイオアベイラビリティを著しく改善するプロセスに関する。このような脂質マトリックスは、乳化剤に加えて、キサントフィルが自然に結合する遊離脂肪酸、並びにカロテノイド抽出物中に天然に存在するワックス、リン脂質及びステロールからなる。ルテイン、ゼアキサンチン及び他のカロテノイドと、酢酸又はプロピオン酸等の短鎖有機酸とのエステル化反応、及び更なる処理中、脂質マトリックス中でカロテノイドミセルの形成が起こり、これは腸壁を介して容易に吸収されることが判明した。このような吸収は、カロテノイド結晶のより低いバイオアベイラビリティと比較して、顕著な改善である。本発明は、ヒト、家禽及び海洋生物におけるバイオアベイラビリティを改善する、カロテノイドのマイクロエマルジョン製剤及びナノエマルジョン製剤にも関する。
【0002】
[B 関連技術の説明]
カロテノイドは、その典型的な着色特性(黄色色素、橙色色素又は赤色色素)以外に、生物活性を有する分子の前駆体として機能し、様々な重要な生物学的過程及び生理学的過程に介入する、テルペノイド化合物である。
【0003】
600種を超えるカロテノイドが、天然に認められている。カロテノイドは、2つの主要な群に分けられる。1つは、炭素原子及び水素原子のみを含む炭化水素分子であるカロテンである。カロテンの代表的な例には、β−カロテン及びリコペンが挙げられる。もう1つは、カロテンの酸化誘導体である、キサントフィルである。キサントフィルの例には、ルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、3'エピルテイン、及びカンタキサンチンが挙げられる。
【0004】
カロテノイドは、天然に広く分布している。天然における年間総生産量は、1億トン超と推定される。カロテノイドは、全ての生物の生理機能に介入する。カロテノイドは、微細藻類、細菌、菌類及び動物プランクトン等の海洋微生物により行われる光合成反応並びに酵素反応によって天然に生成され、陸生植物の多くでは、葉、花及び果実中に存在する。
【0005】
花及び果実において、カロテノイドは鮮やかな黄色、橙色及び赤色を与える。
【0006】
鳥において、カロテノイドは、美容上の目的と同様に不可欠な役割を演じる。すなわち、性を分化させ、性的な成熟及び魅力を示す。
【0007】
海洋生物では、カロテノイドは陸上生物よりも豊富であり、いくつかの重要な生物学的機能、生理機能、代謝機能及び生殖機能に関与している。カロテノイドは、海洋微細藻類及び海洋細菌、オキアミ、サケ、マス、マダイ、ハマチ、甲殻類等に色を与える。
【0008】
動物種は、カロテノイドを合成できない。従って、食餌を介してその必要量を確保しなければならない。飼育下で成長したブロイラー及び産卵鶏は、その必要量を補うために、飼料中に所与の量のルテイン及びゼアキサンチンを必要とする。産卵鶏は、卵黄中にルテイン、ゼアキサンチン及びカンタキサンチンを蓄積し、急速に発生する胚において高い代謝反応速度によって発生するフリーラジカルにより引き起こされる酸化的損傷から胚を保護する。一方で、ブロイラーは、脂肪組織中並びに皮膚内にルテイン及びゼアキサンチンを蓄積する。このような沈着物は、カロテノイドの貯留層として作用し、特定の生理機能を行うために必要とされる場合に利用できるようになる。
【0009】
一部のカロテノイドは、陸上生物又は海洋生物により代謝され、ビタミンAになるが、このようなカロテノイドは、自然環境において草食生物又は雑食生物の唯一のビタミンA源である。
【0010】
カロテノイドは、大部分の生物において有効な抗酸化剤として作用する。カロテノイドは、細胞レベルで代謝反応中に生成されるフリーラジカルを消去し、組織の劣化を回避する能力を有する。
【0011】
ここ何年かの広範な研究は、黄斑部でのルテイン及びゼアキサンチンの存在が、白内障の発症を回避するだけでなく、ヒトにおける加齢性黄斑変性症の予防を補助することを示している。ルテイン及びゼアキサンチンは、ヒト母乳中、及び脂肪組織中にも存在する。
【0012】
黄色のトウモロコシの他にも、濃緑色葉野菜、トマト、及びオレンジ、マンゴー、グレープフルーツ等の多くの果実は、食事性カロテノイドの天然源である。カロテノイドは、非共有結合によりタンパク質又は繊維に結合した有色体に高濃度で存在する。しかし、葉緑体又は有色体、及び他の植物構造材料は、バイオアベイラビリティが低いため、ヒトが摂取するのに理想的なカロテノイド源となり得ない。カロテノイドは、光合成器官の一部として(緑色葉野菜)、油滴に溶解されて(果実)又は半結晶性膜結合固体(ニンジン、トマト)として食用植物中に存在する。ルテイン、ゼアキサンチン及びクリプトキサンチン等のカロテノイド脂肪酸エステルは、マリーゴールド(Tagetes erecta)及び赤トウガラシ(Capsicum annum)から得られるキサントフィル濃縮物中だけでなく、一部の果実(モモ、パパイヤ、トウガラシ)中にも存在する。
【0013】
カロテノイドが生物に吸収されるためには、有色体マトリックスから予め遊離していなくてはならない。カロテノイドは、粘膜に取り込まれる前に、大抵は膵臓から分泌されるカルボン酸エステルヒドロラーゼによって、腸管腔内で加水分解されると考えられている。
【0014】
動物において、カロテノイドの吸収は、脂質の吸収、即ち乳化及び混合ミセルへの取り込み後に起こり、次いで脂肪の消化及び吸収と同時に、小腸、主に十二指腸内の粘膜により吸収されることが、一般的に認められている。カロテノイドは、撹拌されていない水層を介して輸送され、受動拡散により腸細胞に取り込まれる。
【0015】
腸粘膜壁において、カロテノイドが結晶形である場合よりも、脂質に溶解して、水性媒体中でミセルを形成している場合に、このような受動拡散が改善する。結晶は、この拡散が生じるのに理想的な物理的形状ではなく、カロテノイド結晶もミセルに容易に取り込まれない。カロテノイドがマイクロエマルジョンとして、又はナノエマルジョンとしてすでに腸内に進入している場合、ミセルの形成が促進される。
【0016】
カロテノイドが吸収されると、内腔側から漿膜側に腸細胞を介して輸送される。カロテノイドはカイロミクロン中に充填され、胸管内に分泌され、下大動脈(vena cava inferior)を介して循環血液に進入する。
【0017】
生物によるキサントフィルのバイオアベイラビリティに影響を与える主な要因の中でも、供給源(食品マトリックス)における物理的形態、キサントフィル分子の構造、及びキサンフィルと他の栄養素、主に脂質との相互作用がある。従って、安定性、吸収性及びバイオアベイラビリティが改善されたカロテノイドの化合物、誘導体又は製剤を開発することが非常に望ましいであろう。
【0018】
多くの自然食品及び加工食品は、エマルジョンとして一部若しくは全てが構成されているか、又はその生産中のある時点で乳化状態になっている。品質特性のあるエマルジョンをベースにした食品の製造は、最適な原材料(例えば、水、油、乳化剤、増粘剤、鉱物、酸、着色剤、香料、ビタミン等)及び加工条件(例えば、混合、均質化、低温殺菌、滅菌等)の選択に依存している。
【0019】
エマルジョンは、2種の非混和液(通常、油及び水)の混合物であり、その内の1つは、小さな球状の液滴として他の相中に分散している。エマルジョンは、油相及び水相の分布に応じて便利に分類できる。水相中に分散した油滴からなる体系は、水中油型(oil−in−water)エマルジョン又はO/Wエマルジョン(例えば、マヨネーズ、牛乳、クリーム、スープ及びソース)と呼ばれる。油相中に分散した水滴からなる体系は、油中水型(water−in oil)又はW/O(例えば、マーガリン、バター及びスプレッド)と呼ばれる。エマルジョンは、コロイドと呼ばれる、より一般的な部類の二相系物質の一部である。コロイド及びエマルジョンという用語は、時には互換的に用いられるが、エマルジョンは、分散相及び連続相がいずれも液体であることを意味する傾向がある。乳化剤(表面活性物質又は利尿剤からの界面活性剤としても知られる)は、エマルジョンを安定化させる物質である。食品エマルジョンにおける界面活性剤の主な役割は、その形成を促進し、安定性を高めることである。食品業界で用いられる界面活性剤は、主に非イオン性(例えば、モノアシルグリセロール、ショ糖脂肪酸エステル)、陰イオン性(例えば、脂肪酸)、又は両性イオン性(例えば、レシチン)である。界面活性剤は、溶液中で自然に凝集し、会合コロイド(例えば、ミセル、二重層、ベシクル、及び逆ミセル)として知られる、様々な熱力学的に安定な構造を形成する。ミセルの形状は、主に界面活性剤分子の分子構造によって制御されるが、ミセルの形状は、条件(温度又はpH、並びに任意の添加塩の種類及び濃度等)にも依存している。
【0020】
通常は水に不溶性又は難溶性である非極性分子は、ミセル又は他の種類の会合コロイドに取り込むことによって、界面活性剤水溶液中で可溶化できる。可溶化物質を含有するミセルは、マイクロエマルジョン又は膨潤ミセルと称され、一方、ミセル内で可溶化された物質は、可溶化物(Solubilizate)と称される。
【0021】
上記の必要性を考慮して、出願者等は、ミセルとして消化器系に容易に取り込まれ、結晶形で摂取されるカロテノイドのバイオアベイラビリティと比較して、バイオアベイラビリティの改善をもたらす、ジアセテート及びジプロピオネート誘導体等、微視的な物理的状態のキサントフィル又はオキシカロテノイド誘導体の形態を得るためのプロセスを開発した。
【0022】
Bauernfeind及びHowardに交付された米国特許第2,861,891号明細書は、植物油中で加熱することにより過飽和カロテン溶液を得た後、それをゲル化可能なコロイド水溶液中に分散させ、得られたエマルジョンを乾燥微粒子の形に変換することにより、乾燥粉末を得るプロセスを記載している。このようなプロセスは、カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、ビキシン及びメチルビキシンの溶解性を改善するために植物油中でカロテノイドを加熱し、ゲル化可能なコロイドを取り込むことによりカロテノイド結晶の沈殿を回避することを伴う。次いで、更なる乳化工程がコロイド水溶液中で行われ、スプレー乾燥プロセス後に乾燥粉末を生成できるゲルが形成される。得られた生成物は、マーガリン、果実及び野菜に色を与えるために用いられる食用油中の微結晶分散液であり、βカロテンが親水性保護コロイド中に微粒分散液の形で存在する。
【0023】
Grantに交付された米国特許第3,523,138号明細書は、長鎖脂肪酸エステルからキサントフィルを遊離するために鹸化反応が行われた後での、家禽におけるカロテノイドのバイオアベイラビリティの改善について記載している。
【0024】
Hawksに交付された米国特許第3,535,426号明細書は、キサントフィルの鹸化混合物が、脂肪及びエトキシキノリンと混合すると、安定性が増し、その結果バイオアベイラビリティが増加することを開示している。
【0025】
Cathreinは、米国特許第5,364,563号明細書において、油中で懸濁液を得て、それを過熱蒸気に接触させ、エマルジョンを生成して、それをスプレー乾燥することによって、粉末カロテノイド調製物を生成するプロセスを記載している。
【0026】
Eugster等は、米国特許第5,496,813号明細書及び第5,536,504号明細書において、抗腫瘍活性を有する、キサントフィルエステルを含有する自然分散性濃縮物を形成する超マイクロエマルジョンを得ている。
【0027】
Gellenbeckは、米国特許第5,827,539号明細書において、カロテノイドと油との微粒子の混合物、及び水分散性であるスプレー乾燥してカプセル化した形態を得ている。
【0028】
Luddecke等は、米国特許第5,863,953号明細書において、保護コロイド及び乳化剤により安定化した、粒径100ミクロンの二重分散系を調製するために使用されるカロテノイドの油分散液の獲得について記載している。
【0029】
Sanders及びHerinkは、国際公開第9947001号パンフレットにおいて、イソレシチン及びレシチンを用いた、ヒト並びに家禽におけるルテイン及びゼアキサンチンのバイオアベイラビリティの増加について公開した。
【0030】
Kolter等は、米国特許第5,891,907号明細書において、カロテノイド及び水不溶性ビタミンが、非イオン性乳化剤の補助により、粒子径が100nm未満のミセルを生成する、カロテノイド及びビタミンの安定な水性可溶化物について記載している。
【0031】
Luddecke等は、米国特許第5,895,659号明細書において、高圧下で、揮発性の水混和性有機溶媒中にカロテノイド又はレチノイドを溶解し、10秒後すぐに、該溶液と乳化剤を含有する水性媒体とを混合することによる、微細に分散したカロテノイド又はレチノイドの懸濁液の調製について記載している。
【0032】
Schweikert等は、米国特許第5,925,684号明細書において、カロテノイドが室温で油中のカロテノイドの飽和溶解度を超える濃度で油相中に存在する、乳化剤によって非常に微細に分散している、水相及び油相からなる安定な水中油型エマルジョンについて記載している。
【0033】
Auweter等は、米国特許第5,968,251号明細書において、高温にて、揮発性の水混和性有機溶媒中で、乳化剤及び/若しくは食用油を用いて、又はそれらを用いずにカロテノイドの分子分散液を調製し、保護コロイドの水溶液を添加し、親水性溶媒を水相中に移し、カロテノイドの疎水性相がナノ分散相として生じたら、ヒドロゾルを加熱することによって溶媒を除去し、それを水分散性乾燥粉末に変換することによる、冷水分散性粉末の調製について記載している。
【0034】
Gellenbeckは、米国特許第5,976,575号明細書において、カロテノイドの粒径を減少させるためにカロテノイドと油との混合物を粉砕し、該混合物を乳化し、カプセル化して、該エマルジョンを乾燥させることについて記載している。
【0035】
Handelmanは、米国特許第6,075,058号明細書において、コレステロール、オリーブ油、卵黄リン脂質、αトコフェロール及び含水塩化ナトリウムと共に、ルテイン及びゼアキサンチンの組成物について記載している。該混合物は、エタノール中に脂質成分を混合し、エタノールを蒸発させ、塩化ナトリウム溶液中にエマルジョンとして脂質を分散させることによって調製する。
【0036】
Kowalski等は、米国特許第6,093,348号明細書において、カロテノイドの水性懸濁液を加熱し、高温及び高圧下(HTHPプロセス)にて、界面活性剤及び保護コロイドの存在下でカロテノイドを溶融する、カロテノイド粉末の製造方法を記載している。次いで、該懸濁液を高圧下で均質化し、エマルジョンを形成する。さらに、得られたエマルジョンを乾燥して、カロテノイド粉末を得る。
【0037】
Schliapaliusは、米国特許第6,132,790号明細書において、油中のカロテノイド組成物、水分散性マトリックス及び安定剤の分散液、並びに非油性溶媒及び乳化剤、それら全ての天然源について記載している。
【0038】
Koguchi等は、米国特許第6,261,622号明細書において、エマルジョン安定剤として大豆抽出物繊維と共に微粉化カロテノイド結晶を分散させることにより、低温でも分散安定性を保持すると共に、様々な水性組成物に添加できる、水分散性カロテノイド調製物を提供する方法について記載している。
【0039】
Bewert等は、米国特許第6,328,995号明細書において、湯水中で不溶性であり、1つ又は複数の脂溶性のビタミン又はカロテノイドを含有する、タンパク質、砂糖、並びにリン酸カリウム及び/又はリン酸ナトリウムを含有する水分散液中に形成される、乾燥粉末を安定化させる手順について記載している。
【0040】
Stein等は、米国特許第6,406,735号明細書において、抗酸化剤及び/又は油を含有する水非混和性有機溶媒中で活性成分の懸濁液を形成し、熱交換器を介して懸濁液を供給する際、懸濁液を高温に5秒の滞留時間加熱し、該溶液と水膨潤性コロイドとを急速に混合し、さらに有機溶媒を除去して、微粉調製物を得ることを含み、全ての工程が連続して順々に処理される、微粉化したカロテノイド又はレチノイドの微粉組成物の調製プロセスについて記載している。
【0041】
Guerra−Santos等は、米国特許第6,936,279号明細書において、油性担体における、微結晶形のカロテノイド、特にゼアキサンチンの獲得について記載している。「粗粒の」カロテノイドは、テトラヒドロフランのような適当な溶媒中に溶解し、植物油及び乳化剤と混合する。該混合物を不活性ガスと共に真空チャンバー中に注入し、溶媒を瞬時に除去し、カロテノイド結晶が成長しないようにする。彼らは、油性担体中で微結晶懸濁液を得ている。
【0042】
上記の言及は全て、遊離で純粋な形のカロテン、カロテノイド又はオキシカロテノイドに関し、いかなる場合も、ジアセテート若しくはジプロピオネート等のカロテノイド若しくはオキシカロテノイド誘導体、又は単独で若しくは複合体としての任意のカロテノイド若しくはオキシカロテノイド化合物若しくは誘導体を指すことはない。
【0043】
従って、我々の知る限りでは、本特許に開示されている新規性は、以前に先行するものがない。さらに、上記の特許はいずれも、前述のようにカロテノイドの吸収性及びバイオアベイラビリティに影響を与える、カロテノイド結晶の形成を完全に回避するものではない。
【0044】
本発明のプロセスによって、腸に吸収され、腸の粘膜壁を介して拡散するミセルを容易に形成する、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチンの短鎖ジエステル並びにクリプトキサンチンアセテート及びプロピオネートに加えて、ルテイン、3'エピルテイン、及びゼアキサンチンのジアセテート並びにジプロピオネートのマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンを得ることができる。
【0045】
結晶性固体は、高秩序の幾何学模様(結晶格子)の原子、イオン又は分子からなる。原子、イオン又は分子は、静電力、双極子力及び/又はロンドン力によってその位置を保持している。純粋な結晶性固体を加熱すると、粒子の熱運動が一定温度にて引力に打ち勝つのに十分な大きさになるまで、原子、イオン又は分子がますます急速に振動する。次いで、原子、イオン又は分子は、よりランダムな流動状態、即ち液体状態になる。固体の融点は、液相及び固相が平衡状態にある温度と定義される。純粋な固体は、粒子間の引力が同じであるため、急激に溶融するのが一般的であろう。しかし、結晶格子中の異物の存在は、その一様構造を乱し、引力を弱める。「不純な」化合物は、低温にて、より広範囲にわたって溶融する。従って、本発明のプロセスにおいて、カロテノイド誘導体の融点は、可溶性物質を溶液に加えることによって低下する。
【0046】
Tagetes erectaオレオレジン中では、ルテイン及びゼアキサンチンは通常、脂肪酸ジエステルとなっており、前記カロテノイドを遊離するために、鹸化反応又は加水分解を行うことは、顔料業界では一般的な方法である。また、天然に存在する脂肪酸からカプサンチン及びカプソルビンを遊離するために、Capsicum annumのオレオレジンを加水分解することも一般的な方法である。
【0047】
このような加水分解は、強アルカリ及び適当な乳化剤、温度を用いて水性媒体中で、又はこれもまた強アルカリ及び温度の作用でプロピレングリコール等の非極性有機媒体中で行われる。いずれにしても、キサントフィルは遊離であるとき、反応媒体中で不溶性となり、結晶形で存在する。
【0048】
反応塊は、顔料プレミックス又は水分散液を調製するために使用できるが、カロテノイドの物理的構造は、常に微視的な結晶である。
【0049】
高純度のカロテノイドを得ることを目的とした様々な精製及び純化プロセスでは、鹸化したオレオレジン塊を、数段階の選択的な極性若しくは非極性有機溶媒抽出、又は超臨界CO抽出、及び再結晶化に曝し、カロテノイドを該塊の他の成分から単離する。このような浄化プロセスの最後では、カロテノイドは予想通り、結晶形で生じる。
【0050】
本発明のプロセスでは、オキシカロテノイド誘導体のミセル、マイクロエマルジョン及びナノエマルジョンは、このようなオキシカロテノイドと酢酸又はプロピオン酸等の短鎖有機酸との反応中に得られる。このように微視的なエマルジョンは、制御された条件下でこのような反応過程及び更なる処理中に生じる。このプロセスで得られたカロテノイド誘導体は、遊離カロテノイドの融点と比較して、より低い融点を有している。驚くべきことに、カロテノイド誘導体結晶は、特定の温度、時間の条件の下で、脂質、乳化剤及び水分の存在下において、脂質マトリックスに吸蔵された安定なミセルを形成し、正常な温度及び圧力の条件で安定なミセルとして残る。このような脂質カロテノイドミセルは、溶融したオキシカロテノイド誘導体を含有しており、非結晶性である。
【0051】
さらに、本発明は、ヒト及び動物の食餌においてミセルとして消化器系に容易に取り込まれる、微視的な物理的状態のキサントフィル又はオキシカロテノイドの誘導体の形態をもたらすことによって、ヒト及び動物によるカロテノイドの吸収性及びバイオアベイラビリティを改善する方法に関する。
【0052】
[発明の概要]
従って、本発明の主な目的は、ミセルとして消化器系に容易に取り込まれ、微視的なカロテノイド結晶を含有する多様な調製物として摂取されるカロテノイドのバイオアベイラビリティと比較して、バイオアベイラビリティの改善をもたらす、ジアセテート又はジプロピオネートの誘導体等の微視的な物理的状態のキサントフィル又はオキシカロテノイドの誘導体の形態を得るためのプロセスを提供することである。
【0053】
本発明の別の目的は、吸収性及びバイオアベイラビリティの改善がなされた本発明によるミセルを容易に形成する、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチンの短鎖ジエステル並びにクリプトキサンチンアセテート及びプロピオネートに加えて、ルテイン、3'エピルテイン及びゼアキサンチンのジアセテート並びにジプロピオネートからなるマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンを提供することである。
【0054】
本発明は、微視的な物理的状態のキサントフィル又はカロテノイドの誘導体、並びに該誘導体が食品、サプリメント、飲料又は飼料に取り込まれている媒体を含み、それに関する。その上、本発明は、ジアセテート及びジプロピオネートの誘導体等、微視的な物理的形態のオキシカロテノイド短鎖ジエステルで得られたバイオアベイラビリティの改善も含む。
【0055】
本発明は、ブロイラー、卵黄、並びにサケ科、甲殻類及び魚等の海産種の着色プロセスに加えて、マイクロエマルジョン及びミセルの調製プロセス、並びにルテイン及びゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート、他のオキシカロテノイド誘導体のジアセテート又はジプロピオネートをヒトに投与する際のそれらの使用にも関する。
【0056】
本発明の更に主な目的は、純粋な遊離カロテノイドの融点と比較して、より低い融点を有するカロテノイド誘導体化合物を提供することである。
【0057】
本発明のこれらの及び他の目的及び利点は、以下の発明の実施形態の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【0058】
[発明の詳細な説明]
次に、その好ましい実施形態、並びに生成物の使用及び用途の具体例を参照しながら本発明を説明する。本発明のプロセスは、
a)ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、アスタキサンチンから得られるジアセテート及びジプロピオネート、並びにクリプトキサンチンモノアセテート及びクリプトキサンチンモノプロピオネートを含むオキシカロテノイド誘導体又はこれらの混合物と、植物マトリックスの成分又は脂肪酸、リン脂質、乳化剤及び/若しくはステロールを含む類似の性質を有する成分とを、反応器の内部で混合し、
b)該反応器の温度を、窒素雰囲気下で、約60〜70℃の温度まで上げ、
c)ポリオキシエチレンソルビタン、特に、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート70、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート81、ポリソルベート85等のポリソルベート20〜85;ステアリン酸ポリオキシエチレン(ステアリン酸ポリオキシエチレン(40))、ステアリン酸ポリオキシエチレン(8)及びステアリン酸ポリオキシエチレン(40);オレイン酸ポリオキシエチレン;ラウリン酸ポリオキシエチレン:ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;Pluronic F−65LF(商標)、Pluronic L−62LF(商標)及びPluronic L62D(商標)(BASF Wyandotte Corp.)等のポロキサマー、若しくはチロキサポール、EMULPHOR(商標)(GAF Corp.)等のポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む、Tween80等の界面活性剤、又は界面活性剤の混合物を、反応器混合物に対して5〜50重量%の量で加え、
d)ステップc)で得られた混合物を2時間撹拌し、
e)レシチン;Epikuron120(商標)(Lucas Meyer、ホスファチジルコリン約70%、ホスファチジルエタノールアミン12%及び他のリン脂質約15%の混合物);Ovothin160(商標)若しくはOvothin200(商標)(Lucas Meyer、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン18%及び他のリン脂質12%);又は卵黄から得られるもの等の精製リン脂質混合物、若しくはLipoid E−80(商標)(Lipoid AG、ホスファチジルコリン約50%、ホスファチジルエタノールアミン5%、非極性脂質3.6%及びスフィンゴミエリン約2%を含むリン脂質混合物)からなる群から選択されるリン脂質を、5〜50重量%の量でステップd)で得られた混合物に加え、
f)ステップe)で得られた混合物を、該混合物を均質化するため1時間撹拌し、
g)ステップf)で得られた混合物に水を1〜40重量%の量で加え、
h)脂質マトリックスのpHを5.5〜8.5、好ましくはpHを6.5〜7.0で維持しながら、ステップg)で得られた混合物の温度を約90〜110℃の間の温度に上げ、カロテノイド誘導体結晶が非極性脂質マトリックス中に溶融したことが100倍顕微鏡下で観察されるまで、該混合物を約2〜10時間の間、還流サイクルにかけることにより、0.001〜40重量%の比率でオキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを生成する、ここで該マイクロエマルジョンは、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一分散性の親油性相、並びに植物性の脂質及び乳化剤によって主に形成された外部親水性相を含む。
【0059】
得られたマイクロエマルジョンは、3〜4時間の超高速高せん断機械撹拌機によって、又は3,000〜4,000psi程度の圧力で動作する乳化機によって、ナノエマルジョンを得るために大きさを縮小してもよい。
【0060】
ステップhで得られたマイクロエマルジョンは、他の用途の中でも、ブロイラーの皮膚及び卵黄の着色の目的で、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン及びカプソルビンから得られるキサントフィルのジアセテート及びジプロピオネートの吸収性並びにバイオアベイラビリティを著しく改善するため、又はエビ及び甲殻類、サケ、マス、マダイ、ハマチ等の海洋生物の飼料に取り込むとき、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られるカロテノイド誘導体のバイオアベイラビリティを改善するために、ヒトのサプリメント若しくは食品、又はペット、家禽若しくは水産動物の飼料に取り込むのに適した、水性媒体又は脂質媒体に約40〜70℃の間の温度にて分散させてもよい。
【0061】
マイクロエマルジョンを分散させた該水性媒体又は脂質媒体は、心臓及び心血管の状態を改善し、同時に黄斑変性及び白内障形成の危険性の低減を補助するために、フリーラジカルの存在によるヒト組織の変性を予防するためにサプリメントとしてヒトに投与することができる、以下のカロテノイド、即ちルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチン及びクリプトキサンチンから得られるカロテノイド誘導体を含有する水;又はフリーラジカル及び一重項酸素の損傷効果から細胞及び組織を予防及び保護するためにサプリメントとしてヒトに投与することができる、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等のオキシカロテノイド誘導体のバイオアベイラビリティを著しく改善するカロテノイド誘導体を含有する、油、好ましくは高含量のオメガ3脂肪酸を含む魚油、を含んでもよい。
【0062】
また、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られるカロテノイド誘導体のステップhで得られるマイクロエマルジョンは、ヒトの栄養素を補うためのビーズレット(beadlets)を調製するために、適当なマルトデキストリン;砂糖;動物、植物若しくは魚のゼラチンによってカプセル化してもよい。
【0063】
上記のプロセスは、結晶の溶解を補助し、元のマトリックスに含有されるオキシカロテノイド誘導体が室温で再結晶化するのを回避する。
【0064】
カロテノイドの多くは不安定であり、高温で、光、酸素及び有機酸又は無機酸に曝されると劣化する傾向にある。このような条件下でカロテノイドを処理する場合、全ての操作は、真空下又は窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行われなくてはならない。このような条件に曝した後、短鎖ジエステルオキシカロテノイド、即ちジアセテート又はジプロピオネートの顕著な安定性が認められた。
【0065】
ジアセテート及びジプロピオネートは、非極性のカロテノイドの誘導体であるため、純粋なカロテノイドの融点よりも低い温度で溶融し、脂質マトリックス中に分散したミクロスフェア又はナノスフェアとしてとどまる傾向がある。脂質マトリックスと呼ばれる、天然のオレオレジン中に存在する脂質、遊離脂肪酸、ワックス及びステロールの存在はまた、オキシカロテノイド誘導体の融点を低下させる一助となる。
【0066】
キサントフィル脂肪酸エステルの加水分解が完了し、過剰なアルカリが、リン酸、酢酸、塩酸、過塩素酸等を希釈した酸、又はそれらの混合物によって中和され、pHが5〜9、好ましくはpHが5.5〜6.5になった後、二相系が形成されることが判明した。カロテノイド結晶を含有する有機相を温水で数回洗い流し、酸及び塩のいかなる痕跡をも除去する。上澄み又は脂質塊は、カロテノイドエステルと共に天然に存在する、遊離脂肪酸、並びにワックス、リン脂質及びステロール等の微量の化合物から主になる。この脂質塊を真空乾燥し、米国特許第5,959,138号明細書により、カロテノイドを無水酢酸又は無水プロピオン酸でエステル化すると、カロテノイド短鎖ジエステル結晶が埋め込まれた、上澄み有機相が得られる。有機マトリックス中に存在する化合物である「不純物」は、カロテノイド短鎖ジエステルの融点を著しく減少させることによって相互作用し、加熱プロセス中のオキシカロテノイド誘導体の安定性を向上させる一助となる。主な脂肪酸は、Tagetes erecta抽出物中に天然に存在する、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸であり、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸は、Capsicum annum抽出物中で見出される。
【0067】
撹拌しながら、不活性雰囲気下で、90〜110℃に温度を上げることによって、カロテノイド誘導体結晶を非極性脂質マトリックス中に溶融し、均一相を生成する。純粋なカロテノイド結晶の融点は高いが、本発明者らは溶融プロセス中のpH媒体の適当な制御に加えて、マトリックスの元の成分、並びに水分、植物油、追加の脂肪酸及び乳化剤の取り込みは、カロテノイド結晶と相互作用し、in situでオキシカロテノイド誘導体の融点の顕著な低下を引き起こし、平均粒径が2〜5ナノメートルのミセルの形態でカロテノイド非結晶性ナノ粒子分散液を生成することを認めた。本プロセスは、マトリックスの成分と相互作用するオキシカロテノイド誘導体を生成し、ミセルに取り込むと、吸収性及びバイオアベイラビリティが著しく改善する、非結晶状態のカロテノイド化合物を、所定の温度、時間及び撹拌の条件にて生成する。
【0068】
得られたミセルは、追加の脂肪性物質で希釈してもよい。このような脂肪性物質は、植物油、鉱物油、中鎖トリグリセリド(MCT)油(即ち、炭水化物鎖が約8〜12個の炭素原子を有するトリグリセリド油)、油性脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトール脂肪酸エステル、油性ショ糖エステル、又はそれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は複数の構成要素を含んでもよい。様々な調製物又は製剤を生成するために、本発明のエマルジョンで使用できるリン脂質の例には、大豆レシチン、レシチン;Epikuron120(商標)(ホスファチジルコリン約70%、ホスファチジルエタノールアミン12%、及び他のリン脂質約15%の混合物);Ovothin160(商標)又はOvothin200(商標)(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン18%、及び他のリン脂質12%);精製リン脂質混合物(例えば、卵黄から得られるもの);又はLipoidE−80(商標)(Lipoid AG、Ludwigshafen);Tagetes erecta抽出物中に天然に存在するミリスチン酸、パルミン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;並びにオレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン、特に、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート70、ポリソルベート80(Tween80(商標))、ポリソルベート81、ポリソルベート85等のポリソルベート20〜85、ステアリン酸ポリオキシエチレン(8)及びステアリン酸ポリオキシエチレン(40)等がある。
【0069】
不純な固体化合物は低温にて広範囲にわたって溶融する。従って、固体化合物の融点は、可溶性物質を溶液に加えることによって低下させることができる。
【0070】
純粋なカロテノイドの融点(mp)、並びにその誘導体の一部の融点は、以下の通りである(The Merk Index,Twelfth Edition,1996)。
ルテインmp 190℃
ルテインジアセテートmp 170℃
ルテインジプロピオネートmp 138℃
ルテインジパルミテートmp 92℃
ゼアキサンチンmp 215℃
ゼアキサンチンジアセテートmp 155℃
ゼアキサンチンジプロピオネートmp 142℃
ゼアキサンチンジパルミテートmp 97℃
アスタキサンチンmp 216℃
アスタキサンチンジアセテートmp 205℃
カプサンチンmp 182℃
カプサンチンジアセテートmp 150℃
カプサンチンジパルミテートmp 95℃
クリプトキサンチンmp 159℃
クリプトキサンチンモノアセテートmp 117℃
【0071】
純粋なカロテノイドの融点は、それらの対応する誘導体の融点より高いことを認めることができる。従って、純粋なカロテノイドからカロテノイド誘導体を得るためのプロセスでは、ジアセテート誘導体が該プロセスに組み込まれているとき、オキシカロテノイドの融点は、純粋なカロテノイドの融点に対して50〜116℃低下し;プロピオネート誘導体が該プロセスに組み込まれているとき、オキシカロテノイドの融点は、純粋なカロテノイドの融点に対して約30〜50℃低下する。カロテノイド誘導体の分子量がより大きい場合、純粋なカロテノイドの融点と比較して、カロテノイド誘導体の融点が更に低下する。不純物(汚染物以外)と見なすことができる、Tween80及び/若しくはレシチン等の物質又はその様々な化合物は、純粋なカロテノイドの融点の顕著な低下を引き起こし得る。カロテノイド誘導体をこのような低温で溶融すると、本プロセスでは化合物が劣化しないことに注意することは重要である。
【0072】
得られたミセルは、水中で容易に分散し、結晶を全く含有しないカロテノイド誘導体の内部均一性の親油性相、並びに脂質及び乳化剤により形成された外部親水性相からなる安定なマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンを形成できる。これは、ミセル中に含有された真性オキシカロテノイド誘導体の溶質である。その柔軟な特質により、このような脂質カロテノイド誘導体は、均質化機によって、マイクロエマルジョン又はナノエマルジョンに容易に微小化できる。結晶構造自体は、機械的手段によって破壊するのは難しく、従ってマイクロエマルジョンにするのは非常に難しく、非極性媒体中でナノエマルジョンを生成するのはほぼ不可能である。
【0073】
驚くべきことに、脂質オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを産卵鶏又はブロイラーの飼料に取り込むと、着色効率が、結晶形のオキシカロテノイドを含有するプレミックス又は水分散液によって得られた着色と比較して、著しく改善する。
【0074】
結晶の大きさに関わらず、油中に分散した遊離カロテノイド結晶の吸収性と比較して、遊離脂肪酸、リン脂質、ステロール、ワックス及び様々な種類の植物油又は魚油、並びに乳化剤からなる脂質マトリックス中のマイクロミセルとしてオキシカロテノイド誘導体のヒトによる吸収の改善を得ることも新規性がある。
【0075】
[実施例]
以下の実施例は、脂質カロテノイド誘導体の分散液から得られるマイクロエマルジョン及びナノエマルジョンの吸収性並びにバイオアベイラビリティの改善を例示している。これらの実施例は、例示のためだけ、また本発明の更なる理解のために示されたものである。しかし、これらは、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0076】
(実施例1)
本発明のプロセスに記載のオキシカロテノイド誘導体は、以下のプロセスにより得ることができる。
【0077】
pH13の水性の鹸化マリーゴールドオレオレジン5kgに、pHが7.0になるまで撹拌しながら30%希酢酸を加える。相の分離が認められたら、水相を廃棄する。有機相を10kgのぬるま湯で数回洗い流し、酸の痕跡及び極性化合物を除去する。水を廃棄し、温度を90℃まで上げ、撹拌しながら3mmHgの真空を適用する。水分が全て塊から除去されたら、米国特許第5,959,138号明細書に記載のプロセスによりある量の無水酢酸を徐々に加える。
【0078】
オキシカロテノイドジアセテートが形成されたら、撹拌しながら脂質マトリックスを適当な反応器に入れ、1kgの量の植物油又は魚油、脂肪酸及び乳化剤の混合物を加える。該容器は窒素雰囲気下で維持し、温度は60〜70℃まで上げる。
【0079】
500gの量のTween80を加え、120分間撹拌する。
【0080】
その後、500gの量のレシチンを加え、該混合物を60分間撹拌する。
【0081】
100倍顕微鏡対物下で観察できるが、ルテインジアセテート結晶全てが消失するまで、反応器の温度を100℃まで上げる。
【0082】
該塊は室温まで直ちに冷却し、撹拌しながら水2kgを加えると、コロイド懸濁液が得られる。上記の手順は、明かりのない密閉容器中で窒素雰囲気下にて行う。この手順は、結晶の溶解を補助し、元のマトリックスに含有されるオキシカロテノイド誘導体が、室温で再結晶化するのを回避する。コロイド溶液は、固体担体中で分散し、又は水中で所望の濃度に乳化する状態にある。
【0083】
(実施例2)
本発明のプロセスに記載のオキシカロテノイド誘導体は、以下のプロセスによって得ることができる。
【0084】
pH13の水性の鹸化赤トウガラシオレオレジン1kgに、pHが7.0になるまで撹拌しながら20%リン酸水溶液を加える。2相が分離したら、水相を廃棄する。有機相を10kgのぬるま湯2回分で2回洗い流し、酸の痕跡及び塩を除去する。密閉容器中の有機相は、水分が全て除去されるまで、3mmHgの真空に曝す。次いで、米国特許第5,959,138号明細書に記載のプロセスにより、カプサンチン及びカプソルビンをジアセテートに変換する。
【0085】
オキシカロテノイドジアセテートが形成されたら、撹拌しながら脂質マトリックスを適当な反応器に入れ、500gの量のオレイン酸を加える。
【0086】
該容器は窒素雰囲気下で維持し、温度は60〜70℃まで上げる。
【0087】
100gの量のポリソルベート60を加え、120分間撹拌する。
【0088】
その後、200gの量のレシチンを加え、該混合物を60分間撹拌する。
【0089】
100倍の顕微鏡の対物レンズ下で観察できるが、カロテノイドジアセテート結晶全てが消失するまで、反応器の温度を95℃まで上げる。
【0090】
該塊は室温まで直ちに冷却し、撹拌しながら水2kgを加えると、コロイド懸濁液が得られる。上記の手順は、明かりのない密閉容器中で窒素雰囲気下にて行う。この手順は、結晶の溶解を補助し、元のマトリックスに含有されるオキシカロテノイド誘導体が、室温で再結晶化するのを回避する。コロイド溶液は、固体担体中で分散し、又は水中で所望の濃度に乳化する状態にある。
【0091】
(実施例3)
本発明のプロセスに記載のオキシカロテノイド誘導体は、以下のプロセスによって得ることができる。
【0092】
精製した遊離ルテイン濃縮物(85重量%、AOAC)100gを食品用オレイン酸150g及びαトコフェロール5gと混合し、該塊を真空下で90℃にて120分間撹拌して、水分のいかなる痕跡をも除去する。次いで、全てのルテインがジアセテートに変換されるまで、米国特許第5,959,138号明細書に記載のプロセスにより、ある量の無水酢酸を加える。
【0093】
該塊はぬるま湯で数回洗い流し、いかなる酸の痕跡及び塩をも除去する。
【0094】
該容器は窒素雰囲気下で維持し、温度は60〜70℃まで上げる。
【0095】
20gの量のTween80を加え、120分間撹拌する。
【0096】
その後、40gの量のレシチンを加え、該混合物を60分間撹拌する。
【0097】
温度は、カロテノイド結晶が100倍顕微鏡対物下で全く観察されなくなるまで、窒素雰囲気下にて180分間の間100℃まで上げる。
【0098】
ルテインジアセテート結晶が溶融したら、該塊を40℃以下に冷却し、水50gを加えると、コロイド懸濁液が高速撹拌器中に得られる。コロイド懸濁液は、固体担体、即ち植物油中に分散させてもよく、又は水中で希釈してもよい。
【0099】
(実施例4)
生後3週間のブロイラーからなる同一の2群(A群及びB群)を、各々50羽になるように適当な檻に入れた。該ブロイラーには色素濃度が異なる同一の飼料を(不断)給餌した。A群のブロイラーの飼料には、実施例1に従って調製した、ミセルルテインジアセテート及びミセルゼアキサンチンジアセテートのブレンド80ppmが含まれていた。B群のブロイラーの飼料には、標準ルテイン色素(鹸化し、水中に分散)90ppm及びカンタキサンチン3gが含まれていた。
【0100】
4週間後、ブロイラーは解体処理し、冷凍した。ブロイラーのすね(掌側組織)における平均の色素沈着量はほぼ同一、即ちA群では総キサントフィルが14.9ppm、B群では総キサントフィルは15.0ppmであった。
【0101】
ミノルタ社製のクロマメーター(Minolta Chromameter)を使用して、冷凍した各ブロイラーの胸部皮膚で読み取って、色素を決定した。各群について得られた平均測定値は以下の通りである。
【0102】
群 黄色み(b*) 赤み(a*) 明度
A 27.12 −1.19 76.12
B 26.21 0.90 74.09
【0103】
上記のデータは、一般人では、2つの群の色素沈着の差異を裸眼で認識できないことを示している。
【0104】
しかし、このような情報は、飼料にミセルルテインジアセテート及びミセルゼアキサンチンジアセテート80ppmしか含まれていなかったA群のブロイラーは、飼料に標準ルテイン色素水分散液90ppm及び赤色カンタキサンチン3ppmが含まれていたB群のブロイラーよりはるかに効率的に色素を吸収したことを示している。
【0105】
(実施例5)
タバコを吸わない健康な学生10人(22〜27歳の範囲)に以下の2つの処置を施した。
【0106】
(A)大豆油中に分散した結晶ルテイン20mgを含有するゼラチンカプセル1個を昼食時に4週間摂取し、12時間の絶食後(終夜)、血液試料を血漿分析のために翌日早朝に採取した。
【0107】
(B)2週間の洗浄期間を置いた後で、同じ群の対象に、大豆油中にルテインジアセテート(実施例3に記載されているように調製)のミセル分散液を含有するゼラチンカプセル1個を4週間与えた。ルテインジアセテート24.2mgを含有する各カプセルを、昼食時に摂取させた。12時間の絶食後、血液試料を血漿分析のために翌日早朝に採取した。
【0108】
得られた結果は以下の通りであった。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
吸収性及びバイオアベイラビリティの改善は、遊離ルテインの平均吸収率(表1)で割ったルテインジアセテートの平均吸収率(表2)の比率により決定することができる:91.8/32.6=2.81倍。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質、リン脂質、脂肪酸、乳化剤及び水分の存在下で、天然に存在する元の植物性脂質マトリックス中で溶融される短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体、すなわち、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチンから得られるジアセテート又はジプロピオネート、及びクリプトキサンチンのモノアセテート又はモノプロピオネート、の可溶化物(Solubilizate)を含み、結晶形のオキシカロテノイドと比較して良好に吸収されバイオアベイラビリティが増加する、安定なマイクロエマルジョンを得るためのプロセスであって、
a)反応器内部に、脂肪酸及び/又はステロールを含む植物マトリックスの成分と共に、ジアセテート及びジプロピオネートを含むオキシカロテノイド誘導体を混合し、又は脂質、リン脂質、脂肪酸及び乳化剤と共に、ジアセテート及びジプロピオネートを含む高純度のオキシカロテノイド誘導体を混合するステップと、
b)前記反応器の温度を約60〜70℃の間の温度に上げるステップと、
c)界面活性剤を5〜50重量%の量で加え、オキシカロテノイド誘導体と界面活性剤との混合物を得るステップと、
d)ステップc)で得られた混合物を2時間撹拌して、前記混合物を均質化するステップと、
e)ステップd)で得られた混合物に、リン脂質を5〜50重量%の量で加えるステップと、
f)ステップe)で得られた混合物を1時間撹拌して、前記混合物を均質化するステップと、
g)ステップf)で得られた混合物に、水を1〜40重量%の量で加えるステップと、
h)pHを5.5〜8.5で維持しながら、ステップg)で得られた混合物の温度を約90〜110℃の間の温度に上げ、オキシカロテノイド誘導体結晶が全て、非極性脂質マトリックス中に溶融したことが認められるまで、前記混合物を約2〜10時間の間、還流サイクルにかけて、オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを生成するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
界面活性剤が、TW−80、及び/又はポリオキシエチレンソルビタン、特に、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート70、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート81、ポリソルベート85等のポリソルベート20〜85;ステアリン酸ポリオキシエチレン(ステアリン酸ポリオキシエチレン(40))、ステアリン酸ポリオキシエチレン(5)及びステアリン酸ポリオキシエチレン(40);オレイン酸ポリオキシエチレン;ラウリン酸ポリオキシエチレン:ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;Pluronic F−65LF(商標)、Pluronic L−62LF(商標)及びPluronic L62D(商標)(BASF Wyandotte Corp.)等のポロキサマー、若しくはチロキサポール、EMULPHOR(商標)(GAF Corp.)等のポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む群から選択される界面活性剤の混合物を5〜50%の量で含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
リン脂質が、両性イオン性界面活性剤;Epikuron 120(商標)(Lucas Meyer、ホスファチジルコリン約70%、ホスファチジルエタノールアミン12%及び他のリン脂質約15%の混合物)、Ovothin 160(商標)若しくはOvothin 200(商標)(Lucas Meyer、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン18%及び他のリン脂質12%)、卵黄から得られるもの等の精製リン脂質混合物、又はLipoid E−80(Lipoid AG、ホスファチジルコリン約50%、ホスファチジルエタノールアミン5%、非極性脂質3.6%及びスフィンゴミエリン約2%を含むリン脂質混合物)からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップg)において、可溶性物質が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸からなる群から選択される脂肪酸、ステロール、メチルステロール、炭素数が40、42若しくは46の植物性ワックス、トコフェロール、トコトリエノール、リン脂質、及び/又は前記化合物の混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップh)において、pHが好ましくは6.5〜7.0で維持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップh)が真空下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、ヒトのサプリメント若しくは食品、又はペット、家禽若しくは水生動物用の飼料に混合するのに適した水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを約40〜70℃の間の温度で水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
ブロイラーの皮膚及び卵黄の着色の目的で、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン及びカプソルビンから得られるキサントフィルのジアセテート及びジプロピオネートの吸収性並びにバイオアベイラビリティを著しく改善するために、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
エビ及び甲殻類、サケ、マス、マダイ、ハマチ等の海洋生物の飼料に混合するとき、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られるカロテノイド誘導体の吸収性及びバイオアベイラビリティを改善するために、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
フリーラジカル及び一重項酸素の損傷効果から細胞及び組織を予防及び保護するとともに、一部の癌及び発作の危険性を予防するために、サプリメントとしてヒトに投与できる、以下のカロテノイド、即ちルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチン及びクリプトキサンチンから得られるカロテノイド誘導体を含む脂質中又は水中に、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける黄斑変性及び白内障形成の危険性を低減する一助となるオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体を含有するマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける心臓の状態、更に心血管の状態を著しく改善するためにオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
ジアセテート誘導体がプロセスに組み込まれているとき、オキシカロテノイドの融点が純粋なカロテノイドの融点に対して50℃〜116℃低下し、プロピオネート誘導体がプロセスに組み込まれているとき、オキシカロテノイドの融点が純粋なカロテノイドの融点に対して30〜50℃低下する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
得られたマイクロエマルジョンが、超高速高せん断機械撹拌機によって、又は3,000〜4,000psi程度の圧力で動作する乳化機によって、ナノエマルジョンを得るために大きさを縮小できる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンが、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られ、ヒトの栄養素を補うためのビーズレット(beadlets)を調製するために、適当なマルトデキストリン、すなわち砂糖又は動物性、植物性若しくは魚のゼラチン等によってカプセル化される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
脂質マトリックス中に分散した短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを含有する製剤であって、水性媒体又は脂質媒体に分散した前記マイクロエマルジョンが、ヒト、ペット、家禽又は水生動物の消化器系に容易に取り込まれ、微視的なオキシカロテノイド結晶の吸収性及びバイオアベイラビリティと比較して、吸収性及びバイオアベイラビリティの改善をもたらす製剤。
【請求項18】
前記オキシカロテノイド誘導体が、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチンから得られる短鎖有機酸、ジアセテート又はジプロピオネート、及びクリプトキサンチンのモノアセテート若しくはモノプロピオネートを含む、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項19】
短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体が、植物性脂質マトリックス中に溶融される、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項20】
前記マイクロエマルジョンが、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一分散性の親油性相、並びに植物性脂質、界面活性剤、乳化剤及び水によって主に形成された外部親水性相を含む、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項21】
前記マイクロエマルジョンが、0.001〜40重量%の比率で、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一性の親油性相を含む、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項22】
前記マイクロエマルジョンを、ヒトのサプリメント若しくは食品、又はペット、家禽若しくは水生動物用の飼料に混合するのに適した水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項23】
ブロイラーの皮膚及び卵黄の着色の目的で、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン及びカプソルビンから得られるキサントフィルのジアセテート及びジプロピオネートのバイオアベイラビリティを著しく改善するために、前記マイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項24】
エビ及び甲殻類、サケ、マス、マダイ、ハマチ等の海洋生物の飼料に混合するとき、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られるカロテノイド誘導体のバイオアベイラビリティを改善するために、前記マイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項25】
フリーラジカルの存在により生じる損傷効果から細胞及び組織を予防及び保護するために、サプリメントとしてヒトに投与できる、以下のカロテノイド、即ちルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチン及びクリプトキサンチンから得られるカロテノイド誘導体を含有する水中に、前記マイクロエマルジョンを分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項26】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける黄斑変性及び白内障形成の危険性を低減する一助となるオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項27】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける心臓の状態、更に心血管の状態を著しく改善するためにオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項28】
前記マイクロエマルジョンが、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られ、ヒトの栄養素を補うためのビーズレットを調製するために、適当なマルトデキストリン、すなわち砂糖又は動物性、植物性若しくは魚のゼラチン等によってカプセル化される、請求項17に記載のマイクロエマルジョン製剤。
【請求項29】
ヒト、ペット、家禽又は水生動物の消化器系に容易に取り込まれ、微視的なオキシカロテノイド結晶の吸収性及びバイオアベイラビリティと比較して、吸収性及びバイオアベイラビリティの改善をもたらす、脂質マトリックス中に分散した短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョン。
【請求項30】
前記オキシカロテノイド誘導体が、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチンから得られる短鎖有機酸、ジアセテート又はジプロピオネート、及びクリプトキサンチンのモノアセテート若しくはモノプロピオネートを含む、請求項29に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項31】
短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体が、植物性脂質マトリックス中に溶融される、請求項29に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項32】
前記マイクロエマルジョンが、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一分散性の親油性相、並びに植物性脂質、界面活性剤、乳化剤及び水によって主に形成された外部親水性相を含む、請求項29に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項33】
前記マイクロエマルジョンが、0.001〜40重量%の比率で、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一性の親油性相を含む、請求項29に記載のマイクロエマルジョン。
【請求項34】
ヒト、ペット、家禽又は水生動物の健康状態を改善する方法であって、脂質マトリックス中に分散した短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを含有する製剤であり、水性媒体又は脂質媒体に分散した前記マイクロエマルジョンが、ヒト、ペット、家禽又は水生動物の消化器系に容易に取り込まれ、微視的なオキシカロテノイド結晶の吸収性及びバイオアベイラビリティと比較して、吸収性及びバイオアベイラビリティの改善をもたらす、マイクロエマルジョンを含有する製剤を投与することを含む方法。
【請求項35】
短鎖有機酸のオキシカロテノイド誘導体が、植物性脂質マトリックス中に溶融される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記マイクロエマルジョンが、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一分散性の親油性相、並びに植物性脂質、界面活性剤、乳化剤及び水によって主に形成された外部親水性相を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記マイクロエマルジョンが、0.001〜40重量%の比率で、溶融したオキシカロテノイド誘導体の内部均一性の親油性相を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記マイクロエマルジョンを、ヒトのサプリメント若しくは食品、又はペット、家禽若しくは水生動物用の飼料に取り込むのに適した水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
ブロイラーの皮膚及び卵黄の着色の目的で、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン及びカプソルビンから得られるキサントフィルのジアセテート及びジプロピオネートのバイオアベイラビリティを著しく改善するために、前記マイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
エビ及び甲殻類、サケ、マス、マダイ、ハマチ等の海洋生物の飼料に取り込むとき、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られるカロテノイド誘導体のバイオアベイラビリティを改善するために、前記マイクロエマルジョンを水性媒体又は脂質媒体に分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
フリーラジカルの存在により生じる損傷効果から細胞及び組織を予防及び保護するために、サプリメントとしてヒトに投与できる、以下のカロテノイド、即ちルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチン及びクリプトキサンチンから得られるカロテノイド誘導体を含有する水中に、前記マイクロエマルジョンを分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける黄斑変性及び白内障形成の危険性を低減する一助となるオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチンのジアセテート又はジプロピオネート等、前記オキシカロテノイド誘導体のマイクロエマルジョンを、好ましくは、摂取したときヒトにおける心臓の状態、更に心血管の状態を著しく改善するためにオメガ3脂肪酸を高含量で含む魚油中に分散させる、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記マイクロエマルジョンが、ルテイン、3'エピルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、メソゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン及びアスタキサンチンから得られ、ヒトの栄養素を補うためのビーズレットを調製するために、適当なマルトデキストリン、すなわち砂糖又は動物性、植物性若しくは魚のゼラチン等によってカプセル化される、請求項34に記載の方法。

【公表番号】特表2010−502575(P2010−502575A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525513(P2009−525513)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/MX2007/000024
【国際公開番号】WO2008/020747
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(506138904)インダストリアル オーガニカ エス.アー. デ サー.ヴェ. (1)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL ORGANICA S.A. DE C.V.
【住所又は居所原語表記】Av. Almazan No. 100, Col. Topo Chico 64260, Monterrey, N.L. Mexico
【Fターム(参考)】