説明

カーテンウォールの取付け方法及び装置

【課題】クレーンの拘束を低減すると同時に、カーテンウォールの取付け作業の施工性を向上させることができるカーテンウォールの取付け方法及び装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカーテンウォールの取付け方法は、建物上層部における躯体2に、一端側を躯体に固定し且つ他端側を建物外方に向けて水平に延出させる態様で跳ね出しレール20を設置するとともに、跳ね出しレール20に対して台車30をスライド可能に配置し、吊下げ治具51を介して複数のカーテンウォールを収納ラック50に吊下げ支持させた後、収納ラック50をクレーン83で建物上層部まで揚重し、収納ラック50を台車30上に載置し、台車30を建物内部に向けてスライドさせながら、吊下げ治具51を介してカーテンウォールを1枚ずつ吊り出し、所定の取付け位置に搬送して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールの取付け方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製パネルやプレキャストコンクリート製パネルから構成されるカーテンウォールが、建物の外装壁として広く用いられている。このカーテンウォールの施工に際しては、屋上等に設置したクレーンを用いてカーテンウォールを1枚ずつ揚重し、クレーン操作によってカーテンウォールを所定の取付け位置まで移動させて取付ける方法が一般的に行われている。
【0003】
しかし、上記の方法では、カーテンウォールを1枚ずつ揚重するために時間が掛かり、作業効率が悪い。そこで、クレーンによるカーテンウォールの揚重回数を削減するために、複数枚のカーテンウォールを一度に揚重する装置が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたカーテンウォール吊り込み装置は、複数枚のカーテンウォールを収容するボックスと、ボックス内にカーテンウォールを吊り込むとともに、カーテンウォールをボックス外に送り出すカーテンウォール吊り込み・送り出し手段(自走式ホイスト)と、ボックス内に吊り込んだカーテンウォールの振れ止め手段と、カーテンウォール取付け時におけるボックスの重心移動に対応してボックス前後方向に移動し、ボックスの姿勢を水平に維持するバランス維持手段とを備えている。この吊り込み装置を用いてカーテンウォールの揚重、取付けを行う際には、上記ボックス内に複数のカーテンウォールを振れ止め固定し、次いで、屋上に設置したタワークレーンによりボックスを建物の所定のカーテンウォール取付位置まで揚重した後、バランス維持手段を移動させてボックスのバランスを維持しつつ、上記の吊り込み・送り出し手段を駆動させてカーテンウォールを所定の取付位置に吊り込み、当該位置に取付ける。
【0005】
また、特許文献2に記載された板状外装材の取付装置は、前後左右4面の吊り込み面を有し、各吊り込み面は、板状外装材を吊り下げる2台の電動チェーンブロックを設けた吊ビームを備えている。また、装置下部には、取付装置を回転させるとともに、装置の姿勢を水平に維持する姿勢制御装置が設置されている。この取付装置を用いて板状外装材の取付けを行う際には、各吊り込み面に板状外装材を吊り込み、これを取付け場所まで揚重して、電動チェーンブロックを駆動させて板状外装材を取り付けた後、姿勢制御装置を駆動させて取付装置を回転させることにより、次の設置場所で板状外装材を取り付ける。
【0006】
【特許文献1】特許第3204350号公報
【特許文献2】特許第2865254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1及び2の装置にあっては、複数枚のカーテンウォールを一括揚重することで揚重回数を低減し、カーテンウォールの取付けサイクルを短縮させることができる。しかしながら、カーテンウォールの揚重・取付け作業を行っている間、タワークレーンを拘束することになるから、その間、タワークレーンを用いて他の揚重搬送作業を行うことができないという問題がある。
【0008】
また、上記の特許文献1及び2いずれの装置においても、カーテンウォール1枚ごとに、カーテンウォールの吊り込み・送り出し用の自走式ホイスト、電動チェーンブロック等の駆動機構を装備する必要がある。その結果、装置が複雑化しコスト割高につながるといった問題も生じる。
【0009】
さらに、上記の装置を用いてカーテンウォールを取付け位置に取付ける場合、カーテンウォールをボックスから1枚ずつ取り除くたびにカーテンウォールを含めたボックスの重心が前方に移動するから、重心の移動に対応するバランス維持手段を動作させながら作業を行う必要がある。そのため、単なる取付け作業以外の工程が増え、カーテンウォール取付け作業の能率が悪いという問題がある。また、上記の装置では、カーテンウォールの取付け作業が進行するにしたがい、装置内のカーテンウォールの数が減って吊り荷(装置及びカーテンウォール)の重量が減少することで、風等の影響による荷振れが生じやすくなる。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑み、タワークレーンの拘束を低減すると同時に、カーテンウォールの取付け作業の施工性を向上させることができるカーテンウォールの取付け方法及びカーテンウォールの取付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカーテンウォールの取付け方法は、建物上層部における躯体に、一端側を前記躯体に固定し且つ他端側を建物外方に向けて水平に延出させる態様で跳ね出しレールを設置するとともに、該跳ね出しレールに対して台車をスライド可能に配置し、吊下げ治具を介して複数のカーテンウォールを収納ラックに吊下げ支持させた後、該収納ラックをクレーンで前記建物上層部まで揚重し、該収納ラックを前記台車上に載置し、前記台車を建物内部に向けてスライドさせながら、前記吊下げ治具を介してカーテンウォールを1枚ずつ吊り出し、所定の取付け位置に搬送して取り付けることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2のカーテンウォールの取付け方法は、上記請求項1において、前記跳ね出しレール設置箇所の上部に、前記建物の外周面に沿って走行レールを水平方向に敷設するとともに、該走行レールに巻上げ装置を走行自在に吊支させ、前記収納ラックが載置された前記台車をスライドさせることにより、吊り出し対象となるカーテンウォールを前記巻上げ装置の直下に移動させ、前記巻上げ装置により前記カーテンウォールを吊り上げて、前記走行レールに沿って所定の取付け位置まで搬送することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3のカーテンウォールの取付け方法は、上記請求項2において、前記走行レールを、外周養生に支持させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4のカーテンウォールの取付け装置は、2本の平行な懸垂レールと複数の吊下げ治具とを有し、各吊下げ治具にカーテンウォールを懸垂させた状態で各吊下げ治具を前記懸垂レールに架け渡すことにより、複数のカーテンウォールを吊下げ支持する収納ラックと、一端側が建物上層部の躯体に固定される一方、他端側が建物外方に向けて水平に延出する態様で、前記建物上層部に設置された跳ね出しレールと、前記跳ね出しレールに対してスライド可能に配置され、前記収納ラックを載置する台車と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5のカーテンウォールの取付け装置は、上記請求項4において、前記収納ラックが、各カーテンウォールの間にそれぞれ設置され、隣接するカーテンウォール同士の距離を一定に保つ複数の固定治具をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6のカーテンウォールの取付け装置は、上記請求項5において、前記複数の固定治具が着脱可能に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカーテンウォールの取付け方法及び装置によれば、建物上層部における躯体に跳ね出しレールを設置するとともに、この跳ね出しレールに対して台車をスライド可能に配置し、地上において吊下げ治具を介して複数のカーテンウォールを収納ラックに懸垂支持させた後、この収納ラックを定置式クレーンで建物上層部まで揚重して台車上に載置し、台車を建物内部に向けてスライドさせながらカーテンウォールを吊り出し、所定の取付け位置に搬送して取り付けるようにしたので、収納ラックを上層部まで揚重した後は、タワークレーン等の定置式クレーンを用いる必要がなくなる。その結果、定置式クレーンの拘束を低減させることができる。また、収納ラックを跳ね出しレール上の台車に載置した状態でカーテンウォールを吊り出すようにしたことで、作業の進行に伴って収納ラック内のカーテンウォールが減り収納ラック全体の重量が減少しても、風等による荷振れが生じることなく、安全に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照して、本発明のカーテンウォールの取付け方法及び装置における好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け方法及び装置の適用対象となる建物の斜視図、図2及び図3−1〜3−3は本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を示す図であり、図2は側面図、図3−1は上面図、図3−2は図3−1の矢視A−A図、図3−3は図3−1の矢視B−B図である。なお、本発明で適用するカーテンウォールは、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属やプレキャストコンクリート等から構成されるものであり、一層分の高さを有する公知のものである。
【0020】
図1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け方法及び装置を適用して、建物の下層部から順次カーテンウォールの取付け作業を行っている状態を示している。なお、図1では、上層部において鉄骨建方等の作業を並行して行っている様子も示されている。建物1において、まだカーテンウォールが取付けられていない上層部の外周には、地上部への物の飛来落下防止、外周作業時の作業員の墜落防止、足場の確保等を目的として、外周養生80が設置してある。この外周養生80は、建物1の上層部の外周面を取り囲むように配置され建物1の躯体に支持固定される複数の外周養生フレーム81と、養生ネット(図示を省略)とにより構成してある。なお、この外周養生80は、建物1の施工状況に応じて上部に盛り替えて転用される。
【0021】
まず、本実施の形態におけるカーテンウォールの取付け装置について説明する。図2及び図3に示すように、カーテンウォールの取付け装置10は、跳ね出しレール20と、跳ね出しレール20上に配置される台車30と、複数のカーテンウォールを収容した状態で台車30に載置されるカーテンウォール収納ラック50(以下、省略して「収納ラック50」という。)とから構成されるものである。
【0022】
跳ね出しレール20は、建物の上層部における躯体2上に、所定の間隔を置いて平行に敷設された2本のレールからなり、その一端側21が躯体2に固定される一方、他端側22が建物外方に向けて水平に延出する態様で設置してある。ここで、跳ね出しレール20の「一端側21」とは、建物内の踊場3に設置されたレール部分を示しており、跳ね出しレール20の「他端側22」とは、建物から外部に突出した部分(すなわち跳ね出し部分)のレールを示している。以下、跳ね出しレール20の一端側を「踊場側21」、他端側を「跳ね出し側22」という。
【0023】
図3−1に示すように、2本の跳ね出しレール20の間隔は、後述する収納ラック50の幅寸法よりも大きく形成してある。また、跳ね出しレール20の跳ね出し側22の長さは、収納ラック50の長手方向寸法と同程度に形成してある。図2に示すように、跳ね出しレール20の踊場側21及び跳ね出し側22の各端部には、レール上に設置される台車30のスライドを規制するストッパ部材23をそれぞれ設けてある。なお、本実施の形態では、この跳ね出しレール20として、H形鋼材を適用している。
【0024】
台車30は、後述する収納ラック50を載置して跳ね出しレール20上を移動させるためのものであり、上部フレーム部31、下部フレーム部32及びスライド機構40とを備えて構成され、跳ね出しレール20に対してスライド可能に配置してある。
【0025】
図3−1〜図3−3に示すように、上部フレーム部31は、2本の跳ね出しレール20に沿って水平方向に設けられた2本の第1フレーム31aと、2本の第1フレーム31aの一端部(建物側の端部)から、跳ね出しレール20の内側に向けて水平方向に延設された第2フレーム31bと、各第1フレーム31aの他端部(跳ね出し先端側)から鉛直下向きに設けられた第3フレーム31cとから構成してある。図3−3に示すように、この第2フレーム31bの上面は、後述する収納ラック50を載置する載置面となっている。
【0026】
下部フレーム32は、第1フレーム31aと同様に、2本の跳ね出しレール20に沿って水平方向に設けられている。この下部フレーム32には、後述するスライド機構40のトラベリングナットに固定されるナット固定部34が設けてある。
【0027】
スライド機構40は、図2に示すように、下部フレーム32と跳ね出しレール20との間に介在するエンドレスコロ41と、跳ね出しレール20側に設置されるスクリュージャッキ42及びトラベリングナット43とから構成してある。図示しないモータによりスクリュージャッキ42を駆動させると、スクリュージャッキ42に沿ってトラベリングナット43が移動し、これによりナット固定部34を介して台車30が跳ね出しレール20に沿ってスライドする。なお、スライド機構40としては、エンドレスコロ41の替りにリニアモーションガイド(LMガイド)、スクリュージャッキ42及びトラベリングナット43の替りに電動シリンダ、キャプスタンタイプの手動ウィンチ等の手段も適用することができる。
【0028】
収納ラック50は、複数のカーテンウォールCWを吊り下げ支持した状態で収納するものであり、カーテンウォールCWを吊り下げ支持するための吊下げ治具51、この吊下げ治具51を介して複数のカーテンウォールCWを懸垂支持する2本の平行な懸垂レール52、及び、この2本の懸垂レール52上面に架設されるフレーム部材53とから構成されるものである。図4〜図8は収納ラック50を詳しく説明する図であり、図4は収納ラック50の正面図、図5は図4のC−C断面図、図6は図5の一部を拡大して示した図、図7は図5のD−D断面図、図8は懸垂レール52の一部を拡大して示した斜視図である。
【0029】
吊下げ治具51は、図3−1及び図4に示すように、カーテンウォールCWの幅寸法よりも大きい寸法を有したものであり、後述するカーテンウォール固定治具60、シャックル61及び吊ワイヤー62を介してカーテンウォールCWを吊り下げ支持するものである。図4に示すように、吊下げ治具51は、カーテンウォールCWを吊り下げた状態で2本の懸垂レール52の間に架け渡され、その両端が各懸垂レール52の下フランジ52bに載置される態様で着脱自在に懸垂レール52に支持される。
【0030】
図5に示すように、吊下げ治具51とカーテンウォールCWとの間に介在するカーテンウォール固定治具60(以下、省略して「固定治具60」という。)は、隣接するカーテンウォール同士の距離を一定に保つためのものであり、L字型形状の薄板からなるL字型部材63と、隣接するL字型部材63同士を連結する連結部材64とから構成される。L字型部材63の下端部は、図5に示すようにカーテンウォールCWから突出する取付け用金具11に、ボルト13を介して固定してある。これにより、固定治具60はカーテンウォールCWと連結される。一方、L字型部材63の上部は、図6に拡大して示すように、連結部材64を、隣接するL字型部材63のピン65に係合させることによって、隣接するL字型部材63に対して着脱可能に連結される。
【0031】
懸垂レール52は、図3−1及び図4に示すように、カーテンウォールCWの幅寸法よりも大きい間隔を置いて平行に配設された2本のレール部材からなり、上フランジ52a及び下フランジ52bを備えている。図7及び図8に示すように、下フランジ52bには、下フランジ52b上に載置された吊下げ治具51がレールに沿って移動するのを阻止するストッパ部材54が設けてある。また、図8に示すように、上フランジ52aには、下フランジ51bのストッパ部材54に対応する位置に、切欠き部55が設けてある。懸垂レール52を上記構成とすることにより、収納ラック50の上方から吊下げ治具51ごとカーテンウォールCWを引き上げることが可能となっている。
【0032】
フレーム部材53は、図3−1に示すように、2本の懸垂レール52に直交する態様で懸垂レール52上に架設される2本の平行な長尺部材である。このフレーム部材53は、懸垂レール52の建物側の端部に配置される前方フレーム部材53aと、懸垂レール52の跳ね出し先端側に配置される後方フレーム部材53bとから構成される。図3−1に示すように、後方フレーム部材53bは、台車30の第1フレーム31a間の間隔よりも長く形成してある。図3−2に示すように、後方フレーム部材53bの両端は、台車30の第3フレーム31c上に、収納ラック支持部材33を介して載置される。一方、図3−1に示すように、前方フレーム部材53aは、第1フレーム31a間の間隔よりも短く形成してある。図3−3に示すように、前方フレーム部材53aの両端は、懸垂レール52を介して台車30の第2フレーム31b上に載置される。また、図2に示すように、前方フレーム部材53a及び後方フレーム部材53bには、収納ラック50を揚重するための吊ワイヤー12を挿通する吊ワイヤー挿通孔56が設けてある。また、符号57は、クレーンによって収納ラック50を台車30に載置する際の揚重作業時の荷振れを防止するための案内バーであり、前方フレーム部材53aの中央部付近に設けてある。
【0033】
上述した収納ラック50にカーテンウォールCW及を装着する作業は、図9−1〜図9−3に示す作業用足場90を地上に設置して行う。図9−1は収納ラック50が設置された作業用足場90の上面図、図9−2は図9−1のA−A断面図、図9−3は、図9−2のB−B断面図である。図に示すように、平行に設置された作業用足場90の間には、収納ラック50を支持する支持部材91が架設してある。また、作業用足場の上方には、チェーンブロック92が設置してある(図9−1では図示を省略)。以下、カーテンウォールCWの装着作業を簡単に説明する。まず、支持部材91上に懸垂レール52の両端部を載置し、収納ラック50を支持部材91に保持させる。複数の吊り下げ治具51は、予め懸垂レール52に架け渡しておく。図9−2に示すように、予め固定治具60が装着されたカーテンウォールCWを作業用足場90に搬入し、固定治具60をチェーンブロック92に取り付けて電動カーテンウォールCWを建て起こす。次いで、カーテンウォールCWを所定の吊下げ治具51の下部まで移動させて、固定治具60の上部を吊ワイヤー62に連結する。以上の作業を順次行うことにより、複数のカーテンウォールCWが収納ラック50に懸垂支持される。なお、本実施の形態では、1つの収納ラック50に7枚のカーテンウォールCWを装着させてある。
【0034】
次に、図10〜図15を参照しながら、上述したカーテンウォールの取付け装置10を用いてカーテンウォールCWを建物外周面に取付ける方法について説明する。図10−1及び図10−2は、建物最上層に設置された定置式クレーン83を用いて、地上の収納ラック50を上層部に設置された台車30まで揚重する途中の状態を示す図、図11−1及び図11−2は、収納ラック50を台車30へ設置する作業が完了した状態を示す図、図12−1及び図12−2は、収納ラック50から最前列のカーテンウォールを吊り出す状態を示す図、図13−1及び図13−2は、最後列のカーテンウォールを吊り出す状態を示す図である。なお、図10−1〜図13−1は取付け装置10を側方から見ており、図10−2〜図13−2は取付け装置10を上方から見ている。また、図14及び図15は、収納ラック50から吊り出したカーテンウォールCWを所定の取付け位置まで搬送する手順を示す図であり、右図は建物1及び取付け装置10を側方から見た図、左図は正面から見た図である。
【0035】
取付け作業を行う前に、図1及び図10−1に示すように、上層部の外周に設置された外周養生80の下部にテルハ70を設置する。テルハ70は、テルハ用レール71と巻上げ装置72とから構成される。図1に示すように、テルハ用レール71は、外周養生80下部における外周養生フレーム81に支持され、建物1の外周面から所定間隔離れた位置に、外周面に沿って敷設される。巻上げ装置72としては、ウィンチやチェーンブロック等が用いられ、図示しない搬送装置に吊り下げ支持されることにより、テルハ用レール71に沿って走行自在に設置される。
【0036】
以下、カーテンウォールCWを地上から建物の上層部の所定の取付け位置まで揚重・搬送して取り付ける手順について説明する。まず、跳ね出しレール20を上層部(図ではN−2階)の躯体2に固定し、この跳ね出しレール20の跳ね出し側22に、台車30を設置する。
【0037】
地上に配置した収納ラック50の吊ワイヤー12を、建物最上層に設置された定置式クレーン83のフックに玉掛けし、定置式クレーン83で収納ラック50を地上からN−2階まで揚重する。このとき、図10−1及び図10−2に示すように、収納ラック50前方側を建物1の外周面に対向させる態様で、且つ、収納ラック50を台車30の配置位置よりも外側位置に揚重する。図10に示す状態から、収納ラック50を台車30とほぼ同じ高さまで揚重した後、収納ラック50を建物側に、また、台車30を跳ね出し側に移動させ、図11−1及び図11−2に示すように、台車30の上部フレーム31に収納ラック50の前方フレーム部材53a及び後方フレーム部材53bを載置する。これにより収納ラック50は、複数のカーテンウォールCWを建物1に対して跳ね出し方向に平行に並設させた状態で、台車30に保持される。図11−1及び図11−2に示すように台車30への収納ラック50の設置作業が完了した後、収納ラック50の吊ワイヤー12を、定置式クレーン83のフックから取り外す。
【0038】
次いで、図12−1及び図12−2に示すように、スクリュージャッキ42を駆動させて台車30を建物内部に向かってスライドさせ、最前列のカーテンウォール(以下、これを「カーテンウォールCW1」という。)を、テルハ70の巻上げ装置71の直下に配置する。この後、カーテンウォールCW1を吊下げる吊下げ治具51を巻上げ装置71のフック73に玉掛けし、カーテンウォールCW1とこれに隣接するカーテンウォールとを連結する連結金具64の係合を解除する。次いで、巻上げ装置71を駆動させて吊下げ治具51とともにカーテンウォールCW1を上方から取り出す。
【0039】
巻上げ装置71によってカーテンウォールCW1を収納ラック50の上方に吊り上げた後、図14に示すように、巻上げ装置72をテルハ用レール71に沿って走行させ、カーテンウォールCW1を所定の取り付け位置上部まで搬送し、カーテンウォールCW1を取付け位置まで降ろして取付ける。取付けが完了した後、吊下げ治具51及び固定治具60をカーテンウォールCW1から取り外す。
【0040】
台車30を建物1内部に向けて移動させながら上記の作業を順次繰返すことにより、収納ラック50内に収容された複数のカーテンウォールCWを所定の取付け位置に取付けていく。このカーテンウォールCWの取付け作業が進行するにしたがい、台車30は建物1の内部に徐々に進入することになる。従って、最後列のカーテンウォールCW7を取付ける段階では、図13−1及び図13−2に示すように収納ラック50のほぼ全体が建物1の内部に入った状態となる。
【0041】
なお、本実施の形態では、収納ラック50に収容されたカーテンウォールCWを上方から取り出すようにしたが、図15に示す手順により、これを下方から取り出すことも可能である。この場合、カーテンウォールCWの固定治具60を、直接巻き上げ装置72のフック73に玉掛けした後、固定治具60から吊下げ治具51を取り外す。この後、図15に示すように、巻上げ装置72によりカーテンウォールCWを収納ラック50の下方に移動させ、所定の取付け位置まで搬送して取り付ける。
【0042】
収納ラック50内のカーテンウォールCWをすべて取り出した後、収納ラック50の吊ワイヤー12を再び定置式クレーン83に玉掛けして、収納ラック50を地上に下ろす。このとき、地上において収納ラック50を複数用意しておき、上層階での取り付け作業と並行して、作業用足場90でのカーテンウォールCWの装着作業を行うことにより、収納ラック50の入れ替え作業の効率化を図ることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態におけるカーテンウォールの取付け方法及び装置では、建物上層部における躯体2に跳ね出しレール20を設置するとともに、この跳ね出しレール20に対して台車30をスライド可能に配置し、地上において吊下げ治具51を介して複数のカーテンウォールを収納ラック50に懸垂支持させた後、この収納ラック50を定置式クレーン83で建物上層部まで揚重して台車30上に載置し、台車30を建物内部に向けてスライドさせながら、テルハ70を用いて吊下げ治具51ごとカーテンウォールを上方に引き出し、所定の取付け位置に搬送して取り付けるようにした。従って、収納ラック50を上層部の台車30に載置した後に取付け作業を行う際には、定置式クレーン83を用いる必要がなくなり、定置式クレーンの拘束を低減させることができる。その結果、図1に示すように、カーテンウォールの取り付け作業と並行して、定置式クレーンを他の揚重・搬送作業に有効活用することができるようになる。
【0044】
また、本実施の形態におけるカーテンウォールの取付け方法及び装置によれば、跳ね出しレール20上の台車30を介して収納ラック50を建物内部に向かってスライドさせるだけで、収納ラック50に収容されたカーテンウォールを取り出しやすい位置に移動させることができるので、従来のようにカーテンウォールを送り出すための駆動機構をカーテンウォール1枚ごとに備える必要がなくなる。その結果、取付け装置及び取付け作業に掛かるコストを低減させることができるとともに、作業効率を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態における取付け装置10では、台車30をスライドさせる駆動機構(スクリュージャッキ42)を、躯体に取付けられた跳ね出しレール20に設置した構成としている。従って、収納ラック50内に駆動機構を設置した従来の装置のように、収納ラックの揚重を行うたびに電源供給線の接続・切り離し等の作業を行う必要もなくなるから、作業効率をさらに向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態におけるカーテンウォールの取付け方法及び装置によれば、収納ラック50を跳ね出しレール20上の台車30に保持させた状態でカーテンウォールを取り出すようにしたので、クレーンで収納ラック50を吊ったままカーテンウォールを取り出す場合と比べて、安全に且つ安定して作業を行うことができる。また、上記に加えて、本実施の形態では、カーテンウォールの取付け作業が進行するにしたがい、収納ラック50が建物内側に移動するので、風等の影響を受けにくい。従って、作業の進行に伴って収納ラック50内のカーテンウォールの数が減り収納ラック全体の重量が減少しても、荷振れが生じにくく、安全性が向上する。また、カーテンウォールの取り出しが進行するに伴って収納ラック50の重心が移動しても、収納ラックが傾くといったことがないから、バランス維持装置のような取付け作業以外に用いる装置を設置する必要もない。
【0047】
さらに、本実施の形態のカーテンウォールの取付け方法及び装置によれば、収納ラック50内において隣接するカーテンウォール同士の距離を一定に保つ複数の固定治具を備えたことで、カーテンウォール同士の衝突や回転を防止することができる。さらに、これら複数の固定治具を着脱自在に連結したことで、収納ラック50からカーテンウォールを吊り出す際の作業性に優れる。
【0048】
加えて、本実施の形態のカーテンウォールの取付け方法及び装置によれば、カーテンウォールの搬送・取り付けを行うテルハ70のテルハ用レール71を、外周養生80の下部に設置したことで、これを外周養生80と一体化して上階に盛り替えることが可能であり、施工性に優れる。
【0049】
なお、上記の実施の形態では、収納ラック50に収容されたカーテンウォールの取り出し・搬送にテルハ70を用いたが、これに限定されるものではなく、上層部に設置したフロアクレーン又は定置式クレーン83によりこれらの作業を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、カーテンウォールの施工対象となる建物の斜視図である。
【図2】図2は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置の側面図である。
【図3−1】図3−1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置の上面図である。
【図3−2】図3−2は、図3−1のA−A断面図である。
【図3−3】図3−3は、図3−1のB−B断面図である。
【図4】図4は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置における収納ラックの正面図である。
【図5】図5は、図4のC−C断面図である。
【図6】図6は、図5の一部を拡大して示した図である。
【図7】図7は、図5のD−D断面図である。
【図8】図8は、懸垂レールの一部を拡大して示した斜視図である。
【図9−1】図9−1は、収納ラックが設置された作業用足場の上面図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1のA−A断面図である。
【図9−3】図9−3は、図9−2のB−B断面図である。
【図10−1】図10−1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(収納ラック揚重時)を行う状態を側方から見た図である。
【図10−2】図10−2は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業を行う状態(収納ラック揚重時)を上方から見た図である。
【図11−1】図11−1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(収納ラック設置完了時)を行う状態を側方から見た図である。
【図11−2】図11−2は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(収納ラック設置完了時)を行う状態を上方から見た図である。
【図12−1】図12−1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(最前列CW取出し時)を行う状態を側方から見た図である。
【図12−2】図12−2は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(最前列CW取出し時)を行う状態を上方から見た図である。
【図13−1】図13−1は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(最後列CW取出し時)を行う状態を側方から見た図である。
【図13−2】図13−2は、本実施の形態であるカーテンウォールの取付け装置を用いてカーテンウォールの取付け作業(最後列CW取出し時)を行う状態を上方から見た図である。
【図14】図14は、カーテンウォールの搬送手順を示す図である。
【図15】図15は、カーテンウォールの搬送手順を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 建物
10 カーテンウォールの取付け装置
20 跳ね出しレール
21 踊場側端部
22 跳ね出し側端部
23 (跳ね出しレールの)ストッパ部材
30 台車
31 上部フレーム
32 下部フレーム
40 スライド機構
50 収納ラック
51 吊下げ治具
52 懸垂レール
52a 上部フランジ
52b 下部フランジ
53 フレーム部材
54 (懸垂レールの)ストッパ部材
55 切欠き部
60 固定治具
63 L字型部材
64 固定金具
70 テルハ
71 テルハ用レール
72 巻上げ装置
80 外周養生
83 定置式クレーン
90 作業用足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物上層部における躯体に、一端側を前記躯体に固定し且つ他端側を建物外方に向けて水平に延出させる態様で跳ね出しレールを設置するとともに、該跳ね出しレールに対して台車をスライド可能に配置し、
吊下げ治具を介して複数のカーテンウォールを収納ラックに吊下げ支持させた後、該収納ラックをクレーンで前記建物上層部まで揚重し、該収納ラックを前記台車上に載置し、
前記台車を建物内部に向けてスライドさせながら、前記吊下げ治具を介してカーテンウォールを1枚ずつ吊り出し、所定の取付け位置に搬送して取り付けることを特徴とするカーテンウォールの取付け方法。
【請求項2】
前記跳ね出しレール設置箇所の上部に、前記建物の外周面に沿って走行レールを水平方向に敷設するとともに、該走行レールに巻上げ装置を走行自在に吊支させ、
前記収納ラックが載置された前記台車をスライドさせることにより、吊り出し対象となるカーテンウォールを前記巻上げ装置の直下に移動させ、前記巻上げ装置により前記カーテンウォールを吊り上げて、前記走行レールに沿って所定の取付け位置まで搬送することを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォールの取付け方法。
【請求項3】
前記走行レールを、外周養生に支持させることを特徴とする請求項2に記載のカーテンウォールの取付け方法。
【請求項4】
2本の平行な懸垂レールと複数の吊下げ治具とを有し、各吊下げ治具にカーテンウォールを懸垂させた状態で各吊下げ治具を前記懸垂レールに架け渡すことにより、複数のカーテンウォールを吊下げ支持する収納ラックと、
一端側が建物上層部の躯体に固定される一方、他端側が建物外方に向けて水平に延出する態様で、前記建物上層部に設置された跳ね出しレールと、
前記跳ね出しレールに対してスライド可能に配置され、前記収納ラックを載置する台車と、
を備えたことを特徴とするカーテンウォールの取付け装置。
【請求項5】
前記収納ラックが、
各カーテンウォールの間にそれぞれ設置され、隣接するカーテンウォール同士の距離を一定に保つ複数の固定治具をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のカーテンウォールの取付け装置。
【請求項6】
前記複数の固定治具が着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項5に記載のカーテンウォールの取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−266891(P2008−266891A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107260(P2007−107260)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】