説明

カードコネクタ

【課題】イジェクト機構を構成する部品点数が少なく、製造組立も容易であり、さらに、カードコネクタ全体の剛性を損ねることがないカードコネクタを提供する。
【解決手段】合成樹脂材料からなるベース部材と金属材料からなるカバー部材とで、挿抜されるカードの少なくとも一部を収容し得るカード収容空間を形成するカードコネクタであって、前記ベース部材を構成する側壁には、前記カバー部材をカード挿入口に向けて付勢するコイルバネを収容する凹溝、ハート形カム機構及び案内レールが設けられ、前記カバー部材には、一端がベース部材に支持される前記コイルバネの他端に係合するストッパ、一端が前記ハート形カム機構のカム溝を移動するロック金具の他端を回動自在に支持する支持片、及び前記案内レールに係合する係合片が設けられ、前記カバー部材は、挿抜されるカードとともに、前記ベース部材に対して移動可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機のような電子機器とメモリ用などの集積回路が内蔵されたカード(以下、「ICカード」と称す。)を接続するためのカードコネクタに関し、特に、ICカードの着脱を容易に且つ確実に行うプッシュ・プッシュ式のイジェクト機構を備えるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、カメラ等の電子機器においては、ICが内蔵されたSIM(subscriber identity module)カード、MMC(multi media card)、SD(secure digital)カードなどのICカードを装着して機能拡張などを行うようにしている。
【0003】
このようなICカードを電子機器に着脱自在に搭載するために、カードコネクタが必要とされる。該カードコネクタにおいては、従来から、例えば、特許文献1に示されるように、ICカードの挿抜を容易に且つ確実に行うことができるように、プッシュ・プッシュ式のイジェクト機構が設けられている。
【0004】
特許文献1に開示されるカードコネクタは、ベース部材とカバー部材とでカード収容空間を形成している。そのプッシュ・プッシュ式イジェクト機構は、イジェクト部材、コイルバネ、ハート形カム機構、及びロック金具を含んでいる。イジェクト部材は、挿抜されるICカードに当接し、該ICカードとともにカード収容空間内を移動し、コイルバネは、イジェクト部材をICカード抜き取り方向に付勢している。また、ハート形カム機構は、概略ハート形状をなすハートカムと該ハートカムを取り囲むカム溝を含み、イジェクト部材またはベース部材に形成される。ロック金具は、一端に設けられたピンがハート形カム機構のカム溝内を移動し、他端は、例えば、ハート形カム機構がベース部材に形成されている場合、イジェクト部材に回動自在に支持される。
【0005】
ICカードがカードコネクタのカード収容空間内に押し込まれるように挿入されると、ICカードがイジェクト部材に当接し、それにより、ICカードとともにイジェクト部材もコイルスプリングの付勢力に抗して移動する。この時、ロック金具の一端に設けられたピンもカム溝内を移動する。
【0006】
ICカードをカードコネクタのカード収容空間内いっぱいに押し込んだ後、手を離すと、ロック金具のピンがハート形カム機構のハートカムの窪み内に入り込み、イジェクト部材及びICカードのコイルバネによる戻りを妨げる。それにより、ICカードは、カードコネクタ内にロックされ、電子機器と電気的に接続された状態を維持する。
【0007】
再度、ICカードを押し込むと、ロック金具のピンがハートカムの窪みから外れることで、イジェクト部材はコイルバネの付勢力で当初位置に戻る。それにより、該イジェクト部材に当接するICカードもロック状態を解除されることで、カード収容空間から抜き取り可能となる。
【0008】
上記特許文献1に開示されるカードコネクタにおけるイジェクト部材に代えて、可動プレートを採用したり、カードケースを採用したりするカードコネクタも提案されている(特許文献2乃至4参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−251024号公報
【特許文献2】特開2003−77586号公報
【特許文献3】特開2005−317383号公報
【特許文献4】特開2000−260524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至3に開示されるようなタイプの従来のカードコネクタにおいては、挿抜されるICカードとともに移動する部材としてのイジェクト部材や可動プレートあるいはスライダ部材が、カードコネクタのイジェクト機構を構成する部品として別途必要であり、部品点数が多くなるとともに、近年要求されるカードコネクタの小型化あるいは薄型化を困難にしている。
【0011】
特許文献4に開示されるようなタイプの従来のカードコネクタにおいては、カードケースが挿抜されるICカードとともに移動する部材と該ICカードをカバーする部材の両部材を兼ねており、部品点数としては1つ少なくて済む。
【0012】
しかしながら、このタイプのカードコネクタにおいても、ICカードとともに移動するカードケースは、カードコネクタを構成するベース部材の側壁内を移動するように構成されている。したがって、ハート形カム機構を、例えば、カードケース側に設ける場合、ロック金具及び該ロック金具を抑えるばねを設ける必要があり、その分カードコネクタの幅や厚さを小さくすることができない。また、カードコネクタ全体としての剛性を維持することを考慮するとベース部材やカードケースを肉厚とする必要がある(ベース部材も、コンタクトなどを支持するので金属製とすることができない)。
他方、ハート形カム機構をベース部材側に設けた場合、カードケースを金属製とし得るが、カードケースは、従来のカバー部材のようにベース部材を覆う形状でないため、ベース部材の側壁や底壁の厚さを大きくする必要がある。また、ベース部材側にハート形カム機構を設けるために工夫が必要であり、場合によっては、組立が複雑になる恐れがある。
【0013】
本発明の目的は、以上のような問題点に鑑み、ICカードの着脱を容易に且つ確実に行うことができるイジェクト機構を備えるとともに、該イジェクト機構を構成する部品点数が少なく、製造組立も容易であり、さらに、カードコネクタ全体の剛性を損ねることがないカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のカードコネクタは、合成樹脂材料からなるベース部材と金属材料からなるカバー部材とで、挿抜されるカードの少なくとも一部を収容し得るカード収容空間を形成するカードコネクタであって、前記ベース部材を構成する側壁には、前記カバー部材をカード挿入口に向けて付勢するコイルバネを収容する凹溝、ハート形カム機構及び案内レールが設けられ、前記カバー部材には、一端がベース部材に支持される前記コイルバネの他端に係合するストッパ、一端が前記ハート形カム機構のカム溝を移動するロック金具の他端を回動自在に支持する支持片、及び前記案内レールに係合する係合片が設けられ、前記カバー部材は、挿抜されるカードとともに、前記ベース部材に対して移動可能に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のカードコネクタは、また、前記カバー部材に、さらに、ロック金具を抑える押さえバネが設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明のカードコネクタは、また、前記カバー部材には、さらに、カードに当接する当接部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明のカードコネクタは、前記案内レールが前記ベース部材を構成する前記側壁外面に設けられる凹部により形成されていてもよいし、金属製の案内棒で形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、挿抜されるカードとともに、前記ベース部材に対して移動可能に形成されていることで、従来イジェクト機構の構成部品として使用されていたイジェクト部材を省略することができる。それにより、カードコネクタの部品点数が減り、該カードコネクタを安価に作成することができるとともに、その組立も容易となる。
【0019】
また、カバー部材にロック金具を支持する支持片と押さえバネを設けることで、常にロック金具の所定の位置を押さえることが可能となり、ロック金具のカム溝内の移動を確実にするとともに、従来のイジェクト機構におけるロック金具と押さえバネの相対的移動による該ロック金具の変形等を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るカードコネクタの実施態様につき図1乃至図9を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明のカードコネクタの1つの実施例であって、カードが挿入されていない状態におけるカードコネクタを示し、(a)は、カードコネクタの概略上面図、(b)は、(a)に示されるカードコネクタの概略側面図である。図2は、図1(a)に示されるカードコネクタであって、カバー部材が取り外された状態の概略上面図である。図3は、ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが挿入され、カバー部材に当接した状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのIII−III線に沿う概略断面図である。図4は、ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが最奥まで押し込まれた状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのIV−IV線に沿う概略断面図である。図5は、ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが装着されている状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのV−V線に沿う概略断面図である。図6は、図5(a)のVI−VI線に沿う概略断面図であり、図7は、図5(a)のVII−VII線に沿う概略断面図である。図8は、本発明の別カードコネクタの実施例であって、図3(a)と同様の状態にあるカードコネクタの概略上面図である。図9は、図8のIX−IX線に沿う概略断面図である。
【0022】
本明細書において使用される用語、「前」、「後」、「左」、及び「右」は、図1(a)において、それぞれ、上、下、左、及び右をいい、また、用語「上」及び「下」は、図1(b)において、左及び右をいう(図1(a)でいえば、紙面に対して、表、裏をいう)。
【0023】
(第1の実施例)
図1乃至7に本発明に係るカードコネクタの第1の実施例が示される。図1、2は、カードコネクタ1内にICカード70が挿入されていない状態を示す。図1、2に示されるように、カードコネクタ1は、概略、ベース部材10、カバー部材30、複数のコンタクト50、及びイジェクト機構を含んでいる。
【0024】
ベース部材10は、電気的に絶縁性の合成樹脂から作成され、概略矩形状の底壁11、該底壁11から上方に延在する左側壁12、右側壁13、及び前壁14を含んでいる。ベース部材10の後方は開放されており、カード挿入口28を構成する。ベース部材10は、また、上方も開放されているが、後述するカバー部材30で上方を覆われることで、挿抜されるICカード70の少なくとも一部を収容し得るカード収容空間を形成する。
右側壁13上面の前方には、その中間部から前壁14までの前後方向に延在し、上方に開放する凹溝21が形成される。該凹溝19には、前後方向に伸縮する、後述するイジェクト機構を構成するコイルバネ59が収容される。凹溝19は、前方に行くに従い該凹溝19の深さが漸次浅くなるように、傾斜または下に凸に湾曲していることが好ましい。このように構成することで、前後方向に圧縮されるコイルバネ59が上方に飛び出すことが防止される。
【0025】
右側壁13上面の後方には、後述するイジェクト機構を構成するハート形カム機構55が形成される。ハート形カム機構は、従来と同様に、ハートカム56及び該ハートカム56を取り囲むカム溝57を含んでいる。右側壁13の上面であって、凹溝19とハートカム機構55とのイダには、ガイド溝27が設けられていることが好ましい。該ガイド溝27は、凹溝19に収容されるコイルバネ59の他端を支持するカバー部材30の支持片41や、イジェクト機構を構成するロック部材58の前後方向への移動を助けるために設けられる。該ガイド溝27は、上方、前方及び後方に開放しており、前方は、凹溝19に、後方は、ハート型カム機構55に開放している。
【0026】
右側壁13外面(右側壁13の右側の面)には、図1(b)に示されるように、前後方向に延在し、下方及び右方に開放する第1の(前方側)凹部15、第2の(後方側)凹部16の2つの凹部が形成される。該第1の凹部17及び第2の凹部18が形成されることにより、右側壁12外面の上部には、それぞれ第1および第2の案内レールが形成されることになる。該第1及び第2の案内レールには、後述するカバー部材30の右側壁33から突出する第1の係合片38及び第2の係合片39がそれぞれ係合する。第1の凹部17及び第2の凹部18の前後方向の長さは同じであり、その長さは、後述するカバー部材30の前後方向の移動量(ストロークS)に第1の係合片38または第2の係合片39の長さを加えた長さに相当する。
【0027】
左側壁12外面(左側壁12の左側の面)にも同様に、右側壁13外面に形成される第1の凹部17及び第2の凹部18とそれぞれ対をなすように、第1の凹部(不図示)及び第2の凹部16(図6参照)が形成される。したがって、左側壁12にも第1及び第2の案内レールが形成されることになる。
【0028】
なお、数字20は、左側壁12と前壁14とが合流する部分に形成された傾斜面であり、ICカード70の先端に形成される傾斜面と当接し、該ICカード70の逆指しを防止するためのものである。また、数字21乃至24は、左右の側壁12、13のそれぞれの上面及び外面に向かって開放する嵌め込み凹部であり、その下部が、左右の側壁12、13にそれぞれ形成されている第1及び第2の凹部の上部に連通している。したがって、嵌め込み凹部21乃至24を介して、カバー部材30の左右の側壁32、33から突出する4つの係合片を、対応する第1及び第2の凹部に嵌め込むことができる。さらに、数字25は、ベース部材10の底壁11を貫通する略矩形状の開口であり、複数のコンタクト50それぞれの接点部51と弾性変形部52が配置される。また、数字26は、ベース部材10延いてはカードコネクタ1を電子機器等に固定するための固定金具であり、本実施例では図2及び図6に示されるように左右側壁12、13下方に2つずつ、合計4つ設けられている。
【0029】
カバー部材30は、金属製薄板から作成され、天板31、該天板31から略直角に折り曲げられて下方に向けて延在する左側壁32、右側壁33、及び前壁34を含んでいる。カバー部材30の後方は、開放されており、カード挿入口28を構成する。カバー部材30は、また、下方が開放されており、したがって、上述したように、ベース部材10を覆って重ね合わされることで、ICカード70の少なくとも一部を収容し得るカード収容空間を形成する。本実施例においては、カバー部材30は、図1(a)に示されるように、距離Sだけ前後方向に移動可能に構成される。それにより、本実施例におけるカバー部材30は、挿抜されるICカード70のカード収容空間を形成するばかりでなく、従来のイジェクト機構を構成するイジェクト部材としても作用する。
【0030】
カバー部材30の天板31は、略矩形状をなしている。図1に示されるように、ICカード70が挿入されていない状態において、カバー部材30の天板31は、ベース部材10の後方を塞いでいる。言い換えると、ICカード70が挿入されていない状態では、ベース部材10の前方は、天板31の前壁34からベース部材10の前壁14までの間の距離S分が開放されたままである。該距離Sは、カバー部材30が前後方向に移動する移動量(ストロークS)に等しい。
【0031】
カバー部材30の天板31には、右側壁33に沿って且つ該右側壁33に平行に、前方から第1の開口40、第2の開口42、及び第3の開口44が適宜の長さを持って形成されている。
【0032】
第1の開口40の左側辺には、天板31からの切り起こし片としてのストッパ41が形成される。該ストッパ41は、天板31に垂直に下方に向かって折り曲げられ、コイルバネ59の他端を支持している(例えば、図3(b)参照)。
【0033】
第2の開口42の前方辺には、天板31からの切り起こし片としての支持片43が形成される。該支持片43は、最初に天板31に垂直に下方に向かって折り曲げられ、次に天板31に平行に後方に向かって折り曲げられている。支持片43は、天板31に平行な先端部分に貫通孔が開けられており、該貫通孔には、イジェクト機構を構成するロック金具58の他端が回動自在に支持される。
【0034】
第3の開口44の前方辺には、天板31からの切り起こし片としての押さえバネ45が形成される。該押さえバネ45は、天板31に対して若干下方に傾斜するように折り曲げられている。該押さえバネ45は、ロック金具58を下方に向けて弾性的に押さえ、ロック金具58の一端がハート形カム機構55のカム溝57から外れないようにしている。
【0035】
カバー部材30の右側壁33には、前方から第1の係合片38及び第2の係合片39が下方に向かって突出形成されている。第1の係合片38及び第2の係合片39は、同じ寸法及び同じ形状を有している。係合片38及び39各々は、図6に示されるように、ベース部材30に形成される第1または第2の案内レールを取り囲むように、その先端部が内側に折り曲げられている。結果として、係合片38及び39それぞれの先端部は、ベース部材30の第1の凹部17及び第2の凹部18内に配置される。カバー部材の係合片38及び39がベース部材10の案内レールに沿って案内されることで、カバー部材30は前後方向に移動可能に形成される。したがって、カバー部材30の前後方向の移動量(ストロークS)は、第1の係合片38(または第2の係合片39)が第1の凹部17(または第2の凹部18)内を移動する量によって決まる。
【0036】
カバー部材30の左側壁32には、上記右側壁33に形成される第1の係合片38及び第2の係合片39それぞれに対をなす第1の係合片(不図示)及び第2の係合片37(図6参照)が形成される。具体的構成及び作用は、右側壁33の係合片38、39と同じであるので説明を省略する。
【0037】
なお、本実施例では、対をなす2つの案内レールと対応して対をなす2つの係合片でカバー部材30の前後方向の移動を案内しているが、これに限られるものではなく、例えば、対をなす案内レールと対をなす係合片が少なくとも1以上あればよい。
【0038】
カバー部材30の前壁34は、天板31の前端でカード収容空間内に存在するように下方に垂直に折り曲げられており、挿抜されるICカード70の先端に当接する当接部材として作用する。
【0039】
複数のコンタクト50は、従来例と同様に、ベース部材10の底壁11に形成された固定溝または貫通孔を介してあるいはインサート成形により底壁11に互いに平行に固定支持される。コンタクト各々は、接点部51、弾性変形部52、固定部53、及び端子部54を含み、このうち、接点部51及び弾性変形部52は、上述したように、底壁11に形成される開口25内に配置され、ICカード70が装着状態にあるとき、接点部51が、弾性変形部52を介して、ICカード70の外部接点であるパッドに所要の接圧で電気的に接触する(図7参照)。また、端子部54は、ベース部材10の前方から突出するように配置され、電子機器の外部接点に半田付けなどで電気的に接続される。
【0040】
イジェクト機構は、本発明においては、カバー部材30、ベース部材10の右側壁13前方に形成された凹溝19内に収容されるコイルバネ59、ベース部材10の右側壁13後方に形成されたハート形カム機構55、及びロック金具58を含んでいる。
【0041】
カバー部材30は、上述したように、前後方向に移動可能であり、カバー部材30の天板31に形成されているストッパ41でその他端を支持しているコイルバネ59(一端は、ベース部材10の前壁14により支持されている)の付勢力により、後方に向かって付勢されている。ところで、カバー部材30は、その左右側壁32、33に形成されている第1及び第2の係合片が、ベース部材10の左右側壁12、13に形成されている、対応する第1及び第2の凹部内にある。したがって、カバー部材30は、ICカードが挿入されない当初位置においては、図、(b)に示されるように、その後縁がベース部材10の後縁と面一になるように構成される。また、カバー部材30の前壁34は、上述したように、カード収容空間内に配置されるので、挿入されるICカード70の先端が当接し得る。
【0042】
ロック金具58は、概略U字形をなし、その一端は、ハート形カム機構55のカム溝57内を移動し、その他端は、カバー部材30の天板31に形成されている支持片43に回動自在に支持されている。また、ロック金具58の一端側は、カバー部材30の天板31に形成されている押さえバネ45により、ロック金具58の一端がカム溝57から外れないように押さえている。ところで、ロック金具58は、天板31に形成されている支持片43に支持されているので、カバー部材30が移動するとき、同じく天板31に形成されている押さえバネ45と一緒に移動する。このような構成により、ロック金具58は、カム溝57内を移動することで左右に振れるとしても、押さえバネ45によりロック金具58の前後方向に関して常に略同じ部分を押さえられることになる。したがって、ロック金具58の押さえバネ45により押さえられる箇所を適切に選択することにより、従来のように、ロック金具58と押さえバネ45が相対的に移動することで、ロック金具58が変形したり、ロック金具58がカム溝56から外れたりする恐れが全くなくなる。
【0043】
以上説明したように、本発明におけるカードコネクタ1は、カバー部材30が従来例におけるイジェクト部材を兼用するので、部品点数が少なくて済む。
次に、このような構成を備えるカードコネクタ1において、ICカード70の挿抜動作につき図3(a)乃至7を用いて詳細に説明する。
【0044】
図3(a)、(b)は、図1(a)に示されるカバー部材30が当初位置にある状態において、ICカード70がカード収容空間内に押し込まれ、ICカード70の先端がカバー部材30の前壁34に当接した瞬間を示している。
【0045】
この状態において、カバー部材30は、挿入されたICカード70により全体的に若干押し上げられる。それにより、カバー部材30の左側壁32に形成される第1の係合片及び第2の係合片37、及び右側壁33に形成される第1の係合片38及び第2の係合片39が、それぞれに対応するベース部材10の左右両側壁に構成された案内レールとの間に存在する遊びがなくなる。したがって、挿入されたICカード70は、カード収容空間内に、特に、上下方向に隙間なく収容される。
【0046】
図3の状態から、コイルバネ59の付勢力に抗してICカード70を、その前壁34を介して当接しているカバー部材30と一緒に押し込む。図4に示されるように、該ICカード70の先端が当接するカバー部材30の前壁34がベース部材10の前壁14に当接するまで、すなわちこれ以上ICカード70を押し込めなくなるまでICカード70を押し込む。この時、ロック部材58の一端も、カム溝57内を移動する。
【0047】
図4の状態において、ICカード70の押し込み力を解除すると、カバー部材30及びICカード70は、コイルバネ59の付勢力により後方に押し戻される。この時、カム溝57内を移動するロック部材58の一端がハートカム56の窪み部分に誘導され、該ハートカム56の窪み部分に入り込み、カバー部材30の戻りを阻止する。したがって、ICカード70及びカバー部材30は、図5に示されるように、図4の位置より若干後方に戻った位置で停止し、この位置に保持される。
【0048】
図5の状態において、ICカード70の外部接点であるパッドは、カードコネクタ1の対応するコンタクト50に所定の接圧で電気的に接続され、電子機器との交信が可能となる。この時、ICカード70は、図6、7に示されるように、カード収容空間内に隙間なく収容されることで、また、複数のコンタクト50と接触することで、カバー部材41の天板31に密着した状態を維持している。したがって、ICカード70は、図5の状態において、カードコネクタ1からの抜け落ちを阻止される。
【0049】
以上により、ICカード70のカードコネクタ1への装着が完了する。
次に、交換などのためにICカード70をカードコネクタ1から取り出す動作について説明する。
【0050】
図5の状態からコイルバネ59の付勢力に抗してICカード70及びカバー部材30を図4に示される状態まで前方に押し込む。これにより、ロック金具58の一端がカム溝57に案内され、ハートカム56の窪み部分から離脱する。この時、押し込み力を解除すると、ロック金具58は、カム溝57に案内されて元の位置に移動する。したがって、カバー部材30及びICカード70もコイルバネ59の付勢力により、図3に示される当初位置に戻る。図3の状態から、指などを使ってICカード70をカード収容空間から抜き出すことで、ICカード70の取出しが完了する。
【0051】
(第2の実施例)
図8、9に本発明に係るカードコネクタの第2の実施例が示されている。
【0052】
本実施例のカードコネクタは、上記第1の実施例のカードコネクタと比べて、ベース部材10とカバー部材30とが重なり合うそれぞれの左側壁部分の構成が異なるのみで、その他の構成は全て同じである。
【0053】
ベース部材10の左側壁は、図8に示されるように、第1の実施例における第1の凹部(不図示)及び第2の凹部16に該当する部分が完全に削除され、第1の切欠部15’及び第2の切欠部16’として形成され、わずかに、前方部分12a、中間部分12b及び後方部分12cを残す構造となっている。ベース部材10の左側壁の前方部分12aと中間部分12bの間及び中間部分12bと後方部分12cの間は、それぞれ、金属製の第1の案内棒121及び第2の案内棒122が渡されており、ベース部材10の左側壁を補強している。第1及び第2の案内棒121、122は、例えば、インサート成形などによりベース部材10に取り付けられる。第1の案内棒121及び第2の案内棒122は、第1の実施例における第1の案内レール及び第2の案内レールに相当する。
【0054】
他方、カバー部材30の左側壁32’は、挿抜されるICカード70に直接接触するように天板31から下方に折り曲げられている。さらに、該左側壁32’から突出する第1の係合片36’及び第2の係合片37’は、図9に示されるように、第1の実施例とは逆に外側に向かって折り曲げられ、それぞれ、ベース部材10の上記第1の案内棒121及び第2の案内棒122に係合する。
【0055】
このように構成することで、第1、第2の案内棒121、122を介して電子機器のプリント基板に対してグランドを取ることにより、カードコネクタ1におけるノイズ対策を講じることが可能となる。本実施例では、案内棒と係合片による案内機構が一方の側壁(左側壁12)のみに設けられているが、設計上許されるのであれば、左右両側壁に設けられてもよい。
【0056】
本実施例におけるその他の構造は、上述したように、第1の実施例と同じであり、したがって、ICカード70の挿抜動作も全く同じであるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のカードコネクタの1つの実施例であって、カードが挿入されていない状態におけるカードコネクタを示し、(a)は、カードコネクタの概略上面図、(b)は、(a)に示されるカードコネクタの概略側面図である。
【図2】図1(a)に示されるカードコネクタであって、カバー部材が取り外された状態の概略上面図である。
【図3】ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが挿入され、カバー部材に当接した状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのIII−III線に沿う概略断面図である。
【図4】ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが最奥まで押し込まれた状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのIV−IV線に沿う概略断面図である。
【図5】ICカードのカードコネクタへの装着を説明するための図であり、(a)は、ICカードが装着されている状態におけるカードコネクタの概略上面図であり、(b)は、(a)に示されるカードコネクタのV−V線に沿う概略断面図である。
【図6】図5(a)のVI−VI線に沿う概略断面図である。
【図7】図5(a)のVII−VII線に沿う概略断面図である。
【図8】本発明の別カードコネクタの実施例であって、図3(a)と同様の状態にあるカードコネクタの概略上面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う概略断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 カードコネクタ
10 ベース部材
11 底壁
12 左側壁
13 右側壁
14 前壁
17 (ベース部材10の右側壁13の)第1の凹部
18 (ベース部材10の右側壁13の)凹部
19 凹溝
30 カバー部材
31 天板
32 左側壁
33 右側壁
34 前壁
38 (カバー部材30の右側壁32の)第1の係合片
39 (カバー部材30の右側壁32の)第2の係合片
41 ストッパ
43 支持片
45 押さえバネ
50 コンタクト
55 ハート形カム機構
56 ハートカム
57 カム溝
58 ロック金具
59 コイルバネ
70 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料からなるベース部材と金属材料からなるカバー部材とで、挿抜されるカードの少なくとも一部を収容し得るカード収容空間を形成するカードコネクタであって、
前記ベース部材には、前記カバー部材をカード挿入口に向けて付勢するコイルバネを収容する凹溝、ハート形カム機構及び案内レールが設けられ、
前記カバー部材には、一端がベース部材に支持される前記コイルバネの他端に係合するストッパ、一端が前記ハート形カム機構のカム溝を移動するロック金具の他端を回動自在に支持する支持片、及び前記案内レールに係合する係合片が設けられ、
前記カバー部材は、挿抜されるカードとともに、前記ベース部材に対して移動可能に形成されていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記カバー部材には、さらに、ロック金具を抑える押さえバネが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記カバー部材には、さらに、カードに当接する当接部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記案内レールは、前記ベース部材を構成する側壁外面に設けられる凹部により形成されることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記案内レールは、金属製の案内棒で形成されることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−323945(P2007−323945A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152710(P2006−152710)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】