説明

カードシート、及び、カードの打ち抜き方法、及び、カードの打ち抜き装置

【課題】 簡単且つ小型な構成で、カードシートから複数のカードを打ち抜く時に、カード切断面の接着剤のはみ出しを防止することができるカードシートと、カードの打ち抜き装置と、カードの打ち抜き方法の提供。
【解決手段】 表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートから、1ストロークで少なくとも2のカードを打ち抜く、カードの打ち抜き方法において、
前記カードの打ち抜き時に前記カードシートの中間層に発生する応力を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間から抑制或いは解放しながら打ち抜く工程を含むことを特徴とするカードの打ち抜き方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き前のICカード等のカードを複数配列したカードシート、カードシートからカードを打ち抜くカードの打ち抜き装置、及び、カードの打ち抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICカード、クレジットカード、プリペイドカード等のカードの製造装置として、打ち抜き前のカードを複数配列したカードシートから複数のパンチ/ダイで複数枚のカードを同時に打ち抜くカードの打ち抜き装置が知られている。
【0003】
しかし、例えば2枚のシートの間に複数のICモジュールを接着剤等により封止したカードシートから、ICカードを打ち抜いて製造するような場合、打ち抜き時に切り粉やヒゲが発生しやすいという問題があり、この問題を解決する方法として、接着剤の縦弾性係数を打ち抜きしやすい所定の数値内に納めるために接着剤の硬化率を所定値内に調整し、調整済みの接着剤層を含むカードシートを打ち抜くことにより、この切り粉やヒゲを軽減しようとしたICカードが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、打ち抜き装置にカードシートを押さえるストリッパーを設け、ストリッパーのダイに対する平行度を出しやすくし、カード打ち抜き時にストリッパーでシートを出来るだけ均一に押さえ、反り・うねりを軽減し、切り粉やヒゲの発生を軽減しようとする打ち抜き装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−164345号公報
【特許文献2】特開平10−166300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、接着剤の硬化率を所定値に調整するために所定値に硬化させるための硬化炉を必要とし、装置の複雑化、大型化、を免れず、且つ炉内温度を制御する温度制御手段が必要になってしまうという問題がある。
【0006】
又、特許文献2に記載の発明は、ストリッパーを設けシートのうねり等を矯正することによってうねり等が起因のヒゲの発生等は防止できても、打ち抜き時にパンチがシートを押圧することによる接着剤の切断面からのはみ出しを防止することはできないという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単且つ小型な構成で、カードシートから複数のカードを打ち抜く時に、カード切断面の接着剤のはみ出しを防止することができるカードシートと、カードの打ち抜き装置と、カードの打ち抜き方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも3層の層構成を有し複数のカードが配列されたカードシートにおいて、表裏最外層の間に位置する層である中間層内の応力が、打ち抜き時のパンチによる押圧のため増加して、増加した応力により打ち抜き時に中間層に含まれる材料が切断面からはみ出してしまうことを、応力の増加を打ち抜き中に解放或いは抑制することにより中間層の切断面からの材料のはみ出しを防止しようとするものである。
【0009】
本発明の目的は下記の請求項に記した発明により達成することが出来る。
【0010】
(請求項1)表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートから、1ストロークで少なくとも2のカードを打ち抜く、カードの打ち抜き方法において、
前記カードの打ち抜き時に前記カードシートの中間層に発生する応力を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間から抑制或いは解放しながら打ち抜く工程を含むことを特徴とするカードの打ち抜き方法。
【0011】
(請求項2)表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートにおいて、
前記カードの打ち抜き時に中間層に発生する応力を解放する手段を、隣り合う当該カードの間に有することを特徴とするカードシート。
【0012】
(請求項3)前記中間層の少なくとも1層は接着剤を含む接着層であることを特徴とする請求項2に記載のカードシート。
【0013】
(請求項4)前記中間層の少なくとも1層は表層の材料に比べて小さい弾性係数を有する材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のカードシート。
【0014】
(請求項5)前記小さい弾性係数を有する材料は接着剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のカードシート。
【0015】
(請求項6)前記応力を解放する手段は、隣り合うカードの間に設けられた、前記カードシートの厚さ方向に、一方の最外層表面から少なくとも前記接着層まで達する開口であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のカードシート。
【0016】
(請求項7)前記開口は、隣り合うカード方向の幅が0.05〜1mmで、隣り合うカード間で配置が途切れるように設定された長さを有することを特徴とする請求項2〜6に記載のカードシート。
【0017】
(請求項8)表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートにおいて、
前記中間層が接着剤を含む接着層を有し、隣り合うカードの間に、少なくとも一方の最外層から前記接着層まで貫通する開口を有することを特徴とするカードシート。
【0018】
(請求項9)カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチとを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから、1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
前記複数のカードの隣り合うカードの間に設けた開口と隣り合う孔部の間の領域との、隣り合うカード方向の位置を合わせる位置決め手段を有することを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【0019】
(請求項10)カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチとを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから、1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
1ストロークで複数のカードを打ち抜く前記複数のパンチのうち、少なくとも隣り合うパンチと前記ダイとの距離がそれぞれ異なっていることを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【0020】
(請求項11)カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチと、前記パンチの周辺部に設けられたストリッパー、又は、該ストリッパーと前記孔部の内部を移動可能な受け台とを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
前記複数のカードの隣り合うカードの間に設けた開口と隣り合う孔部の間の領域との、隣り合うカード方向の位置を合わせる位置決め手段と、前記ストリッパーを前記カードシートに向けて所定の付勢力で付勢するストリッパー付勢手段、又は、前記ストリッパーと前記受け台をそれぞれ前記カードシートと前記パンチに向けて所定の付勢力で付勢するストリッパー付勢手段と受け台付勢手段、を有することを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【0021】
(請求項12)前記所定の付勢力は前記カードシートの接着層を構成する接着剤の応力増加を抑制し、変形させない大きさであることを特徴とする請求項11に記載のカードの打ち抜き装置。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、カードシートからカードを打ち抜く時に、中間層に発生する応力を解放することにより、カード切断面からの接着剤のはみ出しを防止可能とするカードの打ち抜き方法を提供することが可能となる。
【0023】
請求項2〜8に記載の発明によれば、中間層に発生する応力を解放する手段、即ち前記カードシートの厚さ方向に一方の最外層表面から少なくとも前記接着層まで達する開口を設けることにより、カード切断面の接着剤のはみ出しを防止可能としたカードシートを提供することが可能となる。
【0024】
請求項9〜11に記載の発明によれば、上記カードシートを使用可能とすることにより、カード切断面の接着剤のはみ出しを防止した打ち抜き装置を提供することが可能となる。
【0025】
請求項12に記載の発明によれば、ストリッパー等の押圧を所定の押圧力に押さえ、ストリッパー部における接着層の応力の上昇を抑制することにより、カード切断面の接着剤のはみ出しを防止した打ち抜き装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の実施の形態における断定的な説明は、ベストモードを示すものであって、本発明の用語の意義や技術的範囲を限定するものではない。また、各図において同一の機能のものは同一の番号を記してある。
【0027】
図1は従来の打ち抜きを説明する図である。
【0028】
先ず、本発明の説明を分かりやすくするため従来のカードの打ち抜きについて説明する。
【0029】
152は打ち抜き装置のパンチ、102はパンチ152が嵌合する孔部を有する打ち抜き装置のダイ、S’は3層からなるカードシートで、上下層はPET(ポリエチレンテレフタレート)等よりなるシートで構成され、中間層に接着剤からなる接着層302を有している。
【0030】
図1(a)に示すように、パンチ152のダイ102の孔部に向けての作動により、パンチ152がカードシートS’に当接してから打ち抜き完了直前までの打ち抜き中に、カードシートS’はパンチ152により押圧力Fを受けて、接着層302には押圧力Fに応じた応力fが発生する。そして、応力fの解放場所がないためパンチ152の下降に応じて応力fが高まる。
【0031】
この応力fはパンチ152が隣り合って配置されている部分Eで、例えば一方のパンチ152aと他方のパンチ152bの間で、両側のパンチから押圧力Fを受けるため応力の逃げ場がなく特に顕著に表れる。
【0032】
そして、図1(b)に示すように、更にパンチ152が下降してカードシートS’が打ち抜かれると、打ち抜かれたカードCのそれまで高まっていた接着層302の応力が打ち抜き面(以下切断面と記す)から解放されるため、解放時に打ち抜かれたカードCの切断面から接着剤がはみ出してしまっていた。
【0033】
そして、このはみ出した接着剤がダイの孔部表面にこすられてヒゲ等の発生原因となっていた。
【0034】
以下に、本発明の実施の形態の一例として、少なくとも表裏の最外層、接着層の3層構成を有し、複数のカードが配列されたカードシート、及び、該カードシートの打ち抜き装置、及びカードシートの打ち抜き方法について、例えばICカードの場合を例に取り図を参照しながら説明する。
【0035】
図2は、ICカードシート、及びICモジュール、及びICカードを示す説明図である。
【0036】
先ず図2を参照して、本発明に係るICカードシートについて説明する。
【0037】
図2(a)において、SはICカードシート(以下ICカードシートをカードシートと記す)で、打ち抜くべきICカード(以下ICカードをカードと記す)を複数配列し、3層以上よりなり、表裏最外層と該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有しており、例えば、表裏の最外層を形成するPET等の樹脂材料よりなる第1のシート303とPET等の樹脂材料よりなる第2のシート304と、第1のシート303と第2のシート304との間に位置して中間層を形成し、第1のシート303と第2のシート304に比べて小さい弾性係数を有する例えばホットメルト等の接着剤を含む接着層302と、から構成されている。
【0038】
そして、接着層302は、複数のICモジュール301と、ICモジュール301を第1のシート303と第2のシート304との間に封止し、且つ第1のシート303と第2のシート304を接着するための接着剤と、を有している。
【0039】
ここで、中間層の材料は例えばある容器に材料を一杯に満たした状態で、容器の一部に圧力を掛けた時、容器の全面にわたり圧力に応じた応力を発生する材料で、いわゆる封止剤として機能するものであれば、接着剤でなくとも良い。以下接着剤にこのような材料を含め接着剤と記す。
【0040】
303aは、打ち抜こうとする複数のICモジュール301に対応した位置、即ちカードの打ち抜き予定位置に応じて第1のシート303に印刷等により形成されたICカード用の図柄を示す。
【0041】
図2(b)において、ICモジュール301は、ICチップ301aとループアンテナ301bとを有している。
【0042】
図2(d)は図2(c)のAA部分断面で、図2(c)、(d)において、開口305は、カードの打ち抜き時にカードシートSの中間層に発生する応力を解放する手段(換言すれば応力の増加を抑制する手段)であり、隣り合うカード(1Cに対し2C、2Cに対し3C、3Cに対し4C)の間の中央に位置し、カードシートSの厚さ方向に一方の最外層表面SHから少なくとも接着層302まで達する点線で示す深さを有している。
【0043】
開口305は、幅が0.05〜1mm好ましくは0.1〜0.5mmで、隣り合うカード間で配置が途切れているように設定された長さを有するスリットとなっている。
【0044】
上記の幅より狭いと、スリット断面同士が接触し押圧の解放作用(接着剤のスリット内への移動)が少なく、或いはなくなりヒゲの原因となり、広すぎると通常時に接着剤がスリットからはみ出し、カードが汚れる原因となってしまう。
【0045】
ここで、隣り合うカード間で配置が途切れるように設定した長さとは、複数のカードに亙る連続したスリットでないことを言い、好ましくはカードの長さの1/2以上でカードより若干長い長さ以下の長さを指している。
【0046】
ここで、開口305は、図2(d)に示す一点鎖線のようにカードシートSを貫通するものでも良い。
【0047】
また、開口305の位置は打ち抜こうとする隣り合うカード間の中央からいずれかに偏った位置でも良い。
【0048】
また、その形状は矩形、正方形、円、楕円、多角形でも良く、更に、連続した開口でなくとも例えば点線状の間欠した開口や、複数の間欠した楕円や矩形の開口であっても良い。
【0049】
また、Cはカードの打ち抜き装置(不図示)により打ち抜かれたICカードを示している。
【0050】
ここで、打ち抜くカードの形状は矩形、正方形、円、楕円、多角形、その他不定形等、であっても良い。
【0051】
図3は、ICカードをパンチ/ダイにより打ち抜いている状態を説明する図である。
【0052】
以下本発明のカードの打ち抜きについてその概念を説明する。
【0053】
図3(a)に示すように、パンチ152のダイ102に向けての作動により、パンチ152がカードシートSに当接してから打ち抜き完了直前までの打ち抜き時に、カードシートSは押圧力Fを受けて、接着層302には押圧力Fに応じた応力fが発生しようとする。
【0054】
しかし、接着層内に高まりつつある応力fにより、接着剤は応力を解放する手段である開口305内に押し出され、高まりつつある応力を解放する。換言すれば応力の増加を抑制する。
【0055】
そして、図3(b)に示すように、更にパンチ152が下降してカードシートSが打ち抜かれた時点では、接着剤が開口305内に押し出され、高まりつつある応力が解放されているので、打ち抜かれたICカードCの切断面から接着剤がはみ出すこともない。
【0056】
このため、ヒゲ等の発生が防止可能となっている。
【0057】
次に、カードを打ち抜くカードの打ち抜き装置の一例として、カードシートからカードを打ち抜くカードの打ち抜き装置を例に取り図面を参照しながら説明する。
【0058】
図4はカードの打ち抜き装置の平面図、図5は図4のA−A断面図である。
【0059】
図4において、カードの打ち抜き装置1は、不図示の送り装置によりカードシートSを開口305の長手方向と平行な方向(図示下向き)に、ICカードCの配列ピッチに応じて間欠的に送り、カードシートSから製品であるカードCを、カードシートSの搬送方向と直角方向に1列(本実施の形態においては5枚)ずつ1ストロークで打ち抜いていくものである。
【0060】
上述したようにカードシートSには打ち抜くべき複数のカードが配列されており、表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有している。
【0061】
そして、隣り合うカード(1Cに対し2C、2Cに対し3C、3Cに対し4C、4Cに対し5C)の間に設けたカードシートSの中間層に発生する応力を解放する手段で、カードシートSの厚さ方向に一方の最外層表面から少なくとも接着層まで達する開口305を有している。
【0062】
図5、4において、1はカードの打ち抜き装置で、下型100はカードと同一形状の孔部を複数設けたダイ102を有している。
【0063】
上型150は複数の孔部内に挿脱自在に嵌合する複数のパンチを有し、不図示のプレスの駆動手段により上下動し、下型100に対して開閉する。
【0064】
下型100は、下側基板101と、下側基板101上にボルト等により固定された、上面が平面形状のダイ102と、ダイ102或いは下側基板101に固定された位置決め手段111等とで構成されている。
【0065】
ダイ102には、カードシートSの搬送方向(図示表裏方向)に対して直角方向に1列に並ぶように、カードの形状をなす垂直方向のダイ孔部103が、例えば5個形成され、上型150の下降により1ストロークで1列に並んだ5枚のカード1C〜5Cを打ち抜くようになっている。
【0066】
そして、位置決め手段111は、複数のカードの隣り合うカードの間に設けた開口305と、隣り合う孔部の間の領域Hとの、隣り合うカード方向(矢印F方向と直角方向)の位置を合わせるカードシートSのサイドガイドで構成され、位置決め手段111は、複数のダイ孔部103の隣り合うダイ孔部(例えば103aに対し103b、103bに対し103c、103cに対し103d、103dに対し103e)の間の領域Hの中央に、カードシートSの中間層に発生する応力を解放する手段である開口305が位置するような位置(隣り合うカード方向)に固定されている。
【0067】
上型150は、5個のパンチ152と、当該5個のパンチをボルト等により一体的に固定した上側基板151等により構成されている。
【0068】
パンチ152の下方部は、ダイ102のダイ孔部103の上部に挿脱自在に嵌合する。
【0069】
153は、上型150の左右の端部に、下方に向いて固定されたガイドポストであり、下側基板101に装着されたスライドベアリング110に摺動自在に嵌合している。
【0070】
図6はパンチの高さを変えた、カードの打ち抜き装置の説明図である。
【0071】
次に、別の実施形態である、開口を有しない通常のカードシートを用いても、打ち抜き装置内部で打ち抜きタイミングをずらすことにより中間層に発生する応力を抑制し、ヒゲ等の発生を防止するカードの打ち抜き装置について説明する。
【0072】
パンチの高さ以外については図5を参照して説明したカードの打ち抜き装置と同様なため、以下にパンチの構成について図6を用いて説明する。
【0073】
パンチ152のカードシートの打ち抜き面(図示下面)とダイ102との高さ(図示上下方向)が隣り合うパンチ間(例えば152dと152e間、152eと152f間、152fと152g間、152gと152h間)で異なっている。
【0074】
そして、隣り合うパンチの高さの差は、最外層の表面から少なくとも接着層までの厚さと同じ寸法を有している。また、カードシートの厚さ以上の高さの差としても良い。
【0075】
図6では、一方から他方に向けて順番に高い構成としたが、奇数のパンチの場合は中央のパンチを一番高くし、周辺に行くに従い順番に低くなるようにしても良い。
【0076】
また、2のパンチを1組とし、複数組のパンチの一方を高く他方を低くするようにしても良い。この場合、複数組のパンチの内隣り合うパンチは高さが違うものを組み合わせる。
【0077】
例えば隣り合ったパンチ152dと152eとが同時にカードシートを押圧することによって両側のパンチから押圧力Fを受けるため応力の逃げ場がなくなることもなくなる。
【0078】
即ち、打ち抜き装置内部で打ち抜きタイミングをずらすことにより中間層に発生する応力を抑制し、ヒゲ発生の防止を図ることが可能となる。
【0079】
図7はストリッパーとカードの受け台を設けた、カードの打ち抜き装置の説明図である。
【0080】
図7において、上側基板151にはパンチ周囲のカードシートSをダイ102に押圧するストリッパー160が取り付けられ、下型100には打ち抜かれたカードを受ける受け台104が取り付けられている。
【0081】
この構成により、カードをパンチ152と受け台104の間に保持した状態で打ち抜き、カードを打ち抜いた穴部103に打ち抜いたICカードを一旦嵌め込み、カードが嵌め込まれた状態でカードシートを搬送し、嵌め込んだカードを別の位置で回収するプッシュバック方式のカードの打ち抜き装置を構成することが可能となりヒゲの発生防止と打ち抜きの生産性を上げることが可能となる。
【0082】
以下詳細に説明すると、104は、ダイ孔部103に摺動自在に嵌合するカードCの受け台であり、連結棒105を介して、ストッパ106に結合されている。
【0083】
ストッパ106は、受け台104をパンチ152に向けて所定の付勢力で付勢する受け台付勢手段である第1バネ107により上方に付勢され、ダイ102に形成された下型段差部108に当接している。ストッパ106が下型段差部108に当接した状態では、受け台104の上面がダイ102の上面と同じ高さになるよう構成されている。
【0084】
連結棒105は、下側基板101に形成された垂直方向のガイド孔109に不図示のベアリングを介して上下方向に移動する。
【0085】
上型150に設けられてカードシートSをダイ120に押圧する複数のストリッパー160は、各パンチ152の下方部を囲み、かつ、各々独立に上下方向に移動出来るように配設されている。
【0086】
図8は図7のストリッパー部の拡大図である。
【0087】
図8において、162はストリッパー160の四隅に固定されたガイドピンで、上側基板151に固定されたスライドベアリング163に、上下方向に移動自在に嵌合している。
【0088】
このため、ストリッパー160は独立して前記シート面に対して垂直方向に移動可能となっている。
【0089】
そして、上側基板151とストリッパー板160Aとの間に装着されて、ストリッパー160をカードシートSに向けて所定の付勢力で付勢するストリッパー付勢手段である第2バネ164により、ダイ102側に付勢させている。
【0090】
ガイドピン162の上端部のフランジ部165が上側基板151に形成された上型段差部166に当接することにより、ストリッパー160は下方への移動が規制されている。
【0091】
フランジ部165が、上型段差部166に当接した状態では、ストリッパー160の下面は、パンチ152の下面より下方になるように構成されている。
【0092】
また、第1バネ107と第2バネ164のカードシートSを押圧する所定の付勢力は前記カードシートSの接着層302を構成する接着剤を変形させない大きさを有している。
【0093】
即ち、ストリッパー160と受け台104とは、第1バネ107と第2バネ164の付勢力を所定の値にすることで、カードシートの接着層を構成する接着剤の応力増加を抑制する作用を有している。
【0094】
ここで、他の実施の形態として、上述した、ストリッパー160のみを設けても良く、ストリッパー160を有するカードの打ち抜き装置は、カードシートSに反りやうねりがあってもストリッパー160でパンチ周辺の反りやうねりを押さえてカードを打ち抜くことができるため、安定した打ち抜きが可能となる。
【0095】
図9はカードの打ち抜き装置のスリット打ち抜き手段でシートに開口をあける実施形態の説明図である。
【0096】
開口を有しない通常のカードシートを用いても、打ち抜き装置内部で打ち抜き時に開口を自動的にあけることにより中間層に発生する応力を解放し、ヒゲ等の発生を防止するカードの打ち抜き装置を提供しようとするものである。
【0097】
構成としては、図5を参照して説明したカードの打ち抜き装置に、中間層に発生する応力を解放する手段であるスリット打ち抜き手段120を付加したものであり、以下、付加したスリット打ち抜き手段120について説明する。
【0098】
上型150はパンチ152と、中間層に発生する応力を解放する手段であるスリット打ち抜き手段120を有しており、スリット打ち抜き手段120は、各パンチの間に設けられ、カードシートSにスリット状の開口をあける刃121と、刃121をシート方向に付勢するバネ等の弾性部材122とを有している。
【0099】
その作用について説明すると、図9(a)に示すように、上型150のダイ102に向けての作動(矢印)により、パンチ152が下降してカードシートSに当接する。
【0100】
この時、上型150に設けられたスリット打ち抜き手段120も下降して同時或いは若干前に刃121の刃先がカードシートSに当接する。
【0101】
そして、上型150の下降によりパンチ152はカードシートSを押圧することにより打ち抜きを開始し、刃121の刃先はカードシートSに食い込み始める。
【0102】
図9(b)に示すように、更に上型150が下降して、パンチ152がカードシートSの接着層302まで食い込む以前に刃120の刃先は接着層302まで食い込み、接着層302の応力の増加を抑制、(解放)する。
【0103】
刃121がダイ102と当接すると、刃121は弾性部材122によりそれ以上は下降しない。又、刃121がダイ102と当接する部分のダイ表面には刃の破損を防止する樹脂部材(不図示)が設けられている。
【0104】
図10はカードの打ち抜き方法の一例を示すフロー図である。
【0105】
次に、カードの打ち抜き方法について説明する。
【0106】
本発明の打ち抜き方法は、カードの打ち抜き時に発生するカードシートの中間層に発生する応力を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間から抑制或いは解放しながら打ち抜く工程を含むことを特徴とするものであり、以下に詳細を図10、5を参照して説明する。
【0107】
下型100及び上型150が開いた状態で、カードシートSが搬送され所定位置に停止する。(ST10)
上型150が上昇端である初期位置から下降を開始し、上型150の下降によりパンチ152がカードシートSに当接する。(ST11)
上型150の下降の継続によりパンチ152はカードシートSを押圧して打ち抜き始める。
【0108】
そして、カードの打ち抜き時に発生するカードシートの中間層に発生する応力を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間から抑制或いは解放しながら打ち抜く。
【0109】
即ち、打ち抜き時にパンチ152の押圧により発生する接着層302の内部の応力が、接着層内の接着剤を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間に位置する開口305の内部に移動させ、これにより応力の解放(応力の増加の抑制)が図られる。(ST12)
上型150の下降継続により、パンチ152はカードシートSを打ち抜き始める。
【0110】
そしてこの時もST12と同様に、接着層内の接着剤を、開口305の内部に移動させ、応力の解放(増加の抑制)が図られる。(ST13)
上型150の更なる下降により、パンチ152はカードシートSを打ち抜き終わる。(ST14)
上型152は打ち抜き完了後上昇し初期位置に戻る。(ST15)
以上説明したように、パンチがシートに当接してから少なくとも接着層まで打ち抜きが進むまでの打ち抜き中に、接着層に発生する応力を開口から解放するので、切断面からの接着剤のはみ出しを防止し、ヒゲの発生を防止することが可能となる。
【0111】
以上説明したように、本発明により、ヒゲの発生のない高品質なカードを、高生産性で、簡単且つ小型な装置で提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】従来の打ち抜きを説明する図である。
【図2】ICカードシート、及びICモジュール、及びICカードを示す説明図である。
【図3】ICカードをパンチ/ダイにより打ち抜いている状態を説明する図である。
【図4】カードの打ち抜き装置の平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】パンチの高さを変えた、カードの打ち抜き装置の説明図である。
【図7】ストリッパーとカードの受け台を設けた、カードの打ち抜き装置の説明図である。
【図8】図7のストリッパー部の拡大図である。
【図9】カードの打ち抜き装置のスリット打ち抜き手段でシートに開口をあける実施形態の説明図である。
【図10】カードの打ち抜き方法の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0113】
1 カードの打ち抜き装置
100 下型
101 下型基板
102 ダイ
103 ダイ孔部
111 位置決め手段
150 上型
151 上型基板
152 パンチ
305 開口
C カード
S カードシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートから、1ストロークで少なくとも2のカードを打ち抜く、カードの打ち抜き方法において、
前記カードの打ち抜き時に前記カードシートの中間層に発生する応力を、打ち抜こうとする隣り合うカードの間から抑制或いは解放しながら打ち抜く工程を含むことを特徴とするカードの打ち抜き方法。
【請求項2】
表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートにおいて、
前記カードの打ち抜き時に中間層に発生する応力を解放する手段を、隣り合う当該カードの間に有することを特徴とするカードシート。
【請求項3】
前記中間層の少なくとも1層は接着剤を含む接着層であることを特徴とする請求項2に記載のカードシート。
【請求項4】
前記中間層の少なくとも1層は表層の材料に比べて小さい弾性係数を有する材料を含むことを特徴とする請求項2に記載のカードシート。
【請求項5】
前記小さい弾性係数を有する材料は接着剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のカードシート。
【請求項6】
前記応力を解放する手段は、隣り合うカードの間に設けられた、前記カードシートの厚さ方向に、一方の最外層表面から少なくとも前記接着層まで達する開口であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のカードシート。
【請求項7】
前記開口は、隣り合うカード方向の幅が0.05〜1mmで、隣り合うカード間で配置が途切れるように設定された長さを有することを特徴とする請求項2〜6に記載のカードシート。
【請求項8】
表裏最外層と、該最外層の間に少なくとも1層の中間層とを有し、打ち抜くべき複数のカードが配列されたカードシートにおいて、
前記中間層が接着剤を含む接着層を有し、隣り合うカードの間に、少なくとも一方の最外層から前記接着層まで貫通する開口を有することを特徴とするカードシート。
【請求項9】
カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチとを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから、1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
前記複数のカードの隣り合うカードの間に設けた開口と隣り合う孔部の間の領域との、隣り合うカード方向の位置を合わせる位置決め手段を有することを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【請求項10】
カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチとを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから、1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
1ストロークで複数のカードを打ち抜く前記複数のパンチのうち、少なくとも隣り合うパンチと前記ダイとの距離がそれぞれ異なっていることを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【請求項11】
カード形状の複数の孔部を設けたダイと、前記複数の孔部の内部に挿脱自在に嵌合する複数のパンチと、前記パンチの周辺部に設けられたストリッパー、又は、該ストリッパーと前記孔部の内部を移動可能な受け台とを有し、打ち抜くべき複数のカードを配列した表裏最外層と該最外層との間に少なくとも1層以上の中間層とを有するカードシートから1ストロークで複数のカードを打ち抜く打ち抜き装置において、
前記複数のカードの隣り合うカードの間に設けた開口と隣り合う孔部の間の領域との、隣り合うカード方向の位置を合わせる位置決め手段と、前記ストリッパーを前記カードシートに向けて所定の付勢力で付勢するストリッパー付勢手段、又は、前記ストリッパーと前記受け台をそれぞれ前記カードシートと前記パンチに向けて所定の付勢力で付勢するストリッパー付勢手段と受け台付勢手段、を有することを特徴とするカードの打ち抜き装置。
【請求項12】
前記所定の付勢力は前記カードシートの接着層を構成する接着剤の応力増加を抑制し、変形させない大きさであることを特徴とする請求項11に記載のカードの打ち抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−175548(P2006−175548A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370919(P2004−370919)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】