説明

カード用コネクタ装置

【課題】ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段における固定接点と可動接点との位置関係を調整しやすいカード用コネクタ装置の提供。
【解決手段】検知手段20が、ハウジングとは別個の部材からなりハウジングに組付けられた基台21と、この基台21に設けられた第1,第2固定接点22,23と、第1,第2固定接点22,23のそれぞれと一体の第1,第2固定接点用半田付部24,25と、カードの挿入および排出方向へ回動できるよう基台21に設けられた可動部26と、この可動部26と基台21の間に介在し排出方向に可動部26を常時付勢する弾性体、および第1固定接点22に常時接触した状態で、第2固定接点23に対して可動部26の回動に応じて接触および離反する可動接点を兼ねたねじりコイルばね30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末やAV機器等にメモリカードを接続するためのカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カード用コネクタ装置としては、特許文献1で開示された従来技術がある。この従来技術は、カードの挿入口およびこの挿入口と連続したカードの収容空間を形成したハウジングと、カードの複数の端子に対応して設けられた複数のコンタクト端子と、ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段とを備えている。
【0003】
検知手段は、ハウジングにインサート成形により固定された第1,第2固定接点と、これら第1,第2固定接点のそれぞれと一体に形成された第1,第2固定接点用半田付部とを備えている。また、収容空間内に位置した状態と収容空間外に位置した状態とに変化することが可能となるようにハウジングに設けられた可動部を備えている。また、可動部とハウジングの間に介在し、収容空間外から収容空間内に向かう方向に可動部を常時付勢する弾性体と、第1,第2固定接点の両方に接触した状態と第2固定接点から離反した状態とに変化することが可能な可動接点とを兼ねた導電性を有するねじりコイルばねとを備えている。
【0004】
このように構成された従来技術では、ハウジングへのカードの収容に伴って可動部が収容空間内から収容空間外へ動作し、これによりねじりコイルばねが変形して第2固定接点に接触し、第1,第2固定接点がねじりコイルばねを介して導通する。つまり、ハウジングへのカードの収容に伴って検知信号が生成される。したがって、従来技術が設けられた携帯電話やAV機器等を、検知信号が入力されている状態のときにカードに対するデータの読取りや書込みを行うように設定することによって、読込みエラーや書込みエラー、データの破壊を防止することができる。
【特許文献1】特開2005−134978公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の従来技術に備えられている検知手段の組立は、インサート成形により第1,第2固定接点が設けられたハウジングに対し、可動部およびねじりコイルばねを組み付けることによって行われる。第1,第2固定接点とねじりコイルばねの位置関係には、ハウジングに対する可動部のガタ等に起因して調整の必要なズレが生じる場合がある。ハウジングに可動部が組み付けられた状態では、そのズレの調整が行いにくかった。
【0006】
本発明は、前述の実情を考慮してなされたもので、その目的は、ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段における固定接点と可動接点との位置関係を調整しやすいカード用コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
【0008】
〔1〕本発明は、カードの挿入口およびこの挿入口と連続したカードの収容空間を形成したハウジングと、カードの複数の端子に対応して設けられた複数のコンタクト端子と、前記ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段とを備えたカード用コネクタ装置であって、前記検知手段が、前記ハウジングとは別個の部材からなり前記ハウジングに組み付けられた基台と、この基台に設けられた第1,第2固定接点と、前記基台に設けられ前記第1,第2固定接点のそれぞれと導通した第1,第2固定接点用半田付部と、前記収容空間内に位置した状態と前記収容空間外に位置した状態とに変化することが可能な、前記基台に設けられた可動部と、この可動部と前記基台の間に介在し、前記収容空間外から前記収容空間内に向かう方向に前記可動部を常時付勢する弾性体と、前記第1,第2固定接点の両方に接触した状態と前記第1,第2固定接点の少なくとも一方から離反した状態とに変化することが可能な、前記可動部に設けられた可動接点とを備えたことを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明では、ハウジングとは別個の部材である基台に第1,第2固定接点、可動接点が設けられた可動部、および、弾性体が設けられている。したがって、カード用コネクタ装置の作製する際、検知手段を組立てる工程と、検知手段をハウジングに組付ける工程とを分けて行うことができる。これにより、検知手段における固定接点と可動接点との位置関係を調整しやすいカード用コネクタ装置を提供する、という前述の目的を達成できる。
【0010】
〔2〕本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記コンタクト端子が、カードの挿入および排出方向に延びた片持ちばね状に形成され、前記基台が、前記カードの厚さ方向に対応する方向において前記コンタクト端子と重なったものであってもよい。
【0011】
このように構成された本発明では、コンタクト端子が片持ちばね状に形成されているので、コンタクト端子をそれ自身の弾性力によりカードの端子に押し付けることができ、カードの端子に対するコンタクト端子の接触状態を安定させることができる。また、検知手段が、カードの厚さ方向に対応する方向においてコンタクト端子と重なっているので、コンタクト端子が片持ちばね状に形成されていても、検知手段とコンタクト端子とが配置される空間を小さくまとめることができ、ハウジングを小型化しやすい。
【0012】
〔3〕本発明は、「〔1〕」記載の発明において、前記コンタクト端子が、カードの挿入および排出方向に延びた片持ちばね状に形成され、その自由端にカードの端子に接触する接触部を有し、前記コンタクト端子の固定端が、前記ハウジングに固定されこのハウジングの外部に露出したコンタクト端子用半田付部に導通し、前記第1固定接点用半田付部、第2固定接点用半田付部および複数の前記コンタクト端子用半田付部が並列したものであってもよい。
【0013】
このように構成された本発明では、第1,第2固定接点用半田付部に対する半田付けを、コンタクト端子用半田付部に対する半田付けとの一連の工程とすることができる。これにより、カード用コネクタ装置の作製作業の効率を向上させることができる。
【0014】
〔4〕本発明は、「〔3〕」記載の発明において、前記第1固定接点用半田付部および前記第2固定接点用半田付部の少なくとも一方が、隣り合う前記コンタクト端子用半田付部の間に配置されたものであってもよい。
【0015】
このように構成された本発明では、コンタクト端子用半田付部が並列した範囲から第1,第2固定接点用半田付部が離隔している場合と比較して、第1,第2固定接点用半田付部に接続する配線の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段における固定接点と可動接点との位置関係を調整しやすいカード用コネクタ装置を提供できる。これにより、カード用コネクタ装置の信頼性の向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態を示す図、図2は図1に示された検知手段の拡大斜視図、図3は図1に示された検知手段の拡大平面図である。図4は図1に示されたトレーに第1カードが装着された状態を示す図、図5は図4に示されたトレーがハウジング内においてスライダに当接した状態を示す図、図6はハウジングへの第1カードの収容が完了した状態を示す図である。図7は図1に示されたトレーに第2カードが装着された状態を示す図である。なお、図1,図4〜図7は、ハウジング内部の様子が透けて見えている図であるが、これはハウジング内部の様子を図示するためであり、実際にはハウジングが透けていてもいなくてもよい。また、図5,6においては第1カードについても透けさせて描いてある。
【0018】
本実施形態は、携帯電話やAV機器等に設けられるカード用コネクタ装置である。本実施形態は、第1カード31(図4参照)とこの第1カード31よりも幅寸法の長い第2カード32(図7参照)の挿入口1aおよびこの挿入口1aと連続した第1,第2カード31,32の収容空間を形成したハウジング1と、第1,第2カード31,32のそれぞれの複数の端子(図示していない)に対応して設けられた複数の第1,第2コンタクト端子2,3とを備えている。
【0019】
第1コンタクト端子2は、第1,第2カード31,32挿入および排出方向(図1の上下方向)に延びた細長い形状に形成されている。この第1コンタクト端子2の挿入口1a側に位置する一端には、第1カード31の端子に接触する接触部2aが形成されている。第1コンタクト端子2のハウジング1の奥側に位置する他端は、インサート成形によりハウジング1に固定されている。つまり、第1コンタクト端子2は、その一端が自由端でその他端が固定端の片持ちばね状になっている。
【0020】
第1コンタクト端子2の固定端は、ハウジング1に固定されこのハウジング1の外部に露出した第1コンタクト端子用半田付部4に導通している。この第1コンタクト端子用半田付部2は、第1コンタクト端子2の固定端と一体に形成されている。複数の第1コンタクト端子用半田付部4は、第1カード31の幅方向に対応する方向、すなわちハウジング1の幅方向に並列している。
【0021】
第2コンタクト端子3も、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向に延びた細長い形状に形成されている。この第2コンタクト端子3の挿入口1a側に位置する一端は、インサート成形によりハウジング1に固定されている。第2コンタクト端子3のハウジング1の奥側に位置する他端には、第2カード32の端子に接触する接触部3aが形成されている。つまり、第2コンタクト端子3は、その一端が固定端でその他端が自由端の片持ちばね状、すなわち第1コンタクト端子2とは反対向きの片持ちばね状になっている。
【0022】
第2コンタクト端子3の固定端は、ハウジング1に固定され収容空間内で露出した第2コンタクト端子用半田付部5に導通している。この第2コンタクト端子用半田付部5は、第2コンタクト端子3の固定端と一体に形成されている。
【0023】
本実施形態は、ハウジング1の挿入口1aから収容空間への挿入が可能なトレー6を備えている。このトレー6には、第1カード31を模った凹部であって第1カード31が嵌め込まれることで装着される第1カード装着部7と、第2カード32を模った凹部であって第2カード32が嵌め込まれることで装着される第2カード装着部8とが形成されている。また、トレー6の底部には、孔9が形成されている。この孔9は、第1カード装着部7の底部から第1カード31の端子を露出させるための孔と、第2カード装着部8の底部から第2カード32の端子を露出させるための孔とを連続させたものである。
【0024】
本実施形態は、トレー6がハウジング1に収容された状態を保持する保持機構11を備えている。この保持機構11はハウジング1の幅方向における一方の側部(図1では右側)に設けられていて、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向にスライド可能なスライダ12と、ハウジング1とスライダ12との間に介在し、スライダ12を第1,第2カード31,32の排出方向に常時付勢するコイルスプリング(図示しない)と、ハウジング1内における所定位置(図7,図9に示す位置)にスライダ12をロックさせるロック機構(図示しない)およびロック機構によるスライダ12のロックを解除する解除機構とを備えている。
【0025】
スライダ12は、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向に延び、トレー6の挿入および排出を自身と対向したハウジング1の側壁1bとの間でガイドするガイド部13と、このガイド部13からトレー6の軌道上に突出し、トレー6に係合する係合部14とを有する。スライダ12には、片持ちばね15が設けられている。この片持ちばね15は、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向に延びていて、挿入口1a側に位置する一端が自由端でハウジング1の奥側に位置する他端が係合部14に固定されて固定端となっている。ガイド部13は、第1,第2カード31,32の収容空間から離れる方向への片持ちばね15の撓みを許容する形状に形成されている。
【0026】
片持ちばね15の自由端側には、第1,第2カード31,32の収容空間内に突出する爪16が形成されている。トレー6の一方の側部には、爪16に対応した凹部17が形成されている。爪16は、トレー6の端部から受ける挿入方向の押圧力を、第1,第2カード31,32の収容空間から離れる方向に片持ちばね15を撓ませる力に変換する傾斜部と、凹部17の内壁面から受ける排出方向の押圧力を、第1,第2カード31,32の収容空間から離れる方向に片持ちばね15を撓ませる力に変換する傾斜部とを有する山形に形成されている。
【0027】
解除機構は、第1,第2カード31,32トレー6の挿入方向に押圧操作される押圧操作部材18を有し、この押圧操作部材18の押圧操作時に、スライダ12のロックが解除されるようにロック機構を操作するようになっている。
【0028】
トレー6には、ハウジング1にトレー6を挿入しようとする使用者が手指で押圧したりハウジング1からトレー6を引抜くときに摘んだりするための操作部10が設けられている。この操作部10は、ハウジング1の幅方向における一端側(図1では右側)に、他端側よりもトレー6の側方に突出した解除操作用突出部19を有している。この解除操作用突出部19は、ハウジング1にトレー6が挿入された状態で、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向において前出の解除機構の押圧操作部材18と重なるように位置するようになっている(図5,図6参照)。
【0029】
本実施形態は、ハウジング1への第1,第2カード31,32の収容を検知するための検知手段20を備えている。
【0030】
この検知手段20は、図2,3に示すように、ハウジング1とは別個の部材からなりハウジング1に組み付けられた基台21と、この基台21に設けられた第1,第2固定接点22,23と、これら第1,第2固定接点22,23のそれぞれと導通し、基台21に設けられた第1,第2固定接点用半田付部24,25とを備えている。
【0031】
基台21は、保持機構11が設けられた一方の側部に平行する他方の側部側であってハウジング1の奥側の端部に、第1,第2カード31,32の厚さ方向に対応する方向において第1コンタクト端子2と重なるように嵌め込まれている。
【0032】
第1固定接点22と第1固定接点用半田付部24は一体に形成されることによって導通している。第2固定接点23と第2固定接点用半田付部25も一体に形成されることによって導通している。第1固定接点22および第1固定接点用半田付部24は、インサート成形により基台21に固定されている。第2固定接点23および第2固定接点用半田付部25も、インサート成形により基台21に固定されている。
【0033】
第1固定接点22は、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向に直交する平面と平行に広がった接触面22aと、この接触面22aに形成された突起22bとから構成されている。第2固定接点23は、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向に直交する平面と平行に広がった接触面23aを形成している。
【0034】
第1固定接点用半田付部24および第2固定接点用半田付部25は、複数の第1コンタクト端子用半田付部4と並列している。また、第1固定接点用半田付部24および第2固定接点用半田付部25の少なくとも一方、例えば、第2固定接点用半田付部25は、隣り合う第1コンタクト端子用半田付部4の間に配置されている。
【0035】
検知手段20はさらに、第1,第2カード31,32の収容空間内に位置した状態と収容空間外に位置した状態への変化が可能となるよう基台21に、第1,第2カード31,32の挿入および排出方向(矢印A,B方向)へ回動可能に設けられた可動部26を備えている。図2,3において、27は基台21と一体に形成された回動軸、28は可動部26に形成され回動軸27が挿入された軸孔、29は基台21と一体に形成された、収容空間外から収容空間内へ向かう方向(図3の矢印A方向)への可動部26の回動を規制する規制部である。
【0036】
検知手段20はさらに、可動部26と基台21との間に介在し、ハウジング1により形成された収容空間外から収容空間内に向かう方向(矢印B方向)に可動部26を常時付勢する導電性を有するねじりコイルばね30を備えている。このねじりコイルばね30は、回動軸27に挿入されている。ねじりコイルばね30の一端30aは、第1固定接点22の接触面22aに常時押し付けられているとともに、ねじりコイルばね30が回動軸27から抜ける方向の移動を突起22bにより規制されている。
【0037】
ねじりコイルばね30の他端30bは、第1,第2カード31,32の収容空間内から収容空間外への可動部26の回動に伴って第2固定接点23の接触面23aに接触し、収容空間外から収容空間内への可動部26の回動に伴って第2固定接点23の接触面23aから離反するように可動部26から突出している。
【0038】
つまり、ねじりコイルばね30は、収容空間外から収容空間内に向かう方向(矢印A方向)に可動部26を常時付勢する弾性体と、第1,第2固定接点22,23の両方に接触した状態と第1,第2固定接点22,23のうちの第2固定接点23から離反した状態への変化が可能な可動接点とを兼ねている。
【0039】
このように構成された本実施形態は、次のように動作する。
【0040】
トレー6の第1カード装着部7に第1カード31が嵌め込まれ、この状態のトレー6がハウジング1の挿入口1aに挿入される。
【0041】
挿入口1aに挿入されたトレー6は、収容空間内に突出した状態の片持ちばね15の爪16に接触する。爪16は、トレー6の端部から受ける挿入方向の押圧力を、収容空間から離れる方向に片持ちばね15を撓ませる力に変換するので、トレー6は、片持ちばね15を収容空間から離れる方向に撓ませながら、ハウジング1内を挿入方向へ移動していく。そして、トレー6がスライダ12の係合部14に当接したとき、トレー6の凹部17にねじりコイルばね30の爪16が嵌まる(図5参照)。
【0042】
トレー6は係合部14を押圧することでコイルスプリング(図示しない)の弾性力に抗してスライダ12とともに、さらに挿入方向へ移動する。そして、トレー6は検知手段20の可動部26に当接し、さらに挿入方向へ移動し、ねじりコイルばね30の弾性力に抗して可動部26を挿入方向(矢印A方向)へ回動させる。これにより、ねじりコイルばね30の他端30bが第2固定接点23に接触し、この結果、第1固定接点22と第2固定接点23がねじりコイルばね30を介して導通する。
【0043】
トレー6とともに挿入方向へ所定位置まで移動したスライダ12は、ロック機構によりロックする。トレー6はスライダ12との間で、挿入方向および排出方向の両方向への移動を、自身の凹部17と片持ちばね15の爪16とによって抑制されている。したがって、スライダ12がロックしたとき、トレー6は排出方向への移動を抑制された状態、すなわち、収納空間内に第1カード31が保持された状態となる。このようにしてハウジング1への第1カード31の収容が完了する。この状態では、第1カード31の複数の端子がトレー6の孔9から第1コンタクト端子2に対して露出している。複数の第1コンタクト端子2の接触部2aのそれぞれは、孔9を通じて第1カード31の複数の端子のそれぞれに押し付けられている。
【0044】
本実施形態が設けられた携帯電話やAV機器等は、第1,第2固定接点22,23が導通したことに伴う検知信号が入力されている状態のときに第1カード31に対するデータの読取りや書込みを行うように設定しておくことによって、読込みエラーや書込みエラー、データの破壊を防止できるようになる。
【0045】
ハウジング1への第1カード31の収容が完了した状態では、スライダ12とハウジング1の奥側の端部との間に隙間が形成されている。この状態において、操作部10を押圧してトレー6を前記隙間分だけハウジング1の奥に押し込むと、操作部10の解除操作用突出部19によって解除機構の押圧操作部材18が押圧操作される。これに伴い、解除機構がロック機構によるスライダ12のロックを解除する。そして、スライダ12はコイルスプリング(図示しない)の弾性力によりトレー6とともに初期位置(図5に示す位置)に押し戻される。これにより、検知手段20では、可動部26がトレー6による押圧から解放され、ねじりコイルばね30の弾性力によって規制部29に当接する初期位置に復帰し、同時に、ねじりコイルばね30の他端30bが第2固定接点23の接触面23aから離反する。
【0046】
また、操作部10を摘んでトレー6の排出方向に引っ張ると、片持ちばね15の爪16が、凹部17の内壁面から受ける排出方向の押圧力を、収容空間から離れる方向に片持ちばね15を撓ませる力に変換するので、トレー6は片持ちばね15を収容空間から離れる方向に撓ませながら排出方向へ移動し、これに伴って、爪16は凹部17から外れる。これにより、凹部17と爪16による排出方向の移動の抑制からトレー6が解放される。
【0047】
ハウジング1に対する第2カード32の収容および取出し際の動作も、前述した第1カード31の場合と同様なので、その説明を省略する。
【0048】
本実施形態によれば次の効果を得られる。
【0049】
本実施形態では、ハウジング1とは別個の部材である基台21に第1,第2固定接点22,23、可動部26、および、ねじりコイルばね30(弾性体および可動接点)が設けられているので、本実施形態を作製する際、検知手段を組立てる工程と、検知手段をハウジングに組付ける工程とを分けて行うことができる。これにより、検知手段20における第1,第2固定接点22,23と可動接点との位置関係を調整しやすい。したがって、カード用コネクタ装置の信頼性の向上に貢献できる。
【0050】
本実施形態では、第1コンタクト端子2が片持ちばね状に形成されているので、第1コンタクト端子2をそれ自身の弾性力により第1カード31の端子に押し付けることができ、第1カード31の端子に対する第1コンタクト端子2の接触状態を安定させることができる。また、検知手段20が、第1カード31の厚さ方向に対応する方向において第1コンタクト端子2と重なっているので、第1コンタクト端子2が片持ちばね状に形成されていても、検知手段20と第1コンタクト端子2とが配置される空間を小さくまとめることができ、ハウジング1を小型化しやすい。
【0051】
本実施形態では、第1,第2固定接点用半田付部24,25に対する半田付けを、第1コンタクト端子用半田付部4に対する半田付けとの一連の工程とすることができる。これにより、カード用コネクタ装置の作製作業の効率を向上させることができる。
【0052】
本実施形態では、第2固定接点用半田付部25が、隣り合う第1コンタクト端子用半田付部4の間に配置されているので、第1コンタクト端子用半田付部4が並列した範囲から第2固定接点用半田付部25が離隔している場合と比較して、第2固定接点用半田付部25に接続される配線の自由度を向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、導電性を有するねじりコイルばね30が、収容空間外から収容空間内に向かう方向に可動部26を常時付勢する弾性体と、第1,第2固定接点22,23の両方に接触した状態と第1,第2固定接点22,23のうちの第2固定接点23から離反した状態への変化が可能な可動接点とを兼ねている、すなわち、弾性体と可動接点が一体に形成されているが、本発明における弾性体および可動接点の構成はそれに限定されるものではなく、別体であってもよい。
【0054】
また、可動接点が弾性体と別体である場合、その可動接点は、第1,第2固定接点22,23の両方に接触した状態と第1,第2固定接点22,23のうちの第2固定接点23から離反した状態への変化が可能に設けられていてもよいし、第1,第2固定接点22,23の両方に接触した状態と第1固定接点22から離反した状態への変化が可能に設けられていてもよいし、第1,第2固定接点22,23の両方に接触した状態と第1,第2固定接点22,23の両方から離反した状態への変化が可能に設けられていてもよい。
【0055】
本実施形態は、第1,第2固定接点用半田付部24,25のうちの第2固定接点用半田付部25のみが、隣接する第1コンタクト端子用半田付部4の間に配置されている例であったが、本発明における第1,第2固定接点用半田付部の配置はそれに限定されるものではない。つまり、第1固定接点用半田付部のみが、隣接する第1コンタクト端子用半田付部の間に配置されていてもよし、第1,第2固定接点用半田付部の両方がまとまって、または、個別に、隣接する第1コンタクト端子用半田付部の間に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1に示された検知手段の拡大斜視図である。
【図3】図1に示された検知手段の拡大平面図である。
【図4】図1に示されたレーに第1カードが装着された状態を示す図である。
【図5】図4に示されたトレーがハウジング内においてスライダに当接した状態を示す図である。
【図6】ハウジングへの第1カードの収容が完了した状態を示す図である。
【図7】図1に示されたトレーに第2カードが装着された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ハウジング
1a 挿入口
1b 側壁
2 第1コンタクト端子
2a 接触部
3 第2コンタクト端子
3a 接触部
4 第1コンタクト端子用半田付部
5 第2コンタクト端子用半田付部
6 トレー
7 第1カード装着部
8 第2カード装着部
9 孔
10 操作部
11 保持機構
12 スライダ
13 ガイド部
14 係合部
15 片持ちばね
16 爪
17 凹部
18 押圧操作部材
19 解除操作用突出部
20 検知手段
21 基台
22 第1固定接点
22a 接触面
22b 突起
23 第2固定接点
23a 接触面
24 第1固定接点用半田付部
25 第2固定接点用半田付部
26 可動部
27 回動軸
28 軸孔
29 規制部
30 ねじりコイルばね
30a 一端
30b 他端
31 第1カード
32 第2カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの挿入口およびこの挿入口と連続したカードの収容空間を形成したハウジングと、カードの複数の端子に対応して設けられた複数のコンタクト端子と、前記ハウジングへのカードの収容を検知するための検知手段とを備えたカード用コネクタ装置であって、
前記検知手段が、
前記ハウジングとは別個の部材からなり前記ハウジングに組み付けられた基台と、
この基台に設けられた第1,第2固定接点と、
前記基台に設けられ前記第1,第2固定接点のそれぞれと導通した第1,第2固定接点用半田付部と、
前記収容空間内に位置した状態と前記収容空間外に位置した状態とに変化することが可能な、前記基台に設けられた可動部と、
この可動部と前記基台の間に介在し、前記収容空間外から前記収容空間内に向かう方向に前記可動部を常時付勢する弾性体と、
前記第1,第2固定接点の両方に接触した状態と前記第1,第2固定接点の少なくとも一方から離反した状態とに変化することが可能な、前記可動部に設けられた可動接点とを備えたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、
前記コンタクト端子が、カードの挿入および排出方向に延びた片持ちばね状に形成され、前記基台が、前記カードの厚さ方向に対応する方向において前記コンタクト端子と重なったことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1記載の発明において、
前記コンタクト端子が、カードの挿入および排出方向に延びた片持ちばね状に形成され、その自由端にカードの端子に接触する接触部を有し、
前記コンタクト端子の固定端が、前記ハウジングに固定されこのハウジングの外部に露出したコンタクト端子用半田付部に導通し、
前記第1固定接点用半田付部、第2固定接点用半田付部および複数の前記コンタクト端子用半田付部が並列したことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項4】
請求項3記載の発明において、
前記第1固定接点用半田付部および前記第2固定接点用半田付部の少なくとも一方が、隣り合う前記コンタクト端子用半田付部の間に配置されたことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−140743(P2008−140743A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328426(P2006−328426)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】