説明

カード用コネクタ

【課題】接地部をハウジングから突出させないようカバー部材に形成することができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】接地部22は、カバー部材20の天板部21の縁部からほぼ直角に曲折してハウジング本体10に沿って延びている。この接地部22は、ハウジング本体10側に向かう方向への折り返し加工により形成された折り目部23と折返し部24とを有し、折り目部23の位置で回路基板等に接地されることになる。ハウジング本体10には、折返し部24を収容する収容部12が形成されている。また、ハウジング本体10には、折返し部24の天板部21側の端部と対向して位置する係止部13が形成されている。折返し部24の天板部21側の端部と係止部13とが係合することにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングが樹脂製のハウジング本体と、金属板からの成形品でありハウジング本体に結合したカバー部材とからなり、カバー部材には回路基板等への実装状態において接地される接地部が形成されたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のカード用コネクタとしては特許文献1に開示されたものがある。この従来のカード用コネクタにおいて、ハウジングは、樹脂製のハウジング本体と、金属板からの成形品であってハウジング本体に結合したカバー部材とからなる。ハウジング本体は底部を有し、カバー部材は天板部を有し、これら底部と天板部との間に、カードの挿入空間が形成されている。
【0003】
カバー部材は、天板部から屈曲しハウジング本体の側部に沿って広がった側板部を有する。この側板部の天板部側と反対側の縁部からは、カバー部材の外側方に向かって接地部が延びている。つまり、接地部はハウジングから突出している。
【特許文献1】特開2005−71667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カード用コネクタが搭載される機器の小型化に伴い、カード用コネクタに対しても小型化が要望されている。特許文献1に開示のカード用コネクタにおいて、接地部はハウジングから突出しているため、その要望に十分には応えられなかった。
【0005】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、接地部をハウジングから突出させないようカバー部材に形成することができるカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカード用コネクタは前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明は、カードが挿入されるハウジングを有し、このハウジングは、樹脂製のハウジング本体と、金属板からの成形品であって前記ハウジング本体に結合したカバー部材とからなり、前記ハウジング本体は底部を有し、前記カバー部材は天板部を有し、これら底部と天板部との間に前記カードの挿入空間が形成され、前記カバー部材には回路基板等への実装状態において接地される接地部が形成されたカード用コネクタであって、前記接地部は、前記天板部の縁部から曲折して前記ハウジング本体に沿って延びているとともに、前記ハウジング本体側に向かう方向への折り返し加工により形成された折り目部と折返し部とを有し、前記折り目部は回路基板等への実装状態において接地される部分となり、前記ハウジング本体には、前記折返し部を収容する収容部と、前記折返し部の前記天板部側の端部と対向して位置する係止部とが形成され、前記折返し部の前記天板部側の端部と前記係止部とが係合することにより、前記底部と前記天板部とが離れる方向への前記ハウジング本体と前記カバー部材との相対移動が阻止されることを特徴とする。
【0008】
この「〔1〕」に記載の本発明において、接地部は天板部の縁部から曲折してハウジング本体に沿って延びていて、折り目部の位置で回路基板等に接地される。接地部を回路基板等に単に接触させることだけを考えた場合、接地部の天板部と反対側の端部は折り目部ではなく金属板の切断面であってもよいのだが、良導電性が要求されるカバー部材の材料としては良導電性材料で鍍金された金属板が用いられるのが一般的であり、接地部を折り目部の位置で接地させることによって回路基板等に対する接地部の接点を良導電性の鍍金面とすることができる。つまり、良導電性の鍍金面を利用して接地部と回路基板等との良好な導通状態を確保することができる。
【0009】
接地部には折り目部とともに折返し部が形成されている。この折返し部はハウジング本体側に形成されているとともにハウジング本体の収容部に収容されている。これにより、接地部をハウジングから突出させないようカバー部材に形成することができる。
【0010】
また、「〔1〕」に記載の本発明は、折返し部の天板部側の端部と係止部とが係合することにより、底部と天板部とが離れる方向へのハウジング本体とカバー部材との相対移動が阻止されるので、ハウジング本体とカバー部材との結合強度の確保に貢献できる。
【0011】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」に記載の発明において、前記係止部は、前記接地部側から前記ハウジング本体側に向かう方向において前記折返し部の前記天板部側の端部から離れる方向に傾斜した傾面からなることを特徴とする。
【0012】
この「〔2〕」に記載の本発明によれば、折返し部の天板部側の端部が係止部に係合しやすくするこができるので、底部と天板部とが離れる方向へのハウジング本体とカバー部材との相対移動の阻止の確実性を向上させることができる。
【0013】
〔3〕 本発明は、「〔1〕」または「〔2〕」に記載の発明において、前記カバー部材は、前記天板部の縁部から曲折し前記ハウジング本体に沿って延びた係止板部を有し、この係止板部には前記ハウジング本体を部分的に露出させる係止孔が形成され、前記ハウジング本体は前記係止孔に挿入された係止爪を有し、前記係止板部と前記係止爪とが前記係止孔の縁で係合することにより、前記底部と前記天板部とが離れる方向への前記ハウジング本体と前記カバー部材との相対移動が阻止されることを特徴とする。
【0014】
この「〔3〕」に記載の本発明は、係止板部と係止爪とが係止孔の縁で係合することにより、底部と天板部とが離れる方向へのハウジング本体とカバー部材との相対移動が阻止される。これによっても、ハウジング本体とカバー部材との結合強度の確保に貢献できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前述したように、接地部をハウジングから突出させないようカバー部材に形成することができる。これにより、カード用コネクタの小型化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るカード用コネクタについて図1〜図6を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの3面図であって、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は右側面図である。図2は図1に示したカード用コネクタの右後斜め下方からの斜視図である。図3は図2に示したカード用コネクタにカードが挿入された状態の斜視図である。図4は図1に示したカード用コネクタに備えられたカバー部材の右後斜め下方からの斜視図である。図5は図1に示したカード用コネクタに備えられたハウジング本体の右後斜め下方からの斜視図である。図6は図1に示したカード用コネクタに備えられた接地部、収容部および係止部の拡大断面図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係るカード用コネクタ1は、カード40(図3参照)が挿入されるハウジング2を有する。このハウジング2は、樹脂製のハウジング本体10と、金属板からの成形品であってハウジング本体10に結合したカバー部材20とからなる。ハウジング本体10は底部11を有し、カバー部材20は天板部21を有し、これら底部11と天板部21との間にカード40の挿入空間2aが形成されている。
【0018】
ハウジング本体10の底部11には、カード40の挿入方向(Y方向)に延びた端子28がハウジング2の幅方向(X方向)に並んでなる端子列27が設けられている。端子28は、カード40の挿入方向の後側の端部をインサート成形によりハウジング本体10に固着されて、ハウジング2の厚さ方向(Z方向)に可撓な片持ち梁状になっている。カード40の挿入方向の前側の端子28の端部(自由端)は、挿入空間2a内に突出している。
【0019】
図3に示すように、カード40の一面には、ハウジング本体10の底部11の端子列27に対応する端子列41が設けられている。カード40がハウジング2に挿入された状態において、底部11の端子列27の各端子28と、カード40の端子列41の各端子40とが接触するようになっている。端子28と端子40とは接触した状態において、端子28はその可撓性によって端子40に押し付けられている。
【0020】
図2〜図4に示すように、カバー部材20には、回路基板等(図示していない)への実装状態において接地される接地部22が形成されている。接地部22は、天板部21の右側の縁部からほぼ直角に曲折して、ハウジング本体10の右側部に沿って延びている。
【0021】
図6に示すように、接地部22は、ハウジング本体10側への折り返し加工により形成された折り目部23と折返し部24とを有する。折り目部23はハウジング本体10の底部11よりも下方に突出している。接地部22はその折り目部23の位置で、回路基板等に接地されることになる。
【0022】
図5,6に示すように、ハウジング本体10の右側部には、接地部22の折返し部24を収容する凹状の収容部12と、カバー部材20の天板部21側の折返し部24の端部と対向して位置する係止部13とが形成されている。係止部13は、ハウジング2の前後方向(Y方向)およびハウジング2の幅方向(X方向)に広がる平坦面(X―Y平面)からなる。折返し部24の天板部21側の端部と係止部13とが係合することにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動が阻止される。接地部22、収容部12および係止部13はハウジング2の左側部にも設けられている。
【0023】
カバー部材20は、天板部21の右側の縁部からほぼ直角に曲折しハウジング本体10の右側部に沿って延びた係止板部25を有する。この係止板部25にはハウジング本体10を部分的に露出させる係止孔26が形成されている。ハウジング本体10はその係止孔26に挿入された係止爪14を有する。係止板部25と係止爪14とが係止孔26の縁で係合することにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動が阻止される。係止板部25および係止爪14は、ハウジング2の右側部および左側部のそれぞれに3個所ずつ設けられている。
【0024】
本実施形態に係るカード用コネクタ1によれば次の効果を得られる。
【0025】
カード用コネクタ1においては、接地部22は天板部21の縁部からほぼ直角に曲折しハウジング本体10に沿って延びていて、折り目部23の位置で回路基板等に接地される。接地部22を回路基板等に単に接触させることだけを考えた場合、接地部22の天板部21と反対側の端部は折り目部23ではなく金属板の切断面であってもよいのだが、良導電性が要求されるカバー部材20の材料としては良導電性材料で鍍金された金属板が用いられるのが一般的であり、接地部22を折り目部23の位置で接地させることによって回路基板等に対する接地部22の接点を良導電性の鍍金面とすることができる。つまり、良導電性の鍍金面を利用して接地部22と回路基板等との良好な導通状態を確保することができる。
【0026】
カード用コネクタ1においては、接地部22には折り目部23とともに折返し部24が形成されている。この折返し部24はハウジング本体10側に形成されているとともにハウジング本体10の収容部12に収容されている。これにより、接地部22をハウジング2から突出させないようカバー部材20に形成することができる。
【0027】
カード用コネクタ1においては、折返し部24の天板部21側の端部と係止部13とが係合することにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動が阻止されるので、ハウジング本体10とカバー部材20との結合強度の確保に貢献できる。
【0028】
カード用コネクタ1においては、係止板部25と係止爪14とが係止孔26の縁で係合することにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動が阻止される。これによっても、ハウジング本体10とカバー部材20との結合強度の確保に貢献できる。
【0029】
なお、前述の実施形態に係るカード用コネクタ1は係止部13を備えていたが、本発明の係止部は係止部13に限定されるものではなく、図7に示す係止部30であってもよい。この係止部30は、接地部22側からハウジング本体10側に向かう方向において折返し部24の天板部21側の端部から離れる方向に傾斜した傾面からなる。この係止部30は係止部13よりも折返し部24の天板部21側の端部に係合しやすい。これにより、底部11と天板部21とが離れる方向へのハウジング本体10とカバー部材20との相対移動の阻止の確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの3面図であって、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1に示したカード用コネクタの右後斜め下方からの斜視図である。
【図3】図2に示したカード用コネクタにカードが挿入された状態の斜視図である。
【図4】図1に示したカード用コネクタに備えられたカバー部材の右後斜め下方からの斜視図である。
【図5】図1に示したカード用コネクタに備えられたハウジング本体の右後斜め下方からの斜視図である。
【図6】図1に示したカード用コネクタに備えられた接地部、収容部および係止部の拡大断面図である。
【図7】図6に示した係止部の別の例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 カード用コネクタ
2 ハウジング
2a 挿入空間
10 ハウジング本体
11 底部
12 収容部
13 係止部
14 係止爪
20 カバー部材
21 天板部
22 接地部
23 折り目部
24 折返し部
25 係止板部
26 係止孔
27 端子列
28 端子
30 係止部
40 カード
41 端子列
42 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるハウジングを有し、このハウジングは、樹脂製のハウジング本体と、金属板からの成形品であって前記ハウジング本体に結合したカバー部材とからなり、前記ハウジング本体は底部を有し、前記カバー部材は天板部を有し、これら底部と天板部との間に前記カードの挿入空間が形成され、前記カバー部材には回路基板等への実装状態において接地される接地部が形成されたカード用コネクタであって、
前記接地部は、前記天板部の縁部から曲折して前記ハウジング本体に沿って延びているとともに、前記ハウジング本体側に向かう方向への折り返し加工により形成された折り目部と折返し部とを有し、前記折り目部は前記回路基板等への実装状態において接地される部分となり、
前記ハウジング本体には、前記折返し部を収容する収容部と、前記折返し部の前記天板部側の端部と対向して位置する係止部とが形成され、
前記折返し部の前記天板部側の端部と前記係止部とが係合することにより、前記底部と前記天板部とが離れる方向への前記ハウジング本体と前記カバー部材との相対移動が阻止される
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記係止部は、前記接地部側から前記ハウジング本体側に向かう方向において前記折返し部の前記天板部側の端部から離れる方向に傾斜した傾面からなる
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記カバー部材は、前記天板部の縁部から曲折し前記ハウジング本体に沿って延びた係止板部を有し、この係止板部には前記ハウジング本体を部分的に露出させる係止孔が形成され、前記ハウジング本体は前記係止孔に挿入された係止爪を有し、
前記係止板部と前記係止爪とが前記係止孔の縁で係合することにより、前記底部と前記天板部とが離れる方向への前記ハウジング本体と前記カバー部材との相対移動が阻止される
ことを特徴とするカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−21058(P2010−21058A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181354(P2008−181354)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】