説明

カーボングラファイトを使用するヒートシンク

【課題】薄型化による性能低下を軽減し、多数の発熱部品を効率的に冷却することができる、軽量薄型電気機器用ヒートシンクを提供する。
【解決手段】複数の発熱体の一部9と熱的に接続される均熱性に優れたカーボングラファイト材2と、前記カーボングラファイト材2に熱的に接続される少なくとも1つのヒートパイプ3と、前記複数の発熱体の他の一部に熱的に接続される少なくとも1つの別のカーボングラファイト材とを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等の種類の異なる複数の発熱体を冷却することができる、軽量薄型電気機器用ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンのCPU、レーザ発光ダイオード、パワートランジスター等の電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、その使用によって発熱が避け難く、近年、発熱量が高くなり、その冷却が重要な技術課題となりつつある。他方、これら電気・電子機器の薄型、小型化が強く要請される。
冷却を要する電気・電子素子を冷却する方法としては、例えば機器にファンを取り付けて、機器筐体内の空気の温度を下げる方法や、被冷却素子に冷却体を取り付けることによって、その被冷却素子を直接的に冷却する方法等が代表的に知られている。
【0003】
被冷却素子に取り付ける冷却体として、例えば銅材やアルミニウム材などの伝熱性に優れた材料の板材や、或いは平面型ヒートパイプ等が適用されることが多い。平面型ヒートパイプとして、板状ヒートパイプを使用したノートブック型電子機器用の冷却機構が特開平10−39955号公報に開示されている。
【0004】
ヒートパイプについて簡単に説明する。ヒートパイプは空洞部を有するコンテナであり、その空洞部に作動流体(作動流体)が封入されている。その空洞部は真空引きされており、作動流体の蒸発が起きやすくなっている。作動流体としては、コンテナの材質との適合性を考慮して、水、アルコール、代替フロン等が用いられる。
【0005】
ヒートパイプの作動について簡単に説明する。即ち、ヒートパイプの吸熱側において、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)の材質中を熱伝導して伝わってきた熱により、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側では、作動流体の蒸気は冷却されて、再び液相状態に戻る。そして液相に戻った作動流体は、再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動により、熱の移動がなされる。
【0006】
作動流体の還流は、重力や毛細管現象によってなされる。重力式のヒートパイプの場合は、吸熱部を放熱部より下方に配置することによって、作動流体は還流する。毛細管現象によって作動流体を還流させるヒートパイプの場合は、空洞部の内壁に溝を設けたり、空洞内部に金属メッシュ、多孔質体等のウイックを挿入し、溝またはウイックによる毛細管現象によって、作動流体が還流する。
このように、ヒートパイプにおいては、ヒートパイプの密閉された空洞部内に封入された作動流体の相変態と移動により大量の熱の輸送が行われる。もちろん、ヒートパイプを構成する容器(コンテナ)を熱伝導することによって、運ばれる熱もあるが、その量は相対的に少ない。
【0007】
上述したように、平面型ヒートパイプの空洞部内には、作動流体が封入され、作動流体の相変態が行われる。平面型ヒートパイプとして十分に機能するためには、空気の流入による作動液の劣化を防止し、更に、作動流体の漏れを防止することができるように空洞部の気密性を確保し、そして、内圧・外圧に十分耐える強度が必要とされる。平面型ヒートパイプの密閉された容器の気密性を高めるために、容器を形成する上板材および下板材を、ロウ付け(銀ロウ、低温ロウ等)方法、ロールボンド方法、圧接方法等によって接合することが広く知られている。
【0008】
一方、パソコン等の電気機器の小型化、高性能化が著しくすすみ、それに搭載されるCPU、MPU等の発熱部品を冷却するための冷却機構の小型化、省スペース化が強く望まれている。上述したヒートパイプを用いた冷却機構の場合には、ヒートパイプの薄型化も要求されるようになってきている。図7に従来の薄型ヒートシンクの一例を示す。受熱板または均熱板としての銅薄板材2に形成された溝部にヒートパイプを埋め込み、その上に銅またはアルミニウム製のカバー材104を載置し、カバー材の上に発熱部品を熱的に接続する。
【特許文献1】特開平10−39955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したようにヒートパイプを薄型化するために、例えば、外形3から4mm程度の細いヒートパイプが実用化され、パソコン等の冷却機構に適用されている。パソコン等の筐体内のスペースの都合によって上述した細い径のヒートパイプを更に潰して断面を扁平形状にしたヒートパイプ(扁平ヒートパイプ)が用いられている。しかしながら、上述したようにヒートパイプを薄型化すると、性能が著しく低下するという問題点がある。その結果、薄型、軽量且つ高発熱対応という要求に答えることができなくなるという問題点がある。
【0010】
従って、この発明の目的は、薄型化による性能低下を軽減し、多数の発熱部品を効率的に冷却することができる、軽量薄型電気機器用ヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上述した従来の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、従来使用しているアルミニウムまたは銅の薄板の代わりにカーボングラファイト材を使用し、扁平状ヒートパイプと組み合わせることによって、薄型化、軽量化、高発熱対応が可能な性能の高いヒートシンクを提供することができることが判明した。
【0012】
この発明は、上述した研究結果に基づいてなされたものであって、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第1の態様は、複数の発熱体の一部と熱的に接続される均熱性に優れたカーボングラファイト材と、前記カーボングラファイト材に熱的に接続される少なくとも1つの扁平状ヒートパイプと、前記複数の発熱体の他の一部に熱的に接続される少なくとも1つの別のカーボングラファイト材とを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0013】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第2の態様は、前記カーボングラファイト材に溝部が形成され、前記扁平状ヒートパイプが前記溝部に埋め込まれている、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0014】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第3の態様は、前記カーボングラファイト材に凹部が形成され、前記扁平状ヒートパイプが前記凹部に収納されている、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0015】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第4の態様は、前記少なくとも1つの別のカーボングラファイト材が少なくとも前記ヒートパイプに熱的に接続している、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0016】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第5の態様は、前記複数の発熱体が異なる種類、異なる発熱量の発熱体からなっており、発熱量の高い発熱体が前記別のカーボングラファイト材に熱的に接続され、その他の発熱体が前記カーボングラファイト材に熱的に接続されている、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0017】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第6の態様は、前記少なくとも1つの扁平状のヒートパイプが複数のヒートパイプからなっており、前記別のカーボングラファイト材が複数のカーボングラファイト材からなっており、対応する各ヒートパイプに熱的に接続されている、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0018】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第7の態様は、前記発熱体が所定間隔で高密度に配置されている、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0019】
この発明の薄型電気機器の第1の態様は、上述したカーボングラファイトを使用するヒートシンクによって、全ての発熱体を一括処理する薄型電気機器である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によると、金属部品を複合させることによる重量の増加、高価な金型代の発生を抑制することによってコストを低下し、薄型化による冷却性能の低下を軽減し、多数の発熱部品を効率的に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクを図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの第1の態様は、複数の発熱体の一部と熱的に接続される均熱性に優れたカーボングラファイト材と、前記カーボングラファイト材に熱的に接続される少なくとも1つの扁平状ヒートパイプと、前記複数の発熱体の他の一部に熱的に接続される少なくとも1つの別のカーボングラファイト材とを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクである。
【0022】
図1は、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの1つの態様を説明する図である。
【0023】
図1に示すように、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンク1は、カーボングラファイト材2と、扁平状ヒートパイプ3と、別のカーボングラファイト材4−1、4−2とを備えている。カーボングラファイト材2は、均熱性に優れており、複数の発熱体のうちの一部の発熱体(例えば、3から4個のチップ)と、その平面な部分において熱的に直接接続される。扁平状ヒートパイプは、発熱体の数、発熱量により少なくとも1つの扁平状ヒートパイプからなっており、カーボングラファイト材に熱的に接続されている。別のカーボングラファイト材4は、例えば、扁平状ヒートパイプの上に配置されて、発熱体(例えば、CPU等)と熱的に直接接続される。
【0024】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクにおいては、カーボングラファイト材に溝部が形成され、扁平状ヒートパイプが溝部に埋め込まれている。更に、カーボングラファイト材に凹部が形成され、扁平状ヒートパイプが凹部に収納されていてもよい。
【0025】
図2は、カーボングラファイト材に扁平状ヒートパイプを取り付ける方法を示す図である。図2(a)は、カーボングラファイト材に溝部が形成される例を示す。図2(b)は、カーボングラファイト材に凹部が形成される例を示す。
【0026】
図2(a)に示すように、この態様のカーボングラファイトを使用するヒートシンク1においては、カーボングラファイト材2の例えば長手方向に沿って、扁平状ヒートパイプ3の形状に対応する溝部5が形成される。溝部5は、その中に収められた扁平状ヒートパイプの上面がカーボングラファイト材の上面と同一になるように形成してもよく、または、扁平状ヒートパイプの一部がカーボングラファイト材の上面よりも上方に露出するように形成してもよい。
【0027】
溝部5に装着された扁平状ヒートパイプ3の上面には、別のカーボングラファイト材4が接合される。別のカーボングラファイトは、板状でもよく、ブロック状でもよい。発熱量の高い発熱部品を上述した別のカーボングラファイトに搭載すると、別のカーボングラファイトは、均熱部材として機能し、発熱部品の熱を効率的に別のカーボングラファイトに移動し、扁平状ヒートパイプによって所定の位置に熱を移動する。
【0028】
図2(b)に示すように、この態様のカーボングラファイトを使用するヒートシンク1においては、カーボングラファイト材2の例えば長手方向に沿って、扁平状ヒートパイプ3の形状に対応して、凹部6が形成される。凹部6は、その中に装着された扁平状ヒートパイプの上面がカーボングラファイト材の上面と同一になるように形成してもよく、または、扁平状ヒートパイプの一部がカーボングラファイト材の上面よりも上方に露出するように形成してもよい。
【0029】
凹部6に装着された扁平状ヒートパイプ3の上面には、図2(a)を参照して説明した態様と同様に、別のカーボングラファイト材4が接合される。別のカーボングラファイトは、板状でもよく、ブロック状でもよい。発熱量の高い発熱部品を上述したブロック状の別のカーボングラファイトに搭載すると、別のカーボングラファイトは、均熱部材として機能し、発熱部品の熱を効率的に別のカーボングラファイトに移動し、扁平状ヒートパイプによって所定の位置に熱を移動する。
【0030】
更に、この発明のカーボングラファイト材を使用するヒートシンクにおいて、扁平状のヒートパイプが複数の扁平状ヒートパイプからなっていてもよい。更に、別のカーボングラファイト材が複数のカーボングラファイト材からなっており、対応する各ヒートパイプに熱的に接続されていてもよい。
【0031】
図3は、複数の扁平状ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの1つの態様を説明する図である。図3に示す態様では、3つの扁平状ヒートパイプおよび2個の別のカーボングラファイト材が用いられている。図3に示すように、カーボングラファイト材2には、3つの扁平状ヒートパイプの形状に対応する溝部、または、凹部が設けられて、それぞれ扁平状ヒートパイプが装着される。3つの扁平状ヒートパイプと熱的に接続するように、別のカーボングラファイト材4−1が設けられ、更に、1つの扁平状ヒートパイプに更に別のカーボングラファイト材が熱的に接続するように設けられている。
【0032】
例えば、別のカーボングラファイト材4−1にCPUが熱的に接続され、別のカーボングラファイト材4−2にVGAが熱的に接続される。別のカーボングラファイト材4−1に熱的に接続されたCPUの熱が、別のカーボングラファイト材4−1に移動し、そこで均熱化されて、扁平状ヒートパイプ3−1、3−2、3−3に移動し、それによってカーボングラファイト材全体の温度が低い部分に熱が移動する。更に、扁平状ヒートパイプ3−3に熱的に接続されている別のカーボングラファイト材4−2に搭載されたVGAの熱は、別のカーボングラファイト材4−2に移動し、そこで均熱化されて、扁平状ヒートパイプ3−3に移動し、それによってカーボングラファイト材の温度の低い部分に熱が移動する。
【0033】
このように、カーボングラファイト材は、熱伝導性に優れているので、均熱板として機能し、扁平状ヒートパイプによって、カーボングラファイト材の温度の低い部分に熱が移動する。従って、フィン、送風用のファン等の他の部品を用いることなく、所謂、フィンレス・ファンレスのヒートシンクが得られる。その結果、薄型化に対応が可能である。
【0034】
更に、この発明のカーボングラファイト材を使用するヒートシンクにおいては、複数の発熱体が異なる種類、異なる発熱量の発熱体からなっており、発熱量の高い発熱体が別のカーボングラファイト材に熱的に接続され、その他の発熱体がカーボングラファイト材に熱的に接続されていてもよい。
【0035】
図4は、この発明のカーボングラファイト材を使用するヒートシンクにおける、発熱部品の実装状況を説明する図である。この態様においては、1本の扁平状ヒートパイプを用いて、複数の異なる種類、異なる発熱量の発熱部品を冷却する。
図4に示すように、カーボングラファイト材2には、1つの扁平状ヒートパイプの形状に対応する溝部、または、凹部が設けられて、それぞれ扁平状ヒートパイプが装着される。扁平状ヒートパイプと熱的に接続するように、別のカーボングラファイト材4が設けられている。
【0036】
更に、扁平状ヒートパイプの近傍のカーボングラファイト材の上に、発熱部品8が直接搭載され、熱的に接続されている。更に、発熱部品9−1、9−2、9−3がカーボングラファイト材の他の部分の上に直接搭載され、熱的に接続している。このように、異なる種類、異なる発熱量の発熱部品がカーボングラファイト材上に、直接または別のカーボングラファイト材、扁平状ヒートパイプを介して熱的に接続されている。例えば、別のカーボングラファイト材4にCPUが熱的に接続され、扁平状ヒートパイプ近傍のカーボングラファイト材上にVGAが熱的に接続され、更に、チップ(図4では、3個のチップセット)がカーボングラファイト材に熱的に接続されている。
【0037】
別のカーボングラファイト材4に搭載されたCPUの熱が、別のカーボングラファイト4に移動し、そこで均熱化されて、扁平状ヒートパイプ3に移動し、それによってカーボングラファイト材の所定の位置に向かって熱が移動される。更に、扁平状ヒートパイプ3の近傍のカーボングラファイト材の上に直接搭載されたVGAの熱は、カーボングラファイト材そのもの、および/または、扁平状ヒートパイプ3によって、カーボングラファイト材2の温度の低い部分に熱が移動する。更に、扁平状ヒートパイプ3から離れた位置において、カーボングラファイト材2に直接搭載されたチップセット9−1、9−2、9−3の熱は、カーボングラファイト材2の温度の低い部分に熱が移動する。
【0038】
図5は、ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの他の1つの態様を説明する図である。図5(a)はその斜視図であり、図5(b)はその断面図である。図5(a)図5(b)に示すように、回路基板10の上に所定の高さのCPU等の発熱部品9が搭載されている。カーボングラファイト材の上にはヒートパイプがその表面に沿って配置されている。発熱部品9の上をカーボングラファイト材の一部が発熱部品の形状に沿って曲げられて覆っている。それに伴って、カーボングラファイト材の上に配置されたヒートパイプも同様に曲げられる。即ち、ヒートパイプとカーボングラファイト材とは相互に密着しつつ任意に曲げ部を形成することができる。従って、高い放熱性能を有し、且つ、パソコン内部の配置設計の自由度を高めることができる。この態様においては、発熱部品を覆う部分以外のカーボングラファイト材は回路基板に接している。
【0039】
図6は、ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの他の1つの態様を説明する図である。図6(a)はその斜視図であり、図6(b)はその断面図である。図6(a)図6(b)に示すように、回路基板10の上に所定高さのCPU等の発熱部品9が搭載されている。カーボングラファイト材2の表面に沿ってヒートパイプ3が配置されている。カーボングラファイト材の発熱部品9に対応する部分には、所定の曲げが施された凹部11が形成されており、ヒートパイプ3も対応する部分には同様に曲げが施されれている。即ちこの態様においても、ヒートパイプとカーボングラファイト材とは相互に密着しつつ任意に曲げ部を形成することができる。従って、高い放熱性能を有し、且つ、パソコン内部の配置設計の自由度を高めることができる。この態様においては、カーボングラファイト材は回路基板と直接接触することはなく、発熱部品以外の部分においては回路基板から所定の間隔を隔てて位置している。
【0040】
なお、ここでは図示しないが、カーボングラファイト材に厚さが薄い溝状の凹み部を設け、前記凹み部に沿うようにヒートパイプを配置しても良い。この場合、凹み部にヒートパイプが嵌るような形態になるため薄型設計に好適となる。
【0041】
このように、カーボングラファイト材は、熱伝導性に優れているので、均熱板として機能し、カーボングラファイト材自身の熱伝導、および、扁平状ヒートパイプによって、カーボングラファイト材の温度の低い部分に熱が移動する。従って、フィン、送風用のファン等の他の部品を用いることなく、所謂、フィンレス・ファンレスのヒートシンクが得られる。その結果、薄型化に対応が可能である。
【0042】
扁平状ヒートパイプのコンテナの材料として、銅(C1020、C1100、C1200)、アルミニウム(A1010 A1100 A5000系、A6000系、A7000系)などの熱伝導の良好な金属を利用する。クラッド材を用いるときには、異種金属、例えば、アルミニウム/銅、銅/セラミックス(アルミナ、ベリリア、窒化アルミニウム、銅タングステン)を用いることができる。
【0043】
毛細管構造体のウイックとして、金網、焼結金属、メタルウール、グラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等がある。内壁に形成されるグルーブとして、軸方向、周方向に沿ったグルーブ、長方形、台形、三角形等のグルーブがある。
密閉された空洞部内に封入される作動液としては、容器材質との適合性に応じて、水、代替フロン、フロリーナ、シクロペンタン等を用いる。
【0044】
カーボングラファイト材は、市販されているものを使用することができる。一般に、天然のグラファイトを圧延してグラファイト板材が得られる。またアクリロニトリルを用いたアクリル系樹脂フィルム等の有機合成フィルムを無酸素下で焼成すると、シート状のグラファイトが得られる。シート状のグラファイトは柔軟性および圧縮弾性があり、合わせて使用する材料との適合性に優れている。カーボングラファイトは一般に酸素と反応し易く、これによって劣化し、形状が変化したり安定性が悪化するので、高分子フィルムによってカーボングラファイト材を覆われて使用される。更に、高分子フィルムとして液晶ポリマ等の耐熱フィルムを使用して、更に劣化の防止が図られている。
ヒートパイプとカーボングラファイトとの接合方法として、例えば、カシメ接合、接着剤接合、半田接合、カバー固定、ラミネートフィルムにて一体接合等がある。
【実施例】
【0045】
この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクを実施例によって差更に詳細に説明する。
実施例1
【0046】
図5に示すように、厚さ1mmのカーボングラファイト材2に、ヒートパイプの大きさに対応する凹部を形成して、その中に扁平状ヒートパイプ3を装着した。扁平状ヒートパイプは、Φ6mmの丸型ヒートパイプを2.5mmに扁平した。扁平状ヒートパイプの一方の端部はL字状に湾曲されて、その上に別のカーボングラファイト材4が載置された。別のカーボン板材の上には発熱量15WのCPU7が熱的に接続された。
【0047】
扁平状ヒートパイプから離れた位置のカーボングラファイト材上に発熱量7WのVGA8が熱的に接続された。更に、扁平状ヒートパイプから離れた別の位置のカーボングラファイト材上に発熱量約10Wのチップセット9−1、9−2、9−3が熱的に接続された。
このようにカーボングラファイト材の上に扁平状ヒートパイプを装着し、発熱量の異なる3種類の発熱部品CPU、VGA、チップセットをヒートパイプおよびカーボングラファイト材に熱的に接続して、ヒートシンクの放熱状態を調べた。
【0048】
比較のために、カーボングラファイトの代わりに銅薄板材を使用した以外は、同一条件で作成された従来のヒートシンクについて、ヒートシンクの放熱状態を調べた。それらの結果を、図5に合わせて示す。
図5に示すように、従来の銅板またはアルミニウム板材を使用すると、熱伝導性が低いので、ヒートパイプの周りにA−1、VGAの周りにA−2、チップセットの周りにA−3と相互に分離して、熱が移動していることがわかる。即ち、上述した3つの発熱部品の熱が充分に移動せず、狭い領域に制限され、放熱性能が抑制されている状態が明らかである。
【0049】
これに対して、本発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクにおいては、図5に示すBの領域に熱が移動していることがわかる。即ち、上述した従来のヒートシンクのように、発熱部品の周りに相互に分離して熱の移動が制限されること無く、カーボングラファイト材の概ね全域にわたって熱が充分に移動し、放熱性能が充分に発揮されている状態が明らかである。
実施例2
【0050】
図6に示すように、厚さ1mmのカーボングラファイト材2に、3本のヒートパイプの大きさに対応する凹部を形成して、その中に扁平状ヒートパイプ3−1、3−2、3−3をそれぞれ装着した。扁平状ヒートパイプは、Φ6mmの丸型ヒートパイプを2.5mmに扁平した。3本の扁平状ヒートパイプの一方の端部がカーボングラファイト材の一方の端部に集められるように配置されて、その上に別のカーボングラファイト材4−1が載置された。別のカーボン板材の上には発熱量50WのCPU7−1が熱的に接続された。
【0051】
扁平状ヒートパイプ3−3の中央部付近に別のカーボングラファイト材4−2が載置された。別のカーボングラファイト材4−2の上には発熱量25WのVGAが熱的に接続された。扁平状ヒートパイプ3−1の隣のカーボングラファイト材上に発熱量約15Wのチップセット9−1、9−2、9−3が熱的に接続された。
【0052】
このようにカーボングラファイト材の上に扁平状ヒートパイプを装着し、発熱量の異なる3種類の発熱部品CPU、VGA、チップセットをヒートパイプおよびカーボングラファイト材に熱的に接続して、本発明のヒートシンクの放熱状態を調べた。
比較のために、カーボングラファイトの代わりに銅薄板材を使用した以外は、同一条件で作成された従来のヒートシンクについて、ヒートシンクの放熱状態を調べた。それらの結果を、図6に合わせて示す。
【0053】
図6に示すように、従来の銅板またはアルミニウム板材を使用すると、熱伝導性が低いので、3本の扁平状ヒートパイプのそれぞれの周り、および、チップセットの周りのカーボングラファイト材上のAに示す領域に熱の移動が制限されていることがわかる。即ち、上述した3つの発熱部品の熱が充分に移動せず、Aに示す狭い領域に制限され、放熱性能が抑制されている状態が明らかである。
これに対して、本発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクにおいては、図6に示すBの領域に熱が移動していることがわかる。即ち、上述した従来のヒートシンクのように、発熱部品の周りに熱の移動が制限されること無く、カーボングラファイト材の概ね全域にわたって熱が充分に移動し、放熱性能が充分に発揮されている状態が明らかである。
【0054】
上述したように、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクによると、異なる種類の発熱部品の冷却が一括して処理することができる。更に、放熱性能に優れているので、発熱部品の高密度配置が可能になる。更に、上述したように、カーボングラファイト材に形成された溝部または凹部にヒートパイプを埋め込んで使用するので、軽量化、薄型化が可能になり、ノート型パソコン等、薄型電気機器の冷却に使用することができる。
なお、ヒートパイプの形状は扁平状のものに限らず、例えば板状、丸状のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明によると、カーボングラファイト材に形成された溝部または凹部に扁平状ヒートパイプを埋め込んで使用するので、軽量化、薄型化が可能になり、ノート型パソコン等、薄型電気機器の冷却に使用することができる。従って、薄型化による性能低下を軽減し、多数の発熱部品を効率的に冷却することができる、軽量薄型電気機器用ヒートシンクを提供することができ、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクの1つの態様を説明する図である。
【図2】図2は、カーボングラファイト材に扁平状ヒートパイプを取り付ける方法を示す図である。図2(a)は、カーボングラファイト材に溝部が形成される例を示す。図2(b)は、カーボングラファイト材に凹部が形成される例を示す。
【図3】図3は、複数の扁平状ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの1つの態様を説明する図である。
【図4】図4は、この発明のカーボングラファイトを使用するヒートシンクにおける、発熱部品の実装状況を説明する図である。
【図5】図5は、ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの他の1つの態様を説明する図である。
【図6】図6は、ヒートパイプを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンクの他の1つの態様を説明する図である。
【図7】図7は、実施例1におけるこの発明のカーボングラファイトを使用したヒートシンクにおける、熱の移動状態を示す模式図である。
【図8】図8は、実施例2におけるこの発明のカーボングラファイトを使用したヒートシンクにおける、熱の移動状態を示す模式図である。
【図9】図9は、従来のヒートシンクを説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1.カーボングラファイトを使用したヒートシンク
2.カーボングラファイト材
3.扁平状ヒートパイプ
4.別のカーボングラファイト材
5.溝部
6.凹部
7、8、9.発熱部品
10.回路基板
11.凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱体の一部と熱的に接続される均熱性に優れたカーボングラファイト材と、前記カーボングラファイト材に熱的に接続される少なくとも1つのヒートパイプと、前記複数の発熱体の他の一部に熱的に接続される少なくとも1つの別のカーボングラファイト材とを備えた、カーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項2】
前記カーボングラファイト材に溝部が形成され、前記ヒートパイプが前記溝部に埋め込まれている、請求項1に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項3】
前記カーボングラファイト材に凹部が形成され、前記ヒートパイプが前記凹部に収納されている、請求項1に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項4】
前記少なくとも1つの別のカーボングラファイト材が少なくとも前記ヒートパイプに熱的に接続している、請求項1または2に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項5】
前記複数の発熱体が異なる種類、異なる発熱量の発熱体からなっており、発熱量の高い発熱体が前記別のカーボングラファイト材に熱的に接続され、その他の発熱体が前記カーボングラファイト材に熱的に接続されている、請求項1または2に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項6】
前記少なくとも1つのヒートパイプが複数のヒートパイプからなっており、前記別のカーボングラファイト材が複数のカーボングラファイト材からなっており、対応する各ヒートパイプに熱的に接続されている、請求項1または5に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンク。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のカーボングラファイトを使用するヒートシンクによって、全ての発熱体を一括処理する薄型電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−13217(P2006−13217A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189717(P2004−189717)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【復代理人】
【識別番号】100092989
【弁理士】
【氏名又は名称】片伯部 敏
【Fターム(参考)】