説明

カーボンナノコイル製造用触媒及びその製造方法並びにカーボンナノコイルの製造方法

【課題】炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの安定製造に好適なカーボンナノコイル製造用触媒及びその製造方法並びにそれを用いたカーボンナノコイルの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のカーボンナノコイル製造用触媒1は、無機材料(非晶質シリカ等)からなるマトリックス相11と、このマトリックス相11に分散され、金属状態の金属M(Ni等)を含み、且つ、数平均粒子径が0.5〜100nmである金属含有粒状部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイズのばらつきが小さいカーボンナノコイルの製造に好適な触媒及びその製造方法並びにそれを用いたカーボンナノコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
螺旋状の炭素繊維からなるカーボンナノコイルは、カーボンナノコイルの外径(以下、「コイル径」という。)がナノオーダーサイズであり、その優れたスプリング特性、伸縮に伴う電気特性変化を利用して、微小触覚センサ素子等への応用が期待されている。
カーボンナノコイルの製造方法は、例えば、非特許文献1及び2、特許文献1及び2等に開示されている。
非特許文献1には、金属触媒を成形して微小粉とし、600℃〜700℃に加熱しながら、この触媒近傍に、アセチレン、ベンゼン等からなる有機ガスを流通させ、これらの有機ガスを分解させ、カーボンナノコイルを製造する方法が開示されている。
非特許文献2には、グラファイトシートの外周に、鉄粒子を被覆した触媒を加熱しながら、アセチレン及び窒素からなる混合ガスを流通させ、カーボンナノコイルを製造する方法が開示されている。
また、特許文献1には、コイル径が1nm以上100nm未満であるコイル状炭素繊維及びその製造方法が開示されている。この製造方法は、アセチレン等の炭化水素を、粒子径が1〜1,000nmである金属触媒の存在下、600℃〜950℃に加熱し、気相で分解反応させるものである。
更に、特許文献2には、部分酸化処理された金属粒子、あるいは、部分酸化処理及び、硫化処理又はリン化処理された金属粒子を触媒活性成分とし、触媒活性成分が多孔質セラミックスに分散担持されてなるコイル状炭素繊維製造用触媒、並びに、この触媒の存在下、アセチレン等の混合ガスを導入しながら、750℃で加熱し、収率が向上された、カーボンナノコイルの製造方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−192204号
【特許文献2】特開2004−105827号
【非特許文献1】Amelinckx, et. al, Nature,265(1994) 635
【非特許文献2】W.Li, et. al, J.Mater.Sci. 34(1999) 2745
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンナノコイルを構成する炭素繊維の太さ、即ち、炭素繊維の外径は、通常、その製造に際して用いられる触媒粒の大きさに依存する。従って、サイズの小さな触媒粒の存在下、化学気相成長法(CVD)を適用した場合には、外径の小さな炭素繊維が巻回成長し、コイル径の小さなカーボンナノコイルが得られやすい。
しかしながら、サイズの小さな触媒粒を備えるものの、触媒粒が凝集している場合、又は、均一に分散していない場合には、化学気相成長法(CVD)において、炭素繊維が生成し始める温度において、触媒粒の焼結・粗大粒化が起こりやすく、その結果、所望のサイズを有するカーボンナノコイルを安定して製造できない場合があった。
本発明の目的は、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの安定製造に好適なカーボンナノコイル製造用触媒及びその製造方法並びにそれを用いたカーボンナノコイルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される。
1.無機材料からなるマトリックス相と、該マトリックス相に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
2.上記無機材料が非晶質シリカである上記1に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
3.上記金属Mが、Ni、Co、Fe、Cu、In、Sn、Pd、Ti、Nb、Au及びPtから選ばれた少なくとも1種である上記1又は2に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
4.上記粒状金属部が、上記金属M、又は、該金属Mを含む固溶体からなる上記1乃至3のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
5.上記非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部に含まれる金属Mとのモル比M/Siが、0.2以上である上記2乃至4のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
6.上記1乃至5のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であって、無機材料からなるマトリックス相を形成するためのマトリックス形成用化合物と、金属Mを含む化合物とを、有機溶媒に溶解させ、触媒形成用前駆体溶液を調製する前駆体溶液調製工程と、上記触媒形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、該マトリックス相に分散された、金属Mの酸化物からなる粒状酸化物部とを有する第1複合膜を形成する第1熱処理工程と、上記第1複合膜を、水素ガス雰囲気中、300℃〜630℃の範囲の温度で熱処理する第2熱処理工程とを、順次、備えることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
7.上記1乃至5のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒を用いて、螺旋状の炭素繊維からなるカーボンナノコイルを製造する方法であって、上記カーボンナノコイル製造用触媒を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、該カーボンナノコイル製造用触媒の表面に、金属状態の金属Mからなり、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる触媒加熱工程と、上記触媒粒状体を650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガスを接触させ、該炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体の表面から炭素繊維を巻回成長させるカーボンナノコイル形成工程とを、順次、備えることを特徴とするカーボンナノコイルの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒によれば、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に均一分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えることから、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの安定製造に好適である。上記粒状金属部の数平均粒子径が、上記範囲にあり、且つ、通常、粒状金属部どうしが互いに凝集することなく、マトリックス相の構成成分に囲まれていることから、カーボンナノコイルを生成成長させる際に、即ち、630℃以上の高い温度においても、粒状金属部(触媒粒)の焼結・粗大粒化を招くことなく、カーボンナノコイルを効率よく製造することができる。
上記金属Mが、Ni、Co、Fe、Cu、In、Sn、Pd、Ti、Nb、Au及びPtから選ばれた少なくとも1種である場合には、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの安定製造並びに量産に好適である。
上記無機材料が非晶質シリカである場合、この非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部に含まれる金属Mとのモル比M/Siが、0.2以上である場合には、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの量産に好適である。また、製造条件を同一として、モル比M/Siを種々の値とした場合には、カーボンナノコイルのサイズを調節しつつ製造することができる。
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法によれば、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に、凝集することなく均一に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えるカーボンナノコイル製造用触媒を効率よく製造することができる。第1熱処理工程により形成された粒状酸化物部の大きさと、第2熱処理工程により形成されたカーボンナノコイル製造用触媒における粒状金属部の大きさとが、ほぼ同等であるので、自在に制御された数平均粒子径を有する粒状金属部を備えるカーボンナノコイル製造用触媒を製造することができるので、これを用いて、所望の炭素繊維の外径、及び、コイル径を有するカーボンナノコイルを安定的且つ効率的に製造することができる。
【0007】
本発明のカーボンナノコイルの製造方法によれば、凝集することなく均一に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部を備えるカーボンナノコイル製造用触媒を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、該カーボンナノコイル製造用触媒の表面に、金属状態の金属Mからなり、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる触媒加熱工程と、上記触媒粒状体を650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガスを接触させ、該炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体の表面から炭素繊維を巻回成長させるカーボンナノコイル形成工程とを、順次、備えることから、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを安定的且つ効率的に製造することができる。上記触媒加熱工程における昇温速度が、毎分15℃〜45℃であることから、カーボンナノコイル形成工程において、触媒粒状体が焼結・粗大粒化を導くことなく、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを効率よく製造することができる。従来、微細な触媒粒を、噴霧する等により、担体に担持させてなる触媒物品を用いると、触媒粒が焼結・粗大粒化することがあり、その結果、得られるカーボンナノコイルのサイズがばらつく等の不具合があったが、その不具合は、本発明の製造方法により解決されている。
本発明の製造方法により得られるカーボンナノコイルは、炭素繊維の外径を20〜450nm、コイル径を80〜950nmとすることができ、且つ、サイズのばらつきが小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「混合ガス」は、複数の気体成分を予め混合して準備されたガスのみならず、複数の気体成分が独立して供給され、同一系内にて所定の割合をもって構成された集合ガスをも意味する。また、「数平均粒子径」は、任意に抽出された50以上の被対象物に対して測定された粒子径の平均値を意味する。
【0009】
1.カーボンナノコイル製造用触媒
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒は、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えることを特徴とする。
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を、図面を用いて説明すると、その概略図は、図1に示される。即ち、カーボンナノコイル製造用触媒1は、マトリックス相11と、このマトリックス相11に分散された粒状金属部13とを備える。
従って、本発明のカーボンナノコイル製造用触媒1の外形は、上記マトリックス相11の形状とほぼ同じである。
【0010】
上記マトリックス相は、無機材料からなるものであれば、その種類、性質(構造、結晶性等)等について、特に限定されない。この無機材料としては、金属、合金、無機化合物等が挙げられる。これらのうち、無機化合物が好ましい。
上記無機化合物としては、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、炭窒化物、炭ホウ化物等が挙げられるが、これらのうち、酸化物が好ましく、例えば、SiO(以下、「シリカ」という。)、Al(以下、「アルミナ」という。)、酸化マグネシウム、ゼオライト等が挙げられる。本発明においては、カーボンナノコイルを製造する各工程において、分解、変質等しにくいことから、シリカが好ましく、非晶質シリカが特に好ましい。
【0011】
上記マトリックス相の構造は、特に限定されず、多孔質(網目構造を含む)及び緻密質のいずれでもよいが、比表面積が大きく、量産性に優れることから、多孔質であることが好ましい。多孔質である場合、孔径、細孔の容積、細孔の比表面積等特に限定されず、規則構造及び不規則構造のいずれでもよい。本発明においては、特に好ましいマトリックス相は、多孔質である非晶質シリカからなるものである。
【0012】
上記粒状金属部は、金属状態の金属Mを含むものであり、化学気相成長法(CVD)により、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、カーボンナノチューブ等の触媒として作用する元素により構成されるものであることが好ましい。このような元素としては、Ni、Co、Fe、Cu、In、Sn、Pd、Ti、Nb、Au、Pt等が挙げられる。上記粒状金属部は、これらの元素のうちの1種のみを含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
本発明において、上記粒状金属部は、金属M、又は、金属Mを含む固溶体からなるものであることが好ましい。上記金属Mは、好ましくは、Ni、Fe等であり、特に好ましくは、Niである。尚、上記金属Mが複数の元素により構成される場合には、Niと、他の元素との組合せであることが好ましく、その場合、金属Mの全体を100質量%とした場合、Niの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50〜90質量%である。上記金属MがNiを含むことにより、本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を用いた化学気相成長法(CVD)により、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを安定的且つ効率的に製造することができる。
【0013】
上記粒状金属部の数平均粒子径は、0.5〜100nmであり、好ましくは3〜80nm、より好ましくは5〜50nmである。数平均粒子径がこの範囲にあることにより、本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を用いた化学気相成長法(CVD)により、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを安定的且つ効率的に製造することができる。
【0014】
上記粒状金属部は、上記マトリックス相に分散されており、好ましくは、上記マトリックス相において凝集することなく、均一に分散されている。尚、「分散」とは、粒状金属部が、マトリックス相を構成する無機材料の中に含まれる状態のみならず、上記マトリックス相の構造が、多孔質である場合、無機材料により形成された骨格における孔隙に存在することをも意味する。従って、好ましい態様である、上記マトリックス相が、非晶質シリカからなり、その構造が多孔質である場合には、上記粒状金属部は、非晶質シリカにより形成された骨格の表面及び内部並びに孔隙に存在することができる。このように、非晶質シリカからなる多孔質体と、均一に分散された粒状金属部を備える構成において、好ましい組成としては、上記非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部に含まれる金属Mとのモル比M/Siが、0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7である。このモル比M/Siが0.2以上であるカーボンナノコイル製造用触媒を用いると、サイズのばらつきが小さいカーボンナノコイルを効率よく量産することができる。
【0015】
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒において、好ましい組成は、以下に示される。
(1)上記マトリックス相が、非晶質シリカからなり、上記粒状金属部が、Niからなる態様
(2)上記マトリックス相が、非晶質シリカからなり、上記粒状金属部を構成する金属MがNi及び他の元素であり、且つ、Niの含有割合が20質量%以上である態様
(3)上記マトリックス相が、アルミナからなり、上記粒状金属部が、Niからなる態様
(4)上記マトリックス相が、アルミナからなり、上記粒状金属部を構成する金属MがNi及び他の元素であり、且つ、Niの含有割合が30質量%以上である態様
【0016】
上記態様(1)において、サイズがより安定したカーボンナノコイルを効率よく製造するために、上記非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部を構成するNiとのモル比Ni/Siは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
上記態様(2)において、サイズがより安定したカーボンナノコイルを効率よく製造するために、上記非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部を構成する金属Mとのモル比M/Siは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
上記態様(3)において、サイズがより安定したカーボンナノコイルを効率よく製造するために、上記アルミナを構成するAlと、上記粒状金属部を構成するNiとのモル比Ni/Alは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
また、上記態様(4)において、サイズがより安定したカーボンナノコイルを効率よく製造するために、上記アルミナを構成するAlと、上記粒状金属部を構成する金属Mとのモル比M/Alは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
【0017】
2.カーボンナノコイル製造用触媒の製造方法
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法は、無機材料からなるマトリックス相を形成するためのマトリックス形成用化合物と、金属Mを含む化合物とを、有機溶媒に溶解させ、触媒形成用前駆体溶液を調製する前駆体溶液調製工程と、上記触媒形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に分散された、金属Mの酸化物からなる粒状酸化物部とを有する第1複合膜を形成する第1熱処理工程と、上記第1複合膜を、水素ガス雰囲気中、300℃〜630℃の範囲の温度で熱処理する第2熱処理工程とを、順次、備えることを特徴とする。尚、本発明の製造方法に係る製造装置は、特に限定されない。
【0018】
上記前駆体溶液調製工程は、無機材料からなるマトリックス相を形成するためのマトリックス形成用化合物と、金属Mを含む化合物(以下、「金属化合物」という。)とを、有機溶媒に溶解させ、触媒形成用前駆体溶液を調製する工程である。
上記無機材料が非晶質シリカである場合、マトリックス形成用化合物としては、シリコンアルコキシドを用いることが好ましい。このシリコンアルコキシドとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランが好ましく用いられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記無機材料がアルミナである場合、マトリックス形成用化合物としては、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。このアルミニウムアルコキシドとしては、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウム−n−プロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−tert−ブトキシド等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記金属化合物は、上記例示した金属Mを含むものであれば、特に限定されないが、水溶性又はアルコール溶解性であることが好ましい。従って、好ましい金属化合物としては、上記金属Mの硝酸塩、酢酸塩、錯塩等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、上記金属化合物は、硝酸塩であることが好ましい。
【0020】
上記触媒形成用前駆体溶液の調製に用いられる、マトリックス形成用化合物及び金属化合物の使用割合は、以下の組合せに従って、各モル比を満たすように選択される。
上記マトリックス形成用化合物がシリコンアルコキシドである場合、このシリコンアルコキシドに含まれるSiと、金属化合物に含まれる金属Mとのモル比M/Siは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
上記マトリックス形成用化合物がアルミニウムアルコキシドである場合、このアルミニウムアルコキシドに含まれるAlと、金属化合物に含まれる金属Mとのモル比M/Alは、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2〜7.5、更に好ましくは0.8〜7、特に好ましくは1.5〜6である。
【0021】
上記のマトリックス形成用化合物及び金属化合物は、有機溶媒に溶解され、触媒形成用前駆体溶液が調製される。この有機溶媒としては、通常、メタノール、エタノール等のアルコールが用いられる。
上記触媒形成用前駆体溶液は、過酸化水素が配合されたものであってもよい。その配合量は、Si元素量に対して、好ましくは1〜10倍量、より好ましくは5〜10倍量である。この過酸化水素を用いることにより、均一で安定な前駆体溶液とすることができる。
また、上記触媒形成用前駆体溶液における金属化合物の濃度は、通常、0.05〜1.4mol/リットル、好ましくは0.4〜1.3mol/リットルである。
【0022】
上記塗膜形成工程は、上記触媒形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成する工程である。
塗膜は、通常、所定形状又は不定形状の基材の表面に形成される。この基材の構成材料は、第1熱処理工程及び第2熱処理工程、更には、カーボンナノコイルを製造する各工程において、分解、変質等しにくく、機械的強度を保持できる材料であれば、特に限定されず、例えば、グラファイト、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア、チタニア、ガラス等が挙げられる。これらのうち、グラファイト及びアルミナが好ましい。
上記基材は、多孔質及び緻密質のいずれでもよい。
【0023】
上記塗膜の形成方法としては、ディップ法;スプレー方式、インクジェット方式、サーマルインクジェット方式等の吹き付け法;刷毛塗り法;カーテンコート法;スピンコート法等が挙げられる。これらの方法は、併用してもよい。
上記塗膜の厚さは、特に限定されない。
【0024】
上記第1熱処理工程は、上記塗膜を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に分散された、金属Mの酸化物からなる粒状酸化物部とを有する第1複合膜を形成する工程である。
以下、この第1熱処理工程以降の工程について、上記塗膜が基材に塗布されてなる積層物(塗膜付き基材)を処理するものとして説明する。
【0025】
上記第1熱処理工程において、上記積層物(塗膜付き基材)を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理することにより、基材18と、この基材18の表面に形成された、無機材料からなるマトリックス相11、即ち、本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を構成するマトリックス相と同じマトリックス相11、及び、このマトリックス相11に分散された、金属Mの酸化物(以下、「MO」ともいう。)からなる粒状酸化物部12を有する第1複合膜2と、を備える第1積層物3を得る(図2参照)。
【0026】
上記第1熱処理工程に際して、上記塗膜の組成は、上記触媒形成用前駆体溶液の組成そのままであってよいし、自然乾燥等により、媒体の一部又は全部が蒸発し、含有成分の濃度が高くなっていてもよい。
上記第1熱処理工程における熱処理温度は、上記塗膜に含まれていた金属M成分の酸化反応を十分に進めると共に、互いに凝集することなく、微分散性に優れる粒状酸化物部12と、安定構造のマトリックス相11とを形成させるために、400℃〜800℃であり、好ましくは570℃〜700℃である。この熱処理温度が高すぎると、生成化合物が結晶化して、得られるマトリックス相11に欠陥を生じる場合がある。尚、熱処理は、これらの温度範囲であれば、1又はそれ以上の数で設定された一定温度で行ってよいし、昇温又は降温させながら行ってもよい。
また、熱処理時間は、通常、1〜5時間であり、好ましくは1.5〜4時間、より好ましくは2〜3時間である。
【0027】
上記塗膜が、シリコンアルコキシドを含有した場合には、この第1熱処理工程により、多孔質シリカを形成することができる。また、上記塗膜が、アルミニウムアルコキシドを含有した場合には、この第1熱処理工程により、γ−アルミナを形成することができる。いずれの場合も、形成される第1複合膜2においては、マトリックス相11における粒状酸化物部12の分散性が優れる。
【0028】
上記粒状酸化物部12の数平均粒子径は、通常、0.5〜100nmであり、好ましくは3〜80nm、より好ましくは5〜50nmである。上記粒状酸化物部12が、このように微細であることから、その後の工程を経て最終的に得られるカーボンナノコイル製造用触媒に含まれる粒状金属部も高い微分散性を有し、その結果、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルの安定製造を進めることができる。
【0029】
次に、上記第2熱処理工程は、上記第1複合膜2、即ち、上記第1積層物3を、水素ガスを含む雰囲気中、300℃〜630℃の範囲の温度で熱処理する工程である。
この第2熱処理工程によって、粒状酸化物部12を構成する酸化物MOの還元反応を進め、基材18と、この基材18の表面に形成されている、上記マトリックス相11、及び、このマトリックス相11に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が0.5〜100nm、好ましくは3〜80nm、より好ましくは5〜50nmである粒状金属部13を有するカーボンナノコイル製造用触媒層1’とを備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を得ることができる(図3参照)。即ち、上記第1熱処理工程により形成された粒状酸化物部12がほとんど移動することなく、均一分散状態で還元されており、且つ、この粒状酸化物部12とほぼ同等の大きさを有する粒状金属部13を含むカーボンナノコイル製造用触媒層1’を形成することができる。また、この粒状金属部13は、その複数により互いに凝集することなく、マトリックス相の構成成分に囲まれていることから、本発明により得られるカーボンナノコイル製造用触媒、又は、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を用いて、カーボンナノコイルを製造するいずれかの工程において、例えば、630℃以上の高い温度に曝された場合においても、粒状金属部13の焼結・粗大粒化を抑制することができ、サイズのばらつきが小さいカーボンナノコイルの製造することができる。
【0030】
上記第2熱処理工程は、水素ガスを含む雰囲気で進められる。この雰囲気は、水素ガスのみからなる雰囲気であってよいし、水素ガスと、窒素ガス、アルゴンガス等の他のガスとの混合ガスからなる雰囲気であってもよい。後者の場合、水素ガスの含有割合は、混合ガスの全量に対して、通常、10体積%以上、好ましくは60体積%以上、より好ましくは70体積%以上である。
【0031】
上記第2熱処理工程における熱処理温度は、300℃〜630℃であり、好ましくは400℃〜500℃である。尚、熱処理は、これらの温度範囲であれば、1又はそれ以上の数で設定された一定温度で行ってよいし、昇温しながら行ってもよい。
また、熱処理時間は、通常、0.5〜5時間であり、好ましくは1〜3時間である。
【0032】
上記第2熱処理工程によって得られた、カーボンナノコイル製造用触媒、又は、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5は、粒状金属部13を構成する金属Mの酸化を防止するために、通常、不活性雰囲気又は還元雰囲気のもとで保管される。
【0033】
3.カーボンナノコイルの製造方法
上記本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を用いて、炭素からなる螺旋状体であって、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを効率的に製造することができる。また、上記本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法により得られたカーボンナノコイル製造用触媒を用いて、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを効率的に製造することができる。
【0034】
本発明のカーボンナノコイルの製造方法は、上記本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を用いて、螺旋状の炭素繊維からなるカーボンナノコイルを製造する方法であって、上記カーボンナノコイル製造用触媒を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、このカーボンナノコイル製造用触媒の表面に、金属状態の金属Mからなり、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる触媒加熱工程と、上記触媒粒状体を650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガスを接触させ、この炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体の表面から炭素繊維を巻回成長させるカーボンナノコイル形成工程とを、順次、備えることを特徴とする。尚、本発明の製造方法に係る製造装置は、特に限定されない。
以下、図3に示すような、基材18と、この基材18の表面に形成された、カーボンナノコイル製造用触媒層1’とを備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を用いて、各工程を進め、本発明のカーボンナノコイルを製造する方法を説明する。
【0035】
上記触媒加熱工程は、上記カーボンナノコイル製造用触媒、即ち、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲にある所定の温度から、700℃〜900℃の範囲にある所定の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、このカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面に、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる工程である。
この触媒加熱工程によって、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面近傍に存在していた粒状金属部13を、金属状態を維持したまま、金属Mを粒成長させ、数平均粒子径が1〜230nm、好ましくは5〜160nm、より好ましくは8〜120nm、更に好ましくは12〜80nmである触媒粒状体14が表出した粒成長触媒付き複合体6を得ることができる(図4参照)。尚、上記カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5の内部に存在する粒状金属部13は、移動しにくいことから、この触媒加熱工程を進めても、通常、そのままの状態が維持される。
【0036】
上記触媒加熱工程においては、カーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面近傍に存在していた粒状金属部13を効率よく粒成長させ、所望の粒子径を有する触媒粒状体14を表出させるために、450℃〜630℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃、好ましくは毎分18℃〜42℃、より好ましくは毎分20℃〜40℃の昇温速度で加熱する。この熱処理を進めている間は、上記範囲において昇温速度を変化させてもよい。また、昇温速度を切り替える際には、その温度において、一定時間保持してもよい。上記昇温速度が大きすぎると、形成される触媒粒状体14が、例えば、図4における上方向に、細長く成長(異常成長)し、触媒粒状体14の1つあたりの表面積が大きくなったり、凝集した触媒粒状体14が生成したりして、コイル径が1,000nm(1μm)未満のカーボンナノコイルを製造することができない。また、カーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面全体が、触媒粒状体14で被覆されてしまい、やはり、コイル径が1,000nm(1μm)未満のカーボンナノコイルを製造することができない。一方、上記昇温速度が小さすぎると、形成される触媒粒状体14が粗大化し、コイル径が1,000nm(1μm)未満のカーボンナノコイルを製造することができない。
尚、上記触媒加熱工程における熱処理開始温度(450℃〜630℃の範囲の温度)について、この温度が高すぎると、所望の粒子径を有する触媒粒状体14が形成されない場合がある。また、熱処理終了温度(700℃〜900℃の範囲の温度)について、この温度が低すぎると、所望の粒子径を有する触媒粒状体14が形成されない場合があり、高すぎると、触媒粒状体14が粒成長しすぎて、コイル径が1,000nm(1μm)未満のカーボンナノコイルを製造することができない場合がある。上記触媒加熱工程においては、熱処理終了温度において、一定時間保持してもよい。その場合、保持時間の上限は、通常、2時間である。
所望の粒子径を有する触媒粒状体14を形成するため、及び、それによりサイズが安定したカーボンナノコイルを製造するために好適な熱処理条件は、熱処理開始温度が480℃〜620℃の範囲の温度であり、熱処理終了温度が720℃〜850℃の範囲の温度であり、昇温速度を、好ましくは毎分18℃〜42℃、より好ましくは毎分20℃〜40℃とするものである。
【0037】
上記触媒加熱工程は、水素ガスを含む雰囲気で進められ、水素ガスのみからなる雰囲気であってよいし、水素ガスと、窒素ガス;硫化水素ガス、ジメチルスルフィドガス、メチルエチルスルフィドガス、ジエチルスルフィドガス、ジメチルジスルフィドガス、メチルエチルジスルフィドガス、ジエチルジスルフィドガス等の硫黄系ガス等の他のガスとの混合ガスからなる雰囲気であってもよい。また、昇温の途中で、雰囲気を変化させてもよい。好ましい雰囲気は、混合ガスからなる雰囲気であり、この熱処理において、水素ガスを、混合ガスの全量に対して、好ましくは60〜90体積%、より好ましくは65〜85体積%含有するように調整された雰囲気である。上記硫黄系ガスを用いる場合は、その使用量は、混合ガスの全量に対して、好ましくは0.01〜0.5体積%、好ましくは0.01〜0.2体積%である。上記混合ガスが、水素ガス及び硫黄系ガスを含む場合、残部は、通常、窒素ガスである。
【0038】
上記触媒加熱工程における熱処理条件は、以下に例示される。
(1)カーボンナノコイル製造用触媒、又は、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’を、水素ガス及び窒素ガスからなり、水素ガスを60〜90体積%含む雰囲気中、450℃〜550℃の範囲の温度から、550℃〜630℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、その後、水素ガス、窒素ガス及び硫黄系ガスからなり、水素ガス及び硫黄系ガスを、それぞれ、60〜90体積%及び0.01〜0.5体積%含む雰囲気中、550℃〜630℃の範囲の温度から700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱する方法
(2)カーボンナノコイル製造用触媒、又は、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’を、水素ガス、窒素ガス及び硫黄系ガスからなり、水素ガス及び硫黄系ガスを、それぞれ、60〜90体積%及び0.01〜0.5体積%含む雰囲気中、450℃〜550℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱する方法
【0039】
次に、上記カーボンナノコイル形成工程は、上記触媒粒状体14を、650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガス(以下、「混合ガス(G)」という。)を接触させ、この炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体14の表面から炭素繊維を巻回成長させる工程である。
即ち、このカーボンナノコイル形成工程は、上記触媒加熱工程により得られた、図4に示される粒成長触媒付き複合体6における少なくとも触媒粒状体14を、650℃〜900℃、好ましくは680℃〜860℃、より好ましくは690℃〜840℃の範囲の温度とした状態で、この粒成長触媒付き複合体6の表面に配されている触媒粒状体14に、上記混合ガス(G)を接触させるものである。接触時間は、好ましくは20分以上であり、より好ましくは30分以上、更に好ましくは40〜120分である。このカーボンナノコイル形成工程において、上記炭化水素は、触媒粒状体14との接触過程で分解され、分解生成された炭素原子が選択的に、この触媒粒状体14の表面に堆積、更に、炭素繊維となって、螺旋状に巻回成長し、非晶質のカーボンナノコイル7が形成される。炭素繊維の外径は、通常、触媒粒状体14の大きさに依存するが、その場合は、一重螺旋構造を有するカーボンナノコイルが形成され、そうでない場合は、例えば、二重螺旋等、多重螺旋構造を有するカーボンナノコイルが形成される。本発明においては、上記触媒加熱工程により、サイズが均一な触媒粒状体14が形成されるので、形成されるカーボンナノコイルのサイズも均一である。触媒粒状体14が微小であれば、微小な繊維が成長し、それにより、コイル径が小さなカーボンナノコイルを得ることができる。
尚、この熱処理は、上記温度範囲であれば、1又はそれ以上の数で設定された一定温度で行ってよいし、昇温しながら行ってもよい。
【0040】
上記混合ガス(G)は、気体の炭化水素を含む複数のガスからなるものである。炭化水素としては、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらのうち、650℃〜900℃の範囲の温度において、カーボンナノコイルの生成効率が高いことから、アルキンであるアセチレンが好ましい。上記炭化水素と併用される他のガスとしては、水素ガス、窒素ガス、硫黄系ガス等が挙げられる。尚、上記混合ガス(G)中の炭化水素の含有割合は、製造装置の容積、形状;触媒粒状体14の表面積;触媒粒状体14を備える粒成長触媒付き複合体6の大きさ、形状等により選択されるが、混合ガス(G)の全量に対して、通常、5〜50体積%、好ましくは10〜20体積%である。
上記混合ガス(G)は、好ましくは、炭化水素、水素ガス、窒素ガス及び硫黄系ガスからなる混合ガスである。
【0041】
上記カーボンナノコイル形成工程においては、公知の化学気相合成装置を用いることができる。その際には、装置内の所定位置に、上記粒成長触媒付き複合体6を配置し、加熱下、酸素ガス等、カーボンナノコイルの製造に影響する成分が含まれない雰囲気に調整した後、上記混合ガス(G)が導入される。
【0042】
上記粒成長触媒付き複合体6を用いて、カーボンナノコイル形成工程を進めると、カーボンナノコイル7を備えるカーボンナノコイル付き複合体8を得ることができる(図5参照)。図5に示されるカーボンナノコイル付き複合体8は、基材18と、この基材18の表面に配されたマトリックス相11と、このマトリックス相11の内部に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が0.5〜100nmである粒状金属部13と、このマトリックス相11の表面に配され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体14と、この触媒粒状体14の表面から、炭素繊維が螺旋状に成長し、形成されたカーボンナノコイル7とを備える。
【0043】
カーボンナノコイルの製造方法として、他の方法は、無機材料からなるマトリックス相を形成するためのマトリックス形成用化合物と、金属Mを含む化合物とを、有機溶媒に溶解させ、触媒形成用前駆体溶液を調製する前駆体溶液調製工程と、上記触媒形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に分散された、金属Mの酸化物からなる粒状酸化物部とを有する第1複合膜を形成する第1熱処理工程と、上記第1複合膜を、水素ガス雰囲気中、300℃〜630℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを有する第2複合膜を形成する第2熱処理工程と、上記第2複合膜を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲の温度から、630℃を超えて900℃以下の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、この第2複合膜の表面に、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる第3熱処理工程と、上記触媒粒状体を650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガス(G)を接触させ、この炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体の表面から炭素繊維を巻回成長させるカーボンナノコイル形成工程とを、順次、備えることができる。尚、この製造方法に係る製造装置は、特に限定されない。
この製造方法によれば、前駆体溶液調製工程、塗膜形成工程、第1熱処理工程、及び、第2熱処理工程によって、無機材料からなるマトリックス相と、このマトリックス相に、凝集することなく均一に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えるカーボンナノコイル製造用触媒を用いていることから、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを効率よく製造することができる。
【0044】
上記他のカーボンナノコイルの製造方法において、上記前駆体溶液調製工程、上記塗膜形成工程、上記第1熱処理工程、及び、上記第2熱処理工程は、上記本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法における、前駆体溶液調製工程、塗膜形成工程、第1熱処理工程、及び、第2熱処理工程の各説明を適用することができる。尚、上記第2熱処理工程により形成される第2複合膜は、上記本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法の説明で形成されたカーボンナノコイル製造用触媒(層)と同一である。
また、他のカーボンナノコイルの製造方法において、上記第3熱処理工程、及び、上記カーボンナノコイル形成工程は、上記本発明のカーボンナノコイルの製造方法における、触媒加熱工程及びカーボンナノコイル形成工程の各説明を適用することができる。
【0045】
上記他のカーボンナノコイルの製造方法において、触媒形成用前駆体溶液を、所定形状又は不定形状の基材の表面に対して塗布する塗膜形成工程とした場合には、図5に示すようなカーボンナノコイル付き複合体8を得ることができる。
【0046】
上記他のカーボンナノコイルの製造方法によれば、第1熱処理工程、第2熱処理工程、第3熱処理工程及びカーボンナノコイル形成工程を、各工程に準じた装置を個別に用いることなく、加熱手段及びガス供給手段を備える製造装置のみを用いて連続的に進めることができる。この製造装置のみを用いると、温度、雰囲気等の条件の設定が容易となり、それにより触媒粒状体の粒子径を制御しやすく、炭素繊維の外径、及び、コイル径のばらつきが小さいカーボンナノコイルを安定的に製造することができる。
【0047】
本発明のカーボンナノコイルの製造方法、及び、上記他のカーボンナノコイルの製造方法により得られるカーボンナノコイル7の概略図の一例を、図6に示すが、一重螺旋構造に限定されず、製造条件を選択することにより、二重螺旋構造を有するカーボンナノコイルを製造することもできる。
上記カーボンナノコイル7を構成する炭素繊維の外径Wは、通常、20〜450nm、好ましくは30〜250nmであり、コイル径は、通常、80〜950nm、好ましくは100〜600nmである。また、軸長Lは、通常、上記カーボンナノコイル形成工程における成長時間に依存する。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
0.0167モルのテトラエトキシシランと、0.0835モルの硝酸ニッケル6水和物とを、1モルのエタノールに溶解させた後、氷浴中にて30質量%の過酸化水素水を加えて2時間攪拌し、モル比Ni/Si=5の均一なSi−Ni−O前駆体溶液を調製した。次いで、この前駆体溶液を、グラファイトからなる板状基材18に、ディップコーティングし、塗膜を形成した。その後、塗膜付き基材を大気中、温度600℃で2時間焼成し、粒子径が約10nm(数平均粒子径10nm)である酸化ニッケル粒子(粒状酸化物部)12が、非晶質シリカからなり、多孔質のマトリックス相11に分散してなる(非晶質シリカの表面及び内部並びに孔隙に含まれてなる)第1複合膜2を備える第1積層物3を得た(図2参照)。
次に、この第1積層物3を、石英反応管内に載置し、窒素ガス雰囲気中、毎分40℃の昇温速度で、室温から500℃まで加熱し、続いて、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、温度500℃で、1時間熱処理した。この処理により、酸化ニッケルを還元させ、粒子径が約10nm(数平均粒子径10nm)である金属ニッケル粒子(粒状金属部)13が、非晶質シリカからなるマトリックス相11に分散してなる(非晶質シリカの表面及び内部並びに孔隙に含まれてなる)カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を得た(図3参照)。
その後、上記石英反応管内において、水素ガス及び窒素ガスを、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面方向に、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、毎分28℃の昇温速度で、500℃から600℃まで加熱した。次いで、水素ガス、窒素ガス及び硫化水素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル、75ミリリットル及び0.13ミリリットル導入しながら、毎分28℃の昇温速度で、600℃から770℃まで加熱した。これにより、熱処理されたカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面のSEM画像を図7に示す。図7によれば、粒成長した金属ニッケルからなり、粒子径が約30nm(数平均粒子径30nm)である粒状体が表出していることが分かる。
反応管内の温度が770℃に達した後、この温度を保持させながら、0.5時間に渡って、アセチレンガス、水素ガス、窒素ガス及び硫化水素ガスを、それぞれ、毎分50ミリリットル、200ミリリットル、75ミリリットル及び0.13ミリリットル導入した。アセチレンガスを含む混合ガスを導入することにより、炭素が生成し、螺旋状に成長してなるカーボンナノコイルを得た(図8参照)。図8によると、得られたカーボンナノコイルは、炭素繊維の外径が約30nm、コイル径が約150nmであり、サイズの均一性に優れることが分かる。
【0050】
実施例2
実施例1において、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、熱処理する工程以降の工程において、昇温速度を毎分28℃から、すべて、毎分20℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約230nm、コイル径は約700nmであった(表1参照)。
【0051】
実施例3
実施例1において、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、熱処理する工程以降の工程において、昇温速度を毎分28℃から、すべて、毎分40℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約150nm、コイル径は約500nmであった(表1参照)。
【0052】
実施例4
モル比Ni/Si=7とした以外は、実施例3と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約200nm、コイル径は約600nmであった(表1参照)。
【0053】
実施例5
モル比Ni/Si=2とした以外は、実施例3と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約100nm、コイル径は約300nmであった(表1参照)。
【0054】
実施例6
実施例1において、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、熱処理する工程以降の工程において、昇温速度を毎分28℃から、すべて、毎分40℃に代え、炭素繊維を生成させるための、アセチレンガス、水素ガス、窒素ガス及び硫化水素ガスからなる混合ガスの導入量を、それぞれ、毎分60ミリリットル、200ミリリットル、60ミリリットル及び0.08ミリリットルとした以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約50nm、コイル径は約200nmであった(表1参照)。
【0055】
実施例7
モル比Ni/Si=1とした以外は、実施例1と同様にして、粒子径が約200nm(数平均粒子径200nm)である金属ニッケル粒子(粒状金属部)13が、非晶質シリカからなるマトリックス相11に分散してなる(非晶質シリカの表面及び内部並びに孔隙に含まれてなる)カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を得た。
その後、反応管内において、水素ガス及び窒素ガスを、カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5におけるカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面方向に、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、毎分40℃の昇温速度で、500℃から600℃まで加熱した。次いで、水素ガス、窒素ガス及び硫化水素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル、75ミリリットル及び0.13ミリリットル導入しながら、毎分40℃の昇温速度で、600℃から830℃まで加熱し、830℃で1時間保持した。これにより、熱処理されたカーボンナノコイル製造用触媒層1’の表面に、粒成長した金属ニッケルからなり、粒子径が約200nm(数平均粒子径200nm)である粒状体が表出していることが分かった。
反応管内の温度を790℃に調節した後、この温度を保持させながら、1時間に渡って、アセチレンガス、水素ガス、窒素ガス及び硫化水素ガスを、それぞれ、毎分50ミリリットル、200ミリリットル、75ミリリットル及び0.13ミリリットル導入した。アセチレンガスを含む混合ガスを導入することにより、炭素が生成し、螺旋状に成長してなるカーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約250nm、コイル径は約800nmであった(表1参照)。
【0056】
実施例8
モル比Ni/Si=0.5とした以外は、実施例7と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約200nm、コイル径は約600nmであった(表1参照)。
【0057】
実施例9
モル比Ni/Si=0.25とした以外は、実施例7と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。炭素繊維の外径は約150nm、コイル径は約500nmであった(表1参照)。
【0058】
比較例1
実施例1において、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、熱処理する工程以降の昇温速度を、すべて、毎分7℃とした以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した(図10参照)。コイル径が均一なカーボンナノコイルが得られず、主として、炭素繊維の外径が約400nm、コイル径が1,000nm(1μm)を大きく超えるコイルが観察された。尚、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、770℃まで熱処理して得られた熱処理物の表面のSEM画像を図9に示したが、この図9によれば、粒子径が200nmを超える、金属ニッケルからなる粒状体が表出している。また、粒子径の小さな粒状体も表出している。
【0059】
比較例2
実施例1において、水素ガス及び窒素ガスを、それぞれ、毎分200ミリリットル及び75ミリリットル導入しながら、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、熱処理する工程以降の昇温速度を、すべて、毎分54℃とした以外は、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した(図12参照)。炭素繊維の外径は約400nm、コイル径は1,000nm(1μm)を超えていた。尚、カーボンナノコイル製造用触媒層1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を、770℃まで熱処理して得られた熱処理物の表面のSEM画像を図11に示したが、この図11によれば、金属ニッケルからなる細長い粒状体どうしが、非晶質シリカを被覆するように密接していることが分かる。粒状体がこのように存在することで、得られたカーボンナノコイルのコイル径が、1,000nm(1μm)を大きく超えたものと考えられる。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のカーボンナノコイル製造用触媒は、所望のサイズを有するカーボンナノコイルの製造に好適である。
また、本発明により得られる、コイル径が1μm以下のカーボンナノコイルは、微細な粉末が要求される、化粧品添加剤、超薄複合膜等の構成成分として、更には、カーボンナノチューブに匹敵する高い導電性及び機械強度を有し、また、スプリング特性にも優れることから、微小触覚センサ素子等のナノテクノロジー分野、電磁波吸収材等への幅広い応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のカーボンナノコイル製造用触媒を示す概略断面図である。
【図2】本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法において、第1熱処理工程により形成された第1複合膜2を備える第1積層物3を示す概略断面図である。
【図3】本発明のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法において、第2熱処理工程により形成されたカーボンナノコイル製造用触媒層又は第2複合膜1’を備えるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体5を示す概略断面図である。
【図4】本発明のカーボンナノコイルの製造方法において、触媒加熱工程により、カーボンナノコイル製造用触媒層又は第2複合膜1’の表面に触媒粒状体14を表出させてなるカーボンナノコイル製造用触媒付き複合体6を示す概略断面図である。
【図5】カーボンナノコイル付き複合体8を示す概略断面図である。
【図6】カーボンナノコイルの一例を示す概略斜視図である。
【図7】実施例1において得られた、粒成長した金属ニッケルからなる触媒粒状体を示すSEM画像である。
【図8】実施例1において得られたカーボンナノコイルを示すSEM画像である。
【図9】比較例1において得られた、粒成長した金属ニッケルからなる触媒粒状体を示すSEM画像である。
【図10】比較例1において得られた、コイル径が1μmを超えるカーボンマイクロコイルを示すSEM画像である。
【図11】比較例2において得られた、粒成長した金属ニッケルからなる触媒粒状体を示すSEM画像である。
【図12】比較例2において得られた、コイル径が1μmを超えるカーボンマイクロコイルを示すSEM画像である。
【符号の説明】
【0063】
1:カーボンナノコイル製造用触媒
1’:カーボンナノコイル製造用触媒層又は第2複合膜
11:マトリックス相
12:粒状酸化物部
13:粒状金属部
14:触媒粒状体
18:基材
2:第1複合膜
3:第1積層物
5:カーボンナノコイル製造用触媒付き複合体
6:粒成長触媒付き複合体
7:カーボンナノコイル
8:カーボンナノコイル付き複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料からなるマトリックス相と、該マトリックス相に分散され、金属状態の金属Mを含み、且つ、数平均粒子径が、0.5〜100nmである粒状金属部とを備えることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項2】
上記無機材料が非晶質シリカである請求項1に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項3】
上記金属Mが、Ni、Co、Fe、Cu、In、Sn、Pd、Ti、Nb、Au及びPtから選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項4】
上記粒状金属部が、上記金属M、又は、該金属Mを含む固溶体からなる請求項1乃至3のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項5】
上記非晶質シリカを構成するSiと、上記粒状金属部に含まれる金属Mとのモル比M/Siが、0.2以上である請求項2乃至4のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法であって、
無機材料からなるマトリックス相を形成するためのマトリックス形成用化合物と、金属Mを含む化合物とを、有機溶媒に溶解させ、触媒形成用前駆体溶液を調製する前駆体溶液調製工程と、上記触媒形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を、大気雰囲気中、400℃〜800℃の範囲の温度で熱処理し、無機材料からなるマトリックス相と、該マトリックス相に分散された、金属Mの酸化物からなる粒状酸化物部とを有する第1複合膜を形成する第1熱処理工程と、上記第1複合膜を、水素ガスを含む雰囲気中、300℃〜630℃の範囲の温度で熱処理する第2熱処理工程とを、順次、備えることを特徴とするカーボンナノコイル製造用触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のカーボンナノコイル製造用触媒を用いて、螺旋状の炭素繊維からなるカーボンナノコイルを製造する方法であって、
上記カーボンナノコイル製造用触媒を、水素ガスを含む雰囲気中、450℃〜630℃の範囲の温度から、700℃〜900℃の範囲の温度まで、毎分15℃〜45℃の昇温速度で加熱し、該カーボンナノコイル製造用触媒の表面に、金属状態の金属Mからなり、且つ、数平均粒子径が1〜230nmである触媒粒状体を表出させる触媒加熱工程と、上記触媒粒状体を650℃〜900℃の範囲の温度に保持した状態で、気体の炭化水素を含む混合ガスを接触させ、該炭化水素を分解させて、上記触媒粒状体の表面から炭素繊維を巻回成長させるカーボンナノコイル形成工程とを、順次、備えることを特徴とするカーボンナノコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−214021(P2009−214021A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60550(P2008−60550)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物に発表 発行者名:社団法人 日本セラミックス協会 刊行物名:日本セラミックス協会第20回秋期シンポジウム講演予稿集 発行年月日:平成19年9月12日
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(399054000)シーエムシー技術開発 株式会社 (23)
【Fターム(参考)】