説明

カーボンナノチューブの成長に適した触媒の形成方法

【課題】カーボンナノチューブのような単一ナノ構造の成長に適した、金属表面上に触媒ナノ粒子を形成する方法の提供。
【解決手段】少なくとも以下の工程:基板表面の少なくとも一部の上に金属層を有する基板を形成する工程と、少なくとも金属層の上に犠牲層を堆積する工程と、犠牲層に小さな孔を形成して、これにより金属層を露出させる工程と、単一触媒ナノ粒子12を孔の中に形成する工程と、犠牲層を除去する工程と、を含む方法及び、更に、触媒ナノ粒子からのカーボンナノチューブの成長。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の形成と、触媒上に形成されたカーボンナノ構造の形成に関する。
【0002】
本発明は、トランジスタ、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)およびナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)のような半導体デバイス中に少なくとも1つの細長いナノ構造を形成する方法、およびそのような方法で得られたデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ナノワイヤ(NW)やカーボンナノチューブ(CNT)のようなナノ構造は、マイクロエレクトロニクス製造プロセスで現在使用されている材料を拡張し、置き換えさえする最も将来有望な候補の幾つかと認められてきた。例えば、金属CNTは、高い通電容量により、ナノエレクトロニクス相互接続として提案され、一方、半導体CNTは、広い範囲のバンドギャップにより、ナノスケールトランジスタ素子として示されてきた。金属CNTおよび半導体CNTの双方はまた、それらの優れた機械的性質のために、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)およびナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)のための将来有望な構造材料である。ナノ構造の作製はいまだに多くの解決されていない問題に直面し、それらは1つの応用から他の応用で変化するが、類似の形態であるために、これら応用および類似の応用は完全には達成されていない。
【0004】
第1の問題は、所定の方向へのナノ構造の成長に関し、例えば基板の主面に実質的に平行な方向、即ち、基板の主面が平面の場合に主基板の表面に実質的に平行な方向への成長に関する。
【0005】
熱および/またはプラズマエンハンスド化学気相堆積(CVD)は、カーボンナノチューブ(CNT)とそれを囲むパターニングされたデバイスの成長に、拡張的に使用されてきた。しかしながら、それらのCNTを成長するために先端技術で報告されたこの方法は、以下のパラメータ:CNT密度、チップ上(on-chip)の位置、および方位についての予測および制御の1つまたは少なくとも組み合わせのいずれかを欠く。トランジスタ応用や、MEMSおよびNEMSでの使用では、電極のペアの間での水平単一CNT成長(horizontal single CNT growth)を達成することが非常に有利である。
【0006】
従来の方法では、チップ上のCNT密度および位置の制御が、誘電泳動により達成された(R. Krupke et al, Nano Lett., 7(6), 1556, 2007 参照)。これは、液体媒体中に分布させた成長前のCNTを、非均一な電場を用いて表面上に整列させる技術である。これは非標準のプロセス技術であり、非常に良好なコンタクト抵抗を得ることはできない(CNTは、ファンデルワールス力によって積層されるのみである)。CVD中に2つの大きな電極の間のその場電場を用いて、整列したCNTを成長させることが試みられた(例えば、H. Dai et al, App. Phys. Lett., 81 (5), 913, 2002)。また、Si酸化物アイランドをTiN電極上(電極ペアの双方の電極上)に形成することにより、CVDによる局所的な成長が試みられた(Yaakobowitch et al, Proc. MEMS 2010, 432 参照)。触媒粒子は、ここではウエハ上に拡がるが、成長は優先的に酸化物アイランド上で発生する。この文献で示される写真は、CNTがウエハの他の部分でも成長していること、および多くの触媒粒子が双方の電極のSi酸化物アイランド上に存在していることを明確に示し、単一のCNTの成長を現実的でなくしている。更に、Si酸化物は非導電性であるため、CNTがTiN電極に接触する場合にのみ電気コンタクトが達成される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、添付した請求の範囲に記載された方法に関する。
【0008】
本発明の具体例では、平面内にある基板の主表面上の、所定のオンチップ位置上に、単一触媒ナノ粒子を形成する方法が記載される。この方法は、少なくとも以下の工程:
基板を得る工程と、続いて、
(三角形の)導電性電極ペアのアレイを基板上に形成する工程と、続いて、
犠牲層を形成し、電極ペアの電極の1つの上の犠牲層中に小さな孔を形成する工程と、続いて、
Ni、Co、またはFe含有塩から選択された金属塩を含むバスから、電気化学堆積(ECD)を用いて、露出した孔の中に単一触媒ナノ粒子を選択的に形成する工程と、を含む。
【0009】
本発明の第2の形態では、所望の水平アライメントを有するナノ構造を形成(成長)する方法が記載される。水平成長(アライメント)は、例えば、MEMSやNEMS応用でのCNTを使用するために望まれる電極ペアの2つの電極間の隙間を橋渡しするのを可能にする。
【0010】
更に一般的に、本発明は、金属表面上に触媒ナノ粒子を形成する方法に関し、ナノ粒子は、特にカーボンナノチューブのような単一ナノ構造の成長に適し、この方法は少なくとも以下の工程:
基板表面の少なくとも一部の上に金属層を有する基板を形成する工程と、
少なくとも金属層の上に犠牲層を堆積する工程と、
犠牲層に小さな孔を形成して、これにより金属層を露出させる工程と、
単一触媒ナノ粒子を孔の中に形成する工程と、
犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0011】
具体例では、この方法は以下の工程:
基板を形成する工程と、
金属層を形成する、少なくとも1つのペア電極を、基板上に形成する工程と、
少なくとも電極上に犠牲層を堆積する工程と、
電極ペアの電極の1つの上の犠牲層に小さな孔を形成する工程と、
孔の中に単一触媒ナノ粒子を形成する工程と、
犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0012】
小さな孔を形成する工程は、電子ビームまたは先端光学リソグラフィにより行っても良い。犠牲層は、感光性層でも良い。孔は直径が数10ナノメータでも良く、好適には50nmと100nmの間である。
【0013】
具体例では、触媒ナノ粒子の材料は、Ni、Co、Fe、またはそれらの金属のいずれかとMoとの合金である。
【0014】
具体例では、触媒ナノ粒子は、露出した孔の中に選択的に形成される。好適には、ナノ粒子は、硫酸ニッケルのような金属塩とナトリウムを含むバスから電気化学堆積(ECD)を用いて選択的に形成される。
【0015】
具体例では、触媒の材料はNiで、金属層はTiN層であり、
バスは、Ni含有種が0.01Mと1Mの間であるバス中の濃度を有する、Ni含有種を含み、
堆積は基板に与えられる一定電圧で起こり、この電圧は参照電極に対して−1.3Vと−1.8Vの間であり、
堆積は、100msと2sの間の期間で起きる。
【0016】
本発明の方法では、触媒ナノ粒子は、物理気相堆積(PVD)を用いて露出した孔の中に形成されても良い。
【0017】
本発明の方法では、単一ナノ粒子を形成する工程は、以下の工程:
孔の中および/または孔の近傍に、複数のナノ粒子を堆積する工程と、
粒子の融点より高い温度まで基板を加熱し、複数のナノ粒子を合体させて、孔の中で単一ナノ粒子にする工程と、を含んでも良い。
【0018】
具体例では、本発明の方法は更に、化学気相堆積(CVD)チャンバ中で、より好適にはプラズマ強化化学気相堆積(PE−CVD)チャンバ中で、400℃から700℃までの範囲の温度で、触媒ナノ粒子上に単一カーボンナノ構造を成長する工程を含む。
【0019】
CVDプロセスのカーボン源は、AlおよびNのようなキャリアガスを有するまたは有さない、メタン、エチレン、またはアセチレンから選択されても良く、CNT成長は、1torrから4torrまでの範囲の低圧力で、13.56MHzのラジオ周波数プラズマ発生器または遠隔マイクロ波プラズマを用いて行われる。
【0020】
具体例では、金属層は少なくとも1つの電極ペアを含み、ナノ粒子は、電極の1つの上に形成され、ナノ構造はCVDチャンバ中でサンプルホルダーにバイアスを印加することで得られる所望の水平成長を有し、これにより電極の間に局所的な電場を形成する。
【0021】
本発明は、同様に、本発明のいずれかの方法により得ることができる、単一触媒ナノ粒子の上に成長した単一カーボンナノ構造を含む半導体デバイスに関する。本発明のデバイスは、MEMSまたはNEMSデバイスでも良い。
【0022】
本発明の方法は、基板の上で吊り下げられて、自由な動きを可能にする単一ナノ構造(CNT)の達成を可能にする。
【0023】
本発明の方法は、これらに限定されるものではないが、共振器アレイやマイクロ(ナノ)ミラーアレイ用のナノヒンジのような、MEMSやNEMS応用に向けて、大量生産を可能にするプロセス工程を含む優位点を有する。上記目的は、本発明にかかる方法およびデバイスにより達成される。
【0024】
本発明の具体例にかかる方法は拡張性があり、現存の半導体プロセスと完全に互換性がある。
【0025】
更に、本発明の具体例にかかる方法は、直径、成長方向、および長さを制御しながら、CNTのような単一で細長いナノ構造の成長を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
全ての図面は、本発明の幾つかの形態および具体例を示すことを意図する。全ての代替えや選択肢が示されず、それゆえに本発明は添付された図面の内容に限定されない。異なる図面において、同一の数字は類似した部分を参照するために使用される。図面は、好ましい具体例を示す。
【0027】
【図1a】2端子および4端子アレンジメントを含む配置と本発明の具体例にかかる方法で使用される電極のアレイを備えた三角構造を示す。
【図1b】2端子および4端子アレンジメントを含む配置と本発明の具体例にかかる方法で使用される電極のアレイを備えた三角構造を示す。
【図1c】2端子および4端子アレンジメントを含む配置と本発明の具体例にかかる方法で使用される電極のアレイを備えた三角構造を示す。
【図2】200nmウエハ規模上での、テンプレート電極構造の作製に使用できる好適な材料のスタックを示す。
【図3】最初に電極構造(ペア)を含む材料のスタック上に感光性層を形成する工程を示す。
【図4】(チップ上の)電極の1つの所定の領域の上に小さな孔をパターニングする工程を示す。
【図5】所定の開口部(孔)の中に単一触媒ナノ粒子を形成する工程を示す。
【図6】犠牲層を除去する工程を示す。
【図7】本発明の好適な具体例にかかる触媒ナノ粒子を堆積するために電気化学堆積を行うための(簡単な)セットアップを示す。
【図8】本発明にかかる、TiN電極上の、硫酸ニッケルとクエン酸ナトリウムを含む電気化学バス(pH=6.9)から局所的で制御されたNi堆積のSEM写真を示す。堆積の制限された領域は、複数の電極上で電子ビームリソグラフィを用いて、直径70nmの孔を露出させることにより達成された。
【図9】触媒ナノ粒子上に単一CNTを堆積させ、CNTの成長が水平かつ基板の表面に平行で、反対側の電極に向かう工程を示す。
【図10a】CNT成長中のサンプルホルダのバイアス印加がCNTの指向性成長となる、2つの可能性のある場合を示す。
【図10b】CNT成長中のサンプルホルダのバイアス印加がCNTの指向性成長となる、2つの可能性のある場合を示す。
【図11】本発明の好適な具体例にかかる、例えば電極ペアの2つの電極間の隙間の橋渡しが可能な、単一CNTの水平成長(アライメント)を示す。
【図12a】本発明の好適な具体例にかかる電気化学堆積により堆積した単一Niナノ粒子からの局所的なCNT成長を示す。
【図12b】本発明の好適な具体例にかかる電気化学堆積により堆積した単一Niナノ粒子からの局所的なCNT成長を示す。
【図12c】本発明の好適な具体例にかかる電気化学堆積により堆積した単一Niナノ粒子からの局所的なCNT成長を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、特定の具体例について所定の図面を参照しながら記載されるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は、単に模式的であり限定的ではない。図面において、図示目的で、いくつかの要素の大きさは拡張され、縮尺通りに記載されていない。寸法と相対寸法は、本発明の実施の実際の縮小には対応していない。
【0029】
ここで提供される説明では、多くの特定の細部が明記される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特定の細部無しに実施できることが理解される。他の例では、この発明の理解を不明確にしないために、公知の方法、構造、および技術は、詳細には示されない。
【0030】
本発明は、本発明の具体例の詳細な説明により記載される。本発明の他の具体例が、本発明の真実の精神または技術的な示唆から離れることなく、当業者の知識により構成できることは明白であり、本発明は添付した請求の範囲の文言によってのみ限定される。
【0031】
本発明は、金属表面上に触媒ナノ粒子を形成する方法に関し、ナノ粒子は、単一ナノ構造、特にカーボンナノチューブの成長に適している。この方法は、少なくとも以下の工程:
基板表面上に金属層を有する基板を形成する工程と、
金属層の上に犠牲層を堆積する工程と、
犠牲層に小さな孔を形成して、これにより金属層を露出させる工程と、
単一触媒ナノ粒子を孔の中に形成する工程と、
犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0032】
好適な具体例では、基板は好ましくは半導体基板であり、金属は、少なくとも1つのペアの平面電極の形態で形成される。犠牲層が続いて電極上に堆積され、好適には残りの基板表面の上にも堆積される。続いて犠牲層が電極上に堆積され、好適には残りの基板表面上にも堆積される。小さい孔が、電極の1つの上の犠牲層に形成される。この具体例は、カーボンナノチューブ(CNT)のようなカーボンナノ構造の成長に適した触媒ナノ粒子を形成することを主な目的とし、この構造は、電極ペアの一の電極から他の電極に、指向的に成長する(後述)。この説明の残りは、平面電極を含む好適な具体例に基づく。内容に示されたり、明らかでない限り、本説明は、平面電極ペアを含まない具体例に対しても有効である。
【0033】
好適な具体例では、電極は三角形状である。図1に示すように、電極は、(三角形の)電極ペアの1またはそれ以上のアレイを形成しても良い。基板上に1またはそれ以上の(アレイ状)電極ペアを形成する工程は、好ましくは、これらには限定されないが遠紫外(DUV 248nm)リソグラフィのような、光学リソグラフィを用いて行われる。触媒堆積とその後のCNT成長のためのテンプレートとして使用される電極構造は、触媒のウエハ規模の電気化学堆積(ECD)およびこれによるCNTのCVD(PE−CVD)が、それぞれの電極ペアについて1つの電極上で行われる。電極ペアは、半導体ウエハ(例えば、200mmまたは300mmのウエハ規模)上に形成され、二酸化シリコンやアモルファスシリコンカーバイドのような絶縁下層の上に、これらと接触して配置される、例えばTiN、Pt、またはPdのような金属層を含み、またはからなるものでも良い。図2は、電極の形成に使用される材料のスタックを示す。即ち、ベース基板1(例えばSiウエハ)、第1SiO層2、Al層3、第2SiO層4、SiC層5(即ち絶縁下層)、および電極ペア6、7である。Al層は、コンタクトプラグ9を介した接続を形成して、基板上にコンタクト領域8を形成するために存在する。この技術分野で知られた好ましい技術は、図2に示されるような基板の作製に適用することができる。
【0034】
図2に示される基板上に、図3のように犠牲層10が堆積される。これは感光性層でも良い。しかしながら、酸化シリコン層のようなフォトリソグラフィ工程でパターニングできる好適な層でも良い。
【0035】
次の工程(図4)では、電極6の1つの上の所定の位置の上に、犠牲層10中に小さな孔が形成される。電極ペアの電極の1つの上に小さな孔を形成する工程は、電子ビームまたは先端光学リソグラフィ(例えば、193nmリソグラフィ)により、即ち感光性層10に孔をパターニングすることにより行っても良い。小さな孔は、好適には、直径が数10ナノメータであり、好適には50〜100nmの範囲であり、例えば70nmである。
【0036】
CNT成長に必要とされる触媒は、小さな孔により規定される予め形成された電極構造の上の特定の位置でのみ必要とされる。図5は、所定の孔の中に単一触媒ナノ粒子12を選択的に形成する工程を示す。
【0037】
好適な具体例では、触媒ナノ粒子の材料は、Ni、Co、Feまたはそれらの金属のいずれかとMoとの合金である。触媒ナノ粒子12は、硫酸ニッケルのような金属塩とナトリウムを含むバスから、電気化学堆積(ECD)を用いて露出した孔の中に形成しても良い。触媒(金属)材料の堆積は、露出した金属領域のみで、即ち選択的に起きる。
【0038】
電気化学堆積プロセスは、好適には、硫酸ニッケルや硝酸ニッケルのような金属塩と、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム、またはそれらの組み合わせのような支持電解質の存在を含む水溶液中に、金属電極層を浸責する工程を含む。一定の負のDC電位、または一定の負電流が電気回路(金属電極と(例えばNi)水溶液を意味する)に与えられ、これは電極の表面上で、溶液からそれらの金属形態(例えばNi)に、金属(例えばNi)イオンが還元されるのを支援する。続いて、以下の反応(1)が、硫酸ニッケルまたは硝酸ニッケルを含むバス中で起きる。
【0039】
Ni2+(aq)+2e → Ni(s) (1)
【0040】
図6は、Ni粒子のECD堆積に使用できるセットアップを示す。電極ペアを備える基板20は、電流源30を介して対電極21に接続され、更に電圧源31を介して参照電極22に接続される。本発明の方法で適用されるECDプロセスは、公知のECDツール中で公知のECDプロセス技術により行うことができる。
【0041】
触媒ナノ粒子の堆積後に、図7のように犠牲層は除去される。例えばTiNの上に堆積されたNiの場合は、電子ビームレジストを溶解するが、堆積されたNiを攻撃しないアセトンを用いてサンプルを洗浄することにより除去される。
ECD堆積工程中に堆積された触媒の量は以下の工程:
ECDバス中の触媒の濃度を(制限することにより)最適化する工程および/または、
一定電圧での堆積の場合は、堆積電位と時間を最適化し、または一定電流での堆積の場合は、堆積電流と電荷を最適化する工程、
により制御することができる。
【0042】
Niが触媒で、TiNが電極材料の場合、最適値が上記パラメータに対して確立され、これは、図8に示すような単一Niナノ粒子の堆積を可能にする。バス組成は、0.1M NiSO+0.1M Na(pH=6.9;Mはモル濃度を表すのに使用される。1M=1mol/liter=10mol/m)であった。犠牲層はPMMA層(ポリメチルメタクリレート)であった。堆積が制限された領域は、複数の電極上で電子ビームリソグラフィを用いて直径70nmの孔を露出させることにより達成された。堆積中に与えられた電位は、参照電極と比較して−1.65Vであった。堆積時間は500msであった。使用できる他のバス組成は、
Ni(NO)+NaCl+NHCl:pH=8.3(硝酸バス)
である。
【0043】
それらのパラメータのより広い範囲は、TiN上へのNiの堆積のための、好適な具体例を規定する。即ち、
Ni種(NiSOまたはNi(NO)の濃度:0.01Mと1Mの間
電圧:参照電極に比較して−1.3Vと−1.8Vの間
堆積時間:100msと2秒の間
である。
それらの範囲内でパラメータが適用された場合、1またはそれ以上のナノ粒子が孔の中に堆積される。パラメータが上記範囲内に有るが、完全に最適化されていない場合、1より多くのナノ粒子が堆積されるかもしれない。1より多くのナノ粒子が堆積される他の理由は、レジスト層中のピンホールである。
【0044】
1より多くのナノ粒子が堆積された場合、本発明の好適な具体例にかかる補足の処理が適用される。補足の処理は、犠牲層の除去後に行われる。その目的は、多くのナノ粒子を単一粒子に合体させることである。この補足の処理は好適には加熱工程であり、(バルク触媒材料の融点より低い)触媒ナノ粒子の融点より高い温度に、基板が加熱される。2または少数のECD堆積されたNi粒子が、互いに近接した状態を仮定する。この状態が加熱された場合、ナノ粒子が溶けて、溶融状態では、Ni−TiNボンドよりNi−Niボンドを形成する傾向にあるため、ナノ粒子は合体しより大きな粒子を形成する傾向にある。これは一般的な効果ではなく、基板の選択に依存する。補足工程はまた、プラズマ処理でも良い。
【0045】
他の具体例では、触媒ナノ粒子の堆積が、ECDの代わりに物理気相堆積工程で起こる。例えば、1nmまたは2nmの膜厚のNi層は、PVDツール中で、この技術分野で知られたPVDプロセス技術により、下層の金属層(好適には電極)がその中で露出する孔11を有する犠牲層10の上に、PVDで堆積できる。犠牲層(好適にはレジスト層)を剥離した後、適当なマスクデザインが適用されたPVDプロセスは、(小さな孔により規定された)選択された領域中の、触媒堆積となり、これは、孔の中に「ナノ粒子を形成する」工程の他の具体例である。ECDプロセスのように、PVDプロセスは、1つより多くのナノ粒子が堆積されることになるかもしれない。ECDで触媒を堆積する場合のように、PVDで触媒ナノ粒子が作製された後に、補足の熱工程またはプラズマ工程が適用されても良い。
【0046】
電極ペアの電極の1つの上への単一カーボンナノチューブの成長は、堆積サイトあたり1つのナノ粒子を堆積するか、ナノ粒子の十分に小さいクラスタを堆積するために、電気化学堆積プロセスを最適化することにより達成され、これは、CNT成長前のその場熱(またはプラズマ)処理中に、1つのナノ粒子に合体させる。
【0047】
本発明の第2の形態では、所望の水平アライメントを有するナノ構造(CNT)13を形成(成長)する方法が記載される(図9参照)。水平成長(アライメント)は、例えば(図9に示すように)電極ペアの2つの電極間の隙間の橋渡しを可能にし、これはMEMSおよびNEMS応用での使用で望まれる。
【0048】
ナノ構造(単一CNT)の成長は、それ自身、好適には低圧化学気相堆積(CVD)チャンバ中で、より好適にはプラズマ強化化学気相堆積(PE−CVD)チャンバ中で、400℃から700℃の温度範囲で行われる。(PE−CVD)プロセスのカーボン源は、好適には、AlやNのようなキャリアガスを有するメタン、エチレン、またはアセチレンから選択される。CNT成長は、一般的には、1torrから4torrまでの範囲の低圧力で行われる。成長チャンバ中で使用されるプラズマは、13.56MHzのラジオ周波数プラズマ発生器により、または遠隔マイクロ波プラズマにより形成される。
【0049】
水平成長はこの分野で知られた以下の技術:
電極構造の接続された電気ワイヤの助けを用いて局所的に電場を与える工程、または
成長チャンバ中で、電極構造の間に、プラズマにより形成されたその場電場を使用することによる、
いずれかにより達成できる。
【0050】
本発明の好適な具体例では、水平成長は、PE−CVDチャンバ中でサンプルがその上に配置されるステージ(即ちホルダー)にバイアスを与えることにより達成され、これにより電極の間に局所的な電場を形成する。(Si)基板の上で働く電極バイアスは、水平アライメントを誘起するCNT成長サイトでの局所的な電場の形成を助ける。これは、図10aおよび図10bに示される。図10aの場合、電極6、7は、シリコン基板1の上に存在する酸化物層2の上に堆積される。このスキームでは、(PE)CVDチャンバのウエハホルダーを介してSi基板がバイアスされた場合、電極の双方が、容量的に(capacitively)基板に接続され、電極の形状(三角形状)のために、電場が先端周辺に集中する。図10bの場合、電気接続40は、電極6とシリコン基板1との間に存在する。このスキームでは、Si基板が(PE)CVDチャンバのウエハホルダーを介してバイアスされた場合、電極6(および、それに接続された可能性のある電極)もまた、基板を通してバイアスされ、他のフローティング電極7は、容量的に基板に接続され、これにより電極間に局所的に電場を形成する。
【0051】
成長チャンバ中のステージ(またはサンプルホルダー)は、DC電圧を用いてバイアスされても良い。
【0052】
図9および図11は、(パターニングされた感光性層10を除去した後に)触媒ナノ粒子上に単一CNTを成長させる工程を示し、これによりCNTの成長は、水平で基板の表面に対して平行になり、対向電極に向かう。図11は、単一CNTの水平成長(アライメント)を示し、例えば電極ペアの2つの電極の間の隙間の橋渡しが可能となる。
【0053】
2つの対向電極間での単一CNTの(指向性)成長による、2つの対向電極の間の隙間の橋渡しは、吊り下げられたダブルクランプされた(double clamped)CNTとなり、これは、対向電極の間で拡がる隙間の間で自由に動く共振器として働くことができる。この形状は、これらに限定されるものではないが、共振器アレイまたはマイクロ(ナノ)ミラーアレイ用のナノヒンジのような多くの実用的なMEMS(NEMS)応用での使用に適している。
【0054】
例えば450℃のような低温での、CNTの成長のためのプラズマ強化化学気相堆積(PE−CVD)の使用は、このプロセスが上述のIC集積に適し、Siバックエンドオブラインプロセスと互換性を有するという長所を有する。
【0055】
図12は、本発明の好適な具体例にかかる電気化学堆積により堆積した単一Niナノ粒子からの局所的なCNT成長を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面上に触媒ナノ粒子(12)を形成する方法であって、ナノ粒子は、特にカーボンナノチューブのような単一ナノ構造(13)の成長に適し、この方法は少なくとも以下の工程:
基板表面の少なくとも一部の上に金属層を有する基板(1)を形成する工程と、
少なくとも金属層の上に犠牲層(10)を堆積する工程と、
犠牲層に小さな孔(11)を形成して、これにより金属層を露出させる工程と、
単一触媒ナノ粒子(12)を孔の中に形成する工程と、
犠牲層(10)を除去する工程と、を含む方法。
【請求項2】
基板(1)を形成する工程と、
金属層を形成する、少なくとも1つのペアの電極(6、7)を、基板上に形成する工程と、
少なくとも電極上に犠牲層(10)を堆積する工程と、
ペアの電極の1つの電極上の犠牲層に小さな孔(11)を形成する工程と、
孔の中に単一触媒ナノ粒子(12)を形成する工程と、
犠牲層を除去する工程と、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
小さな孔を形成する工程は、電子ビームまたは先端光学リソグラフィにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
犠牲層(10)は、感光性層である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
孔は、直径が数10ナノメータであり、好適には50nmと100nmの間である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒ナノ粒子の材料は、Ni、Co、Fe、またはそれらの金属のいずれかとMoとの合金である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒ナノ粒子は、露出した孔の中に選択的に形成される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ナノ粒子は、硫酸ニッケルのような金属塩とナトリウムとを含むバスから電気化学堆積(ECD)を用いて形成される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒の材料はNiであり、金属層はTiN層であり、
バスはNi含有種を含み、0.01Mと1Mとの間のNi含有種のバス中の濃度を有し、
堆積は基板に与えられる一定電圧で起こり、この電圧は参照電極に対して−1.3Vと−1.8Vとの間にあり、
堆積は、100msと2sの間の期間で起きる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒ナノ粒子は、物理気相堆積(PVD)を用いて露出した孔の中に形成される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
単一ナノ粒子を形成する工程は、
孔の中および/または孔の近傍に、複数のナノ粒子を堆積する工程と、
粒子の融点より高い温度まで基板を加熱して、複数のナノ粒子を合体させて、孔の中で単一ナノ粒子にする工程と、を含む請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
更に、化学気相堆積(CVD)チャンバ中で、より好適にはプラズマ強化化学気相堆積(PE−CVD)チャンバ中で、400℃から700℃までの範囲の温度で、触媒ナノ粒子上に単一カーボンナノ構造(13)を成長する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CVDプロセスのカーボン源は、AlおよびNのようなキャリアガスを有するまたは有さない、メタン、エチレン、またはアセチレンから選択され、CNT成長は、1torrから4torrまでの範囲の低圧力で、13.56MHzのラジオ周波数プラズマ発生器または遠隔マイクロ波プラズマを用いて行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
金属層は、少なくとも1つの電極のペア(6、7)を含み、ナノ粒子(12)は電極の1つの上に形成され、ナノ構造(13)はCVDチャンバ中でサンプルホルダーにバイアスを印加することで得られる所望の水平成長を有し、これにより電極の間に局所的な電場を形成する請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法により得られる、単一触媒ナノ粒子の上に成長した単一カーボンナノ構造(13)を含む半導体デバイス。
【請求項16】
デバイスは、MEMSまたはNEMSデバイスである請求項15に記載のデバイス。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【公開番号】特開2012−11374(P2012−11374A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−101793(P2011−101793)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】