カーボンナノチューブを含む導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板
【課題】カーボンナノチューブの固有特性を失うことなく、電気伝導度に優れ、上記カーボンナノチューブを用いて印刷回路基板のX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションを同時に実現することができるカーボンナノチューブを含む導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含むことを特徴とする導電性ペーストである。
【解決手段】カーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含むことを特徴とする導電性ペーストである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含む導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器や部品の素子間の接続及び上/下層の電気的接続には、比抵抗特性及び経済的な側面から銅(Cu)を主として使用している。実験の結果からは、実現された回路線幅の断面積がバルク金属内の電子の平均自由行程(Mean Free Path、以下、MFPともいう)より小さい場合には、回路内における比抵抗が金属が本来持っている比抵抗より大きく増加すると知られている。
【0003】
銅のMFPは40nmであり、理論的にこの値より小さな断面積を有する回路を実現する場合には、銅の本来の比抵抗特性を期待することはできない。これは文献によれば、電子表面散乱及び結晶粒界散乱によるとされている。すなわち、銅のような金属導電性ペーストは微細回路に適用することが困難であり、上記金属導電性ペーストを代替可能なペーストの必要性が高まっている。
【0004】
カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)の直径は、通常数nmであるため、超微細配線に適用するのに有利である。また、カーボンナノチューブの最大許容電流は銅に比べて約1000倍大きい(銅:106A/cm2、CNT:1010A/cm2)ので、銅のような金属の代わりにカーボンナノチューブを、回路基板の信号配線(X−Yインターコネクション)及び回路基板上下部の銅箔信号層(Z−インターコネクション)を接続する工程に用いるための研究が盛んであった。
【0005】
上記X−Yインターコネクションを実現するために、AFM(Atomic Force Microscopy)チップを用いて、カーボンナノチューブに人為的な力を加えることにより所望するパターン形態のカーボンナノチューブを得ようとする試みがあった。しかし、カーボンナノチューブを曲げる過程にてカーボンナノチューブの固有特性である軟性や弾性などが失われてしまう問題があった。このために、現在、X−Yインターコネクションを実現するための研究はあまり進んでいない。
【0006】
一方、回路基板の上下部の銅箔信号層を接続させるZ−インターコネクションについての研究は相対的に活発に行われている。Z−インターコネクションを実現するためには、カーボンナノチューブを所定高さまで成長させるが、このような成長には、通常化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、CVDともいう)を用いている。
【0007】
しかし、上記CVD工程を用いると、i)500〜800℃の高い工程温度が要求され、ii)高い工程温度のため、基材として用いられる物質が限定され、iii)バッチプロセスにより電子製品を大量生産するために必要とされる時間、すなわち、リードタイムが増加し、iv)真空チャンバ内で作業が行われるので、作業サイズが制限され、また、v)製造工程が高価であるという短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来技術の問題点を解決するために、本発明は、カーボンナノチューブの固有特性を失うことなく、電気伝導度に優れ、上記カーボンナノチューブを用いて印刷回路基板のX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションに同時に実現することができる導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、本発明はカーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含む導電性ペーストが提供される。
【0010】
本発明の一実施例では、上記導電性ペーストは上記カーボンナノチューブを70〜90重量%、上記低融点金属合金を1〜25重量%、及び上記バインダを1〜15重量%含むことができる。
【0011】
上記導電性ペーストは金属粒子をさらに含むことができ、上記金属粒子を1〜10重量%含むことができる。
【0012】
上記金属粒子は、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0013】
上記カーボンナノチューブは、単一壁、多重壁、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0014】
上記低融点金属合金は、スズ、銀、ビスマス、インジウム、及びカドミウムからなる群より選ばれる2種以上を含む合金であることができる。
【0015】
上記低融点金属合金は、スズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種であることができる。
【0016】
上記スズ/ビスマス合金はスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、上記ビスマス/スズ/カドミウム合金はビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ合金はインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ/ビスマス合金はインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%、及びビスマス25〜45重量%からなる合金であることができる。
【0017】
上記バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0018】
上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0019】
上記熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0020】
上記導電性ペーストは、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、前述した導電性ペーストを含む印刷回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるカーボンナノチューブ及び低融点金属合金を含む導電性ペーストは比抵抗が減少して電気伝導度に優れる。また、本発明による導電性ペーストはカーボンナノチューブの固有特性を失うことなく、上記カーボンナノチューブを用いて印刷回路基板のX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションに同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図2】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図3】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図4】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す順序図である。
【図5】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図13】実施例1に対するTCの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図14】実施例1に対するHASTの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図15】実施例1に対するLLTSの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図16】実施例1に対するハンダスポットの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図17】一般的なX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カーボンナノチューブは、下記表1に示すように他の物質に比べて電気的特性に優れる。
【表1】
【0025】
上記表1に示すように、カーボンナノチューブはアルミニウム及び銅などのように比較的電気伝導性や比抵抗に優れた金属物質よりも電気的性質にさらに優れる。したがって、このようなカーボンナノチューブを導電性ペースト材料として用いると、回路パターンの層間の電気的導通時に発生する抵抗を低めることができる。また、熱伝導度も優れて、印刷回路基板内部の熱を外部に効果的に放出することができる。
【0026】
本発明では、上記カーボンナノチューブ及び低融点金属合金(Low Melting Point Alloy:LMPA)を使用する。この場合、低融点金属合金の溶融作用により低融点金属成分とカーボンナノチューブとの結合が可能となる。これと共に低融点金属合金、カーボンナノチューブ、及び基板の銅箔層との金属結合も可能となる。このような金属結合により、本発明による導電性ペーストは比抵抗が減少し電気伝導度が向上される。
【0027】
従来の穴埋め工程においてはペーストの比抵抗及び電気抵抗の面で問題があった。この問題を解決するために、穴の内壁を無電解または電解メッキして電気導通用金属層を形成した後にペーストを満たす工法を用いた。
【0028】
本発明における導電性ペーストは、カーボンナノチューブ及び低融点金属合金を含有するので、上記金属粒子とカーボンナノチューブ界面との金属反応により上記問題を解決することができる。また、本発明の導電性ペーストは、200℃以下の低温ではカーボンナノチューブの固有性質を失うことなく、印刷工程でX−Y及びZ−インターコネクションを同時に実現することができる。通常、上記X−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションは、図17に示すようなインターコネクションを意味する。
【0029】
本発明による導電性ペーストは、カーボンナノチューブ、低融点金属合金、及びバインダを含むことができる。
【0030】
本発明の一実施例では、上記導電性ペーストがカーボンナノチューブを70〜90重量%、低融点金属合金を1〜25重量%、及びバインダを1〜15重量%含むことができる。上記カーボンナノチューブの重量が70重量%未満あるいは90重量%を超えると、パーコレーション理論によりカーボンナノチューブの電気伝導特性が発生されないことがある。また、上記低融点金属合金が1重量%未満であると、固溶可能な金属量が少ないため、所望する固溶体(Inter Metallic Compound、IMC)が形成されなく、25重量%を超えると、スズによる酸化問題が発生することがある。そして、上記バインダの含量が1重量%未満であると接着効果が低下され、15重量%を超えると電気伝導度が減少するという問題が発生することがある。
【0031】
上記導電性ペーストは金属粒子をさらに含むことができ、1〜10重量%含むことが好ましい。上記金属粒子が1重量%未満あるいは10重量%を超えると浸透理論により伝導特性が発生しないことがある。
【0032】
上記金属粒子は、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。上記金属粒子の酸素含有量は0.1〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜2.5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜2重量%である。この範囲内では、金属粒子の耐イオンマイグレーション性、導電性、導電接続信頼性、バインダへの分散性が良好である。
【0033】
本発明の一実施例で上記カーボンナノチューブは単一壁、多重壁、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0034】
本発明で使用する低融点金属合金とは融点が200℃以下である合金組成物をいう。上記低融点金属合金の融点が低いため、後述するバインダより先に溶けてカーボンナノチューブと基板の銅箔層との接触が可能となる。
【0035】
すなわち、本発明の低融点金属合金は、カーボンナノチューブ相互間の接触抵抗を減少させ、銅箔層(基材)との金属結合を誘導して上記基材の接触抵抗を減少させる役割をする。さらに、低融点金属粒子の溶融作用により金属成分間の金属結合も可能となって比抵抗を減少させる役割もする。
【0036】
本発明の一実施例で上記低融点金属合金は、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、銀(Ag)、及びカドミウム(Cd)からなる群より選ばれる2種以上を含む合金であることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
具体的に、本発明による低融点金属合金はスズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
具体的に、上記スズ/ビスマス合金はスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、上記ビスマス/スズ/カドミウム合金はビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ合金はインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ/ビスマス合金はインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%及びビスマス25〜45重量%からなる合金であることができる。
【0039】
さらに具体的に、本発明で使用するのに好ましい低融点金属合金の例としては、42Sn/58Bi(数字は重量%を示し(以下同じ)、MP(融点)=141℃)、53Bi/26Sn/21Cd(MP=103℃)、70In/30Sn(MP=126℃)、及び50In/50Sn(MP=117℃)、10In/53Sn/37Bi(MP=100〜123℃)などが挙げられる。
【0040】
上記低融点金属合金は、既に商用化されているものを購入して使用することができる。具体的な商品としては、MCP Group、Lowden Metals Ltd.、RotoMetals Inc.、三井金属鉱業(株)、千住金属工業(株)、DUKSAN HI−METAL Co.,Ltd.などで販売する低融点金属製品が挙げられる。
【0041】
本発明の一実施例で上記バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明においてはエポキシ樹脂が最も好ましい。
【0043】
上記熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
本発明による導電性ペーストは、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤はその目的や用途に応じて適当量を添加すればよい。本発明では1〜7重量%を添加することが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
上記酸化物除去剤は、スズなどが酸化された場合、低融点金属合金表面の酸化物を除去することができる。上記酸化物除去剤の例としては、ロジン系フラックス、有機系フラックス、及び表面処理剤などの物質が挙げられる。上記酸化物除去剤は、現在商用化されている。また、アジピン酸、ステアリン酸などのカルボン酸類やビニールエーテルなども酸化物除去剤として利用することができる。
【0046】
上記無機充填剤を添加すると、本発明による導電性ペーストの熱膨脹率を低めることができる。上記無機充填剤としては、平板状や無定形などのシリカ、アルミナ、タルク、珪藻土、ナノフィラーなどがある。
【0047】
図1〜図3は、本発明による導電性ペーストの動作原理を示すものである。図1には、銅箔層の間に本発明による導電性ペーストが充填されている。低融点金属合金の融点の温度範囲、例えば150〜250℃で印刷工程及び仮乾燥/本乾燥の順次硬化工程が行われる。
【0048】
図1は、仮乾燥工程を示している。仮乾燥条件(80〜100℃)では、バインダ14の架橋結合が始まり、これにより低融点金属合金粒子13は銅箔層11及びカーボンナノチューブ12と互いに接触する。次に、図2に示すように、低融点金属合金粒子13の融点温度が含まれた本乾燥条件(100〜168℃)では、低融点金属粒子が溶けながらカーボンナノチューブ12及び銅箔層11と金属結合を形成する。図2で、バインダは半硬化状態にある(B−stage)。次に、図3に示すように、バインダは、積層工程で完全に硬化される(C−stage)。
【0049】
特に、本発明による低融点金属合金のうちのスズを主成分とする合金粒子を使用すると、共融特性から、導電性ペーストの一括積層時の絶縁距離(波状)不良を解決することができる。また、上記スズの共融特性から、上下銅箔層の層間整合性がよくなるという長所がある。
【0050】
図1〜図3に示すように、本発明の導電性ペーストは低融点金属合金粒子の溶融作用により金属成分間の金属結合が可能となり、銅箔層と金属粒子との間の金属結合も可能となる。このような金属結合により比抵抗及び接触抵抗が減少することになる。したがって、本発明の導電性ペーストは、従来の導電性ペーストが有する問題点、すなわちバインダ成分のために比抵抗が増加するという問題点を解決することができる。
【0051】
また、本発明の導電性ペーストは、カーボンナノチューブと接触する面でカーボンナノチューブとの金属反応が起こるので、印刷工程でX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションを同時に実現できるという長所がある。
【0052】
さらに、本発明の導電性ペーストは、150〜200℃の温度でカーボンナノチューブを使用するので、 高温でCVDなどの方法でカーボンナノチューブを成長させる際に発生する様々な問題点を解決することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態によれば、本発明は上述した導電性ペーストを用いて印刷回路基板を提供する。具体的に、本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法が図4〜図12に示されている。上記図面に示された製造方法は例示に過ぎなく、上記図面に示された印刷回路基板の他、多様な印刷回路基板に本発明による導電性ペーストを使用できることは明らかである。
【0054】
図4のステップS10で、図5に示すように、エッチングレジストフィルム22を銅張積層板21に積層する。次に、ステップS20で、図6に示すように、露光及び現像を行い、ステップS30で、図7に示すように、回路パターンを形成し、ステップS40で、図8に示すように、絶縁層23を積層する。次に、ステップS50で、図9に示すように、レーザを用いてビアホール25を形成し、無電解メッキでメッキ層24を形成する。その次に、ステップS60で、図10に示すように、エッチングレジストフィルム26を積層し、ステップS70で、図11に示すように、回路パターンに対応するようにエッチングする。次に、ステップS80で、図12に示すように、印刷工程で本発明によるカーボンナノチューブを含んだCNTペースト27をビアホールなどに充填してビア28を形成する。
【0055】
本発明の導電性ペーストは、多層印刷回路基板にも適用可能である。その他、本発明の導電性ペーストは、パッド一体型印刷回路基板あるいはランドレス印刷回路基板などの多様な基板に応用可能である。
【0056】
本発明は下記の実施例を通してより理解でき、下記の実施例はただ本発明の例示に過ぎなく、添付した特許請求の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1〜7及び比較例1
多重壁カーボンナノチューブ(Iljin社製)を硝酸:硫酸=1:3の割合の溶液に120℃で、10時間浸して置いた。その次に、上記カーボンナノチューブを蒸溜水で洗浄し、下記表2のような低融点金属合金(LMPA)を準備した。そして、下記表3のような組成の導電性ペーストに硬化剤を混合し、3本ロールミルを用いて製造した。
【0058】
次に、厚さ18μmの電解銅箔のマット面にスクリーン印刷法を用いて実施例1〜7及び比較例1のペーストを塗布し乾燥する過程を5回繰り返して、底面直径150μm、高さ187μmの円錐状のバンプを形成した。その上にプリプレグBを1枚おき、プリプレグを貫通させた後、その上に厚さ18μmの電解銅箔をマット面を下向きにして配置し、その両外側の厚さ2mmのステンレス板で、180℃、20kgf/cm2、2mmHgの真空下で90分間積層成形した両面銅張板を得た。この表面に回路を形成してデージーチェーンを形成した。次に、4探針プローブで上記デージーチェーン両端の抵抗を測定した後、その値をチェーン内のバンプ数24で除してバンプ一つ当たりの最小初期抵抗値を測定した。このとき、接触抵抗は無視した。その結果を下記の表3に示す。
【表2】
【表3】
【0059】
(信頼性評価)
上記実施例1の導電性ペーストに対して、熱サイクル試験(TC:Thermal Cycle)、高度加速温度/湿度試験(HAST: High Accelerated Temperature/Humidity Test)、液槽熱衝撃試験(LLTS: Liquid to Liquid thermal shock)、及びハンダスポット(Solder spot)などの信頼性評価を行い、その結果を図13〜図16に示す。図13〜図16に示すように、信頼性評価の基準である初期抵抗に対する抵抗の変化率が±10%内を満足することが分かる。上記信頼性評価は、通常、信頼性テストに用いられる装備で行われた。
【0060】
上記実施例及び比較例から分かるように、本発明による導電性ペーストは抵抗値が低いため、電気伝導度に優れたことが分かる。
【0061】
本発明の単純な変形または変更は、当該技術分野で通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれるものと見ることができる。
【符号の説明】
【0062】
11 銅箔層
12 カーボンナノチューブ
13 低融点金属合金
14 バインダ
21 銅張積層板
22、26 エッチングレジスト
23 絶縁層
24 メッキ層
25 ビアホール
27 CNTペースト
28 ビア
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含む導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器や部品の素子間の接続及び上/下層の電気的接続には、比抵抗特性及び経済的な側面から銅(Cu)を主として使用している。実験の結果からは、実現された回路線幅の断面積がバルク金属内の電子の平均自由行程(Mean Free Path、以下、MFPともいう)より小さい場合には、回路内における比抵抗が金属が本来持っている比抵抗より大きく増加すると知られている。
【0003】
銅のMFPは40nmであり、理論的にこの値より小さな断面積を有する回路を実現する場合には、銅の本来の比抵抗特性を期待することはできない。これは文献によれば、電子表面散乱及び結晶粒界散乱によるとされている。すなわち、銅のような金属導電性ペーストは微細回路に適用することが困難であり、上記金属導電性ペーストを代替可能なペーストの必要性が高まっている。
【0004】
カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)の直径は、通常数nmであるため、超微細配線に適用するのに有利である。また、カーボンナノチューブの最大許容電流は銅に比べて約1000倍大きい(銅:106A/cm2、CNT:1010A/cm2)ので、銅のような金属の代わりにカーボンナノチューブを、回路基板の信号配線(X−Yインターコネクション)及び回路基板上下部の銅箔信号層(Z−インターコネクション)を接続する工程に用いるための研究が盛んであった。
【0005】
上記X−Yインターコネクションを実現するために、AFM(Atomic Force Microscopy)チップを用いて、カーボンナノチューブに人為的な力を加えることにより所望するパターン形態のカーボンナノチューブを得ようとする試みがあった。しかし、カーボンナノチューブを曲げる過程にてカーボンナノチューブの固有特性である軟性や弾性などが失われてしまう問題があった。このために、現在、X−Yインターコネクションを実現するための研究はあまり進んでいない。
【0006】
一方、回路基板の上下部の銅箔信号層を接続させるZ−インターコネクションについての研究は相対的に活発に行われている。Z−インターコネクションを実現するためには、カーボンナノチューブを所定高さまで成長させるが、このような成長には、通常化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:以下、CVDともいう)を用いている。
【0007】
しかし、上記CVD工程を用いると、i)500〜800℃の高い工程温度が要求され、ii)高い工程温度のため、基材として用いられる物質が限定され、iii)バッチプロセスにより電子製品を大量生産するために必要とされる時間、すなわち、リードタイムが増加し、iv)真空チャンバ内で作業が行われるので、作業サイズが制限され、また、v)製造工程が高価であるという短所があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来技術の問題点を解決するために、本発明は、カーボンナノチューブの固有特性を失うことなく、電気伝導度に優れ、上記カーボンナノチューブを用いて印刷回路基板のX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションに同時に実現することができる導電性ペースト及びこれを用いた印刷回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、本発明はカーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含む導電性ペーストが提供される。
【0010】
本発明の一実施例では、上記導電性ペーストは上記カーボンナノチューブを70〜90重量%、上記低融点金属合金を1〜25重量%、及び上記バインダを1〜15重量%含むことができる。
【0011】
上記導電性ペーストは金属粒子をさらに含むことができ、上記金属粒子を1〜10重量%含むことができる。
【0012】
上記金属粒子は、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0013】
上記カーボンナノチューブは、単一壁、多重壁、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0014】
上記低融点金属合金は、スズ、銀、ビスマス、インジウム、及びカドミウムからなる群より選ばれる2種以上を含む合金であることができる。
【0015】
上記低融点金属合金は、スズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種であることができる。
【0016】
上記スズ/ビスマス合金はスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、上記ビスマス/スズ/カドミウム合金はビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ合金はインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ/ビスマス合金はインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%、及びビスマス25〜45重量%からなる合金であることができる。
【0017】
上記バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0018】
上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0019】
上記熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができる。
【0020】
上記導電性ペーストは、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、前述した導電性ペーストを含む印刷回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるカーボンナノチューブ及び低融点金属合金を含む導電性ペーストは比抵抗が減少して電気伝導度に優れる。また、本発明による導電性ペーストはカーボンナノチューブの固有特性を失うことなく、上記カーボンナノチューブを用いて印刷回路基板のX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションに同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図2】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図3】本発明による導電性ペーストの動作原理を示す図である。
【図4】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す順序図である。
【図5】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図11】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法を示す工程図である。
【図13】実施例1に対するTCの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図14】実施例1に対するHASTの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図15】実施例1に対するLLTSの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図16】実施例1に対するハンダスポットの信頼性評価結果を示すグラフである。
【図17】一般的なX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カーボンナノチューブは、下記表1に示すように他の物質に比べて電気的特性に優れる。
【表1】
【0025】
上記表1に示すように、カーボンナノチューブはアルミニウム及び銅などのように比較的電気伝導性や比抵抗に優れた金属物質よりも電気的性質にさらに優れる。したがって、このようなカーボンナノチューブを導電性ペースト材料として用いると、回路パターンの層間の電気的導通時に発生する抵抗を低めることができる。また、熱伝導度も優れて、印刷回路基板内部の熱を外部に効果的に放出することができる。
【0026】
本発明では、上記カーボンナノチューブ及び低融点金属合金(Low Melting Point Alloy:LMPA)を使用する。この場合、低融点金属合金の溶融作用により低融点金属成分とカーボンナノチューブとの結合が可能となる。これと共に低融点金属合金、カーボンナノチューブ、及び基板の銅箔層との金属結合も可能となる。このような金属結合により、本発明による導電性ペーストは比抵抗が減少し電気伝導度が向上される。
【0027】
従来の穴埋め工程においてはペーストの比抵抗及び電気抵抗の面で問題があった。この問題を解決するために、穴の内壁を無電解または電解メッキして電気導通用金属層を形成した後にペーストを満たす工法を用いた。
【0028】
本発明における導電性ペーストは、カーボンナノチューブ及び低融点金属合金を含有するので、上記金属粒子とカーボンナノチューブ界面との金属反応により上記問題を解決することができる。また、本発明の導電性ペーストは、200℃以下の低温ではカーボンナノチューブの固有性質を失うことなく、印刷工程でX−Y及びZ−インターコネクションを同時に実現することができる。通常、上記X−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションは、図17に示すようなインターコネクションを意味する。
【0029】
本発明による導電性ペーストは、カーボンナノチューブ、低融点金属合金、及びバインダを含むことができる。
【0030】
本発明の一実施例では、上記導電性ペーストがカーボンナノチューブを70〜90重量%、低融点金属合金を1〜25重量%、及びバインダを1〜15重量%含むことができる。上記カーボンナノチューブの重量が70重量%未満あるいは90重量%を超えると、パーコレーション理論によりカーボンナノチューブの電気伝導特性が発生されないことがある。また、上記低融点金属合金が1重量%未満であると、固溶可能な金属量が少ないため、所望する固溶体(Inter Metallic Compound、IMC)が形成されなく、25重量%を超えると、スズによる酸化問題が発生することがある。そして、上記バインダの含量が1重量%未満であると接着効果が低下され、15重量%を超えると電気伝導度が減少するという問題が発生することがある。
【0031】
上記導電性ペーストは金属粒子をさらに含むことができ、1〜10重量%含むことが好ましい。上記金属粒子が1重量%未満あるいは10重量%を超えると浸透理論により伝導特性が発生しないことがある。
【0032】
上記金属粒子は、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。上記金属粒子の酸素含有量は0.1〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜2.5重量%であり、さらに好ましくは0.3〜2重量%である。この範囲内では、金属粒子の耐イオンマイグレーション性、導電性、導電接続信頼性、バインダへの分散性が良好である。
【0033】
本発明の一実施例で上記カーボンナノチューブは単一壁、多重壁、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0034】
本発明で使用する低融点金属合金とは融点が200℃以下である合金組成物をいう。上記低融点金属合金の融点が低いため、後述するバインダより先に溶けてカーボンナノチューブと基板の銅箔層との接触が可能となる。
【0035】
すなわち、本発明の低融点金属合金は、カーボンナノチューブ相互間の接触抵抗を減少させ、銅箔層(基材)との金属結合を誘導して上記基材の接触抵抗を減少させる役割をする。さらに、低融点金属粒子の溶融作用により金属成分間の金属結合も可能となって比抵抗を減少させる役割もする。
【0036】
本発明の一実施例で上記低融点金属合金は、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、銀(Ag)、及びカドミウム(Cd)からなる群より選ばれる2種以上を含む合金であることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0037】
具体的に、本発明による低融点金属合金はスズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
具体的に、上記スズ/ビスマス合金はスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、上記ビスマス/スズ/カドミウム合金はビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ合金はインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、上記インジウム/スズ/ビスマス合金はインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%及びビスマス25〜45重量%からなる合金であることができる。
【0039】
さらに具体的に、本発明で使用するのに好ましい低融点金属合金の例としては、42Sn/58Bi(数字は重量%を示し(以下同じ)、MP(融点)=141℃)、53Bi/26Sn/21Cd(MP=103℃)、70In/30Sn(MP=126℃)、及び50In/50Sn(MP=117℃)、10In/53Sn/37Bi(MP=100〜123℃)などが挙げられる。
【0040】
上記低融点金属合金は、既に商用化されているものを購入して使用することができる。具体的な商品としては、MCP Group、Lowden Metals Ltd.、RotoMetals Inc.、三井金属鉱業(株)、千住金属工業(株)、DUKSAN HI−METAL Co.,Ltd.などで販売する低融点金属製品が挙げられる。
【0041】
本発明の一実施例で上記バインダは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0042】
上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明においてはエポキシ樹脂が最も好ましい。
【0043】
上記熱可塑性樹脂は、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
本発明による導電性ペーストは、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含むことができる。上記添加剤はその目的や用途に応じて適当量を添加すればよい。本発明では1〜7重量%を添加することが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
上記酸化物除去剤は、スズなどが酸化された場合、低融点金属合金表面の酸化物を除去することができる。上記酸化物除去剤の例としては、ロジン系フラックス、有機系フラックス、及び表面処理剤などの物質が挙げられる。上記酸化物除去剤は、現在商用化されている。また、アジピン酸、ステアリン酸などのカルボン酸類やビニールエーテルなども酸化物除去剤として利用することができる。
【0046】
上記無機充填剤を添加すると、本発明による導電性ペーストの熱膨脹率を低めることができる。上記無機充填剤としては、平板状や無定形などのシリカ、アルミナ、タルク、珪藻土、ナノフィラーなどがある。
【0047】
図1〜図3は、本発明による導電性ペーストの動作原理を示すものである。図1には、銅箔層の間に本発明による導電性ペーストが充填されている。低融点金属合金の融点の温度範囲、例えば150〜250℃で印刷工程及び仮乾燥/本乾燥の順次硬化工程が行われる。
【0048】
図1は、仮乾燥工程を示している。仮乾燥条件(80〜100℃)では、バインダ14の架橋結合が始まり、これにより低融点金属合金粒子13は銅箔層11及びカーボンナノチューブ12と互いに接触する。次に、図2に示すように、低融点金属合金粒子13の融点温度が含まれた本乾燥条件(100〜168℃)では、低融点金属粒子が溶けながらカーボンナノチューブ12及び銅箔層11と金属結合を形成する。図2で、バインダは半硬化状態にある(B−stage)。次に、図3に示すように、バインダは、積層工程で完全に硬化される(C−stage)。
【0049】
特に、本発明による低融点金属合金のうちのスズを主成分とする合金粒子を使用すると、共融特性から、導電性ペーストの一括積層時の絶縁距離(波状)不良を解決することができる。また、上記スズの共融特性から、上下銅箔層の層間整合性がよくなるという長所がある。
【0050】
図1〜図3に示すように、本発明の導電性ペーストは低融点金属合金粒子の溶融作用により金属成分間の金属結合が可能となり、銅箔層と金属粒子との間の金属結合も可能となる。このような金属結合により比抵抗及び接触抵抗が減少することになる。したがって、本発明の導電性ペーストは、従来の導電性ペーストが有する問題点、すなわちバインダ成分のために比抵抗が増加するという問題点を解決することができる。
【0051】
また、本発明の導電性ペーストは、カーボンナノチューブと接触する面でカーボンナノチューブとの金属反応が起こるので、印刷工程でX−Yインターコネクション及びZ−インターコネクションを同時に実現できるという長所がある。
【0052】
さらに、本発明の導電性ペーストは、150〜200℃の温度でカーボンナノチューブを使用するので、 高温でCVDなどの方法でカーボンナノチューブを成長させる際に発生する様々な問題点を解決することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態によれば、本発明は上述した導電性ペーストを用いて印刷回路基板を提供する。具体的に、本発明の一実施例による印刷回路基板の製造方法が図4〜図12に示されている。上記図面に示された製造方法は例示に過ぎなく、上記図面に示された印刷回路基板の他、多様な印刷回路基板に本発明による導電性ペーストを使用できることは明らかである。
【0054】
図4のステップS10で、図5に示すように、エッチングレジストフィルム22を銅張積層板21に積層する。次に、ステップS20で、図6に示すように、露光及び現像を行い、ステップS30で、図7に示すように、回路パターンを形成し、ステップS40で、図8に示すように、絶縁層23を積層する。次に、ステップS50で、図9に示すように、レーザを用いてビアホール25を形成し、無電解メッキでメッキ層24を形成する。その次に、ステップS60で、図10に示すように、エッチングレジストフィルム26を積層し、ステップS70で、図11に示すように、回路パターンに対応するようにエッチングする。次に、ステップS80で、図12に示すように、印刷工程で本発明によるカーボンナノチューブを含んだCNTペースト27をビアホールなどに充填してビア28を形成する。
【0055】
本発明の導電性ペーストは、多層印刷回路基板にも適用可能である。その他、本発明の導電性ペーストは、パッド一体型印刷回路基板あるいはランドレス印刷回路基板などの多様な基板に応用可能である。
【0056】
本発明は下記の実施例を通してより理解でき、下記の実施例はただ本発明の例示に過ぎなく、添付した特許請求の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1〜7及び比較例1
多重壁カーボンナノチューブ(Iljin社製)を硝酸:硫酸=1:3の割合の溶液に120℃で、10時間浸して置いた。その次に、上記カーボンナノチューブを蒸溜水で洗浄し、下記表2のような低融点金属合金(LMPA)を準備した。そして、下記表3のような組成の導電性ペーストに硬化剤を混合し、3本ロールミルを用いて製造した。
【0058】
次に、厚さ18μmの電解銅箔のマット面にスクリーン印刷法を用いて実施例1〜7及び比較例1のペーストを塗布し乾燥する過程を5回繰り返して、底面直径150μm、高さ187μmの円錐状のバンプを形成した。その上にプリプレグBを1枚おき、プリプレグを貫通させた後、その上に厚さ18μmの電解銅箔をマット面を下向きにして配置し、その両外側の厚さ2mmのステンレス板で、180℃、20kgf/cm2、2mmHgの真空下で90分間積層成形した両面銅張板を得た。この表面に回路を形成してデージーチェーンを形成した。次に、4探針プローブで上記デージーチェーン両端の抵抗を測定した後、その値をチェーン内のバンプ数24で除してバンプ一つ当たりの最小初期抵抗値を測定した。このとき、接触抵抗は無視した。その結果を下記の表3に示す。
【表2】
【表3】
【0059】
(信頼性評価)
上記実施例1の導電性ペーストに対して、熱サイクル試験(TC:Thermal Cycle)、高度加速温度/湿度試験(HAST: High Accelerated Temperature/Humidity Test)、液槽熱衝撃試験(LLTS: Liquid to Liquid thermal shock)、及びハンダスポット(Solder spot)などの信頼性評価を行い、その結果を図13〜図16に示す。図13〜図16に示すように、信頼性評価の基準である初期抵抗に対する抵抗の変化率が±10%内を満足することが分かる。上記信頼性評価は、通常、信頼性テストに用いられる装備で行われた。
【0060】
上記実施例及び比較例から分かるように、本発明による導電性ペーストは抵抗値が低いため、電気伝導度に優れたことが分かる。
【0061】
本発明の単純な変形または変更は、当該技術分野で通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更はすべて本発明の領域に含まれるものと見ることができる。
【符号の説明】
【0062】
11 銅箔層
12 カーボンナノチューブ
13 低融点金属合金
14 バインダ
21 銅張積層板
22、26 エッチングレジスト
23 絶縁層
24 メッキ層
25 ビアホール
27 CNTペースト
28 ビア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含む、導電性ペースト。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブを70〜90重量%、前記低融点金属合金を1〜25重量%、前記バインダを1〜15重量%含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性ペーストが金属粒子をさらに含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記金属粒子を1〜10重量%含む、請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記金属粒子が、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項3又は4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブが、単一壁、多重壁、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項1ないし5の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記低融点金属合金が、スズ、ビスマス、インジウム、銀、及びカドミウムからなる群より選ばれる2種以上を含む合金である、請求項1ないし6の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記低融点金属合金が、スズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種である、請求項1ないし7の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記スズ/ビスマス合金がスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、前記ビスマス/スズ/カドミウム合金がビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、前記インジウム/スズ合金がインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、前記インジウム/スズ/ビスマス合金がインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%、及びビスマス25〜45重量%からなる合金である、請求項8に記載の導電性ペースト。
【請求項10】
前記バインダが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項1ないし9の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項10に記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項10に記載の導電性ペースト。
【請求項13】
前記導電性ペーストが、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含む、請求項1ないし12の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか1項に記載の導電性ペーストを含む、印刷回路基板。
【請求項1】
カーボンナノチューブと、低融点金属合金と、バインダとを含む、導電性ペースト。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブを70〜90重量%、前記低融点金属合金を1〜25重量%、前記バインダを1〜15重量%含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性ペーストが金属粒子をさらに含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記金属粒子を1〜10重量%含む、請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記金属粒子が、銀、銅、スズ、インジウム、ニッケル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項3又は4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブが、単一壁、多重壁、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項1ないし5の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記低融点金属合金が、スズ、ビスマス、インジウム、銀、及びカドミウムからなる群より選ばれる2種以上を含む合金である、請求項1ないし6の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記低融点金属合金が、スズ/ビスマス、ビスマス/スズ/カドミウム、インジウム/スズ、及びインジウム/スズ/ビスマスからなる合金より選ばれる何れか1種である、請求項1ないし7の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記スズ/ビスマス合金がスズ40〜45重量%及びビスマス60〜55重量%からなる合金であり、前記ビスマス/スズ/カドミウム合金がビスマス45〜55重量%、スズ15〜40重量%、及びカドミウム15〜40重量%からなる合金であり、前記インジウム/スズ合金がインジウム50〜70重量%及びスズ50〜30重量%からなる合金であり、前記インジウム/スズ/ビスマス合金がインジウム5〜30重量%、スズ30〜60重量%、及びビスマス25〜45重量%からなる合金である、請求項8に記載の導電性ペースト。
【請求項10】
前記バインダが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、ラジカル硬化樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項1ないし9の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項10に記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、液晶ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものである、請求項10に記載の導電性ペースト。
【請求項13】
前記導電性ペーストが、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、チキソ性付与剤、難燃剤、酸化物除去剤、有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる添加剤をさらに含む、請求項1ないし12の何れか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項14】
請求項1ないし13の何れか1項に記載の導電性ペーストを含む、印刷回路基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−289733(P2009−289733A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29663(P2009−29663)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】
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