説明

カーボンナノチューブナノホーン結合体、カーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法および用途

【課題】分散性が良く、導電性が高く、かつ、カーボンナノチューブ生成用の触媒をほぼ含まない、新たなカーボンナノチューブナノホーン結合体を提供する。
【解決手段】 カーボンナノチューブ3と、カーボンナノホーン2とを含み、
カーボンナノチューブ3は、チューブ状のグラファイト層から形成され、
カーボンナノホーン2は、少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成され、
カーボンナノホーン2における前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部が切断され、その炭素原子が、カーボンナノチューブ3の炭素原子と化学的に結合されており、
カーボンナノホーン2が、カーボンナノチューブ生成用の触媒を実質的に含まないことを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体4。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブナノホーン結合体、カーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素原子の六員環を基本骨格とするグラファイト層(グラフェンシートなどと呼ばれる)から形成されたチューブ形状の物質である。カーボンナノチューブは、例えば、一つの円筒状シートからなる単層カーボンナノチューブ、二層の円筒状シートが入れ子になった二層カーボンナノチューブ、三層以上の円筒状シートが入れ子になった多層カーボンナノチューブ等に分類される。カーボンナノチューブの分子の長さは、例えば数μm程度である。分子の直径は、単層カーボンナノチューブにおいては、例えば0.4〜2nm程度であり、多層カーボンナノチューブにおいては、例えば数十nm程度である。
【0003】
カーボンナノチューブは、その特異な形状のために、電気伝導性が高く、機械的性質も高く強靭である。特に、六員環シートに欠陥が少なく結晶性の良いカーボンナノチューブは、これらの特性が極めて高い。カーボンナノチューブには、これらの優れた特性を利用した各種導電性複合材料、透明導電膜、水素貯蔵、トランジスタ、燃料電池、フィールドエミッションなどの、様々な応用が期待されている。
【0004】
一方、カーボンナノホーンは、巻かれたグラフェンシートの先端が閉じており、例えば、先端角約20°の角(ホーン)状に尖った、円錐型の形状である。カーボンナノホーンは、例えば、円錐形状の先端部を外側にして放射状に集合し、直径約100nm程度の球状であるカーボンナノホーン集合体を形成し得る。このカーボンナノホーン集合体は、その独特な構造から、吸着材、燃料電池などへの応用が期待されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、分散した複数のカーボンナノチューブ間に複数のカーボンナノホーン集合体が分散され、全体として凝集していることを特徴とするカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体が記載されている。また、特許文献2には、カーボンナノホーンに触媒を担持し、その触媒からカーボンナノチューブを成長させるナノチューブ・ナノホーン複合体が記載されている。特許文献3には、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンまたはそれらの混合物を加熱して2次元または3次元のネットワークを形成させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3453377号公報
【特許文献2】国際公開2007/088829号パンフレット
【特許文献3】特開2004−018328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンナノチューブは、分子間に生じるファンデルワールス力によって数十本程度が集合したバンドルを形成したり、カーボンナノチューブ分子同士が絡みあったりしてしまい、分散させることが困難である。このため、導電性等の物性に影響が出るおそれがある。
【0008】
また、カーボンナノチューブは、分子1本の導電性は非常に高いが、カーボンナノチューブ分子同士は共有結合等で化学的に結合していないため、接触抵抗が大きい。このような多数のカーボンナノチューブ分子を用いる場合には、多数のカーボンナノチューブ分子が共有結合等で相互に結合されている方が、より強い強度と高い導電性を実現できると考えられる。
【0009】
グラフェンシート1つからなる1分子のカーボンナノホーンは、導電性が高いと考えられる。また、カーボンナノホーン集合体は、カーボンナノホーンの分子同士が部分的に化学的に結合しているので、1つの球形または塊状カーボンナノホーン集合体は導電性が高いと考えられる。
【0010】
しかし、複数のカーボンナノホーン集合体同士は、接触抵抗が大きい。また、カーボンナノホーン集合体は、溶液中では簡単に分散させることができるが、単独ではカーボンナノホーン集合体同士が凝集してしまい、分散させることは困難である。このため、導電性等の物性に影響が出るおそれがある。
【0011】
特許文献1では、前述のとおり、分散した複数のカーボンナノチューブ間に複数のカーボンナノホーン集合体を分散させている。しかし、このカーボンナノチューブ・カーボンナノホーン複合体は混合物であって、化学的な結合による架橋がされていないため、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン集合体の導電性を向上させるものではない。
【0012】
一方、特許文献2のナノチューブ・ナノホーン複合体は、カーボンナノチューブがカーボンナノホーンに担持された触媒から成長するので、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンが触媒担持箇所で化学的に結合している。しかし、カーボンナノホーンに担持された触媒が残留することにより、キャパシタや電池などに用いると、電極に電圧を印加した際に前記触媒が電解液中に溶出し、デバイスとしての信頼性を低下させるおそれがある。
【0013】
また、特許文献2の方法では、カーボンナノチューブを化学気相堆積法(CVD)やレーザーアブレーション法などで成長させるための装置が必要で、大量製造が困難である。さらに、この方法では、カーボンナノホーンに対するカーボンナノチューブの量を制御することが困難である。具体的には、成長するカーボンナノチューブの量が、カーボンナノホーンと比較してかなり少ない場合が多いため、カーボンナノチューブの特性を利用した、導電性向上や強度増加の効果に限界がある。
【0014】
特許文献3の方法では、触媒を用いずに、カーボンナノチューブ分子同士を化学的に結合させているが、カーボンナノチューブ分子同士が絡み合って分散しにくいという問題を根本から解決するものではない。
【0015】
そこで、本発明は、分散性が良く、導電性が高く、かつ、カーボンナノチューブ生成用の触媒をほぼ含まない、新たなカーボンナノチューブナノホーン結合体およびその用途を提供する。また、本発明は、そのようなカーボンナノチューブナノホーン結合体を低コストで簡便な方法で大量製造可能であり、かつ、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの含有比を自由に制御できる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、
カーボンナノチューブと、カーボンナノホーンとを含み、
前記カーボンナノチューブは、チューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンは、少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンにおける前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部が切断され、その炭素原子が、前記カーボンナノチューブの炭素原子と化学的に結合されており、
前記カーボンナノホーンが、カーボンナノチューブ生成用の触媒を実質的に含まないことを特徴とする。
【0017】
本発明による、カーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法は、
少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノホーンにおける、前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部を切断する炭素−炭素結合切断工程と、
前記炭素−炭素結合切断工程後の前記カーボンナノホーンを、チューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノチューブと混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合工程により得られた前記混合物を、真空または不活性ガス雰囲気中で加熱する加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、前記本発明の製造方法により製造されることを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体を提供する。
【0019】
本発明の導電性ペーストは、前記本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする。本発明の回路基板は、前記本発明の導電性ペーストにより回路パターンを形成したことを特徴とする。
【0020】
本発明の電子放出源電極ペーストは、前記本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする。本発明のエミッタ電極は、前記本発明の電子放出源電極ペーストにより製造されることを特徴とする。本発明の電子放出発光素子は、前記本発明のエミッタ電極と、アノード電極とを有し、前記アノード電極は、蛍光体層を含み、前記エミッタ電極と前記蛍光体層とが対向しており、前記エミッタ電極から放出される電子が前記蛍光体層に衝突することで発光可能であることを特徴とする。
【0021】
本発明の透明導電膜、透明導電膜形成用塗料、キャパシタ、電池、燃料電池およびリチウムイオン二次電池は、それぞれ、前記本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明は、前記本発明の製造方法により、カーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、それを用いて導電性ペースト、電子放出源電極ペースト、透明導電膜、キャパシタ、電池、燃料電池またはリチウムイオン二次電池を製造することを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分散性が良く、導電性が高く、かつ、カーボンナノチューブ生成用の触媒をほぼ含まない、新たなカーボンナノチューブナノホーン結合体およびその用途を提供することができる。また、本発明は、そのようなカーボンナノチューブナノホーン結合体を低コストで簡便な方法で大量製造可能であり、かつ、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの含有比を自由に制御できる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】カーボンナノホーン集合体の構造を例示する模式図である。
【図2】本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の構造を例示する模式図である。
【図3】実施例1のカーボンナノチューブナノホーン結合体のTEM(透過型電子顕微鏡)像を示す写真である。
【図4】比較例1のナノチューブ・ナノホーン複合体のTEM像を示す写真である。
【図5】本発明の第2の実施形態における、導電性ペーストの構造を例示する模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態で、回路基板の表面に導電性ペーストを供給した場合の工程を例示する図である。
【図7】本発明の第4の実施形態における、電界放出発光素子の構成の一例を表す模式図である。
【図8】本発明の第7の実施形態における、燃料電池の構成の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明について例を挙げて説明する。以下に述べる各実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされている場合があるが、これらは例示であって、本発明の範囲は、以下の説明により限定されない。
【0026】
図1に、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の一部であるカーボンナノホーン集合体の構造の一例を、模式的に示す。図示のとおり、このカーボンナノホーン集合体2は、一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層(グラフェンシート)から形成されたカーボンナノホーン分子1の集合体である。各カーボンナノホーン分子1は、グラフェンシートが閉じた側の先端が尖った円錐形上であり、閉じた側の先端を外側にして放射状に集合し、略球状のカーボンナノホーン集合体を形成している。なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体において、カーボンナノホーンは、少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成されていれば良い。ただし、図1のような集合体を形成しやすいという観点から、例えば同図のように、一方の端のみが閉じた形状であることが好ましく、閉じた側の端が尖った円錐形状であることがより好ましい。
【0027】
また、図1中の各カーボンナノホーン分子1は、同図に示す通り、グラフェンシートを形成する炭素−炭素結合の一部が切断されて形成された傷100を有する。なお、以下において、グラフェンシートを形成する炭素−炭素結合が切断された部分を、便宜上、単に「傷」ということがある。図1において、前記傷を形成する方法は、特に限定されない。例えば、このカーボンナノホーン集合体表面に、酸または酸素雰囲気中での高温加熱などで、図1に示すように複数の傷をつけても良い。酸は、特に限定されないが、例えば、後述のように、過酸化水素や硝酸などであっても良い。酸素雰囲気は、酸素のみを含む雰囲気でも、他の気体との混合ガス雰囲気でも良い。傷100の構造も特に限定されないが、例えば、ダングリングボンドを持つ欠陥、官能基等を有することが好ましい。
【0028】
なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述のとおり、カーボンナノホーンにおける前記傷の部分の炭素原子が、カーボンナノチューブの炭素原子と化学的に結合されている。したがって、前記傷(例えば、前記ダングリングボンドを持つ欠陥、官能基等)が、カーボンナノチューブナノホーン結合体の製造工程(例えば、後述する熱処理等)で化学的な結合に変化した構造が、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の実際の構造となる。前記傷の部分の炭素原子とカーボンナノチューブの炭素原子との化学的な結合は、特に限定されない。具体的には、例えば、前記傷の部分の炭素原子とカーボンナノチューブの炭素原子とが直接結合した炭素−炭素結合でも良いし、間に他の原子等が介在した結合(例えば、エーテル結合、エステル結合等)であっても良い。なお、本発明における「化学的な結合」または「化学的に結合」の定義については後述する。また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体においては、例えば、前記傷(例えば、前記ダングリングボンドを持つ欠陥、官能基等)の一部が残っていても良い。
【0029】
本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブには傷がなく、カーボンナノホーンのみが傷を有することが好ましい。カーボンナノチューブには、なるべく傷がない方が、導電性が低下し難いためである。すなわち、カーボンナノチューブは、炭素六員環のグラフェンシートが円筒状に巻いている構造であるため、なるべく前記六員環シートに欠陥がない結晶性のよいカーボンナノチューブの方が、導電性が高い。傷を付けた部分を、例えば熱処理等により再結合させても、もとの構造(六員環)に戻るとは限らない。
【0030】
カーボンナノチューブに傷をつけると導電性が低下するメカニズムは、例えば、以下のように説明できる。すなわち、カーボンナノチューブを形成するグラフェンシートの構造に欠陥が生じると、ラマン分光のD/G比が大きくなる。D/G比とは、炭素原子六員環の面内の振動に対応しているGバンドと、六員環の欠陥に起因するDバンドとの比である。一般的なカーボンナノチューブは、結晶性が良質であればあるほど、D/G比は小さい値となり、通常はD/G比が0.5以下、結晶性が良いものはD/G比が0.2以下である。しかし、酸や加熱処理などで欠陥を形成した場合には、D/G比が増大する。ただし、この説明は、推定可能なメカニズムの例示であり、本発明を限定しない。
【0031】
カーボンナノホーンも、傷をつけることによって、そのグラフェンシートの構造に欠陥が生じるが、カーボンナノホーンは、特に、図1のように先端が尖った円錐型である場合には、六員環以外の部分が多い。そのため、カーボンナノホーンのD/G比は、例えば0.5〜1.5と大きい値であり、傷をつけてもその値はあまり変化しない。傷をつけることによって、カーボンナノホーンの導電性も若干低下すると考えられるが、カーボンナノチューブとの化学的な結合を形成させることにより、前記傷を付けた部分の欠陥は、大部分が修復されると考えられる。ただし、カーボンナノホーンに関するこの説明も、推定可能なメカニズムの一例であり、本発明を何ら限定しない。
【0032】
カーボンナノホーンの傷部分は、前記のとおり、他物質と反応しやすいダングリングボンドや官能基を持っていることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブとともに分散および混合(以下、単に「分散混合」という場合がある)させると、カーボンナノチューブにカーボンナノホーンの傷部分が選択的に吸着される。カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの分散混合の方法は、例えば、ボールミルやミルサーなどで分散してもよいし、液体(例えば、水、有機溶媒、溶液等)中において、超音波などで分散させたものを乾燥させてもよい。その結果、分散されたカーボンナノチューブ分子の間に分散されたカーボンナノホーン集合体が均一に入り込み、両者が混合された状態となる。これにより、カーボンナノホーン集合体がカーボンナノチューブの絡み合いを防ぎ、かつ、カーボンナノチューブがカーボンナノホーン集合体の凝集を防ぐ効果が得られる。
【0033】
このカーボンナノチューブとカーボンナノホーン集合体の混合物を、真空または不活性ガス中、例えば、800℃以上で加熱する。その結果、カーボンナノチューブに吸着している、カーボンナノホーンの傷部分に修復反応が起こり、カーボンナノホーンがカーボンナノチューブに化学的に結合する。このようにして、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造することができる。
【0034】
なお、本発明において、「化学的な結合」または「化学的に結合」は、例えば、共有結合であるが、これに限定されず、例えば、イオン結合または金属結合でも良い。さらに、本発明の「化学的な結合」または「化学的に結合」は、これらの結合のうち複数種類の中間的な状態でも良いし、これらの結合のうち複数種類を併せ持っていても良い。本発明の「化学的な結合」または「化学的に結合」は、好ましくは、共有結合であるか、または、共有結合的性質が強い結合である。
【0035】
図2に、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の構造の一例を、模式的に示す。図示のとおり、このカーボンナノチューブナノホーン結合体4は、カーボンナノチューブ分子3の間にカーボンナノホーン集合体2が分散し、カーボンナノチューブ分子3の一部にカーボンナノホーン集合体2の一部が化学的に結合している。この構造のため、カーボンナノチューブ分子同士の絡み合いとカーボンナノホーン集合体の凝集を両方とも防ぐことができる。また、前記化学的な結合が強固であるために、前記構造が維持され、カーボンナノチューブ分子やカーボンナノホーン集合体の再凝集が起こらず、両者が分散し合った状態を保持することができる。
【0036】
同図のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブ分子同士が、直接結合せず、カーボンナノホーンを介して結合している。この構造は、前記のとおり、カーボンナノホーンの傷の部分がカーボンナノチューブに結合しやすいために得ることができる。このように、カーボンナノチューブ分子同士が直接結合しないことにより、前記のとおり、カーボンナノチューブ分子同士の絡み合いを防止できる。また、この構造により、同図のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブ単体およびカーボンナノホーン集合体単体よりも、カーボンナノチューブ分子間またはカーボンナノホーン集合体間の接触抵抗が低減され、高い導電性を有し得る。カーボンナノホーンは、一般に、アモルファスカーボン等と比較して高い導電性を有するため、例えば、カーボンナノチューブ自体が本来有する導電性を低下させることなく、結合体を形成することが可能である。
【0037】
さらに、カーボンナノチューブナノホーン結合体のカーボンナノホーン部分はカーボンナノチューブよりも溶媒への分散性が良い。このため、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブよりも優れた溶媒分散性を有し得る。特に、カーボンナノチューブナノホーン結合体中のカーボンナノホーンの割合が高い場合には、より優れた分散性を得ることができる。
【0038】
また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前記本発明の製造方法により製造することで、カーボンナノチューブ部分とカーボンナノホーン部分の割合を自由に制御することができる。具体的には、例えば、前記混合工程において、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンとの混合比により、前記カーボンナノチューブ部分とカーボンナノホーン部分の割合を決定できる。本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体において、前記カーボンナノホーン部分とカーボンナノチューブ部分との割合は特に限定されないが、前記カーボンナノホーンの質量が、前記カーボンナノチューブの質量に対し、例えば、0.001〜1000倍、好ましくは0.01〜100倍である。
【0039】
例えば、高い溶媒分散性を得たい場合にはカーボンナノホーンをカーボンナノチューブより多く混合し、カーボンナノチューブナノホーン結合体の導電性を向上させたい場合には、結晶性の良いカーボンナノチューブを多く混合すると良い。
【0040】
本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体およびその製造方法は、どのようなカーボンナノチューブやカーボンナノホーンにも有効である。カーボンナノチューブとしては、例えば、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、多層ナノチューブが挙げられ、一種類でも、二種類以上併用しても良い。カーボンナノホーンは、例えば、ダリア型、つぼみ型、seed型、ペタル型等、どのような形状のカーボンナノホーン分子を用いても良く、一種類でも、二種類以上併用しても良い。
【0041】
本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、複数のカーボンナノホーンが複数のカーボンナノチューブに吸着して結合する。これにより、カーボンナノホーンを介して結合し合ったカーボンナノチューブの2次元あるいは3次元ネットワークを作製することも可能である。このカーボンナノチューブナノホーン結合体ネットワークは導電性に優れ、高い強度を持つことができる。なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体において、「ネットワーク」は、カーボンナノチューブ分子およびカーボンナノホーン分子が、化学的な結合により2次元または3次元に広がった網状の組織をいうものとする。
【0042】
なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法は特に限定されず、任意であるが、前述のように、前記本発明の製造方法により製造することが好ましい。カーボンナノホーンに傷をつける前記炭素−炭素結合切断工程は、特に限定されないが、例えば、酸処理および酸素雰囲気中での加熱による酸化処理の少なくとも一方により行うことができる。前記酸処理において、酸は、特に限定されず、過酸化水素、硝酸、硫酸等であっても良いし、一種類でも、二種類以上併用しても良い。酸処理は、例えば、前記酸の水溶液中に前記カーボンナノホーンを分散させて加熱しても良い。前記酸の水溶液の濃度は特に限定されず、例えば、飽和水溶液でも良いし、適宜希釈しても良い。加熱温度および加熱時間は、特に限定されず、前記酸の種類および濃度、ならびに付けようとする傷の数および大きさ等に応じて適宜設定すれば良い。酸素雰囲気中での加熱は、前記のように、酸素ガス中で行っても、他の気体との混合ガス中で行っても良い。圧力、加熱温度および加熱時間は、特に限定されず、付けようとする傷の数および大きさ等に応じて適宜設定すれば良い。カーボンナノホーン分子に付けられた傷の数、大きさ等は、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)像により確認できるので、傷がちょうど良い状態になるまで適宜前記炭素−炭素結合切断工程を続ければ良い。
【0043】
前記カーボンナノホーンとカーボンナノチューブを混合する前記混合工程は、前述のとおり、ボールミル、ミルサー、液体中での超音波照射等により適宜行うことができる。本発明の製造方法においては、例えば、前記カーボンナノホーンの傷に前記カーボンナノチューブが吸着されやすいことにより、前記混合工程において、前記カーボンナノホーンおよび前記カーボンナノチューブが均一に分散されやすい。ただし、この説明は例示であって、本発明の製造方法を限定しない。
【0044】
さらに、前記混合物を、真空または不活性ガス雰囲気中で加熱する前記加熱工程を行う。前記加熱工程における加熱温度も特に限定されないが、例えば800℃以上、好ましくは1000℃以上、特に好ましくは1200℃以上である。前記加熱温度の上限は、特に限定されないが、例えば2000℃以下である。本発明の製造方法では、前記カーボンナノホーンを形成するグラファイト層の一部にあらかじめ傷をつける。このため、前記加熱工程では、例えば、特許文献3の方法に対し、比較的低い温度または短い加熱時間でも、カーボンナノホーンとカーボンナノチューブとの化学的な結合が形成されやすい。これにより、例えば、カーボンナノチューブ同士が結合することによる分散性低下や、カーボンナノチューブあるいはカーボンナノホーンの構造が必要以上に変化することによる導電性低下の防止も可能である。
【0045】
なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体またはそれにより形成するネットワークの強度の増減は、例えば、前記炭素−炭素結合切断工程においてカーボンナノホーンにつける傷の量と大きさで制御することができる。強い酸化処理を行い、傷を多く大きくつければ、例えば、ダングリングボンドや官能基が増加するため、より強固な結合およびネットワークを形成することができる。
【0046】
また、本発明の製造方法では、カーボンナノチューブ生成用の触媒を使用しないので、前記触媒が残存しないカーボンナノチューブナノホーン結合体を作製することができ、例えば、キャパシタや電池などで触媒が溶出する問題がない。さらに、前記触媒が残存しないカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、触媒を使用するナノチューブナノホーン複合体と比較して耐熱性を飛躍的に高めることができる。このため、例えば、電子放出源電極作製の高温焼成時に電子放出源であるカーボンナノチューブナノホーン結合体を燃焼させてしまう問題を解消することができる。本発明の製造方法は、低コストで簡便であり、カーボンナノホーンのみに傷をつけて反応性を高める工程により、原料のカーボンナノチューブの特性を妨げることがない。また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの割合を自由にかつ正確に制御することができる。この結果、分散性がよく、導電性が高く、比表面積が大きく、強度が高いカーボン材料を作製することができる。
【0047】
なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体においては、例えば、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)およびアルミニウム(Al)が実質的に吸着されていないことが好ましい。これによれば、前記各元素が電解液等に溶け出すことによる、キャパシタや電池などの特性の劣化を防ぐことができる。
【0048】
本発明の製造方法では、カーボンナノチューブ生成用の触媒を使用しないが、原料とするカーボンナノチューブが前記各元素の触媒を含む場合がある。本発明は、前記の触媒を含むカーボンナノチューブを用いる場合もカーボンナノチューブナノホーン結合体を作製することができる。しかし、電池などに本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いる場合には、特性劣化を避けるために、本発明の製造方法を行う前に、カーボンナノチューブから触媒を除去する前処理を行うことが望ましい。例えば鉄などの触媒の除去には、例えば塩酸などの酸が用いられる。本発明の製造方法において、前記カーボンナノチューブは、前記触媒の含有量または吸着量が、前記カーボンナノチューブの全重量(質量)に対し、1重量%以下であることが好ましい。なお、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体において、カーボンナノホーンが触媒等を「実質的に含まない」または「実質的に吸着されていない」は、前記触媒の含有量または吸着量が、カーボンナノホーンの全重量(質量)に対し、1重量%以下であることをいう。前記「実質的に含まない」または「実質的に吸着されていない」は、機器分析による含有量または吸着量が、機器分析による検出限界量未満(すなわち、検出不可能)であることが、特に好ましい。
【0049】
本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いれば、例えば、導電性ペーストの導電性向上、電子放出源電極ペーストの発光特性向上、透明導電膜の導電性向上、キャパシタや電池材料としての導電性向上および比表面積増大等の効果を得ることも可能である。また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の用途は、これに限定されず任意であり、例えば、その優れた導電性、比表面積、強度等を利用して、どのような用途に用いても良い。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。
【0051】
本実施形態は、第1の実施形態によるカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて作製された、導電性ペーストおよびその製造方法に関する。
【0052】
基板に回路パターンを形成する方法として、基板上に導電性ペーストを用いて印刷などで回路パターンを形成する方法が開発されている。特に、耐熱性の低い電子部品の導通接続や、耐熱性の低い基板材料に回路パターンを形成する場合には、比較的低い温度範囲、例えば180℃以下の温度範囲で硬化する導電性ペーストが求められている。
【0053】
導電性ペーストは、電子部品の導通接続や回路パターン形成のために抵抗が低い必要がある。その抵抗を下げるために、近年、導電性ペーストにカーボンナノチューブを混合することが提案されている。しかし、カーボンナノチューブは通常、カーボンナノチューブ同士がバンドルを組んでいたり絡み合ったりしており、溶媒や他材料に対しての分散性が悪いため、導電性ペースト中に均一に分散させることが困難である。導電性ペーストにカーボンナノチューブのみを混合すると、カーボンナノチューブの凝集部分が形成され、導電性を向上させることができないか、または効果が少ない。
【0054】
そこで、本実施形態では、カーボンナノチューブよりも分散性が良く、高い導電性を持った、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を導電性ペーストに混練する。
【0055】
図5は、本実施形態における導電性ペーストの構造の一例を模式的に表した図である。図示のとおり、この導電性ペースト5は、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンが結合したカーボンナノチューブナノホーン結合体4、導電性粒子6、および硬化性樹脂7を含み、さらに、これらと硬化剤(図示せず)とが均一に混合されている。
【0056】
前記導電性粒子は、特に限定されないが、例えば、銀、銅、金、錫、インジウム、ニッケル、パラジウム、またはこれらの中から選択される複数の粒子の混合物もしくは合金で構成される。
【0057】
前記導電性粒子の形状は特に限定されるものではなく、種々の形状、例えば球状、鱗片状、板状、樹枝状、塊状、粒状、棒状、箔状、針状などの粒子を用いることができる。
【0058】
前記硬化性樹脂は、例えば、好適な組み合わせの硬化剤の存在下、熱、光等を作用させると硬化し得る樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂が挙げられ、単独でも複数種類併用しても良い。
【0059】
前記硬化剤は、硬化性樹脂に対応する好適な硬化剤成分の組合せが一般に知られており、そのようなものを本実施形態においても用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂を硬化性樹脂として用いる場合には、硬化剤成分としてチオール、アミン、および酸無水物のうち一種類または複数種類を用いることもできる。
【0060】
カーボンナノチューブナノホーン結合体の原料であるカーボンナノホーン集合体は、例えば、図1のような形状をとることにより、カーボンナノチューブ分子よりも、溶媒や他材料への分散特性が格段に良い。これにより、前記カーボンナノホーン集合体部分を有する本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体においても、カーボンナノチューブよりも高い分散性を得ることが可能である。カーボンナノチューブナノホーン結合体中のカーボンナノホーン部分の割合が多いほど、溶媒などへの分散性も高くなる傾向がある。
【0061】
また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブ間にカーボンナノホーンが分散されてたがいに結合しているため、カーボンナノチューブ部分も凝集しにくく、分散性が良い。
【0062】
この本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を、導電性粒子、硬化性樹脂、硬化剤等とともに混合混練することにより、カーボンナノチューブナノホーン結合体が均一に分散された導電性ペーストを得ることができる。
【0063】
この導電性ペーストは、例えば、硬化性樹脂の硬化を行うと、硬化性樹脂の全体の体積が収縮し、各導電性粒子の間隔が狭くなる。その結果、導電性粒子間にあるカーボンナノチューブナノホーン結合体は、導電性粒子の良導電パスとして働くことができる。
【0064】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態について詳細に説明する。
【0065】
(回路基板への適用)
本実施形態は、第2の実施形態における、カーボンナノチューブナノホーン結合体、導電性粒子、硬化性樹脂等を含む導電性ペーストを、基板の回路パターン形成や、基板への電子部品の実装に用いた実施形態である。
【0066】
本実施形態において、回路基板の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、熱可塑性樹脂、エポキシ、熱硬化性樹脂、アラミド不織布、ガラス織布、およびガラス不織布からなる群から選択される少なくとも一つであるが、これに限定されない。
【0067】
本実施形態における導電性ペーストは、回路基板表面に所定のパターンで配置されており、回路基板上に回路パターンを形成している。回路パターンは、回路基板上に銅箔にて形成した一般的な配線などと同様に、更に種々の対応する電子部品等を接続することによって、所望する回路基板を形成することができる。また、回路パターン上に、電子部品を電極が対応するような位置関係でとりつけることで、回路基板に電子部品を実装することができる。
【0068】
(回路基板への形成方法)
次に、導電性ペーストによって回路基板の表面に回路パターンを形成する方法について説明する。
【0069】
図6の工程図に、導電性ペーストによって回路基板の表面に回路パターンを形成する工程の一例を示す。すなわち、まず、図6(a)に示すように、回路基板8を準備する。
【0070】
つぎに、図6(b)に示すように、回路基板8上に回路パターンのネガとなるマスク9を載置し、マスク9上に導電性ペースト5を供給する。回路基板上に導電性ペーストでパターンを形成する方法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサー、含浸やスピンコートなどの各種方法が使用できる。
【0071】
図5(実施形態2)において説明した通り、導電性ペースト5の各成分であるカーボンナノチューブと導電性粒子は、硬化性樹脂の中に分散されている。上記の状態において、カーボンナノチューブと各導電性粒子との間には、適度の間隔が開けられているため、カーボンナノチューブと導電性粒子とは接触していない。
【0072】
つぎに、図6(c)に示すように、回路基板8上に、導電性ペースト5による回路パターンを形成しマスク9を外した後、前記回路パターンに対して熱、光等を作用させ、還元剤を活性化させる。導電性ペーストが、そのパターンにて硬化することで、回路基板上に所望の回路パターン10を形成する。
【0073】
硬化性樹脂の硬化が進行すると、硬化性樹脂の全体の体積が収縮する。その結果、カーボンナノチューブと各導電性粒子との間の間隔は小さくなる。そして、狭くなった導電性粒子間の間隙に、カーボンナノチューブが入り込み、導電性粒子とカーボンナノチューブとの間に電気的接触を形成することができる。その結果、導通成分を全体として接触させることができ、従って、カーボンナノチューブを介して、導電性粒子の全体にわたって導通接続を形成することができる。
【0074】
また、図6(d)に示すように、回路パターンに、電子部品11の電極(または端子)を対応するような位置関係で、取り付けてもよい。導電性ペーストは、例えば、必要に応じて、所定の温度まで温度を上昇させ、所定の時間だけ配置すればよい。これにより、前記導電性ペーストを硬化させ、回路基板に電子部品の実装を行うことができる。
【0075】
(作用・効果の説明)
次に、本実施の形態における作用・効果について説明する。本実施の形態においては、導電性ペーストを回路基板表面に供給した後に、熱、光等を作用させる。導電性ペーストを供給する工程においては、硬化性樹脂の硬化反応はまだ始まっていないので、導電性ペーストを供給する操作は、時間、供給操作、供給手段等に関して、比較的高い自由度を有することができる。
【0076】
そのため導電性ペーストは、十分な流動性を保持することができ、一般的な印刷手段によって、回路基板の表面に所定のパターンで供給することができる。例えば図6(b)に示すように、導電性ペーストは、回路基板上に回路パターンのネガとなるマスクを載置し、前記マスク上に供給することができる。
【0077】
本実施の形態における導電性ペーストは、回路基板の表面に所定のパターンで塗布されており、回路基板上に回路パターンを形成している。回路パターンは、回路基板上に銅箔で形成された一般的な配線などと同様に、更に種々の対応する電子部品等を接続することによって、所望する回路基板を形成することができる。また回路パターン上に、電子部品を電極が対応するような位置関係でとりつけることで、回路基板に電子部品を実装することができる。
【0078】
本実施の形態の導電性ペーストは、回路パターンとして回路基板に形成された場合、回路基板に対して高い接着強度を実現することができる。そのため、信頼性の高い回路基板を形成することができる。
【0079】
また、本実施の形態の導電性ペーストは、例えば、回路基板に回路パターンを印刷し、電子部品を配置し、所定の温度まで温度を上昇させることにより電子部品を実装した場合にも、回路基板および電子部品に対して高い接着強度を実現することができる。
【0080】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態について詳細に説明する。
【0081】
本実施形態は、第1の実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いた電子放出源電極ペーストおよびその製造方法に関する。
【0082】
カーボンナノチューブやカーボンナノファイバ等のカーボン材料は、電界放出型ディスプレイ(FED)、電界放出を用いた液晶用バックライトや電界放出型照明(FEL)等の電子放出源として広く利用されている。
【0083】
特に、カーボンナノチューブは化学的および機械的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した先鋭な先端形状と大きなアスペクト比を持っており、優秀な電子放出源として盛んに研究されている。
【0084】
これらの電子放出源電極は、例えば、電子放出源電極ペーストにより作製する。前記電子放出源電極ペーストは、例えば、電子放出源としてのカーボン材料、前記カーボン材料とカソード電極を接着するためのガラス粉末などの無機物、電極構造の支持部材としての有機物バインダ、および、前記有機物バインダを溶解させる溶媒を混合して作製する。
【0085】
しかし、電子放出源(カーボン材料)であるカーボンナノチューブは、バンドル状や団子状に絡まりあって凝集しやすく、電子放出源電極ペーストのガラス粉末や有機物バインダと均一に混ざりにくい。特に、結晶性が良質のカーボンナノチューブは電子放出特性が良いと考えられるが、分散が困難であるために均一な混練ペーストの作製が難しく、電界放出素子の輝点が非常に少なくなる。
【0086】
これに対して、本実施形態では、カーボンナノチューブよりも分散性が良い、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を電子放出源電極ペーストに混練する。
【0087】
本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブ分子同士が直接結合せず、カーボンナノホーン分子を介して結合している。これにより、カーボンナノチューブ分子同士が分散され、バンドル状や団子状に凝集しにくい。また、その構造中にカーボンナノホーンを含むことから、溶媒や他材料への分散性においてカーボンナノチューブより上回ることもできる。
【0088】
このため、例えば、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体、ガラスフリットなどの無機物、有機物バインダ、および溶媒を混合すると、カーボンナノチューブナノホーン結合体が均一に分散され、カーボンナノチューブ分子が凝集せずに分散した電子放出源電極ペーストを得ることができる。このペーストを用いて作製した電極は、カーボンナノチューブ分子が分散しているため、輝点数が多く、均一で高効率な電子放出源として発光する。また、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は触媒を含有しないか、またはごくわずかしか含まないことにより、例えば、触媒を多く含むナノチューブナノホーン複合体などと比較して高い耐熱性を得ることができる。これにより、有機物バインダを除去するための、または電子放出源電極を用いた照明ランプ作製のための大気中高温焼成の際に、電子放出源であるカーボンナノチューブが燃焼したり傷ついたりすることを防止できる。その結果、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、高効率な電子放出源として発光することが可能である。
【0089】
本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述の何れのカーボンナノチューブを用いて作製してもよい。特に、ラマン分光分析で測定されるD/G比が0.2以下の結晶性が良質のカーボンナノチューブが、電子放出源としての特性が高く、耐久性も高いので好ましい。
【0090】
通常は、このような結晶性の良いカーボンナノチューブは、欠陥が少なく、表面官能基も少ないため、分散性が非常に悪い。しかし、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体の一部として用いることにより、結晶性が良質のカーボンナノチューブの分散性を、飛躍的に向上することができる。
【0091】
前記無機物としては、特に限定されないが、例えば、ガラスフリット、アルミナ、ジルコニア、二酸化チタン、シリカなどが挙げられる。前記有機物バインダも特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。
【0092】
図7に、本実施の形態に係る電界放出発光素子の構成例の概略を示す。図示のとおり、この電界放出発光素子12は、アノード基板13と、カソード基板20と、スペーサ30とを有する。
【0093】
アノード基板13は、透明な基板14と、基板14上に形成されたアノード電極15と、アノード電極15上に形成された蛍光体層16とを有している。なお、本実施形態では、アノード電極15として透明電極を適用する例を挙げて説明する。カソード基板20は、金属、半導体または絶縁体からなる基板21と、カソード電極22と、エミッタ23とを有する。カソード電極22は、導電層であり、エミッタ23は、電子放出層である。スペーサ30は、アノード基板13とカソード基板20との間に設けられる。アノード基板13とカソード基板20との間は真空である。
【0094】
アノード電極15とカソード電極22との電極間距離は、アノード基板13およびカソード基板20の間にスペーサ30を挟みこむことで決定できる。アノード電極15とカソード電極22との電極間距離は特に限定されないが、広すぎる場合は、構造上電子が放出されるべき場所以外に電子が放出されるため、発光効率の低下や放電が生じるおそれがある。他方、アノード電極とカソード電極との電極間距離が短すぎる場合には、電子を容易に放出することはできるが、蛍光体層16を十分に発光させる電圧を得ることができないおそれがある。以上のことから、アノード電極15とカソード電極22との電極間距離は、0.1mm〜200mmが好ましく、より好ましくは1mm〜10mmである。
【0095】
アノード電極15は、例えば、ITO、ZnO、TiO、カーボンナノチューブ等から構成される透明電極である。蛍光体層16には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)に用いられるような蛍光体を適用することができる。蛍光体層16としては、より具体的には、例えば、電子線が照射されると蛍光を発する電子線励起蛍光体である硫化物蛍光体、酸化物蛍光体又は窒化物蛍光体等を用いることができる。蛍光体層16は、スプレー法、スクリーン印刷、手塗り印刷、又は沈降法を用いて形成することが可能である。蛍光体層16の膜厚は、例えば、0.1μm〜100μmであることが好ましい。
【0096】
カソード電極22は、金属または導電性のある金属酸化物等で構成される電極である。カソード電極22として使用される金属は、例えば、Ag、Au、Pt、Ti、Al、Cu、Cd、Pd、Zr、Cであっても良く、金属酸化物は、ITO、TiO、ZnO等であっても良い。また、カソード電極22は、これらの金属または金属酸化物の一種類のみを用いても良いし、二種類以上を併用(例えば、前記各金属の単体または合金を使用)しても良い。
【0097】
エミッタ23は、ナノカーボン材料で構成される電子放出層であり、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含む。エミッタ23を塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷、スプレー法、手塗り印刷、又はインクジェット等を適用することができる。
【0098】
〔第5の実施形態〕
次に、第5の実施形態について詳細に説明する。
【0099】
本実施形態は、第1の実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いた透明導電膜およびその製造方法に関する。
【0100】
液晶ディスプレイなどのディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー、タッチパネルなどの市場拡大により、透明導電膜の需要が急増している。従来、この透明導電膜は、インジウム-スズ酸化物(ITO)などの金属酸化物をスパッタリング等の方法で高温真空製膜する方法で作製されていた。このため、基板が大きくなるに従って巨大な製膜装置が必要になり、また、耐熱性の低い樹脂などの基板は使用しにくい。また、液晶ディスプレイなどのように大面積化が指向されるに伴い、透明導電材料の軽量化や柔軟性も望まれている。
【0101】
これに対し、近年、金属酸化物のような加熱処理も必要なく、分散液を塗布して作製することが可能な、カーボンナノチューブの透明導電膜が開発されている。カーボンナノチューブの分子は、例えば、数μm〜数十μmの長さの導体であり、それらが電気的なネットワークを形成することによって、透明性と導電性を兼ね備えた透明導電膜を形成する。カーボンナノチューブ分子の導電性は、層数や構造によって異なるが、例えば、金属性のアームチェア型単層カーボンナノチューブが最も導電性が高いと考えられる。
【0102】
しかし、カーボンナノチューブネットワークでは、カーボンナノチューブ分子一本の導電性が非常に高くても、カーボンナノチューブ分子同士はファンデルワールス力によって繋がっているため、これが接触抵抗となる。また、前記の金属性単層ナノチューブのみを選択合成するのは難しいため、一般に、半導体が混在する単層カーボンナノチューブからこれを単離する必要がある。このためには、カーボンナノチューブを切断して分散する必要があり、カーボンナノチューブ同士の接触抵抗部分は増大する。
【0103】
そこで、本実施形態では、カーボンナノチューブに代えて、カーボンナノチューブ分子とカーボンナノホーン分子が化学的に結合した本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて透明導電膜を作製する。カーボンナノチューブナノホーン結合体はカーボンナノチューブ同士がカーボンナノホーンを介して結合しているため、単体のカーボンナノチューブの凝集体よりも接触抵抗が少なく、導電性が高い。
【0104】
さらに、カーボンナノチューブ間に入り込んだカーボンナノホーンがカーボンナノチューブの凝集を防ぎ分散を促進することから、カーボンナノチューブをあまり細かく切断せずに分散させることができる。このため、透明かつ導電性の高い透明導電膜を作製することができる。
【0105】
本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述の何れのカーボンナノチューブを用いて作製しても良い。特に、導電性の優れた単層カーボンナノチューブを用いることが好ましく、さらには、金属性単層カーボンナノチューブを用いることがより好ましい。
【0106】
また、カーボンナノチューブナノホーン結合体を形成するカーボンナノチューブとカーボンナノホーンの質量比は、特に限定されないが、透明性と導電性向上のため、カーボンナノチューブがカーボンナノホーンよりも多いことが好ましい。さらには、カーボンナノチューブがカーボンナノホーンの2倍以上含まれていることが、より好ましい。
【0107】
本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、溶媒への分散性を高める目的で、作製(製造)後に湿式酸化することが望ましい。湿式酸化は一般的な方法で良く、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸などの酸あるいはこれらの混酸が挙げられる。
【0108】
本実施形態では、カーボンナノチューブナノホーン結合体を溶媒に分散して塗料を作製し、この塗料を基板上に液体塗布し透明導電膜を作製する。
【0109】
前記塗料を作製するための溶媒は、特に限定されず、例えば、一般の塗料に用いられる溶媒であっても良いが、塗布後の乾燥が容易であることから、沸点が200℃以下の溶媒が望ましい。前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、トルエン、ジエトキシエタンなどが挙げられ、1種類でも2種類以上併用しても良い。
【0110】
前記塗料には、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体と溶媒以外に、透明なバインダー材料、添加剤等を含んでいても良い。前記バインダー材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂などを用いることができる。
【0111】
塗布プロセスは、特に限定されず、一般的に用いられる塗布方法であっても良い。具体的には、例えば、スプレーコート、スクリーンコート、バーコート、ロールコート、グラビアコート、ブレードコート、インクジェットコート、ディップコート、スピンコート、キャスティング法などを用いることができる。
【0112】
前記基材は特に限定されず、例えば、シート状またはフィルム状であっても良いが、透明性の高い材料が好ましい。前記基材としては、具体的には、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0113】
このようにして作製された、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含む透明導電膜は、透明性が高く、かつ低抵抗である。また、上記透明導電膜は、大気中、低温の塗布で作製することができるので、高性能な透明導電膜を簡便に製造して用いることができる。
【0114】
〔第6の実施形態〕
次に、第6の実施形態について詳細に説明する。
【0115】
本実施形態は、第1の実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いたキャパシタおよびその製造方法に関する。
【0116】
エネルギーデバイスは、大きく、エネルギー蓄積デバイスとエネルギー発電デバイスとに分けられる。電気エネルギー蓄積デバイスとして代表的なものに、活性炭などを分極性電極として用い、電極表面と電解液との界面に生じる電気二重層を利用した電気二重層キャパシタがある。近年、上記の電極材料に活性炭よりも比表面積が2〜3倍大きいカーボンナノチューブを用いた電気二重層キャパシタが提案されている。
【0117】
しかし、従来のカーボンナノチューブは、バンドルを形成しやすく、絡み合って凝集しやすいため、素材が持つ比表面積を十分に活用することができない。また、カーボンナノホーンも単体では凝集しやすいため、その比表面積を有効利用することが難しい。
【0118】
これに対して、本実施形態では、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンが化学的に結合した本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いてキャパシタを作製する。本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前記のとおり、カーボンナノチューブ分子同士が直接結合せず、カーボンナノホーン分子を介して結合している。これにより、カーボンナノチューブ分子同士が分散され、バンドル状や団子状に凝集しにくい。すなわち、カーボンナノチューブを細かく切断することなく分散することができ、その状態で結合していることから、電解液が含浸したり電圧が印加されても、分散状態が崩れることがない。さらに、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体によれば、同時に、カーボンナノホーンの分散状態も維持することができる。
【0119】
このため、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体によれば、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの両者において、比表面積を増大させることができる。この結果、電解液がカーボンナノチューブおよびカーボンナノホーン全体に含浸しやすくなり、電気二重層キャパシタにおいて高い静電容量を得ることができる。
【0120】
本実施形態に用いる本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述の何れのカーボンナノチューブやカーボンナノホーンを用いて作製しても良い。特に、比表面積の大きなカーボンナノチューブとカーボンナノホーンを用いることが好ましく、さらには、触媒をできる限り含まないカーボンナノチューブを用いることがより好ましい。これは、カーボンナノチューブが触媒を含有していると、電極に電圧を印加した際に、合成時に使用した触媒金属がイオン化して電解液中に流出し、反応電流が流れ、エネルギー蓄積デバイスとしての信頼性を低下させるおそれがあるからである。
【0121】
本実施形態に用いる本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、さらに酸化処理等をすることによって、グラファイト層(グラフェンシート)の側面の少なくとも一部に開口を形成しても良い。これにより、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの内側を利用することができ、さらに比表面積を増加させることができる。
【0122】
また、本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を形成するカーボンナノチューブとカーボンナノホーンの質量比は、いずれの比率でもよいが、カーボンナノチューブナノホーン結合体全体の比表面積が大きくなるように選択することが好ましい。
【0123】
〔第7の実施形態〕
次に、第7の実施形態について詳細に説明する。
【0124】
本実施形態は、第1の実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いた燃料電池およびその製造方法に関する。
【0125】
エネルギーデバイスの、エネルギー発電デバイスとして代表的なものに、燃料電池などの電池がある。燃料電池は、水素やメタノール等の燃料を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものであり、新たな電気エネルギー供給源として注目されている。
【0126】
燃料電池の電極には触媒担持体として種々のカーボン材料が用いられ、近年ではカーボンナノチューブやカーボンナノホーンなどのナノカーボン材料を用いることが提案されている。ナノカーボン材料は、触媒を担持する目的のために比表面積が大きいこと、電極材料として導電性が高いこと、また、プロトン伝導物質が触媒表面に均一に分散することが望ましい。しかし、従来のカーボンナノチューブおよびカーボンナノホーンは、前述のように、単独では、凝集しやすいため、その比表面積を有効活用することが難しく、十分な導電性を得ることも困難である。
【0127】
これに対して、本実施形態では、カーボンナノチューブ分子とカーボンナノホーン分子とが化学的に結合した前記本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて燃料電池電極を作製する。本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述のように、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの分散状態を維持できる。このため、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの比表面積を増大させることができ、燃料電池用の触媒を担持しやすい。また、カーボンナノチューブがカーボンナノホーンを介して化学結合しているので、導電性が高く、カーボンのネットワーク構造をとることができることから、プロトン伝導物質がカーボン材料の隙間に均一に分散して入り込むことができる。この結果、カーボンナノチューブナノホーン結合体表面に燃料電池用の触媒を細かく担持することができ、プロトン伝導物質が均一に分散された導電性の高い電極を作製することができる。これらの特性に優れた燃料電池によれば、効率の良い発電が可能である。
【0128】
図8の断面図に、本実施形態の燃料電池50の構造の一例を模式的に示す。図示のとおり、触媒電極固体電解質膜複合体(MEA)51は、燃料極52、酸化剤極53、固体電解質膜58から構成される。燃料極52と酸化剤極53とを合わせて電極と呼び、本実施形態による燃料電池用電極は、燃料極52および酸化剤極53の少なくとも一方に用いられる。燃料極52は基体54および触媒層55から構成される。酸化剤極53は基体56および触媒層57から構成される。単数または複数のMEA51が燃料極側セパレータ59および酸化剤極側セパレータ60を介して電気的に接続される。
【0129】
本実施形態で用いる本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述の何れのカーボンナノチューブやカーボンナノホーンを用いて作製しても良い。特に、比表面積の大きなカーボンナノチューブとカーボンナノホーンを用いることが好ましい。
【0130】
本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、さらに酸化処理等をすることにより、グラファイト層(グラフェンシート)の側面の少なくとも一部に開口を形成しても良い。これにより、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの内側を利用することができ、さらに比表面積を増加させることができる。また、本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前記酸化処理等によって、グラファイト層の側面に開口が形成され、または、グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部が切断されていてもよい。これによるダングリングボンドや官能基の存在によって、触媒を担持しやすくなる。
【0131】
また、本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を形成するカーボンナノチューブとカーボンナノホーンの質量比は、いずれの比率でもよいが、カーボンナノチューブナノホーン結合体全体の比表面積が大きくなるように選択することが好ましい。
【0132】
〔第8の実施形態〕
次に、第8の実施形態について詳細に説明する。
【0133】
本実施形態は、第1の実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いたリチウムイオン二次電池およびその製造方法に関する。
【0134】
エネルギーデバイスの電池として代表的なものの一つに、リチウムイオン二次電池がある。充放電可能な二次電池は、携帯電子機器や移動通信機器だけでなく、電気自動車にも使われ始め、今後ますます高出力化、高容量化が要求されると予想される。
【0135】
一般的なリチウムイオン二次電池は、正極と負極との間に多孔質セパレータをはさみ、これを有機溶媒にリチウム塩電解質を含有させた電解液に浸している。近年、この正極または負極にカーボンナノチューブを導電材として用いることが提案されている。しかし、多孔質セパレータは、通常、後継0.1μm〜0.5μm程度の孔を有するため、直径が前記孔径よりも小さいカーボンナノチューブ分子が、前記孔を通って正極と負極との間を短絡してしまうおそれがある。
【0136】
これに対し、本実施形態では、カーボンナノチューブ分子とカーボンナノホーン分子が化学的に結合した本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体を、導電材として正極もしくは負極に用いてリチウムイオン二次電池を作製する。本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、カーボンナノチューブがナノホーンを介して化学的に結合しネットワーク構造をとることにより、多孔質セパレータの孔を通り抜けない。また、導電性が高いため、導電材としてもより効果が高い。
【0137】
また、リチウムイオン二次電池の負極に用いられるリチウム吸蔵材料をカーボンナノチューブ分子の内側の空間に収容する技術が、特開2002−334697号公報に記載されている。リチウムイオン吸蔵材料は、充電時にリチウムイオンを吸蔵して体積が増加し、放電時に吸蔵したリチウムを放出して体積が減少する。これにより、前記リチウムイオン吸蔵材料が炭素材料で覆われている場合、前記炭素材料が微粒化するおそれがある。特開2002−334697号公報によれば、前記炭素材料がカーボンナノチューブであることにより、前記リチウムイオン吸蔵材料が前記カーボンナノチューブ分子の軸方向に伸長および収縮可能である。これにより、前記炭素材料(カーボンナノチューブ)の微粒化を防止できる。
【0138】
本実施形態では、例えば、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体をリチウム二次電池の負極に用いる。これにより、カーボンナノチューブ内部だけでなく、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体ネットワークの隙間、すなわちカーボンナノチューブ分子同士またはカーボンナノチューブ分子とカーボンナノホーンとの隙間にリチウム吸蔵材料を収容することができる。または、本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体自体がリチウム吸蔵を行うことができる。前記リチウム吸蔵材料は、特に限定されないが、例えば、有機高分子化合物やコークス、ピッチなどの炭素系材料を焼成したもの、グラファイト、アモルファスカーボンなどを用いることができる。
【0139】
本実施形態のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、前述の何れのカーボンナノチューブやカーボンナノホーンを用いて作製しても良い。特に、導電性の優れたカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
【0140】
本実施形態に用いる本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、さらに酸化処理等をすることで、グラファイト層(グラフェンシート)の側面の少なくとも一部に開口を形成しても良い。これにより、カーボンナノチューブまたはカーボンナノホーンの分子の内側を利用しやすいため、リチウム吸蔵材料またはリチウム吸蔵材料を収容する材料として用いやすい。
【実施例】
【0141】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により、なんら限定されない。
【0142】
(実施例1)
カーボンナノホーン10gを過酸化水素水(30%)2000ml中に入れ、スターラーで300rpmで攪拌しながら、ウォーターバスにより70℃で3時間加熱した。加熱後、0.2μmフィルターでろ過して過酸化水素を除き、フィルター上のカーボンナノホーンを純水で2回洗った。その後、フィルター上に残ったカーボンナノホーンを100℃のオーブンで48時間乾燥した。この処理により、カーボンナノホーン分子の表面に小さな傷(孔を含む)を複数つけることができた(炭素−炭素結合切断工程)。
【0143】
一方、カーボンナノチューブ200mgを1,2−ジクロロエタン200ml中で超音波照射し分散させた。前記超音波処理の条件は45kHz、100Wのバス型超音波を2時間照射とした。このカーボンナノチューブ分散溶液に、前記炭素−炭素結合切断工程で作製した、傷をつけたカーボンナノホーン200mgを加え、更に超音波を1時間照射し、分散させた(混合工程)。その後、この溶液をろ過し、フィルター上に残った沈殿を乾燥した。
【0144】
前記混合工程で作製されたカーボンナノチューブとカーボンナノホーンの分散混合物を、真空中1200℃で30分加熱した(加熱工程)。これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンが均一に分散されて混合し、カーボンナノチューブナノホーン結合体が作製されていることが観察された。図3に、観察されたTEM像を示す。図示のとおり、このカーボンナノチューブナノホーン結合体は、カーボンナノチューブ分子とカーボンナノホーン分子との結合により、ネットワーク(網状の組織)が形成されている。
【0145】
TEM観察結果からは、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンとが化学的に結合していることを確認するのは困難であるが、別の方法で、前記化学的な結合を確認できる。すなわち、まず、前記混合工程で作製されたカーボンナノチューブとカーボンナノホーンの分散混合物をエタノールに分散させ、静置し、上澄み液と沈殿物の分離およびろ過をくり返すと、組成が変化した。これに対し、前記加熱工程後のカーボンナノチューブナノホーン結合体に対し同じ処理をしても、組成が変化しなかった。これにより、カーボンナノホーン分子とカーボンナノチューブ分子とが容易に分離しないことにより、両者が化学的で強固な結合を形成していることが確認された。
【0146】
(比較例1)
カーボンナノホーンを、酸素気流中、570℃で10分加熱して開口を形成した。得られた開口ナノホーン50mgと酢酸鉄50mgとをエタノール20cm中で混合し、超音波分散させ、24時間室温で攪拌後、ろ過し、エタノール洗浄し、乾燥させて、酢酸鉄担持ナノホーンを得た。得られた酢酸鉄担持ナノホーン10mgをアルミナ製ボート内に置き、ArとHの混合ガス気流中、800℃まで加熱した。前記系内の温度が800℃に到達後、ArとHの混合ガス気流をエタノール中でバブリングさせ、Ar、H、およびエタノールの混合ガス気流に切り替えて15分間CVDを行い、ナノチューブ・ナノホーン複合体を作製した。CVD後、エタノールバブリングを止め、ArとHの混合気流下で室温まで冷却し、ナノチューブ・ナノホーン複合体を得た。図4に、得られたナノチューブ・ナノホーン複合体のTEM像を示す。
【0147】
(実施例1と比較例1との対比の検討結果)
図4のTEM像から、比較例1のナノチューブ・ナノホーン複合体は、カーボンナノホーン内部または表面にカーボンナノチューブ生成用触媒(前記酢酸鉄)が残存していることが観察された。これに対して、実施例1のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、製造工程にカーボンナノチューブ生成用触媒を用いないので、図3に示すように、カーボンナノチューブ生成用触媒が残存しない。また、実施例1のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、TEM像によれば、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの質量比は、ほぼ原料の質量比通り、すなわち約1:1と推定された。これに対し、比較例1のナノチューブ・ナノホーン複合体は、TEM像によれば、カーボンナノチューブの質量がカーボンナノホーンの質量の約1/1000〜1/100程度と推定され、カーボンナノホーンに対するカーボンナノチューブの質量比がきわめて小さかった。
【0148】
(実施例2)
実施例1により作製(製造)したカーボンナノチューブナノホーン結合体を、導電性粒子などと三本ロールミルで混合混練した。これにより、前記カーボンナノチューブナノホーン結合体1重量部、銀粒子200重量部、エポキシ樹脂20重量部、および硬化剤2重量部で構成される導電性ペーストを製造した。前記導電性ペーストを150℃で硬化させた後、比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
【0149】
(比較例2)
銀粒子200重量部、エポキシ樹脂20重量部、および硬化剤2重量部とで構成される導電性ペーストを三本ロールミルで混合混練することによって製造し、150℃で硬化させた後、比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。実施例2との比較として、比較例2は、カーボンナノチューブナノホーン結合体を用いていない。
【0150】
(比較例3)
カーボンナノチューブ1重量部、銀粒子200重量部、エポキシ樹脂20重量部、および硬化剤2重量部とで構成される導電性ペーストを三本ロールミルで混合混練することによって製造し、150℃で硬化させた後、比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。実施例2との比較として、比較例3は、カーボンナノチューブナノホーン結合体に代えて、カーボンナノチューブを用いている。
【0151】
【表1】

【0152】
(実施例2と比較例2および3との対比の検討結果)
表1の結果から、実施例2の導電性ペーストは比較例2と比較例3の導電性ペーストに比べて比抵抗が低減していることが分かる。すなわち、導電性ペーストにカーボンナノチューブナノホーン結合体を混ぜた場合、カーボン材料を混ぜない場合やカーボンナノチューブのみを混ぜた場合に比べて、比抵抗を低減することができ、高い導電性を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上、説明したとおり、本発明によれば、分散性が良く、導電性が高く、かつ、カーボンナノチューブ生成用の触媒を含まない、新たなカーボンナノチューブナノホーン結合体およびその用途を提供することができる。また、本発明は、そのようなカーボンナノチューブナノホーン結合体を低コストで簡便な方法で大量製造可能であり、かつ、カーボンナノチューブとカーボンナノホーンの含有比を自由に制御できる製造方法を提供することができる。本発明のカーボンナノチューブナノホーン結合体は、例えば、電子放出源電極ペースト、エミッタ電極、電子放出発光素子、透明導電膜、透明導電膜形成用塗料、キャパシタ、電池、燃料電池またはリチウムイオン二次電池に用いることができるが、これに限定されず、どのような用途に用いても良い。
【0154】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0155】
(付記1)
カーボンナノチューブと、カーボンナノホーンとを含み、
前記カーボンナノチューブは、チューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンは、少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンにおける前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部が切断され、その炭素原子が、前記カーボンナノチューブの炭素原子と化学的に結合されており、
前記カーボンナノホーンが、カーボンナノチューブ生成用の触媒を実質的に含まないことを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0156】
(付記2)
前記触媒が、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含み、かつ、前記カーボンナノチューブナノホーン結合体のカーボンナノホーンに実質的に吸着されていないことを特徴とする付記1記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0157】
(付記3)
前記カーボンナノチューブが、複数のカーボンナノチューブ分子を含み、
前記カーボンナノホーンが、複数のカーボンナノホーン集合体を含み、
前記各カーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーン分子から形成され、
前記複数のカーボンナノチューブ分子同士が、前記複数のカーボンナノホーン集合体との架橋を介して化学的に結合されていることを特徴とする付記1または2記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0158】
(付記4)
前記カーボンナノホーンの質量が、前記カーボンナノチューブの質量の0.001〜1000倍であることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0159】
(付記5)
熱重量分析(TGA)または示差熱分析(DTA)により測定した酸素雰囲気中での燃焼温度ピークが500℃以上であることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0160】
(付記6)
前記カーボンナノチューブおよび前記カーボンナノホーンを形成する前記グラファイト層の側面の炭素−炭素結合の少なくとも一部が切断されていることを特徴とする付記1から5のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0161】
(付記7)
前記カーボンナノチューブおよび前記カーボンナノホーンを形成する前記グラファイト層の側面の少なくとも一部に開口が形成されていることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0162】
(付記8)
少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノホーンにおける、前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部を切断する炭素−炭素結合切断工程と、
前記炭素−炭素結合切断工程後の前記カーボンナノホーンを、チューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノチューブと混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合工程により得られた前記混合物を、真空または不活性ガス雰囲気中で加熱する加熱工程とを含むことを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法。
【0163】
(付記9)
前記炭素−炭素結合切断工程において、前記カーボンナノホーンに対し、酸処理および酸素雰囲気中での加熱による酸化処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする付記8記載の製造方法。
【0164】
(付記10)
前記加熱工程において、800℃以上の温度で加熱することを特徴とする付記8または9記載の製造方法。
【0165】
(付記11)
さらに、前記加熱工程後、前記カーボンナノチューブおよび前記カーボンナノホーンを形成する前記グラファイト層の側面の炭素−炭素結合の少なくとも一部を切断する第2の炭素−炭素結合切断工程を含むことを特徴とする付記8から10のいずれかに記載の製造方法。
【0166】
(付記12)
前記第2の炭素−炭素結合切断工程が、前記カーボンナノチューブおよび前記カーボンナノホーンを形成する前記グラファイト層の側面の少なくとも一部に開口を形成する開口形成工程であることを特徴とする付記11記載の製造方法。
【0167】
(付記13)
前記第2の炭素−炭素結合切断工程において、前記カーボンナノチューブナノホーン結合体に対し、酸処理および酸素雰囲気中での加熱による酸化処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする付記11または12記載の製造方法。
【0168】
(付記14)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0169】
(付記15)
前記カーボンナノチューブが、複数のカーボンナノチューブ分子を含み、
前記カーボンナノホーンが、複数のカーボンナノホーン集合体を含み、
前記各カーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーン分子から形成され、
前記複数のカーボンナノチューブ分子同士が、前記複数のカーボンナノホーン集合体との架橋を介して化学的な結合により2次元または3次元に広がった網状の組織を形成していることを特徴とする付記1から7および14のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【0170】
(付記16)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする導電性ペースト。
【0171】
(付記17)
さらに、導電性粒子、硬化性樹脂および硬化剤を含むことを特徴とする付記16記載の導電性ペースト。
【0172】
(付記18)
付記16または17記載の導電性ペーストにより回路パターンを形成したことを特徴とする回路基板。
【0173】
(付記19)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする電子放出源電極ペースト。
【0174】
(付記20)
さらに、無機物、有機物バインダおよび溶媒を含むことを特徴とする付記19記載の電子放出源電極ペースト。
【0175】
(付記21)
付記19または20記載の電子放出源電極ペーストにより製造されることを特徴とするエミッタ電極。
【0176】
(付記22)
付記21記載のエミッタ電極と、アノード電極とを有し、
前記アノード電極は、蛍光体層を含み、
前記エミッタ電極と前記蛍光体層とが対向しており、前記エミッタ電極から放出される電子が前記蛍光体層に衝突することで発光可能であることを特徴とする電子放出発光素子。
【0177】
(付記23)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする透明導電膜。
【0178】
(付記24)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする透明導電膜形成用塗料。
【0179】
(付記25)
さらに、バインダー材料および溶媒を含むことを特徴とする付記24記載の透明導電膜形成用塗料。
【0180】
(付記26)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とするキャパシタ。
【0181】
(付記27)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする電池。
【0182】
(付記28)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする燃料電池。
【0183】
(付記29)
付記1から7および14から15のいずれかに記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【0184】
(付記30)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて導電性ペーストを製造することを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
【0185】
(付記31)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて電子放出源電極ペーストを製造することを特徴とする電子放出源電極ペーストの製造方法。
【0186】
(付記32)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて透明導電膜を製造することを特徴とする透明導電膜の製造方法。
【0187】
(付記33)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いてキャパシタを製造することを特徴とするキャパシタの製造方法。
【0188】
(付記34)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて電池を製造することを特徴とする電池の製造方法。
【0189】
(付記35)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いて燃料電池を製造することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【0190】
(付記36)
付記8から13のいずれかに記載の製造方法によりカーボンナノチューブナノホーン結合体を製造し、そのカーボンナノチューブナノホーン結合体を用いてリチウムイオン二次電池を製造することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【符号の説明】
【0191】
1 カーボンナノホーン
2 カーボンナノホーン集合体
3 カーボンナノチューブ
4 カーボンナノチューブナノホーン結合体
5 導電性ペースト
6 導電性粒子
7 硬化性樹脂
8 基板
9 マスク
10 回路パターン
11 電子部品
12 電界放出発光素子
13 アノード基板
14 ガラス基板
15 アノード電極
16 蛍光体層
20 カソード基板
21 ガラス基板
22 カソード電極
23 エミッタ(電子放出源電極)
30 スペーサ
50 燃料電池
51 触媒電極固体電解質膜複合体(MEA)
52 燃料極
53 酸化剤極
54 基体
55 触媒層
56 基体
57 触媒層
58 固体電解質膜
59 燃料極側セパレータ
60 酸化剤極側セパレータ
100 傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、カーボンナノホーンとを含み、
前記カーボンナノチューブは、チューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンは、少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成され、
前記カーボンナノホーンにおける前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部が切断され、その炭素原子が、前記カーボンナノチューブの炭素原子と化学的に結合されており、
前記カーボンナノホーンが、カーボンナノチューブ生成用の触媒を実質的に含まないことを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【請求項2】
前記触媒が、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含み、かつ、前記カーボンナノチューブナノホーン結合体のカーボンナノホーンに実質的に吸着されていないことを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、複数のカーボンナノチューブ分子を含み、
前記カーボンナノホーンが、複数のカーボンナノホーン集合体を含み、
前記各カーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーン分子から形成され、
前記複数のカーボンナノチューブ分子同士が、前記複数のカーボンナノホーン集合体との架橋を介して化学的に結合されていることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【請求項4】
熱重量分析(TGA)または示差熱分析(DTA)により測定した酸素雰囲気中での燃焼温度ピークが500℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【請求項5】
少なくとも一方の端が閉じたチューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノホーンにおける、前記グラファイト層を形成する炭素−炭素結合の一部を切断する炭素−炭素結合切断工程と、
前記炭素−炭素結合切断工程後の前記カーボンナノホーンを、チューブ状のグラファイト層から形成されたカーボンナノチューブと混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合工程により得られた前記混合物を、真空または不活性ガス雰囲気中で加熱する加熱工程とを含むことを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体の製造方法。
【請求項6】
前記炭素−炭素結合切断工程において、前記カーボンナノホーンに対し、酸処理および酸素雰囲気中での加熱による酸化処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の製造方法により製造されることを特徴とするカーボンナノチューブナノホーン結合体。
【請求項8】
請求項1から4および7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1から4および7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とするキャパシタ。
【請求項10】
請求項1から4および7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブナノホーン結合体を含むことを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214342(P2012−214342A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81286(P2011−81286)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】