説明

カーボンナノチューブ含有構造体、カーボンナノチューブ含有組成物及びカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法

【課題】被膜の成形性、成膜性に優れ、かつ、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、簡便な方法で基材への塗工が可能で、しかも得られる被膜が長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できるカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法を目的とする。
【解決手段】カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有することを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体。基材の少なくとも一つの面上に、カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射及び/または常温で放置、もしくは加熱処理することを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ含有構造体、カーボンナノチューブ含有組成物及びカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな産業分野において、ナノメートルサイズを有するいわゆるナノ物質を取り扱うナノテクノロジーが注目されている。ナノ物質を他の複数の材料とナノメーターレベルで複合化させることによって、従来にない優れた機能を持った材料の開発が行われている。
ナノ物質は、材料中に均一に分散させることによって、バルク状態とは異なる性質を示す。ゆえに、ナノ物質を他の材料と複合化した組成物中に分散させておく技術は不可欠である。しかしながら、一般にナノ物質は、その表面状態が不安定であるため、他の材料との複合化の際に凝集し、ナノ物質特有の機能を発揮できないという問題があった。
【0003】
ところで、ナノ物質の中でもカーボンナノチューブは、1991年に発見されて以来、その物性評価や機能解明が盛んに行われており、その応用に関する研究開発も盛んである。
しかしながら、カーボンナノチューブは、その製造段階において、互いに絡まって凝集した状態となりやすく、その状態のままで他の材料である樹脂や溶剤等と複合化すると、カーボンナノチューブの絡まりがさらに凝集してしまい、カーボンナノチューブが本来有する諸特性を発揮できないという問題があった。
【0004】
この問題を解消するために、カーボンナノチューブを物理的に処理したり、化学的に修飾したりして、樹脂や溶剤に均一に分散または溶解する試みが行われている。
例えば、カーボンナノチューブを強酸中で超音波処理することにより、短く切断して分散する方法が提案されている(非特許文献1)。
しかしながら、この提案による方法では、カーボンナノチューブを強酸中で処理するため、操作が煩雑となり、工業的に適した方法ではなく、その分散性も充分とはいえない。
【0005】
また、例えば、カーボンナノチューブを短く切断し、切断されたカーボンナノチューブの両末端をカルボン酸基等の含酸素官能基で終端し、さらにこのカルボン酸基を酸塩化物にした後、アミン化合物と反応させて長鎖アルキル基を導入することで、溶剤への分散性を向上する方法が提案されている(非特許文献2)。
しかしながら、この提案による方法では、カーボンナノチューブへの長鎖アルキル基の導入に共有結合を用いているため、カーボンナノチューブのグラフェンシート構造(複数の炭素原子からなる六角網目状のシート構造)の損傷、あるいはカーボンナノチューブ自体の諸特性に影響を与える等の問題点が残されている。
【0006】
他の試みとしては、ピレン分子が強い相互作用によってカーボンナノチューブ表面上に吸着することを利用して、ピレン分子にアンモニウムイオンを含有する置換基を導入し、このピレン分子をカーボンナノチューブとともに水中で超音波処理する方法が提案されている(非特許文献3)。この提案による方法を用いれば、カーボンナノチューブにピレン分子を非共有結合的に吸着させることにより、水溶性のカーボンナノチューブを製造することができる。また、非共有結合型の化学修飾のため、グラフェンシートの損傷等が生じにくい。
しかしながら、この提案による方法では、カーボンナノチューブの表面に非導電性のピレン分子が存在するため、カーボンナノチューブの導電性が低下するという問題点がある。
【0007】
他にも、汎用の界面活性剤やポリマー系分散剤を使用して、カーボンナノチューブ自体の特性を損なうことなく、カーボンナノチューブを水、有機溶剤等の溶媒に分散または溶解して分散液を得る方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。該分散液は、溶液状態ではカーボンナノチューブが安定的に分散しているとの記載がある。
しかしながら、この提案による方法では、該分散液から形成される塗膜、及び複合体中でのカーボンナノチューブの分散状態、さらには、導電性材料等への応用に関しては記載されていない。
【0008】
また、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、溶剤からなるカーボンナノチューブ含有組成物、及びそれから製造される構造体が提案されている(特許文献3)。この提案による方法では、導電性ポリマーが共存することでカーボンナノチューブ自体の特性を損なうことがない構造体が得られると報告している。また、カーボンナノチューブを水、有機溶剤、含水有機溶剤等の溶剤に均一に分散または溶解することで、カーボンナノチューブ含有組成物中でのカーボンナノチューブの長期的な保存安定性が向上できると報告している。なお、導電性ポリマーが共存したカーボンナノチューブ含有組成物は、導電性、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材へ塗工することが可能である。
しかしながら、この提案による方法では、使用する導電性ポリマー由来の着色が生ずるため、無色透明が要求される材料への応用が難しい。また、一般に導電性ポリマーは、各種溶剤への溶解性が低いために、使用できる溶剤の制限が大きいという問題点があった。
【0009】
また、ナノ物質、(メタ)アクリル系重合体、溶剤からなる組成物、及びそれから製造される構造体が提案されている(特許文献4)。この提案による方法にでは、該組成物及び該構造体は(メタ)アクリル系重合体を共存させることで、ナノ物質を、その特性を損なうことなく、水、有機溶剤、含水有機溶剤等の溶剤に分散または溶解することができ、以ってナノ物質の長期的な保存安定性に優れると報告している。(メタ)アクリル系重合体が共存したナノ物質含有組成物は、成膜性、成形性に優れ、簡便な方法で基材へ塗工することが可能である。
しかしながら、この提案による方法では、分散性を向上するために、アミン化合物の併用が必要となり、使用できる溶剤が限定されてしまうという問題点があった。さらに、この提案による組成物は、スルホン酸基等を含有する化合物を含有するため、該組成物を重合性単量体中に添加して、塗膜(硬化膜)として使用する場合には、塗膜を形成する他の材料との架橋点がなく、塗膜の耐水性、耐擦傷性が低下するという問題点があった。
【0010】
この他に、イソシアネート化合物とポリヒドロキシ化合物との反応物であるウレタンアクリレート化合物を含有するバインダー樹脂に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の黒色系顔料を添加したブラックマトリックス用感光性組成物が提案されている(特許文献5)。この提案による方法では、該ウレタンアクリレート化合物を含有する感光性組成物は、薄膜で高遮光性を有するパターンを容易に形成でき、高感度、高硬化速度を有するため、ブラックマトリックスを低コストで製造できると報告されている。
しかしながら、この提案による方法では、黒色系顔料用の分散剤は添加しているものの、カーボンナノチューブの分散性に関しては充分に検討されていない。また、ブラックマトリックスは、黒色系顔料を含有する感光性組成物から得られる塗膜によって遮光性を発現させるものであるため、透明性が要求される用途は想定しておらず、用いたとしても、感光性組成物中のカーボンナノチューブの分散性が低いため、充分な透明性のある塗膜を得られない。さらに、この提案では、カーボンナノチューブによる導電性の向上については記載されていない。
【0011】
一方、複合体(複数の材料を複合化して得られた硬化物)に粒状物質を添加する先行技術に関しては、熱可塑性樹脂中に導電性粒子とカーボンナノチューブとを分散してなる導電性組成物が提案されている(特許文献6)。この提案による方法では、該導電性組成物中に含有されるカーボンナノチューブが導電性粒子間の導通を補助することにより、少量の導電性粒子で高い導電性を発現できると報告している。
しかしながら、この提案による方法では、カーボンナノチューブの分散性を向上する対策は図られておらず、単に他の材料と共にミルにて溶融混練したのみである。そのため、カーボンナノチューブの分散性が不充分であり、導電性が充分に向上できるとはいえない。また、この前記導電性組成物は、導電性の発現を導電性微粒子に依存しており、カーボンナノチューブ自体はそれら導電性粒子の導通を補助するために使われているだけに過ぎない。ゆえに、カーボンナノチューブの優れた導電性が充分に発揮されているとはいえない。
【0012】
また、アルコキシシランのオリゴマーの加水分解からなるシリカ粒子、及びウレタン結合を有するモノマー及び/またはそのオリゴマーを含有する放射線硬化性組成物が提案されている(特許文献7)。この提案では、補助材料の一例としてカーボンナノチューブが例示されている。
しかしながら、この提案では、該放射線硬化性組成物にカーボンナノチューブを添加した際の分散性の向上については考慮されておらず、カーボンナノチューブの有する諸特性、及び分散性が不充分である。
【0013】
さらに、重合体と粒子状物質とを主体とした複合体中において、重合体と粒子状物質とが合体した重合体/粒子状物質同士の合間に、炭素ナノチューブがさらに合体し、重合体粒子の少なくともいくつかの間で相互連結したネットワークを形成することのできる伝導性炭素ナノチューブと重合体との複合体が提案されている(特許文献8)。この提案による方法では、複合体を形成する際に、カーボンナノチューブの安定化剤として、ドデシル硫酸ナトリウム等の表面活性剤が例示されている。
【特許文献1】国際公開第2002/016257号パンフレット
【特許文献2】特開2005−35810号公報
【特許文献3】国際公開第2004/039893号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/028200号パンフレット
【特許文献5】特開2005−331938号公報
【特許文献6】特開2003−34751号公報
【特許文献7】特開2004−169028号公報
【特許文献8】特表2006−525220号公報
【非特許文献1】R.E.Smalley等,「Fullerene Pipes」,Science,280号,p.1253(1998年)
【非特許文献2】J.Chen等,「Solution Properties Single−Walled Carbon Nanotube」,Science,282号,p.95(1998年)
【非特許文献3】Nakajima等,「Water−Soluble Single−Walled Carbon Nanotube via Noncovalent Side−Functionalization with a Pyrene Ammonium Ion」,Chem.Lett.,p.638(2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献8の提案には、巨視レベルでは全体的に均質な分散物を得られるものの、微視的レベルではカーボンナノチューブが不均一に分散しているとの記載があり、カーボンナノチューブの特性が充分に発揮されていないという問題点がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる被膜を有するカーボンナノチューブ含有構造体及びこれに使用するためのカーボンナノチューブ含有組成物の提供を目的とする。さらに、被膜の成形性、成膜性に優れ、かつ、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、簡便な方法で基材への塗工が可能で、しかも得られる被膜が長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できるカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、これらの課題を解決するため鋭意研究をした結果、本発明に到達した。すなわち、前記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]基材の少なくとも一つの面上にカーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有する被膜が形成されたカーボンナノチューブ含有構造体。
[2]カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物。
[3]基材の少なくとも一つの面上に、カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射及び/もしくは常温で放置、または加熱処理するカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、被膜中にカーボンナノチューブが均一に分散しているため、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を使用することで、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる被膜を有するカーボンナノチューブ含有構造体を提供できる。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法によると、被膜の成形性、成膜性に優れ、かつ、カーボンナノチューブの特性を損なうことなく、簡便な方法で基材への塗工が可能で、しかも形成される被膜が長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できるカーボンナノチューブ含有構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及び/またはメタクリレート」を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/またはメタクリル」、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル及び/またはメタアクリロイル」を意味する。
【0018】
<<カーボンナノチューブ含有構造体>>
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有する被膜を有する。ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)とを、カーボンナノチューブ(a)と共存させることにより、長期的に優れた導電性、透明性を維持できる被膜を有したカーボンナノチューブ含有構造体が得られる。
【0019】
<カーボンナノチューブ(a)>
カーボンナノチューブ(a)は、例えば、厚さ数原子層を有するグラファイト状の炭素原子面を丸めた円筒、または該円筒が複数個入れ子構造になったものであり、外径がnmオーダーの極めて微小な物質である。
カーボンナノチューブ(a)としては、例えば、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったコイル状カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの片側が閉じた形状をしたカーボンナノホーン、底の空いたコップを積み重ねたような形状であるカップスタック型カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブの類縁体であるフラーレン(炭素原子が中空の球状に結合した炭素クラスター)、カーボンナノファイバー等が挙げられる。また、これらカーボンナノチューブ(a)に対して、化学的、物理的な処理を施して官能基を導入したものを用いてもよい。
【0020】
カーボンナノチューブ(a)の製造方法としては、二酸化炭素を用いた接触水素還元法、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD−1法)、気相成長法等が挙げられる。さらに、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて、気相中にカーボンナノチューブを形成するHiPco法等も挙げられる。本発明で好ましく用いられるカーボンナノチューブ(a)としては、カーボンナノチューブの有する各種特性を発現させやすいことから、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを挙げることができる。
また、カーボンナノチューブ(a)は、さらに洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されることが好ましい。
さらに、カーボンナノチューブ(a)は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕されていてもよく、化学的、物理的処理によって短く切断されていてもよい。
【0021】
<ウレタン化合物(b)>
ウレタン化合物(b)は、ウレタン結合を有する化合物であれば特に限定されないが、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)とイソシアネート化合物(b−2)との重合反応による反応物であるウレタン結合を有する重合体(b−3)を含有することが好ましい。ウレタン化合物(b)が、前記重合体(b−3)を含有することで、導電性がより向上する。
ウレタン化合物(b)は、1分子中に1つ以上のウレタン結合が存在する化合物であればよい。また、ウレタン結合がウレタン化合物(b)中に2つ以上存在するとき、各ウレタン結合に結合する官能基は同一でも異なっていてもよい。このようなウレタン化合物(b)としては、例えば、カチオン性、アニオン性、ノニオン性あるいは両性の化合物を用いることができる。また、その構造中にケイ素原子やフッ素原子を有するシリコーン系のウレタン化合物、あるいはフッ素系のウレタン結合を有するウレタン化合物であってもよい。
【0022】
(水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1))
本発明に使用できる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)は、その分子中に1つ以上の水酸基と、1つ以上の(メタ)アクリレート基とを含有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)、(2)で表される化合物を好ましく例示することができる。
【0023】
【化1】

(式中、R11は水素原子またはメチル基を示し、R12はエーテル結合を好ましく含む炭素数2〜24の炭化水素基であり、m及びnはそれぞれ1以上、かつ(m+n)がR12の炭素数以下である整数を表す。)
【0024】
【化2】

(式中、R21は水素原子またはメチル基を示し、R22は炭素数2〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基、または炭素数1〜24のアラルキレン基を、nは1〜100の整数を表す。)
【0025】
1つの(メタ)アクリレート基と、1つの水酸基とを有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸2−[(6−ヒドロキシヘキサノイル)オキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸9−ヒドロキシ−10−メトキシデシル、(メタ)アクリル酸2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ])エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル、デカエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、トリデカエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸17−ヒドロキシ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン1−イル、(メタ)アクリル酸20−ヒドロキシ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン1−イル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシカルボニル)プロピル、(メタ)アクリル酸3−[3−(3−ヒドロキシプロピル)−3−オキソプロポキシ]−3−オキソプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−フェニル−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、(メタ)アクリル酸2−[(2−ヒドロキシベンジル)オキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(4−ヒドロキシフェノキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−4−アセチルフェニル、(メタ)アクリル酸4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−4−ベンゾイルフェニル、(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)トリデシル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシテトラデシル等を挙げることができる。
【0026】
1つの(メタ)アクリレート基と、2つ以上の水酸基とを有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸3,4−ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、(メタ)アクリル酸1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2,4−ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸9,10−ジヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2,3,4−トリヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)−2,3−ジヒドロキシプロピル等を挙げることができる。
【0027】
2つ以上の(メタ)アクリレート基と、1つの水酸基とを有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシトリメチレン、ジ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−メチルトリメチレン、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジイル、ジ(メタ)アクリル酸2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)トリメチレン、ジ(メタ)アクリル酸2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−(2−ヒドロキシエチル)−1,2−エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシメチル−1,2−エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−(1−ヒドロキシエチル)−1,2−エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,2−エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)−1−メチルエチレン、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1,4−ブタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1,6−ヘキサンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1−(2−ヒドロキシプロポキシメチル)エチレンビス[オキシ(1−メチル−2,1−エタンジイル)]、ビス(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,3−プロパンジイルビス[オキシ(1−メチル−2,1−エタンジイル)]、(メタ)アクリル酸8−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,4,12−トリメチル−14−オキソ−3,6,10,13−テトラオキサ−15−ヘキサデセン−1−イル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]プロピル、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリル酸2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,2,3−トリイル、ビス(メタ)アクリル酸2−(アクリロイルオキシメチル)−2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジイル、トリス(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,2,3−トリイル、トリス(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブタン−1,2,4−トリイル、(メタ)アクリル酸3−[2,2−ビス[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]−3−ヒドロキシプロポキシ]−2,2−ビス[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]プロピルジペンタエリスリト−ルペンタ(メタ)アクリレート、ビス(メタ)アクリル酸2−({[2−(ヒドロキシメチル)−2−[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]−3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]オキシ}メチル)−2−[((メタ)アクリロイルオキシ)メトキシ]プロパン−1,3−ジイル等を挙げることができる。
【0028】
2つ以上の(メタ)アクリレート基と2つ以上の水酸基とを有する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)としては、例えば、ビス(メタ)アクリル酸2,3−ジヒドロキシブタン−1,4−ジイル、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル、ジ(メタ)アクリル酸2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジイル、ビス(メタ)アクリル酸1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチレン、ビス(メタ)アクリル酸1−(1,2−ジヒドロキシエチル)エタン−1,2−ジイル、ビス(メタ)アクリル酸1,2−ビス(ヒドロキシメチル)エチレン、ビス(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジイルビス(オキシ)ビス(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)、ビス(メタ)アクリル酸(2,11−ジヒドロキシ−4,9−ジオキサドデカン)−1,12−ジイル、ビス(メタ)アクリル酸2,9−ジヒドロキシ−4,7−ジオキサデカン−1,10−ジイル、ジ(メタ)アクリル酸3,3′−(1,3−フェニレンビスオキシ)ビス(2−ヒドロキシプロピル)等を挙げることができる。
これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0029】
(イソシアネート化合物(b−2))
本発明に使用できるイソシアネート化合物(b−2)は、イソシアネート類、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類、ポリイソシアネート類であれば特に限定されないが、好ましくはジイソシアネート化合物及び/またはトリイソシアネート化合物である。
【0030】
前記イソシアネート類としては、例えば、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸トリル、イソシアン酸ナフチル、イソシアン酸ビニル等が挙げられる。
【0031】
前記ジイソシアネート類としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート類;ベンゼン−1,3−ジイソシアネート、ベンゼン−1,4−ジイソシアネート等のベンゼンジイソシアネート類;トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類;1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネート等のキシレンジイソシアネート類等の芳香族ジイソシアネート類を挙げることができる。
【0032】
前記トリイソシアネート類としては、例えば、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアネート、ベンゼン−1,2,5−トリイソシアネート、ベンゼン−1,3,5−トリイソシアネート等のベンゼントリイソシアネート類;トルエン−2,3,5−トリイソシアネート、トルエン−2,3,6−トリイソシアネート、トルエン−2,4,5−トリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、トルエン−3,4,6−トリイソシアネート、トルエン−3,5,6−トリイソシアネート等のトルエントリイソシアネート類;1,2−キシレン−3,4,6−トリイソシアネート、1,2−キシレン−3,5,6−トリイソシアネート、1,3−キシレン−2,4,5−トリイソシアネート、1,3−キシレン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3−キシレン−3,4,5−トリイソシアネート、1,4−キシレン−2,3,5−トリイソシアネート、1,4−キシレン−2,3,6−トリイソシアネート等のキシレントリイソシアネート等の芳香族トリイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4− イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の脂肪族、脂環族または含ヘテロ原子含有のトリイソシアネート類を挙げることができる。
【0033】
前記ポリイソシアネート類としては、例えば、前記ジイソシアネート類、トリイソシアネート類の3量体、及びこれらのポリオール付加物等が挙げられる。
【0034】
前記ジイソシアネート類としては下記一般式(3)、前記トリイソシアネート類としては下記一般式(4)、前記ジイソシアネート類または前記トリイソシアネート類における芳香族イソシアネート類としては下記一般式(5)で示されるイソシアネート化合物を好ましい例として挙げる事ができる。
【0035】
【化3】

(式中、R31は水素、または炭素数1〜8のアルキル基、nは1〜25の整数を表す。また、nが2以上の場合には、各(置換)メチレン基に置換するR31は同一であっても、異なってもよい。)
【0036】
【化4】

(式中、R41〜R43はそれぞれ独立に炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基、またはアラルキレン基から選ばれた2価の基を表す。)
【0037】
【化5】

(式中、R51は炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれた基であり、mは0〜4の整数であり、mが2以上の時には同一であってもよいし、異なっていてもよい。nは2〜6の整数であり、(m+n)は6以下の整数である。)
【0038】
前記一般式(3)で表されるジイソシアネート類としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
【0039】
前記一般式(4)で表されるトリイソシアネート類としては、前記ジイソシアネート類の3量体からなるものが好ましい。
【0040】
前記一般式(5)で表される芳香族イソシアネート類としては、ベンゼン−1,3−ジイソシアネート、ベンゼン−1,4−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
【0041】
これらのイソシアネート化合物(b−2)のうち、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネートが用いられる。
なお、これらのイソシアネート化合物(b−2)は単独で用いてもよいし、2種類以上併用することもできる。
【0042】
本発明で用いられるウレタン化合物(b)としては、前記一般式(1)及び前記一般式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b−1)と、前記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)で表されるイソシアネート化合物(b−2)との反応物が特に好ましい。ウレタン化合物(b)中の前記反応物は、重合性単量体としての機能も有しており、後述の重合性単量体(d−1)にカーボンナノチューブ(a)を均一に分散させる場合には、特に有効に作用する。
【0043】
前記ウレタン化合物(b)は単独で用いてもよいし、2種類以上併用することもできる。また、前記ウレタン化合物(b)には、前記で例示した以外のウレタン化合物を含有していてもよい。
【0044】
<粒状物質(c)>
本発明で使用される粒状物質(c)は、得られる被膜中で粒子状の形態を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、有機系粒子、無機系粒子、セラミックス系粒子、金属酸化物粒子、金属粒子、染料、顔料等が挙げられる。具体的には、アクリル系等の樹脂粒子、シリカ、コロイダルシリカ、板状アルミナ、繊維状アルミナ、ジルコニア、スピネル、タルク、ムライト、コージエライト、炭化ケイ素、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化グネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン酸亜鉛、五酸化アンチモン、金、銀、銅、ニッケル等の金属粒子、ヘマタイト、コバルトブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、マグネタイト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、チタン酸バリウム等が挙げられる。
これら粒状物質の中でも、例えば、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化グネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、アンチモン含有酸化スズ、スズ含有酸化インジウム、アンチモン酸亜鉛、五酸化アンチモン、金、銀、銅、ニッケル等の金属粒子を用いれば、さらに良好な導電性が得られるので、好ましく用いられる。また、2種以上の金属酸化物からなる高次化合物である金属酸塩複酸化物を用いてもよい。金属酸塩複酸化物としては、例えば、アンチモン酸亜鉛等からなるアンチモン複酸化物等を挙げることができる。
【0045】
粒状物質(c)は、水、有機溶剤、あるいは水と有機溶剤との混合溶媒等の溶媒に分散して、コロイド化したものが好ましく用いられる。有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類等が好ましく用いられる。
粒状物質(c)の粒子径は、1nm〜50000nmが好ましく、1nm〜10000nmがより好ましく、1nm〜1000nmがさらに好ましい。粒子径が前記範囲を超えると透明性が不足し、粒状物質(c)の溶媒中での分散性、安定性が低下する。
【0046】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体において、その被膜が粒状物質(c)を含有することにより、カーボンナノチューブ(a)と粒状物質(c)との間に緻密な導電性ネットワークを形成することができ、導電性をより向上できる。また、被膜中にカーボンナノチューブ(a)が存在する部分と、粒状物質(c)によりカーボンナノチューブ(a)が存在しない部分が均一に分布するため、カーボンナノチューブ(a)による光の吸収、散乱、反射が抑制され、カーボンナノチューブ含有構造体の透明性、機械強度、熱伝導性等が向上する。なお、粒状物質(c)は単独で用いてもよいし、2種類以上併用することもできる。
【0047】
<重合性単量体(d−1)の単位を有する重合体(e)>
カーボンナノチューブ含有構造体は、その被膜が、重合性単量体(d−1)単位を有する重合体(e)を含有するのが好ましい。重合体(e)を含有することにより、カーボンナノチューブ含有構造体の被膜の耐擦傷性を向上することができる。なお、重合体(e)は、ウレタン化合物(b)と相溶できるものを使用することが好ましい。
重合体(e)を形成する重合性単量体(d−1)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、得られる硬化膜の透明性、耐衝撃性、耐擦傷性、易成形性の観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物が好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0049】
重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物としては、(A)多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応させて得られるエステル化物;(B)多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物;(C)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート;(D)エポキシポリアクリレート等が挙げられる。
【0050】
(A)のエステル化物としては、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
(B)のエステル化物において、多価カルボン酸またはその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸の好ましい組み合わせとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(C)のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジまたはトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性単量体(d−1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、被膜に含有される重合性単量体の単位を有する重合体(e)とは、前記重合性単量体(d−1)を一種以上含む重合体または共重合体、あるいは前記の一種以上の重合性単量体(d−1)と他のビニルモノマーとの共重合体である。
【0052】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体には、基材の少なくとも一つの面上に、前述したようなカーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有する被膜が形成されている。
基材としては、合成樹脂のフィルム、シート、発泡体、多孔質膜、エラストマー、各種成形体;木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、ガラス板、ステンレス板等が挙げられる。
【0053】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体に含まれるカーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)、粒状物質(c)の好ましい組成比は、カーボンナノチューブ(a)0.0001〜40質量部、ウレタン化合物(b)0.001〜50質量部、粒状物質(c)0.0001〜40質量部である。さらに好ましい組成比は、カーボンナノチューブ(a)0.001〜20質量部、ウレタン化合物(b)0.01〜30質量部、粒状物質(c)0.001〜20質量部である(a,b,cの合計量が100質量部)。
カーボンナノチューブ含有組成物に、重合性単量体(d−1)の単位を有する重合体(e)を含有する場合、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体に含まれる各材料の好ましい組成比は、重合性単量体(d−1)の単位を有する重合体(e)100質量部に対して、カーボンナノチューブ(a)0.0001〜40質量部、ウレタン化合物(b)0.001〜50質量部、粒状物質(c)0.0001〜40質量部である。
【0054】
カーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)、粒状物質(c)に、さらに、重合性単量体(d−1)の単位を有する重合体(e)を含有する被膜の厚さは、充分な導電性を実現するために、0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。被膜の厚さが前記範囲内であると、充分な透明性が得られ、かつ、被膜のクラックの抑制、積層体の切断時における被膜の欠け等を抑制できる。
また、カーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)、粒状物質(c)に、後述の溶剤(d−2)を用いて調製して得られる被膜の厚さは、0.01〜100μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50μmである。被膜の厚さが前記範囲内であれば、被膜の透明性を充分に維持でき、かつ、充分な導電性を発揮することができる。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、必要に応じて、前記被膜上、さらに、反射防止膜を積層してもよい。また、基材の一方の面にカーボンナノチューブ含有皮膜を設け、他方の面に反射防止膜、拡散層、接着層等の他の機能性薄膜を設けてもよい。
【0055】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と、カーボンナノチューブ(a)とを被膜中に共存させているため、カーボンナノチューブ(a)の凝集や偏在が極めて少ない。その理由は明確にはなっていないが、ウレタン化合物(b)がカーボンナノチューブ(a)を吸着またはらせん状にラッピングすることで、カーボンナノチューブ(a)が均一に分散した被膜が得られると推察される。また、カーボンナノチューブ(a)が均一に分散した被膜は、摩擦等の外部刺激を加えても、カーボンナノチューブ(a)の脱離や破損が生じにくい。ゆえに、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、その被膜において、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる。
【0056】
例えば、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体に形成される被膜の透明性は、他の構成物の物性にも左右されるが、その全光線透過率を概ね50%以上、場合によっては70%以上に維持することができる。したがって、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、透明導電性フィルム、透明導電性シート、透明導電性成形体等、透明性の求められる各種用途に幅広く適用可能である。
【0057】
<<カーボンナノチューブ含有構造体の製造方法>>
カーボンナノチューブ含有構造体の製造方法は、基材の少なくとも一つの面上に、カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射及び/もしくは常温で放置、または加熱処理することを特徴とする。
【0058】
<基材の構成材料>
基材としては、合成樹脂のフィルム、シート、発泡体、多孔質膜、エラストマー、及びその他の各種成形体;木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、ガラス板、ステンレス板等が挙げられる。
合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン等が挙げられる。これらの合成樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0059】
基材を形成する重合性原料は、その用途によって適宜選定される。例えば、透明導電性フィルム、透明導電性樹脂板、透明電極フィルム、透明タッチパネル等といった優れた透明性を求められるカーボンナノチューブ含有構造体を得るためには、透明性に優れた重合体を得ることのできる(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物、または、この単量体混合物の一部が重合した重合体を含む単量体混合物が好ましく用いられる。なお、重合体を含む単量体混合物における重合体の含有率は、該単量体混合物中の35質量%以下が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0060】
前記単量体混合物は、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等といった他の重合性単量体を含有してもよい。他の重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0061】
重合性原料を重合反応させる際には、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸、チオフェノール、それらの混合物等のメルカプタン系連鎖移動剤が好ましく、n−オクチルメルカプタンやn−ドデシルメルカプタン等のアルキル鎖の短いメルカプタンが特に好ましい。連鎖移動剤を添加することで、得られる重合体の分子量をより好ましく調節できる。
【0062】
重合性原料を加熱処理により重合させる場合は、アゾ化合物、有機過酸化物、レドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤を添加してもよい。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類との組み合わせ等が挙げられる。
【0063】
重合性原料を紫外線照射により重合させる場合、フェニルケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の光重合開始剤を添加してもよい。市販の光重合開始剤としては、「イルガキュア184」(日本チバガイギー社製)、「イルガキュア907」(日本チバガイギー社製)、「ダロキュア1173」(メルク・ジャパン社製)、「エザキュアKIP100F」(日本シーベルヘグナー社製)等が挙げられる。
【0064】
また、重合性原料を紫外線照射により重合させる場合、光増感剤を添加してもよい。光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロゲキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。また、400nm以下の波長域において増感作用を有する光増感剤として、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノンを添加してもよい。
【0065】
<カーボンナノチューブ含有組成物の構成材料>
カーボンナノチューブ含有組成物には、カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)及び粒状物質(c)とが必須の構成材料として含有される。さらに、カーボンナノチューブ含有組成物には、耐擦傷性の向上のために、重合性単量体(d−1)及び重合開始剤(f)を添加してもよい。また、分散性、導電性等を向上するために、溶剤(d−2)を添加してもよく、機械強度、基材への密着性を向上するために、高分子化合物(g)を含有してもよい。また、カーボンナノチューブ(a)の溶解性または分散性をさらに向上する等のために界面活性剤(h)を添加してもよく、耐水性を向上するためにシランカップリング剤(i)等の構成材料を添加してもよい。
以下にこれら好ましく添加される構成材料について説明する。なお、重合性単量体(d−1)については、前述しているので、説明を省略する。
【0066】
(溶剤(d−2))
溶剤(d−2)を添加することにより、カーボンナノチューブ(a)のより均一な分散が行え、得られる被膜の導電性をより向上できる。
溶剤(d−2)としては、ウレタン化合物(b)を溶解できるものあれば特に限定されない。具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、 N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、m−クレゾール、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン等の塩素系溶剤類等が好ましく用いられる。
【0067】
(重合開始剤(f))
重合開始剤(f)を添加することにより、ウレタン化合物(b)に含まれる重合性単量体及び/または重合性単量体(d−1)の重合反応を円滑に進めることができ、硬化膜の耐擦傷性を向上できる。
本発明で好ましく用いられる重合開始剤(f)としては、光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。本発明では、カーボンナノチューブ含有組成物の構成材料や用途に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれかが適宜選ばれる。
光重合開始剤は、ウレタン化合物(b)や重合性単量体(d−1)に活性エネルギー線による重合促進効果を付与する材料である。光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
熱重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、熱重合開始剤と光重合開始剤とを併用してもよい。
【0069】
(高分子化合物(g))
高分子化合物(g)を添加することにより、被膜の基材への密着性、及び被膜の機械強度をさらに向上することができる。
なお、高分子化合物(g)には、前述したウレタン化合物(b)、粒状物質(c)は含まれない。
高分子化合物(g)は、ウレタン化合物(b)、重合性単量体(d−1)、溶剤(d−2)等に可溶できるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール類;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等のポリ(メタ)アクリル酸類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)等のポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸及びそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂及びこれらの共重合体等が用いられる。また、これらの高分子化合物(g)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合したものであってもよい。
【0070】
(界面活性剤(h))
界面活性剤(h)を添加することにより、カーボンナノチューブ含有組成物へのカーボンナノチューブ(a)の溶解性または分散性をさらに向上することができる。また、界面活性剤(h)を用いることで、カーボンナノチューブ含有組成物の基材への成形性、成膜性も向上し、さらには、得られる被膜の平坦性、導電性等も向上する。
界面活性剤(h)の具体例としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等のアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルホリニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン類;N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等のアミノカルボン酸類等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等の非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は、炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、これら界面活性剤(h)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0071】
(シランカップリング剤(i))
シランカップリング剤(i)を添加することにより、得られる被膜の耐水性を向上できる。
シランカップリング剤(i)としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(6)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0072】
【化6】

(式(6)中、R61〜R63は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基、アミノ基、アセチル基、フェニル基、ハロゲン原子を表し、X61は、下記式(7)を表し、Y61は、エポキシ基、アミノ基、チオール基、水酸基、エポキシシクロヘキシル基を表す。)
【0073】
【化7】

(式(7)中、p、q、rは、それぞれ1〜6の整数を表す。)
【0074】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロポキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チオール基を有するシランカップリング剤としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を有するシランカップリング剤としては、β−ヒドロキシエトキシエチルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシクロヘキシル基を有するシランカップリング剤としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
(その他の添加剤)
さらに、カーボンナノチューブ含有組成物には、必要に応じて、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤等の公知の各種物質を添加してもよい。また、カーボンナノチューブ含有組成物には、導電性の向上のために、導電性物質を添加してもよい。導電性物質としては、例えば、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質;酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物;銀、ニッケル、銅等の金属;フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等の繰り返し単位を含むπ共役系高分子;対称型または非対称型のインドール誘導体三量体等が挙げられる。これらの導電性物質の中でも、π共役系高分子、インドール誘導体三量体またはこれらのド−ピング物がより好ましく、スルホン酸基及び/またはカルボン酸基を有する水溶性のπ共役系高分子、インドール誘導体三量体またはこれらのドーピング物が特に好ましい。
【0076】
<カーボンナノチューブ含有組成物中の構成材料の添加量>
次に、カーボンナノチューブ含有組成物への各構成材料の好ましい添加量について説明する。
カーボンナノチューブ(a)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中のカーボンナノチューブ(a)以外の構成材料(ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)のうちのいずれかの組み合わせ。)の合計100質量部に対して、カーボンナノチューブ(a)が0.0001〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜20質量部である。カーボンナノチューブ(a)が前記範囲内であれば、カーボンナノチューブ含有組成物中への溶解性あるいは分散性が特に良好であり、得られる被膜の導電性等の諸特性も良好である。なお、カーボンナノチューブ(a)の含有量が前記範囲を超えても、得られる効果は大きく向上しない。カーボンナノチューブ(a)の含有量が前記範囲を下回ると、カーボンナノチューブ(a)の諸特性が発揮されにくくなる。
【0077】
ウレタン化合物(b)の添加量は、重合性単量体(d−1)及び/または溶剤(d−2)を併用する場合、重合性単量体(d−1)及び/または溶剤(d−2)100質量部に対して、ウレタン化合物(b)が0.001〜99.9質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜99.9質量部である。前記範囲内であれば、カーボンナノチューブ含有組成物中へのカーボンナノチューブ(a)の溶解性あるいは分散性が特に良好であり、得られる被膜の導電性等の諸特性も良好である。なお、化合物(b)の含有量が前記範囲を超えても、得られる効果は大きく向上しない。化合物(b)の含有量が前記範囲を下回るとカーボンナノチューブ(a)の溶解性または分散性が悪くなる。
【0078】
粒状物質(c)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中の粒状物質(c)以外の構成材料(カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)のうちのいずれかの組み合わせ。)の合計100質量部に対して、粒状物質(c)が0.0001〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜20質量部である。粒状物質(c)が0.0001質量部未満では、カーボンナノチューブ(a)との間に効率よい導通パスが形成されにくい。このため、導電性、透明性、機械強度が低下することはないが、向上もしない。一方、粒状物質(c)の含有量が50質量部を超えると、カーボンナノチューブ(a)の可溶性または分散性が低下する。
【0079】
重合性単量体(d−1)と、溶剤(d−2)とを併用する場合、カーボンナノチューブ含有組成物中に含有される重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)の質量比は、重合性単量体(d−1)/溶剤(d−2)が100/0〜0/100であり、任意の比率で混合することができる。
【0080】
重合開始剤(f)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中のカーボンナノチューブ(a)以外の構成材料(ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)のうちのいずれかの組み合わせ。)の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。重合開始剤(f)が前記範囲内であれば、カーボンナノチューブ含有組成物を充分に硬化させることができ、硬化膜の着色がなく、透明性に優れた重合体が得られる。
【0081】
高分子化合物(g)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中のカーボンナノチューブ(a)以外の構成材料(ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)のうちのいずれかの組み合わせ。)の合計100質量部に対して、高分子化合物(g)が0.1〜400質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜300質量部である。高分子化合物(g)が前記範囲内であれば、カーボンナノチューブ含有組成物中におけるウレタン化合物(b)、カーボンナノチューブ(a)の溶解がより良好となり、該カーボンナノチューブ含有組成物を用いた被膜を形成する際の成膜性、成形性がより向上し、かつ、得られる被膜の導電性、機械強度を特に良好な状態で維持できる。
【0082】
界面活性剤(h)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中のカーボンナノチューブ(a)以外の構成材料(ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2)のうちのいずれかの組み合わせ。)の合計100質量部に対して、界面活性剤(h)が0.0001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部である。界面活性剤(h)が前記範囲内であれば、カーボンナノチューブ含有組成物中におけるカーボンナノチューブ(a)の溶解性または分散性、及び長期的な保存安定性が特に良好となる。なお、界面活性剤(h)が前記範囲外を超えても、得られる効果は大きく向上しない。界面活性剤(h)が前記範囲を下回ると、界面活性剤の効果が発揮されにくくなる。
【0083】
シランカップリング剤(i)の添加量は、カーボンナノチューブ含有組成物中のカーボンナノチューブ(a)以外の構成材料(ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と溶剤(d−2)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)と重合性単量体(d−1)と溶剤(d−2))の合計100質量部に対して、シランカップリング剤(i)が0.001〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜15質量部である。シランカップリング剤(i)が前記範囲内であれば、被膜の耐水性が特に良好となる。なお、シランカップリング剤(i)が前記範囲を超えても、得られる効果は大きく向上しない。シランカップリング剤(i)が前記範囲を下回ると、シランカップリング剤(i)の効果が得られにくくなる。
【0084】
<カーボンナノチューブ含有組成物の調製方法>
カーボンナノチューブ含有組成物の構成材料を混合するには、超音波照射、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等の撹拌または混練装置が用いられる。この中でも、超音波照射が好ましく用いられる。特に好ましくは、超音波照射とホモジナイザーとの併用(超音波ホモジナイザー)が用いられる。
特に、カーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)と粒状物質(c)、または、カーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)、粒状物質(c)重合性単量体(d−1)及び/または溶剤(d−2)、さらに他の材料を混合する場合は、超音波照射が好ましく用いられ、特に好ましくは、超音波照射とホモジナイザー(超音波ホモジナイザー)が併用される。
超音波照射の処理強度及び処理時間は特に限定されないが、カーボンナノチューブ(a)をカーボンナノチューブ含有組成物中に、均一に分散または溶解させるだけの充分な超音波の強度と処理時間であればよい。例えば、超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜2.0ワット/cm2が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5ワット/cm2である。超音波発振機による超音波の発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、より好ましくは20〜100kHzの範囲である。超音波照射の時間は、1分〜48時間が好ましく、より好ましくは5分〜48時間である。超音波照射の後、さらにボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置を用いて、分散または溶解を徹底して行ってもよい。
【0085】
所定の構成材料を混合する際には、すべての材料を一括添加してもよいし、各種構成材料を所望の順に混合してもよい。例えば、使用する重合性単量体(d−1)及び/または溶剤(d−2)のうち、その少量を量り取り、そこにカーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)とを溶解させて、濃厚なカーボンナノチューブ含有組成物を調製した後、残りの重合性単量体(d−1)及び/または溶剤(d−2)を混合して、所定の濃度としてもよい。
また、重合性単量体(d−1)または溶剤(d−2)を2種類以上混合して用いる場合には、例えば、重合性単量体(d−1)または溶剤(d−2)のうち1種の材料以上に、カーボンナノチューブ(a)とウレタン化合物(b)とを溶解させて、濃厚なカーボンナノチューブ含有組成物を調製し、その後、このカーボンナノチューブ含有組成物に対して、残りの重合性単量体(d−1)または溶剤(d−2)を混合して、所定の濃度としてもよい。
超音波照射を行う際のカーボンナノチューブ含有組成物の温度は、分散性向上の観点から60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。特に、ウレタン化合物(b)が重合性単量体の場合、及び/または重合性単量体(d−1)を用いてカーボンナノチューブ含有組成物を調製する際には、重合防止の観点からも40℃以下がより好ましい。
【0086】
<カーボンナノチューブ含有組成物を基材に塗工する方法>
基材の表面に、カーボンナノチューブ含有組成物を塗工する方法としては、塗布、スプレー、浸漬等、一般の塗工に用いられる方法を利用可能である。具体的には、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等を用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー等のスプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を用いることができる。
【0087】
溶剤(d−2)を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を基材の表面に塗工した場合は、常温で硬化させてもよいが、加熱処理が好ましい。塗膜を加熱処理することで、残留する溶剤(d−2)の残留量をより低下することができ、導電性をさらに向上することができる。なお、塗膜の加熱処理温度は、用いる基材の材質等によっても左右されるが、概ね20〜250℃が好ましく、40℃〜200℃が特に好ましい。前記範囲を超えると、ウレタン化合物(b)自体が分解する恐れがあり、透明性、外観が悪化することがある。加熱処理温度が前記範囲を下回ると、溶剤(d−2)の揮発が不充分となることがある。
【0088】
重合性単量体(d−1)を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を塗工する方法としては、以下の3種類を主に挙げることができる。
(I)基材にカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、硬化させる方法。
(II)所定の形状を有した型の内面に、カーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、硬化させて硬化膜を形成した後、型内に基材を形成するための重合性単量体(以下、重合性原料と略する。)または溶融樹脂を流し込み、硬化させて基材を形成し、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法。
(III)所定の形状を有した型と、型の中に配置した基材との間にカーボンナノチューブ含有組成物を流し込み、硬化させて硬化膜を形成した後、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法。
【0089】
(I)の方法で、ウレタン化合物(b)や重合性単量体(d−1)の硬化に、重合開始剤(f)である光重合開始剤を用いて被膜を得る場合は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで、被膜を形成することができる。
また、ウレタン化合物(b)や重合性単量体(d−1)の硬化に、重合開始剤(f)である熱重合開始剤を用いて硬化膜を得る場合は、加熱処理により、被膜を形成することができる。
基材の表面に塗工する方法としては、前述の溶剤(d−2)を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を基材表面に塗工する方法を用いることができる。
【0090】
前記(I)〜(III)の方法のうち、(II)の方法が、埃等の影響で外観が低下することもなく、表面状態の良好な被膜を得ることができるため、好ましく用いられる。(II)の方法で用いられる型としては、注型重合用の鋳型、成形用型等が挙げられる。例えば、鋳型が2枚の表面平滑な板状物からなる場合は、表面が平滑な板状積層体状のカーボンナノチューブ含有構造体を得ることができる。この場合、カーボンナノチューブ含有組成物からなる硬化膜を一方の鋳型に形成してもよく、両方の鋳型に形成してもよい。
【0091】
(II)の形成方法は、いわゆるキャスト重合法と呼ばれる方法である。キャスト重合法は、具体的には、次のように行われる。まず、2枚のガラス板の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等からなるガスケットを挟み込み、これらをクランプ等で固定することにより、注型重合用のガラス型を組み立てる。次いで、このガラス型の内面に、重合性単量体(d−1)、重合開始剤(f)を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、光硬化させた後、ガラス型内に重合性原料を流し込んで重合させた後、ガラス型を外すことで、カーボンナノチューブ含有構造体を得ることができる。
【0092】
また、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法では、キャスト重合法を連続的に行うことのできる連続的キャスト重合法を用いてもよい。連続的キャスト重合法としては、例えば、特公昭46−41602号公報に記載されている板状の重合物を連続的に製造できる重合装置を用いる方法が挙げられる。この連続的キャスト重合法を用いる場合は、まず、重合装置のスチールベルト表面に重合性単量体(d−1)及び重合開始剤(f)を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、硬化させて硬化膜を形成し、次いで、基材となる重合性原料を投入して、硬化膜上で重合させることで、基材上に被膜が形成された板状のカーボンナノチューブ含有構造体を得ることができる。
この他にも、例えば、カーボンナノチューブ含有組成物に溶解または膨潤しないフィルム等を重合装置のスチールベルトに貼り付け、次いで、重合性単量体(d−1)及び重合開始剤(f)によって調製したカーボンナノチューブ含有組成物を、フィルム上に塗工して硬化させてもよい。なお、この重合装置のスチールベルト表面に、あらかじめ凹凸等の意匠を付与しておけば、表面に意匠性を有したカーボンナノチューブ含有構造体を製造することもできる。
【0093】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の製造に用いられるカーボンナノチューブ含有組成物には、カーボンナノチューブ(a)が諸特性を損なうことなく均一に分散または溶解している。また、カーボンナノチューブ(a)は、カーボンナノチューブ含有組成物中で長期にわたり分離凝集することがなく、長期的な保存安定性に優れている。
カーボンナノチューブ含有組成物中にカーボンナノチューブ(a)が均一に分散または溶解することのできる理由は明確に解明されていないが、ウレタン化合物(b)がカーボンナノチューブ(a)を吸着またはらせん状にラッピングすることで、カーボンナノチューブ(a)が、カーボンナノチューブ含有組成物中に均一に分散または溶解しやすくなっているものと推測される。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法は、このように、カーボンナノチューブ含有組成物中にカーボンナノチューブ(a)が均一に分散または溶解しているので、被膜の成形性、成膜性に優れ、かつ、カーボンナノチューブの特性を損なうことがなく、簡便な方法で基材への塗工が可能である。しかも得られる被膜中においてもカーボンナノチューブ(a)が均一に分散しているので、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる。
【0094】
このように製造される本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、半導体、電器電子部品等の工業用包装材料、半導体製造のクリーンルーム等で使用される透明導電性樹脂板、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルム等の電子写真記録材料等の帯電防止フィルム、透明導電性フィルム、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ等の磁気記録用テープ、磁気ディスク、光ディスク等として幅広く利用される。さらに、電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)及びその電極、水素貯蔵剤、透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの入力及び表示デバイス表面のディスプレイ保護板、前面板、透明電極、透明電極フィルム、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、蛍光材料、熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シートとしても幅広く利用される。
さらに、前記カーボンナノチューブ含有組成物は、成形性、成膜性に優れているので、塗布、スプレー、キャスト、ディップ等の簡便な塗工手法を用いて様々な基材へ塗工することが可能である。これらの手法によって得られる本発明のカーボンナノチューブ含有構造体としては、例えば、各種帯電防止剤、コンデンサー、電気二重層キャパシタ、電池、燃料電池及びその高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーター等の部材、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装用導電性プライマー、電気防食材料、電池を挙げることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<カーボンナノチューブ含有組成物の材料>
カーボンナノチューブ含有組成物を調製するために、以下のカーボンナノチューブ(a)、ウレタン化合物(b)、粒状物質(c)、重合性単量体(d−1)、及び光重合開始剤(f)を使用した。
(カーボンナノチューブ(a))
CVD−1法により製造された多層カーボンナノチューブ(ILJIN社製)を使用した。
(ウレタン化合物(b))
ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなるトリイソシアネート1モルに対して、3モルのジメタクリル酸2−ヒドロキシトリメチレンを反応させてウレタン化合物を得て、これをウレタン化合物1として使用した。
(粒状物質(c))
アクリル樹脂粒子「ファインスフェアE−MG−151」(日本ペイント社製、粒径100nm)またはアンチモン複酸化物をメタノールに分散させたコロイド液「セルナックスCX−Z610M−F2」(日産化学社製、固形分60質量%、粒径15nm)を使用した。
(重合性単量体(d−1))
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)58質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート4質量部、及びペンタエリスリトールトリアクリレート6質量部を使用した。
(光重合開始剤(f))
ベンゾインエチルエーテルを使用した。
【0096】
<カーボンナノチューブ含有組成物の調製>
(調製例1)
カーボンナノチューブ含有組成物1:
ウレタン化合物1を32質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート58質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート4質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート6質量部を混合した重合性単量体に、多層カーボンナノチューブ0.1質量部、アクリル樹脂粒子0.1質量部を室温にて混合して、氷冷下、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)を1時間実施した後、ベンゾインエチルエーテル1.5質量部を添加することにより、カーボンナノチューブ含有組成物1を調製した。
【0097】
(調製例2)
カーボンナノチューブ含有組成物2:
アクリル樹脂粒子を0.5質量部とした以外は調製例1と同様にして、カーボンナノチューブ含有組成物2を調製した。
【0098】
(調製例3)
カーボンナノチューブ含有組成物3:
アクリル樹脂粒子を2質量部とした以外は調製例1と同様にして、カーボンナノチューブ含有組成物3を調製した。
【0099】
(調製例4)
カーボンナノチューブ含有組成物4:
アクリル樹脂粒子の代わりに、アンチモン複酸化物をメタノールに分散させたコロイド液の1質量部を用いたこと以外は調製例1と同様にして、カーボンナノチューブ含有組成物4を調製した。
【0100】
(調製例5)
カーボンナノチューブ含有組成物5:
アクリル樹脂粒子を添加しない以外は調製例1と同様にして、カーボンナノチューブ含有組成物5を調製した。
【0101】
<カーボンナノチューブ含有構造体の作製>
(実施例1〜4)
前記カーボンナノチューブ含有組成物1〜4を、それぞれアクリル樹脂板(厚さ3mm)上に滴下し、その上に厚さ50μmのPETフィルム(帝人(株)製)を配置し、JIS硬度30°のゴムロームにてしごき、カーボンナノチューブ含有組成物の厚さを15μmに設定した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ((株)東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.8m/分のスピードで通過させ、カーボンナノチューブ含有組成物を前硬化させた後、PETフィルムを剥離した。次に、出力30W/hの高圧水銀灯から20cm離れた位置を、塗膜を上にして0.8m/cmのスピードで通過させ、カーボンナノチューブ含有組成物を硬化させることにより、アクリル樹脂板の表面に硬化膜を有する実施例1〜4のカーボンナノチューブ含有構造体を作製した。
【0102】
(比較例1)
前記カーボンナノチューブ含有組成物5を、前記実施例1〜4と同様の方法によって硬化させることにより、アクリル樹脂板の表面に硬化膜を有する比較例1のカーボンナノチューブ含有構造体を作製した。
【0103】
<カーボンナノチューブ含有構造体の評価方法>
作製した各カーボンナノチューブ含有構造体の硬化膜中におけるカーボンナノチューブ(a)の分散状態を、以下の観察及び算出を行うことにより評価した。
(カーボンナノチューブ含有構造体の観察)
カーボンナノチューブ含有構造体中における硬化膜の観察は、共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 PASCAL Axioplan2 imaging:カールツァイス社製)で、100倍油浸レンズ(開口数1.4、Plan−APOCHROMAT)を用いて、1000倍の画像を取得した。なお、観察には屈折率1.518の調整液(Immersol 518F:カールツァイス社製)を使用し、画像取得用のレーザーには、波長458nmアルゴンレーザーを使用した。
垂直方向の走査は、硬化膜の表面から基材との界面までの厚さ約11μmについて、一辺100μm四方の画像を0.1μmのピッチで撮影した。なお、この条件での1画像あたりの光学厚さは300nm程度であった。
(硬化膜中のピクセル面積1000以上の凝集体の面積割合の算出)
前記方法により撮影した画像から拡張フォーカス画像を作成し、画像処理ソフト(Image−Pro PLUS ver4.5.0:Media Cybernetics社製)を用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占めるカーボンナノチューブにより形成されるピクセル面積1000以上の凝集体の面積割合を計測し、凝集体面積割合の数値が小さいほど硬化膜中のカーボンナノチューブの分散性が高いと評価した。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
<評価>
表1に示すとおり、各実施例は、比較例1に比べて、硬化膜中におけるカーボンナノチューブの分散性に優れていることが確認された。これらの評価により、各実施例で用いたカーボンナノチューブ含有構造体は、長期的に優れた導電性、透明性、耐水性、機械強度、熱伝導性、耐擦傷性を維持できる硬化膜を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一つの面上にカーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有する被膜が形成されたカーボンナノチューブ含有構造体。
【請求項2】
カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物。
【請求項3】
基材の少なくとも一つの面上に、カーボンナノチューブ(a)と、ウレタン化合物(b)と、粒状物質(c)とを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を塗工し、活性エネルギー線を照射及び/もしくは常温で放置、または加熱処理するカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法。

【公開番号】特開2009−40021(P2009−40021A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210688(P2007−210688)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】