説明

カーボン柔軟性発熱構造体製造用伝導性組成物とこれを用いたカーボン柔軟性発熱構造体及びこれの製造方法

本発明は、伝導性組成物であり、質量比が100:1〜15である液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの混合物からなるか、あるいは、質量比が100:10〜150である液状シリコンゴムと黒鉛粉末との混合物からなる。また、カーボン柔軟性発熱構造体は、液状シリコンゴムと充填剤とからなる伝導性組成物を混合する段階と、液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの混合物に、液状シリコンゴムの質量対比1〜100%の割合で稀釈剤を添加して攪拌する段階と、一定の形状に成形した後に、これを硬化させる成形及び硬化段階と、により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの質量比が、100:1〜15であることを特徴とする伝導性組成物と、伝導性組成物を一定の形状に成形し、硬化することにより作られること、あるいは、伝導性組成物を一定の形状を持つ構造枠にコーティングして作られることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体及びこれの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
機能性高分子の一分野として、電気伝導性高分子の重要性が益々大きくなってきており、このような高分子材料に電気伝導性を与えることで、高分子物質の有用な物理化学的性質を持つようにして、機能性に優れた材料が得られるだけではなく、生産コスト面でも安価な材料を得ることができる。
【0003】
一般的に、多くの高分子物質は、絶縁性の良い材料として認識されてきており、高分子材料は、電気伝導度が低いことから電気絶縁材として優れた役割を果たすが、カーボンブラック(Carbon Black)、カーボンファイバー(Carbon Fiber)、金属粉などの充填剤を入れ込むと、電気伝導体としての役割をするようになる。
【0004】
前記添加された充填剤は、高分子材料内で電気的な経路を形成して、電子らの通路として作用するようになり、電気伝導体になり得るものである。
【0005】
上記の伝導性充填剤が含有された半結晶性高分子は、温度を上げると、高分子の溶融領域での熱的膨脹によって、高分子内にある充填剤粒子間の間隔が広がり、電子の流れが妨害を受けるようになる。
【0006】
このような高分子に、PTC(Positive Temperature Coefficient)機能を与えるために添加される伝導性充填剤には、主にカーボンブラックとカーボンファイバーとが使用され、高分子材料には、主にポリエチレン(Polyethylene)のような結晶性高分子を使用する。
【0007】
これにより、前記高分子材料は、温度の増加に伴って、抵抗が急激に増加する現象が現れるが、これを、正特性の温度係数、または、PTC現象という。
【0008】
すなわち、低い温度では、比較的小さな抵抗値を持つが、一定の温度に至ると、急に抵抗が増加して、電流が流れにくくなる現象で、このような急激な性質の変化をもたらす温度を、急変点温度(switching temperature)、あるいは、キュリー温度(Curie temperature)という。
【0009】
前記急変点温度は、一般的に、最小抵抗値、または、基準温度(摂氏25度)の抵抗値の2倍に対応する温度で定義され、材料特性の重要なパラメーター(parameter)となる。
【0010】
また、前記急変点温度は、その材料の成分を変えることで、高温または低温の側に移動させることができ、種々の素子の材料として用いることができる。
【0011】
例えば、抵抗-温度特性を用いた温度センサーや、過熱保護、電流-電圧特性を用いるヒーターや、電流減殺特性を用いる遅延(delay)回路や、消磁回路などの分野に応用され得る。
【0012】
前記の応用分野の中で、過熱や過電流が流れる時に、これによる製品や電子回路の損傷を防ぐために使用される場合を考えてみると、高分子を用いたPTCは、過熱に対する保護機能と過負荷に対する保護機能とを共に十分に遂行するというメリットがある。
【0013】
これは、過負荷保護用に使用されるフューズ(fuse)の場合は、過電流に対して優れた保護性能を持つが、過電流によってフューズが切れて電流が遮断された場合、フューズを取り替えなければならないという不都合があり、バイメタル(bimetal)スイッチの場合は、優れた温度保護性と復帰機能とを提供してくれるが、過電荷に対して敏感でないので、精密な電子回路などには使用し難いということに比べると、優れた特性と言える。
【0014】
また、高分子PTC素材は、既存のセラミックPTCの低い伝導度、高い工程コスト、そして、固定された形態というような制約を受けるデメリットを補完して、より優れた性質のPTC素材として用いることができ、特に、最小抵抗が非常に小さくなり、製作形態が自由なので、小型機構の設計に既に盛んに用いられており、これは、急速に増加している趨勢にある。
【0015】
そして、熱や電流により遮断後、温度が下がり、過電流が除去されると、取替えの不都合なく、自動に復帰されるという機能も持つ。
【0016】
このようなPTC特性の後に、高分子の溶融状態で、伝導性粒子の分散状態の変化により、新しい伝導ネットワークが形成され、反対に抵抗が大きく減少する負特性温度係数、または、NTC(Negative Temperature Coefficient)現象が起こる。
【0017】
PTC効果により伝導性高分子に与えられた特性は、前記NTC現象によりその特性を失うことがあり得るため、NTC現象は、PTC現象に大きな障害になる。
【0018】
NTC現象は、溶融状態での架橋により伝導性粒子が運動するようになり、これにより、新たな構造が形成されて起こる現象であり、架橋により伝導性粒子を強く取り付けるネットワークを形成させ、伝導性粒子の運動を抑制することで、構造的な安定が得られる。
【0019】
しかしながら、前記高分子PTC素子は、電子製品や電子回路の損傷を防ぐための用途に使われ、製作形態が自由なので、小型機構の設計に既に盛んに用いられているが、NTC現象を抑制するために、架橋制を添加して硬化させるので、堅いプラスチック構造を持つようになり、一般的な発熱体用途に使うには、その加工及び用途において制限があるという問題点がある。
【0020】
また、伝導性充填剤が含有された半結晶性高分子は、温度を上げると、高分子の急変点温度の領域での熱的膨脹によって、高分子内にある充填剤粒子間の間隔が広がり、反復的な熱収縮と熱膨脹との間の振幅が結晶の溶融点まで起き続けるため、製品の寿命が短縮されるという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述のように、従来の問題点を解決するための本発明の目的は、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、電気絶縁性などの物理化学的特性に優れており、柔軟性が卓越したカーボン柔軟性発熱構造体、及び、これに用いられる伝導性組成物、並びに前記カーボン柔軟性発熱構造体の製造方法を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、前記カーボン柔軟性発熱構造体の製造工程の段階を単純化させて、製造コストの低い経済的な製造方法を提供することにある。
【0023】
また、本発明の更に他の目的は、必要によって、伝導性組成物と同じ材質である液状シリコンゴムと稀釈剤のみとを混合して攪拌した混合物を、前記カーボン柔軟性発熱構造体の表面にコーティングして絶縁させることにより、繰り返される熱膨脹と熱収縮との周期的な変化があっても、前記構造体の剥離現象が起こらないという優れた性質のカーボン柔軟性発熱構造体を提供することにある。
【0024】
また、本発明の更に他の目的は、前記カーボン柔軟性発熱構造体の製作の際に、その成形段階での構造枠をメッシュ、板状、棒状、環状、バー等の種々の形状の構造にすることで、種々の分野で利用可能なカーボン柔軟性発熱構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するために、本発明は、液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックまたは黒鉛粉末との混合物からなる伝導性組成物において、前記液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの質量比が、100:1〜15であること、あるいは、前記液状シリコンゴムと黒鉛粉末との質量比が、100:10〜150であることを特徴とする。
【0026】
ここで、前記液状シリコンゴムの熱膨脹係数が、200×10-6〜300×10-6・K-1の範囲に属することが望ましい。
【0027】
また、前記導電性カーボンブラック粒子の大きさが、20〜40ナノメートル(nm)であり、DBP(dibutyl phthalate)吸収量が、300〜500ml/100gであることが望ましく、前記黒鉛粉末の粒子の大きさは、1〜10μmであり、電気抵抗が、0.0005〜0.08Ω・cmであることが望ましい。
【0028】
なお、カーボン柔軟性発熱構造体の製造方法において、液状シリコンゴムと充填剤とからなる伝導性組成物を混合する段階と、前記液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの混合物に、液状シリコンゴムの質量対比1〜100%の割合で稀釈剤を添加して攪拌する段階と、一定の形状に成形した後に、これを硬化させる成形及び硬化段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
前述のような本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体及びこれの製造のための伝導性組成物は、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、電気絶縁性などの物理化学的特性に優れており、自己制御抵抗発熱機能と、卓越した柔軟性とを兼ね備えているので、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体の応用分野が画期的に増加することになる。
【0030】
また、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体は、その製造工程の段階を単純化させて、製造コストの低い経済的な製造方法が提供できるようになるというメリットがある。
【0031】
また、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体は、必要によって、伝導性組成物と同じ材質である液状シリコンゴムと稀釈剤のみとを混合して攪拌した混合物を、前記カーボン柔軟性発熱構造体の表面にコーティングして絶縁させることにより、繰り返される熱膨脹と熱収縮との周期的な変化があっても、前記構造体の剥離現象が起こらないという優れた性質のカーボン柔軟性発熱構造体を提供することにある。
【0032】
なお、前記カーボン柔軟性発熱構造体の製作の際に、その成形段階で種々の形状に成形したり、構造枠をメッシュ、板状、棒状、環状、バー等の種々の形状の構造にすることで、種々の分野で利用可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る好適な実施例を、液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとを混合した伝導性組成物を用いたカーボン柔軟性発熱構造体が、メッシュの形態に成形された場合を中心として、詳細に説明することにする。
【0034】
図1は、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体を製造するための工程のフローチャートを示している。
【0035】
図面を参照すれば、前記液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとを混合する混合段階(110)と、前記液状シリコンゴムと導電性カーボンブラックとの混合物に稀釈剤を添加して攪拌する攪拌段階(120)と、一定の形状を持つ構造枠に塗布またはコーティングして硬化させる成形及び硬化段階(130)と、を含むことを特徴とする。
【0036】
最初に、混合段階(110)では、液状シリコンゴムとカーボンブラックとが混合され、この時、前記液状シリコンゴムとカーボンブラックとの混合割合は、質量比を基準として、約100:1〜15とする。
【0037】
次に、前記液状シリコンゴムとカーボンブラックとの混合物に稀釈剤を添加して攪拌する攪拌段階(120)を経ることになり、この時、前記稀釈剤は、トルエン、または、キシレンが主として用いられる。
【0038】
このような攪拌段階(120)を経る前記混合物に添加される稀釈剤は、前記液状シリコンゴムの質量比を基準として、約0〜100%の範囲であることが望ましい。
【0039】
この時、前記攪拌段階(120)において、カーボンブラックの含有量が少なければ、稀釈剤を添加しなくても前記伝導性組成物の流動性が確保されるが、前記カーボンブラックの含有量が高いほど、流動性が落ちるようになるので、稀釈剤を添加して攪拌する時に、伝導性組成物の流動性が良くなることである。
【0040】
前記のように、混合段階(110)及び攪拌段階(120)を経た伝導性組成物は、成形及び硬化段階(130)を経るようになり、これにより、所望の用途に合うカーボン柔軟性発熱構造体が作られるようになる。
【0041】
前記攪拌された混合物である伝導性組成物は、一定の形状に成形した後に、これを硬化させたり、あるいは、一定の形状の構造枠に塗布またはコーティングして、これを硬化させたりするようになるが、この時、前記一定の形状、あるいは、一定の形状を持つ構造枠は、メッシュ、板状、棒状、環状、バー等の種々の形状の構造を用いることができる。
【0042】
下記の表1は、前記伝導性組成物を、一定の形状の構造枠にコーティングした後の硬化時間に対するものである。
【0043】
【表1】

【0044】
表1を参照すれば、前記伝導性組成物を硬化させるに当たって、室温では、4〜7日の硬化時間を要し、摂氏200度の温度では、1〜5分間に硬化時間を短縮できることが分かる。
【0045】
下記の表2は、本発明に係る液状シリコンゴムとポリエチレンとの熱的性質を比較した表及びシリコンゴムの使用温度による使用寿命を表した表である。
【0046】
前記伝導性組成物において液状シリコンゴムを用いる理由は、高分子PTCに用いられる高分子プラスチック材料よりも前記液状シリコンゴムの方が、耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、電気絶縁性に優れており、また、柔軟性が卓越するという性質を持っているためである。
【0047】
表2から分かるように、特に、液状シリコンゴムの熱膨脹係数(270×10-6・K-1)が、ポリエチレンの熱膨脹係数(150×10-6・K-1)よりも2倍位高いため、カーボン柔軟性発熱構造体が、自己制御抵抗発熱機能を持つようになるものである。
【0048】
【表2】

【0049】
一方、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体において、液状シリコンゴムを用いることで、卓越した柔軟性を兼ね備えているので、本発明に係るカーボン柔軟性発熱メッシュの応用分野が画期的に増えるようになる。
【0050】
また、シリコンゴムは、用いられる温度範囲によって、使用可能寿命が20年以上、または、半永久的な使用も可能である。
【0051】
下記の表3は、本発明に係る導電性カーボンブラックの代表的な物性表である。
【0052】
【表3】

【0053】
前記導電性カーボンブラックの代表的な物性は、粒子の大きさが、40ナノメートル(nm)である場合であり、孔隙率は、60%であり、1g当たりに、38×1015個の粒子数を有する。
【0054】
これは、前記導電性カーボンブラックは、DBP吸収量が300〜500ml/100gである、高伝導性構造の形態のものでなければならないということを意味する。
【0055】
図2は、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体のうち、メッシュ状のもの(以下、カーボン柔軟性発熱メッシュと称する)の構造を示すものであり、図3は、図2に示されたカーボン柔軟性発熱メッシュの断面図である。
【0056】
前記カーボン柔軟性発熱メッシュ200の場合、横糸230と縦糸220とで織造される織物であって、横糸230、または、縦糸220の両端部に電源を供給するための端子として、織物の横糸230、または、縦糸220よりも長く形成される端子部210a、210bを備える。
【0057】
前記端子部210a、210bは、伝導性に優れた導体金属線から構成され、この時、前記導体金属線は、伝導性に優れた錫メッキ銅線、銀線などを用いることが望ましい。
【0058】
また、前記構造枠240にコーティングまたは塗布される伝導性組成物250は、構造枠240に0.05〜0.15mm程度の厚さにすることが望ましい。
【0059】
また、前記カーボン柔軟性発熱メッシュ200は、必要によって、液状シリコンゴムと稀釈剤のみを混合して攪拌した混合物を、前記カーボン柔軟性発熱メッシュ200の表面にコーティングして絶縁させることもできる。
【0060】
前記絶縁コート260は、伝導性組成物250と同じ材質である液状シリコンゴムとなっているので、繰り返される熱膨脹と熱収縮との周期的な変化があっても、前記メッシュ200の剥離現象が起こらないというメリットがある。
【0061】
次に、自己制御抵抗発熱メカニズムを、詳細に図4と図5を参照して説明する。
【0062】
図4は、室温状態で、本発明に係る伝導性組成物の微細構造を示す断面図であり、図5は、室温よりも高温の状態で、本発明に係る伝導性組成物の微細構造を示す断面図である。
【0063】
図4は、室温状態で、本発明に係る伝導性組成物250(図6を参照)の微細構造を示すものであり、液状シリコンゴム320の中の導電性カーボンブラック310の配向の程度が示されており、図5は、室温よりも温度が上昇された高温の状態で、本発明に係る伝導性組成物250の微細構造を示す断面図であり、液状シリコンゴム320の中にある導電性カーボンブラック310の配向の程度が示されている。
【0064】
前記導電性カーボンブラック310の粒子間には、液状シリコンゴム320で埋められる微細な空間(narrow gap)を置いて、カーボンブラック310が凝集されている構造であるが、この時、微細な空間が、ポテンシャル障壁(potential barrier)の役割を果たし、熱変動(thermal fluctuation)により、電子が、当該微細な空間を越えてトンネルリング(tunneling)されることで、電気伝導性が発現される。
【0065】
本発明に係る自己制御抵抗発熱機能は、前述したように、トンネル電流(tunneling current)を用いるものであり、このようなトンネル電流は、前記シリコンゴム320からなる微細な空間の差が1nm以内に近付いた状態で保持される時、前記微細な空間の間を流れるようになり、距離に非常に敏感であり、距離の変化に指数関数的に反比例して変化する。
【0066】
一方、温度が上昇すると、図5に示すように、前記シリコンゴム320で埋められた微細な空間の間が広がって電気伝導性が低くなり、抵抗値が上昇して、電気絶縁体としての役割を果たすようになる。
【0067】
上記のように作動するカーボン柔軟性発熱構造体の好適な実施例を、図6と比較例の図7を参照して詳細に説明する。
【0068】
図6は、既存のPTC素子の温度-抵抗特性曲線であり、図7は、本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体の温度-抵抗特性曲線である。
【0069】
図面を参照すれば、実施例1は、導電性カーボンブラック10%含有量に構成されたカーボン柔軟性発熱メッシュの試片で、実施例2は、導電性カーボンブラック8%含有量に構成されたカーボン柔軟性発熱メッシュの試片で、各々温度-抵抗特性を測定しており、これの測定結果を、下記の表4に表す。
【0070】
【表4】

【0071】
比較例としての一般的な高分子PTC素子の温度-抵抗特性曲線が、図7に示されている。
【0072】
既存のPTC素子の温度-抵抗特性曲線が、図6に示されているように、PTC素子は、それぞれの高分子材料の結晶溶融温度(Tm)により発熱温度が決められ、急変点温度を過ぎて一定の温度に至ると、抵抗率が上昇しない様子として示される。
【0073】
しかしならが、本発明のカーボン柔軟性発熱メッシュは、既存のPTC素子とは異なり、図7に示されているように、温度-抵抗特性が、温度が上昇すると、逓増的に抵抗が上昇する自己制御抵抗発熱特性を示している。
【0074】
一方、他の実施例として、前記導電性カーボンブラックの代わりに、黒鉛粉末を用いることもできる。
【0075】
前記黒鉛粉末を充填剤として用いるようになると、前記導電性カーボンブラックの場合に比べて、黒鉛が潤滑性(lubricity)が良いという特性があるので、液状シリコンゴムとの配合が容易であるというメリットがある。
【0076】
前記液状シリコンゴムと黒鉛粉末との混合物からなる伝導性組成物において、前記液状シリコンゴムと黒鉛粉末との質量比は、100:10〜150であることが望ましい。
【0077】
ここで、前記黒鉛粉末の平均粒子大きさが、1〜10μmであり、電気抵抗は、0.0005〜0.08Ω・cmであることが望ましい。
【0078】
また、液状シリコンゴムと、充填剤として、前記導電性カーボンブラック、または、黒鉛粉末とを混合した伝導性組成物の強化材として、短繊維(short staple)が充填でき、前記短繊維は、直径が1〜50μmのガラス繊維、炭素繊維、または、黒鉛繊維などを用いることができる。
【0079】
前記短繊維を強化材として加えることによって、液状の伝導性組成物を補強できるだけでなく、前記構造枠がなくても、所望の形状に成形することが容易になるという効果がある。
【0080】
このような本発明による伝導性組成物及びカーボン柔軟性発熱構造体は、温度センサー、温度補償素子、過熱に対する保護、ヒーター、過電流保護のための電子回路などの分野に応用することができ、これは、前記の実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体の製造工程図である
【図2】本発明に係るカーボン柔軟性発熱メッシュの構造を示す平面図である。
【図3】本発明に係るカーボン柔軟性発熱メッシュの断面図である。
【図4】室温状態で、本発明に係る伝導性組成物の微細構造を示す断面図である。
【図5】室温よりも高温の状態で、本発明に係る伝導性組成物の微細構造を示す断面図である。
【図6】既存のPTC素子の温度-抵抗特性曲線である。
【図7】本発明に係るカーボン柔軟性発熱構造体の温度-抵抗特性曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状シリコンゴムとカーボンブラックとが、質量比で100:1〜15の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、前記カーボン柔軟性発熱構造体は、伝導性組成物の強化材として、短繊維が充填されていることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項2】
前記短繊維は、直径が1〜50μmであり、ガラス繊維、炭素繊維及び黒鉛繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項3】
液状シリコンゴムとカーボンブラックとが、質量比で100:1〜15の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、 前記カーボン柔軟性発熱構造体は、メッシュの形態であり、 前記メッシュは、横糸と縦糸とで織造される織物であって、該織物の横糸または縦糸よりも長く形成される端子部を備え、前記端子部は、伝導性に優れた導体金属線であることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項4】
前記端子部は、錫メッキ銅線、銀線であることを特徴とする請求項3に記載のカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項5】
液状シリコンゴムとカーボンブラックとが、質量比で100:1〜15の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、 前記カーボン柔軟性発熱構造体の表面に液状シリコンゴムと稀釈剤とを混合して攪拌した絶縁性混合物から構成された絶縁コートを更に備えることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項6】
液状シリコンゴムと黒鉛粉末とが、質量比で100:10〜150の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、前記カーボン柔軟性発熱構造体は、伝導性組成物の強化材として、短繊維が充填されていることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項7】
前記短繊維は、直径が1〜50μmであり、ガラス繊維、炭素繊維及び黒鉛繊維のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載のカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項8】
液状シリコンゴムと黒鉛粉末とが、質量比で100:10〜150の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、 前記カーボン柔軟性発熱構造体は、メッシュの形態であり、 前記メッシュは、横糸と縦糸とで織造される織物であって、該織物の横糸または縦糸よりも長く形成される端子部を備え、前記端子部は、伝導性に優れた導体金属線であることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項9】
前記端子部は、錫メッキ銅線、銀線であることを特徴とする請求項8に記載のカーボン柔軟性発熱構造体。
【請求項10】
液状シリコンゴムと黒鉛粉末とが、質量比で100:10〜150の範囲で混合された伝導性組成物を、一定の形状に成形し、硬化することにより作られ、 前記カーボン柔軟性発熱構造体の表面に液状シリコンゴムと稀釈剤とを混合して攪拌した絶縁性混合物から構成された絶縁コートを更に備えることを特徴とするカーボン柔軟性発熱構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−531217(P2007−531217A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504893(P2007−504893)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000914
【国際公開番号】WO2006/004282
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506320451)センテック カンパニ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】