説明

ガイド装置付き流体圧シリンダー

【課題】ピストンロッドの直進性を向上させるとともに、小型化することが可能なガイド装置付き流体圧シリンダーを提供する。
【解決手段】棒状固定部材20は外周面が筒状ケーシング部材10の内周面との間でシリンダー室110を形成する。筒状可動部材30はシリンダー室110内で軸方向に自在に往復運動ができる。隔壁部材40はシリンダー室110内の空間で第1と第2の流体圧室80、90に区画するために棒状固定部材20に固着されている。第1と第2の流体圧室80と90の各々に流体を流入させ、第1と第2の流体圧室80と90の各々から流体を流出させるための流通路23a、23bが棒状固定部材20に形成されている。ガイド装置50は、筒状可動部材30の軸方向に沿った移動を案内するために筒状ケーシング部材10と筒状可動部材30の間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には流体圧シリンダーに関し、特定的には油圧等の流体圧力によりシリンダー本体から外部に軸方向に突出するピストンロッド等の可動部材の移動を案内する装置が取り付けられたガイド装置付き流体圧シリンダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧により作動する往復動アクチュエータとして流体圧シリンダーがあり、直動駆動源として、生産ラインを構成する自動加工機械等の各種産業機械に広く使用されている。たとえば、特開2004−330291号公報(特許文献1)に開示されているように、プレス装置に用いられる流体圧シリンダーは、流体圧により直線方向に往復動するピストンを収容するシリンダーチューブと、ピストンに取り付けられ、シリンダーチューブの端面から外部に突出するピストンロッドとを備え、このピストンロッドに、連結部材を介在させて、被加工物をプレスするために上下移動可能な上金型が取り付けられている。上金型の上下移動の直進性を補完するために、ピストンロッドには板状部材が取り付けられ、この板状部材に上金型が取り付けられ、板状部材にはガイドポストが挿入されている。ピストンロッドがシリンダーチューブの端面から外部に突出すると、板状部材がガイドポストに沿って移動するので、上金型が直進移動することができる。
【0003】
また、従来から、流体圧シリンダーの直進性を補完するために、ピストンロッド(シャフト)の先端部にガイド装置が取り付けられているものとして、たとえば、シャフトガイド一体型の油圧サーボプレスがある。
【0004】
図4は、従来のシャフトガイド一体型の油圧サーボプレスの概略的な構成を示す図である。
【0005】
図4に示すように、油圧サーボプレス500は、油圧シリンダー510と、ガイド装置520とを備える。油圧シリンダー510は、油圧シリンダーチューブ511と、油圧シリンダーチューブ511の端面から外部に突出するピストンロッド(シャフト)512とを備える。ピストンロッド512には、スライダー530が取り付けられている。ガイド装置520は、スライダー530の上下動を案内するためにスライダー530の外周面の上を転動可能なローラ部材521を備えている。スライダー530の先端部にはフランジ部材540が取り付けられている。ガイド装置520は、油圧シリンダー510の本体に取り付けられ、支持構造体550にボルト522で固定されている。支持構造体550は、ベースプレート551と、ベースプレート551に固定された支柱部材552と、支柱部材552にボルト553で固定されたトッププレート554とから構成される。被加工物を加工するための金型は支持構造体550内に配置され、上金型はフランジ部材540に取り付けられる。油圧シリンダーチューブ511には油圧を検知するための圧力センサー513が取り付けられている。スライダー530にはスケール531が取り付けられ、このスケール531を検知して長さを測定するために検知部560が設けられている。
【特許文献1】特開2004−330291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来のプレス装置に用いられる流体圧シリンダーでは、ピストンロッドの直進性を補完するためにガイドポストやガイド装置がピストンロッドの先端部より外側に設けられている。このため、プレス装置は、流体圧シリンダーのピストンロッドが往復移動する方向に長くなり、必然的に装置全体の高さが大きくなるという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、ピストンロッドの直進性を向上させるとともに、小型化することが可能なガイド装置付き流体圧シリンダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったガイド装置付き流体圧シリンダーは、筒状ケーシング部材と、棒状固定部材と、筒状可動部材と、隔壁部材と、ガイド装置とを備える。筒状ケーシング部材は内周面を有する。棒状固定部材は、一方端部が筒状ケーシング部材の一方端部に固定され、他方端部が筒状ケーシング部材の内側に挿通され、外周面が筒状ケーシング部材の内周面との間でシリンダー室を形成するように筒状ケーシング部材に装着されている。筒状可動部材は、シリンダー室内で軸方向に自在に往復運動ができるように装着されている。隔壁部材は、シリンダー室内の空間で、棒状固定部材と筒状可動部材との間の空間を、第1の流体圧室と第2の流体圧室とに区画するために棒状固定部材に固着されている。第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々から流体を流出させるための流通路が棒状固定部材に形成されている。ガイド装置は、筒状可動部材の軸方向に沿った移動を案内するために筒状ケーシング部材と筒状可動部材の間に設けられている。
【0009】
この発明のガイド装置付き流体圧シリンダーは、以上のように構成されているので、従来のピストンロッドに相当する筒状可動部材は、棒状固定部材の外周面と筒状ケーシング部材の内周面との間に形成されたシリンダー室内で軸方向に自在に往復運動する。また、シリンダー室内で筒状可動部材を流体圧によって往復移動させるために設けられる第1と第2の流体圧室は、棒状固定部材と筒状可動部材との間の空間に配置されており、筒状ケーシング部材の内側で筒状可動部材の外側にある空間に配置されていない。さらに、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々から流体を流出させるための流通路は、棒状固定部材に形成されており、筒状ケーシング部材の内側で筒状可動部材の外側にある空間に配置されていない。したがって、筒状可動部材の軸方向に沿った移動を案内するためのガイド装置は、筒状ケーシング部材と筒状可動部材の間に設けることができる。これにより、従来のようにガイド装置をピストンロッドの先端部より外側に設けることなく、流体圧シリンダー内にガイド装置を設けることができるので、本発明の流体圧シリンダーをプレス装置等に適用した場合に、筒状可動部材の直進性を向上させるとともに、小型化を図ることができる。
【0010】
この発明のガイド装置付き流体圧シリンダーにおいて、流通路は、ほぼ上記軸方向に延びるように棒状固定部材に形成された二つの貫通孔を含み、二つの貫通孔の一方端部は、棒状固定部材の外部に通じており、二つの貫通孔の他方端部は、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々に通じていることが好ましい。
【0011】
このように構成することにより、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室と第2の流体圧室の各々から流体を流出させるための流通路を棒状固定部材に内蔵することができるので、流体の流入または流出のための配管を少なくすることができる。これにより、流体圧シリンダーをプレス装置等に適用する場合にその構成を簡素化することができる。
【0012】
また、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダーにおいて、ガイド装置は、筒状ケーシング部材の内周面に設けられた、筒状可動部材の外周面の上を上記軸方向に転動可能な転動体を含むことが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、転動体と筒状可動部材の外周面との接触部において実質的に差動滑りを発生させることがないように、筒状可動部材の軸方向に沿った移動を案内することができる。
【0014】
さらに、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダーは、筒状可動部材の外周面に接するように筒状ケーシング部材の内周面に設けられた油保持部材をさらに備えることが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、油保持部材に保持される潤滑剤が筒状ケーシング部材の内周面と筒状可動部材の外周面の接触部に供給されるので、筒状ケーシング部材の内周面と筒状可動部材の外周面の摩耗を防止することができる。
【0016】
さらにまた、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダーは、筒状可動部材の往復運動に連動するように筒状可動部材に取り付けられた変位検出部材をさらに備えることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、筒状可動部材の位置をリアルタイムで検出して制御することができるので、筒状可動部材の位置の高度な制御が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、従来のようにガイド装置をピストンロッドの先端部より外側に設けることなく、流体圧シリンダー内にガイド装置を設けることができるので、本発明の流体圧シリンダーをプレス装置等に適用した場合に、筒状可動部材の直進性を向上させるとともに、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の一つの実施の形態として可動部材が後退位置にあるときのガイド装置付き流体圧シリンダーを部分的に縦断面で示す部分断面側面図、図2は本発明の一つの実施の形態として可動部材が前進位置にあるときのガイド装置付き流体圧シリンダーを部分的に縦断面で示す部分断面側面図、図3は図1のIII−III線に沿った方向から見た横断面図である。
【0021】
図1に示すように、ガイド装置付き流体圧シリンダー100は、筒状ケーシング部材10と、棒状固定部材20と、筒状可動部材30と、隔壁部材40と、ガイド装置50とを備える。
【0022】
筒状ケーシング部材10は内周面を有し、三つのケーシング部分10a、10b、10cから構成されている。ケーシング部分10aとケーシング部分10bの間、ケーシング部分10bとケーシング部分10cの間には、ガイド装置50が設けられている。ケーシング部分10aとケーシング部分10bはボルト11によって締め付け固定されている。
【0023】
筒状ケーシング部材10(ケーシング部分10a)の一方端部にはフランジ部15が形成されており、フランジ部15に貫通孔16が設けられている。
【0024】
棒状固定部材20の一方端部には、相対的に径の大きな鍔部26が形成されている。棒状固定部材20の鍔部26よりも一方端部側の部分が筒状ケーシング部材10の貫通孔16に挿通されている。棒状固定部材20の鍔部26よりも一方端部側の部分には雌ねじ部21aが形成されている。固定ナット29が雌ねじ部21aに螺合することにより、棒状固定部材20の一方端部が筒状ケーシング部材10の一方端部に固定されている。
【0025】
棒状固定部材20の他方端部が筒状ケーシング部材10の内側に挿通されている。棒状固定部材20の外周面と筒状ケーシング部材10の内周面との間でシリンダー室110が形成されるように棒状固定部材20が筒状ケーシング部材10に装着されている。
【0026】
筒状可動部材30は、シリンダー室110内で軸方向に自在に往復運動ができるように装着されている。筒状可動部材30の一方端部には、第2の流体圧室(後退用流体圧室)90の外壁を形成するための外壁部材31とともに、目盛(スケール)付きの棒状の変位検出部材70が固定ナット71によって固着されている。変位検出部材70は、筒状可動部材30の往復運動に連動するように筒状可動部材30に取り付けられている。変位検出部材70の目盛等を検知するために検知部200が流体圧シリンダー100の外部に設けられている。
【0027】
筒状可動部材30の他方端部には、第1の流体圧室(前進用流体圧室)80の外壁を形成するための内底部37が形成され、内底部37から他方端部側に向かって延びるように外筒部38が形成されている。外筒部38には、被加工材を加工するための金型等の工具部材を取り付けるための雌ねじ部36が形成されている。
【0028】
シリンダー室110内の空間で、棒状固定部材20と筒状可動部材30との間の空間を、外壁部材31と内底部37との間で、第1の流体圧室(前進用流体圧室)80と第2の流体圧室(後退用流体圧室)90とに区画するために、棒状固定部材20の他方端部には、隔壁部材40が雌ねじ部21bを介して固着されている。第1の流体圧室80は、筒状可動部材30の内周面と棒状固定部材20の外周面と外壁部材31と隔壁部材40とによって囲まれた空間である。第2の流体圧室90は、筒状可動部材30の内底部37と棒状固定部材20の他方端面と隔壁部材40とによって囲まれた空間である。
【0029】
第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々から流体を流出させるための流通路23a、23bが棒状固定部材20に形成されている。第1の流通路23aは、ほぼ軸方向に延びるように棒状固定部材20に形成された一つの貫通孔からなり、貫通孔の一方端部には、棒状固定部材20の外部に通じるように開口24aが形成され、貫通孔の他方端部には、第1の流体圧室80に通じるように開口25aが形成されている。第2の流通路23bは、ほぼ軸方向に延びるように棒状固定部材20に形成された一つの貫通孔からなり、貫通孔の一方端部には、棒状固定部材20の外部に通じるように開口24bが形成され、貫通孔の他方端部には、第2の流体圧室90に通じるように開口25bが形成されている。ここで、開口24a、24b、25aは棒状固定部材20の端面に形成されているが、開口25bは、棒状固定部材20の外周面に形成されている。開口24a、24bには、油圧配管等が取り付けられる。
【0030】
フェルト等の油保持部材60が、筒状可動部材30の外周面に接するように筒状ケーシング部材10の内周面に設けられている。
【0031】
なお、筒状ケーシング部材10の内周面と筒状可動部材30の外周面との間には、筒状可動部材30の往復運動に伴って外部から塵埃がシリンダー室110内に侵入するのを防止するために、ダストシール13、14が嵌め入れられている。また、隔壁部材40の外周面と筒状可動部材30の外周面との間の摺動部には、ピストンリング(またはUパッキン)41、ウェアリング42、ピストンリング(またはUパッキン)43が嵌め入れられている。隔壁部材40の内周面と棒状固定部材20の外周面との間には、Oリング22が嵌め入れられている。さらに、外壁部材31の内周面と棒状固定部材20の外周面との間の摺動部にも、ピストンリング(またはUパッキン)32、ウェアリング33、ダストシール34が嵌め入れられている。筒状可動部材30の内周面と外壁部材31の外周面との間には、Oリング35が嵌め入れられている。
【0032】
二つのガイド装置50が、筒状可動部材30の軸方向に沿った移動を案内するために筒状ケーシング部材10と筒状可動部材30の間に設けられている。ガイド装置50は、筒状ケーシング部材10の内周面に設けられた転動体を含み、例えば、ニードルベアリングからなり、ニードルベアリングは、筒状可動部材30の外周面の上を軸方向に転動可能である。
【0033】
図3に示すように、ニードルベアリング(ガイド装置)50は、筒状可動部材30の外周面の上を軸方向(図3の紙面に垂直な方向)に転動する円筒状の外輪51と、外輪51の内周側に配置され、各々が回転自在に支持された複数のニードルローラ52とから構成される。ニードルベアリング50は、支持軸部材53により支持されている。このように構成されているので、外輪51は支持軸部材53の周りを回転自在に転動できるようになっている。支持軸部材53は、ケーシング部分10cの内部においてポケット穴17に形成された支持穴内に挿入されている。
【0034】
図3に示す実施の形態では、筒状可動部材30は、軸方向と直交する断面がほぼ円形断面である外周面を有する。外輪51は、筒状可動部材30の外周面に接触可能な凹状に湾曲する外周面を有する。外周面を形成する曲面は、筒状可動部材30の外周面を形成する曲面よりも大きな曲率半径を有する。
【0035】
図3に示すように、ニードルベアリング50が配置される筒状ケーシング部材10を構成するケーシング部分10b、10cの箇所の周方向の間には、複数個の貫通孔12が、この例では6個の貫通孔12が軸方向に延びるように形成されている。貫通孔12の各々には、通しボルトが挿入される。通しボルトの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部がケーシング部分の一方側面に形成されている。たとえば、ケーシング部分10cと10bとの間では、通しボルトがケーシング部分10bの一方側面に締め付け固定されることによって、ケーシング部分10cがケーシング部分10bに固着され、これにより、ガイド装置としてのニードルベアリング50が流体圧シリンダー100の本体としての筒状ケーシング部材10に取り付けられている。なお、ケーシング部分10bと10aとの間では、ボルト11が締め付け固定されることによって、ケーシング部分10aがケーシング部分10bに固着され、これにより、ガイド装置としてのニードルベアリング50が流体圧シリンダー100の本体としての筒状ケーシング部材10に取り付けられている。
【0036】
以上のように構成された流体圧シリンダー100は、次のように作動する。
【0037】
まず、図1に示すように筒状可動部材30が後退している位置において、油圧回路を作動させることにより、油等の流体が開口24aから第1流通路23aを通じて開口25aを経て第1流体圧室80内に流入すると同時に、油等の流体が第2流体圧室90内から開口25bを経て第2流通路23bを通じて開口24bへと流出する。これにより、図2に示すように、筒状可動部材30は、前進し、筒状ケーシング部材10の他方端部から外へ突出する。
【0038】
一方、図2に示すように筒状可動部材30が前進している位置において、油圧回路を作動させることにより、油等の流体が開口24bから第2流通路23bを通じて開口25bを経て第2流体圧室90内に流入すると同時に、油等の流体が第1流体圧室80内から開口25aを経て第1流通路23aを通じて開口24aへと流出する。これにより、図1に示すように、筒状可動部材30は、後退し、筒状ケーシング部材10の内部に挿通される。
【0039】
このような筒状可動部材30の軸方向に沿った往復運動は、ガイド装置50によって案内される。
【0040】
この発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100は、以上のように構成されているので、従来のピストンロッドに相当する筒状可動部材30は、棒状固定部材20の外周面と筒状ケーシング部材10の内周面との間に形成されたシリンダー室110内で軸方向に自在に往復運動する。また、シリンダー室110内で筒状可動部材30を流体圧によって往復移動させるために設けられる第1と第2の流体圧室80、90は、棒状固定部材20と筒状可動部材30との間の空間に配置されており、筒状ケーシング部材10の内側で筒状可動部材30の外側にある空間に配置されていない。さらに、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々から流体を流出させるための第1と第2の流通路23a、23bは、棒状固定部材20に形成されており、筒状ケーシング部材10の内側で筒状可動部材30の外側にある空間に配置されていない。したがって、筒状可動部材30の軸方向に沿った移動を案内するためのガイド装置50は、筒状ケーシング部材10と筒状可動部材30の間に設けることができる。これにより、従来のようにガイド装置をピストンロッドの先端部より外側に設けることなく、流体圧シリンダー内にガイド装置を設けることができるので、本発明の流体圧シリンダー100をプレス装置等に適用した場合に、筒状可動部材30の直進性を向上させるとともに、小型化を図ることができる。
【0041】
また、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100において、第1と第2の流通路23a、23bは、ほぼ上記軸方向に延びるように棒状固定部材20に形成された二つの貫通孔を含み、二つの貫通孔の一方端部は、棒状固定部材20の外部に通じており、二つの貫通孔の他方端部は、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々に通じている。このように構成することにより、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々に流体を流入させ、または、第1の流体圧室80と第2の流体圧室90の各々から流体を流出させるための第1と第2の流通路23a、23bを棒状固定部材20に内蔵することができるので、流体の流入または流出のための配管を少なくすることができる。これにより、流体圧シリンダー100をプレス装置等に適用する場合にその構成を簡素化することができる。
【0042】
さらに、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100において、ガイド装置50は、筒状ケーシング部材10の内周面に設けられた転動体として、筒状可動部材30の外周面の上を軸方向に転動可能なニードルベアリングを含むことことにより、転動体と筒状可動部材30の外周面との接触部において実質的に差動滑りを発生させることがないように、筒状可動部材30の軸方向に沿った移動を案内することができる。
【0043】
具体的には、この発明の実施の形態のガイド装置付き流体圧シリンダー100において、図3に示すように、ケーシング部分10cの貫通孔18の内側面には、軸方向と直交する平面内で周方向に配置された複数のポケット穴17が軸方向に複数列形成されており、ニードルベアリング50の外輪51がケーシング部分10cの複数のポケット穴17の各々に設けられ、筒状可動部材30の外周面の上を軸方向に転動可能であり、ガイド装置50は、外輪51を回転自在に支持する支持軸部材53をさらに含む。このようにガイド装置を構成することにより、外輪51と筒状可動部材30の外周面との接触面において実質的に差動すべりを発生させることがないように、筒状可動部材30の軸方向に沿った移動を案内することができる。
【0044】
さらにまた、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100は、筒状可動部材30の外周面に接するように筒状ケーシング部材10の内周面に設けられた油保持部材60をさらに備えることにより、油保持部材60に保持される潤滑剤が筒状ケーシング部材10の内周面と筒状可動部材30の外周面の接触部に供給されるので、筒状ケーシング部材10の内周面と筒状可動部材30の外周面の摩耗を防止することができる。
【0045】
なお、流体圧シリンダー100が油圧シリンダーの場合には、筒状可動部材30が筒状ケーシング部材10の外部に突出して移動する度にフェルト等の油保持部材60内の油が筒状可動部材30の外周面に付着する。このため、筒状可動部材30の外周面に密着して接触する外輪51に潤滑油が自動的に供給されることになる。これにより、外輪51の軸方向への転動を円滑にすることができる。
【0046】
また、この発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100は、筒状可動部材30の往復運動に連動するように筒状可動部材30に取り付けられた変位検出部材70をさらに備えることにより、筒状可動部材30の位置をリアルタイムで検出して制御することができるので、筒状可動部材30の位置の高度な制御が可能になる。
【0047】
本発明のガイド装置付き流体圧シリンダー100は、典型的には被加工材を金型等で押圧することによって加工するプレス装置に用いられる油圧シリンダーに適用されるが、油圧により作動する往復動アクチュエータの直動駆動源として、生産ラインを構成する自動加工機械等の各種産業機械に広く適用することができ、また空気圧シリンダーにも適用することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一つの実施の形態として可動部材が後退位置にあるときのガイド装置付き流体圧シリンダーを部分的に縦断面で示す部分断面側面図である。
【図2】本発明の一つの実施の形態として可動部材が前進位置にあるときのガイド装置付き流体圧シリンダーを部分的に縦断面で示す部分断面側面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った方向から見た横断面図である。
【図4】従来のシャフトガイド一体型の油圧サーボプレスの概略的な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100:ガイド装置付き流体圧シリンダー、10:筒状ケーシング部材、20:棒状固定部材、23a:第1流通路、23b:第2流通路、24a,24b,25a,25b:開口、30:筒状可動部材、40:隔壁部材、50:ガイド装置(ニードルベアリング)、60:油保持部材、70:変位検出部材、80:第1流体圧室、90:第2流体圧室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面を有する筒状ケーシング部材と、
一方端部が前記筒状ケーシング部材の一方端部に固定され、他方端部が前記筒状ケーシング部材の内側に挿通され、外周面が前記筒状ケーシング部材の内周面との間でシリンダー室を形成するように前記筒状ケーシング部材に装着された棒状固定部材と、
前記シリンダー室内で軸方向に自在に往復運動ができるように装着された筒状可動部材と、
前記シリンダー室内の空間で、前記棒状固定部材と前記筒状可動部材との間の空間を、第1の流体圧室と第2の流体圧室とに区画するために前記棒状固定部材に固着された隔壁部材とを備え、
前記第1の流体圧室と前記第2の流体圧室の各々に流体を流入させ、または、前記第1の流体圧室と前記第2の流体圧室の各々から流体を流出させるための流通路が前記棒状固定部材に形成されており、さらに、
前記筒状可動部材の前記軸方向に沿った移動を案内するために前記筒状ケーシング部材と前記筒状可動部材の間に設けられたガイド装置とを備える、ガイド装置付き流体圧シリンダー。
【請求項2】
前記ガイド装置は、前記筒状ケーシング部材の内周面に設けられた、前記筒状可動部材の外周面の上を前記軸方向に転動可能な転動体を含む、請求項1に記載のガイド装置付き流体圧シリンダー。
【請求項3】
前記筒状可動部材の往復運動に連動するように前記筒状可動部材に取り付けられた変位検出部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のガイド装置付き流体圧シリンダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293729(P2009−293729A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149190(P2008−149190)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000100838)アイセル株式会社 (62)
【Fターム(参考)】