説明

ガスタービンの制御及び運転に関する方法

【課題】エンジン出力レベルの増大、効率向上が得られるように可変の冷却空気抽出レベルを制御する。
【解決手段】燃焼タービンエンジン200の可変抽出流を制御する方法であって、抽出流が、抽出導管204を通って圧縮機106から抽出されてタービン110に供給される供給加圧空気を含み、抽出導管204が可変抽出オリフィス208を含み、該方法が、動作パラメータを測定するステップと、動作パラメータを監視するステップと、可変抽出オリフィス208を設定するステップと、モデルベース制御と、タービン入口温度及び最大タービン入口温度を含む測定動作パラメータとに基づいて動作パラメータを制御ユニット210により計算するステップと、タービン入口温度及び最大タービン入口温度についての値を比較することによりエンジン出力の増大及び/又は最大レベルが決定されるように、燃焼器112への供給燃料の設定を操作するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体的に、ガスタービンエンジン(特記しない限り、航空機エンジン、発電用エンジンなどを始めとするあらゆるタイプのガス又は燃焼タービンもしくは回転機械を含む。)の効率及び/又は動作を改善するための方法、システム及び/又は装置に関する。より具体的には、限定ではないが、本出願は、エンジン性能を向上させるために運転中に圧縮機抽出流を制御することに関連する方法、システム及び/又は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンエンジンは、圧縮機、燃焼器及びタービンを含む。圧縮機及びタービンは一般に、各段で軸方向にスタックされたブレード列を含む。各段は、固定される円周方向に離間したステータブレードの列と、中心軸又はシャフトの回りを回転するロータブレードの列とを含む。作動中、一般に、圧縮機ロータブレードは、シャフトの回りを回転し、ステータブレードと協働して空気流を加圧する。次いで、燃焼器内で供給加圧空気を使用して供給燃料を燃焼させる。次に、燃焼により結果として生じた高温ガスの流れ、すなわち作動流体は、エンジンのタービンセクションを通って膨張する。タービンを通る作動流体の流れはロータブレードを誘起して回転させる。ロータブレードは中心シャフトに接続され、該ロータブレードの回転によりシャフトが回転するようになる。
【0003】
このようにして、燃料に含まれるエネルギーは、回転シャフトの機械エネルギーに変換され、この機械エネルギーを用いて、例えば、圧縮機のロータブレードを回転させて、燃焼に必要な供給加圧空気を生成するようにし、更に、発電機のコイルを回転させて電力を発生させるようにすることができる。作動時には、約2400°Fから2600°Fまでに達する場合がある高温ガス通路の過度の温度、並びに高い回転速度に起因して、タービンブレードには、過度の機械的及び熱的負荷によって高い応力が加わる。一般に、当業者には理解されるように、これは、圧縮機から空気を抽出し、該空気を用いて運転中の高温のガス通路内の部品を冷却するようにガスタービンエンジンを設計することを要件とする。しかしながら、このように圧縮機空気を使用するとタービンエンジンの効率が低下するので、この抽出は高コストである。従って、可能な限り低減又は最小限にする必要がある。
【0004】
当業者であれば理解されるように、従来のエンジン設計は一般に、圧縮機からの冷却空気の抽出に対し画一的な手法を利用しており、すなわち、抽出量が一定であることを意味する。この手法の結果、エンジンは、必要な量を超えて圧縮機から冷却空気を抽出することが多い。過剰な冷却空気を用いることに伴う性能上の欠点、並びに最も一般的な運転条件中に可能な範囲内でこの欠点を回避する必要性を考えると、画一的な抽出容量は一般に、高温の周囲条件でのピーク出力のような特定の応用において必要となる可能性があるレベルよりも小さくされ、或いは低温の周囲条件でのベース負荷運転などの他の状況で必要とされるよりも大きくされる。
【0005】
この問題に対処するために、一部のガスタービンシステムは、圧縮機からの抽出レベルを可変にすることができる技術を利用している。しかしながら、可変抽出が利用可能な場合でも、従来のタービン制御方法及びシステムは、出力及び効率の到達可能な増大が得られるよう、この機能を十分には利用することはできない。エンジン動作パラメータを測定及び監視し、このデータからエンジンシステムをモデル化して、演算を微調整するために他の動作パラメータを計算し使用できるようにする、コンピュータに実装された方法及びシステムが利用可能である。場合によっては、以下で詳細に検討するように、このタイプの技術は、可変圧縮機抽出技術と組み合わせたときに、エンジン性能の向上を達成できるように修正(本明細書で定められるように)して利用することができる。その結果、エンジン出力レベルの増大、効率向上及び/又は他の性能強化が得られるように可変の冷却空気抽出レベルを制御することに関する改善された装置、方法及び/又はシステムに対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6393825号明細書
【発明の概要】
【0007】
従って、本出願は、圧縮機、燃焼器及びタービンを備えたタービンエンジンにおいて可変抽出流を制御する方法を記載しており、抽出流が、1以上の抽出導管を通って燃焼器を迂回しながら圧縮機から抽出されてタービンに供給される供給加圧空気を含み、抽出導管の少なくとも1つが、制御ユニットにより制御される複数の設定を有する可変抽出オリフィスを含み、該方法が、少なくとも、タービン内の温度に関連する動作パラメータ、可変抽出オリフィスの設定に関連する動作パラメータ、圧縮機に関連する動作パラメータ、抽出導管の1つ内の圧力に関連する動作パラメータ及び抽出流のレベルに関連する動作パラメータを含む、複数のタービンエンジン動作パラメータを測定するステップと、燃焼タービンエンジンの測定された動作パラメータを制御ユニットにより監視するステップと、モデルベース制御と、測定臨界圧力比を含む測定動作パラメータとに基づいて少なくとも1つの計算された動作パラメータを制御ユニットにより計算するステップと、測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を上回るかどうか比較することにより、低減され及び/又は最小の抽出流が決定されるように可変抽出オリフィスの少なくとも1つについて設定を操作するステップと、を含む。
【0008】
本出願が更に、圧縮機、燃焼器及びタービンを備えたタービンエンジンにおいて可変抽出流を制御する方法であって、抽出流が、1以上の抽出導管を通って燃焼器を迂回しながら圧縮機から抽出されてタービンに供給される供給加圧空気を含み、抽出導管の少なくとも1つが、制御ユニットにより制御される複数の設定を有する可変抽出オリフィスを含み、該方法が、少なくとも、タービン内の温度に関連する動作パラメータ、可変抽出オリフィスの設定に関連する動作パラメータ、抽出流のレベルに関連する動作パラメータ及び燃焼器の供給燃料に関連する動作パラメータを含む、複数のタービンエンジン動作パラメータを測定するステップと、燃焼タービンエンジンの測定された動作パラメータを制御ユニットにより監視するステップと、抽出流のほぼ最大レベルを可能にする設定に少なくとも1つの可変抽出オリフィスを設定するステップと、モデルベース制御と、少なくとも現在のタービン入口温度及び最大タービン入口温度を含む測定動作パラメータとに基づいて少なくとも1つの計算された動作パラメータを制御ユニットにより計算するステップと、現在のタービン入口温度及び最大タービン入口温度についての値を比較することによりエンジン出力の増大及び/又は最大レベルが決定されるように、燃焼器への供給燃料についての設定を操作するステップと、を含む。
【0009】
本出願のこれら及び他の特徴は、図面及び添付の請求項を併用しながら以下の詳細な説明を精査すると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本出願の特定の実施形態を用いることができる例示的なタービンエンジンの概略図。
【図2】図1のガスタービンエンジンの圧縮機セクションの断面図。
【図3】図1のガスタービンエンジンのタービンセクションの断面図。
【図4】本出願の例示的な実施形態によるタービンシステムの概略図。
【図5】本出願の例示的な実施形態の工程を示すフロー図。
【図6】本出願の例示的な実施形態の工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を詳細に検討することによって完全に理解され認識されるであろう。
【0012】
ここで各図を参照すると、図1は、ガスタービンエンジン100の概略図を示しており、これを用いて本発明を利用できる例示的な状況を説明する。本発明は、このタイプの利用に限定されないことは、当業者には理解されるであろう。上述のように、本発明は、他のタイプのガスタービンエンジンでも利用することができる。一般に、ガスタービンエンジンは、加圧空気のストリームにおいて燃料が燃焼することにより生成される高温ガスの加圧流からエネルギーを抽出することによって動作する。図1に示すように、ガスタービンエンジン100は、軸流圧縮機106と共に構成することができ、該軸流圧縮機は、共通シャフト又はロータにより下流側タービンセクション又はタービン110、並びに圧縮機106とタービン110との間に位置付けられた燃焼器112に機械的に結合される。
【0013】
図2は、図1のガスタービンエンジンで使用することができる例示的な多段軸流圧縮機106の図を示す。図示のように、圧縮機106は複数の段を含むことができる。各段は、圧縮機ロータブレード120の列と、その後に続く圧縮機ステータブレード122の列とを含むことができる。すなわち、第1の段は、中央シャフトの周りを回転する圧縮機ロータブレード120の列と、これに続いて、運転中に固定を維持する圧縮機ステータブレード122の列とを含むことができる。圧縮機ステータブレード122は、全体的に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され、回転軸の周りに固定される。圧縮機ロータブレード120は、円周方向に間隔を置いて配置され且つシャフトに取り付けられ、すなわち、運転中にシャフトが回転すると、圧縮機ロータブレード120がシャフトの回りを回転する。当業者には理解されるように、圧縮機ロータブレード120は、シャフトの周りを回転するときに圧縮機106を介して流れる空気又は流体に運動エネルギーを与えるように構成される。圧縮機106は、図2に示す段以外の他の段を有することができる。付加的な各段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ロータブレード120と、これに続いて複数の円周方向に間隔を置いて配置された圧縮機ステータブレード122とを含むことができる。
【0014】
図3は、図1のガスタービンエンジンで使用することができる例示的なタービンセクション又はタービン110の部分図を示す。タービン110はまた、複数の段を含むことができる。3つの例示的な段が示されているが、これよりも多い又は少ない段をタービン110に設けてもよい。第1の段は、運転中にシャフトの周りを回転する複数のタービンバケット又はタービンロータブレード126と、運転中に固定状態を維持する複数のノズル又はタービンステータブレード128とを含む。タービンステータブレード128は、全体的に、互いに円周方向に間隔を置いて配置され、回転軸の周りに固定される。タービンロータブレード126は、タービンホイール(図示せず)上に取り付けられ、シャフト(図示せず)の周りを回転することができる。タービン110の第2の段も示されている。同様に第2の段は、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード128と、これに続いて、回転のため同様にタービンホイール上に取り付けられる複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンロータブレード126とを含む。第3の段も示されており、同様に、複数の円周方向に間隔を置いて配置されたタービンステータブレード128とタービンロータブレード126とを含む。タービンステータブレード128及びタービンロータブレード126は、タービン110の高温ガス通路内にあることは理解されるであろう。高温ガス通路を通る高温ガスの流れ方向が矢印で示されている。当業者には理解されるように、タービン110は、図3に示す段以外の他の段を有することができる。付加的な各段は、タービンステータブレード128の列と、これに続いてタービンロータブレード126の列とを含むことができる。
【0015】
使用中、軸流圧縮機106内の圧縮機ロータブレード120の回転により、空気流を加圧することができる。燃焼器112において、エネルギーは、加圧空気が燃料と混合して点火されたときに放出することができる。次いで、結果として得られる燃焼器112からの高温ガスの流れは、作動流体とも呼ぶことができ、タービンロータブレード126の上に配向され、該作動流体の流れが、シャフトの回りのタービンロータブレード126の回転を誘起する。これにより、作動流体の流れは、動翼及び回転シャフト(ロータブレードとシャフトとの間が接続されているので)の機械的エネルギーに変換される。次に、シャフトの機械エネルギーを利用して、圧縮機ロータブレード120の回転を駆動することができ、その結果、必要な供給加圧空気が生成され、更に、例えば発電機が電気を発生するようにする。
【0016】
次に進む前に、本出願の発明を明確に伝えるために、タービンエンジンの特定の機械構成要素又は部品に言及し且つ説明する用語を選択することが必要となることがある点に留意されたい。当該業界で通常使用される用語は、可能な限り、一般に受け入れられる意味と適合するように使用及び利用されることになる。しかしながら、このような用語は広義に与えられ、本明細書で意図する意味及び添付の請求項の範囲が不当に制限されるような狭義に解釈されないものとする。当業者であれば、特定の構成要素が複数の異なる名称で呼ばれる場合が多いことは理解されるであろう。加えて、本明細書で単一の要素として説明できる事柄は、別の状況では複数の構成要素を含み、又は複数の構成要素からなるものとして言及することができ、或いは、本明細書で複数の構成要素を含むものとして説明できる事柄は、単一要素に構築され、場合によっては単一の要素として言及することができる。従って、本明細書で記載される本発明の範囲を理解する際に、提供される用語及び説明にのみ留意するのではなく、本明細書で記載される構成要素の構造、構成、機能及び/又は使用に対しても留意すべきである。
【0017】
加えて、タービンエンジン用途で一般的な幾つかの記述上の用語を本明細書で使用する場合がある。これらの用語の定義は以下の通りである。用語「ロータブレード」は、特記しない限り、圧縮機106又はタービン110の何れかの動翼を指し、これらは共に、圧縮機ロータブレード120及びタービンロータブレード126を含む。用語「ステータブレード」は、特記しない限り、圧縮機106又はタービン110何れかの静翼を指し、これらは共に、圧縮機ステータブレード122及びタービンステータブレード128を含む。用語「ブレード」は、本明細書において、何れかの形式のブレードを指すのに用いられる。従って、特記しない限り、用語「ブレード」は、圧縮機ロータブレード120、圧縮機ステータブレード122、タービンロータブレード126及びタービンステータブレード128を含む、全ての形式のタービンエンジンブレードを包含する。更に、本明細書で使用される「下流」及び「上流」とは、タービンを通る作動流体の流れに対する方向を示す用語である。すなわち、用語「下流」とは、流れ方向を意味し、用語「上流」とは、タービンを通る流れと逆方向を意味する。これらの用語に関連して、用語「後方」及び/又は「後縁」は、説明されている構成要素の下流方向、下流端部及び/又は下流端部の方向を指す。また、用語「前方」又は「前縁」は、説明されている構成要素の上流方向、上流端部及び/又は上流端部の方向を指す。用語「半径方向」は、軸線に垂直な動き又は位置を指す。この用語は、軸線に対して異なる半径方向位置にある部品を説明するのに必要となることが多い。この場合、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線により近接して位置する場合、本明細書では、第1の構成要素は第2の構成要素の「内寄り」又は「半径方向内向き」にあると表現することができる。反対に、第1の構成要素が第2の構成要素よりも軸線からより遠くに位置する場合、本明細書では、第1の構成要素は、第2の構成要素の「外寄り」又は「半径方向外向き」にあると表現することができる。用語「軸方向」とは、軸線に平行な動き又は位置を指す。また、用語「円周方向」とは、軸線を中心とした動き又は位置を指す。
【0018】
再度各図を参照すると、図4は、本発明の例示的な実施形態であるタービンシステム200を示す。より詳細に説明するように、燃焼機関又はガスタービンエンジンの作動を改善する目的で可変圧縮機抽出及びモデルベースの制御を利用する装置、方法及び/又は方法が提供される。本明細書で説明されるように、「可変圧縮機抽出」は、ガスタービンの圧縮機セクションから抽出される空気流の量を制御する能力として定義される。最小でも、「可変圧縮機抽出」は、空気流抽出の少なくとも2つの異なるレベルを提供する能力を含む。本明細書で使用される「モデルベース制御」とは、エンジン作動のモデルに基づいてタービンエンジンを制御する方法である。従って、タービンエンジンは、測定動作パラメータに基づくだけでなく、タービンエンジンモデル及び測定動作パラメータを所与として計算することができる動作パラメータに基づいて制御することができる。以下でより詳細に検討するように、本出願は、とりわけ、可変圧縮機抽出及びモデルベース制御を統合することによって動作性能を向上させる。本発明の特定の例示的な実施形態は、既存の圧縮機抽出配管又は供給ライン並びに既存の配管内に設置される従来の可変抽出バルブ又はオリフィスを利用することは理解されるであろう。以下でより詳細に説明するように、可変抽出オリフィスの制御は、本明細書で詳述するプロセスステップに従って作動するよう修正された従来のモデルベースの制御プログラム又はシステムによる制御ユニットにより測定され、監視され及び/又は計算されるエンジン動作パラメータに基づくことができる。このようにすると、可変圧縮機抽出並びにモデルベース制御の使用を通じて利用可能な冷却流のレベルを十分に活用することによって、エンジン性能を高めることができる。より詳細には、以下でより詳細に検討するように、本発明を利用して、エンジン出力を増大又は最大にし、或いは効率を向上又は最大化することができる。
【0019】
当業者であれば理解されるように、圧縮機抽出は、タービンシステムの何れの圧縮機段でも設けることができる。抽出流は、エンジンのタービンセクションに供給され、運転中に部品を冷却し及び/又は部品を適切な温度に維持することができる。本明細書で使用される場合、抽出流とは、部品を冷却するため、又はキャビティをパージするため、或いは他の同様の用途のために、圧縮機から抽出又はブリードされてエンジンのタービンセクションに送給される何らかの供給空気を指すものとする。一般に、従来のシステムでは抽出される空気の量は一定である。従来の可変圧縮機抽出バルブ又はオリフィスを用いて、可変の圧縮機空気抽出レベルを可能にすることができる。
【0020】
本発明の実施形態は、本発明の1つの実施形態による、システム、方法、装置及び/又はコンピュータプログラム製品のブロック図を参照しながら以下で説明する。本発明の実施例は、複数の図面を通じて同じ参照符号が同じ要素を示す添付図面を参照しながら、以下でより詳細に説明する。実際には、これらの発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書で記載される実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満足するように提供される。 上述のように、図4は、本明細書で提供されるプロセスによるモデルベース制御を使用して、特定の用途においてエンジン性能が向上するよう圧縮機106からの抽出流を制御する、例示的なタービンシステム200を示している。図4に示す例示的なタービンシステム200は、発電機(図示せず)を作動させるのに使用されるガスタービンとすることができる。図4の例示的な実施形態に示すように、タービンシステム200は、圧縮機106、タービン110及び燃焼器112を含むことができ、この一般的な動作は上記で詳細に説明されている。
【0021】
同様に図示するように、タービンシステム200は、圧縮機106の抽出ポイント又は段と流体連通して配置された抽出供給ライン又は導管204を含むことができる。抽出導管204は一般に、圧縮機106から抽出された流れをタービン110に送る配管である。本発明の幾つかの例示的な実施形態において、圧縮機106の抽出ポイントは、段9及び/又は段13に位置付けることができるが、抽出は他の段で行ってもよい。本発明の幾つかの例示的な実施形態によれば、制御された可変抽出流は、当業者には理解されるような部分冷却、キャビティパージ、又は他の同様の機能において、タービン110の何れかの段のあらゆる構成部品において元の状態に戻すことができる。タービンエンジン作動中の抽出流の制御及び操作を可能にするために、抽出導管204は、1以上の可変抽出オリフィス208に接続し、これを含めることができる。図4の例示的な実施形態に示すように、抽出導管204は、可変抽出オリフィス208からタービン110内の所望の場所に続き、抽出流を配向することができる。
【0022】
本発明の例示的な実施形態において、可変抽出オリフィス208は、1以上の可変幾何形状オリフィスを含むことができる。各オリフィス208の幾何形状は、エンジンの1以上のタービン動作パラメータに従って制御することができる。以下でより詳細に検討するように、オリフィス208は、抽出流のレベルを制御し、特定の所望の動作特性を維持することができる。本発明の例示的な実施形態において、可変抽出オリフィス208は、既存のすなわち従来の抽出導管204に設置することができる。本発明の例示的な実施形態において、1以上の可変抽出オリフィス208は、少なくとも比較的低い流れオリフィス設定、高い流れオリフィス設定及び/又は他の設定を定めることができる。制御ユニット210は、1以上の可変抽出オリフィス208の設定を制御し、タービンシステム200のシステムオペレータによる要求に応じて、これらの設定を達成できるようにすることができる。例示的な可変抽出オリフィスは、バルブ(例えば、グローブバルブ、空気バルブ、ゲートバルブ、その他)とすることができ、ここでバルブのストロークは、従来的手段を用いて制御ユニット210により制御することができる。
【0023】
当業者であれば理解されるように、制御ユニット210は、燃料、空気及びエミッション制御、始動、運転停止、冷却におけるタービン燃料及び補助装置の配列、発電機及びシステムの同期及び電圧マッチング、タービン、制御装置及び補助装置全ての機能の監視、タービン動作パラメータ全ての監視、安全でない不利な動作条件に対する保護及び/又は他の同様の機能を含む、多くの機能を実施することができる。本発明の幾つかの例示的な実施形態において、制御ユニット210並びに該制御ユニットが抽出流を制御及び操作する方法は、従来の又は既存の多パラメータタービンエンジン制御システム(例えば、既存のモデルベース制御システム、又は補正パラメータ制御システム)に組み込むことができる。本発明の例示的な実施形態において、ガスタービンシステムの制御ユニット210は、限定ではないが、ゼネラルエレクトロニック社のSpeedtronic(商標)Mark VI制御システムのような、既存のタービン制御システムに組み込まれる構成部品及び/又はモジュールとすることができる。当業者であれば理解されるように、必要なセンサ及びコンピュータ作動機構(例えば、可変抽出オリフィス208)を含む、タービンエンジン動作パラメータ及び作動の測定、監視、計算及び制御を行うことを含む本発明の態様は、これらの従来のシステムの1つ又はそれ以上で見ることができ、これらのシステムは、本明細書に記載の本発明に従って機能するよう修正することができる。
【0024】
図4に示すように、本発明の例示的な実施形態は、一体化制御ユニット210を利用して、1以上の可変抽出オリフィス208を制御することにより、運転中の抽出流のアクティブ調整を可能にする。制御ユニット210は、タービンシステム200の種々の構成部品に関する1以上の測定又は計算されたエンジン動作パラメータに応答して、抽出流を制御することができる。従って、本発明の例示的な実施形態によれば、タービンシステム200に関する1以上の動作パラメータは、タービンシステム200内の1以上の位置に配置された従来のセンサを介して制御ユニット210により測定することができる。センサは、圧縮機106、燃焼器112、タービン110、可変抽出オリフィス208、抽出導管204及びその他を含むタービンシステム200の種々の構成部品及び/又は段全体に配置することができ、必要に応じて制御ユニット210に情報を送信することができる。当業者であれば理解されるように、センサは、バルブ位置、温度、圧力に関する測定値及び以下で提供される他のこのような測定値を取得することができる。従来のタービンエンジンセンサは、閉ループ制御システムで使用することができる。次いで、制御ユニット210は、センサ(センサは、制御ユニット210の一部と見なすことができる点に留意されたい)からの測定情報を監視及び記録する。制御ユニット210は、センサから得られたデータを使用して、例えば、火炎温度のように、センサによって測定されない動作パラメータに関する計算を行うことができる。これらの計算は、従来のモデルベースの制御システム又は他の同様の方法に基づくことができる。制御ユニット210は、以下で検討するように、これらの計算及び収集データを用いて抽出流を調整し、タービンエンジン動作を増強することができる。
【0025】
より詳細には、本出願の例示的な実施形態により、タービンシステム200の制御ユニット210により測定、監視及び記録された動作パラメータは、以下で定められるように、タービン排気温度及び/又は圧力、圧縮機空気流量、圧縮機入口温度、圧縮機出口温度、圧縮機入口圧力、圧縮機出口圧力、燃料流量、燃焼ダイナミックス、分配及び吸入空気流量及び/又はその他を含むことができる。本発明の幾つかの例示的な実施形態において、制御ユニット210は、測定エンジン動作パラメータに基づいて、1以上の動作パラメータ(例えば、燃焼器出口温度、タービン基準温度、タービン燃焼温度、その他)を計算、監視及び記録することができる。本明細書で定められるように、制御ユニット210は、測定され、監視され、記録され及び/又は計算されたこれらのエンジン動作パラメータ(すなわち、どのようにしてエンジンが動作するか及びエンジンが動作する条件に関するデータ)の一部及び全てに従って、可変抽出オリフィス208を制御することができる。
【0026】
図4で図示され且つ説明されたタービンシステム200は、例証として提示されたものに過ぎない。他の多くのタービンシステム動作環境、アーキテクチャ及び/又は構成が可能である。従って、本発明の実施形態は、図4で図示され且つ説明された何らかの特定の動作環境、アーキテクチャ及び/又は構成に限定されるものと解釈すべきではない。本出願の実施形態に適合するタービンシステムの圧縮機からの圧縮機抽出流を制御する動作に関するより詳細な説明を図5及び図6を参照しながら以下で提供する。
【0027】
図5及び図6は、本発明の実施形態によるタービンシステムの圧縮機からの抽出空気流を制御するための例示的なフローチャートを示す。図5及び図6の1以上のブロック及び/又はブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施することができる点は理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置にロードされて機械を形成することができ、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上で実行される命令が、以下の説明において詳細に検討されるブロック図の各ブロック又はブロック図のブロックの組み合わせの機能を実施する手段を提供するようになる。これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読メモリに格納することができ、該メモリは、1以上のブロックで指定された機能を実施することを含む特定の方法で機能するようコンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に命令することができる。本発明の実施形態はまた、コンピュータのオペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムにより実施することができる。加えて、又は代替として、アプリケーションプログラム(全体的に、又は部分的に)は、本発明の実施形態の実施を可能にするために遠隔のメモリ内又は記憶装置内に配置することができ、この場合、通信ネットワークを通じてリンクされる遠隔処理デバイスによってタスクが実施される。
【0028】
図5及び図6の各ブロック及び/又はブロックの組み合わせは、指定機能又は要素を実施する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、或いは、専用ハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせにより実施することができる。これらの実施形態はまた、
ハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラマブル家電製品、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、その他を含む、他のコンピュータシステム構成で実施することができる。
【0029】
図5により表される例示的な実施形態は、タービン出力を増大及び/又は最大化する方法に関する。本方法は、従来のモデルベース制御システム及び可変抽出を使用することによって実施することができる。この例示的な実施形態の1つの態様は、タービンエンジンがその出力を増大させることができるものである。これは、可変抽出を用いて圧縮機からの空気の抽出を最大限にし、その結果、抽出流を所与として上限温度を再編することによって、これまでの許容上限値を上回ることが可能な温度でエンジンを作動させることで達成することができる。例えば、この作動形式は、真夏日のピーク需要時に出力を増大させる柔軟性をオペレータに提供することができる。
【0030】
図5に示すように、例示的なプロセス500がブロック502で開始することができ、ここでは1以上のタービンエンジン動作パラメータは、制御ユニット210により監視される。上述のように、センサを使用することにより、種々の測定及び/又は計算されたタービンエンジン動作パラメータを制御ユニット210が記録及び/又は監視できるようになる。従って、ブロック502では、プロセスは、以下の1つ又はそれ以上を含む、1以上のタービンエンジン動作パラメータを測定、計算、記録及び/又は監視することができる。
a)抽出導管204の1つ又はそれ以上についての抽出導管204圧力(この測定値は、可変抽出オリフィスの下流側に位置付けられた圧力トランスデューサにより測定することができる)
b)抽出流レベル(これは、例えば、抽出導管204の既知の寸法及び抽出導管204内の測定圧力を所与として計算することができる)
c)可変抽出オリフィス208の設定
d)圧縮機出口圧力
e)周囲条件
f)タービン入口温度(「Tfire」)(Tfireは、測定されたガスタービン排気温度及び他の測定パラメータを所与として計算することができる)
g)ガスタービン出力/負荷レベル
h)ガスタービン排気温度
特記しない限り、タービン動作パラメータの測定、計算、記録及び/又は監視は、従来の手段及び方法によって達成することができる。ブロック502の監視は、連続的に又は定期的に更新することができ、更新データは、フロー図で示すようにプロセスの他のステップで用いることができる。
【0031】
ブロック504において、プロセスは、システムオペレータが、エンジン出力を増大及び/又は最大化することを望んでいるかどうかを判断することができる。システムオペレータがエンジン出力を増大及び/又は最大化することを望んでいる場合には、プロセスはブロック506に進むことができる。システムオペレータがエンジン出力を増大及び/又は最大化することを望んでいない場合、プロセスは終了するか、ブロック504を繰り返すことができる。(代替の好ましい実施形態において、システムオペレータがエンジン出力の増大及び/又は最大化を望むかどうかに関する判断は、システムオペレータからの最新入力又は追加の入力なしに自動的に行うことができる点に留意されたい。すなわち、プロセスは、一定の条件が満足された場合には、自動的にエンジン出力を増大及び/又は最大化することができる。システムオペレータは、タービンエンジンの作動を制御している何らかの意思決定者とすることができ、これらの条件を指定することができる。場合によっては、これらの条件は、周囲条件及びピーク需要時の電気料金などの要因を含むことができる。このようにして、例えば、システムオペレータ又は他の意思決定者は、エンジン出力をベース負荷レベルを超えて増大又は最大化するのにコスト効果のあるタイミングを決定することができ、これを自動的に行うことを許容するルールを作成することができる。)
ブロック506では、プロセスは、より完全に開いた又は実質的に完全に開いた設定(すなわち、圧縮機からタービンに流れる抽出流のほぼ最大レベルを許容する設定)に可変抽出オリフィス208を設定することができる。可変抽出オリフィス208が既に完全に開いた設定にされている場合には、プロセスは、何も行わずにブロック504に戻ることができ、或いは幾つかの実施形態では、ブロック510に進むことができる。
【0032】
ブロック510及び/又は後続のブロックでは、プロセスは一般に、燃焼器への燃料の流れ及び/又は同じレベルの燃焼エンジン出力を制御する制御機構に適用される。例えば、プロセスは、現在のタービン入口温度を表すTfire current、並びに、高温ガス通路部品の温度限界及び抽出レベル(すなわち、ガス通路部品を冷却するのに利用可能な冷却空気の量)に基づいてタービンエンジンが動作することができる最大のタービン入口温度を表すTfire maxを測定及び/又は計算することができる。Tfire current及びTfire maxは、可変抽出オリフィス208をより完全に開いた又は実質的に完全に開いた設定にすること(ブロック506の工程により)及び/又はブロック513及び514(以下で検討する)の工程により結果として生じることができる燃焼器への供給燃料の増減に起因して生じる測定されたタービン動作パラメータの何らかの変化を含む、ブロック502で説明された最新の測定タービン動作パラメータを所与として、モデルベース制御手法を用いて計算することができる。当業者であれば理解されるように、モデルベース制御システムによるTfire currentの決定は、主に、例えば、タービン排気温度データ、周囲条件データ及び/又は圧縮機圧力比データなどの測定動作パラメータに基づいて計算することができる。当業者であれば理解されるように、モデルベース制御システムによるTfire maxの決定は、主に、例えば、新しい設定を所与とした抽出流のレベル及び高温ガス通路直野構成部品の温度限界を含む、高温のTfire温度での動作パラメータのモデル予測に基づいて計算することができる。これらの計算で使用されるモデルベース制御手法は、例えば、MBC Full Load Cycle Control、ARESモデルなどの制御システムなどのタービン動作制御システムを含むことができる。
【0033】
ブロック512では、プロセスは、Tfire current及びTfire maxについて計算値を比較することができる。Tfire maxがTfire currentよりも所定量上回る場合、プロセスは、ブロック513に戻り、ここで燃焼器への供給燃料を増大させることができる。Tfire currentがTfire maxよりも所定量上回る場合、プロセスは、ブロック514に進むことができ、ここで燃焼器への供給燃料を減少させることができる。Tfire max及びTfire currentが実質的に等しいか、互いに所定の範囲内にある場合、プロセス500は、燃焼器への供給燃料のほぼ最大レベル及び/又は出力の最大レベルにあるといえる。この場合には、プロセス500は、ブロック516に進むことができる。
【0034】
ブロック513において、プロセスは、燃焼器への供給燃料を増大することができる。次にプロセスは、ブロック510に進むことができる。
【0035】
ブロック514では、プロセスは、上述のように燃焼器への供給燃料を減少させることができる。次にプロセスは、ブロック510に進むことができる。
【0036】
ブロック516において、図示のようにプロセスは、終了することができ、或いは、ブロック502に戻ることができる。このようにして、プロセス500は、工程において、モデルベース制御及び可変抽出を使用することでタービンシステムが出力を増大及び/又は最大化できるようにすることができる。
【0037】
図6は、本発明の例示的な実施形態であるプロセス600を示している。図6で表される実施形態は、モデルベース制御及び可変抽出を使用することによる、タービンエンジン効率の向上及び/又はタービン効率の最適化に関する。以下でより詳細に説明するように、本発明のこの態様は、例えば、システムオペレータが、ベース負荷又は部分負荷レベルでの運転中に不必要に高い抽出流を削減して、エンジンのより効率的な運転を可能にすることができる。上述のように、センサを使用することにより、様々な測定及び/又は計算タービン動作パラメータを制御ユニット210が記録及び/又は監視できるようになる。従って、ブロック602において、プロセスは、以下の1つ又はそれ以上を含む、1以上のタービン動作パラメータを測定、計算、記録及び/又は監視することができる。
a)抽出導管204の1つ又はそれ以上についての抽出導管204圧力(この測定値は、可変抽出オリフィスの下流側に位置付けられた圧力トランスデューサにより測定することができる)
b)抽出流レベル(これは、例えば、抽出導管204の既知の寸法及び抽出導管204内の測定圧力を所与として計算することができる)
c)可変抽出オリフィス208の設定
d)圧縮機出口圧力
e)周囲条件
f)タービン入口温度(「Tfire」)(Tfireは、測定されたガスタービン排気温度及び他の測定パラメータを所与として計算することができる)
g)ガスタービン出力/負荷レベル
h)ガスタービン排気温度
特記しない限り、タービン動作パラメータの測定、計算、記録及び/又は監視は、従来の手段及び方法によって達成することができる。ブロック602の監視は、連続的に又は定期的に更新することができ、更新データは、フロー図で示すようにプロセスの他のステップで用いることができる。
【0038】
ブロック604において、プロセスは、システムオペレータが、エンジン効率を増大及び/又は最適化するように抽出流レベルを低減又は最小化することを望んでいるかどうかを判断することができる。(代替の好ましい実施形態において、プロセスは、システムオペレータからの入力を受け取ることなく、ほとんどの動作条件の間、すなわち全て又はほとんどのベース負荷又は部分負荷レベルの間に効率が向上又は最適化されるように抽出流レベルを自動的に低減又は最小化することができる点に留意されたい。すなわち、このような実施形態において、プロセス600の他のステップによる工程は、エンジンがほとんどの動作条件中に低減又は最小化された抽出流レベルで動作するようなデフォルト制御方式とすることができる。)ブロック604において、システムオペレータが、エンジン効率を増大及び/又は最適化するように抽出流レベルを低減することを望んでいると判断された場合、プロセスは、ブロック606に進むことができる。システムオペレータが、エンジン効率を増大及び/又は最適化するように抽出流レベルを低減することを望んでいないと判断された場合、プロセスはブロック604を繰り返すことができる。
【0039】
ブロック606では、プロセスは、測定された臨界圧力比を計算することができる。当業者であれば理解されるように、測定臨界圧力比は、抽出導管204にわたる圧力比、すなわち、抽出導管内の圧力と圧縮機106出口での圧力との比である。抽出導管204における測定圧力レベルは、可変抽出オリフィス208の下流側に位置付けられた圧力トランスデューサにより測定することができる。圧縮機106出口の圧力レベルは、圧縮機106出口において従来の手段で測定することができる。1つよりも多い抽出導管204が存在する場合には、例えば、圧縮機の9番目及び13番目の段から圧縮空気を抽出する抽出導管204を有するシステムにおいて、測定臨界圧力比の値を各抽出導管204について計算することができる。
【0040】
ブロック608において、プロセスは、予定臨界圧力比を決定することができる。当業者であれば理解されるように、予定臨界圧力比は、高温ガス通路構成部品の規格により設定された所定値又は限界値である。予定臨界圧力レベルは、これを超えると高温ガス通路の構成部品が十分には冷却されず、過熱して部品寿命を損なう可能性がある閾値を特定する。より具体的には、幾つかの場合において、予定臨界圧力比の決定は一般に、高温ガス通路部品に十分な抽出流(すなわち、冷却剤)を提供することに関する3つの動作特性を含むことができる。これらの動作特性は、逆流マージン、ホイールスペース温度測定値(十分なホイールスペースパージ流を示すことができる)及び高温ガス通路における実メタル温度を含むことができる。一般に、測定臨界圧力比の値が予定臨界圧力比よりも小さく維持されるようにタービンエンジンを作動させることにより、高温ガス通路の構成部品が確実に許容可能温度以内で作動するようになる。当業者であれば理解されるように、予定臨界圧力比は、現在の負荷設定、周囲条件及び/又は他の要因に依存する単一の値又は一連の値とすることができる。
【0041】
ブロック610において、プロセスは、抽出導管204の1つ又は全てについて、ブロック606からの測定臨界圧力比をブロック608からの予定臨界圧力比とを比較することができる。測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を所定量上回ると判断された場合、プロセスはブロック614に進むことができる。予定臨界圧力比が測定臨界圧力比を所定量上回ると判断された場合、プロセスはブロック612に進むことができる。測定臨界圧力比及び予定臨界圧力比が実質的に等しいか、互いに所定の範囲内にある場合、プロセスはブロック616に進むことができる。
【0042】
ブロック612において、プロセスは、圧縮機106からタービン110に流れる抽出流を低減する設定に可変抽出オリフィスを設定する、すなわち、可変抽出オリフィスをより閉鎖位置に設定することができる。これは、予定臨界圧力比が測定臨界圧力比を所定量上回ることが、過剰な冷却剤が圧縮機から抽出されていることを示すことができるため、達成することができる。次にプロセスは、ブロック606に進むことができる。
【0043】
ブロック614では、プロセスは、圧縮機106からタービン110に流れる抽出流を増大させる設定に可変抽出オリフィスを設定する、すなわち、可変抽出オリフィスをより開放位置に設定することができる。これは、測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を所定量上回ることが、十分な冷却剤が圧縮機から抽出されていないことを示すことができるので、必要とすることができる。次にプロセスは、ブロック606に進むことができる。
【0044】
ブロック616では、プロセスは終了することができ、或いは、ブロック602に戻ることができる。工程中、当業者であれば理解されるように、プロセス600により、システムオペレータは、不要な抽出流を削減し、タービンエンジンの効率を向上及び/又は最大化できるようになる。
【0045】
図5及び6の例示的なプロセス要素は、例証として示されており、他のプロセス及びフローの実施形態では、より少ない又はより多い数の要素を有することができ、このような要素は、本発明の他の実施形態による代替の設定で構成することができる。本発明の例示的な実施形態は、可変抽出流(1以上の可変抽出オリフィスによる)及びモデルベース制御システムを利用することにより、燃焼タービンエンジンの出力及び/又は効率を向上及び/又は最大化する技術的効果をもたらすことができる。
【0046】
加えて、本発明の代替の実施形態によれば、図5及び図6のプロセスステップは、当業者であれば理解されるように、組み合わされた/単一のプロセスに結合してもよい。この形式の実施形態の1つの実施例において、プロセスは、図6のプロセスによる抽出流レベルを自動的に低減又は最小化することができ、ほとんどの動作条件の間(すなわち、システムオペレータからの入力を受け取ることなく、全て又はほとんどのベース負荷又は部分負荷レベルの間)に効率が向上又は最適化されるようになる。システムオペレータからの入力を受け取ると(或いは、上述のように、一定の指定条件を満足すると)、プロセスは、増大又は最大抽出流レベルで出力を増大又は最大化することができる。
【0047】
当業者であれば理解されるように、幾つかの例示的な実施形態に関して上述された多くの様々な特徴及び構成は、本発明の他の実施可能な実施形態を形成するよう更に選択的に適用することができる。
【0048】
簡潔にするため及び当業者の能力を考慮して、各々の可能な繰り返しは本明細書で詳細には述べていないが、添付の複数の請求項によって包含される全ての組み合わせ及び可能な実施形態は、本出願の一部をなすものとする。加えて、本発明の複数の例示的な実施形態の上記の説明から、当業者であれば改善、変更及び修正が理解されるであろう。当該技術分野の範囲内にあるこのような改善、変更及び修正はまた、添付の請求項によって保護されるものとする。更に、上記のことは、本出願の好ましい実施形態にのみに関連しているが、添付の請求項及びその均等物によって定められる本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変更及び修正を本明細書において行うことができる点を理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
106 圧縮機
110 タービン
112 燃焼器
200 タービンシステム
204 抽出導管
208 可変抽出オリフィス
210 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(106)、燃焼器(112)及びタービン(110)を備えたタービンエンジン(100)において可変抽出流を制御する方法であって、
抽出流が、1以上の抽出導管(204)を通って燃焼器(112)を迂回しながら圧縮機(106)から抽出されてタービン(110)に供給される供給加圧空気を含み、抽出導管(204)の少なくとも1つが、制御ユニット(210)により制御される複数の設定を有する可変抽出オリフィス(208)を含んでおり、当該方法が、
少なくとも、タービン(110)内の温度に関連する動作パラメータ、可変抽出オリフィス(208)の設定に関連する動作パラメータ、圧縮機(106)に関連する動作パラメータ、抽出導管(204)の1つ内の圧力に関連する動作パラメータ及び抽出流のレベルに関連する動作パラメータを含む、複数のタービンエンジン動作パラメータを測定するステップと、
燃焼タービンエンジン(100)の測定された動作パラメータを制御ユニット(210)により監視するステップと、
モデルベース制御と、測定臨界圧力比を含む測定動作パラメータとに基づいて少なくとも1つの計算された動作パラメータを制御ユニット(210)により計算するステップと、
測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を上回るかどうか比較することにより、低減され及び/又はほぼ最小の抽出流が決定されるように可変抽出オリフィス(208)の少なくとも1つについて設定を操作するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたステップの1以上のより詳細な一連のステップが、
a)これを超えるとタービン(110)の高温ガス通路内の部品が十分に冷却されない近似閾値を特定する所定値を有する予定臨界圧力比を決定するステップと、
b)抽出導管(204)の1つにおいて測定された圧力を圧縮機(106)の出口にて測定された圧力で除算したものを有する、測定臨界圧力比を計算するステップと、
c)測定臨界圧力比を予定臨界圧力比と比較するステップと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を上回るかどうか比較することにより、低減され及び/又はほぼ最小の抽出流が決定されるように可変抽出オリフィス(208)の少なくとも1つについて設定を操作するステップが、測定臨界圧力比が予定臨界圧力比を上回るかどうか比較することによりほぼ最小の抽出流が決定されるように可変抽出オリフィス(208)の少なくとも1つについて設定を操作するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
圧縮機(106)、燃焼器(112)及びタービン(110)を備えたタービンエンジン(100)において可変抽出流を制御する方法であって、
抽出流が、1以上の抽出導管(204)を通って燃焼器(112)を迂回しながら圧縮機(106)から抽出されてタービン(110)に供給される供給加圧空気を含み、抽出導管(204)の少なくとも1つが、制御ユニット(210)により制御される複数の設定を有する可変抽出オリフィス(208)を含んでおり、当該方法が、
少なくとも、タービン(110)内の温度に関連する動作パラメータ、可変抽出オリフィス(208)の設定に関連する動作パラメータ、抽出流のレベルに関連する動作パラメータ及び燃焼器(112)の供給燃料に関連する動作パラメータを含む、複数のタービンエンジン動作パラメータを測定するステップと、
燃焼タービンエンジン(100)の測定された動作パラメータを制御ユニット(210)により監視するステップと、
抽出流のほぼ最大レベルを可能にする設定に少なくとも1つの可変抽出オリフィス(208)を設定するステップと、
モデルベース制御と、少なくとも現在のタービン入口温度及び最大タービン入口温度を含む測定動作パラメータとに基づいて少なくとも1つの計算された動作パラメータを制御ユニット(210)により計算するステップと、
現在のタービン入口温度及び最大タービン入口温度についての値を比較することによりエンジン出力の増大及び/又はほぼ最大レベルが決定されるように、燃焼器(112)への供給燃料についての設定を操作するステップと
を含む方法。
【請求項5】
現在のタービン入口温度が現在のタービン入口温度を含み、最大タービン入口温度が、所与の高温ガス通路部品の温度限界及び抽出流のレベルでタービンエンジン(100)が動作することができる、ほぼ最大タービン入口温度を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ステップの1以上のより詳細な一連のステップが、
a)システムオペレータがエンジン出力の増大及び/又はほぼ最大化を望むかどうかを判断するステップと、
b)抽出流のほぼ最大レベルを可能にする設定に少なくとも1つの可変抽出オリフィス(208)を設定するステップと、
c)少なくとも1つの可変抽出オリフィス(208)について抽出流のほぼ最大レベルを可能にする設定から生じる測定動作パラメータの何らかの変化を所与として、現在のタービン入口温度及び最大タービン入口温度を計算するステップであって、最大タービン入口温度の計算が、高温ガス通路部品の温度限界と、少なくとも1つの可変抽出オリフィス(208)についての抽出流のほぼ最大レベルを可能にする設定で抽出流の近似レベルとを所与として、タービンエンジン(100)が動作することができるほぼ最大燃焼器出口温度に基づくステップと、
d)現在のタービン入口温度と最大タービン入口温度とを比較するステップと
を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
可変抽出流が、可変抽出オリフィス(208)の設定に応じて変化する抽出流レベルを含み、可変抽出オリフィス(208)が、該可変抽出オリフィス(208)を通る低減レベルの抽出流が許容されたより少ない開放設定と、可変抽出オリフィス(208)を通る増大レベルの抽出流が許容されたより多い開放設定である、少なくとも2つの別個の設定を有する、請求項1又は請求項4記載の方法。
【請求項8】
モデルベース制御が、タービンエンジン(100)のコンピュータに実装された動作モデルに基づいてタービンエンジン(100)を制御する方法を含み、タービンエンジン(100)の制御が、複数の測定動作パラメータ及び計算動作パラメータに基づいており、計算動作パラメータが、コンピュータに実装された動作モデルと測定動作パラメータに基づいて計算される、請求項1又は請求項4記載の方法。
【請求項9】
抽出流の少なくとも一部が、タービン(110)内の高温ガス通路部品に供給されて、運転中に抽出流が部品を冷却するようにする、請求項1又は請求項4記載の方法。
【請求項10】
測定動作パラメータの測定ステップが、可変抽出オリフィスの下流側に配置された少なくとも1つの圧力トランスデューサを含む複数のセンサによって行われ、センサが、動作パラメータを収集して制御ユニット(210)に送信する、請求項1又は請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261458(P2010−261458A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106069(P2010−106069)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】