説明

ガスタービン吸気口用空気バイパスシステム及び方法

【課題】ガスタービン吸気口には、ガス流の温度を下げることにより出力と効率を増加させるパワー増加システムが利用されるが、パワー増加システムが動作していないときは、圧縮機に入る空気流にパワー増加システムによる抵抗が付加されるため、圧力降下が生じ、出力と効率が低下する。パワー増加システムが作動していないときに、圧力降下を減少させる必要がある。
【解決手段】パワー増加システム40を有するガスタービン吸気口フィルター室100用の空気バイパスシステム110は、パワー増加システム40周辺の吸気口フィルター室100に配置するダクト120、140と、ダクトを開閉するようにダクト内に配置するダンパーと、を備える。パワー増加システム40が動作していないときには、空気バイパスシステム110を用いて、空気流の抵抗を避ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般にガスタービンに関し、さらに詳細にはガスタービン吸気口内の圧力降下を減少させるための空気バイパスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に記述されるように、ガスタービンエンジンは、流入する空気を圧縮するための圧縮機と、燃料を圧縮空気と混合して燃料と空気に点火し、高温のガス流を形成するための燃焼機と、高温のガス流により駆動されるタービンとを備える。またその他の部品もここに用いてもよい。ガスタービンエンジンのパワーは、そこを通過する種々の位置におけるガス流の温度と一般に関連がある。具体的には、圧縮機吸気口での温度、圧縮比、および燃焼機排気口の温度を、エンジンの動作中に綿密に監視する。一般に、圧縮機に入るガス流の温度を下げると、エンジンの出力が増加するという結果になる。
【0003】
温度を低下させる公知の方法には、パワー増加システムの利用が含まれる。パワー増加システムは、ガス流の温度を下げるように、冷却コイルと蒸発冷却器とを備える。例えば、公知のパワー増加システムは、米国特許第7007484B2号および米国特許出願第2005/0056023Al号に示されている。
【0004】
しかし、パワー増加システムを用いると、圧縮機に入る空気流に抵抗が付加される。この抵抗は、吸気システムにおける圧力降下として定義され、インチ水柱の単位で測定される。タービン効率とパワー出力は、吸気システムの圧力降下が直接作用する。吸気システムの圧力降下が大きくなるほど、タービンの効率とパワー出力が低下する。
【0005】
パワー増加システムは、所望の周囲条件において動作する際に、ガスタービン出力と効率を増加させる。しかし、パワー増加システムが動作していないとき、空気吸気口の流れにおいてシステムが付加するさらなる圧力降下が、ガスタービン効率と出力を減少させる。発電用ガスタービン吸気システム中での典型的な圧力降下の値は、約2〜約5インチ水柱(約5〜約12.7センチメートル水柱)の範囲で変化する。これは、約0.5インチ〜約1.5インチ水柱(約1.27〜約3.8センチメートル水柱)の範囲で変化する、パワー増加システム中の圧力降下を含む。ガスタービンフレームの寸法に依存して、この圧力降下の値は、定格ISO条件における約1〜約5メガワットの範囲内ではどこでも、ガスタービン出力に影響を及ぼす。これにより、約0.01%〜約0.3%の範囲においてタービン効率が影響を受ける。しかし、機械的に駆動するガスタービンを発電あるいはその他種々に利用する、競争の激しいビジネスにおいて、効率と出力の各点は重要である。
【0006】
そのため、パワー増加システムが作動していないときに、空気バイパスシステムにより圧力降下を減少させる、ガスタービン吸気口用の空気バイパスシステムに対する要求がある。そのような空気バイパスシステムは、ガスタービンエンジンの全体的な効率とパワーを増加させる。
【特許文献1】米国特許第7,007,484B2号
【特許文献2】米国特許出願第2005/0056023A1号
【特許文献3】欧州特許公開第1,484,489A2号
【非特許文献1】William E. Stewart, Jr.,“Design Guide: Combustion Turbine Inlet Air Cooling Systems”, 1999, Pgs.1−91.
【発明の開示】
【0007】
すなわち、本出願は、パワー増加システムを有するガスタービン吸気口フィルター室用の空気バイパスシステムを提供する。空気バイパスシステムは、パワー増加システム周辺の吸気口フィルター室上に配置するダクトと、ダクトを開閉するようにダクト内に配置するダンパーと、を備える。
【0008】
空気バイパスシステムは、多数のダクトをさらに備えてもよい。ダクトは、サイドダクト対と上端ダクトとを備えてもよい。ダクトはポリマーから構成されてもよい。ダンパーは、ダンパードアまたは空気袋を備えてもよい。パワー増加システムが作動しているときに、ダンパーを閉じてもよい。ダクトは、パワー増加システムを迂回する。
【0009】
本出願はさらに、ガスタービン吸気口フィルター室についても記載している。フィルター室は、パワー増加システムと、パワー増加システム周辺の空気バイパスシステムと、を備えてもよい。
【0010】
空気バイパスシステムは、パワー増加システム周辺に配置するダンパードアを備えてもよい。また、空気バイパスシステムは、パワー増加システム周辺に配置するダクトを備えてもよい。空気バイパスシステムは、ダクト内に配置するダンパーを備えてもよい。多数のダクトを用いてもよい。ダクトは、サイドダクト対と上端ダクトとを備えてもよい。ダクトは、ポリマーあるいは種々の異なる材料で構成されてもよい。
【0011】
さらに、本出願は、その中にパワー増加システムを有する吸気口フィルター室を備えるガスタービンエンジンの効率を向上させる方法について記載している。本方法は、パワー増加が必要でないときパワー増加システム周辺の空気流領域を増加させ、パワー増加システムを作動させて付加的なパワーを発生させ、パワー増加システムが作動しているときパワー増加システムを通過するように空気流を拘束することから成る。
【0012】
本出願のこれらおよびその他の特徴は、図面および添付の特許請求の範囲とともに詳細に説明されるいくつかの実施形態により、当該分野の技術者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照すると、いくつかの図面を通じて同様の部品は同じ符号により表されており、図1A〜1Cは公知の吸気口フィルター室10を示す。吸気口フィルター室10は、上記に説明されるようなガスタービンエンジンとともに用いる。吸気口フィルター室10は、フィルター室外囲20を備える。フィルター室外囲20は、典型的に、その内部に配置する多数のフィルター30を有する箱型構造である。フィルター30は、全体としてちりや破片がガスタービンエンジン中に吸い込まれるのを制限する従来のフィルター装置である。パワー増加システム40は、フィルター室外囲20の内部に配置される。パワー増加システム40は、冷却コイル50または上記のその他のタイプの冷却装置を備える。遷移区画60は、フィルター室外囲20に隣接して配置される。遷移区画60は、空気の流速を増加させるように、空気の流路を狭める。遷移区画60は、吸気口ダクト70に通じている。吸気口ダクト70は、上記のようなガスタービン部品に通じている。吸気口フィルター室10は、支持体80またはその他のタイプの位置決め装置を備える。吸気口フィルター室10は、所望されるその他のあるいは付加的な部品を備えてもよい。
【0014】
図2A〜2Cは、ここの説明されるような吸気口フィルター室100を示す。吸気口フィルター室100は、吸気口フィルター室10および/または同様な部品に関して上記に説明された部品を備える。吸気口フィルター室100は、空気バイパスシステム110も備える。空気バイパスシステム110は多数のバイパスダクトを備える。この場合、バイパスダクトは、サイドダクト対、すなわち第1のサイドダクト120と第2のサイドダクト130、および上端ダクト140である。ダクト120、130、140は、冷却コイル50の周辺に配置する。ダクト120、130、140のすべてを用いるわけではない。ダクト120、130、140のその他およびさらなる構成をここに用いてもよい。矢印は、ダクト120、130、140を通過する空気の流れを示す。ダクト120、130、140は、ポリマーあるいはその他の軽量タイプの材料により構成される。ダクト120、130、140は、一般に、どのようなタイプの構造的な役割も有していない。しかしながら、金属およびその他のタイプの標準的な構造材料を用いてもよい。ダクト120、130、140を空気袋の形状にしてもよい。空気袋は、それを通過する空気の流路を作るように、しぼんだり膨らんだりすることができる。
【0015】
図3は、その内部にダンパーとしてのダンパードア150を配置する空気バイパスシステム110を示す。ダンパードア150は、手動または自動で制御される。ここで、任意の数のダンパードア150を用いてもよい。別法として、ダクト120、130、140の内部で、あるいはダクト120、130、140の代わりに、空気袋がしぼんだり膨らんだりして、ドア150を用いることなく、それを通過する空気の流路を制御できる。
【0016】
図4A〜4Cは、吸気口フィルター室200のさらなる実施形態を示す。上記のように、吸気口フィルター室200は、吸気口室の部品10および/または同様な部品を備える。吸気口フィルター室200は、空気バイパスシステム210も備える。このシステム210では、上部ダクト220である唯一のダクトを用いる。上部ダクト220を、冷却装置50の周辺に配置する。同様に、上部ダクト220は、説明されるようなダクト220を開閉するように、内部に配置するダンパー230を備える。空気バイパスシステム210の構成には、パワー増加システム40に関する配管と干渉する可能性を避けるという優位性がある。同様な構成を個々に用いてもよい。
【0017】
使用の際に、一般に空気バイパスシステム110、210は、パワー増加システム40が動作していないときにのみ用いられる。パワー増加システム40の作動中は、空気バイパスシステム110、210は、ダンパードア150、230またはその他の手段により閉じられる。パワー増加システム40が動作していないとき、空気バイパスシステム110、210は、パワー増加システム40の周りに流れの領域を付加してパワー増加システム40を通過する抵抗を避けるように、一部あるいはすべてのダクト120、130、140を通過する流入空気のルートを決める。
【0018】
このように、空気バイパスシステム110、210を用いると、パワー増加システム40の周りに付加的な流路を形成することにより、吸気システムの抵抗を最小化する。圧力降下はガス速度の2乗で変化するので、利用可能な流れの領域の増加が少なくても(すなわち、空気速度の減少)、圧力降下の減少が起きる。このように、空気バイパスシステム110、210を用いると、吸気口の圧力降下を減少させて、タービン出力および性能を増加させる。また、空気バイパスシステム110、210を用いると、パワー増加システム40による設計圧力降下がそれを用いない場合の熱交換器のコストと性能面でのマイナス面との間の折衷案ではないので、パワー増加システム40の全体的な経済性を向上させる。このように、パワー増加が必要でないとき、独立した手段を利用して作動中の吸気口の圧力降下を減少させることができるので、パワー増加システム40は、稼働中のコストや圧力降下を減少させるように設計することが可能である。
【0019】
図5Aおよび5Bは、吸気口フィルター室300のさらなる実施形態を示す。本実施形態において、冷却コイル50は、フィルター室外囲20の前面に移動してもよい。フィルター30自体は、冷却コイル50の背後に位置する。偏流除去装置および/またはコアレッサーパッド310を、ここで用いてもよい。吸気口フィルター室300は、空気バイパスシステム320も備える。空気バイパスシステム320は、冷却コイル50とフィルター30との間に位置するダンパードア330の対を備える。冷却コイル50を使用していないとき、空気流が直接フィルター30中に流入するように、ダンパードア330を開放してもよい。このように、冷却コイル50がフィルター30の前面に位置しかつ動作していないときに、空気バイパスシステム320を利用すると、圧力降下を減少させることが可能になる。空気バイパスシステム320は、開きダンパードア330あるいは空気袋を利用してもよい。
【0020】
上記説明は、本出願の好適な実施形態のみに関するものであること、また次の特許請求の範囲及びそれと等価なものにより定義される本発明の一般的な精神および範囲内において、当該分野の技術者には種々の変更および変形が可能であることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】公知の吸気口フィルター室の正面図である。
【図1B】図1Aの公知の吸気口フィルター室の上面図である。
【図1C】図1Aの公知の吸気口フィルター室の側面図である。
【図2A】ここに記述されるような空気バイパスシステムを有する吸気口フィルター室の正面図である。
【図2B】図2Aの空気バイパスシステムを有する吸気口フィルター室の上面図である
【図2C】図2Aの空気バイパスシステムを有する吸気口フィルター室の側面図である。
【図3】空気ダンパーを例示する図2A〜2Cの空気バイパスダクトの拡大図である。
【図4A】空気バイパスシステムの別の実施形態を有する吸気口フィルター室の正面図である。
【図4B】図4Aの空気バイパスシステムの別の実施形態を有する吸気口フィルター室の上面図である。
【図4C】図4Aの空気バイパスシステムの別の実施形態を有する吸気口フィルター室の側面図である。
【図5A】空気バイパスシステムの別の実施形態を有する吸気口フィルター室の正面図である。
【図5B】図5Aの空気バイパスシステムの別の実施形態を有する吸気口フィルター室の上面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 吸気口フィルター室
20 フィルター室外囲
30 フィルター
40 パワー増加システム
50 冷却コイル
60 遷移区画
70 吸気口ダクト
80 支持体
100 吸気口フィルター室
110 空気バイパスシステム
120 第1のサイドダクト
130 第2のサイドダクト
140 上端ダクト
150 ダンパードア
200 吸気口フィルター室
210 空気バイパスシステム
220 上部ダクト
230 ダンパードア
300 吸気口フィルター室
310 偏流除去装置
320 空気バイパスシステム
330 ダンパードア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン吸気口フィルター室(100)の内部に配置するパワー増加システム(40)を有するガスタービン吸気口フィルター室(100)用の空気バイパスシステム(110)であって、
パワー増加システム(40)周辺の吸気口フィルター室(100)上に配置するダクト(120)と、
ダクト(120)を開閉するようにダクト(120)内に配置するダンパー(150)と、を備える空気バイパスシステム(110)。
【請求項2】
複数のダクト(120、130、140)をさらに備える請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項3】
複数のダクト(120、130、140)は、サイドダクト(120、130)対を備える請求項2に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項4】
ダクト(120)は、上端ダクト(140)を備える請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項5】
ダクト(120)はポリマーからなる請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項6】
ダンパー(150)はダンパードア(150)を備える請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項7】
パワー増加システム(40)が動作中のときに、ダンパー(150)を閉じる請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項8】
ダクト(120)は、パワー増加システム(40)を迂回する請求項1に記載の空気バイパスシステム(110)。
【請求項9】
ガスタービン吸気口フィルター室(100)の内部に配置するパワー増加システム(40)を有するガスタービン吸気口フィルター室(100)を備えるガスタービンエンジンの効率を向上する方法であって、
パワー増加システム(40)周辺の空気流領域を増加させ、
パワー増加システム(40)を活動させ、
パワー増加システム(40)が作動しているとき、パワー増加システム(40)周辺の空気流領域を減少させること、からなる方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2008−2466(P2008−2466A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161190(P2007−161190)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】