説明

ガスタービン発電システム

【課題】重質油燃料を使用しても、ガスタービンの部品の腐食量を大幅に軽減することができること。
【解決手段】この発明は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置(たとえば、熱分解装置30、あるいは、蒸留装置3および熱分解装置30)と、その分離装置からの軽質油と圧縮機7で圧縮された圧縮空気との混合気を燃焼器8で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービン9(または、後段側のタービン37)を回転駆動させて発電機11で発電するガスタービン1と、を備えるものである。この結果、この発明は、重質油燃料を使用しても、ガスタービンの部品の腐食量を大幅に軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスタービン発電システムに関するものである。特に、この発明は、重質油燃料を使用するガスタービン発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガスタービン発電システムは、従来からある(たとえば、特許文献1参照)。以下、この従来のガスタービン発電システムについて説明する。この従来のガスタービン発電システムは、高温高圧水と重質油燃料によって改質燃料を製造する燃料改質器と、その燃料改質器が製造した改質燃料を燃焼させる燃焼器を有したガスタービンと、を備えるものである。
【0003】
ここで、前記重質油燃料は、原油の常圧蒸留残油(残渣油)と軽油留分(軽質油)とを混合して得られる石油製品である重油である。そして、前記軽質油中には、腐食成分(たとえば、バナジウム(V)やバナジウム化合物、ナトリウム化合物、硫黄化合物など)が含有されていないもしくは含有されているとしても極微量である。ところが、前記残渣油中には、腐食成分が含有されている。
【0004】
このために、前記重質油燃料をそのまま使用すると、前記腐食成分によりガスタービンの部品が腐食する虞がある。そこで、前記の従来のガスタービン発電システムのように、重質油燃料を改質してガスタービンの部品の腐食量を軽減する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−278152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、重質油燃料を使用しても、ガスタービンの部品の腐食量を大幅に軽減することができる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1に記載の発明)は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置と、その分離装置からの軽質油と圧縮機で圧縮された圧縮空気との混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを回転駆動させて発電機で発電するガスタービンと、を備え、分離装置が、重質油燃料を高温水により熱分解して軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する熱分解装置である、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2に記載の発明)は、分離装置の熱分解装置の上流側には、重質油燃料を蒸留して一次分離の軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する蒸留装置を備え、分離装置の熱分解装置が、蒸留装置からの一次分離の軽質油を高温水により熱分解して軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3に記載の発明)は、分離装置からの残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての排熱回収ボイラ、分離装置からの残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての排ガス燃焼器と排ガス燃焼器において発生した熱を熱源とする再生熱交換器、分離装置からの残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての再熱用燃焼器、のいずれか1つを備える、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項4に記載の発明)は、重質油燃料を排ガスにより加熱する排ガス重質油燃料加熱器、重質油燃料を蒸気により加熱する蒸気重質油燃料加熱器、重質油燃料を軽質油により加熱する軽質油重質油燃料加熱器、のいずれか1つを備える、ことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、この発明(請求項5に記載の発明)は、分離装置からの残渣油を燃焼させる排ガス燃焼器と、排ガス燃焼器において発生した熱を熱源とする再生熱交換器と、重質油燃料を再生熱交換器の下流側あるいは上流側で排ガスにより加熱する排ガス重質油燃料加熱器と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明(請求項6に記載の発明)は、排熱回収ボイラと、排熱回収ボイラからの蒸気によりを回転駆動して発電機で発電する蒸気タービンと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明のガスタービン発電システムは、重質油燃料を使用しても、ガスタービンの部品の腐食量を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態1を示す構成図である。
【図2】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態2を示す構成図である。
【図3】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態3を示す構成図である。
【図4】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態4を示す構成図である。
【図5】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態5を示す構成図である。
【図6】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態6を示す構成図である。
【図7】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態7を示す構成図である。
【図8】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態8を示す構成図である。
【図9】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態9を示す構成図である。
【図10】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態10を示す構成図である。
【図11】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態11を示す構成図である。
【図12】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態12を示す構成図である。
【図13】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態13を示す構成図である。
【図14】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態14を示す構成図である。
【図15】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態15を示す構成図である。
【図16】この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態16を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態のうちの16例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
「実施形態1の説明」
図1は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態1を示す構成図である。この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、複合発電システム(コンバインドサイクル)であって、ガスタービン1と、排熱回収ボイラ(廃熱回収ボイラ、排ガスボイラ)2と、分離装置としての蒸留装置3と、残渣油燃焼器4と、排ガス重質油燃料加熱器5と、蒸気タービン6と、を備えるものである。
【0017】
前記ガスタービン1は、圧縮機7と、燃焼器8と、タービン9と、から構成されている。前記圧縮機7と前記タービン9とは、タービン軸10を介して連結されている。前記タービン9には、発電機11が連結されている。前記圧縮機7の入口側には、空気を吸入する空気(吸気)ライン12が連結されている。一方、前記タービン9の出口側には燃焼ガスを排出する排ガス(排気)ライン13が連結されている。前記圧縮機7の出口側と前記燃焼器8の入口側との間には、圧縮空気を前記圧縮機7から前記燃焼器8に送る圧縮空気ライン14が連結されている。前記燃焼器8の出口側と前記タービン9の入口側との間には、燃焼ガスを前記燃焼器8から前記タービン9に送る燃焼ガスライン15が連結されている。
【0018】
前記排ガスライン13には、煙突16が連結されている。前記排ガスライン13の前記タービン9と前記煙突16との間の途中には、前記排熱回収ボイラ2が設けられている。前記排熱回収ボイラ2の入口側には、水を供給する水ライン17が連結されている。一方、前記排熱回収ボイラ2の出口側には、蒸気(水蒸気)を排出する蒸気(水蒸気)ライン18が連結されている。
【0019】
前記蒸留装置3は、重質油燃料から軽質油(この例では、ガス化軽質油)を分離(蒸留)する装置である。すなわち、前記蒸留装置3は、重質油燃料をガス化軽質油と残渣油とに分離(蒸留)する装置である。前記ガス化軽質油中には、腐食成分が含有されていないもしくは含有されているとしても極微量である。前記蒸留装置3の入口側には、重質油燃料を供給する重質油燃料ライン19が連結されている。また、前記蒸留装置3の第1出口側には、ガス化軽質油を排出するガス化軽質油ライン20が連結されている。前記ガス化軽質油ライン20の途中には、ガス化軽質油を圧縮するコンプレッサ21が設けられている。さらに、前記蒸留装置3の第2出口側には、重質油燃料から軽質油を分離した残り、すなわち、腐食成分が含有されている残渣油を排出する残渣油ライン22が連結されている。
【0020】
前記残渣油燃焼器4は、前記蒸留装置3からの残渣油を燃焼させるものである。前記残渣油燃焼器4は、この例では、前記排熱回収ボイラ2であって、前記排熱回収ボイラ2と一体構造をなす。すなわち、前記残渣油燃焼器4は、前記排熱回収ボイラ2内に設けられている。前記残渣油燃焼器4の入口側には、前記残渣油ライン22が接続されている。
【0021】
前記排ガス重質油燃料加熱器5は、重質油燃料を排ガスにより予め加熱するものである。前記排ガス重質油燃料加熱器5は、前記重質油燃料ライン19の途中に設けられている。前記排ガス重質油燃料加熱器5は、この例では、前記排熱回収ボイラ2であって、前記排熱回収ボイラ2と一体構造をなす。すなわち、前記排ガス重質油燃料加熱器5は、前記排熱回収ボイラ2内に設けられている。
【0022】
前記蒸気タービン6の入口側には、前記蒸気ライン18が連結されている。また、前記蒸気タービン6には、発電機23が連結されている。
【0023】
この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0024】
ガスタービン1の圧縮機7は、空気ライン12から吸入した空気を圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、圧縮空気ライン14を経て圧縮機7から燃焼器8に送られる。一方、蒸留装置3で分離されたガス化軽質油は、高温のガス状態のままで、ガス化軽質油ライン20を経て、また、途中のコンプレッサ21により圧縮されて蒸留装置3から燃焼器8に送られる。この燃焼器8は、圧縮空気とガス化軽質油との混合気を燃焼して燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスは、燃焼ガスライン15を経て燃焼器8からタービン9に送られる。この燃焼ガスにより、タービン9は、回転駆動して発電機11を回転させて発電する。
【0025】
タービン9を回転駆動させた燃焼ガスは、排ガスとして排ガスライン13を経てタービン9から排熱回収ボイラ2に送られる。この排熱回収ボイラ2に送られた排ガスは、水ライン17で供給される水と熱交換する。水と熱交換した排ガスは、再び排ガスライン13を経て排熱回収ボイラ2から煙突16に送られて、この煙突16から外部に排出される。排熱回収ボイラ2で排ガスと熱交換した水は、蒸気となる。この蒸気は、蒸気ライン18を経て排熱回収ボイラ2から蒸気タービン6に送られる。この蒸気により、蒸気タービン6は、回転駆動して発電機23を回転させて発電する。
【0026】
ガス化軽質油の原料となる重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経て排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5に送られる。この排ガス重質油燃料加熱器5に送られた重質油燃料は、タービン9からの排ガスにより予め加熱される。加熱された重質油燃料は、再び重質油燃料ライン19を経て排ガス重質油燃料加熱器5から蒸留装置3に送られる。この蒸留装置3は、加熱された重質油燃料からガス化軽質油を分離する。
【0027】
蒸留装置3において重質油燃料から分離されたガス化軽質油は、前記のように、ガス化軽質油ライン20を経てまた途中でコンプレッサ21により圧縮されて蒸留装置3から燃焼器8に送られ、この燃焼器8において圧縮空気と混合されて燃焼される。一方、蒸留装置3において重質油燃料からガス化軽質油が分離された後の残渣油は、残渣油ライン22を経て蒸留装置3から排熱回収ボイラ2と一体構造の残渣油燃焼器4に送られてこの残渣油燃焼器4で燃焼される。
【0028】
この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0029】
この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置としての蒸留装置3により重質油燃料からガス化軽質油を分離するので、このガス化軽質油中には腐食成分が含有されていないもしくは含有されているとしても極微量であり、そのガス化軽質油を使用してガスタービン1を駆動させて発電させるものである。このために、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、重質油燃料を使用しても、ガスタービン1の部品(たとえば、静翼および動翼のタービン翼)の腐食量を大幅に軽減することができる。
【0030】
また、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置が重質油燃料を蒸留してガス化軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する蒸留装置3であるから、ガス化軽質油中の腐食成分を確実に軽減することができるができる。このために、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、ガスタービン1の部品の腐食量を確実に大幅に軽減することができる。
【0031】
特に、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置が蒸留装置3であるから、重質油燃料からガス化軽質油を簡単にかつ効率良く分離させることができ、しかも、ガスタービン1の部品の腐食量をさらに確実に大幅に軽減することができる。
【0032】
さらにまた、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置としての蒸留流装置3からの残渣油を排ガスライン13に設けた排熱回収ボイラ2と一体構造の残渣油燃焼器4で燃焼させるので、排熱回収ボイラ2の効率が向上する。すなわち、残渣油は、加熱すれば粘度が低下するので、アトマイズ(たとえば、水蒸気アトマイズ)すれば排熱回収ボイラ2での燃焼が可能であり、かつ、排熱回収ボイラ2の効率が向上する。しかも、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、タービン9と比較して温度が低い排熱回収ボイラ2と一体構造の残渣油燃焼器4で分離装置としての蒸留装置3からの残渣油を燃焼させるので、排熱回収ボイラ2および残渣油燃焼器4の部品において高温腐食が起こらない。たとえば、ボイラチューブは、タービン9よりも低温であるから、高温腐食が起こらない。その上、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置としての蒸留装置3からの残渣油をガスタービン1の燃焼器8で燃焼させずに排熱回収ボイラ2と一体構造の残渣油燃焼器4で燃焼させるので、ガスタービン1の部品において腐食が起こらない。
【0033】
ここで、腐食成分による腐食作用は、腐食成分が液相(液体)の状態のときに顕著に起こり、腐食成分が気相(気体)の状態および固相(固体)の状態のときにはほとんど起こらないもしくは起こったとしても軽微である。このために、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、分離装置としての蒸留装置3からの残渣油を排熱回収ボイラ2と一体構造の残渣油燃焼器4で燃焼させるので、残渣油中に含有されている腐食成分が気相(気体)の状態にあるから、排熱回収ボイラ2および残渣油燃焼器4における腐食を防止することができる。
【0034】
さらにまた、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5で重質油燃料を排ガスにより加熱するので、分離装置としての蒸留装置3における重質油燃料からのガス化軽質油の分離効率が向上される。
【0035】
さらにまた、この実施形態1にかかるガスタービン発電システムは、ガスタービン1と蒸気タービン6との複合発電システム(コンバインドサイクル)により、発電効率が向上する。
【0036】
「実施形態2の説明」
図2は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態2(前記の実施形態1の第1変形例)を示す構成図である。図2中、図1と同符号は、同一のものを示す。
【0037】
この実施形態2にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0038】
一方、この実施形態2にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を排熱回収ボイラ2からの蒸気により予め加熱する蒸気重質油燃料加熱器24である。前記蒸気重質油燃料加熱器24は、重質油燃料ライン19の途中であって、かつ、蒸気ライン18から分岐された分岐蒸気ライン25の途中に設けられている。前記分岐蒸気ライン25は、前記蒸気ライン18から分岐して再度前記排熱回収ボイラ2を経て前記蒸気重質油燃料加熱器24に連結されていて、かつ、前記蒸気重質油燃料加熱器24から復水器26に連結されている。
【0039】
この実施形態2にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態2にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、重質油燃料の加熱装置において相違するので、重質油燃料の加熱装置の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0040】
ガス化軽質油の原料となる重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経て蒸気重質油燃料加熱器24に送られる。この蒸気重質油燃料加熱器24に送られた重質油燃料は、排熱回収ボイラ2からの蒸気により予め加熱される。加熱された重質油燃料は、再び重質油燃料ライン19を経て蒸気重質油燃料加熱器24から蒸留装置3に送られる。
【0041】
一方、蒸気ライン18を経て排熱回収ボイラ2から蒸気タービン6に送られる蒸気の一部は、蒸気ライン18から分岐された分岐蒸気ライン25を経て排熱回収ボイラ2に再び送られてこの排熱回収ボイラ2で再度過熱される。この排熱回収ボイラ2で再度過熱された蒸気は、分岐蒸気ライン25を経て排熱回収ボイラ2から蒸気重質油燃料加熱器24に送られて、この蒸気重質油燃料加熱器24で重質油燃料を予め加熱する。この蒸気重質油燃料加熱器24で重質油燃料を予め加熱した蒸気は、分岐蒸気ライン25を経て蒸気重質油燃料加熱器24から復水器26に送られる。
【0042】
この実施形態2にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0043】
特に、この実施形態2にかかるガスタービン発電システムは、重質油燃料の加熱装置として重質油燃料を排熱回収ボイラ2からの蒸気により予め加熱する蒸気重質油燃料加熱器24を使用するものである。このために、蒸気重質油燃料加熱器24中において、重質油燃料ライン19から重質油燃料が漏れたとしても、特に問題が無い。
【0044】
「実施形態3の説明」
図3は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態3(前記の実施形態1の第2変形例)を示す構成図である。図3中、図1および図2と同符号は、同一のものを示す。
【0045】
この実施形態3にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0046】
一方、この実施形態3にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を蒸留装置3からの軽質油すなわちガス化軽質油により予め加熱するガス化軽質油重質油燃料加熱器27である。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27は、重質油燃料ライン19の途中に設けられている。前記蒸留装置3と前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27との間には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27と燃焼器8との間には、軽質油ライン28が連結されている。前記軽質油ライン28の途中には、ポンプ29が設けられている。
【0047】
この実施形態3にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態3にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、重質油燃料の加熱装置において相違するので、重質油燃料の加熱装置の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0048】
ガス化軽質油の原料となる重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経てガス化軽質油重質油燃料加熱器27に送られる。このガス化軽質油重質油燃料加熱器27に送られた重質油燃料は、蒸留装置3からのガス化軽質油により予め加熱される。加熱された重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経てガス化軽質油重質油燃料加熱器27から蒸留装置3に送られる。
【0049】
一方、ガス化軽質油ライン20を経て蒸留装置3からガス化軽質油重質油燃料加熱器27に送られたガス化軽質油は、このガス化軽質油重質油燃料加熱器27で重質油燃料を予め加熱する。このガス化軽質油重質油燃料加熱器27で重質油燃料を予め加熱したガス化軽質油は、凝縮して軽質油となる。この凝縮した軽質油は、軽質油ライン28を経てかつポンプ29を介してガス化軽質油重質油燃料加熱器27から燃焼器8に送られる。
【0050】
この実施形態3にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0051】
特に、この実施形態3にかかるガスタービン発電システムは、重質油燃料の加熱装置として重質油燃料を蒸留装置3からのガス化軽質油により予め加熱するガス化軽質油重質油燃料加熱器27を使用するものである。このために、ガス化軽質油重質油燃料加熱器27中において、重質油燃料ライン19から重質油燃料が漏れたとしても、特に問題が無い。
【0052】
「実施形態4の説明」
図4は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態4(前記の実施形態1の第3変形例)を示す構成図である。図4中、図1〜図3と同符号は、同一のものを示す。
【0053】
この実施形態4にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0054】
一方、この実施形態4にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、熱分解装置30である。前記熱分解装置30の第1入口側には、重質油燃料ライン19が連結されている。また、前記熱分解装置30の出口側には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2入口側には、分岐蒸気ライン25が連結されている。前記熱分解装置30は、重質油燃料からガス化軽質油を分離(熱分解)する装置である。すなわち、前記蒸留装置3は、重質油燃料をガス化軽質油と残渣油とに分離(熱分解)する装置である。また、前記蒸留装置3は、重質油燃料を熱分解し、かつ、リフォームしてガス化軽質油、一酸化炭素(CO)ガス、水素(H2)ガスなどとする装置である。
【0055】
この実施形態4にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態4にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、分離装置において相違するので、分離装置の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0056】
ガス化軽質油の原料となる重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経て熱分解装置30に送られる。一方、蒸気ライン18を経て排熱回収ボイラ2から蒸気タービン6に送られる蒸気の一部は、蒸気ライン18から分岐された分岐蒸気ライン25を経て排熱回収ボイラ2に再び送られて、この排熱回収ボイラ2で再度過熱される。この排熱回収ボイラ2で再度過熱された蒸気は、分岐蒸気ライン25を経て排熱回収ボイラ2から熱分解装置30に送られる。
【0057】
この熱分解装置30において、重質油燃料が高温水(蒸気)により熱分解してガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどと、腐食成分が含有されている残渣油と、に分離される。熱分解装置30において分離されたガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどは、ガス化軽質油ライン20を経てかつコンプレッサ21を介して熱分解装置30から燃焼器8に送られる。一方、熱分解装置30において重質油燃料からガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどが分離された残りの残渣油は、残渣油ライン22を経て熱分解装置30から残渣油燃焼器4に送られる。
【0058】
この実施形態4にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0059】
特に、この実施形態4にかかるガスタービン発電システムは、分離装置として、重質油燃料を高温水(蒸気)により熱分解してガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどと腐食成分が含有されている残渣油とに分離する、熱分解装置30を使用するものであるから、軽質油中の腐食成分を確実に軽減することができる。
【0060】
また、この実施形態4にかかるガスタービン発電システムは、分離装置として熱分解装置30を使用するものであるから、重質油燃料からガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどを簡単にかつ効率良く分離させることができる。
【0061】
なお、この実施形態4にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置、たとえば、前記の実施形態1の排ガス重質油燃料加熱器5、または、前記の実施形態2の蒸気重質油燃料加熱器24、または、前記の実施形態3のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を設けても良い。
【0062】
「実施形態5の説明」
図5は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態5(前記の実施形態1の第4変形例)を示す構成図である。図5中、図1〜図4と同符号は、同一のものを示す。
【0063】
この実施形態5にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0064】
一方、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、一次の蒸留装置3と二次の熱分解装置30とから構成されているものである。すなわち、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムのガス化軽質油ライン20の途中に前記熱分解装置30を設けたものである。
【0065】
前記熱分解装置30の第1入口側には、前記蒸留装置3からのガス化軽質油ライン20が連結されている。また、前記熱分解装置30の第1出口側には、コンプレッサ21を介して燃焼器8に連結するガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2出口側には、残渣油燃焼器4に連結する残渣油ライン22が連結されている。さらにまた、前記熱分解装置30の第2入口側には、排ガス回収ボイラ2からの分岐蒸気ライン31が連結されている。
【0066】
この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、分離装置において相違するので、分離装置の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0067】
ガス化軽質油の原料となる重質油燃料は、重質油燃料ライン19を経て排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5に送られる。この排ガス重質油燃料加熱器5に送られた重質油燃料は、タービン9からの排ガスにより予め加熱される。加熱された重質油燃料は、再び重質油燃料ライン19を経て排ガス重質油燃料加熱器5から蒸留装置3に送られる。この蒸留装置3は、加熱された重質油燃料からガス化軽質油を一次分離する。
【0068】
蒸留装置3において重質油燃料から一次分離されたガス化軽質油は、ガス化軽質油ライン20を経て蒸留装置3から熱分解装置30に送られる。また、蒸気ライン18を経て排熱回収ボイラ2から蒸気タービン6に送られる蒸気の一部は、排熱回収ボイラ2から分岐された分岐蒸気ライン31を経て排熱回収ボイラ2から熱分解装置30に送られる。一方、蒸留装置3において重質油燃料から一次分離のガス化軽質油が分離された残りの残渣油は、残渣油ライン22を経て蒸留装置3から残渣油燃焼器4に送られる。
【0069】
この熱分解装置30において、一次分離のガス化軽質油が高温水(蒸気)により熱分解してガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどと、腐食成分が含有されている残渣油と、に分離される。熱分解装置30において分離されたガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどは、ガス化軽質油ライン20を経てかつコンプレッサ21を介して熱分解装置30から燃焼器8に送られる。一方、熱分解装置30において一次分離のガス化軽質油からガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどが分離された残りの残渣油は、残渣油ライン22を経て熱分解装置30から残渣油燃焼器4に送られる。
【0070】
この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0071】
特に、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、分離装置として、重質油燃料を蒸留して一次分離のガス化軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する蒸留装置3と、その蒸留装置3からの一次分離のガス化軽質油を高温水により熱分解してガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどと腐食成分が含有されている残渣油とに分離する熱分解装置30と、から構成されているものであるから、重質油燃料から一次分離されたガス化軽質油中の腐食成分を確実に軽減することができる。
【0072】
また、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、分離装置が蒸留装置3と熱分解装置30とから構成されているものであるから、蒸留装置3で重質油燃料からガス化軽質油を簡単に一次分離させることができ、また、熱分解装置30で一次分離されたガス化軽質油からガス化軽質油および一酸化炭素(CO)ガスや水素(H2)ガスなどを簡単に分離させることができる。
【0073】
さらに、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、分離装置が上流側の蒸留装置3と下流側の熱分解装置30とから構成されているものであるから、上流側の蒸留装置3で重質油燃料から一次分離させたガス化軽質油を下流側の熱分解装置30に供給することができる。このために、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムは、重質油燃料を熱分解装置30に供給するシステムと比較して、熱分解装置30の触媒の耐久性が向上される。
【0074】
なお、この実施形態5にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置は、前記の実施形態1の排ガス重質油燃料加熱器5を使用するものであるが、この排ガス重質油燃料加熱器5の代わりに、前記の実施形態2の蒸気重質油燃料加熱器24、または、前記の実施形態3のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を使用しても良い。
【0075】
「実施形態6の説明」
図6は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態6を示す構成図である。図6中、図1〜図5と同符号は、同一のものを示す。
【0076】
この実施形態6にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、残渣油燃焼器4の構造である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける残渣油燃焼器4は、排熱回収ボイラ2と一体構造をなすものであって、残渣油を前記排熱回収ボイラ2と一体構造の前記残渣油燃焼器4で燃焼させるものである。
【0077】
一方、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムにおける残渣油燃焼器4は、排ガス燃焼器32であって、残渣油を前記排ガス燃焼器32で燃焼させるものである。前記排ガス燃焼器32は、排ガスライン13の途中に設けられている。前記排ガス燃焼器32には、蒸留装置3からの残渣油ライン22が連結されている。
【0078】
また、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、前記排ガス燃焼器32において発生した熱を熱源とする再生熱交換器33を備えるものである。前記再生熱交換器33は、前記排ガスライン13の途中であって、前記排ガス燃焼器32よりも下流側、すなわち、前記排ガス燃焼器32と排熱回収ボイラ2との間に設けられている。また、前記再生熱交換器33は、ガスタービン1の圧縮機7と燃焼器8との間の圧縮空気ライン14の途中に設けられている。
【0079】
排ガス重質油燃料加熱器5は、前記再生熱交換器33の下流側であって、前記排熱回収ボイラ2に一体に設けられている。
【0080】
この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、残渣油燃焼器4において相違するので、残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32および再生熱交換器33の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0081】
重質油燃料は、排熱回収ボイラ2と一体の排ガス重質油燃料加熱器5により予め加熱されて蒸留装置3に送られる。この蒸留装置3に送られた重質油燃料は、蒸留装置3でガス化軽質油と残渣油とに分離される。ガス化軽質油は、ガス化軽質油ライン20を経てかつコンプレッサ21を介して燃焼器8に送られる。
【0082】
一方、残渣油は、残渣油ライン22を経て蒸留装置3から残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32に送られてこの排ガス燃焼器32で燃焼される。また、タービン9から排ガス燃焼器32に送られてきた排ガスは、この排ガス燃焼器32で加熱される。タービン9から送られてきた排ガスを加熱する。排ガス燃焼器32で加熱された排ガスは、排ガスライン13を経て再生熱交換器33に直接送られて、この再生熱交換器33で圧縮空気ライン14の圧縮空気と熱交換してその圧縮空気を加熱する。再生熱交換器33で圧縮空気と熱交換した排ガスは、排ガスライン13を経て排熱回収ボイラ2に送られて、この排熱回収ボイラ2において、重質油燃料ライン19の重質油燃料を加熱し、かつ、水ライン17の水と熱交換する。排熱回収ボイラ2で、重質油燃料を加熱し、かつ、水と熱交換した排ガスは、排ガスライン13を経て煙突16に送られて、この煙突16から外部に排出される。
【0083】
この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0084】
特に、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、蒸留装置3からの残渣油を排ガスライン13に設けた残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32で燃焼させ、その排ガス燃焼器32において発生した熱を圧縮空気ライン14に設けた再生熱交換器33の熱源とするので、ヒートサイクルの熱効率(タービン効率)が向上する。しかも、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、タービン9と比較して温度が低く、また、タービン9内部の高温・高圧環境と異なる排ガス燃焼器32で蒸留装置3からの残渣油を燃焼させて、かつ、その排ガス燃焼器32の熱を再生熱交換器33の熱源とするので、排ガス燃焼器32の部品および再生熱交換器33の部品において高温腐食が起こらないもしくは高温腐食しても微量である。その上、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、蒸留装置3からの残渣油をガスタービン1の燃焼器8で燃焼させずに排ガス燃焼器32で燃焼させるので、ガスタービン1の部品において腐食が起こらない。
【0085】
また、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、蒸留装置3からの残渣油を排ガスライン13に設けた残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32で燃焼させるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様に、残渣油中に含有されている腐食成分が気相(気体)の状態にあるから、排ガス燃焼器32における腐食を防止することができる。
【0086】
さらに、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、排ガス重質油燃料加熱器5を再生熱交換器33の下流側に設けたので、排ガス燃焼器32において発生した熱を熱源として再生熱交換器33に直接供給することができる。このために、この実施形態6にかかるガスタービン発電システムは、再生熱交換器33の排ガスの流入側の温度(約600°〜約800°)が高いので、再生熱交換器33の排ガスの流入側の温度(約600°〜約800°)と流出側の温度(約400°〜約450°)との差(熱段差)を大きくすることができ、その分、ヒートサイクルの熱効率(タービン効率)がさらに向上する。
【0087】
「実施形態7の説明」
図7は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態7(前記の実施形態6の第1変形例)を示す構成図である。図7中、図1〜図6と同符号は、同一のものを示す。
【0088】
この実施形態7にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、排ガス重質油燃料加熱器5の配置箇所である。すなわち、前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムにおける排ガス重質油燃料加熱器5は、再生熱交換器33の下流側であって排熱回収ボイラ2に一体に設けられているものである。
【0089】
一方、この実施形態7にかかるガスタービン発電システムにおける排ガス重質油燃料加熱器5は、再生熱交換器33の上流側であって排ガス燃焼器32に一体に設けられているものである。
【0090】
この実施形態7にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態7にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムと、排ガス重質油燃料加熱器5の配置箇所において相違するだけであるから、前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムの作用と同様に、残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32および再生熱交換器33の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0091】
重質油燃料は、排ガス燃焼器32と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5により予め加熱されて蒸留装置3に送られる。この蒸留装置3に送られた重質油燃料は、蒸留装置3でガス化軽質油と残渣油とに分離される。ガス化軽質油は、ガス化軽質油ライン20を経てかつコンプレッサ21を介して燃焼器8に送られる。
【0092】
一方、残渣油は、残渣油ライン22を経て残渣油燃焼器4としての排ガス燃焼器32で燃焼される。また、タービン9から排ガス燃焼器32に送られてきた排ガスは、この排ガス燃焼器32と一体構造の残渣油燃焼器4で加熱される。排ガス燃焼器32と一体構造の残渣油燃焼器4で加熱された排ガスは、排ガス燃焼器32と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5で重質油燃料と熱交換してその重質油燃料を加熱する。排ガス燃焼器32と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5で重質油燃料と熱交換した排ガスは、排ガスライン13を経て再生熱交換器33に送られて、この再生熱交換器33で圧縮空気ライン14の圧縮空気と熱交換してその圧縮空気を加熱する。再生熱交換器33で圧縮空気を加熱した排ガスは、排ガスライン13を経て排熱回収ボイラ2に送られて、この排熱回収ボイラ2で水ライン17の水と熱交換する。排熱回収ボイラ2で水と熱交換した排ガスは、排ガスライン13を経て煙突16に送られて、この煙突16から外部に排出される。
【0093】
この実施形態7にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0094】
特に、この実施形態7にかかるガスタービン発電システムは、排ガス重質油燃料加熱器5を再生熱交換器33の上流側であって排ガス燃焼器32に一体に設けたので、再生熱交換器33の排ガスの流入側の温度が前記の実施形態6にかかるガスタービン発電システムと比較して下がる。このために、この実施形態7にかかるガスタービン発電システムは、熱段差が小さくなるが、再生熱交換器33の熱耐久性が向上される。
【0095】
「実施形態8の説明」
図8は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態8(前記の実施形態6の第2変形例)を示す構成図である。図8中、図1〜図7と同符号は、同一のものを示す。
【0096】
この実施形態8にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第1変形例である前記の実施形態2にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態8にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2または排ガス燃焼器32と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0097】
一方、この実施形態8にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を排熱回収ボイラ2からの蒸気により予め加熱する蒸気重質油燃料加熱器24である。前記蒸気重質油燃料加熱器24は、重質油燃料ライン19の途中であって、かつ、排熱回収ボイラ2から分岐された分岐蒸気ライン25の途中に設けられている。前記分岐蒸気ライン25は、前記排熱回収ボイラ2から分岐して前記排ガス燃焼器32を経て前記蒸気重質油燃料加熱器24に連結されていて、かつ、前記蒸気重質油燃料加熱器24から復水器26に連結されている。この結果、前記排熱回収ボイラ2で過熱された蒸気は、前記分岐蒸気ライン25を経て前記排ガス燃焼器32に送られて前記排ガス燃焼器32でさらに加熱され、再び、前記分岐蒸気ライン25を経て前記蒸気重質油燃料加熱器24に送られる。
【0098】
この実施形態8にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態2、6、7にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0099】
「実施形態9の説明」
図9は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態9(前記の実施形態6の第3変形例)を示す構成図である。図9中、図1〜図8と同符号は、同一のものを示す。
【0100】
この実施形態9にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第2変形例である前記の実施形態3にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態9にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2または排ガス燃焼器32と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0101】
一方、この実施形態9にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を蒸留装置3からの軽質油すなわちガス化軽質油により予め加熱するガス化軽質油重質油燃料加熱器27である。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27は、重質油燃料ライン19の途中に設けられている。前記蒸留装置3と前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27との間には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27と燃焼器8との間には、軽質油ライン28が連結されている。前記軽質油ライン28の途中には、ポンプ29が設けられている。
【0102】
この実施形態9にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態3、6、7にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0103】
「実施形態10の説明」
図10は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態10(前記の実施形態6の第4変形例)を示す構成図である。図10中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0104】
この実施形態10にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第3変形例である前記の実施形態4にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態10にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0105】
一方、この実施形態10にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、熱分解装置30である。前記熱分解装置30の第1入口側には、重質油燃料ライン19が連結されている。また、前記熱分解装置30の第1出口側には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2入口側には、分岐蒸気ライン25が連結されている。さらにまた、前記熱分解装置30の第2出口側には、残渣油ライン22が連結されている。前記分岐ライン25は、前記の実施形態8と同様に、排熱回収ボイラ2中を通らずに、排ガス燃焼器32中を通る。
【0106】
この実施形態10にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態4、6、7にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0107】
なお、この実施形態10にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置、たとえば、前記の実施形態1、6、7の排ガス重質油燃料加熱器5、または、前記の実施形態2、8の蒸気重質油燃料加熱器24、または、前記の実施形態3、9のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を設けても良い。
【0108】
「実施形態11の説明」
図11は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態11(前記の実施形態6の第5変形例)を示す構成図である。図11中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0109】
この実施形態11にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第4変形例である前記の実施形態5にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態11にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態6、7にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0110】
一方、この実施形態11にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、一次の蒸留装置3と二次の熱分解装置30とから構成されているものである。すなわち、この実施形態11にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、前記の実施形態8にかかるガスタービン発電システムのガス化軽質油ライン20の途中に前記熱分解装置30を設けたものである。
【0111】
前記熱分解装置30の第1入口側には、前記蒸留装置3からのガス化軽質油ライン20が連結されている。また、前記熱分解装置30の第1出口側には、コンプレッサ21を介して燃焼器8に連結するガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2出口側には、排ガス燃焼器32と一体構造の残渣油燃焼器4に連結する残渣油ライン22が連結されている。さらにまた、前記熱分解装置30の第2入口側には、排ガス回収ボイラ2からの分岐蒸気ライン31が連結されている。前記分岐蒸気ライン31は、前記排ガス燃焼器32中を通る。
【0112】
また、前記の実施形態5にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0113】
一方、この実施形態11にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を排熱回収ボイラ2からの蒸気であって前記排ガス燃焼器32中を通った蒸気により予め加熱する蒸気重質油燃料加熱器24である。前記蒸気重質油燃料加熱器24は、重質油燃料ライン19の途中であって、かつ、前記排熱回収ボイラ2から分岐された分岐蒸気ライン(第1分岐蒸気ライン)31からさらに分岐された分岐蒸気ライン(第2分岐蒸気ライン)34の途中に設けられている。前記分岐蒸気ライン(第2分岐蒸気ライン)34は、前記排熱回収ボイラ2から分岐して前記排ガス燃焼器32を経て前記熱分解装置30に連結されている前記分岐蒸気ライン(第1分岐蒸気ライン)31からさらに分岐して前記蒸気重質油燃料加熱器24に連結されていて、かつ、前記蒸気重質油燃料加熱器24から復水器26に連結されている。
【0114】
この実施形態11にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態5、6、7、8にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0115】
なお、この実施形態11にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置は、前記の実施形態2、8の蒸気重質油燃料加熱器24を使用するものであるが、この蒸気重質油燃料加熱器24の代わりに、前記の実施形態1、6、7の排ガス重質油燃料加熱器5、または、前記の実施形態3、9のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を設けても良い。
【0116】
「実施形態12の説明」
図12は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態12を示す構成図である。図12中、図1〜図11と同符号は、同一のものを示す。
【0117】
この実施形態12にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、残渣油燃焼器4の構造である。すなわち、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムにおける残渣油燃焼器4は、排熱回収ボイラ2と一体構造をなすものであって、残渣油を前記排熱回収ボイラ2と一体構造の前記残渣油燃焼器4で燃焼させるものである。
【0118】
一方、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムにおける残渣油燃焼器4は、再熱用燃焼器35であって、残渣油を前記再熱用燃焼器35で燃焼させるものである。前記再熱用燃焼器35は、ガスタービン1の前段側のタービン36と後段側のタービン37との間の燃焼ガスライン15の途中に設けられている。前記再熱用燃焼器35の第1入口側には、前記前段側のタービン36からの燃焼ガスライン15が連結されている。また、前記再熱用燃焼器35の出口側には、前記後段側のタービン37への燃焼ガスライン15が連結されている。さらに、前記再熱用燃焼器35の第2入口側には、蒸留装置3からの残渣油ライン22が連結されている。
【0119】
なお、ガスタービン1の前段側のタービン36と後段側のタービン37とは、ガスタービンのタービン翼の段数(1段の静翼と1段の動翼とにより1段のタービン翼を構成する)によって異なるが、たとえば、タービン翼が4段の場合には、1段および2段が前記前段側のタービン36であり、3段および4段が前記後段側のタービン37である。
【0120】
この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。なお、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムと、残渣油燃焼器4において相違するので、残渣油燃焼器4としての再熱用燃焼器35の作用について説明し、その他の装置の作用の説明を省略する。
【0121】
重質油燃料は、排熱回収ボイラ2と一体の排ガス重質油燃料加熱器5により予め加熱されて蒸留装置3に送られる。この蒸留装置3に送られた重質油燃料は、蒸留装置3でガス化軽質油と残渣油とに分離される。ガス化軽質油は、ガス化軽質油ライン20を経てかつコンプレッサ21を介して燃焼器(第1燃焼器)8に送られる。この燃焼器8に送られたガス化軽質油は、圧縮空気と混合されて燃焼される。この燃焼器8で生成された燃焼ガスは、燃焼ガスライン15を経て燃焼器8から前段側のタービン36に送られる。この燃焼ガスにより、前段側のタービン36は、後述する後段側のタービン37と共に、回転駆動して発電機11を回転させて発電する。
【0122】
一方、残渣油は、残渣油ライン22を経て蒸留装置3から残渣油燃焼器4としての再熱用燃焼器(第2燃焼器)35に送られてこの再熱用燃焼器35で燃焼される。また、前段側のタービン36を回転駆動させて圧力と温度が低下した燃焼ガスは、燃焼ガスライン15を経て再熱用燃焼器35に送られてこの再熱用燃焼器35で再び加熱される。再熱用燃焼器35で再び加熱されて高温となった燃焼ガスは、燃焼ガスライン15を経て後段側のタービン37に送られる。この燃焼ガスにより、後段側のタービン37は、前記の前段側のタービン36と共に、回転駆動して発電機11を回転させて発電する。
【0123】
後段側のタービン37を回転駆動させた燃焼ガスは、排ガスとして排ガスライン13を経て後段側のタービン37から排熱回収ボイラ2に送られる。この排熱回収ボイラ2に送られた排ガスは、この排熱回収ボイラ2において、重質油燃料ライン19の重質油燃料を加熱し、かつ、水ライン17の水と熱交換する。排熱回収ボイラ2で、重質油燃料を加熱し、かつ、水と熱交換した排ガスは、排ガスライン13を経て煙突16に送られて、この煙突16から外部に排出される。
【0124】
この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施形態1にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の効果を達成することができる。
【0125】
特に、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、分離装置としての蒸留装置3からの残渣油を前段側のタービン36と後段側のタービン37との間の燃焼ガスライン15に設けた残渣油燃焼器4としての再熱用燃焼器(第2燃焼器)35で燃焼させるので、タービン効率が向上する。しかも、この実施形態12かかるガスタービン発電システムは、圧縮空気ライン14が連結されているガスタービン1の燃焼器(第1燃焼器)8と比較して温度・圧力が共に低く、このガスタービン1の燃焼器8の高温・高圧環境と異なる再熱用燃焼器35で蒸留装置3からの残渣油を燃焼させるものである。このために、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、再熱用燃焼器35から後段側のタービン37に供給される燃焼ガス中に腐食成分が含有されていても、ガスタービン1の燃焼器8から前段側のタービン36に供給される燃焼ガス中に腐食成分が含有されている場合と比較すると、後段側のタービン37(たとえば、タービン翼)の腐食量が少ない。
【0126】
また、ガスタービンは、一般に、燃焼ガスの温度が約800°以下の領域ではタービン翼が無冷却の構造をなす。このために、ガスタービン1の後段側のタービン37の領域における燃焼ガスの温度が約800°以下であれば、後段側のタービン37のタービン翼が無冷却の構造をなす。この結果、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、後段側のタービン37に供給される燃焼ガス中に腐食成分が含有されていても、その燃焼ガス中の気相の状態の腐食成分が後段側のタービン37のタービン翼の表面で凝縮して腐食性が強くなるようなことは無い。しかも、この後段側のタービン37の領域における圧力が前側のタービン36の領域における圧力よりも低いので、後側のタービン37の領域における腐食成分の露点温度が前側のタービン36の領域における腐食成分の露点温度よりも低くなり、このために、後段側のタービン37の領域において気相の状態の腐食成分が凝縮し難くなる。
【0127】
さらに、この実施形態12にかかるガスタービン発電システムは、再熱用燃焼器35において、上流(前段側のタービン36)からの燃焼ガス中で残渣油を燃焼させるので、単なる燃焼器において残渣油を燃焼させる場合と比較して、腐食成分の濃度が低くなる。
【0128】
なお、後段側のタービン37の領域において、腐食成分の露点に達するような場合には、残渣油に添加剤を添加して、腐食成分の露点を高くしても良い。
【0129】
「実施形態13の説明」
図13は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態13(前記の実施形態12の第1変形例)を示す構成図である。図13中、図1〜図12と同符号は、同一のものを示す。
【0130】
この実施形態13にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第1変形例である前記の実施形態2にかかるガスタービン発電システムおよび前記の実施形態6の第2変形例である前記の実施形態8にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態13にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0131】
一方、この実施形態13にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を排熱回収ボイラ2からの蒸気により予め加熱する蒸気重質油燃料加熱器24である。前記蒸気重質油燃料加熱器24は、重質油燃料ライン19の途中であって、かつ、蒸気ライン18から分岐された分岐蒸気ライン25の途中に設けられている。前記分岐蒸気ライン25は、前記蒸気ライン18から分岐して前記排熱回収ボイラ2を経て前記蒸気重質油燃料加熱器24に連結されていて、かつ、前記蒸気重質油燃料加熱器24から復水器26に連結されている。
【0132】
この実施形態13にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態2、8、12にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0133】
「実施形態14の説明」
図14は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態14(前記の実施形態12の第2変形例)を示す構成図である。図14中、図1〜図13と同符号は、同一のものを示す。
【0134】
この実施形態14にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第2変形例である前記の実施形態3にかかるガスタービン発電システムおよび前記の実施形態6の第3変形例である前記の実施形態9にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態14にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料の加熱装置である。すなわち、前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0135】
一方、この実施形態14にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、重質油燃料を蒸留装置3からの軽質油すなわちガス化軽質油により予め加熱するガス化軽質油重質油燃料加熱器27である。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27は、重質油燃料ライン19の途中に設けられている。前記蒸留装置3と前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27との間には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。前記ガス化軽質油重質油燃料加熱器27と燃焼器8との間には、軽質油ライン28が連結されている。前記軽質油ライン28の途中には、ポンプ29が設けられている。
【0136】
この実施形態14にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態3、9、12にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0137】
「実施形態15の説明」
図15は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態15(前記の実施形態12の第3変形例)を示す構成図である。図15中、図1〜図14と同符号は、同一のものを示す。
【0138】
この実施形態15にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第3変形例である前記の実施形態4にかかるガスタービン発電システムおよび前記の実施形態6の第4変形例である前記の実施形態10にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態15にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0139】
一方、この実施形態15にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、熱分解装置30である。前記熱分解装置30の第1入口側には、重質油燃料ライン19が連結されている。また、前記熱分解装置30の出口側には、ガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2入口側には、分岐蒸気ライン25が連結されている。前記分岐ライン25は、前記の実施形態13と同様に、排熱回収ボイラ2中を通る。
【0140】
この実施形態15にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態4、10、12にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0141】
なお、この実施形態15にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置、たとえば、前記の実施形態1、6、7、12の排ガス重質油燃料加熱器5、または、前記の実施形態2、8、13の蒸気重質油燃料加熱器24、または、前記の実施形態3、9、14のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を設けても良い。
【0142】
「実施形態16の説明」
図16は、この発明にかかるガスタービン発電システムの実施形態16(前記の実施形態12の第4変形例)を示す構成図である。図16中、図1〜図15と同符号は、同一のものを示す。
【0143】
この実施形態16にかかるガスタービン発電システムは、前記の実施形態1の第4変形例である前記の実施形態5にかかるガスタービン発電システムおよび前記の実施形態6の第5変形例である前記の実施形態11にかかるガスタービン発電システムと対応している。すなわち、この実施形態16にかかるガスタービン発電システムと前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムとの相違点は、重質油燃料から軽質油を分離する分離装置である。すなわち、前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、蒸留装置3である。
【0144】
一方、この実施形態16にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、一次の蒸留装置3と二次の熱分解装置30とから構成されているものである。すなわち、この実施形態16にかかるガスタービン発電システムにおける分離装置は、前記の実施形態12にかかるガスタービン発電システムのガス化軽質油ライン20の途中に前記熱分解装置30を設けたものである。
【0145】
前記熱分解装置30の第1入口側には、前記蒸留装置3からのガス化軽質油ライン20が連結されている。また、前記熱分解装置30の第1出口側には、コンプレッサ21を介して燃焼器8に連結するガス化軽質油ライン20が連結されている。さらに、前記熱分解装置30の第2出口側には、再熱用燃焼器35に連結する残渣油ライン22が連結されている。さらにまた、前記熱分解装置30の第2入口側には、排ガス回収ボイラ2からの分岐蒸気ライン31が連結されている。
【0146】
また、この実施形態16にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置は、前記の実施形態5にかかるガスタービン発電システムにおける重質油燃料の加熱装置と同様に、排熱回収ボイラ2と一体構造の排ガス重質油燃料加熱器5であって、重質油燃料をタービン9からの排ガスにより予め加熱するものである。
【0147】
この実施形態16にかかるガスタービン発電システムは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施形態5、11、12にかかるガスタービン発電システムとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0148】
なお、この実施形態16にかかるガスタービン発電システムにおいて、重質油燃料の加熱装置は、前記の実施形態1、6、7の排ガス重質油燃料加熱器5を使用するものであるが、この排ガス重質油燃料加熱器5の代わりに、前記の実施形態2、8の蒸気重質油燃料加熱器24、または、前記の実施形態3、9のガス化軽質油重質油燃料加熱器27を設けても良い。
【0149】
「実施形態1〜16以外の例の説明」
なお、前記の実施形態1〜16においては、ガスタービン1と蒸気タービン6とがそれぞれ別個の発電機11と23を駆動回転させて発電するものであるが、ところが、この発明においては、ガスタービンと蒸気タービンとが同一の発電機を駆動回転させて発電するものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0150】
この発明にかかるガスタービン発電システムは、重質油燃料を使用するガスタービン発電システムとして有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 ガスタービン
2 排熱回収ボイラ
3 蒸留装置(分離装置)
4 残渣油燃焼器
5 排ガス重質油燃料加熱器
6 蒸気タービン
7 圧縮機
8 燃焼器
9 タービン
10 タービン軸
11 発電機
12 空気ライン
13 排ガスライン
14 圧縮空気ライン
15 燃焼ガスライン
16 煙突
17 水ライン
18 蒸気ライン(水蒸気ライン)
19 重質油燃料ライン
20 ガス化軽質油ライン
21 コンプレッサ
22 残渣油ライン
23 発電機
24 蒸気重質油燃料加熱器
25 分岐蒸気ライン
26 復水器
27 ガス化軽質油重質油燃料加熱器
28 軽質油ライン
29 ポンプ
30 熱分解装置(分離装置)
31 分岐蒸気ライン(第1分岐蒸気ライン)
32 排ガス燃焼器
33 再生熱交換器
34 分岐蒸気ライン(第2分岐蒸気ライン)
35 再熱用燃焼器
36 前段側のタービン
37 後段側のタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン発電システムにおいて、
重質油燃料から軽質油を分離する分離装置と、
前記分離装置からの前記軽質油と圧縮機で圧縮された圧縮空気との混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを回転駆動させて発電機で発電するガスタービンと、
を備え、
前記分離装置は、前記重質油燃料を高温水により熱分解して前記軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する熱分解装置である、
ことを特徴とするガスタービン発電システム。
【請求項2】
前記分離装置の前記熱分解装置の上流側には、前記重質油燃料を蒸留して一次分離の軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する蒸留装置を備え、
前記分離装置の前記熱分解装置は、前記蒸留装置からの前記一次分離の軽質油を高温水により熱分解して前記軽質油と腐食成分が含有されている残渣油とに分離する、
ことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン発電システム。
【請求項3】
前記分離装置からの前記残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての排熱回収ボイラ、前記分離装置からの前記残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての排ガス燃焼器と前記排ガス燃焼器において発生した熱を熱源とする再生熱交換器、前記分離装置からの前記残渣油を燃焼させる残渣油燃焼器としての再熱用燃焼器、のいずれか1つを備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載のガスタービン発電システム。
【請求項4】
前記重質油燃料を排ガスにより加熱する排ガス重質油燃料加熱器、前記重質油燃料を蒸気により加熱する蒸気重質油燃料加熱器、前記重質油燃料を前記軽質油により加熱する軽質油重質油燃料加熱器、のいずれか1つを備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスタービン発電システム。
【請求項5】
前記分離装置からの前記残渣油を燃焼させる排ガス燃焼器と、前記排ガス燃焼器において発生した熱を熱源とする再生熱交換器と、前記重質油燃料を前記再生熱交換器の下流側あるいは上流側で排ガスにより加熱する排ガス重質油燃料加熱器と、を備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスタービン発電システム。
【請求項6】
排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラからの蒸気によりを回転駆動して発電機で発電する蒸気タービンと、
を備える、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスタービン発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−92852(P2012−92852A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32134(P2012−32134)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2008−71966(P2008−71966)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】