説明

ガスバリア性フィルムの製造方法、及び有機光電変換素子

【課題】極めて高いガスバリア性能を達成できるガスバリア性フィルムの製造方法、及び該製造方法で製造されたガスバリア性フィルムを用いた有機光電変換素子を提供することである。
【解決手段】基材の少なくとも片面にポリシラザン膜を塗布し、プラズマ処理を施してバリア層を形成するガスバリア性フィルムの製造方法において、該プラズマ処理前にポリシラザン膜の塗布時の溶媒を取り除く第一工程と、それに続き水分を除去する第二工程とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板と言ったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルムの製造方法、及び該製造方法で製造されたガスバリア性フィルムを用いた有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。
【0003】
このようなガスバリア性フィルムを形成する方法として、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布し、表面処理をする技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、いずれの技術も有機光電変換素子等のガスバリア層としての機能は不十分なものであり、水蒸気透過率として、1×10−2g/m・dayを大きく下回るような、更なるガスバリア性の改善が求められていた。
【0004】
特許文献1においては、ポリシラザン膜を湿式法で形成し、大気圧プラズマ処理を施すことでポリシラザン膜の一部をシリカに転化し、バリア層を形成する技術が開示されている。更にシリカ転化の進行を十分にするためのSiH残存率の規定や、ポリシラザンを溶解もしくは分散させる溶媒の種類についての好ましい形態と乾燥についての言及がなされているものの、プラズマ処理を施す前のポリシラザン膜の含水率についての言及はない。
【0005】
特許文献2においては、ポリシラザン層を形成し、アミン類や酸類の存在下で水蒸気を含むガスに接触させる処理し、その後の加熱処理(例えば、実施例に記載の120℃、2.5分)とガス放電処理により、加水分解反応を促進してポリシラザン成分のシリカ転化を行う技術が開示されている。しかしながら、ガス接触処理と加熱処理でポリシラザン成分の加水分解反応が進行するものの、進行しすぎるとSi−OHを多く含むシリカ膜になることがわかり、そのために十分なバリア性能が得られないことがわかった。
【0006】
一方で、窒素2周波の大気圧プラズマで、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれかの一方とケイ素原子を含有する機能体を形成する製膜技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
本発明者らが確認したところ、確かに高密度で安定な窒素プラズマにより形成される機能体は得られるものの、CVD製膜方式であるためにプラズマ空間での副生成物として気相中パーティクルが発生し、基材への付着により均一な膜形成が阻害される場合があり、有機光電変換素子等へのガスバリア用途には耐え難いことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−237588号公報
【特許文献2】特開2000−246830号公報
【特許文献3】特開2004−84027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、極めて高いガスバリア性能を達成できるガスバリア性フィルムの製造方法、及び該製造方法で製造されたガスバリア性フィルムを用いた有機光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0011】
1.基材の少なくとも片面にポリシラザン膜を塗布し、プラズマ処理を施してガスバリア層を形成するガスバリア性フィルムの製造方法において、該プラズマ処理前に該ポリシラザン膜の塗布時の溶媒を取り除く第一工程と、それに続き水分を除去する第二工程とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【0012】
2.前記第二工程後の前記ポリシラザン膜の含水率が0.1%以下になることを特徴とする前記1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【0013】
3.前記プラズマ処理が大気圧プラズマ処理であることを特徴とする前記1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【0014】
4.前記大気圧プラズマ処理が窒素2周波放電であることを特徴とする前記3に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【0015】
5.前記大気圧プラズマ処理における時間平均密度が8.0×1016〔m−3〕以上のNイオンを含有するプラズマ処理であることを特徴とする前記3または4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【0016】
6.前記1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法によって形成されるガスバリア性フィルムを有することを特徴とする有機光電変換素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法により、製造適性、取り扱い性に優れ、高いガスバリア性能を達成できるガスバリア性フィルムを得ることができ、高いガスバリア性に優れた有機光電変換素子用樹脂基材用として有用なガスバリア性フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】プラズマ放電処理装置の電極に印加される電圧の周波数の1/4周期ごとのNイオン密度を表示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るガスバリア性フィルムについて説明する。
【0020】
ガスバリア性フィルムは樹脂フィルム支持体、例えば、ポリエチレンテレフタレート上の少なくとも片面に、一層以上のポリシラザン膜にプラズマ処理を施して形成されたガスバリア層を有しており、該ガスバリア層は単層でも複数の同様な層を積層してもよく、複数の層で更にガスバリア性を向上させることもできる。
【0021】
ガスバリア層の形成方法としては、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布後、酸化性ガス雰囲気下でプラズマ処理することにより、ケイ素酸化物を含有するガスバリア層を形成する方法が挙げられる。
【0022】
ケイ素酸化物のガスバリア層を形成するためのケイ素化合物の供給は、CVDのようにガスとして供給されるよりも、ガスバリア性フィルム基材表面に塗布した方がより均一で平滑なガスバリア層を形成することができる。CVD法等の場合は、気相で反応性が増した原料物質が基材表面に堆積する工程と同時に、気相中で不必要なパーティクルと呼ばれる異物が生成することはよく知られているが、原料をプラズマ反応空間に存在させないことで、これらパーティクルの発生を抑制することが可能になる。
【0023】
(ポリシラザン膜)
本発明におけるポリシラザン膜は、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成される。
【0024】
塗布方法としては任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚みは目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚みは、乾燥後の厚みが好ましくは1nm〜100μm程度、更に好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
【0025】
本発明で用いられるポリシラザンとは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si、及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
【0026】
フィルム基材を損なわないように塗布するには、特開平8−112879号公報に記載されているように、下記一般式(I)を比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよい。
【0027】
【化1】

【0028】
但し、式中のR、R、Rのそれぞれは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などであって、本発明では得られるガスバリア膜としての緻密性からはR、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0029】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、且つ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0030】
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0031】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記化1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0032】
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0033】
具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等、目的に会わせて選択し、複数の溶剤を混合してもよい。
【0034】
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は、目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0035】
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特に最も分子量の少ないメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、且つ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0036】
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
【0037】
(第一工程と第二工程)
本発明におけるポリシラザン膜は第一工程と第二工程により、プラズマ処理前に水分が十分に除去されていることを特徴とする。更にはポリシラザン膜中の溶媒を取り除く目的の第一工程と、それに続くポリシラザン膜中の水分を取り除く目的の第二工程を含むことを特徴とする。このとき、第一工程で水分が取り除かれてもよく、それに続く第二工程の負荷が低減するので好ましい。
【0038】
第一工程においては、主に溶媒を取り除くための乾燥条件を熱処理等の方法で適宜決めることができるが、このときに水分が除去される条件にあってもよい。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度が好ましいが、樹脂基材への熱ダメージを考慮し、温度と処理時間を決めることができる。
【0039】
例えば、樹脂基材にガラス転位温度(Tg)が70℃のPET基材を用いる場合には、熱処理温度は200℃以下を設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、且つ基材への熱ダメージが少なくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が200℃以下であれば、30分以内に設定することができる。
【0040】
揮発性の溶媒を扱う場合、特に引火点の低い揮発溶媒を扱う場合には、静電気発生による爆発や火災等の大事故を考慮するために、第一工程を低湿環境にすることは好ましくなく、中湿度環境にすることが好ましい。中湿度環境とは静電気等が発生しにくい湿度のことを指し、露点14〜20℃を指す。また、溶媒を取り除きやすくするために減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
【0041】
第二工程はポリシラザン膜中の水分を取り除くための工程で、水分を除去する方法としては低湿度環境に維持される形態が好ましい。低湿度環境における湿度は、温度により変化するので温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。
【0042】
好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、更に好ましい露点温度は(温度25℃/湿度1%)−31℃以下であり、維持される時間はポリシラザン膜の膜厚によって適宜変わる。ポリシラザン膜厚1μ以下の条件においては、好ましい露点温度は−8℃以下で維持される時間は5分以上である。また、水分を取り除きやすくするために減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
【0043】
第一工程の条件に対する第二工程の好ましい条件としては、例えば、第一工程で温度60〜150℃、処理時間1〜30分間で溶媒を除去したときには、第二工程の露点は4℃以下で処理時間は5〜120分により水分を除去する条件を選ぶことができる。第一工程と第二工程の区分は露点の変化で区別することができ、工程環境の露点の差が10℃以上変わることで区分ができる。
【0044】
本発明におけるポリシラザン膜は、第二工程により水分が取り除かれた後も、その状態を維持されてプラズマ処理されることが好ましい。
【0045】
(ポリシラザン膜の含水率)
本発明におけるポリシラザン膜の含水率は、以下の分析方法で検出できる。
【0046】
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ/質量分析法
装置:HP6890GC/HP5973MSD
オーブン:40℃(2min)→10℃/min→150℃
カラム:DB−624(0.25mmid*30m)
注入口:230℃
検出器:SIM m/z=18
HS条件:190℃・30min。
【0047】
本発明におけるポリシラザン膜中の含水率は、上記の分析方法により得られる含水量からポリシラザン膜の体積で除した値と定義され、第二工程により水分が取り除かれた状態において、好ましくは0.1%以下である。更に好ましい含水率は0.01%以下(検出限界以下)である。
【0048】
本発明において、プラズマ処理前のポリシラザン膜の水分の除去を行うことで高いガスバリア性が得ることができる。これは、ポリシラザン膜からプラズマ処理により酸化ケイ素の層を形成するプロセスにおいて、高密度化を阻害する表面の吸着またはポリシラザン膜中の水分を取り除いた状態でプラズマ処理を行うことで、プラズマエネルギーが吸着水分の脱離反応に費やされることなく、効率よく転化反応に消費されるためと本発明者らは推定している。
【0049】
(プラズマ処理)
本発明に用いられるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0050】
〈大気圧プラズマ処理〉
次に、大気圧プラズマ処理について好ましい形態を説明する。本発明における大気圧プラズマ処理は、具体的には国際公開第07/26545号パンフレットに記載されるように、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上印加したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を印加することが好ましい。
【0051】
前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ前記第1の高周波電界の強さV1と、前記第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係がV1≧IV>V2、またはV1>IV≧V2を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm以上である。
【0052】
このような放電条件をとることにより、例えば、窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができる。
【0053】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0054】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。また、この電界波形としては連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0055】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0056】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度により、プラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0057】
本発明における大気圧プラズマ処理において、時間平均密度が8.0×1016〔m−3〕以上、より好ましくは1.2×1017〔m−3〕以上、より好ましくは2.0×1017〔m−3〕以上のNイオンを含有することが好ましい。なお、時間平均密度の上限値としては、1×1020〔m−3〕である。
【0058】
イオンの時間平均密度は、プラズマ放電処理用ガスのプラズマ密度の高さやそのプラズマ状態の安定性を示す指標であると考えられ、従来のように経験的あるいは試行錯誤的にプラズマ処理放電装置の制御パラメーターを調整する代わりに、本発明のような時間平均密度になるようにプラズマ放電処理装置の制御パラメーターを制御することで、良好なプラズマ放電処理を行うことが可能となる。
【0059】
更に制御パラメーターの中で、プラズマ放電処理用ガス中のNイオンの時間平均密度と良好な相関を有する電流密度のピーク値を変動させることで、容易にプラズマ放電処理用ガス中のNイオンの時間平均密度を設定することが可能となる。
【0060】
なお、プラズマ放電処理用ガス中のNイオンの密度は、実測することが困難であるため密度値の規定にはプラズマシミュレーションが用いられる。また、Nイオンの密度は周期的に変化する電極間の電界に依存して時間的に変化するため、前記プラズマシミュレーションにより算出されたNイオンの密度の時間平均を求めることにより、Nイオンの密度が規定される。
【0061】
従って、本発明におけるNイオンの密度あるいは時間平均密度とは、実測値ではなく、以下に述べるプラズマシミュレーションによって得られる値である。
【0062】
本発明では、シミュレーションには数値流体力学(Computational Fluid Dynamics:CFD)ソフトウエア「CFD−ACE+」(米国CFD Research製)が用いられる。
【0063】
また、Nイオン密度を求める際の反応データ、即ち反応定数等には、I.A.Kossyi et al.,“Kinetic scheme of the non−equilibrium discharge in nitrogen−oxygen mixtures”,Plasma Sources Sci.Technol.1(1992)207−220(英国物理学会、文献1)、及びP.Segur and F.Massines,“The role of numerical modelling to understand the behaviour and to predict the existence of an atmospheric pressure glow discharge controlled by a dielectric barrier”Proc.13th Int.Conf.on Gas Discharges and their Applications,Glasgow,2000,15.(文献2)の公開学術論文に掲載されている値が用いられる。
【0064】
ここで、前記数値流体力学ソフトウエアによるNイオン密度の算出について説明する。プラズマ放電処理装置の電極間の放電空間では、電子が関与する素反応だけでも下記(1)〜(9)式に示すような素反応が生じている。
【0065】
弾性衝突: e+A→e+A (1)
電子励起: e+A→e+A (2)
振動励起: e+A→e+A(vib) (3)
回転励起: e+A→e+A(rot) (4)
解離: e+AB→e+A+B (5)
電離: e+A→e+e+A (6)
電子付着: e+A→A (7)
解離付着: e+AB→A+B (8)
超弾性衝突: e+A→e+A (9)。
【0066】
ここで、Aは放電ガスや原料ガス等の中性ガス分子や原子、もしくはそれに由来するラジカルであり、Aはそれらの分子等が電子励起状態にあることを示している。放電空間では、この他にも、電子とイオンとの素反応や、中性分子や原子、ラジカル同士あるいはそれらとイオンとの素反応、イオン同士の素反応等種々の素反応が生じている。
【0067】
また、大気圧近傍の圧力下では、従来のような低圧下での場合と比較して、三体反応の寄与が重要になってくる。例えば、仮に窒素ガスのみでプラズマ放電処理用ガスを構成したとすると、低圧では、
(a’1Σu)+N(a’1Σu)→N+e (10)
(AΣu)+N(a’1Σu)→N+e (11)
で示される素反応がNイオンの主要な生成反応とされている。
【0068】
しかし、大気圧近傍の圧力下では、N(a’1Σu)やN(AΣu)等の励起状態にある窒素分子と他の窒素分子との衝突が頻繁になり、励起状態の窒素ガスが生成しても衝突によりエネルギーを奪われて非常に速やかに失活してしまうため、前記(10)式及び(11)式のNイオン生成に対する寄与が減少する。
【0069】
それに対し、大気圧近傍の圧力下では、低圧下の場合と比較して
+2N→N+N (12)
で示される三体反応が生じる確率が格段に大きくなるため、主にこの反応によりNイオンが生成されると考えられる。
【0070】
なお、Nイオンは、主にプラズマ放電処理用ガス中に多量に存在する窒素分子や窒素原子、あるいは、例えば、反応性ガスとして酸素分子が混合されている場合には酸素分子や酸素原子、NOと衝突して相手から電子を奪い、2個のNに分裂してガス中から失われる。また、ガス中に存在する電子と結合して2個のNとなってガス中から失われる経路もある。
【0071】
シミュレーションでは、放電空間におけるこれらの素反応や、瞬間的に負極になっている電極への正イオンの衝突の際に起こる二次電子放出を踏まえたうえで、下記の支配方程式を解く1次元プラズマシミュレーションを行うことにより、Nイオンの密度等を算出するようになっている。なお、プラズマ放電処理用ガス中の原料ガスは、本発明に係るシミュレーションでは無視される。
【0072】
【数1】

【0073】
【数2】

【0074】
【数3】

【0075】
【数4】

【0076】
【数5】

【0077】
【数6】

【0078】
【数7】

【0079】
【数8】

【0080】
【数9】

【0081】
ここで、yは空間1次元方向、即ち一方の電極から他方の電極に向かう方向についての位置、neは電子密度、Jeは電子フラックス、Seは電子の生成・消滅項、μeは電子の移動度、Deは電子の拡散係数を意味し、添字の(i)はイオンの場合の密度やフラックス等を意味する。また、nnは中性粒子(ラジカルや励起粒子)密度、Dnは中性粒子の拡散係数、εeは平均電子エネルギー、Qは電子エネルギーフラックス、Eは電場、klossは電子エネルギー損失のレート係数、Ngasはガス密度を意味する。
【0082】
平均電子エネルギーεeと電子温度Teとの間には前記(20)式の関係が成立する。電場Eはポアソン方程式である前記(21)式をポテンシャルφについて解き、その負の勾配から得られる。なお、定数e、k及びε0はそれぞれ素電荷、ボルツマン定数及び真空の誘電率を意味する。
【0083】
また、前記(13)式と(14)式から電子密度が、(13)式と(15)式からイオン密度が、(16)式と(17)式から中性粒子(励起粒子やラジカル)密度が、(18)式と(19)式から平均電子エネルギーが、(20)式の関係から電子温度が、(21)式から電位(ポテンシャル)がそれぞれ算出される。
【0084】
なお、プラズマシミュレーションにおいては、プラズマ放電処理装置における制御パラメーターである電極への印加電圧や電圧の周波数、電極間隔、電極を被覆している誘電体の比誘電率、誘電体の厚さを変動させて、Nイオンの密度を求める。
【0085】
また、前記支配方程式の解法に必要となる電子の移動度μeや拡散係数De、即ち所謂電子スオームパラメーターは、前記文献1及び文献2の電子に関する反応断面積のすべてを前記ソフトウエア「CFD−ACE+」のBoltzmann方程式解析プログラムに入力して求める。
【0086】
このようにして前記支配方程式を解くと、図4(A)〜(D)に例示されるように、プラズマ放電処理用ガス中のNイオンの時間的に変化する密度が算出される。本発明では、前述したように、その算出されたNイオンの密度の時間平均が求められ、その時間平均によりNイオンの密度が規定される。なお、図4(A)〜(D)は、プラズマ放電処理装置の2つの電極に印加される電圧のうちより周波数が大きい電圧周波数の1/4周期ごとのNイオン密度を(A)から(D)の順に表示したグラフであり、実線がNイオンの密度を示す。図中の点線は電子密度である。
【0087】
本発明におけるプラズマ放電処理ガスには、酸素プラズマが含まれていてもよい。酸素プラズマは酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、等の酸化性ガスをプラズマ放電処理ガス中に加えることで生成するが、上記のNイオンの時間平均密度を下回らない範囲で酸素プラズマが含まれていてもよい。
【0088】
〈支持体〉
本発明におけるガスバリア性フィルムの支持体は、後述のバリア性を有するガスバリア層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0089】
例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0090】
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられ、また光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。支持体の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0091】
また、本発明に係る支持体は透明であることが好ましい。支持体が透明であり、支持体上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリア性フィルムとして様々な用途が可能となる。
【0092】
また、上記に挙げた樹脂等を用いた支持体は未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0093】
本発明に用いられる支持体は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の支持体を製造することができる。
【0094】
また、未延伸の支持体を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、支持体の流れ(縦軸)方向、または支持体の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、支持体の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0095】
また、本発明に係る支持体においては、蒸着膜を形成する前にコロナ処理してもよい。更に本発明に係る支持体表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。
【0096】
〈アンカーコート剤層〉
このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を1または2種以上併せて使用することができる。
【0097】
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
【0098】
〈平滑層〉
本発明におけるガスバリア性フィルムは平滑層を有してもよい。平滑層は突起等が存在する透明樹脂フィルム支持体の粗面を平坦化し、あるいは透明樹脂フィルム支持体に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて形成される。
【0099】
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。
【0100】
また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
【0101】
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいはその他の化合物との混合物として使用することができる。
【0102】
感光性樹脂の組成物は光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノアセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0103】
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
【0104】
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
【0105】
感光性樹脂を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いて平滑層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0106】
平滑層の平滑性は、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲よりも値が小さい場合には、後述のケイ素化合物を塗布する段階で、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合に塗布性が損なわれる場合がある。また、この範囲よりも大きい場合には、ケイ素化合物を塗布した後の凹凸を平滑化することが難しくなる場合がある。
【0107】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。
【0108】
好ましい態様の一つは、前述の感光性樹脂中に表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも言う)を含むものである。
【0109】
ここで光重合性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基等を挙げることができる。また、感光性樹脂は、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。
【0110】
また、感光性樹脂としては、このような反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物に、適宜汎用の希釈溶剤を混合することによって固形分を調製したものを用いることができる。
【0111】
ここで反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmの平均粒子径であることが好ましい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、後述する平均粒子径1〜10μmの無機粒子からなるマット剤と組み合わせて用いることによって、本発明の効果である防眩性と解像性とをバランス良く満たす光学特性と、ハードコート性とを兼ね備えた平滑層を形成し易くなる。
【0112】
なお、このような効果をより得易くする観点からは、更に平均粒子径として0.001〜0.01μmのものを用いることがより好ましい。本発明に用いられる平滑層中には、上述の様な無機粒子を質量比として20%以上60%以下含有することが好ましい。20%以上添加することで、ガスバリア層との密着性が向上する。また、60%を超えるとフィルムを湾曲させたり、加熱処理を行った場合にクラックが生じたり、ガスバリア性フィルムの透明性や屈折率等の光学的物性に影響を及ぼすことがある。
【0113】
本発明では、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間にシリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。
【0114】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられる。
【0115】
重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0116】
本発明における平滑層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより平滑層を有するフィルムとしての平滑性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面にのみ設けた場合における平滑フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0117】
〈ブリードアウト防止層〉
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、フィルム支持体中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
【0118】
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0119】
ここで多価不飽和有機化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0120】
また、単価不飽和有機化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0121】
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0122】
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
【0123】
ここで無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
【0124】
また、本発明における平滑層には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
【0125】
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0126】
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0127】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に電離放射線(紫外線または電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。
【0128】
このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また、光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
【0129】
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0130】
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、及び必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
【0131】
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
【0132】
本発明におけるブリードアウト防止層の厚みとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることによりフィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより平滑フィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層を透明高分子フィルムの一方の面に設けた場合におけるガスバリア性フィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
【0133】
〈ケイ素化合物を有する層〉
本発明におけるガスバリア性フィルムは、スパッタリング法、イオンアシスト法、後述するプラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して、ケイ素化合物を有する層が積層されて形成されたものであることが好ましく、特に大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で高速製膜ができ、生産性の高い製膜方法であり好ましい。上記ケイ素化合物を有する層をプラズマCVDにより追加形成することで、一層ガスバリア性の高いガスバリア層を容易に形成することが可能となるからである。
【0134】
スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法では、バリア性の高い膜を形成できる反面、製膜工程において、パーティクルと呼ばれる微粒子状の異物が発生し、ガスバリア層中あるいは表面に付着した欠陥を生じやすい欠陥がある。
【0135】
本発明におけるガスバリア性フィルムは、このような欠陥が生じても、前述のケイ素化合物を有する層の存在により、欠陥部からのガス透過を抑制することができ、より高いガスバリア性を実現できるものである。
【0136】
本発明におけるこれらのケイ素化合物を有する層の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、1〜2000nmの範囲内であることが好ましい。
【0137】
ケイ素化合物を有する層の厚さが1nm以上とすることで均一な膜が得られやすく、また膜欠陥が少なくなり、防湿性及びガスに対するバリア性の向上を図りやすい。また、ケイ素化合物を有する層の厚さが2000nm以下とすることにより、ガスバリア性フィルムにフレキシビリティを保持させやすく、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因によっても、ガスバリア性フィルムに亀裂が生じにくくなり、防湿性及びガスバリア性が向上する。
【0138】
また、本発明においては、上記ケイ素化合物を有する層が透明であることが好ましい。透明であることにより、ガスバリア性フィルムを透明なものとすることが可能となり、様々な用途への利用が可能となるからである。ガスバリア性フィルムの光透過率としては、例えば、試験光の波長を550nmとしたとき透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0139】
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるケイ素化合物を有する層は、原材料(原料とも言う)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物等のセラミック層を、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属窒化炭化物等)も作り分けることができるため好ましい。
【0140】
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いればケイ素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は、熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0141】
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒はメタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0142】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス等が挙げられる。
【0143】
金属元素を含む原料ガスと分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0144】
これらの反応性ガスに対して主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
【0145】
このような放電ガスとしては、窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0146】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0147】
本発明に係るケイ素化合物を有する層においては、含有する無機化合物が、SiO(x=1.5〜2.0、y=0〜0.5)または、SiO、SiNまたはSiO(x=1〜2、y=0.1〜1)であることが好ましく、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、SiOであることが好ましい。
【0148】
本発明に係るケイ素化合物を有する層が含有する無機化合物は、例えば、上記有機ケイ素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかとSi原子とを含む膜を得ることができる。
【0149】
以上のように、上記のような原料ガスを放電ガスと共に使用することにより様々な無機薄膜を形成することができる。
【0150】
(大気圧プラズマCVD法)
次いで、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法において、本発明に係るケイ素化合物を有する層の形成に好適に用いることのできる大気圧プラズマCVD法について、更に詳細に説明する。
【0151】
CVD法(化学的気相成長法)は、揮発、昇華した有機金属化合物が高温の支持体表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものであり、このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、プラスチック支持体への製膜には使用することが難しい。
【0152】
一方、プラズマCVD法は支持体近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に支持体上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。
【0153】
プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカル等の励起状態のガスと接するために、無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。従って、無機物を製膜する支持体についても低温化することができ、樹脂フィルム支持体上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
【0154】
また、この方法によれば、樹脂フィルム上に前記ケイ素化合物を有する層を形成させたときの膜密度が緻密であり、安定した性能を有する薄膜が得られる。
【0155】
次いで、大気圧あるいは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いた前記ケイ素化合物を有する層の積層方法の一例について述べる。
【0156】
プラズマ放電処理装置においては、ガス供給手段から前記金属を含む原料ガス、分解ガスを適宜選択して、またこれらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合してプラズマ放電発生装置にガスを送りこむことで、前記の層を得ることができる。
【0157】
放電ガスとしては、前記のように窒素ガス及び/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
【0158】
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
【0159】
(ガスバリア性フィルムの用途)
本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または太陽電池、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルム及びガスバリア性フィルムを用いた各種デバイス用樹脂基材、及び各種デバイス素子に関する。
【0160】
本発明におけるガスバリア性フィルムは、種々の封止用材料、フィルムとして用いることができる。
【0161】
(有機光電変換素子)
本発明におけるガスバリア性フィルムは、例えば、有機光電変換素子に用いることができる。有機光電変換素子に用いる際に、ガスバリア性フィルムは透明であるため、このガスバリア性フィルムを支持体として用いてこの側から太陽光の受光を行うように構成できる。
【0162】
即ち、このガスバリア性フィルム上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設け、有機光電変換素子用樹脂支持体を構成することができる。そして、支持体上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、更に金属膜からなる陰極を形成して有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料を(同じでもよいが)重ねて、前記ガスバリア性フィルム支持体と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることができる。
【0163】
有機光電変換素子用樹脂支持体は、このようにして形成されたガスバリア性フィルムのガスバリア層上に、透明導電性膜を形成することによって得られる。透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、またインジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
【0164】
透明導電膜の膜厚としては、0.1〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
【0165】
次いで、これらガスバリア性フィルム、またこれに透明導電膜が形成された有機光電変換素子用樹脂支持体を用いた有機光電変換素子について説明する。
【0166】
(封止フィルムとその製造方法)
本発明は、前記ガスバリア性フィルムを基板として用いることが特徴の一つである。
【0167】
前記ガスバリア性フィルムにおいて、ガスバリア層上に更に透明導電膜を形成し、これを陽極としてこの上に有機光電変換素子を構成する層、陰極となる層とを積層し、この上に更にもう一つのガスバリア性フィルムを封止フィルムとして、重ね接着することで封止する。
【0168】
また、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリア性フィルム、例えば、プラスチックフィルム上に酸化ケイ素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリア性フィルム等を封止フィルムとして用いることができる。
【0169】
また、特に樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取り出し側のガスバリア性フィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり、光取り出しを意図しない(透明性を要求されない)場合、封止フィルムとして好ましい。
【0170】
本発明において、金属箔とはスパッタや蒸着等で形成された金属薄膜や、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成された導電膜と異なり、圧延等で形成された金属の箔またはフィルムを指す。
【0171】
金属箔としては金属の種類に特に限定はなく、例えば、銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、金(Au)箔、黄銅箔、ニッケル(Ni)箔、チタン(Ti)箔、銅合金箔、ステンレス箔、スズ(Sn)箔、高ニッケル合金箔等が挙げられる。これらの各種の金属箔の中で特に好ましい金属箔としてはAl箔が挙げられる。
【0172】
金属箔の厚さは6〜50μmが好ましい。6μm未満の場合は、金属箔に用いる材料によっては使用時にピンホールが空き、必要とするバリアー性(透湿度、酸素透過率)が得られなくなる場合がある。50μmを越えた場合は、金属箔に用いる材料によってはコストが高くなったり、有機光電変換素子が厚くなりフィルムのメリットが少なくなる場合がある。
【0173】
樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔において、樹脂フィルムとしては機能性包装材料の新展開(株式会社東レリサーチセンター)に記載の各種材料を使用することが可能であり、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体系樹脂、セロハン系樹脂、ビニロン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂等の樹脂は延伸されていてもよく、更に塩化ビニリデン系樹脂をコートされていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は低密度あるいは高密度のものも用いることができる。
【0174】
後述するが、2つのフィルムの封止方法としては、例えば、一般に使用されるインパルスシーラー熱融着性の樹脂層をラミネートして、インパルスシーラーで融着させ、封止する方法が好ましく、この場合、ガスバリア性フィルム同士の封止は、フィルム膜厚が300μmを超えると封止作業時のフィルムの取り扱い性が悪化するのとインパルスシーラー等による熱融着が困難となるため膜厚としては300μm以下が望ましい。
【0175】
(有機光電変換素子の封止)
本発明では、本発明に係る前記ガスバリア層を有する樹脂フィルム(ガスバリア性フィルム)上に透明導電膜を形成し、作製した有機光電変換素子用樹脂支持体上に有機光電変換素子各層を形成した後、上記封止フィルムを用いて、不活性ガスによりパージされた環境下で上記封止フィルムで陰極面を覆うようにして、有機光電変換素子を封止することができる。
【0176】
不活性ガスとしては、Nの他、He、Ar等の希ガスが好ましく用いられるが、HeとArを混合した希ガスも好ましく、気体中に占める不活性ガスの割合は90〜99.9体積%であることが好ましい。不活性ガスによりパージされた環境下で封止することにより、保存性が改良される。
【0177】
また、前記の樹脂フィルム(ポリマー膜)がラミネートされた金属箔を用いて、有機光電変換素子を封止するにあたっては、ラミネートされた樹脂フィルム面ではなく、金属箔上にセラミック層を形成し、このセラミック層面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせることが好ましい。封止フィルムのポリマー膜面を有機光電変換素子の陰極に貼り合わせると、部分的に導通が発生することがある。
【0178】
封止フィルムを有機光電変換素子の陰極に貼り合わせる封止方法としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等の熱融着性フィルムを積層して、インパルスシーラーで融着させ封止する方法がある。
【0179】
接着方法としてはドライラミネート方式が作業性の面で優れている。この方法は、一般には1.0〜2.5μm程度の硬化性の接着剤層を使用する。但し、接着剤の塗設量が多すぎる場合には、トンネル、浸み出し、縮緬皺等が発生することがあるため、好ましくは接着剤量を乾燥膜厚で3〜5μmになるように調節することが好ましい。
【0180】
ホットメルトラミネーションとは、ホットメルト接着剤を溶融し支持体に接着層を塗設する方法であるが、接着剤層の厚さは一般に1〜50μmと広い範囲で設定可能な方法である。一般に使用されるホットメルト接着剤のベースレジンとしては、EVA、EEA、ポリエチレン、ブチルラバー等が使用され、ロジン、キシレン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂等が粘着付与剤として、ワックス等が可塑剤として添加される。
【0181】
エクストルージョンラミネート法とは、高温で溶融した樹脂をダイスにより支持体上に塗設する方法であり、樹脂層の厚さは一般に10〜50μmと広い範囲で設定可能である。エクストルージョンラミネートに使用される樹脂としては、一般にLDPE、EVA、PP等が使用される。
【0182】
次いで、有機光電変換素子を構成する有機光電変換素子材料各層(構成層)について説明する。
【0183】
(有機光電変換素子及び太陽電池の構成)
本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を説明するが、これに限定されるものではない。有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた光電変換部(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクヘテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
【0184】
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
【0185】
(i)陽極/光電変換部/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/光電変換部/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/光電変換部/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/光電変換部/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発光層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発光層/電子輸送層/陰極。
【0186】
ここで、光電変換部は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを形成していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクヘテロジャンクションを形成してもよいが、バルクヘテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。光電変換部に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
【0187】
有機EL素子同様を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。また、光電変換部自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で光電変換部を挟み込むような構成(p−i−n構成とも言う)であってもよい。また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの光電変換部で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
【0188】
太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、図1に示す有機光電変換素子10におけるサンドイッチ構造に代わって、一対の櫛歯状電極上にそれぞれ正孔輸送層17、電子輸送層18を形成し、その上に光電変換部14を配置するといった、バックコンタクト型の有機光電変換素子が構成とすることもできる。
【0189】
更に、詳細な本発明に係る有機光電変換素子の好ましい態様を下記に説明する。
【0190】
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、陽極12、正孔輸送層17、光電変換部14、電子輸送層18及び陰極13が順次積層されている。
【0191】
基板11は、順次積層された陽極12、光電変換部14及び陰極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、即ち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に陽極12及び陰極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0192】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。
【0193】
図1において、基板11を介して陽極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、陽極12と陰極13の仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
【0194】
例えば、陽極12の仕事関数が陰極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は陽極12へ、正孔は陰極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、陽極12と陰極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0195】
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0196】
更に好ましい構成としては、前記光電変換部14が、所謂p−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合したi層単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層、及びn型半導体材料単体からなるn層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0197】
更に、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層したタンデム型の構成としてもよい。
【0198】
図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また、第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0199】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0200】
(有機光電変換素子材料)
(p型半導体材料)
本発明に係る光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
【0201】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0202】
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0203】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体、Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0204】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0205】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、且つ乾燥後は、結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
【0206】
また、光電変換部上に電子輸送層を塗布で製膜する場合、電子輸送層溶液が光電変換部を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
【0207】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、及び特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
【0208】
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0209】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、且つ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0210】
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0211】
(正孔輸送層・電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0212】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
【0213】
なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
【0214】
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
【0215】
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0216】
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0217】
また、電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
【0218】
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
【0219】
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
【0220】
また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0221】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0222】
(透明電極(第1電極))
本発明に係る透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0223】
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
【0224】
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
【0225】
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0226】
これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0227】
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0228】
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0229】
また、対電極13は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により形成でき好ましい。
【0230】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
【0231】
(中間電極)
また、図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0232】
なお、前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0233】
(金属ナノワイヤ)
本発明に係る導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤ、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤが好ましい。
【0234】
一般に、金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことを言う。特に、本発明における金属ナノワイヤとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
【0235】
本発明に係る金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、更には3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
【0236】
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤの平均直径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
【0237】
本発明に係る金属ナノワイヤの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
【0238】
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤ全体が同一の金属組成を有していてもよい。
【0239】
本発明において金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
【0240】
例えば、Agナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.及びChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤの製造方法として好ましく適用することができる。
【0241】
本発明においては、金属ナノワイヤが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを形成し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、更に金属ナノワイヤの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
【0242】
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0243】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0244】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0245】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0246】
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0247】
(製膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、及び輸送層・電極の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
【0248】
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
【0249】
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。更には、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
【0250】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0251】
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0252】
(パターニング)
本発明に係る電極、光電変換部、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0253】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0254】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【実施例】
【0255】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0256】
実施例1
(支持体)
熱可塑性樹脂支持体として、両面に易接着加工された125μm厚みのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テトロンO3)の基板を、170℃で30分アニール加熱処理したものを用いた。
【0257】
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
ガスバリア性フィルムの作製は、上記支持体を30m/分の速度で搬送しながら、以下の形成方法により、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を形成後に、粘着性保護フィルムを貼合したロール状のガスバリア性フィルムを得た。
【0258】
(ブリードアウト防止層の形成)
上記支持体の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0259】
(平滑層の形成)
続けて上記支持体の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
【0260】
このときの最大断面高さRt(p)は16nmであった。
【0261】
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
【0262】
《試料1の作製》
(ガスバリア層の形成)
次に、上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた試料の平滑層の上にガスバリア層を以下に示す条件で形成した。
【0263】
パーヒドロキシポリシラザン(PHPS)の20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NAX120−20)をワイヤレスバーにて、乾燥後の膜厚が0.3μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
【0264】
〈第一工程;乾燥処理〉
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
【0265】
〈第二工程;除湿処理〉
乾燥試料を更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。得られた試料のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0.4%であった。
【0266】
〈プラズマ処理A〉
除湿処理を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア層を形成した。
【0267】
また、製膜時の支持体保持温度は120℃とした。
【0268】
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し、以下のように塗工面が30秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
【0269】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は0.5mmに設定した。また、誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0270】
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
低周波側電源電力:100kHzを4W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
【0271】
《試料2の作製》
試料1における除湿処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料2を得た。
【0272】
(第二工程;除湿処理)
乾燥試料を更に温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に30分間保持し、除湿処理を行った。得られた試料2のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0.1%であった。
【0273】
《試料3の作製》
試料1における除湿処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料3を得た。
【0274】
(第二工程;除湿処理)
乾燥試料を更に温度25℃、湿度1%RH(露点温度−31℃)の雰囲気下に30分間保持し、除湿処理を行った。得られた試料3のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0.01%であった。
【0275】
《試料4の作製》
試料1における除湿処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料4を得た。
【0276】
(第二工程;除湿処理)
乾燥試料を更に温度10℃、湿度1%RH(露点温度−36℃)の雰囲気下に120分間保持し、除湿処理を行った。得られた試料4のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0%(検出限界以下)であった。
【0277】
《試料5の作製》
試料2におけるプラズマ処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料5を得た。
【0278】
(プラズマ処理B)
特開2007−237588号公報、実施例1の真空プラズマ処理条件。
【0279】
《試料6の作製》
試料2におけるプラズマ処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料6を得た。
【0280】
(プラズマ処理C)
特開2007−237588号公報、実施例11の大気圧プラズマ処理条件。
【0281】
《試料7の作製》
試料1における第一工程を以下のように変えた以外は、同様にして試料7を得た。
【0282】
(第一工程;乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で30分処理し、乾燥試料を得た。得られた試料7のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0.3%であった。
【0283】
《試料8の作製》
試料1におけるプラズマ処理前の第二工程(除湿処理)を行わなかった以外は、同様にして試料8を得た。プラズマ処理前のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、1.2%であった。
【0284】
《試料9の作製》
試料6におけるプラズマ処理前の第二工程(除湿処理)を行わなかった以外は、同様にして試料8を得た。プラズマ処理前のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、1.1%であった。
【0285】
《試料10の作製》
試料1におけるポリシラザン塗布後の第一工程(乾燥処理)を行わなかった以外は、同様にして試料10を得た。プラズマ処理前のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、0.5%であった。
【0286】
《試料11の作製》
試料1における第一工程(乾燥処理)と第二工程(除湿処理)を行わなかった以外は、同様にして試料10を得た。プラズマ処理前のポリシラザン膜中の水分比率を測定したところ、3.0%であった。
【0287】
得られた試料1〜11の水蒸気バリア評価を以下の方法で行った。
【0288】
(水蒸気バリア性(水蒸気透過率)の評価)
以下の測定方法により評価した。
【0289】
〈装置〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic Chamber IG47M
レーザー顕微鏡:KEYENCE VK−8500
原子間力顕微鏡(AFM):Digital Instrments製DI3100
〈原材料〉
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)。
【0290】
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
ガスバリア性フィルム試料No.1〜11のガスバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0291】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0292】
なお、ガスバリア性フィルム面から以外の水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
【0293】
【表1】

【0294】
本発明の試料1〜7は水蒸気バリア性に優れていることがわかった。特にプラズマ処理前のポリシラザン膜中の含水量が0%(検出限界以下)で窒素2周波の大気圧プラズマ処理を行った試料4が最も優れた水蒸気バリア性能を示した。
【0295】
実施例2
《試料12の作製》
実施例1における試料3を以下のプラズマ処理条件に変えた以外は、同様にして試料12を作製した。
【0296】
(プラズマ処理D)
第二工程(除湿処理)を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア層を形成した。
【0297】
また、製膜時の支持体保持温度は130℃とした。
【0298】
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し以下のように、塗工面が60秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
【0299】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、0.5mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0300】
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し3%
低周波側電源電力:100kHzを6W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
【0301】
プラズマ処理D条件のNイオン密度値を特開2006−253118号公報に記載されている方法から見積もったところ、8.5×1016〔m−3〕であった。
【0302】
《試料13の作製》
試料12のプラズマ処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料13を作製した。
【0303】
(プラズマ処理E)
第二工程(除湿処理)を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア層を形成した。
【0304】
また、製膜時の支持体保持温度は130℃とした。
【0305】
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し以下のように、塗工面が60秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
【0306】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、0.5mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0307】
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し8%
低周波側電源電力:100kHzを9W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを12W/cm
【0308】
プラズマ処理E条件のNイオン密度値を見積もったところ、2.0×1017〔m−3〕であった。
【0309】
《試料14の作製》
試料12のプラズマ処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料14を作製した。
【0310】
(プラズマ処理F)
除湿処理を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア層を形成した。
【0311】
また、製膜時の支持体保持温度は130℃とした。
【0312】
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し、以下のように塗工面が60秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
【0313】
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は0.5mmに設定した。また、誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
【0314】
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し0%
低周波側電源電力:100kHzを3W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを5W/cm
【0315】
プラズマ処理F条件のNイオン密度値を見積もったところ、5.0×1016〔m−3〕であった。
【0316】
《試料15の作製》
試料12のプラズマ処理を以下のように変えた以外は、同様にして試料15を作製した。
【0317】
(プラズマ処理G)
除湿処理を行った試料を下記の条件でプラズマ処理を行い、ガスバリア層を形成した。特開2007−237588号公報、実施例11の大気圧プラズマ処理条件において、出力を100kHzに置き換えた条件。
【0318】
プラズマ処理G条件のNイオン密度値を見積もったところ、4.0×1015〔m−3〕であった。
【0319】
得られた試料12〜15を実施例1と同様に水蒸気バリア性能を評価した。
【0320】
【表2】

【0321】
本発明の試料12〜15の中で、特にNイオン密度が最も高い試料13が優れたバリア性能を示した。
【0322】
《試料16の作製》
特開2004−84027号公報に記載の実施例1の試料No.5に相当するSiON膜200nmを大気圧プラズマCVDで作製した。実施例1に記載の水蒸気バリア性能を評価したところ1.0×10−3〔g/m/day〕であった。
【0323】
実施例3
〔有機光電変換素子の作製〕
上記試料1〜16に、それぞれインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし、第1の電極を形成した。パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0324】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
【0325】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
【0326】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
【0327】
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、更に続けて2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmになるように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を作製した。
【0328】
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、ガスバリア性フィルム試料1〜16の2枚を用い、ガスバリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した。上述した方法によって得られた試料1〜16に対応する有機光電変換素子を、上記接着剤を塗布した2枚のガスバリア性フィルム試料1〜16の接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、有機光電変換素子1〜16とした。
【0329】
〔有機光電変換素子耐久性の評価〕
《エネルギー変換効率の評価》
上記作製した光電変換素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
【0330】
(式1)PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
初期電池特性としての変換効率を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した加速試験後の変換効率残存率により評価した。
【0331】
加速試験後の変換効率/初期変換効率の比
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満。
【0332】
それぞれの評価結果を表3に示す。
【0333】
【表3】

【0334】
表3から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルムは水蒸気透過率も低く、更に本発明のガスバリア性フィルムを用いて作製した有機光電変換素子は、過酷な環境下での性能劣化が発生し難い。
【符号の説明】
【0335】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 透明電極
13 対極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面にポリシラザン膜を塗布し、プラズマ処理を施してガスバリア層を形成するガスバリア性フィルムの製造方法において、該プラズマ処理前に該ポリシラザン膜の塗布時の溶媒を取り除く第一工程と、それに続き水分を除去する第二工程とを含むことを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第二工程後の前記ポリシラザン膜の含水率が0.1%以下になることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理が大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記大気圧プラズマ処理が窒素2周波放電であることを特徴とする請求項3に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記大気圧プラズマ処理における時間平均密度が8.0×1016〔m−3〕以上のNイオンを含有するプラズマ処理であることを特徴とする請求項3または4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法によって形成されるガスバリア性フィルムを有することを特徴とする有機光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−36779(P2011−36779A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185598(P2009−185598)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】