説明

ガスバリア性膜、ガスバリア性積層体及びその製造方法

【課題】
高温での熱処理を必要とせず、しかも、ガスバリア性(耐酸素バリア性)と帯電防止性をもったガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、50モル%を超える割合の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩に50モル%未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を含む共重合体からなることを特徴とするガスバリア性膜である。基材層の少なくとも片面にかかるガスバリア性膜を形成してなるガスバリア性積層体及び基材層の少なくとも片面に、50モル%を超える割合の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と50モル%未満の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との混合物の溶液を塗布した後、該金属塩混合物を重合することにより不飽和カルボン酸化合物金属塩の共重合体層を形成させることを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し、ガスバリア性、特に高湿度下での酸素ガスバリア性に優れた包装材料に好適なガスバリア性膜、ガスバリア性積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、アルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられているが、包装材料を透視して内容物を確認することができない等の問題ある。そのため近年では、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。そして、かかる透明ガスバリア性フィルムは、一般には透明性、剛性に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであるので、そのままでは蒸着層が使用時の摩擦等に弱く、包装用フィルムとして使用する場合、後加工の印刷やラミネート時、又、内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機酸化物にクラックが入りガスバリア性が低下することがあり、無機酸化物蒸着だけでは十分なガスバリア性が得られないといった問題がある。
かかる欠点を改良する方法として、ガスバリア性を有するポリビニルアルコールを金属酸化物薄膜上に積層する方法(例えば、特許文献1)、無機化合物からなる蒸着層面に水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布した積層フィルム(特許文献2)、特定のオルガノシラン、シリル基含有フッ素系重合体及びオルガノポリシロキサンからなるコーティング組成物を塗布してなる積層フィルム(特許文献3)、あるいはポリビニルアルコール系樹脂と金属アルコレート類からなるコーティング剤を塗布してなるガスバリアコーティングフィルム(特許文献4)等が提案されている。しかしながら、ポリビニルアルコールを積層してなるガスバリア性フィルムは、高湿度下でのガスバリア性が低下する場合あり、エチレン・ビニルアルコール共重合体とポリ(メタ)アクリル酸との組成物では、高湿度下でのガスバリア性を持たせるために、180〜200℃で5分間と高温での処理を必要とする。
【0003】
【特許文献1】特開平6−316025号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第2790054号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2000−63752号公報(請求項7、請求項11)
【特許文献4】特開2002−173631号公報(請求項1、請求項11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、高温での熱処理を必要とせず、しかも、酸素バリア性が高く帯電防止性を有するガスバリア性膜及びガスバリア積層体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、50モル%を超える割合の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩共重合体が形成されてなることを特徴とするガスバリア性膜、及び基材層の少なくとも片面にかかるガスバリア性膜が積層されてなるガスバリア性積層体を提供するものである。
【0006】
本発明は、基材層の少なくとも片面に、50モル%を超える割合の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と50モル%未満の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との混合物の溶液、好ましくは水溶液を塗布した後、該金属塩混合物を、好ましくは水分の存在下に重合することにより不飽和カルボン酸化合物金属塩の共重合体層を形成させることを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の50モル%を超える割合の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩共重合体からなるガスバリア性膜が基材層に積層されてなるガスバリア性積層体は、遊離のカルボン酸が少ないので、高湿度下でのガスバリア性に優れている。
本発明のガスバリア性積層体の製造方法は、50モル%を超える割合の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と50モル%未満の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との混合物(不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との合計量が100モル%)の水溶液を用いることにより、該金属塩混合物が重合時に適度に水分を保持することができるので、基材層の形状がフィルム状に限らず、あらゆる形状の基材に塗布することが容易であり、しかも、中和度が高い、即ち、ガスバリア性に優れる不飽和カルボン酸多価金属化合物共重合体からなる膜を容易に製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
不飽和カルボン酸化合物
本発明のガスバリア性膜である50モル%を超える割合の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩共重合体(以下、「共重合体」と略称する場合がある。)を形成する成分である不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β―エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)を用いた場合は、後述の多価金属化合物及び/又は一価金属化合物との塩が完全には形成されない虞があり、その結果、当該金属塩を共重合して得られる層は高湿度下でのガスバリア性が劣る虞がある。これら不飽和カルボン酸化合物は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が一価金属化合物及び多価金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、当該塩を共重合して得られる共重合体層を基材層の少なくとも片面に積層してなるガスバリア性積層体は高湿度下でのガスバリア性に特に優れるので好ましい。
【0009】
多価金属化合物
本発明に係わる共重合体を形成する成分の一つである多価金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら多価金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら多価金属化合物の中でもMg、Ca、Zn、BaおよびAlが好ましく、中でも、特にZnが好ましい。
【0010】
一価金属化合物
本発明に係わる共重合体を形成する成分の一つである一価金属化合物は、周期表の1A族、即ち、アルカリ金属及びその金属化合物であり、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の一価金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等であり、具体的には酸化ナトリウム、酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。これら一価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸化合物多価金属塩と共重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら一価金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら多価金属化合物の中でもNa(ナトリウム)およびK(カリウム)が好ましい。
【0011】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩
本発明に係る共重合体の基となる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記多価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。かかる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の中でも、特に(メタ)アクリル酸亜鉛が得られる共重合体層の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0012】
不飽和カルボン酸化合物一価金属塩
本発明に係る不飽和カルボン酸化合物金属塩共重合体の基となる不飽和カルボン酸化合物一価金属塩は、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記一価金属化合物との塩である。これら不飽和カルボン酸化合物一価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。
かかる不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を用いた場合、得られる共重合体層の帯電防止性に優れるという特徴がある。また、一価金属塩の添加量が多いほど帯電防止性は向上する。
【0013】
ガスバリア性膜(共重合体)
本発明のガスバリア性膜は、50モル%を超える割合、好ましくは50モル%を超えてから99.999モル%まで、より好ましくは50モル%を超えてから90モル%まで、さらに好ましくは50モル%を超えて80モル%までの範囲の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と50モル%未満、好ましくは0.001ないし50モル%未満、より好ましくは10ないし50モル%未満、さらに好ましくは20ないし50モル%未満の前記不飽和カルボン酸化合物多金属塩との共重合体(不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との合計量が100モル%)である。
本発明のガスバリア性膜(共重合体)は、好ましくは、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満、より好ましくは0.20未満の範囲にある不飽和カルボン酸化合物多価金属塩と不飽和カルボン酸化合物一価金属塩との共重合体からなる。
また、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を共重合した場合は、得られるガスバリア性膜の表面固有抵抗値が低くなり、帯電防止性に優れたガスバリア性膜が得られると言う特徴があり、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩の添加量が多いほど帯電防止性が優れる。
本発明の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と多価金属塩との共重合体からなるガスバリア性膜は、カルボン酸基と多価金属及び一価金属とがそれぞれイオン架橋してなるカルボキシレートイオンと遊離のカルボン酸基が存在し、夫々、赤外線スペクトルで、遊離のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸収が1700cm−1付近にあり、カルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸収が1520cm−1付近にある。
本発明に係る共重合体において、(A/A)が0.25未満であるということは、遊離のカルボン酸基が存在しないか、少ないことを示しており、0.25を越える層は、遊離のカルボン酸基の含有量が多く、高湿度下での耐ガスバリア性が改良されない虞があるので、(A/A)が0.25未満であることが好ましい。
本発明における1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと赤外線吸収スペクトルにおける1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)は、ガスバリア性積層フィルムから1cm×3cmの測定用サンプルを切り出し、その表面(不飽和カルボン酸化合物金属塩共重合体層)の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)によって得、以下の手順で、先ず、吸光度A及び吸光度Aを求めた。
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1660cm−1と1760cm−1の吸光度とを直線(N)で結び、1660〜1760cm−1間の最大吸光度(1700cm−1付近)から垂直に直線(O)を下ろし、当該直線(O)と直線(N)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。
1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1480cm−1と1630cm−1の吸光度とを直線(L)で結び、1480〜1630cm−1間の最大吸光度(1520cm−1付近)から垂直に直線(M)を下ろし、当該直線(M)と直線(L)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。尚、最大吸光度(1520cm−1付近)は、対イオンの金属種によりピーク位置が変化することがあり、例えば、カルシウムでは1520cm−1付近、亜鉛では1520cm−1付近、マグネシウムでは1540cm−1付近及びナトリウム(Na)では1540cm−1付近である。
次いで、上記方法で求めた吸光度A及び吸光度Aから比(A/A)を求めた。
なお、本発明のおける赤外線スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、日本分光社製FT−IR350装置を用い、KRS−5(Thallium Bromide−Iodide)結晶を装着して、入射角45度、室温、分解能4cm−1、積算回数150回の条件で行った。
【0014】
本発明のガスバリア性膜の厚さは種々用途により決め得るが、通常は、0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にある。
【0015】
本発明のガスバリア性膜は、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、1,4−ブタンジオール・ジアクリレート、ジエチレングリコール・ジアクリレート、テトラエチレングリコール・ジアクリレート、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ヘキサンジオール・ジアクリレート、トリプロピレングリコール・ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などの不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物が共重合されていてもよい。
また、本発明のガスバリア性膜は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤が含まれていてもよいし、後述の基材との濡れ性、密着性等を改良するために、各種界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0016】
ガスバリア性積層体
本発明のガスバリア性積層体は、基材層の少なくとも片面に前記、50モル%を超える割合、好ましくは50モル%を超えてから99.999モル%まで、より好ましくは50モル%を超えてから90モル%まで、さらに好ましくは50モル%を超えて80モル%までの範囲の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩との共重合体層からなるガスバリア性膜が形成されてなる。
本発明のガスバリア性積層体は、後述の基材層の形状により、また用途に応じ、積層フィルム、中空容器、トレー等の種々公知の形状を有する積層体とすることができる。
本発明のガスバリア性積層体の厚さは用途の応じて種々決定され得るが、通常は、基材層の厚さが5〜500μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは9〜30μm、不飽和カルボン酸化合物多金属塩の共重合体層の厚さが0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜10μm、ガスバリア性積層体の全体の厚さが20〜750μm、より好ましくは25〜430μmの範囲にある。
【0017】
基材層
本発明のガスバリア性積層体を形成する基材層は、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂からなるシートまたはフィルム、トレー、中空体等の形状を有するもの、紙、アルミニウム箔等からなる。
熱硬化性樹脂としては、種々公知の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等を例示することができる。
熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。
また、基材層の表面に、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはその酸化物等が蒸着されていてもよい。
また、これら基材層は、ガスバリア性膜との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
本発明のガスバリア性積層体は、種々用途に応じ、ガスバリア性膜の表面に更に基材層に用いる各種フィルムを積層してもよいし、アルミニウム、亜鉛若しくはシリカ等の無機化合物あるいはその酸化物等が蒸着されていてもよい。
【0018】
ガスバリア性積層フィルムの製造方法
本発明のガスバリア性積層体の製造方法は、前記基材層の少なくとも片面に、50モル%を超える割合、好ましくは50を超え99.999モル%まで、より好ましくは50を超え90モル%、さらに好ましくは50を超え80モル%までの範囲の前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と50モル%未満、好ましくは0.001〜50モル%未満、より好ましくは10〜50モル%未満、さらに好ましくは20〜50モル%未満の前記不飽和カルボン酸化合物多金属塩との混合物(不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との合計量が100モル%)を重合することにより不飽和カルボン酸化合物金属塩の共重合体の層(ガスバリア性膜)を形成させることを特徴とする。
基材層の少なくとも片面に、ガスバリア性膜を形成させる方法としては、例えば、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩が50モル%を超え、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩が50モル%以下となるように水等の溶媒に溶解した後、当該混合物の溶液を塗布する方法、個別に不飽和カルボン酸化合物一価金属塩の溶液及び不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液を作成した後、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩の濃度が50モル%を超えるように混合した溶液を塗布する方法、あるいは重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物若しくはその溶液に前記一価金属化合物と多価金属化合物とを一価金属塩の濃度が50モル%を超えるような比率で添加して不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩とを形成させた溶液を塗布する方法等を例示できるが、かかる方法には限定されず、要は基材層に塗布されるものとして、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物から形成された前記不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を50モル%を超えて含んだ、前記不飽和カルボン酸化合物多価金属塩との混合物が形成されておればよい。
又、基材層の形状により、塗布する方法に限らず、当該混合物の溶液に基材層を浸漬する方法、当該混合物の溶液を基材層表面に噴霧する方法等種々公知の塗工方法を採り得る。
【0019】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と一価金属化合物及び多価金属化合物とを混合した溶液を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物に対して、不飽和カルボン酸一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩が上記の範囲で形成されるように、多価金属化合物と一価金属化合物を添加すれば良いが、一価金属化合物と多価金属化合物との添加量が不飽和カルボン酸に対して少ない場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多い積層体となり、結果として、ガスバリア性が低い積層体となる虞がある。また、一価金属化合物と多価金属化合物の添加量が不飽和カルボン酸化合物のカルボキシル基に対して1化学当量を超える場合は、未反応の金属化合物が存在する事になり、形成される不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩との割合が制御できない虞がある。従って、一価金属化合物と多価金属化合物との添加量は、不飽和カルボン酸のカルボキシル基に対して1化学当量であることが好ましい。
また、不飽和カルボン酸化合物と一価金属化合物及び多価金属化合物とを混合した溶液を用いる場合は、通常、不飽和カルボン酸化合物と一価金属化合物及び多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と多価金属塩が形成されるが、一価金属塩と多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
【0020】
これら方法の中でも、予め、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩及び不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を用いる方法が、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩の添加量を50モル%を超える範囲で任意に調整できるので好ましい。
【0021】
重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩との混合溶液に用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
基材層の少なくとも片面に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩との混合溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、スピンコーター、ディップコーター等種々公知の塗工機を用いて、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩との混合溶液を乾燥、重合させた後の厚みで0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜10μmとなるように、共重合体層の比重に応じて、適宜塗布すればよい。
【0022】
不飽和カルボン酸化合物一価金属塩及び/または不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶解させる際若しくは不飽和カルボン酸化合物と一価金属化合物及び多価金属化合物とを溶解させる際には、前述した如く、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、1,4−ブタンジオール・ジアクリレート、ジエチレングリコール・ジアクリレート、テトラエチレングリコール・ジアクリレート、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ヘキサンジオール・ジアクリレート、トリプロピレングリコール・ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などの不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等を添加してもよい。
また、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩及び/または不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶解させる際若しくは不飽和カルボン酸化合物と一価金属化合物及び多価金属化合物とを溶解させる際には、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0023】
基材層の少なくとも片面に形成した(塗布した)50モル%を超える不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と50モル%以下の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩とを含む溶液(塗布層)を重合させるには、種々公知の方法、具体的には例えば、電離放射線の照射また加熱等による方法が挙げられる。
電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
電離放射線として可視光線および紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩の混合溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。さらに、重合度または重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩とを重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態で重合させてもよいし、一部乾燥させた後に重合させてもよいが、溶液を塗布後直ぐに重合させた場合は、金属塩が重合する際に溶媒の蒸発が多いためか、得られる共重合体層が白化する場合がある。一方、溶媒(水分)が少なくなるとともに、不飽和カルボン酸化合物金属塩が結晶として析出する場合があり、かかる状態で重合を行うと得られる共重合体層の形成が不十分になり、共重合体層が白化を起こしたりしてガスバリア性が安定しない虞がある。したがって、塗布した不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させる際には、適度な水分を含んだ状態で重合することが好ましい。
本発明においては、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩に50モル%を超える不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含ませることにより、理由は定かではないが、混合溶液から金属塩が析出する時間が伸び、結果として、塗布した混合溶液が適度な水分を含んだ状態を長くすることができるので、安定して不飽和カルボン酸化合物一価金属塩と多価金属塩とを重合させることができる。一方、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を添加しない場合は、塗布した不飽和カルボン酸化合物多価金属塩溶液を重合させる際に溶液中の水分の調整に注意をする必要があるだけで、得られる共重合体層への影響は全くない。
【0025】
本発明のガスバリア性積層体は、積層体が積層フィルムであれば、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層フィルムが得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【0027】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)酸素透過度[ml/(m・day・MPa)]:多層フィルムを、モコン社製 OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度50%R.H.の条件で測定した。
(2)吸光度比(A0/A):上記記載の方法で測定した。
(3)表面固有抵抗:23℃、50%R.H.の恒温恒湿室に24時間多層フィルムを放置させた後、23℃、50%R.H.の条件でデジタル超高抵抗/微少電流計(ADVANTEST R8340A)により共重合体層面の表面固有抵抗値を測定した。
(4)ブロッキング:作成した積層フィルムを数枚重ね23℃35%RHの環境に放置しコート面がポリエステルフィルム面に張り付くかどうか確認した。○はフィルムを剥がすと剥がれる。×は剥がれにくくブロッキングしている。
【0028】
<溶液(X)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸の亜鉛塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、亜鉛成分10重量%))に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)を作製した。
【0029】
<溶液(Y)の作製>
アクリル酸(単量体)(共栄社化学社製)を水で希釈して25%水溶液を作成した。この水溶液中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1化学当量の水酸化ナトリウム(関東化学社製)を添加して、アクリル酸ナトリウム(アクリル酸のナトリウム塩)水溶液を作製した。
次に、作製したアクリル酸ナトリウム水溶液に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物ナトリウム塩溶液(Y)を作製した。
【0030】
<溶液(Z)の作製>
アクリル酸(単量体)(共栄社化学社製)を水で希釈して25%水溶液を作成した。この水溶液中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1化学当量の水酸化カリウム(関東化学社製)を添加して、アクリル酸カリウム(アクリル酸のカリウム塩)水溶液を作製した。
次に、作製したアクリル酸カリウム水溶液に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物カリウム溶液(Z)を作製した。
【0031】
<溶液(W)の作製>
アクリル酸(単量体)(共栄社化学社製)を水で希釈して25%水溶液を作成した。この水溶液中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1化学当量の水酸化リチウム(関東化学社製)を添加して、アクリル酸リチウム(アクリル酸リチウム塩)水溶液を作製した。
次に、作製したアクリル酸カリウム水溶液に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物リチウム溶液(W)を作製した。
【0032】
実施例1
上記の不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)及び不飽和カルボン酸化合物ナトリウム塩溶液(Y)をアクリル酸亜鉛が86モル%、アクリル酸ナトリウムが14モル%含まれるように混合した後、当該混合溶液を厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(商品名;エンブレットPET12、ユニチカ社製)からなる基材フィルムのコロナ処理面に、メイヤーバーでコートし、3.5g/mになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;60℃、時間;30秒の条件で乾燥した。この後速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度190mW/cm、積算光量250mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
その評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1で用いた混合溶液に代え、上記不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)と不飽和カルボン酸化合物ナトリウム塩溶液(Y)をアクリル酸亜鉛が33モル%、アクリル酸ナトリウムが67モル%含まれるように混合した混合溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
実施例1で用いた混合溶液に代え、上記不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)と不飽和カルボン酸化合物カリウム塩溶液(Z)をアクリル酸亜鉛が14モル%、アクリル酸カリウムが86モル%含まれるように混合した混合溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0035】
実施例4
実施例1で用いた混合溶液に代え、上記不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)と不飽和カルボン酸化合物カリウム塩溶液(Y)をアクリル酸亜鉛が33モル%、アクリル酸カリウムが67モル%含まれるように混合した混合溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例5
実施例1で用いた混合溶液に代え、上記不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)と不飽和カルボン酸化合物リチウム塩溶液(W)を用いて、アクリル酸亜鉛が14モル%、アクリル酸リチウムが86モル%含まれるように混合した混合溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0037】
実施例6
実施例1で用いた混合溶液に代え、上記不飽和カルボン酸化合物亜鉛塩溶液(X)と不飽和カルボン酸化合物リチウム塩溶液(W)を用いて、アクリル酸亜鉛が33モル%、アクリル酸リチウムが67モル%含まれるように混合した混合溶液を用いる以外は実施例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0038】
評価結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
上記の不飽和カルボン酸化合物ナトリウム塩溶液(Y)を、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(商品名;エンブレットPET12、ユニチカ社製)からなる基材フィルムのコロナ処理面に、メイヤーバーでコートし、3.5g/mになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;60℃、時間;30秒の条件で乾燥した。この後速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度190mW/cm、積算光量250mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0040】
比較例2
比較例1の溶液に代え、不飽和カルボン酸化合物カリウム塩溶液(Z)を用いた以外は比較例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0041】
比較例3
比較例1の溶液に代え、不飽和カルボン酸化合物リチウム塩溶液(W)を用いた以外は比較例1と同様に行い、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。
評価結果を表1に示す。
【0042】

表1から明らかなように、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を添加した系では(実施例1〜6)、20℃50%RHの酸素バリア性が未添加の系(比較例1〜3)と比べ向上し、耐湿性が向上するためか、フィルムを重ねたときに生ずる、コート膜のブロッキング現象も抑えることができる。また不飽和カルボン酸化合物一価金属塩は表面固有抵抗値が小さいことから、帯電防止性が発現し、バリア性と帯電防止性を兼ね備えたフィルムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の50モル%を超えて不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩共重合体からなるガスバリア性膜及びかかるガスバリア性膜を形成してなる積層体は、高湿度下での耐酸素透過性(ガスバリア性)に優れているので、かかる特徴を活かして、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料、特に粒状、粉体、乾燥物の包装用材料を始め、医療用途、工業用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50モル%を超える割合の不飽和カルボン酸化合物一価金属塩を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩共重合体からなることを特徴とするガスバリア性膜。
【請求項2】
共重合体層が、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満である請求項1記載のガスバリア性膜。
【請求項3】
多価金属が、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Zn(亜鉛)、Ba(バリウム)およびAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のガスバリア性膜。
【請求項4】
一価金属が、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)及びK(カリウム)から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のガスバリア性膜。
【請求項5】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩及び不飽和カルボン酸化合物一価金属塩が、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物から得られる塩である請求項1記載のガスバリア性膜。
【請求項6】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩及び不飽和カルボン酸化合物一価金属塩が、不飽和カルボン酸の単量体若しくは重合度が10以下の重合体から得られる塩である請求項1記載のガスバリア性膜。
【請求項7】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩及び不飽和カルボン酸化合物一価金属塩が、(メタ)アクリル酸から得られる塩である請求項1、請求項5若しくは請求項6の何れか1項に記載のガスバリア性膜。
【請求項8】
基材層の少なくとも片面に、請求項1〜7の何れか1項に記載のガスバリア性膜が形成されてなるガスバリア性積層体。
【請求項9】
ガスバリア性積層体が積層フィルムである請求項8記載のガスバリア性積層体。
【請求項10】
ガスバリア性積層体が中空容器である請求項8記載のガスバリア性積層体。
【請求項11】
基材層の少なくとも片面に、50モル%を超える重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の一価金属塩と50モル%未満の重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との混合物の溶液を塗布した後、該金属塩混合物を重合することにより不飽和カルボン酸化合物金属塩の共重合体層を形成させることを特徴とするガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項12】
不飽和カルボン酸化合物が、不飽和カルボン酸の単量体若しくは重合度が10以下の重合体である請求項11記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項13】
不飽和カルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である請求項11若しくは12記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項14】
重合を電離放射線を照射することにより行うことを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項15】
溶液が水溶液である請求項11〜14の何れか1項に記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項16】
重合を水分の存在下に行うことを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載のガスバリア性積層体の製造方法。
【請求項17】
請求項11〜16の何れか1項に記載の製造方法により得られ得るガスバリア性積層体。

【公開番号】特開2007−131712(P2007−131712A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325418(P2005−325418)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】