説明

ガスバリヤコーティングを最適化する方法

十分な接合強度を付与しながら複合積層材料のガスバリヤ特性を向上させる方法であって、クレー分散物とポリマー溶液又は分散物を含有するガスバリヤコーティング剤を、接着剤を使用して2つの柔軟性プラスチックフィルム間に位置させ、ここで、第一柔軟性ポリマーフィルムにコーティング重量(D)でコーティング剤を塗布し、接着剤を第一フィルムの被覆側の何れか又は双方又は第二ポリマーフィルムに塗布し、第一及び第二フィルムを互いに接着させて、(A/B).(C/D)>200で、A/B>75;C>1.0;及びD<1.5である材料を提供し、ここで、A=コーティング剤なしの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率;B=コーティングありの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率;C=接着剤が十分に硬化した後のN/15mmでの接合強度;D=g/m(乾燥)でのコーティング量である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、特に酸素の透過を遮蔽する能力を有しており、様々な材料、特に酸素への曝露が排除されるか制限される必要がある特に食品及び医薬の包装品を被覆し、ガスバリヤ特性を付与しうるガスバリヤコーティング剤に関する。
【0002】
合成プラスチック材料は、取り扱いや湿気からの保護を必要とする食品や他の材料の包装にずっと使用されてきた。しかしながら、近年、多くの食品や他の影響を受けやすい材料もまた大気の酸素から保護される恩恵を有していることが理解されるようになってきた。非常に様々な多層積層構造がバリヤ特性や包装目的に適した他の性能特性を提供するために開発されている。これらの積層体はプラスチック、金属又はセルロース基材の任意の組み合わせであり得、一又は複数のコーティング又は接着層を含みうる。金属又は無機化合物、例えば酸化ケイ素が付着されて有するポリマーフィルムを含む積層体は、一般に良好なバリヤ特性を与えることが見出されており、広く使用されている。しかしながら、それらは、例えばそれを殺菌し及び/又は料理するために包装材料をレトルトする場合に高温で酸素の侵入を防ぐその能力を全く失う場合がある。更に、これらのタイプの積層体の無機層はかなり脆く、積層体を曲げるときに亀裂が生じるか破損し得、ガスバリヤ特性が失われる。
【0003】
より最近では、分散クレー、特にナノ粒子、及び疎水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)又はエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含有するガスバリヤコーティング剤が例えばUS6599622、EP0590263、JP01313536A2、JP2007−136984、EPO479031又はUS4818782に記載された様に使用されている。これらが表面コーティング剤として使用される場合、この従来技術に記載されているように、問題はない。しかしながら、我々は、多くの目的に対して、コーティングが被覆と基材を有していることが望ましく、ガスバリヤコーティングがこのようにして積層体の二つのフィルムの間に挟まれる場合は、フィルムとコーティング間の接合強度が問題となることを見出した。
【0004】
ポリビニルアルコール(PVA)及び/又はエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を含むガスバリヤコーティング剤は、柔軟なプラスチックフィルム間の良好な接合強度と十分なガスバリヤ特性を共に生じる効果的な形で処方し塗布することが難しいことが分かった。特に比較的高いガス透過性を有するフィルム材料に対して、十分なガスバリヤが達成されることを担保するために、ガスバリヤコーティング剤は比較的多いコーティング量が一般に塗布される。しかしながら、コーティング量の増加は、典型的にはフィルム間接合強度に弊害を生じ、遅いプレス速度を必要とする。
【0005】
WO2009/027648は、ガスバリヤコーティング剤が接着剤を使用して2つの柔軟性プラスチックフィルム間に位置させられる複合体の十分な接合強度を維持するために、クレー分散物とポリマー溶液又は分散物はそれらが塗布される直ぐ前まで別個に維持されることが必要であると記載している。WO2009/098463は、ポリ(エチレンイミン)がポリマー分散物又は溶液に含められると十分な接合強度を達成することができると記載している。
【0006】
コーティング剤が、
X=(A/B)(C/D)>200
で、ここで、
A=コーティング剤なしの積層体の23℃、50%RHでの酸素透過率;
B=コーティング剤ありの積層体の23℃、50%RHでの酸素透過率;
C=接着剤が十分に硬化した後のN/15mmでの接合強度;
D=g/m(乾燥)でのコーティング量
但し、
A/B>75;
C>1.0;及び
D<1.5
であるように塗布されれば、有利なバランス特性をもたらす積層材料を得ることができることが今見出された。
【0007】
コーティング量、バリヤ特性及び接合強度間の相互関係が評価され、ガスバリヤ積層体材料の調製方法が上記基準に合致するように調整されると、最適な特性バランスが達成されることが見出された。
【0008】
一態様によれば、本発明は、2つの柔軟性プラスチックフィルム間に十分な接合強度を付与しながら複合積層材料のガスバリヤ特性を向上させる方法において、クレーとポリマーを含有するガスバリヤコーティング剤を2つの柔軟性プラスチックフィルム間に位置させ、ここで、
a.第一柔軟性ポリマーフィルムに、クレー及びPVA及び/又はEVOHの水性分散液を被覆し;
b.接着コーティング剤を第一フィルムの被覆側の何れかもしくは双方又は第二柔軟ポリマーフィルムに塗布し;
c.第一及び第二フィルムを互いに接着させて、
(A/B).(C/D)>200
である積層材料を提供し、ここで、
A/B>75;
C>1.0;及び
D<1.5
であり、
Aはコーティング剤なしの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率であり;
Bはコーティング剤ありの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率であり;
Cは接着剤が十分に硬化した後の第一及び第二柔軟性プラスチックフィルム間のN/15mmでの接合強度であり;
Dはガスバリヤコーティングのg/m(乾燥)でのコーティング量である
方法を提供する。
【0009】
而して、本発明は、有利には、ガスバリヤ特性を有する積層材料の製造において塗布されるコーティング材料の厚みを最適化する方法を提供する。本発明によれば、十分なバリヤ特性を維持しながら、バリヤコーティング剤の重量及び/又は厚みが有利には最小にされる。更に、被覆された柔軟性フィルムとフィルムを覆う層との間の十分な接合強度が得られる。従って、良好な接合強度をまた付与しながらガスバリヤ特性を有意に向上させる薄いバリヤコーティングを使用して効率的な形で積層材料を調製することができる。
【0010】
更なる態様では、本発明は、本発明の方法に従って調製されるガスバリヤ積層材料を提供する。一実施態様では、本発明は、クレーが分散されたPVA及び/又はEVOHを含有するコーティング層が被覆された第一柔軟性ポリマーフィルムを含有するガスバリヤ積層材料であって、第一柔軟性ポリマーフィルムの被覆側が接着剤の層を介して第二柔軟性ポリマーフィルムに接着され、
(A/B).(C/D)>200
であり、
A/B>75;
C>1.0;及び
D<1.5
であり、ここで、
A=コーティング剤なしの積層体の23℃、50%RHでの酸素透過率;
B=コーティング剤ありの積層体の23℃、50%RHでの酸素透過率;
C=接着剤が十分に硬化した後のN/15mmでの接合強度;
D=g/m(乾燥)でのコーティング量
である材料を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、包装が本発明に係るガスバリヤ材料を含む、酸素に感受性の包装された食品、医薬又は他の材料を提供する。
【0012】
一態様では、本発明は、ガスバリヤフィルムの調製方法であって、PVA及び/又はEVOHの溶液又は分散物をクレーの水性分散物と混合し、ついで、
1.第一柔軟性ポリマーフィルムに得られた混合物を被覆する工程;
2.第一フィルムの被覆側の何れかもしくは双方又は第二柔軟性ポリマーフィルムに接着コーティング剤を塗布する工程;及び
3. 第一及び第二フィルムを互いに接着させ、接着剤の完全な硬化が達成された後の二つのフィルム間の接合強度は少なくとも1.0N/15mm、好ましくは少なくとも1.5N/15mmである工程を実施することを含み、
ここで、
(A/B)(C/D)>200
であり、ここで、
A=コーティング剤なしの積層体の酸素透過率(23℃/50%RH);
B=コーティング剤ありの積層体の酸素透過率;
C=N/15mmでの接合強度;
D=gsm(乾燥)でのコーティング量
但し、
A/B>75
C>1.0
D<1.5
である方法からなる。
【0013】
一態様では、ガスバリヤフィルムの調製方法は、PVA及び/又はEVOHの溶液又は分散物をクレーの水性分散物と混合し、ついで、混合の完了から24時間以内に、得られた混合物で第一柔軟性ポリマーフィルムを被覆する工程aを実施することを含む。有利には、工程aは、混合完了から12時間、例えば6時間、特に2時間以内に実施される。更なる実施態様では、PVA及び/又はEVOHの溶液又は分散物をクレーの水性分散物と混合し、ついで、混合の完了から24時間以内に、工程aからcを実施して積層材料を提供することを含むガスバリヤフィルムの調製方法が提供される。有利には、工程aからcは、混合完了から12時間、例えば6時間、特に2時間以内に実施される。
【0014】
コーティング材料は、有利には、一つのパックがPVA及び/又はEVOHの溶液又は分散物を含み、他方がクレーの水性分散物を含む2パック組成物として顧客に供給される。
【0015】
接着剤が十分に硬化するのにかかる時間は接着剤の種類に応じて変わり、当業者によく知られている。例えば、一般的なイソシアネート系接着剤では室温で10日まで、脂肪族イソシアネート2パックタイプでは50℃で10日までかかる場合がある。
【0016】
接着剤が第二フィルムのみに塗布される場合、工程a及びbは任意の順で実施されうる。
工程cは、何れにしても、工程a及びbの後に実施される。それが水性媒体中で溶液又は分散物を形成可能であるならば、本発明において使用されるPVA又はEVOHの種類に特に制限はない。そのようなポリマーは、金属ケイ酸塩中の塩基と水素結合を形成しうる高い割合の遊離のヒドロキシ基を有しており、よって、ケイ酸塩に対する分散剤となる。そのようなポリマーの例は、その開示を出典明示によりここに援用する例えばUS6599622又はEP00590263B1に記載されている。
【0017】
使用されるクレーは好ましくはナノ粒子である。ナノ粒子クレーは、ナノメートル範囲の、つまり100nm未満の少なくとも一の寸法を有する粒子のクレーである。典型的には、ナノ粒子クレー粒子は、100nm未満の最大寸法、例えば50nm未満の最大寸法、例えば20nm未満の最大寸法を有している。また好ましくは、クレー鉱物の一部は分散プロセス中にインターカレートされ又は剥離されている。水性媒体中で十分に分散性であり、分散中にインターカレートされ又は剥離され得るならば、本発明において使用されるクレーのタイプには制限はない。剥離形態では、クレーのアスペクト比(つまり、単一のクレー「シート」の長さと厚みの比)は 達成される酸素バリヤのレベルに影響がある。アスペクト比が大きくなればなる程、乾燥コーティング及び積層体を通る酸素の拡散速度がより多く減少する。20から10000のアスペクト比を持つクレー鉱物が好ましくは使用される。特に好ましいものは、100を越えるアスペクト比を有する鉱物である。適切なクレーの例は、カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、カオリン、マイカ、珪藻土及びフラー土、焼成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸マグネシウムを含む。適切な材料の市販の例は、Cloisite Na+(Southern Clayから入手可能)、Bentone ND(Elementisから入手可能)である。これらのなかで、モンモリロナイトクレーが好ましく、ナノ粒子クレーが最も好ましい。
【0018】
コーティング組成物は適切な溶媒中のクレー及びポリマーの溶液又は分散物の形態で塗布される。溶媒は好ましくは水性であり、より好ましくは水で、場合によっては少量の混和性共溶媒、例えばアルコール(例えばエタノール、n−プロパノール又はイソプロパノール)又はケトン(例えばアセトン)を含む。共溶媒が存在する場合、これは全組成物の75%(w/w)まででありうる。しかしながら、共溶媒の含有量は50%未満、より好ましくは全組成物の50%未満が好ましい。好ましい共溶媒はアルコール、好ましくはn−プロパノール、エタノール又はイソプロパノールである。
【0019】
所望ならば、PVA及び/又はEVOHに加えて、他のポリマー又は樹脂を、これらの共樹脂自体が最終組成物において適合性があるならば、コーティング組成物中に含めてもよい。そのようなポリマー及び樹脂の例は、溶液アクリル、アクリルエマルジョン、ポリエステル、アルキド、スルホポリエステル、ポリウレタン、酢酸ビニルエマルジョン、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリアミド、多糖類、タンパク質、エポキシ等を含む。これらの組成物中にゾル−ゲル前駆体、例えばオルトケイ酸テトラエチルの加水分解物を含めることもまた可能である。
【0020】
一実施態様では、第一柔軟性ポリマーフィルムに(1)クレー、(2)PVA及び/又はEVOH、及び(3)ポリ(エチレンイミン)の水性分散物が被覆される。コーティング材料は有利には単一組成物として顧客に供給される。
【0021】
コーティング組成物の全固形物量は好ましくは0.5から15%;より好ましくは2から8%(w/w)であり、これはコーティングのゲル化の時期尚早発生を遅延させ又は防止するために比較的低く、弱い静電帯電によって所定位置に保持される構造の構築を生じる。
【0022】
一実施態様では、コーティング剤は、第一の部分が分散クレーを含み、第二の部分がPVA及び/又はEVOH及び場合によっては他の可溶性及び分散性樹脂の水溶液の2パックとして顧客に供給されるものである。
【0023】
コーティング組成物中のポリマー量(PVA及び/又はEVOH及び任意のポリマー及び樹脂の全体)は典型的にはポリマー及びクレーを含む全固形物の40から95%、例えば50から90%である。換言すれば、ポリマーに対するクレーの比は、典型的には約1.5:1から約1:19、例えば約1:1から約1:9である。有利には、コーティング組成物中のクレーの量は、ポリマー及びクレーを含む全固形物の20から45%、特に35から45%である。換言すれば、ポリマーに対するクレーの比は、有利には約1:5から約5:9、特に約5:7から約5:9である。溶液中のクレー及びポリマーの濃度は、その溶解性/分散性及びコーティングが塗布される方法(グラビア、フレキソ、カーテンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレー等)、基材を十分に被覆するのに十分な流動性を達成するのに必要な好ましくは最小である溶媒の量に依存する。一般には、クレーは、(PVOH/EVOH含有成分家のその添加前で)水又は水+共溶媒中の1.0−15重量%の溶液/分散物の形態で使用され、これが残りの成分の含有量に影響する。
【0024】
クレー、ポリマー溶液又は分散物及び溶媒を含有する本発明のコーティング組成物は、従って任意の一般的な手段によって基材に塗布されうる。ついで、溶媒は、例えば加熱することによって除去され得、基材上にポリマーを通じて分散したクレーを含むフィルムを残す。ついで、得られたガスバリヤフィルムが更なる柔軟性ポリマープラスチックシートに接着される。
【0025】
本発明のコーティングの厚みは、連続の密着したコーティング層を形成するクレーの能力に部分的に依存する。しかしながら、一般には、コーティングは50nmから3000nm厚、例えば200から2000nm厚でなければならない。本発明の方法は、有利には不必要に厚いコーティングを塗布することなく十分なガスバリヤ特性をもたらす最適な厚みでコーティング剤を塗布することを可能にする。
【0026】
コーティング剤は、1.5g/m2(乾燥)、特に1.2g/m(乾燥)、例えば1.0g/m乾燥未満の湿潤フィルム重量で塗布される。本発明の方法は最適なフィルム重量が塗布されることを有利には可能にする。フィルム重量は、PVA(約1.3)及びクレー(モンモリロナイトでは約2.5)の密度差のため、フィルム厚よりもより有用な指標でありうる。
【0027】
好ましくはプラスチックフィルムであるが、柔軟性基材の種類に特に制限はなく、意図された用途に適した任意の材料を用いることができる。しかしながら、本発明のコーティングフィルムで包装される物が食品又は医薬である場合、プラスチックフィルム又は他の基材が食品グレードであることが通常は好ましい。適切な材料の例は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレン;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンナフテネート;ポリアミド、例えばナイロン−6又はナイロン−66;及び他のポリマー、例えばポリ塩化ビニル、ポリイミド、アクリルポリマー、ポリスチレン、セルロース、又はポリ塩化ビニリデンを含む。これらのポリマーを製造するのに使用される任意の適合性のある二以上の単量体の共重合体を使用することがまた可能である。更に、本発明の組成物を、紙基材(例えば食品包装で一般的に遭遇するポリエステル及びポリオレフィン被覆板紙)を含む接着剤により形成された積層体に含めることができる。我々は特にポリエステルを好む。
【0028】
本発明は、比較的乏しい固有の酸素バリヤ特性を有する柔軟性プラスチックフィルム基材での使用に特に適していることが見出された。一実施態様では、コーティング剤なしの積層材料のOTRは、23℃、50%RHで少なくとも50cm/m/日、特に23℃、50%RHで少なくとも80cm/m/日である。一実施態様では、コーティング剤なしの積層材料のOTRは、23℃、50%RHで少なくとも1000cm/m/日である。
【0029】
基材は好ましくは本発明の組成物で被覆される直前にコロナ放電によって処理される。この方法は当該技術分野でよく知られており、例えばDonatas Satasが編集し、1986年にVan Nostrand Reinhold社が刊行した「Plastics Finishing and Decorationin」の80−86頁に記載されている。以下の実施例では、コロナ放電処理では、我々は50Dynes/cmより大きい表面エネルギーを達成した。
【0030】
2つの柔軟性ポリマーフィルムは互いに同じであり得、又はそれらは互いに異なっていてもよい。
【0031】
使用される接着剤の種類に特に制限はなく、二以上のプラスチックフィルムの接着に一般的に使用される任意のせっcなhくざいを本発明において用いることができる。適切な接着剤の例は、溶媒系(ポリウレタン)タイプ、例えばHenkel(Liofol UR3969/UR6055、Liofol UR3640/UR6800、Liofol UR3894 UR6055)、Rohm&Haas(Adcote 811/9L10)及びCoim(CA2525/2526)のもの、無溶媒ポリウレタン接着剤、例えばHenkelのLiofol7780 UR6082、UR7750/UR6071、及びRohm&HaasのMor−Free ELM−415A/Mor−Free CR140をまた使用することができる。またポリウレタン接着剤、エポキシ系タイプ、例えばLamal408−40A/C5083を使用することができる。Waterborne接着剤、例えばAqualam300A/300D、Rohm&Haasのエポキシタイプもまた使用できる。
【0032】
接着剤はフィルムの一つに直接塗布され、ついで他のフィルムのガスバリヤコーティングに接着され得、又はそれは一つのフィルムのガスバリヤコーティングに塗布され、ついで他のフィルムに塗布されうる。何れにせよ、層の順序は、プラスチックフィルム;ガスバリヤコーティング;そして他のプラスチックフィルムである。所望される場合、他の材料の層がこれらの二つの層の間に、又はそれらの間にバリヤコーティングを有する2つの柔軟性プラスチックフィルム基材の何れかの側に介在されうる。
【0033】
成分A/Bは本質的には「バリヤ強化」係数;バリヤコーティングなしとバリヤコーティングありで達成される酸素透過率の比である。この係数は75より大きく、特に100より大きくなければならない。cm3/m2/日の酸素透過率は、当業者に知られた任意の標準的な方法によって23℃、50%相対湿度(RH)で測定される。例えば、適切なASTM規格試験方法は、
・D3985 電量センサーを使用するプラスチックフィルム及びシートを通した酸素ガス透過率の標準試験法;
・F1927 電量検出器を使用するバリヤ材料を通した管理された相対湿度での酸素ガス透過率、透過性及び浸透の定量のための標準試験方法;及び
・F2622 様々なセンサを使用するプラスチックフィルム及びシートを通した酸素ガス透過率の標準試験方法
を含む。
【0034】
一実施態様では、A/Bは少なくとも300、例えば少なくとも400である。
【0035】
バリヤ層のない典型的なPET-PE積層体では、酸素透過率は典型的には約100cm/m/日である。よって、これは、本発明のバリヤコーティング剤を用いると最大酸素透過率が1.33cm/m/日であることを意味する。
【0036】
Cは、第一被覆柔軟性ポリマーフィルムから第二柔軟性ポリマーフィルムを分離するのに必要とされる力であるN/15mmで与えられる接合強度の数値である。接合強度は、T剥離試験において2層の積層体を分離するのに必要とされる力を(15mmの広い帯片が試験されるN/15mmの単位で)記録することにより測定することができる。実施例で使用された分離速度は200mm/分であり、使用された機器は、50Nのロードセルを装備したJJ Lloyd LRX張力計であった。T剥離試験は包装産業で十分に認められた試験法である。Cの最小値は、最終包装に十分な完全性を生じる度合いの積層強度を与えるのに必要な最小であると思われる1.0N/15mmである。
有利には、Cは少なくとも1.2N/15mm、特に少なくとも1.5N/15mmである。
【0037】
乾燥フィルム重量の符号Dは、これらのコーティング剤がグラビア又はフレキソ法の何れかによって塗布されたときに10%(w/w)未満の固形物含有量を一般に有しており、よって、特に厚い乾燥フィルム厚が現実的に到達可能である可能性が低いので、非常に重要であることに留意することが重要である。例えば、10ミクロンフィルム厚で塗布される場合、6%(w/w)固形物の75/25混合物のPVAクレーを有するコーティング剤は、0.61g/mのPVA及びクレーを到達せしめうる(PVA及びクレーの密度;1.26及び2.5g/cmを許容する)。
本発明を次の非限定的実施例によって更に例証する。
【実施例】
【0038】
被覆サンプルの酸素透過率は、23℃、59%相対湿度にてMocon Oxtran2/21ガス透過率テスターで定量した。コーティング剤はNo.2 K−バー(約12ミクロン)で塗布し、温かい空気流で乾燥させた(ラボプリントはヘアードライヤーで乾燥させた)。
実施例で使用したPET(ポリエチレンテレフタレート)基材フィルムはデュポンから得られた新たにコロナ放電処理された12ミクロン厚のMelinex800フィルムであった。
使用したOPP(配向ポリプロピレン)基材フィルムはExxon Mobil Chemicalから得られた25ミクロン厚のMB400フィルムであった。
接着剤で形成された積層体を調製するために実施例で使用されたPEフィルムは、BPIから得られた積層グレードの30μmのLDPEフィルムであった。
【0039】
積層体は、フィルムの処理側にコーティングを塗布することによって調製した;接着剤を乾燥させたコーティングの上面に塗布した後、30μmゲージのポリ(エチレン)フィルムの処理側に積層した。使用した接着剤はHenkel,UR3969/6055によって供給され、製造者の説明書に従って調製し、2.5g/mの最終乾燥フィルム重量を達成するように塗布した。ついで、積層体を25℃で10日間保管し、イソシアネート系接着剤を十分に硬化させた。
【0040】
ついで、積層体を接合強度(N/15mm)及び酸素バリヤ性能(cm/m/24h、23℃及び50%RH)について試験した。接合強度試験中にフィルムが裂ける(FT)場合、これは、接着剤結合がプラスチックフィルムより強く、接合強度が必ず1.5N/15mmより大きく、おそらく3.0N/15mmを越えていることを示している。フィルムが引き裂ける前に最後に測定した接合強度(M)を記録した。
【0041】
コーティング組成物1から15を、4%の固形物含有量を有するクレー分散物と11%の固形物を有するPVA/EVOH溶液を混合することによって調製した。ポリマー溶液は1.65%のMowiol 3−96、9.35%のExceval AQ−4104、及び15%のn−プロパノールを含んでいた。溶液の残りは脱イオン水であった。クレー分散物は4%(w/w)のCloisite Na+及び20%のイソプロパノールを含み;残りは脱イオン水であった。クレーは高剪断ブレンダー(Dispermat CV)を使用して分散させた。
【0042】
コーティング剤は、脱イオン水とイソプロパノールの80/20(w/w)混合物で希釈することにより、グラビア塗布粘度(Zahn−2カップから19/20秒のフロー時間)に調整した。
【0043】
次の表1は、その酸素バリヤ性能、接合強度及び計算されたX値と共にこれらのコーティング剤の詳細を提供する。

【0044】
表1において言及される「Std2−パック」組成物は、商品名「SunBar(商標)O Barrier Coating」(参照番号:30504308及び90108385)の下でSunによって供給されている2パックバリヤコーティング剤である。
【0045】
酸素バリヤ性能に対するクレー濃度の影響をより良く例証するために、コーティング組成物2から10を12g/m(湿潤)で25ミクロン厚のOPPフィルム(MB400)に被覆し、酸素透過率を記録した。結果を表2に示す。

表1及び2に含められた結果を考慮すると、クレーの好ましい濃度(全固形物)は好ましくは20から45%の範囲である。
【0046】
これらのコーティング剤の可能な性能を更に理解するために、被覆PET上の酸素透過率を23℃及び75%RHで測定した。結果を表3に示す。

これらの結果は、高いRHで最適な性能が約35−45%のクレー濃度で達成されることを示している。
【0047】
従って、最大バリヤ及び積層体接合強度の双方の性能に対しては、(特定された成分を有し)ここに記載された手順に従って調製されたコーティング剤では、25−45%(w/w)の範囲のクレーの相対濃度が最適であるようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの柔軟性プラスチックフィルム間に十分な接合強度を付与しながら複合積層材料のガスバリヤ特性を向上させる方法において、クレーとポリマーを含有するガスバリヤコーティング剤を2つの柔軟性プラスチックフィルム間に位置させ、ここで、
a.クレーとPVA及び/又はEVOHの水性分散液を第一柔軟性ポリマーフィルムに被覆し;
b.接着コーティング剤を第一フィルムの被覆側の何れか又は双方又は第二柔軟性ポリマーフィルムに塗布し;
c.第一及び第二フィルムを互いに接着させて、
(A/B).(C/D)>200
である積層材料を提供し、ここで、
A/B>75;
C>1.0;及び
D<1.5
であり、
Aはコーティング剤なしの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率であり;
Bはコーティング剤ありの23℃、50%RHでの積層体に対する酸素透過率であり;
Cは接着剤が十分に硬化した後の第一及び第二柔軟性プラスチックフィルム間のN/15mmでの接合強度であり;
Dはガスバリヤコーティング剤のg/m(乾燥)でのコーティング量である方法。
【請求項2】
2つのフィルム間の接合強度Cが、接着剤が十分に硬化した後に1.5N/15mmより大きい請求項1に記載のガスバリヤ材料を調製する方法。
【請求項3】
クレーの幾らか又は全てが分散中にインターカレートされ又は剥離されている請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
クレーが約20から約10000のアスペクト比を有している請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー量がポリマー及びクレーを含む全固形物の約40から約95%である請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー量がポリマー及びクレーを含む全固形物の約50から約90%である請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー量がポリマー及びクレーを含む全固形物の約20から約45%である請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
コーティング厚が約50nmから約3000nmである請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
コーティング厚が約200nmから約2000nmである請求項6に記載の方法。
【請求項10】
工程aの前にクレーの水性分散液とPVA及び/又はEVOHの溶液又は分散液を混合する工程を具備する請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程aが混合完了から24時間以内に実施される請求項10に記載のガスバリヤ材料の調製方法。
【請求項12】
工程a、b及びcが混合完了から24時間以内に実施される請求項11に記載のガスバリヤ材料の調製方法。
【請求項13】
工程a、b及びcが混合完了から6時間以内に実施される請求項12に記載のガスバリヤ材料の調製方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の方法に従って調製されたガスバリヤ積層材料。
【請求項15】
クレーが分散されたPVA及び/又はEVOHを含有するコーティング層が被覆された第一柔軟性ポリマーフィルムを含有するガスバリヤ積層材料であって、第一柔軟性ポリマーフィルムの被覆側が接着剤の層を介して第二柔軟性ポリマーフィルムに接着されており、
(A/B).(C/D)>200
であり、
A/B>75;
C>1.0;及び
D<1.5
であり、ここで、
A=コーティング剤なしの積層材料の酸素透過率(23℃、50%RH);
B=コーティング剤ありの積層材料の酸素透過率;
C=接着剤が十分に硬化した後の2つの柔軟性ポリマーフィルム間のN/15mmでの接合強度;
D=g/m(乾燥)でのコーティング量
である材料。
【請求項16】
包装が請求項14又は15の何れか一項に記載のガスバリヤ材料を含む、酸素に感受性の包装された食品、医薬又は他の材料。

【公表番号】特表2013−504453(P2013−504453A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528440(P2012−528440)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001658
【国際公開番号】WO2011/033247
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506397202)サン ケミカル ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】