説明

ガスボイル装置と乾燥装置、移送物殺菌装置、ガスボイル方法及び移送物殺菌方法

【課題】本発明は、有用成分を失うことなく多くの量をきわめて短時間にボイル状態にするガスボイル装置と乾燥装置、移送物殺菌装置、ガスボイル方法及び移送物殺菌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のガスボイル装置と乾燥装置、及びガスボイル方法は、加熱ガスに水蒸気を加えて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスとし、物品を移送しながら高湿度高温ガスをその周囲から噴射し、該高湿度高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で物品をボイル状態にすることを特徴とする。また、移送物殺菌装置と移送物殺菌方法は、物品を移送しながら高温ガスをその周囲から噴射し、該高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で物品を殺菌することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送中の小魚類等の物品を旨み成分等の有用成分を失うことなく短時間でボイル状態にするガスボイル装置と、ガスボイル後の物品を乾燥させる乾燥装置、移送中の物品をガス雰囲気下短時間で殺菌する移送物殺菌装置と、旨み成分等の有用成分を失うことなく短時間に物品をボイル状態にするガスボイル方法、及び物品を移送しながらガス雰囲気下短時間で殺菌する移送物殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カタクチ鰯、マイワシ等の小魚、しらす、小海老等(以下、小魚類)を乾燥して、煮干やちりめん雑魚、干し海老等にするため、従来から獲れたばかりの小魚類を大気圧下でボイル(煮沸)し、乾燥させて干物にすることが行われている。60℃を越える熱湯でボイルすると殺菌され、その後の乾燥によって水分量が40%以下になると、細菌類が繁殖せず、腐敗しにくくなるためである。
【0003】
このため、従来の煮立て装置は、長さ20mの熱湯の湯路を作り、その一端から材料となる小魚類を投入し、終端に至る間のおよそ2分前後で茹で上がるように構成されている(特許文献1参照)。煮液は塩水を加熱したものが使用される。煙管の中をボイラの水蒸気を通し、煙管と煮液との間で熱交換して加熱し、塩分濃度の制御を行う。
【0004】
また、従来の乾燥装置としては、無端スパイラルコンベア装置を用い、小魚等を無端周回搬送しつつ乾燥させるものが知られている(特許文献2参照)。この乾燥装置は、軸芯が垂直方向でスパイラル状に設けられたコンベア案内レールと、コンベア案内レールに沿ってスパイラル状に移動する無端スパイラルコンベアと、無端スパイラルコンベアを無端周回するように走行させる駆動装置とからなり、この無端スパイラルコンベア装置のスパイラル内側中心部に熱源等を配置して、小魚等を無端周回搬送しつつ乾燥させるものである。
【0005】
なお、ボイル後乾燥させる物品は小魚類だけに限られない。鰹や鯖等はボイル後に乾燥して鰹節、鯖節等にする。また、ボイルしてそのまま食用に供する食品も多い。例えば、蟹や蛸、海老等の魚介類、ホウレン草等の野菜はボイルしてそのまま食用にする。これらの食品も、煮釜や煮立て装置等を用いてボイルが行われる。
【0006】
そして、以上説明した煮立て装置は小魚等の材料をボイルして雑菌を死滅させるが、ボイルの目的はこれに止まらず、むしろその後の乾燥で干物にすることでこれらの材料の長期保存を可能にし、またこれによって新たに干物としての旨みを得るためのものである。この点で従来からの煮立て装置などによるボイルは前処理としての殺菌を行うものであるが、医療器具等を煮沸するような滅菌のための加熱とは異なる。
【0007】
ところで、従来行われている殺菌はこのような熱湯による殺菌に限られない。例えば、γ線や紫外線、あるいは超音波を照射して殺菌する照射殺菌、薬液やオゾン等の殺菌物質を使う殺菌法、耐熱性芽胞菌等に数百MPaといった超高圧を加えて殺菌する加圧殺菌法などがある。
【0008】
しかし、これらの殺菌方法は、大掛かりで特殊な装置を必要とするものや、隔離した環境で長時間の殺菌を必要とするものばかりであり、科学的な実験や医療のためなどに適したものである。これらの殺菌方法を、海辺のオープンな環境で小魚類等を熱処理し、その後時間をかけて乾燥させる煮立て装置、乾燥装置などに使用することは、きわめて困難である。煮釜や煮立て装置などでは、材料を短時間で処理しなければ色や味を損なうし、また、安価で簡易な構造、場所をとらず、良好な操作性が望まれ、連続運転して大量に処理できなければ実用性がないものである。
【0009】
【特許文献1】特開平2000−175816号公報
【特許文献2】特開平10−157820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のような従来の煮立て装置は熱湯で小魚類等の物品を煮沸するため、物品内部の組織(タンパク質等)にまで伝熱し、且つ熱湯が浸透して熱変性が進み、旨味成分やビタミン等の有用成分は分解したり、熱湯中に抜けてしまう。場合によっては有用成分の3/4近くが抜け出てしまうため、この状態で味わうと水っぽい味となる。その後の乾燥でタンパク質が一部アミノ酸に変化し、これによりあらたな旨み成分が形成され、美味いと感じるようになるが、熱湯中に消失した成分やタンパク質の変性のため、素材本来の味はかなり失われてしまうという問題があった。
【0011】
また、従来の乾燥装置では、ボイル後に急激な乾燥を行うと、小魚類の水分の抜け方にむらができ商品価値がなくなるため、通常8時間以上の長い時間をかけて自然乾燥に近い状態で均一に乾燥させなければならず、このためのコストがきわめて大きくなるという問題があった。そして、特許文献2のような乾燥装置を使うと、重力と乾燥用の風の作用で小魚類が転がって、均一な厚さの小魚類の層を形成せず、乾燥むらができ、設置するのに大きな空間が必要になるものであった。
【0012】
また殺菌に関しては、加熱殺菌装置を使って殺菌する場合、魚介類や野菜、肉その他の食品に含まれる大腸菌等の細菌は60℃〜75℃の煮沸を少なくとも10分〜30分続けることで概ね殺菌が可能である。そして、稀に、魚介類が腸炎ビブリオ菌等に、哺乳類や鳥類がサルモネラ菌等に汚染されるような場合もあるが、この程度の煮沸を行えば加熱殺菌装置で同様に殺菌可能である。しかし、極く稀に含まれることがあるボツリヌス菌、ウェルシュ菌等の芽胞菌は60℃〜75℃の煮沸を10分〜30分続けたのでは死滅しない。少なくとも100℃〜120℃の温度で数十分〜数百分程度は加熱しないと殺菌できないといわれている。
【0013】
さて、加熱殺菌装置で殺菌できるといっても、60℃〜75℃の温度で10分〜30分間加熱するのは、大量の物品を処理するには非効率である。すなわち、静的な所定量の殺菌を繰返すだけで、動的で連続的な処理とはならない。そこで、加熱温度を上げ、加熱時間を短縮すれば処理量が増し効率化できる可能性があるが、上述した従来の煮立て装置の場合、単純に加熱温度を上げると、旨み成分やその他の有用成分が失われ、タンパク質が変性し、食品として色、味、食感等を損ね、使い物にならなくなってしまう。さらにこの加熱殺菌装置を使って、100℃以上の高温で上記時間の数倍〜数十倍以上の時間をかけて徹底して加熱する場合には、食品としての品質は完全に損なわれて本来の目的は達成できないし、長い処理時間が必要で、大量の物品を連続的に処理することはできない。
【0014】
そして、この従来の煮立て装置等の加熱殺菌装置においては、少なくとも本来能力的に、芽胞菌等の殺菌のために大量の物品を100℃〜120℃の温度で数十分〜数百分加熱することは不可能である。このような背景から、物品を移送させることにより、大量の物品を60℃〜100℃、場合によっては100℃〜200℃の温度で長時間、連続的に加熱することができる移送物殺菌装置が望まれる。
【0015】
そこで本発明は、有用成分を失うことなく移送中の多くの物品をきわめて短時間にボイル状態にするガスボイル装置を提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は、本発明は、有用成分を失うことなく移送中の多くの物品をきわめて短時間にボイル状態にした後に乾燥を行うことができる乾燥装置を提供することを目的とする。
【0017】
そして本発明は、ガス雰囲気下で移送中の多くの物品をきわめて短時間に殺菌する移送物殺菌装置を提供することを目的とする。
【0018】
さらに、有用成分を失うことなく移送中の多くの物品をきわめて短時間にボイル状態にするガスボイル方法を提供することを目的とする。
【0019】
そして本発明は、ガス雰囲気下で多くの物品を移送しながらきわめて短時間に殺菌する移送物殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような従来の問題点を解決するため本発明のガスボイル装置は、物品を載置して移送する搬送路と、搬送路の少なくとも一部を囲って内部を高湿度高温のガス雰囲気にする加熱室と、複数のノズルが設けられ該ノズルから加熱室内の搬送路上の物品に向けて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスを噴出する調合部とを備え、物品が、加熱室内を1回または2回以上繰返して通過する間に、高湿度高温ガスによる該物品への衝突噴流と噴射後のガス雰囲気でボイル状態にされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱湯を使わないでボイルするので、旨み成分等の有用成分を熱湯中に溶出させてしまうことがなく、多くの物品をきわめて短時間にボイル状態にすることができる。高湿度高温ガスを使用するので高効率のガスボイル装置にすることができる。物品ごとに最適なボイルをすることができ、ボイル作業を安定した品質できわめて短時間に行うことができる。また、殺菌をする場合には、ガス雰囲気下で多くの物品を移送しながらきわめて短時間に殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施のための第1の形態は、物品を載置して移送する搬送路と、搬送路の少なくとも一部を囲って内部を高湿度高温のガス雰囲気にする加熱室と、複数のノズルが設けられ該ノズルから加熱室内の搬送路上の物品に向けて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスを噴出する調合部とを備え、物品が、加熱室内を1回または2回以上繰返して通過する間に、高湿度高温ガスによる該物品への衝突噴流と噴射後のガス雰囲気でボイル状態にされるガスボイル装置であり、熱湯を使わないでボイルするので、物品の旨み成分等の有用成分を熱湯中に溶出させてしまうことがなく、多くの移送中の物品をきわめて短時間にボイル状態にすることができる。高湿度高温ガスの衝突噴流を使用するので高効率のガスボイル装置にすることができる。小魚類等の物品の表面に余分な湿分が残らず、ふやけた状態となることがない。その後の乾燥も50%近く早く乾燥させることができる。なお、ここでボイル状態とは、後で詳述するが、熱湯で煮沸するのと同等の加熱状態を高湿度高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で実現するものである。
【0023】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、高湿度高温ガスが、調合室内で加熱ガスと水蒸気を混合したガスであって、物品ごとにそれぞれ温度80℃〜100℃、相対湿度80%〜100%の範囲に含まれる最適の物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度で調合されるガスボイル装置であり、物品ごとに高湿度高温ガスの衝突噴流を使って最適の物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度でボイル状態とすることができる。また、小魚類等の物品の表面に必要な湿分だけを残すことができるボイルが大気圧下で行え、物品の表面が傷まず、その後の乾燥も50%近く早く乾燥させることができる。
【0024】
本発明の第3の形態は、第1または2の形態において、高湿度高温ガスが、加熱空気と水蒸気を混合した高湿度高温空気であるガスボイル装置であり、空気を使ってボイル状態にするのでガスボイル装置が簡単になる。
【0025】
本発明の第4の形態は、第1〜3のいずれかの形態において、ノズルが、搬送路と交差する複数の方向から高湿度高温ガスを噴出するガスボイル装置であり、高湿度高温ガスの衝突噴流を複数方向から同時に噴射するので衝突した流れは複雑な運動をし、さらに乱れが進んだ流れの中で高効率のガスボイル装置にすることができ、きわめて短時間にボイル状態にすることができる。
【0026】
本発明の第5の形態は、物品を載置して移送する搬送路と、搬送路の少なくとも一部を囲って内部を殺菌対応温度の高温ガス雰囲気にする加熱室と、複数のノズルが設けられ該ノズルから加熱室内の搬送路上の物品に向けて高温ガスを噴出する調合部とを備え、物品が、加熱室内を1回または2回以上繰返して通過する間に、高温ガスによる該物品への衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で殺菌される移送物殺菌装置であり、静止状態の殺菌でなく、ガス雰囲気下で移送中の多くの物品を衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で殺菌でき、きわめて短時間に殺菌することができる。
【0027】
本発明の第6の形態は、第5の形態において、物品がボイル可能な物品の場合に、高温ガスとして殺菌対応温度で殺菌対応湿度の高湿度高温ガスが噴出される移送物殺菌装置であり、魚介類、野菜、肉類等の食品を対象に殺菌するときにガスボイル装置と同様に有用成分が流失することがない。
【0028】
本発明の第7の形態は、第5または6の形態において、ノズルが、搬送路と交差する複数の方向から高温ガスを噴出する移送物殺菌装置であり、静止状態の殺菌でなく、高温ガスの衝突噴流を複数方向から同時に噴射するので衝突した流れは複雑な運動をし、さらに乱れが進んだ流れの中で高効率の移送物殺菌装置にすることができ、きわめて短時間に殺菌することができる。
【0029】
本発明の第8の形態は、物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガス雰囲気で移送される物品をボイル状態にする請求項1〜4のいずれかに記載されたガスボイル装置と、ボイル状態にされた物品を複数の容器に載置して巡回させる乾燥用搬送路と、容器を乾燥用搬送路で搬送する搬送部と、乾燥用搬送路を巡回中の物品に熱風を送るために空気を加熱する加熱部と、搬送路の周囲に熱風を供給する送風部を備え、物品をボイル状態にし、巡回させて熱風で乾燥させる乾燥装置であり、ボイル後の物品を載置した容器は水平を保って垂直平面に沿った巡回を行うため、移送中の大量の物品をむらなく高効率に乾燥でき、装置のコンパクト化と自動化を実現することができる。
【0030】
本発明の第9の形態は、第8の形態において、乾燥用搬送路が、少なくとも、垂直方向に複数段配設した水平搬送路と、隣接する水平搬送路間で容器を移送する段間搬送路と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで容器を上昇させる上昇搬送路とから構成され、搬送部が、上昇搬送路に沿って上昇させた物品を最上段の水平搬送路に沿って搬送するとともに段間搬送路で一段下の水平搬送路に転送し、次段の水平搬送路では逆方向に搬送し、水平搬送部における搬送方向の反転を伴う搬送と段間搬送路での段間の転送とを少なくとも1回以上繰返すことにより最下段の水平搬送路まで搬送し、該最下段の水平搬送路からは上昇搬送路に沿って最上段の水平搬送路まで上昇させる乾燥装置であり、垂直方向に複数段配設した水平搬送路と、段間搬送路、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで容器を上昇させる上昇搬送路を使用するから、装置のコンパクト化と自動化を実現することができる。
【0031】
本発明の第10の形態は、第8の形態において、搬送部が、各水平搬送路で容器の側方に当接して該容器を水平方向に一定距離押し出す押し出し部と、各水平搬送路間で容器を一段下降させるシフト部と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで容器を上昇させるリフト部とから構成され、押し出し部が発生する力が容器を伝達媒体として伝達される乾燥装置であり、押し出し部で1ストロークごとに容器の列を移送するので、1箇所で起きたトラブルが連鎖することがなく、メンテナンスが容易で、簡易に搬送することができる。
【0032】
本発明の第11の形態は、第8の形態において、搬送部が、各水平搬送路で容器をローラ搬送部に載置して一定距離移送するチェーン駆動部と、各水平搬送路端で容器を一段下降させるローラ搬送部と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで容器を上昇させるリフト部とから構成され、チェーン駆動部が発生する力が容器を伝達媒体として伝達される乾燥装置であり、容器を搬送する上でのトラブルが少なく、安定して確実に搬送でき、装置のコンパクト化と自動化を実現することができる。
【0033】
本発明の第12の形態は、加熱ガスに水蒸気を加えて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスとし、物品を移送しながら高湿度高温ガスをその周囲から噴射し、該高湿度高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で物品をボイル状態にするガスボイル方法であり、熱湯を使わないでボイルするので、物品の旨み成分等の有用成分を熱湯中に溶出させてしまうことがなく、移送中の多くの物品をきわめて短時間にボイル状態にすることができる。しかも、高湿度高温ガスの衝突噴流とそのガス雰囲気を利用して、物品ごとに必要最小限のエネルギで、ボイルに必要な最適の温度、湿度にしてボイル状態を実現することができ、ボイル作業を安定した品質できわめて短時間に行うことができる。小魚類等の物品の表面には余分な湿分が残らず、ふやけた状態となることがない。その後の乾燥も50%近く早く乾燥させることができる。
【0034】
本発明の第13の形態は、ガスを加熱して殺菌対応温度の高温ガスとし、物品を移送しながら高温ガスをその周囲から噴射し、該高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で物品を殺菌する移送物殺菌方法であり、静止状態の殺菌でなく、ガス雰囲気下で移送中の多くの物品を衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で殺菌でき、きわめて短時間に殺菌することができる。
【0035】
本発明の第14の形態は、第13の形態において、高温ガスが、加熱ガスに水蒸気を加えた殺菌対応温度度、殺菌対応湿度の高湿度高温ガスである移送物殺菌方法であり、食品等の表面を傷めず、品質をできるだけ低下させずに短時間で殺菌できる。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明の実施例1のガスボイル装置について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例1におけるガスボイル装置の正面概念図、図2は本発明の実施例1におけるガスボイル装置の制御構成図、図3は本発明の実施例1における対象物品のボイル状態の概念図である。
【0037】
まず、本発明の実施例1におけるガスボイル装置について、図面に基づいて説明する。なお、図1,2に示すガスボイル装置は、加熱室内のガスの循環を押し込み式ファンで行う場合の装置を概念的に示したものである。吸引式ファンで行う場合の具体的な構成は後述する。図1,2において、1は温度と湿度を後述する物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度に調整した高湿度高温空気(本発明の実施例1の高湿度高温ガス)を充満させて高湿度高温ガス雰囲気とし、内部を移送する小魚類や野菜、蟹、鰹等の水分を含む対象物品をボイル状態にする加熱室である。物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度については後述する。次に2a,2bは加熱室1に吹き出す高湿度高温空気の温度と湿度を調整するための調合室であり、混合するため供給される加熱空気と水蒸気の割合と温度が制御される。3は物品を載置して移送する無端のコンベア、3aは物品を載置するコンベア3の無端ネット、3bはコンベア3をチェーン等で駆動するためのスプロケット、図2に示す3cはスプロケット3bを回転させるコンベア駆動部である。
【0038】
ここで、本発明のボイル状態という状態について説明する。従来の煮釜や煮立て装置等を使って行う通常のボイル(煮沸)は、大気圧下、小魚類等の有機性の物品を熱湯に漬けて加熱することにより、熱を内部組織(タンパク質等)に伝熱し、併せて、熱湯を内部組織に浸透させて組織を変性させるものである。これに対して、本発明においてボイル状態というのは、図3に示すように高湿度w(絶対湿度、対応する相対湿度はwφ)、温度Tの加熱空気の熱をタンパク質等の内部組織に伝熱させることにより、内部組織を加熱して温度Tiの水分を外部と同様に沸騰若しくはそれに近い状態とし、このとき気化ガスの噴出によって形成される組織内噴出経路等を介して、内部組織内の湿度wi(絶対湿度、対応する相対湿度はwiφ)を内外間の湿度差(w−wi)で調整し、併せて組織表面(表皮等)が外部の熱で変色等起こさないようにガスの湿度によって抑えるものである。すなわち、本発明のボイル状態は、温度Tと湿度wの高湿度高温ガスの衝突噴流とその後に形成される乱流状態のガス雰囲気にすることによって、内部組織内の空隙部分を、熱湯によるボイル時の内部組織内の温度Tb、湿度wb(飽和絶対湿度)と同等の温度Ti、湿度wiの状態にするとともに、組織自体の含水率をこのときの相変化に伴って起こる含水状態とし、ボイル時同様に表面を熱と脱水による変色等から守ることを意味する。本発明の物品ボイル対応温度と物品ボイル対応湿度とは、このボイル状態を実現するときの高湿度高温ガスの温度Tと絶対湿度w(相対湿度wφ)である。なお、温度Tb,Ti、湿度wb,wiは説明のための平均的な表現にすぎない。また、絶対湿度は体積1m中の水蒸気のkgであり、相対湿度は体積1m中に含まれる水蒸気量とその温度における飽和水蒸気量との百分率比(%)である。さらに、絶対湿度として湿り空気における乾燥空気1kgに含まれる水蒸気のkgとするのでもよい。
【0039】
湿度wの高湿度高温ガスの物品ボイル対応温度Tは、本来の熱湯による所望の煮沸で実現される内部組織の温度Tb,湿度wbと、本発明のガスでボイルした場合の温度Ti、湿度wiとが、その温度が上昇して落ち着くまでの所定の温度上昇時間、例えばちりめん雑魚等では10秒〜120秒でほぼ平衡(Tb≒Ti,wb≒wi≒w)するような温度であり、このような高速の熱伝達は、後述するように、近距離で垂直に配置し均一に分布させた多数のノズルから移送中の対象物品に高速の噴射を繰り返し、温度上昇時間、いわば連続的な衝突噴射を行うことにより実現されるものである。コンベア3の無端ネット3aを挟んで、移送方向に対して垂直な平面内で物品と交差する上下左右の各方向から高湿度高温ガスを噴射すれば、衝突した流れはさらに複雑化し熱伝達の時間を短縮できる。なお、鰹や鯖、野菜等はサイズが大きくなるので、それぞれサイズにより長めの時間、例えば1分〜10分でTb≒Ti,wb≒wi≒wの状態となるような物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度を採用すればよい。温度上昇時間は対象物品固有で物品ごとに決定される。なお、ボイル状態の実現に必要な時間が長く、内部組織の温度Tb,湿度wbと、温度Ti、湿度wiとがほぼ平衡状態となるのに時間がかかるような場合、搬送速度との関係もあるが、一旦短い時間で加熱した後にこれを別途設けた巡回路を搬送して入口に戻し、再度必要な加熱を繰返すことで、装置を大型化せずにボイル状態を実現できる。なお、2回以上複数回繰返して加熱する場合には温度低下を伴うことがあるため、この場合の温度上昇時間は長く設定される。
【0040】
なお、一般に調理等で行われる「蒸す」という加熱方法は、大気圧下、加熱温度Tとこれによって必然的に定まる飽和水蒸気の湿度w(T)を使って加熱するものあり、本発明の高湿度高温ガス雰囲気によるボイルとは異なる。すなわち、「蒸す」という加熱方法は、本発明のように内部組織内の温度Tiと湿度wiを独立してそれぞれ無関係に変更可能なものではなく、温度Tを変化させた場合は湿度w(T)は一義的に定まり、自由には調整できないものである。本発明は、ガスの温度と湿度をそれぞれ独立して選択し、それぞれ、所定の物品ボイル対応温度と物品ボイル対応湿度に設定することにより、物品の組織内の温度とその空隙湿度を温度Ti、湿度wiにし、含水状態は保って、表面も湿気によって保護するものである。すなわち、物品の表面に余分な湿分が残った「ふやけた」状態を防ぐことができ、表面を傷ませず、その後の乾燥も迅速に乾燥させることができる。
【0041】
そして、本発明のボイル状態は通常大気圧下で実施されるが、この大気圧というのは正確な数値としての大気圧(例えば0.101MPa)に限られない。例えば、高湿度高温空気を噴出するため加熱室が加圧状態(例えば一例として0.2MPa)となるものまで含んでいる。この0.2MPaのとき飽和温度は120℃である。なお、大気圧、加圧した場合のそれぞれの物品ボイル対応温度と物品ボイル対応湿度の関係を求めておくことにより、加熱室内の圧力を変化させ、所定圧力下での処理を実施することができる。制御等を行うに場合は、物品ボイル対応湿度は相対湿度の方が分り易く、好適である。
【0042】
次に、4a,4bは調合室2a,2bに加熱空気を供給するために空気を吸引するファン、5a,5bはファン4a,4bにそれぞれ設けられ空気を加熱するための熱交換器、6a,6bは調合室2a,2bにそれぞれ設けられた複数のノズル、7a,7bは調合室2a,2b内の高湿度高温空気を攪拌する攪拌装置である。調合室2bはスプロケット3bで囲まれた無端のコンベア3の縦断面内の空間に収容されている。調合室2aには、ノズル6aが無端ネット3aの上面に向けて均等に高湿度高温空気を噴射できるようにコンベア3に平行な平面上に垂直に多数配列される。調合室2bも同様であって、ノズル6bが無端ネット3aの下面に向けて均等に高湿度高温空気を噴射できるようにコンベア3に平行な平面上に垂直に多数配列される。コンベア3で搬送される物品は無端ネット3aの上下から均一に高湿度高温空気が吹き付けられる。
【0043】
熱湯でボイルする場合、物品は周囲の熱湯により比較的均一に加熱されるが、高湿度高温空気によるボイル状態は加熱室1内に高湿度高温ガスの衝突噴流を噴出し乱流状態の高湿度高温ガス雰囲気にする必要がある。ノズル6a,6bからの噴射で加熱室1内に流れが形成され、部分的に温度、湿度のむらを生じる可能性があるが、物品をコンベア3で搬送するため、これらが生じることはない。ただ、移送がなくとも均一なボイル状態を実現できるようにするためには調合室2a,2bにおける高湿度高温空気の温度と湿度の調整、ノズル6a,6bの配列並びに形状、その噴射速度、物品との距離が重要となる。
【0044】
8はボイラであり、熱交換器5a,5bへ高温の水蒸気を送って、ファン4a,4bによって吸引された空気を80℃〜100℃、好適には95℃〜100℃に加熱する。同様に、ボイラ8は湿度調整用の生蒸気を調合室2a,2bに供給する。9はドレン排出路、10は生蒸気を使って物品に予備的に湿度(水分)を付与する生蒸気室である。これにより確実に物品の表面を保護できる。また、11はボイラ8から調合室2a,2bと生蒸気室10に生蒸気を移送する生蒸気配管、12はボイラ8から熱交換器5a,5bへ熱交換用の高温の水蒸気を送る熱交換用蒸気配管である。36は物品を供給する物品供給部、37はボイル後の物品を排出する排出部である。加熱室1内にはコンベア3が設けられ、シールが設けられているが、生蒸気室10が外部への漏れの緩衝帯となって加熱室1内の状態を安定したものにしている。
【0045】
続いて、図1,2に基づいて実施例1のガスボイル装置の制御構成について説明する。図1,2において、13a,13bは調合室2a,2b内の高湿度高温空気の温度を検出する温度センサ、13cは加熱室1内の高湿度高温空気の温度を検出する温度センサ、13dは生蒸気室10内の生水蒸気の温度を検出する温度センサである。また、14a,14bは調合室2a,2b内の高湿度高温空気の湿度を検出する湿度センサであり、14cは加熱室1内の高湿度高温空気の湿度を検出する湿度センサである。14dは生蒸気室10内の生水蒸気の湿度を検出する湿度センサである。そして、15は熱交換器5a,5bへ供給する水蒸気の量を制御する第1水蒸気制御弁、16は生蒸気の量を制御するための第2水蒸気制御弁である。
【0046】
図2において、18は制御部、18aは対象物品ごとに高湿度高温空気を最適な温度に制御するとともに生蒸気室10内の生水蒸気の温度を制御するボイル温度制御部、18bは対象物品ごとに高湿度高温空気を最適な湿度に制御するとともに生蒸気室10内の生水蒸気の湿度を制御するボイル湿度制御部、18cはガスボイル装置のシステムの制御を行うボイルシステム制御部である。また、19はハードウェアの中央演算処理装置(CPU)に読み込んで、制御部18を構成する機能実現手段として機能するためのプログラムを格納する記憶部であり、19aはガスボイル装置のシステムを制御するボイルシステム制御プログラム記憶部、19bは対象物品ごとに高湿度高温空気でボイル状態にするための最適な温度と湿度が記憶されている最適温度−湿度テーブル記憶部である。
【0047】
実施例1のガスボイル装置で物品をボイル状態にするには、まず、ガスボイル装置の制御部18に対して対象物品を特定するための入力を行う。例えば、ボイル対象物のリストを表示し、このリストからボイル対象物名を選択して物品を特定する。制御部18はこの対象物品に対する最適な高湿度高温空気の温度To(物品ボイル対応温度)、例えばTo=95℃と、湿度wo(物品ボイル対応湿度)、例えばwo=2.3kg/m(相対湿度95%)を最適温度−湿度テーブル記憶部19bから読み出し、目標値とする。
【0048】
続いて、ガスボイル装置は、制御部18によってボイラ8の運転を開始し、ファン4a,4b、攪拌装置7a,7bを始動させる。制御部18は、温度センサ13c、湿度センサ14cが目標温度To,目標湿度woを示すまで制御する。このため制御部18は、これらの目標値と、温度センサ13cの測定温度T、湿度センサ14cの測定湿度wとの間の差、ΔT=T−To、Δw=w−woを計算し、ΔT、Δwに対応する各調合室2a,2bの差ΔTa,ΔTb、Δwa,Δwbを計算し、フィードバックする。これに基づいて、第1水蒸気制御弁15、第2水蒸気制御弁16が開閉され、目標温度To,目標湿度woになるまで制御される。
【0049】
目標温度Toは大気圧下で80℃〜100℃、好適にボイル状態にするには95℃〜100℃、できれば98℃〜100℃が望ましく、目標相対湿度は80%〜100%、好適にボイル状態にするには95%〜100%が望ましい。この条件であれば物品の表面が傷まず、小さな有機性の物品であればほとんど良好なボイル状態となる。従来から行われる煮沸によるボイルは、物品を熱湯に漬けて加熱し、熱を内部組織に伝熱するとともに、熱湯を内部組織に浸透させて組織を変性させるものである。しかし、本発明においては、80℃〜100℃、80%〜100%の高湿度高温空気の中に物品を配置し、図3に示すように外部の高湿度高温空気の熱を内部組織に伝熱させて水分を沸騰若しくはそれに近い状態とし、このとき形成される噴出ガスの組織内噴出経路等を通して、組織内部の湿度をガス湿度でバランス調整するとともに組織に旨み成分を含んだ水分を十分残し、表面が熱と脱水で変色等しないようにするものである。従って、大気圧下で外部の相対湿度が80%〜100%、好適には95%〜100%あれば、確実に内部を煮沸したと同等のボイル状態とすることができ、表面を乾燥や焦げ、変色等から守ることができる。そして、このとき、旨み成分等の有用成分は物品から熱湯中に消失することはなく、内部に保持される。
【0050】
さて、加熱室1内が目標温度To,目標湿度woになり、また生蒸気室10内の温度、湿度が所定値になって安定した状態になったら、制御部18はコンベア駆動部3cの駆動を開始する。コンベア3の無端ネット3aに小魚類や野菜、蟹、鰹等の物品を載置すると、これらは生蒸気室10内で予備的に加湿、加熱され、加熱室1内に送り込まれる。加熱室1内はこの物品に最適な温度To,湿度woに調整されており、多数のノズル6a,6bによって上下からこの温度To,湿度woの高湿度高温空気を吹き付けられながら搬送される。コンベア3の平均の搬送速度vは、物品組織の内部をボイル状態にするために空気を吹き付ける加熱室通過1回当りの加熱時間θ1、この加熱雰囲気の状態(最終の通過出口ではボイル状態)を維持する保持時間θ2とから決定される。時間(θ1+θ2)で、加熱室1内のコンベア3の長さLを搬送されるため、平均の搬送速度vはL/(θ1+θ2)にすればよい。物品で異なるが、平均的には(θ1+θ2)は3分〜6分程度であり、L=10mのコンベア3の場合は、v=1.7m/min〜3.3m/min程度で搬送すればよい。また、時間(θ1+θ2)が大きい場合は、搬送速度vを固定してガスボイル装置での搬送回数を増やせばよい。
【0051】
このように実施例1のガスボイル装置は、熱湯を使わないので旨み成分等の有用成分を熱湯中に溶出させてしまうことがなく、コンベアで搬送するだけであるから多くの移送中の物品をきわめて短時間にボイル状態にすることができる。数トンの熱湯を沸騰させた状態でボイルするのはエネルギ効率が低いが、高湿度高温空気を使用するので高効率のガスボイル装置にすることができる。対象物品ごとに最適なボイルをすることができ、従来のように経験的に行っていたボイル作業を計画的且つ迅速に行うことができる。物品の表面に余分な湿分が残った「ふやけた」状態を防ぐことができ、表面を傷ませず、早く乾燥させることができる。
【0052】
以上説明したのは押し込み式ファンを利用し生蒸気室で予備的に湿度調整を行うガスボイル装置であったが、図4に示すように吸引式ファンを用いて生蒸気室を省略した構成とするのがシンプルな構成で好適である。図4は本発明の実施例1における第2の形態のガスボイル装置の要部構成図である。この第2の形態のガスボイル装置は、直接物品を加熱室1内に送ってボイル状態とし、ファン4a,4bで加熱室1内の空気を吸引して調合室2a,2bの加圧を行い循環させる。ファン4a,4bは遠心型ファンで、それぞれ調合室2a上に取り付けられ、ファン4aの吐出口はそのまま直下の調合室2aに接続されるが、ファン4bの吐出口は調合室2a,2bの側面を迂回して調合室2bの下面側に接続される。また、ファン4a,4bの吸込口に設けられた熱交換器5a,5bは螺旋状のフィンを巻きつけたエロフィンヒータであって、エロフィンチューブの中を高温の水蒸気を通して高効率に空気と熱交換して加熱する。
【0053】
図4において、15a,15bは第1水蒸気制御弁15を構成する電磁弁、16a,16bは第2水蒸気制御弁16を構成する電磁弁である。温度センサ13a,13bで検出した温度を基に電磁弁15a,15bを調節して空気の温度を制御する。空気の流量はファン4a,4bの回転数を制御することにより調整する。また、調合室2a,2b内の高温空気の湿度は、湿度センサ14a,14bで検出した湿度を基に電磁弁16a,16bを調節して調整する。生蒸気室で予備的に湿度調整を行わないので、できるだけ物品表面を保護するために加熱室入口側で部分的あるいは全体的少し湿度を上げる構成とするのも好適である。電磁弁16a,16bが実施例1の第2の形態のガスボイル装置における高湿度高温空気の湿度調整器となる。
【0054】
コンベア3の搬送ベルトを無端ネット3aで構成し、図4のC−C断面に示すように、移送方向に垂直な平面内で上下から高湿度高温空気を多数本のノズルから繰り返し噴射する。衝突した流れは複雑で所定の温度上昇時間に高効率の熱伝達が実現できる。コンベア3は搬送する部分の長さを長くなるようにすることで、物品の投入、排出が容易になる。なお、流れが交差する方向は上下の2方向に限られない。また、上述の無端ネット3aに限らず、実施例3,4のようにメッシュ等が設けられた容器をコンベア3で支えて移送するのでもよい。
【0055】
このように実施例1の第2の形態のガスボイル装置は、吸引式ファンを用いて生蒸気室を省略した構成とすることでシンプルな構成にすることができ、移送方向に対して垂直な平面内で物品と交差するように多数のノズルを分布させ、上下から高湿度高温空気を噴射するので連続的に物品表面への噴射を継続することができ、この間の流れは複雑化し、高効率の熱伝達が実現できる。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施例2の移送物殺菌装置について説明する。実施例2の移送物殺菌装置は、移送中の物品をガス雰囲気下短時間で殺菌するものである。実施例1のガスボイル装置は小魚類等の材料をボイルして雑菌を死滅させるものであるが、ボイルの目的は殺菌だけに止まらず、むしろその後の乾燥で干物にして長期保存を可能にし、またこれによって新たに干物の旨みを得るためであり、そしてそのための構成である。これに対し、実施例2の移送物殺菌装置による殺菌は、保存や旨みを得る目的がなく、ガス雰囲気下で多くの物品を移送しながら短時間に殺菌するものであり、この点で実施例1のガスボイル装置によるボイルと異なる殺菌処理である。そして、実施例2の移送物殺菌装置も高湿度高温空気で殺菌するのが好適である。
【0057】
実施例2の移送物殺菌装置の構成は、基本的に実施例1のガスボイル装置と構成が同一であり、詳細な説明は実施例1に譲る。実施例2の移送物殺菌装置においても図1〜図4を参照する。ただし、実施例2の移送物殺菌装置は、図2で説明したボイル温度制御部18a、ボイル湿度制御部18b、ボイルシステム制御部18c、ボイルシステム制御プログラム記憶部19aは、それぞれ、殺菌のための温度制御部18a、殺菌のための湿度制御部18b、殺菌のためのシステム制御部18cと読み替えたものとなり、最適温度−湿度テーブル記憶部19bには、物品と高温ガスの組成ごとに、物品を移送しながら所定の温度上昇時間内に殺菌できる最適なガス温度(以下、殺菌対応温度)が記憶される。さらに、高温ガスとして高湿度高温ガスを用いる場合には、この温度のときの湿度(以下、殺菌対応湿度)も記憶される。
【0058】
この殺菌対応温度は、殺菌のため物品を少なくとも1回以上装置内を移送させ、この間の高温のガス噴射とガス雰囲気によって、所定の温度上昇時間内に物品の温度が高温ガスとほぼ平衡状態になって熱で物品を殺菌するような温度である。また、殺菌対応湿度は、高湿度高温ガスで殺菌する場合に利用するもので、物品内部から気化ガスが噴出するとき、できるだけ組織内に湿度変化を起こさせないようにするためのガスの湿度である。この殺菌対応湿度は、殺菌対応温度が実施例1の物品ボイル対応温度の場合の物品ボイル対応湿度に相当するもので、有用成分の流出と内部の湿度低下を封じ込めることができる。なお、殺菌後の温度低下時に水分を供給するための生蒸気室を設けることもできる。
【0059】
実施例2の移送物殺菌装置は、一般の細菌のほかに芽胞菌や、カビ等の胞子にも対処できるようにするため、通常の殺菌のための温度60℃〜100℃は固より、少なくとも100℃〜160℃、できれば120℃以上を含む100℃〜200℃の温度で数十分〜数時間加熱できるようにしたものである。従って、殺菌のための温度60℃〜200℃で数十分〜数時間加熱を継続できるものである。実施例2の場合、図1において、熱交換器5a,5bは60℃〜200℃の加熱が可能になっており、ファン4a,4bも加熱室1内を0.4MPa〜0.6MPa程度にまで加圧できるファンやブロワ、圧縮機としておくのが好適である。
【0060】
物品ごとに温度と湿度をそれぞれ独立して選択し、100℃を超えたときでも、それぞれ、所定の殺菌対応温度に設定するため、実施例2の移送物殺菌装置では実施例1より高圧で使用可能な構造が採用されている。図1に示す加熱室1は、内部の圧力を維持する必要から加圧可能な加熱室1とされている。対象物を搬送するコンベア3を外気との機密を保つ密封装置が必要であるが、内圧を利用してシール線を遮断するものなど、機密が保てればどのような形態であってもよい。コンベア3全体を加熱室1内に設けるのが最も簡単で好適である。
【0061】
殺菌対象は種類とサイズによって異なるが、例えば食品のちりめん雑魚等の小さなサイズの物品では、一般的な細菌を60℃〜75℃で3分〜5分間移送しながら殺菌すればよい。ちりめん雑魚等では上記60℃〜75℃で少なくとも3分〜5分間の殺菌で十分対処できる。しかし、サイズが大きくなれば加熱時間を延ばし加熱温度を上げて殺菌し、80℃〜100℃、できれば95℃〜100℃で加熱するのが望ましい。高湿度高温空気のボイル状態を利用するときは、湿度80%〜100%、好適には95%〜100%にする。また、耐熱性の菌に対しては、少なくとも100℃〜120℃の温度、場合によっては120℃以上で長時間加熱する。実施例2の移送物殺菌装置は、多数のノズルを均一に分布させ上下から空気を噴射するので、移送させながら長時間連続的に物品表面への衝突噴射を継続することができ、高効率の熱伝達が実現できるため簡単に殺菌できるし、従来存在ない移送しながらの殺菌のため、連続して大量の物品を殺菌できる。また、魚介類、野菜、肉類等を対象に殺菌するときには、実施例1で説明したと同様の理由で表面が傷まないし、有用成分が流失することがない。
【実施例3】
【0062】
続いて本発明の実施例3について、図面に基づいて説明する。図5は本発明の実施例3における乾燥装置の概略正面図、図6(a)は本発明の実施例3における容器および水平搬送路の斜視図、図6(b)は本発明の実施例3における容器および水平搬送路の断面図、図7は本発明の実施例3における搬送部およびシフト部の斜視図、図8は本発明の実施例3における機能ブロック図、図9(a)から図9(i)は本発明の実施例3における搬送動作の動作説明図である。
【0063】
まず、本発明の実施例3における乾燥装置について、図面に基づいて説明する。この乾燥装置は、ボイル状態にした後の物品を収納した容器を無端の搬送路で周回させるが、この搬送路は複数の直線状の経路をいわば折り畳むようにして形成したものである。なお、ここでのボイルというのは、実施例2の移送物殺菌装置で行った場合の小魚類を移送しながらの殺菌を含むものである。
【0064】
図5〜図7において、21はボイル後の物品を収容する容器、22は水平搬送路、23は搬送部、24はシフト部、25はリフト部、27は容器有無センサ、28は乾燥側温度センサ、29は乾燥室、30は加熱部、31は送風部、36は物品供給部、37は排出部、38は実施例1で説明したガスボイル装置である。容器21は、搬送用のパレットや底にメッシュが設けられたセイロなどの、高さが低く(3cm〜15cm程度の高さ)、底面積(縦(50cm〜200cm)×横(50cm〜200cm)程度の大きさ)の大きな乾燥に適した平底の容器であり、小魚類等の物品が内側のメッシュ上に載置され、収容される。ガスボイル装置38の排出部37からボイル後の物品を直接容器21に載置するのでも、一旦タンク等に収容して移すのでもよい。
【0065】
搬送路は、少なくとも、垂直方向に複数段配設した水平搬送路22と、隣接する水平搬送路22間で容器を移送するシフト部24等から構成される段間搬送路と、最下段の水平搬送路22から最上段の水平搬送路22まで容器を上昇させるリフト部25から構成される上昇搬送路とから構成されている。
【0066】
水平搬送路22は、垂直方向に複数段(実施例3では4段)積み重ねられた状態で配列されている。また、各水平搬送路22の左端側方のリフト部25は、容器21を水平搬送路22の最下段の終端から最上段の始端まで上昇させる機能を有する。このリフト部25は、駆動回転部25aと従動回転部25bとに巻回されたベルト25cと、駆動回転部25aを駆動するリフト部駆動モータ25dと、ベルト25cに設けられ容器21を保持する容器保持部25eとで構成される。従って、リフト部駆動モータ25dが駆動することによって容器保持部25eは上下に移動し、容器保持部25eに保持された容器21は、水平搬送路22の最下段から最上段まで横断して搬送される。
【0067】
搬送部23は、水平搬送路22において容器21を上流側から下流側に送り出す機能を有するものであり、実施例3では後で詳述する押し出し部26であって、直近の容器21つを1ストローク押し出し、玉突き状に前方の容器のすべてを1ストローク前進させる。このとき、案内レールでガイドする。押し出し部26は、各水平搬送路の始端(上流側の端部)に設けられる。また、シフト部24は、各水平搬送路22の終端(下流側の端部)に設けられ容器21を1段下の水平搬送路22へシフトさせる機能を有するものであり、詳細は後述する。
【0068】
容器有無センサ27は、容器が送り込まれようとする位置に、既に容器が存在しているか否かといった容器の有無を検出するセンサである。加熱部30は、容器21に収容された物品を加熱して乾燥させるためのものであり、ボイラ8からの高温の水蒸気を使用する熱交換器等で構成される。送風部31は、乾燥室29の内部の空気を循環させるためのものである。
【0069】
乾燥側温度センサ28は、乾燥装置内部の温度を検出する。なお、ガスボイル装置38は、実施例1で説明したものである。排出部37では、手動で物品を容器21に移し変えたり、コンベア3から排出された物品を直接容器21に載せて、図示しないハンドリング機構によってベルト25cに載置したりするのでもよい。
【0070】
図6(a)は本発明の実施例3における容器および水平搬送路の斜視図、図6(b)は本発明の実施例3における容器および水平搬送路の断面図である。容器21は上述のセイロであって、物品を収容する凹部が形成された収容部21aを主体として構成されている。収容部21aは、物品を保持しつつも、上下のノズル6a,6bから高湿度の加熱空気が噴出できる、メッシュ等の通過可能な孔が多数形成された素材で構成されている。収容部21aにはブラケット21dが設けられており、ブラケット21dにはローラ21bが軸部21cを介して回転自在に設けられている。さらに、ローラ21bは水平搬送路22に沿って移動可能となっている。すなわち、ローラ21bが設けられた容器21は、押し出し部26による押し出しにより水平搬送路22に沿って水平方向に移動可能となっている。
【0071】
図7は本発明の実施例3における搬送部およびシフト部の斜視図である。搬送部23としての押し出し部26は、水平搬送路に設けられており、駆動回転部26bと従動回転部26cとに巻回されたベルト26aと、駆動回転部26bを駆動するモータ26dと、ベルト26aに立設され容器21の側方に当接する当接部材26eで構成されている。従って、モータ26dが駆動することによって当接部材26eは左右に移動するようになっており、押し出し部26の当接部材26eが容器21の側方に当接して容器21を水平方向に一定距離(当接部材26eの移動ストローク分)押し出すようになっている。なお、押し出し手段として、突没するロッドを有するシリンダを横向きに配置したものを採用してもよい。この場合、ロッドの先端部が容器21の側方に当接する当接部材に相当することとなる。なお、図5に示すリフト部25のベルト25cは押し出し部26との干渉をさけるような形態となっており、実施例3の場合は、ベルト25cは押し出し部26との干渉を避けるように間を空けて2本配置されている。この2本のベルト25cは相互に同期した状態で回転するようになっている。
【0072】
シフト部24は、段間搬送路に設けられており、シリンダ24bのロッドの先端に容器21を支持する支持部材24aを有している。したがって、シリンダ24bのロッドを没入させることによって、支持部材24aに支持された容器21を一段下の水平搬送路22へシフトすることができるようになっている。また、支持部材24aの中央部は大きく開口しており、前述した当接部材26eとの干渉を回避した形状になっている。さらに、水平搬送路22において、シフト部24が設けられている位置に相当する部分は、上方が開口している。これにより、上方から移送されてくる容器21のローラ21b(図6参照)と水平搬送路22との干渉を回避することができ、容器21が一段下の水平搬送路22へ円滑にシフトできるようになっている。なお、シフト部24はシリンダ24bを使ったものに限られず、様々の形態が考えられる。
【0073】
次に、本発明の実施例3における乾燥装置の制御構成について説明する。実施例3の乾燥装置は、記憶部やCPU等から構成された制御部による制御で物品の乾燥作業を効率良く実現するものである。図8は本発明の実施例3における機能ブロック図である。制御部32は記憶部33に記憶された制御プログラムやデータをCPU等に読み込んで乾燥装置の制御を行い、ソフトウェア的に機能実現手段としての移送機構制御部32a、移送可否判断部32b、および乾燥側温度制御部32c等を構成する。そして、実施例3においては、制御部32に、実施例1で説明したボイル温度制御部18a、ボイル湿度制御部18b、ボイルシステム制御部18cが機能実現手段として搭載される。また、記憶部33には、機構制御プログラム記憶部33a、温度制御プログラム記憶部33b、およびデータ記憶部33c等が設けられるとともに、ガスボイル装置38を制御するためのボイルシステム制御プログラム記憶部19a、最適温度−湿度テーブル記憶部19bが設けられる。
【0074】
移送機構制御部32aは、機構制御プログラム記憶部33aに記憶された機構制御プログラムに基づいて、搬送部23、シフト部24およびリフト部25から構成される移送機構部を制御し、この制御に際し、移送可否判断部32bの情報を用いる。容器が送り込まれようとする位置に、既に容器が存在しているか否かといった容器の有無を検出するセンサである容器有無センサ27から信号を得た移送可否判断部32bは、容器有りの場合は移送不可能と判断し、容器無しの場合は移送可能と判断する。この判断情報に基づいて上流側の搬送部23等の移送機構部を動作させる。
【0075】
このように移送可否判断部32bの判断情報に基づいて移送機構制御部32aが機構部の制御を行うようにすれば、容器が存在する位置にさらに容器を送り込むことによって容器同士が干渉することによる容器21または搬送部23等の破損を回避することができて望ましい。すなわち、水平搬送路22の始端およびまたは終端に容器21の有無を検出する容器有無センサ27を備えることにより、容器同士を無理に干渉させることなく、容器を効率良く搬送することができる。
【0076】
乾燥側温度制御部32cは、温度制御プログラム記憶部33bに記憶された温度制御プログラムに基づいて、加熱部30や送風部31を制御し、この制御に際し望ましくは温度センサ28から得られる情報を用いることにより、乾燥室29内部の温度を高精度に制御する。データ記憶部33cには、容器21の搬送サイクルや容器21に収容された物品の乾燥時間等が記憶される。なお、物品供給部36、排出部37の制御も制御部32によって行われる。
【0077】
続いて、実施例3の乾燥装置の動作について説明する。図9(a)から図9(i)は本発明の実施例3における搬送動作の動作説明図である。この搬送動作は、各搬送路において、始端(容器の搬送の流れにおける上流側の端部)に容器21が存在し且つ終端(下流側の端部)に容器が存在しない場合に、終端に容器を送り込むものである。なお、搬送動作中には、加熱部30と送風部31が制御部32に制御されつつ稼動している。まず、図10(a)の状態では、最上段の上流側の端部(A部)に容器が存在し且つ下流側の端部(B部)に容器が存在しないので、A部の押し出し部26が、B部に容器を送り込む。ここでは、A部の押し出し部26がA部にある容器を押し出し、その容器が隣の容器を押し出し、さらに押し出されたその容器が隣の容器を押し出すことにより、B部に容器を送り込むようになっている。
【0078】
すなわち、水平搬送路22において押し出し部26が発生する力を、容器を伝達媒体として他の容器に玉突き状に伝達するようになっている。この構成によると、押し出し部26によって水平方向への一定距離のストローク(容器一つ分のストローク)押し出し、容器21を順次押し出す動作を繰返させ、一定距離以上離れた位置B部まで容器を送り込むことができる。なお、押し出し部26を採用せずに、搬送部としてベルトコンベア等を採用することもできる。
【0079】
図9(b)以降においても、図9(a)と同様の動作を行う。図9(b)では、リフト部25を駆動して容器21を上昇させることによってA部に容器21を送り込む。図9(c)では、押し出し部26を動作させてC部に容器21を送り込む。図9(d)では、シフト部24を動作させて容器21を下方にシフトすることによってD部に容器21を送り込む。この後、容器21との干渉を回避しつつシフト部24は上方に戻る。具体的には、シフト部24のシリンダ24cのロッド24dを突出させることによって、ロッド24dに連結されたシリンダ24bを介して支持部材24aを水平搬送路22の外へ移動させ、次いでシリンダ24bを突出させ支持部材24aを下方の水平搬送路22より上方に位置させた後、シリンダ24cのロッド24dを没入させる。
【0080】
図9(e)では、押し出し部26を動作させてE部に容器21を送り込む。図9(f)では、シフト部24を動作させて容器21を下方にシフトすることによってF部に容器21を送り込む。この後、水平搬送路22との干渉を回避しつつシフト部24は上方に戻る。図9(g)では、押し出し部26を動作させてG部に容器21を送り込む。図9(h)では、シフト部24を動作させて容器21を下方にシフトすることによってH部に容器21を送り込む。この後、容器21との干渉を回避しつつシフト部24が上方に復帰すると、図9(i)となり、すなわち図9(a)の状態に戻る。これを繰返すことによって容器21に収容された物品を巡回させながら加熱して乾燥させるのである。
【0081】
水平方向に並べる容器21の数量を変更した場合でも、垂直方向に複数段積み重ねる水平搬送路22の段数を変更した場合でも、同様の動作を行うことによって、容器21に収容された物品を巡回させながら加熱して乾燥させる。
【0082】
このように実施例3の乾燥装置は、上昇搬送路に沿って上昇させた物品を最上段の水平搬送路に沿って搬送するとともに段間搬送路で一段下の水平搬送路に転送し、次段の水平搬送路では逆方向に搬送し、水平搬送部での搬送方向の反転を伴う往復の搬送と段間搬送路での段間の転送とを少なくとも1回以上繰返すから、物品を載置した容器は水平を保って垂直平面に沿った巡回を行うため、多量の物品をむらなく高効率に乾燥でき、装置のコンパクト化と自動化を実現することができる。ガスボイル装置で物品をボイル状態にした後、多量の物品をむらなく高効率に乾燥するとともに、垂直平面に沿った巡回によって物品を限られたスペース内で乾燥させることができる。本発明のガスボイル装置を使うので、小魚類等の物品の表面には余分な湿分が残らず、ガスボイル装置から排出する物品がふやけた状態となることがなく、その後の乾燥装置での乾燥も50%近く早く乾燥させることができる。
【実施例4】
【0083】
続いて本発明の実施例4について、図面に基づいて説明する。図10は本発明の実施例4における乾燥装置の動作及び要部説明図、図11(a)は本発明の実施例4における容器および水平搬送路の破砕断面図、図11(b)は(a)の水平搬送路のチェーン駆動部の断面図、図11(c)は(a)の水平搬送路のローラ搬送部の断面図、図12(a)は本発明の実施例4における容器の正面図、図12(b)は(a)の容器の断面図である。
【0084】
本発明の実施例4における乾燥装置は、搬送と乾燥、制御等に関して実施例3の乾燥装置と基本的に同様の構成であり、ボイルした後の物品を複数の直線状の経路をいわば折り畳むようにした搬送路で搬送して乾燥させる。すなわち、実施例4の乾燥装置においても、上述した実施例3の図9(a)から図9(i)までの動作と同様の動作で巡回して乾燥する。乾燥用搬送路のいずれかの水平搬送路の一端に空きスペースを形成し、この空きスペースに向けてその水平搬送路の容器を複数個玉突き状に押し出して搬送し、空きスペースが先端の容器で占められると、シフト部(後述の第2のローラ搬送部)でこの容器の段間(上下)の移動を行う。押し出した容器の列の後端には新たに空きスペースが形成され、見掛け上、空きスペースが端部(先端側)から端部(後端側)へ移動したことで、容器が水平搬送路と段間を容器1個分の距離前進したことになる。このような動作を乾燥用搬送路全体で繰返すことにより、多数の容器を互いに力の伝達媒体として巡回させることができる。
【0085】
なお、実施例3では、全4段の最上段から上側の2段は容器の搬送される搬送幅が右端で容器1個分短くなっているが、実施例4においては全段で搬送幅は等しく、すべて容器5個分の距離となっている。このほか実施例4と実施例3とで異なるのは、搬送が容器の縁部分をローラで支えてローラ搬送部で搬送する点と、搬送部がチェーン駆動であって、このチェーンに設けられた爪と容器に設けられた噛み合い孔との噛み合いで搬送する点である。従って、実施例1,2と実施例4とで重複する説明が多く、これらは実施例1,2の説明に譲って実施例4では省略する。とくに、実施例3の乾燥室29、加熱部30、送風部31、物品供給部36などについては図10では詳細に図示しないが、実施例4においてもこれら構成と同様の構成を備えており、これらについては実施例3の説明を参照するとともに図5を参照する。
【0086】
図10は本発明の実施例3における乾燥装置の概略正面図である。図10において、22は水平搬送路、23は各チェーン駆動部42,42a(後述する)から構成され、水平搬送路22において容器41(後述する)を上流側から下流側に送り出す機能を有する搬送部である。また、24は容器41を段間で降下させるため上下できるシフト部、25はボイルした容器41を乾燥室29に供給し、容器41を巡回するための乾燥用搬送路を構成するリフト部、37は排出部、38は実施例1で説明したガスボイル装置である。そして、41はボイル後の物品を収容する容器であり、高さは3cm〜15cm程度、底は縦(50cm〜200cm)×横(50cm〜200cm)程度の大きさの、搬送方向に対して両側のフランジが幅広のセイロ等である。
【0087】
次に、42,42aは搬送部23を構成するチェーン駆動部である。チェーン駆動部42aは、容器41がリフト部25で上昇させられてきたとき、最上段の右端に空きスペースがある場合、容器41を押し込むものである。なお、図示を容易にするため、図10においてはチェーン駆動部42aが容器41を上側から噛み合うように記載しているが、後述のチェーン駆動部42と同様、チェーン上面で容器41と噛み合っている。しかし、図示どおり上側から噛み合わせるのもよい。
【0088】
続いて、44はチェーン駆動部42aによって押し込まれた容器41のフランジを支えるためのローラを備え、容器41を支持して玉突き状に前進させるローラ搬送部である。44aはローラ搬送部44より短いが同一構成で、隣接する水平搬送路22間で上下し、載置した容器41を下段のチェーン駆動部42aに移送する第2のローラ搬送部である。第2のローラ搬送部44aが、シフト部24の主要部を構成するものである。
【0089】
そこで、チェーン駆動部42,42aとローラ搬送部44,44aについて図11(a)(b)(c)、図12(a)(b)に基づいて説明する。図11(a)(b)(c)において、43はチェーン駆動部42,42aのスプロケットに嵌合して駆動されるチェーン、43aはチェーンから外方に向けて突設された爪である。実施例4のチェーン43の爪43aは後述する容器41の噛み合い孔47と噛み合い、容器41を強制的に前進させる。このとき、容器41は前進するに従って先頭側がローラ搬送部44に支えられ、さらにその前方に存在する他の容器41を玉突き状に前進させ、全体を容器1個分前進させる。
【0090】
45はローラ搬送部44,44aの支持体に設けられ容器41のフランジを支えるローラ、45aはローラ45を支持するローラ支持部である。46はローラ搬送部44,44aの支持体に設けられ容器41の側面を案内する案内ローラ、46aは案内ローラ46を支持する案内ローラ支持部である。ローラ45は中心軸がバネ等で付勢され、容器41が載置されたときの振動を吸収する。同様に案内ローラ46も中心軸が付勢され、容器41を搬送するときのガタツキを吸収する。これにより安定した送りが可能になる。
【0091】
さらに、図11(b)、図12(a)(b)に示す47は、チェーン43の爪43aと噛み合って移送するための容器41のフランジに形成された噛み合い孔である。チェーン43は水平搬送路22の両側(容器41の両側)にそれぞれ設けられるが、片側のチェーン43も図11(b)に示すように平行に配置された一対のチェーンで構成され、この一対2列のチェーンの中間位置から爪43aが外方に向けて突設される。そして、図11(b)に示すチェーン駆動部42の2枚のスプロケットが同期して回転されると、チェーン43は爪43aと噛み合い孔47の噛み合いによって容器41を前進させる。なお、噛み合い孔47は、容器41のフランジにおいて、爪43aが配置された位置及び間隔、爪43aと同一ピッチで形成される。
【0092】
そこで、実施例4の乾燥装置の乾燥処理を行うときの巡回動作について説明する。まず、最上段の右端上部に空きスペースがあるとき、容器41はリフト部25上端位置で、常時駆動されているチェーン駆動部42aに載置され、チェーン43の爪3aと噛み合い孔47とが嵌合し、スプロケットの回転により容器41を押し出す。これにより、玉突き状に前方の容器41をチェーン搬送幅分だけ前進させる。これにより、最上段の水平搬送路22では第2のローラ搬送部44a上の空きスペースに容器41が押し込まれ、第2のローラ搬送部44aに容器41の一部が載置された状態となる。なお、以下説明する容器41の搬送動作中は、加熱部30と送風部31が制御されて稼動している(図5参照)。
【0093】
さて、このとき同時に左端に形成された空きスペースを補うべく、リフト部25内の容器41がそれぞれ1段ずつ持ち上げられる。これにより最下段の水平搬送路22左端(リフト部25最下段位置)に空きスペースが形成される。この空きスペースを埋めるため、さらにチェーン駆動部42によって最下段の容器41がリフト部25側に向けて押し出される。この動作で最下段水平搬送路22の右端に空きスペースが移動する。
【0094】
この状態で、下から2段目の水平搬送路22の右端に位置する容器41が、第2のローラ搬送部44aによって最下段にシフトされる。これにより最下段の空きスペースは2段目の右端に上昇する。この2段目右端の空きスペースを補うべく、チェーン駆動部42が2段目の容器41を右側へ押し出す。これにより、2段目のチェーン駆動部42の位置(左端側)に空きスペースが移動する。
【0095】
この状態で、3段目の左端側の容器41が第2のローラ搬送部44aによって2段目にシフトされる。このため1段上(3段目)の左端側に空きスペースが移動し、3段目のチェーン駆動部42によって3段目の水平搬送路22の容器41が左端側に押し出され、空きスペースは3段目右端に移動する。これにより、最上段の第2のローラ搬送部44aに載置された容器41を3段目にシフトすることが可能になる。
【0096】
この状態になると、上述した最上段の第2のローラ搬送部44aは、容器41の一部を載置した状態のまま1段下方に降下する。容器41の残りの未支持部分が駆動中である3段目のチェーン駆動部42のチェーン43上に載置されると、上向きの爪43aと噛み合い孔47が噛み合い、容器41はリフト部25側へ搬送される。
【0097】
以上説明したように、上述の動作で容器41は乾燥用搬送路を容器1個分搬送される。この後もこのような動作を繰り返し、端部に空きスペースを形成しては、この空きスペースを埋めるべく容器41の列を押し出し、端部では第2のローラ搬送部44aを使って容器41を1段下へシフトさせ、その次の段でも反対側の端部に空きスペースを形成し、容器41の押し出しを行い、空きスペースに押し込まれた容器41を1段下へシフトさせ、これを繰り返し、最下段のリフト部25内の空きスペースが埋められたら、容器41を持ち上げ、以上の動作を繰返すことによって、容器41に収容された物品を巡回させながら加熱して乾燥させることができる。なお、このこれら容器41の制御の詳細は実施例3の説明と同様であり、ここでは省略する。乾燥が終了したときは容器41を排出部37から排出する。
【0098】
このように実施例4の乾燥装置は、搬送が容器のフランジをローラ45で支えてローラ搬送部44で搬送し、第2のローラ搬送部44aで次段へのシフトを行い、チェーン駆動部42,42aによって容器41を駆動し、チェーン43の爪43aと容器41の噛み合い孔47との噛み合いで搬送するため、容器41を搬送上のトラブルがなく、安定して確実に搬送でき、装置のコンパクト化と自動化を実現することができる。案内ローラ46で挟持してガイドするからガタツキを吸収できる。本発明のガスボイル装置を使うので、小魚類等の物品の表面には余分な湿分が残らず、ガスボイル装置から排出する物品がふやけた状態となることがなく、その後の乾燥装置での乾燥も50%近く早く乾燥させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ちりめん雑魚等の小魚類や野菜、蟹、鰹等の対象物品を旨み成分等の有用成分を失うことなく短時間にボイル状態にするガスボイル装置と、乾燥後の対象物品を乾物等に乾燥させる乾燥装置、ガス雰囲気下で移送中の多くの物品をきわめて短時間に殺菌する移送物殺菌装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施例1におけるガスボイル装置の正面概念図
【図2】本発明の実施例1におけるガスボイル装置の制御構成図
【図3】本発明の実施例1における対象物品のボイル状態の概念図
【図4】本発明の実施例1における第2の形態のガスボイル装置の要部構成図
【図5】本発明の実施例3における乾燥装置の概略正面図
【図6】(a)本発明の実施例3における容器および水平搬送路の斜視図、(b)本発明の実施例3における容器および水平搬送路の断面図
【図7】本発明の実施例3における搬送部およびシフト部の斜視図
【図8】本発明の実施例3における機能ブロック図
【図9】(a)〜(i)本発明の実施例3における搬送動作の動作説明図
【図10】本発明の実施例4における乾燥装置の動作及び要部説明図
【図11】(a)本発明の実施例4における容器および水平搬送路の破砕断面図、(b)(a)の水平搬送路のチェーン駆動部の断面図、(c)(a)の水平搬送路のローラ搬送部の断面図
【図12】(a)本発明の実施例4における容器の正面図、(b)(a)の容器の断面図
【符号の説明】
【0101】
1 加熱室
2a,2b 調合室
3 コンベア
3a 無端ネット
3b スプロケット
3c コンベア駆動部
4a,4b ファン
5a,5b 熱交換器
6a,6b ノズル
7a,7b 攪拌装置
8 ボイラ
9 ドレン排出路
10 生蒸気室
11 生蒸気配管
12 熱交換用蒸気配管
13a,13b,13c,13d 温度センサ
14a,14b,14c,14d 湿度センサ
15 第1水蒸気制御弁
15a,15b,16a,16b 電磁弁
16 第2水蒸気制御弁
18 制御部
18a ボイル温度制御部
18b ボイル湿度制御部
18c ボイルシステム制御部
19 記憶部
19a ボイルシステム制御プログラム記憶部
19b 最適温度−湿度テーブル
21,41 容器
21a 収容部
21b ローラ
21c 軸部
21d ブラケット
22 水平搬送路
23 搬送部
24 シフト部
24a 支持部材
24b、24c シリンダ
24d ロッド
25 リフト部
25a 駆動回転部
25b 従動回転部
25c ベルト
25d リフト部駆動モータ
25e 容器保持部
26 押し出し部
26a ベルト
26b 駆動回転部
26c 従動回転部
26d モータ
26e 当接部材
27 容器有無センサ
28 温度センサ
29 乾燥室
30 加熱部
31 送風部
32 制御部
32a 移送機構制御部
32b 移送可否判断部
32c 温度制御部
33 記憶部
33a 機構制御プログラム記憶部
33b 温度制御プログラム記憶部
33c データ記憶部
36 物品供給部
37 排出部
38 ガスボイル装置
42,42a チェーン駆動部
43 チェーン
43a 爪
44 ローラ搬送部
44a 第2のローラ搬送部
45 ローラ
45a ローラ支持部
46 案内ローラ
46a 案内ローラ支持部
47 噛み合い孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置して移送する搬送路と、前記搬送路の少なくとも一部を囲って内部を高湿度高温のガス雰囲気にする加熱室と、複数のノズルが設けられ該ノズルから前記加熱室内の前記搬送路上の物品に向けて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスを噴出する調合部とを備え、前記物品が、前記加熱室内を1回または2回以上繰返して通過する間に、前記高湿度高温ガスによる該物品への衝突噴流と噴射後のガス雰囲気でボイル状態にされることを特徴とするガスボイル装置。
【請求項2】
前記高湿度高温ガスが、前記調合室内で加熱ガスと水蒸気を混合したガスであって、前記物品ごとにそれぞれ温度80℃〜100℃、相対湿度80%〜100%の範囲に含まれる最適の物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度で調合されることを特徴とする請求項1記載のガスボイル装置。
【請求項3】
前記高湿度高温ガスが、加熱空気と水蒸気を混合した高湿度高温空気であることを特徴とする請求項1または2記載のガスボイル装置。
【請求項4】
前記ノズルが、前記搬送路と交差する複数の方向から前記高湿度高温ガスを噴出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスボイル装置。
【請求項5】
物品を載置して移送する搬送路と、前記搬送路の少なくとも一部を囲って内部を高温のガス雰囲気にする加熱室と、複数のノズルが設けられ該ノズルから前記加熱室内の前記搬送路上の物品に向けて殺菌対応温度の高温ガスを噴出する調合部とを備え、前記物品が、前記加熱室内を1回または2回以上繰返して通過する間に、前記高温ガスによる該物品への衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で殺菌されることを特徴とする移送物殺菌装置。
【請求項6】
前記物品がボイル可能な物品の場合に、前記高温ガスとして殺菌対応温度で殺菌対応湿度の高湿度高温ガスが噴出されることを特徴とする請求項5記載の移送物殺菌装置。
【請求項7】
前記ノズルが、前記搬送路と交差する複数の方向から前記高温ガスを噴出することを特徴とする請求項5または6記載の移送物殺菌装置。
【請求項8】
物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガス雰囲気で移送される物品をボイル状態にする請求項1〜4のいずれかに記載されたガスボイル装置と、ボイル状態にされた物品を複数の容器に載置して巡回させる乾燥用搬送路と、前記容器を前記乾燥用搬送路で搬送する搬送部と、前記乾燥用搬送路を巡回中の物品に熱風を送るために空気を加熱する加熱部と、前記搬送路の周囲に熱風を供給する送風部を備え、前記物品をボイル状態にし、巡回させて熱風で乾燥させることを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
前記乾燥用搬送路が、少なくとも、垂直方向に複数段配設した水平搬送路と、隣接する水平搬送路間で容器を移送する段間搬送路と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで前記容器を上昇させる上昇搬送路とから構成され、前記搬送部が、前記上昇搬送路に沿って上昇させた物品を前記最上段の水平搬送路に沿って搬送するとともに前記段間搬送路で一段下の水平搬送路に転送し、次段の水平搬送路では逆方向に搬送し、水平搬送部における搬送方向の反転を伴う搬送と前記段間搬送路での段間の転送とを少なくとも1回以上繰返すことにより最下段の水平搬送路まで搬送し、該最下段の水平搬送路からは前記上昇搬送路に沿って前記最上段の水平搬送路まで上昇させることを特徴とする請求項8記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記搬送部が、各水平搬送路で前記容器の側方に当接して該容器を水平方向に一定距離押し出す押し出し部と、各水平搬送路間で前記容器を一段下降させるシフト部と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで前記容器を上昇させるリフト部とから構成され、前記押し出し部が発生する力が前記容器を伝達媒体として伝達されることを特徴とする請求項8記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記搬送部が、各水平搬送路で前記容器をローラ搬送部に載置して一定距離移送するチェーン駆動部と、各水平搬送路端で前記容器を一段下降させるローラ搬送部と、最下段の水平搬送路から最上段の水平搬送路まで前記容器を上昇させるリフト部とから構成され、前記チェーン駆動部が発生する力が前記容器を伝達媒体として伝達されることを特徴とする請求項8記載の乾燥装置。
【請求項12】
加熱ガスに水蒸気を加えて物品ボイル対応温度、物品ボイル対応湿度の高湿度高温ガスとし、物品を移送しながら前記高湿度高温ガスをその周囲から噴射し、該高湿度高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で前記物品をボイル状態にすることを特徴とするガスボイル方法。
【請求項13】
ガスを加熱して殺菌対応温度の高温ガスとし、物品を移送しながら前記高温ガスをその周囲から噴射し、該高温ガスの衝突噴流と噴射後のガス雰囲気で前記物品を殺菌することを特徴とする移送物殺菌方法。
【請求項14】
前記高温ガスが、加熱ガスに水蒸気を加えた殺菌対応温度度、殺菌対応湿度の高湿度高温ガスであることを特徴とする請求項13記載の移送物殺菌方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−122037(P2006−122037A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35153(P2005−35153)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(593190054)有限会社丸忠設備工業 (5)
【Fターム(参考)】