説明

ガス処理装置

【課題】運転開始時に、火花放電のような異常放電が生じる虞を回避する。
【解決手段】ダクト1を構成する隔壁の外周面にヒータ19を設ける。ダクト1を流れる処理対象ガスGSの出口側に湿度検出センサ20を設ける。制御部18は、運転開始の指示を受けると、湿度検出センサ20からのダクト1内の湿度の検出値hpvと閾値hstとを比較し、hpv>hstであった場合、hpv≦hstとなるまで、ヒータ19をONとし、ダクト1内の湿度を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象ガスに含まれる有害ガスを浄化するガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気ガス中で高電圧放電を行ってプラズマ状態を作ることで、排気ガスに含まれる有害ガスの浄化を行う技術が知られている。近年、この技術は、脱臭を目的として、工場の排気を浄化する浄化装置や室内の空気を浄化する空気清浄機に応用されつつある。
【0003】
熱的に非平衡な状態、つまり気体の温度やイオン温度に比べ、電子温度が非常に高い状態のプラズマ(非平衡プラズマ(以下、単にプラズマと言う))は、電子衝突でつくられるイオンやラジカルが常温では起こらない化学反応を促進させるので、有害ガスを効率的に除去あるいは分解することが可能な媒体として有害ガス処理において有用であると考えられている。この技術の実用化上で肝心なことは、処理時のエネルギーの効率の向上と、プラズマで処理した後に完全に安全な生成物質へと変換されることである。
【0004】
一般に、大気圧でのプラズマは気体放電や電子ビームなどによって生成される。現在において、適用が考えられているものに、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、CO2 ,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。中でもNOxは車の排ガスなどに含まれているので早急な実用化が必要となっている。
【0005】
NOx除去における放電プラズマ(気体放電によって生成されたプラズマ)内の現象は、電子衝突によって1次的に生成されたイオンやラジカルが最初の反応を起こし、その後の反応を通してN2 ,H2 O,NH4 NO3 などの各粒子に変換されて行くものと考えられている。
【0006】
また、有害ガスを例えばアセトアルデヒドやホルムアルデヒドとした場合、この有害ガスをプラズマを通すことによって、CO2 とH2 Oに変換される。この場合、副生成物として、オゾン(O3 )が発生する。
【0007】
図8に放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する(例えば、特許文献1参照)。同図において、1は処理対象ガス(有害ガスを含む空気)GSが流れるダクト(通風路)であり、ダクト1内には、ダクト1の入口から出口へ向かう方向に沿って放電電極2とグランド電極3とが交互に配置され、これら電極2,3間にセルと呼ばれる多数の貫通孔4aを有するハニカム構造体4が配設されている。貫通孔4aはハニカム構造体4に蜂の巣状に設けられている。5は高電圧電源である。なお、ハニカム構造体4はセラミックス等の絶縁体で形成されており、特許文献2にもその使用例がある。
【0008】
放電電極2は、金属製メッシュ、極細ワイヤ、または針状体等で形成されている。各放電電極2は、導線6によって高電圧電源5の+極に接続されている。グランド電極3は、金属性メッシュ等で形成されている。各グランド電極3は、導線7によって高電圧電源5の−極に接続されている。
【0009】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1に流し、放電電極2とグランド電極3との間に高電圧電源5からの高電圧(数kV〜数10kV)を印加する。これにより、各ハニカム構造体4の貫通孔4a内にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0010】
しかしながら、このような構成のガス処理装置では、次のような問題点を有する。
(1)多数のハニカム構造体4を有するが、ばらつきなく均一なプラズマを発生させる技術が確立されておらず、ハニカム構造体4の性能にばらつきが出てしまう。例えば、同じハニカム構造体4同士でもインピータンス値が異なることがあり、また1つのハニカム構造体4内でも例えばその上下でインピーダンス値が異なるというようなこともあり、全体として均一なプラズマが発生せず、ガス処理能力が不安定となる。また、貫通孔4aだけでのプラズマ発生なので、プラズマの発生量が少なく、ガス処理能力が低い。
(2)ハニカム構造体4は吸湿すると低インピーダンスに、乾燥すると高インピーダンスになる特性を持っており、ハニカム構造体4が低インピーダンスになると、流れる電流が増大し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が低下し、ハニカム構造体4が高インピーダンスになると、流れる電流が減少し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が上昇する。このような高電圧値の変化に対し、所望のプラズマの発生量を確保し得る高電圧値を得ることのできる高電圧電源5は、その設計に要する工数も含めて非常に高価となる。
(3)ハニカム構造体4のそれぞれに対して放電電極2とグランド電極3を設けているため、部品点数が多く、構造も複雑となり、高価となる。
【0011】
そこで、本出願人は、上述した従来のガス処理装置の問題点を解決するものとして、図9に示すような構造のガス処理装置を提案した(特許文献3参照)。このガス処理装置では、ダクト1の入口から出口への処理対象ガスGSの通過方向に沿って、多数の貫通孔(セル(丸孔))8aを有する複数のハニカム構造体8を間隔を設けて配置している。この例では、ハニカム構造体8−1と8−2との間に間隔G1を設けて、ハニカム構造体8−3と8−4との間に間隔G2を設けて、ハニカム構造体8−1〜8−4をダクト1内に配置している。
【0012】
なお、ハニカム構造体8−1と8−2とは第1のハニカム構造体群8Aを構成し、この第1のハニカム構造体群8Aの両端に位置するハニカム構造体8−1および8−2の外側に、第1の電極として電極9が配置され、第2の電極として電極10が配置されている。また、ハニカム構造体8−3と8−4とは第2のハニカム構造体群8Bを構成し、この第2のハニカム構造体群8Bの両端に位置するハニカム構造体8−3および8−4の外側に、第1の電極として電極10が配置され、第2の電極として電極11が配置されている。電極9〜11は処理対象ガスGSが通過するように金属製メッシュとされている。
【0013】
第1のハニカム構造体群8Aにおいて、第1の電極9と第2の電極10との間に導線12,13を介して高電圧電源(高電圧源)15−1からの高電圧V1を印加することにより、また、第2のハニカム構造体群8Bにおいて、第1の電極10と第2の電極11との間に導線13,14を介して高電圧電源(高電圧源)15−2からの高電圧V2を印加することにより、ハニカム構造体8の貫通孔8aおよびハニカム構造体8間の空間16(16−1,16−2)にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−140562号公報
【特許文献2】特開2001−276561号公報
【特許文献3】特開2008−194670号公報
【特許文献4】特開2004−089708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図9に示したガス処理装置では、次のような問題を有する。このガス処理装置において、処理対象ガスGS中の水分(湿度)に着目すると、処理対象ガスGSは上流側のハニカム構造体8から下流側のハニカム構造体8に向かって流れて行く過程で、各ハニカム構造体8で発生したプラズマ放電によって処理を受けるが、処理を受ける度に処理対象ガスGS中に含まれる水分が消費されるので、処理対象ガスGSは上流側から下流側にかけて湿度が低下した状態となる。また、ハニカム構造体8の内部のでプラズマの発生状態は処理対象ガスGS中の水分が多いほど活発に行われ、水分が少なくなると抑制される特性がある。
【0016】
このため、第1のハニカム構造体群8A側を第1のガス処理ユニットGU1とし、第2のハニカム構造体群8B側を第2のガス処理ユニットGU2とした場合、仮に全てのハニカム構造体8の特性が同じであっても、第1のガス処理ユニットGU1よりも第2のガス処理ユニットGU2の方がプラズマの発生量が小さく、ガス処理能力が落ちる。図9には、ガス処理ユニット(GU)を2つとした例が示されているが、ガス処理ユニットがさらに設けられているものとすれば、下流側へ配置されるガス処理ユニットほどプラズマの発生量が小さく、ガス処理能力が落ちて行く。
【0017】
複数のガス処理ユニットのガス処理能力に大きな格差があると、ガス処理能力が過剰なガス処理ユニットとガス処理能力が不足するガス処理ユニットとが存在するということになり、全体としてのガス処理効率が落ちるとともにオゾンの発生の度合いも高まり、望ましくない。
【0018】
なお、特許文献4には、金属電極とハニカム電極との間の空間へ加湿装置によって水分を送り込むことにより、処理対象ガス中の水分濃度を高め、プラズマ放電を活性化させてガス浄化能力を高めるようにしたガス浄化装置が示されている。
【0019】
しかしかながら、この特許文献4に示された技術を図9に示したガス処理装置に適用した場合、加湿装置によって送り込む水分量を制御していないので、供給する水分量が過少であればプラズマ放電の発生状況が不充分でガス処理能力が不足する一方、供給する水分量が過多であれば放電が激しくなり火花放電のような異常放電が発生したり、放電によって発生するオゾン量も大となる。
【0020】
また、ガス処理装置の運転開始前に結露が生じるほど高湿度な環境下で、直ちにガス処理装置の運転を開始すると各ガス処理ユニットのガス処理能力が過剰に高まり、火花放電のような異常放電が発生して、ガス処理ユニットが損傷する可能性が高くなるという問題がある。
【0021】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、運転開始時に、火花放電のような異常放電が生じる虞を回避し、ガス処理ユニットの損傷を防ぐことが可能なガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このような目的を達成するために本発明は、通風路に間隔を設けて配置され、通風路を流れる処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、複数のハニカム構造体のうち隣り合う複数のハニカム構造体を1群のハニカム構造体群とし、このハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体の両端に位置するハニカム構造体の外側に配置された第1および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に高電圧を印加しハニカム構造体の貫通孔およびハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理ユニットを通風路の入口から出口への処理対象ガスの通過方向に沿って1以上備えたガス処理装置において、最上流に位置するガス処理ユニットの上流側から水分を供給する水分供給手段と、ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を下げる湿度低下手段と、水分供給手段が供給する水分の供給量を制御する一方、湿度低下手段の作動を制御する制御手段とを備え、制御手段は、運転開始の指示を受けた場合、所定の条件が成立するまで湿度低下手段を作動させてガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を下げた後、ガス処理ユニットの高電圧源をオンとすることを特徴とする。
【0023】
この発明では、ガス処理装置の運転開始時、所定の条件が成立するまで湿度低下手段が作動して、ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度が下げられた後、ガス処理ユニットの高電圧源がオンとされる。これにより、運転開始時、ガス処理ユニットが設置されている空間を低湿度とし、ガス処理ユニットのハニカム構造体を高インピーダンス化して、火花放電のような異常放電が生じる虞を回避することが可能となる。
【0024】
本発明では、運転開始の指示を受けた場合、所定の条件が成立するまで湿度低下手段を作動させるが、この場合の所定の条件として、例えば、ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度が所定値以下となるまで湿度低下手段を作動させたり、所定時間が経過するまで湿度低下手段を作動させるようにしたりすることが考えられる。
【0025】
なお、処理対象ガスの通風路を構成する隔壁の外周面にヒータを装着し、このヒータを湿度低下手段として用いることが考えられる。また、運転中、異常放電の発生が検知された場合、異常放電の発生が検知されなくなるまで、湿度低下手段を作動させるようにすることも考えられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、運転開始の指示を受けた場合、所定の条件が成立するまで湿度低下手段を作動させてガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を下げた後、ガス処理ユニットの高電圧源をオンとするようにしたので、運転開始時、ガス処理ユニットが設置されている空間を低湿度とし、ガス処理ユニットのハニカム構造体を高インピーダンス化して、火花放電のような異常放電が生じる虞を回避し、ガス処理ユニットの損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
【図2】このガス処理装置の制御部が有する運転中の加湿量の調整機能を説明するためのフローチャートである。
【図3】このガス処理装置の制御部が有する運転開始時のヒータの動作の制御機能を説明するためのフローチャートである。
【図4】このガス処理装置の制御部が有する運転開始時のヒータの動作の制御機能の別の例(実施の形態2)を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態3のガス処理装置の要部を示す図である。
【図6】このガス処理装置に用いる異常放電検知部の要部の構成を示す図である。
【図7】このガス処理装置の制御部が有する異常放電検知時のヒータの動作の制御機能を説明するためのフローチャートである。
【図8】放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する図である。
【図9】特許文献3に示されたガス処理装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。同図において、図9と同一符号は図9を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0030】
この実施の形態においても、図9に示したガス処理装置と同様に、処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に方向に沿って、第1のガス処理ユニットGU1と第2のガス処理ユニットGU2をダクト1内に配置している。
【0031】
また、ガス処理ユニットGU1の第1の電極9と第2の電極10との間に導線12,13を介して高電圧源15−1からの高電圧V1を印加するようにし、ガス処理ユニットGU2の第1の電極10第2の電極11との間に導線13,14を介して高電圧源15−2からの高電圧V2(V2>V1)を印加するようにしている。
【0032】
また、ダクト1に対して、最上流に位置するガス処理ユニットGU1の上流側からダクト1内の空間に水分を供給する水分供給手段として、加湿装置17を設けている。また、処理対象ガスGSが流れるダクト1を構成する隔壁の外周面に、ダクト1内の湿度を低下させる湿度低下手段としてヒータ19を設けている。また、ダクト1を流れる処理対象ガスGSの出口側に、湿度検出センサ20を設けている。
【0033】
この実施の形態において、加湿装置17の加湿量、すなわちダクト1内の空間への水分の供給量は、制御部18によって調整(制御)されるようになっている。また、ヒータ19の動作も制御部18によって制御されるようになっている。なお、加湿装置17の加湿量の調整はガス処理装置の運転中に行われ、ヒータ19の動作の制御はガス処理装置の運転開始時に行われる。
【0034】
制御部18は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、上述した加湿装置17における加湿量の調整機能やヒータ19の動作の制御機能を有している。以下、この制御部18が有する加湿量の調整機能やヒータ19の動作の制御機能について、図2および図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0035】
〔加湿量の調整機能(図2):運転中〕
制御部18は、ガス処理装置の運転中、ガス処理ユニットGU1の高電圧源15−1が電極9,10間に印加している現在の電圧V1の値および電極9,10間に供給している現在の電流I1を検出し(ステップS101)、この電圧V1,電流I1の値からガス処理ユニットGU1の現在の消費電力PW1を求める(ステップS102)。
【0036】
次に、制御部18は、ガス処理ユニットGU2の高電圧源15−2が電極10,11間に印加している現在の電圧V2の値および電極10,11間に供給している現在の電流I2を検出し(ステップS103)、この電圧V2,電流I2の値からガス処理ユニットGU2の現在の消費電力PW2を求める(ステップS104)。
【0037】
そして、制御部18は、この求めたガス処理ユニットGU1の消費電力PW1とガス処理ユニットGU2の消費電力PW2とが等しくなるように、加湿装置17の加湿量を調整する(ステップS105)。制御部18は、このステップS101〜S105の処理動作を繰り返す。
【0038】
このガス処理装置では、下流側に位置するガス処理ユニットGU2の高電圧源15−2が印加する電圧V2の値が、上流側に位置するガス処理ユニットGU1の高電圧源15−1が印加する電圧V1の値よりも高くされている。また、加湿装置17の加湿量は一定ではなく、ガス処理ユニットGU1の消費電力PW1とガス処理ユニットGU2の消費電力PW2とが等しくなるように制御される。これにより、ガス処理ユニットGU1,GU2のプラズマの発生状況の格差が大幅に解消され、ガス処理ユニットGU1,GU2のガス処理能力が平準化され、ガス処理能力の過剰、不足によって生じる問題が緩和されるものとなる。
【0039】
〔ヒータの動作の制御機能(図3):運転開始時〕
制御部18は、運転開始の指示を受けると(ステップS201のYES)、湿度検出センサ20からのダクト1内の湿度の検出値hpvを取り込み、その湿度の検出値hpvと予め定められている閾値hstとを比較する(ステップS202)。
【0040】
ここで、ダクト1内の湿度の検出値hpvが閾値hstよりも大きければ、ダクト1内が高湿度状態であると判断し、ヒータ19をONとするとともに、図示されていない送風ファンをONとする(ステップS203)。
【0041】
これにより、通風運転を行った状態で、ヒータ19がONとされ、このヒータ19が発生する熱がダクト1の壁を介してガス処理ユニットGU1,GU2の設置空間に熱伝導することで、そのガス処理ユニットGU1,GU2の設置空間の湿度が低下して行く。すなわち、ダクト1内の空間が除湿されて行く。
【0042】
制御部18は、このヒータ19による除湿により、湿度検出センサ20からの湿度の検出値hpvが閾値hst以下となると(ステップS204のYES)、ガス処理ユニットGU1,GU2の高電圧源15−1,15−2をONとし(ステップS205)、ヒータ19をOFFとする(ステップS206)。
【0043】
この場合、ガス処理ユニットGU1,GU2の高電圧源15−1,15−2がONとされても、ガス処理ユニットGU1,GU2が設置されている空間は閾値hst以下の低湿度状態とされているので、ガス処理ユニットGU1,GU2のハニカム構造体8が高インピーダンス化し、火花放電のような異常放電が生じることはない。これにより、ガス処理ユニットGU1,GU2の損傷を防ぐことが可能となる。
【0044】
制御部18は、その後、加湿装置17をONとし(ステップS208)、図2を用いて説明した加湿装置17の加湿量の調整動作へと進む(ステップS209)。
【0045】
なお、ステップS202において、hpv≦hstであった場合、制御部18は、ダクト1内は高湿度状態ではないと判断し、ヒータ19はONとせずに、送風ファンとガス処理ユニットGU1,GU2の高電圧源15−1,15−2をONとして(ステップS207)、ステップS208以降の処理へと進む。
【0046】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、湿度検出センサ20を設け、ガス処理装置の運転開始時、湿度検出センサ20からの湿度の検出値hpvが閾値hst以下となるまでヒータ19をONとするようにした。これに対し、実施の形態2では、湿度検出センサ20は設けずに、ガス処理装置の運転開始時、所定時間経過するまで、ヒータ19をONとする。
【0047】
図4に実施の形態2における図3に対応するフローチャートを示す。実施の形態2のガス処理装置において、制御部18は、運転開始の指示を受けると(ステップS301のYES)、直ちにヒータ19をONとするとともに、送風ファンをONとする(ステップS302)。
【0048】
そして、所定時間の経過を待って(ステップS303のYES)、ガス処理ユニットGU1,GU2の高電圧源15−1,15−2をONとし(ステップS304)、ヒータ19をOFFとする(ステップS305)。
【0049】
この場合、ガス処理ユニットGU1,GU2の高電圧源15−1,15−2がONとされても、ガス処理ユニットGU1,GU2が設置されている空間は所定時間ヒータ19がONとされることによって低湿度状態とされているので、ガス処理ユニットGU1,GU2のハニカム構造体8が高インピーダンス化し、火花放電のような異常放電が生じることはない。
【0050】
制御部18は、その後、加湿装置17をONとし(ステップS306)、図2を用いて説明した加湿装置17の加湿量の調整動作へと進む(ステップS307)。
【0051】
〔実施の形態3〕
図5に実施の形態3のガス処理装置の要部を示す。このガス処理装置では、図1に示した実施の形態1のガス処理装置の構成に加え、ガス処理ユニットGU1の高電圧源15−1に対して異常放電検知部21−1を、ガス処理ユニットGU2の高電圧源15−2に対して異常放電検知部21−2を設け、異常放電検知部21−1および異常放電検知部21−2からの異常放電の検知結果を検知信号S11およびS12として制御部18へ送るようにしている。
【0052】
図6に異常放電検知部21(21−1,21−2)の要部の構成を示す。異常放電検知部21は、直流カット回路21Aと、放電周波数検出回路21Bと、整流平滑回路21Cと、レベル判定回路21Dとを備えている。直流カット回路21Aは、高電圧印加部15(15−1,15−2)の電圧供給端子T1とT2との間に生じる高電圧、すなわちガス処理ユニットGU(GU1,GU2)の電極間に印加される高電圧を取り込み、この高電圧に含まれる直流分をカットして出力する。放電周波数検出回路21Bは、直流カット回路21Aが出力する直流分がカットされた電圧より、所定周波数以上の電圧(低周波信号)をガス処理ユニットGUの電極間の放電により発生した雑音電圧として取り出す。整流平滑回路21Cは、放電周波数検出回路21Bより取り出された雑音電圧を整流して平滑する。レベル判定回路21Dは、整流平滑回路21Cによって整流平滑化された雑音電圧の大きさを判定し、その雑音電圧の大きさが所定値を超えた場合に異常放電の発生を示す検知信号S1(S11,S12)を出力する。
【0053】
〔異常放電検知時のヒータの動作の制御機能(図7):運転中〕
ガス処理装置の運転中、ガス処理ユニットGU1で異常放電が発生すると、異常放電検知部19−1が異常放電の発生を示す検知信号S11を制御部18へ送る。また、ガス処理ユニットGU2で異常放電が発生すると、異常放電検知部19−2が異常放電の発生を示す検知信号S12を制御部18へ送る(ステップS404)。
【0054】
制御部18は、異常放電検知部19(19−1,19−2)からガス処理ユニットGU(GU1,GU2)での異常放電の発生を示す検知信号S1(S11,S12)が送られてくると(ステップS401のYES)、ヒータ19をONとし(ステップS402)、ガス処理ユニットGU(GU1,GU2)の設置空間の湿度を低下させる。そして、ガス処理ユニットGU(GU1,GU2)での異常放電が検知されなくなると(ステップS403のYES)、ヒータ19をOFFとする。
【0055】
このようにして、実施の形態3では、ガス処理装置の運転中、ガス処理ユニットGU(GU1,GU2)の設置空間が高湿度状態になり、ガス処理ユニットGU(GU1,GU2)のハニカム構造体8が低インピーダンスとなり、火花放電のような異常放電が発生したとしても、ヒータ19がONとなって、積極的に湿度が低下されるものとなり、異常放電が速やかに終息されるものとなる。
【0056】
なお、この実施の形態3においても、実施の形態2と同様に、湿度検出センサ20を設けずに、ガス処理装置の運転開始時、所定時間経過するまで、ヒータ19をONとするようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施の形態1〜3では、湿度低下手段としてヒータ19を設けるようにしているが、ダクト1内の湿度を低下させることができればよく、他の手段を用いるようにしてもよい。例えば、熱風などで加温させるようにしたり、ファン動作による通風運転のみで湿度の低下を図るようにしたりしてもよい。
【0058】
なお、ヒータをダクト1内に設置するようにしてもよいが、そのようにするヒータがガス処理ユニットGUで生じる放電や処理対象ガスGSによって破損し易くなる。これに対して、ダクト1を構成する隔壁の外周面にヒータを装着すると、このヒータが発生する熱をその壁を介して処理対象ガスGSの設置空間に熱伝導させることができるので、ヒータが長持ちする。
【0059】
また、上述した実施の形態1〜3において、電極10はガス処理ユニットGU1の第2の電極とガス処理ユニットGU2の第1の電極とを兼ねた共通電極とされているが、ガス処理ユニットGU1の第2の電極とガス処理ユニットGU2の第1の電極とを独立した電極とするようにしてもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態1〜3において、ハニカム構造体8はオゾンを分解する触媒機能を備えたものとしてもよく、処理対象ガスGSの通過方向の下流位置にオゾンを分解する触媒を設けるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態1〜3では、ガス処理ユニットの数を2つとしたが、さらにその数を増やすようにしてもよい。また、ガス処理ユニット内のハニカム構造体の数は2つに限られるものではなく、さらにその数を増やしてもよい。また、ガス処理ユニットの数は必ずしも複数でなくてもよく、1つであっても構わない。
【0062】
ガス処理ユニットの数を増やす場合には、各ガス処理ユニットは、上流側から下流側に位置するガス処理ユニットほど、そのガス処理ユニットの高電圧源が印加する電圧の値を高くするようにする。また、各ガス処理ユニットの消費電力が等しくなるように、加湿装置の加湿量を調整するようにする。あるいは加湿装置の加湿量の調整に加えて、最上流に位置するガス処理ユニットの高電圧源が印加する電圧の値を調整するようにする。また、ガス処理ユニット毎に、異常放電検知部を設ける。
【0063】
また、上述した実施の形態1〜3において、副生成物としてオゾンを大量に発生させ、オゾン発生器として転用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のガス処理装置は、燃料電池等に用いられる水素を効率的に生成する目的で、炭化水素類等から水素含有ガスを生成する、いわゆる改質にも適用することができる。例えばオクタン(ガソリンの平均分子量に比較的近い物質)C818の場合は、本ガス処理装置に供給すると下記(1)式で示される化学反応が促進され、その結果水素ガスを効率よく生成することができる。
818+8H2O+4(O2+4N2)→8CO2+17H2+16N2・・・・(1)
【符号の説明】
【0065】
1…ダクト、8(8−1〜8−4)…ハニカム構造体、8a…貫通孔(セル)、8A,8B…ハニカム構造体群、9,10,11…電極、12,13,14…導線、15(15−1,15−2)…高電圧源、16(16−1,16−2)…空間、17…加湿装置、18…制御部、19…ヒータ、20…湿度検出センサ、21(21−1,21−2)…異常放電検知部、21A…直流カット回路、21B…放電周波数検出回路、21C…整流平滑回路、21D…レベル判定回路、G(G1,G2)…間隔、GU(GU1,GU2)…ガスユニット、GS…処理対象ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路に間隔を設けて配置され、前記通風路を流れる処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち隣り合う複数のハニカム構造体を1群のハニカム構造体群とし、このハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体の両端に位置するハニカム構造体の外側に配置された第1および第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理ユニットを前記通風路の入口から出口への処理対象ガスの通過方向に沿って1以上備えたガス処理装置において、
最上流に位置する前記ガス処理ユニットの上流側から水分を供給する水分供給手段と、
前記ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を下げる湿度低下手段と、
前記水分供給手段が供給する水分の供給量を制御する一方、前記湿度低下手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
運転開始の指示を受けた場合、所定の条件が成立するまで前記湿度低下手段を作動させて前記ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を下げた後、前記ガス処理ユニットの高電圧源をオンとする
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記湿度低下手段は、
前記処理対象ガスの通風路を構成する隔壁の外周面に装着されたヒータである
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記ガス処理ユニットが設置されている空間の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記制御手段は、
運転開始の指示を受けた場合、前記湿度検出手段が検出する湿度が所定値以下となるまで前記湿度低下手段を作動させた後、前記ガス処理ユニットの高電圧源をオンとする
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記制御手段は、
運転開始の指示を受けた場合、所定時間が経過するまで前記湿度低下手段を作動させた後、前記ガス処理ユニットの高電圧源をオンとする
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記ガス処理ユニットに異常放電が発生したことを検知する異常放電検知手段を備え、
前記制御手段は、
前記異常放電検知手段によって異常放電の発生が検知された場合、異常放電の発生が検知されなくなるまで前記湿度低下手段を作動させる
ことを特徴とするガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213721(P2012−213721A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80914(P2011−80914)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】