説明

ガス分離方法

【課題】水素化物系ガスを含む混合ガスを高い回収率を維持しつつ分離して、水素化物系ガスを高純度に濃縮する。
【解決手段】気体分離膜が収容された密閉容器の未透過ガス排出口を閉止し、透過ガス排出口を開放した状態で、ガス供給口を開放して密閉容器内に混合ガスを供給し、充圧する第1の過程と、混合ガスの供給開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、ガス供給口を閉止して混合ガスの供給を停止し、当該状態を保持する第2の過程と、保持状態の開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、未透過ガス排出口を開放して水素化物系ガスを回収する第3の過程と、回収開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、未透過ガス排出口を閉止する第4の過程を備え、第1〜第4の過程を連続的に繰り返すことを特徴とするガス分離方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体分野に用いられる特殊ガスには、モノシラン、モノゲルマン、アルシン、ホスフィン、セレン化水素等の水素化物系ガスを代表として様々なガスが存在する。これらのガスのうち、モノシラン、モノゲルマン、アルシン、ホスフィン、セレン化水素等は、毒性、可燃性が強く、非常に取り扱いが難しいガスである。
【0003】
特に、水素化物系ガスは、それ自身で高純度ガスとして用いられるが、水素、ヘリウム等のガスで希釈された混合ガスとしても広く用いられている。
【0004】
ここで、例えば、水素等で希釈された混合ガスは、その混合ガスを使用する設備の直近で水素と特殊ガスとに分離し、特殊ガスのみをガス使用設備に送ることで安全に利用できることが知られている。
【0005】
一般に、特殊ガスはボンベ(シリンダー)に充填されるが、特殊ガスの種類によっては、希釈されない純ガスよりも希釈混合ガスの方が、特殊ガス自身の充填量が多い場合があることが知られている。
また、希釈混合ガスが充填された使用済みのシリンダーを返却する場合には、残ガスとしてシリンダー内に多少のガスを残したまま返却されることが一般的である。この残ガスを希釈するガスと特殊ガスとに分離して回収することで、高価な特殊ガスを再利用することができるし、残ガスの処理費用も低減することができる。
【0006】
一方、ガス分離技術としては、吸着剤や金属触媒による吸着や反応等を利用したガス分離方法、精留(液化精製)や固化精製による相変化を利用した分離方法、気体分離膜による分子径の違いを利用した分離方法などが存在する。
【0007】
これらの分離方法のうち、気体分離膜によるガス分離技術は、優れた省エネ効果のある分離技術として注目を浴びている。
【0008】
気体分離膜によるガス分離技術は、基本的な動力としては昇圧を行うための圧縮機程度であり、その省エネ性はPSA(吸着や反応等を利用したガス分離方法)、精留(相変化を利用した分離方法)と比較しても期待できるものである。また、気体分離膜によるガス分離技術は、分離膜の透過側を真空に引くことで分離操作を行うことができるため、十分な供給圧力を得難い低蒸気圧ガスにも対応できるし、自然発火性ガスや自己分解性ガスも安全に分離操作が可能であり、金属の触媒作用により分解しやすいガスや金属と反応しやすいガスでも対応が可能である。その他、駆動機器が少なくトラブルフリーでメンテナンスが不要、高濃度の不純物の分離を行う際もPSAでいう再生などの運転を追加する必要がない、などの利点がある。
【0009】
気体分離膜を利用したガスの分離技術としては、ポリイミド膜あるいはポリアラミド膜を使用したガスの分離技術(特許文献1〜4参照)、ポリスルホン膜を使用したガスの分離技術(特許文献5参照)、特殊なシリカ膜あるいはアルミナ膜を使用したガスの分離技術(特許文献6参照)、蒸留膜あるいは浸透気化膜を使用したガスの分離技術(特許文献7参照)などが挙げられる。
【0010】
また、気体分離膜を利用したガスの分離技術として、炭素膜を使用したガスの分離技術(特許文献8参照)が知られており、炭素膜の製造方法に関する技術も開示されている(特許文献9〜11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−171330号公報
【特許文献2】特開2002−308608号公報
【特許文献3】特開2005−154203号公報
【特許文献4】特開2003−37104号公報
【特許文献5】特許第2615265号公報
【特許文献6】特許第3477517号公報
【特許文献7】特開2005−60225号公報
【特許文献8】特開2008−238357号公報
【特許文献9】特許第2914972号
【特許文献10】特開平10−52629号公報
【特許文献11】特開2006−231095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記特許文献8で例示されている炭素膜を使用したガスの分離技術は、炭素膜を使用したppmレベルの微量不純物を除去する精製目的のものであり、高い回収率であることが知られているが、希釈混合されたガスから水素化物系ガス等の特殊ガスを分離する方法は示されていない。さらには、これらの特殊ガスが半導体材料として用いられる場合、希釈混合されたガス中の特殊ガスの濃度よりも高濃度に濃縮することが要求されるようになってきた。
【0013】
本発明は、反応性が高く腐食性が強い半導体材料ガスである水素化物系ガスを含む混合ガスを水素化物系ガスと希釈ガスとに分離して、高い回収率を維持しつつ、水素化物系ガスを高純度に濃縮することが可能なガス分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、分子ふるい作用を有する気体分離膜を用いて、分子径が3Å以下の希釈ガスと水素化物系ガスとの混合ガス中から前記希釈ガスを分離し、前記水素化物系ガスを濃縮するガス分離方法であって、
前記気体分離膜が収容された密閉容器の、当該気体分離膜の未透過側の空間と連通するように設けられた未透過ガス排出口を閉止し、当該気体分離膜の透過側の空間と連通するように設けられた透過ガス排出口を開放した状態で、ガス供給口を開放して前記密閉容器内に前記混合ガスを供給し、充圧する第1の過程と、
前記混合ガスの供給開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記ガス供給口を閉止して前記混合ガスの供給を停止し、当該状態を保持する第2の過程と、
前記保持状態の開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記未透過ガス排出口を開放して当該未透過ガス排出口から水素化物系ガスを回収する第3の過程と、
前記回収開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記未透過ガス排出口を閉止する第4の過程と、を備え、
前記第1〜第4の過程を連続的に繰り返すことを特徴とするガス分離方法である。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記気体分離膜が、中空糸状又は管状の炭素膜であることを特徴とする請求項1に記載のガス分離方法である。
請求項3に記載の発明は、前記水素化物系ガスが、アルシン、ホスフィン、セレン化水素、モノシラン、モノゲルマンのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分離方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス分離方法によれば、分子ふるい作用を持つ気体分離膜を用いて、高い回収率を維持しつつ、従来よりも水素化物系ガスを高純度にする又は高濃度に濃縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のガス分離方法に用いる気体分離膜の一例である炭素膜モジュールを示す概略断面図である。
【図2】図1に示す炭素膜モジュールにおけるA−A’断面図である。
【図3】本発明のガス分離方法における回分操作のタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施する形態の一例として、気体分離膜として炭素膜を用いた場合について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
【0019】
本発明のガス分離方法に用いられる気体分離膜モジュールの一例である炭素膜モジュールを図1及び図2に示した。図1において、符号1は炭素膜モジュールを示す。この炭素膜モジュール1は、密閉容器6とこの密閉容器6内に設けられた炭素膜ユニット2とから概ね構成されている。
【0020】
密閉容器6は、中空円筒状であって、内部の空間に炭素膜ユニット2が収容されている。また、密閉容器6の長手方向の一方の端部にはガス供給口3が設けられ、他方の端部には未透過ガス排出口5が設けられている。さらに、その密閉容器6の周面には、透過ガス排出口4と掃引ガス供給口8とが設けられている。
【0021】
炭素膜ユニット2は、多数本の中空糸状炭素膜(気体分離膜)2a…と、これら中空糸状炭素膜2a…の両端部をそれぞれ束ねて固定する一対の樹脂壁7とから構成されている。樹脂壁7は、接着剤などを使用して密閉容器6の内壁に密封固着されている。
図2は、図1に示す炭素膜モジュール1におけるA−A’断面図であり、密閉容器6内における樹脂壁7の表面構造を図示している。樹脂壁7には、中空糸状炭素膜2a…の開口部が形成されている。
【0022】
密閉容器6内は、一対の樹脂壁7によって第1の空間11、第2の空間12、第3の空間13の3つの空間に分割されている。第1の空間11は、ガス供給口3が設けられた密閉容器6の一方の端部と樹脂壁7との間の空間であり、第2の空間12は密閉容器6の周面と一対の樹脂壁7との間の空間であり、第3の空間13は未透過ガス排出口5が設けられた密閉容器6の他方の端部と樹脂壁7との間の空間である。
【0023】
ガス供給口3は、密閉容器6内の第1の空間11と連通するように設けられている。また、ガス供給口3には、開閉バルブ3aが設けられている。そして、開閉バルブ3aを開放することにより、ガス供給口3を介して密閉容器6の外側から第1の空間11内に混合ガスを供給可能とされている。
【0024】
未透過ガス排出口5は、密閉容器6内の第3の空間13と連通するように設けられている。また、未透過ガス排出口5には、開閉バルブ5aが設けられている。そして、開閉バルブ5aを開放することにより、未透過ガス排出口5を介して第3の空間13から密閉容器6の外側に未透過ガスを排出可能とされている。
【0025】
透過ガス排出口4及び掃引ガス供給口8は、密閉容器6内の第2の空間12と連通するように設けられている。また、透過ガス排出口4には開閉バルブ4aが、掃引ガス供給口8には開閉バルブ8aがそれぞれ設けられている。そして、開閉バルブ4aを開放することにより、透過ガス排出口4を介して第2の空間12から密閉容器6の外側に透過ガスを排出可能とされている。一方、開閉バルブ8aを開放することにより、掃引ガス供給口8を介して密閉容器6の外側から第2の空間12に掃引ガスを供給可能とされている。
【0026】
中空糸状炭素膜2a・・・の一端は、一方の樹脂壁7に固定されるとともに開口し、他端は他方の樹脂壁7に固定されるとともに開口している。これにより、中空糸状炭素膜2a…が一方の樹脂壁7で固定される部分において、中空糸状炭素膜2a…の一方の開口部は、第1の空間11と通じており、他方の開口部は第3の空間13と通じている。これにより、第1の空間11と第3の空間13とは、中空糸状炭素膜2a・・・の内部空間を介して連通される。これに対して、第1の空間11と第2の空間12とは炭素膜ユニット2を介して連通される。
【0027】
中空糸状炭素膜2a…は、有機高分子膜を形成した後、焼結することで作製される。例えば、有機高分子であるポリイミドを任意の溶媒に溶かし製膜原液を作製し、また、この製膜原液の溶媒とは混合するがポリイミドに対しては非溶解性の溶媒を用意する。ついで、二重管構造の中空糸紡糸ノズルの周縁部環状口から前記製膜原液を、同紡糸ノズルの中央部円状口から前記溶媒を、それぞれ同時に凝固液中に押し出し、中空糸状に成形し、有機高分子膜を製造する。次に、得られた有機高分子膜を不融化処理後に炭化させて炭素膜とする。
【0028】
炭素膜は、炭素膜のみで使用されること以外に、多孔質支持体に塗布されたもの、炭素膜以外の気体分離膜に塗布されたものなど、最適な形態を選んで使用される。多孔質支持体には、セラミック系のアルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、金属系のフィルタなどがあげられる。支持体に塗布することは、機械的強度の向上、炭素膜製造の簡素化などの効果がある。
【0029】
特に本発明では、通常は定常状態で分離操作を行う気体分離膜を、後述するPSAのように圧力スイングさせて使用する。そのため、気体分離膜としては、圧力スイングに対して良好な安定性を持つ、すなわち機械強度が従来よりも優れていることが求められる。したがって、本発明では、一般的な高分子膜の気体分離膜よりは、シリカ膜、ゼオライト膜、炭素膜のような無機膜の気体分離膜を用いることが好ましい。
【0030】
なお、炭素膜の原料となる有機高分子には、ポリイミド(芳香族ポリイミド)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリアミド(芳香族ポリアミド)、ポリプロピレン、ポリフルフリルアルコール、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、フェノール樹脂、セルロース、リグニン、ポリエーテルイミド、酢酸セルロースなどがあげられる。
【0031】
以上の炭素膜の原料のうち、ポリイミド(芳香族ポリイミド)、酢酸セルロース、ポリフェニレンオキサイド(PPO)については、中空糸状である炭素膜の成形が容易である。特に高い分離性能を有するのは、ポリイミド(芳香族ポリイミド)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)である。さらには、ポリフェニレンオキサイド(PPO)はポリイミド(芳香族ポリイミド)に比べ安価である。
【0032】
次に、図1に示す炭素膜モジュール1を用いたガス分離方法について説明する。ここで、分子ふるい作用とは、ガスの分子径と気体分離膜の細孔径の大きさにより、分子径の小さいガスと分子径の大きいガスが分離される作用である。
【0033】
本発明のガス分離方法は、分子ふるい作用を有する炭素膜を用いて、希釈ガスと水素化物系ガスとの混合ガスから希釈ガスと水素化物系ガスとを分離し、水素化物系ガスを濃縮するガス分離方法である。
【0034】
分離濃縮の対象となる混合ガスは、分子径の小さなガス成分と分子径の大きなガス成分とを2種以上混合させたものである。これらガス成分の間に分子径の差があればどんなガス成分の組み合わせでも良い。これらの分子径の差が大きければ大きいほど分離操作にかかる処理時間を短くすることができる。
【0035】
混合ガス中の希釈ガスは、分子径の小さなガス成分であることが多く、例えば、水素、ヘリウムのような分子径が3Å以下のようなガス成分を用いることが好ましい。これに対して、混合ガス中の水素化物系ガスは、分子径の大きなガス成分であることが多く、例えば、アルシン、ホスフィン、セレン化水素、モノシラン、モノゲルマンのような分子径が3Åよりも大きい、好ましくは4Å以上、さらに好ましくは5Å以上のガス成分である。
【0036】
混合ガスとしては、2成分系に限られず、複数のガス成分を混合したものでもよいが、各ガス成分を炭素膜の透過側、未透過側どちらかに十分に分離するためには、分子径の大きなガス成分群と分子径の小さなガス成分群とに大きく分類されることが好ましい。そして、炭素膜の細孔径が分子径の大きなガス成分群の分子径と分子径の小さなガス成分群の分子径との間にあればよい。なお、炭素膜の細孔径は、炭化時の焼成温度を変えることで調整することができる。
【0037】
本発明のガス分離方法は、具体的には、以下の第1〜第4の過程の操作を連続的に繰り返すことを特徴とする。
【0038】
(第1の過程)
先ず、第1の過程である供給過程では、炭素膜ユニット2が収容された密閉容器6の、第3の空間13(炭素膜の未透過側の空間)と連通するように設けられた未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aを閉止し、第2の空間12(炭素膜の透過側の空間)と連通するように設けられた透過ガス排出口4の開閉バルブ4aを開放した状態で、ガス供給口3の開閉バルブ3aを開放して密閉容器6内に混合ガスを供給して充圧する。
【0039】
図3に示すように、第1の過程では、ガス供給口3から密閉容器6内へ混合ガスが一定の流量で供給される。ここで、密閉容器6の未透過側である未透過ガス排出口5が閉止されているため、一定流量で混合ガスを供給すると第1の空間11の圧力(供給圧力)が上昇する。これに連れて、密閉容器6内の炭素膜ユニット2の未透過側である第3の空間13内の圧力(未透過圧力)も上昇する。
これに対して、密閉容器6の透過側である透過ガス排出口4は開放されているため、第2の空間12の圧力(透過圧力)は変化しない。また、混合ガス中の希釈ガスが炭素膜ユニット2を透過して第2の空間12に移動し、透過ガス排出口4から排出されるため、透過流量は一時的に増加した後に一定となる。
【0040】
なお、第1の過程の所要時間(T)は、特に限定されるものではなく、密閉容器6の体積(V)、炭素膜ユニット2の性能(P、S)、混合ガスの供給流量(F)及び充填圧等(A)の各条件に応じて適宜選択することができる。
【0041】
密閉容器6の体積(V)が大きくなると密閉容器6に供給する混合ガス量が増え、かつ、混合ガスの供給流量が変わらなければ、第1の過程の所要時間が長くなる。また、供給する混合ガス量が増えるため、分離後の回収量が増加する。
【0042】
充填圧(A)を高くすると、密閉容器6に供給する混合ガス量が増え、かつ、混合ガスの供給流量が変わらなければ、第1の過程の所要時間は長くなる。また、供給する混合ガス量が増えるため、分離後の回収量が増加する。但し、充填圧が高すぎると炭素膜ユニット2に破損等のダメージを与える恐れがあるため、1MPaG以下であることが好ましい。さらに、本発明の分離対象物である水素化物ガスの場合には、あまり圧力を上げないことが安全面に関して好ましいため、0.5MPaG以下とすることがより好ましく、0.2MPaG以下とすることがさらに好ましい。
【0043】
炭素膜ユニット2の性能(透過成分の透過速度)(P)は、炭素膜2aを透過する成分の透過速度を表す。例えば透過成分が水素で未透過成分がモノシランの場合には、水素の透過速度が大きければ所要時間が長くなる。これは、充圧と同時に水素が抜けていくため、未透過成分であるモノシランで充圧しなければならないからである。
【0044】
炭素膜ユニット2の性能(分離性能)(S)は、炭素膜2aを透過する成分と透過しない成分(残留成分)とに分離する性能を表す。例えば透過成分が水素、残留成分がモノシランの場合には、水素とモノシランとに対する分離性能が優れていれば所要時間は短くなる。これは、モノシランが炭素膜2aを透過せずに残留するため、すなわちモノシランの透過速度が小さいことになるため、それだけ早く充圧されることによる。
【0045】
混合ガスの供給流量(F)が大きければ所要時間は短くなるが、炭素膜ユニット2に破損等のダメージを与える恐れがあるため、線速度:10cm/sec以下で供給することが好ましく、線速度:1cm/sec以下とすることがより好ましい。但し、炭素膜2aに対してガス流れが直接当たらないように抵抗板や拡散板などを導入した場合には、この限りではない。
【0046】
以上説明した各条件から第1の過程の所要時間(T)は下記式(1)のように関係づけられる。
∝(V×A×P)/(S×F) ・・・(1)
【0047】
例えば、後述する実施例に示した膜面積1114cm(膜性能:水素の透過速度=5×10−5cm(STP)/cm/sec/cmHg、(水素/モノシランの分離係数)=約5000)の炭素膜ユニット2が十分に密に備わった密閉容器の場合であれば、モノシラン10%、水素90%の混合ガスを流量150sccmで供給した場合には、約7分間で充填圧が0.2MPaGに達することとなる。
【0048】
(第2の過程)
次に、第2の過程である分離過程では、混合ガスの供給開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器6内の圧力(供給圧力あるいは未透過圧力)が所定の圧力に到達したときに、ガス供給口3の開閉バルブ3aを閉止して混合ガスの供給を停止し、この状態を保持する。
これにより、炭素膜ユニット2の未透過側(第1及び第3の空間11,13)に供給された混合ガスから、分子径の小さなガス成分である希釈ガスのみを選択的・優先的に炭素膜ユニット2の低圧側(第2の空間12)に透過させるとともに、分子径の大きなガス成分である水素化物系ガスを未透過側に残留させることが可能となる。
【0049】
図3に示すように、第2の過程では、ガス供給口3から密閉容器6内への混合ガスの供給が停止されるため、供給流量は0となる。このとき、密閉容器6の未透過側であるガス供給口3及び未透過ガス排出口5の開閉バルブ3a,5aを閉止しているが、透過ガス排出口4は開放されており、混合ガス中の希釈ガスが炭素膜ユニット2を透過して透過ガス排出口4から排出されるため、第1の空間11の圧力(供給圧力)及び第3の空間13の圧力(未透過圧力)が徐々に低下する。
一方、密閉容器6の透過側である透過ガス排出口4は開放されており、第2の空間12の圧力(透過圧力)には変化がない。しかしながら、透過ガス排出口4から排出される希釈ガスの透過流量は徐々に低下する。
【0050】
なお、第2の過程の所要時間(T)は、特に限定されるものではなく、密閉容器6の体積(V)、充填圧(A)、分離終了の所定の圧力(排出圧ともいう、B)、炭素膜ユニット2の性能(P,S)及び供給ガスの組成(Z)に応じて適宜選択することができる。
【0051】
ここで、密閉容器の6の体積(V)、充填圧(A)、炭素膜ユニット2の性能(分離性能)(S)については、第1の過程で説明した通りである。
【0052】
炭素膜ユニット2の性能(透過成分の透過速度)(P)は、例えば透過成分が水素の場合には、透過速度が大きければ所要時間が短くなる。これは、水素が早く抜けていくためである。
【0053】
排出圧(B)が高ければ第2の過程の所要時間が短くなる。但し、理想的な排出圧に比べて高い圧力であると十分に分離されず、回収ガスの純度が高純度なもの又は高濃度に濃縮されたものにはならない。
【0054】
供給ガスの組成(Z)はガス組成を表す指標で、透過ガス成分量/残留ガス成分量である。
【0055】
以上説明した各条件から第2の過程の所要時間(T)は下記式(2)のように関係づけられる。
∝(V×A)/(B×P×S) ・・・(2)
【0056】
さらに、排出圧(B)は、下記式(3)のように関係づけられる。
排出圧(B)∝1/(F×Z) ・・・(3)
【0057】
ここで、混合ガスの供給流量(F)が大きければ、式(3)より排出圧(B)が小さくなる。これは、混合ガスの供給流量(F)が大きければ、より早く充填圧に達するため第1の過程で分離される割合が小さくなり、第2の過程でほとんどが分離されることを意味する。
一方、混合ガスの供給流量(F)が小さければ、排出圧(B)が大きくなる。これは、混合ガスの供給流量(F)が小さいことで、第1の過程で十分に分離されるとともに、残留ガス成分でほぼ充填圧に達するので、充填圧(A)と排出圧(B)との差が小さくなることを意味する。
【0058】
この指標(Z)が大きい場合には、透過ガス成分の分圧が小さいため、排出圧(B)が小さくなる。
【0059】
例えば、後述する実施例に示した膜面積1114cm(膜性能:水素の透過速度=5×10−5cm(STP)/cm/sec/cmHg、(水素/モノシランの分離係数)=約5000)の炭素膜ユニット2が十分に密に備わった密閉容器に、充填圧0.2MPaGでモノシラン10%、水素90%の混合ガスが充圧された場合には、約5分間で排出圧0.12MPaGに達することとなる。
【0060】
(第3の過程)
次に、第3の過程である排出過程では、保持状態の開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器6内(すなわち未透過側である第1の空間11及び第3の空間13)が所定の圧力に到達したときに、未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aを開放して当該未透過ガス排出口5から水素化物系ガスを含む混合ガスを排出して回収する。
これにより、炭素膜モジュール1に供給した混合ガス中の水素化物系ガス濃度よりも濃縮された(高純度化された)水素化物系ガスを含む混合ガスが得られることになる。
【0061】
図3に示すように、第3の過程では、未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aの開放と同時に、未透過流量が上昇する。それと同時に、未透過側の空間である第1及び第3の空間11,13の供給圧力及び未透過圧力が徐々に低下する。
一方、第2の空間12の圧力(透過圧力)には変化がなく、透過ガス排出口4からの希釈ガスの透過流量の値は非常に小さい。
【0062】
なお、第3の過程の所要時間(T)は、特に限定されるものではなく、密閉容器6の体積(V)、排出圧(B)及び排出ガスの流量(排出流量ともいう、G)に応じて適宜選択することができる。
ここで、密閉容器6の体積(V)については第1の過程で説明した通りである。
【0063】
排出圧(B)が高ければ第3の過程の所要時間が長くなる。これは、残留ガス成分量が増えているためである。
【0064】
排出流量(G)が大きければ第3の過程の所要時間が短くなるが炭素膜ユニット2に破損等のダメージを与える恐れがある。そのため、線速度:10cm/sec以下で供給することが好ましく、線速度:1cm/sec以下とすることがより好ましい。但し、炭素膜2aに対してガス流れが直接当たらないように抵抗板や拡散板などを導入した場合には、この限りではない。
【0065】
以上説明した各条件から第3の過程の所要時間(T)は下記式(4)のように関係づけられる。
∝(V×B)/(G) ・・・(4)
【0066】
例えば、後述する実施例に示した膜面積1114cm(膜性能:水素の透過速度=5×10−5cm(STP)/cm/sec/cmHg、(水素/モノシランの分離係数)=約5000)の炭素膜ユニット2が十分に密に備わった密閉容器に、排出圧0.12MPaGから約100sccmで排出する場合には、約2分間で0MPaGに達することとなる。
【0067】
(第4の過程)
次に、水素化物系ガスを含む混合ガスの回収開始から所定時間が経過したとき又は密閉容器6内(すなわち未透過側である第1の空間11及び第3の空間13)が所定の圧力に到達したときに、未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aを閉止する。これにより、第1の過程の開始直前の状態に戻ることとなる。
【0068】
本発明のガス分離方法は、このような第1〜第4の過程の分離操作(以下、「回分操作」という)を連続的に繰り返す(このような方式を「回分式」という)ことを特徴としている。
このような回分操作により、分子径の大きな水素化物系ガスは、第1及び第2の過程において炭素膜ユニット2の高圧側(炭素膜の未透過側)に濃縮分離され、第3の過程で回収される。一方、分子径の小さな水素、ヘリウム等の希釈ガスは、炭素膜ユニット2の低圧側(炭素膜の透過側)から第1〜第4の過程において連続的に回収される。
【0069】
なお、本発明のガス分離方法における1サイクルの所要時間(T)を上述した各過程の所要時間によって表現すると下記式(5)のように表すことができる。
T=T+T+T ・・・(5)
【0070】
ところで、従来のガス分離方法において、例えば、気体分離膜として炭素膜に分子径の小さな水素90%、分子径の大きなモノシラン10%の混合ガスを連続的に供給した場合(連続式ガス分離方法)、透過側では水素がほぼ100%となり、未透過側ではモノシランが約60%(水素40%)の分離性能であった。
【0071】
これに対して、本発明の回分式ガス分離方法によれば、透過側において水素がほぼ100%、未透過側においてモノシランが約90%以上(水素10%以下)の分離性能で分離操作を行うことができる。
【0072】
また、気体分離膜として通常の高分子膜を用いた場合では、分子径が4Å程度以上であってもある程度の透過が生じてしまう。しかし、本発明のガス分離方法に用いる炭素膜の場合であれば分子径が4Å程度以上ではほとんど透過せず、さらに分子径が大きくなればさらに透過しない。このように、高分子膜よりも炭素膜のほうが、分子ふるい作用の効果が期待できる。
加えて、炭素膜は、他の分子ふるい作用を持つゼオライト膜、シリカ膜と比べても耐薬品性が優れており、腐食性の強い半導体分野に用いられる特殊ガスの分離には適している。
さらに、炭素膜を中空糸状に成形することで、平膜状、螺旋巻状と比べて、膜モジュールコンパクトに設計することができる。
【0073】
本発明の回分式ガス分離方法において、上記分離操作を行う温度(操作温度)は特に限定されるものではなく、要求される気体分離膜の分離性能に応じて適宜設定することが可能である。ここでいう操作温度は、炭素膜モジュール1の周辺温度を想定しており、−20℃〜120℃の温度範囲が適切とされる。操作温度を高くすると、透過流量を増大させることができるとともに、回分操作の処理時間を短くすることも可能となる。
【0074】
本発明の回分式ガス分離方法において、(炭素膜ユニット2の高圧側の)圧力(操作圧力)は特に限定されるものではなく、要求される気体分離膜の分離性能に応じて適宜設定することが可能である。具体的には、炭素膜モジュール1へ供給されるガスの圧力は、支持体を使用すれば1MPaG以上に設定することが可能であり、通常は0.5MPaG程度の圧力が保持される。この支持体は中空糸状炭素膜2a…が圧壊しないようにする部材である。操作圧力を高くすれば透過流量を増大させることができ、回分操作の処理時間を短くすることも可能となる。
【0075】
圧力を制御するために、従来の連続式ガス分離方法では、未透過ガス排出口5に背圧弁等を設置する。
これに対して、本発明の回分式ガス分離方法では、操作圧力を制御するために背圧弁を特に設ける必要がない。図1に示した例では、未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aを閉じることにより、操作圧力を制御することができる。未透過側に保持された未透過ガスを取り出すとき、未透過ガス排出口5の開閉バルブ5aを一気に(一度に)開放してしまうと気体分離膜である炭素膜に大きな損傷を与える可能性がある。このため、未透過ガス排出口5に流量計9等を設けて、一定流量で未透過ガスを取り出すことが好ましい。
【0076】
また、図1に示す炭素膜モジュール1において、炭素膜ユニット2の低圧側(透過側)である第2の空間12は、真空に引くことが好ましい。第2の空間12を真空に引くことは、炭素膜ユニット2の高圧側(未透過側)と炭素膜ユニット2の低圧側(透過側)との圧力差を大きくする効果もあるが、炭素膜ユニット2の高圧側(未透過側)と炭素膜ユニット2の低圧側(透過側)との圧力比を特に大きくすることができる。なお、気体分離膜による分離性能には、圧力差、圧力比、どちらも大きいことが好ましいが、分離性能に対しては圧力比のほうが影響を与える。
【0077】
また、図1に示す炭素膜モジュール1において、炭素膜ユニット2の低圧側(透過側)に掃引ガスを流すことも、真空に引くのと同様な効果が得られる。掃引ガス供給口8の開閉バルブを開放して、第2の空間12内に掃引ガスを所定の流量で供給する。
なお、掃引ガスは、透過ガスと同じ成分(すなわち、混合ガスの希釈成分)とすることで透過側のガスも効率良く回収することができる。また、掃引ガスとして、透過ガス排出口4から回収した透過したガスの一部を利用してもよい。
【0078】
本発明の回分式ガス分離方法において、混合ガスの炭素膜モジュール1への供給形態としては、例えば上記のような中空糸状の場合には、中空糸状の炭素膜の中に高圧のガスを供給する場合(芯側供給)と、中空糸状の炭素膜の周りに高圧のガスを供給する場合(外側供給)の二通りのパターンが考えられるが、図1に示すように芯側供給の方が分離性能を向上させて運転することができるために好ましい。
【0079】
本発明の回分式ガス分離方法において、1つの炭素膜モジュール1あたりのガス処理量を増やすためには膜面積を増やす(中空糸状の炭素膜の場合には本数を増やす)、第2の空間12の容積を減らす等がある。後者の場合、ガスと炭素膜とを十分に接触させるために、空間内の構造を工夫したりミキサーを加えたりする必要がある。
【0080】
以下、具体例を示す。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
図1に示す炭素膜モジュールを用いて、回分式のガス分離を行なった。
【0082】
下記のような条件で炭素膜モジュールに混合ガスを回分式で供給して、3サイクル行った。その結果、排出圧が0.12MPaGとなった。1サイクルの所要時間の内訳は、第1の過程(供給過程)約7分間、第2の過程(分離過程)約5分間、第3の過程(排出過程)約2分間となった。また、未透過側及び透過側のガス組成をそれぞれ測定した。なお、体積濃度測定は、熱伝導度検出器を備えるガスクロマトグラフィー(GC−TCD)を使用した。結果を表1に示す。
(炭素膜モジュール)
・中空糸状炭素膜チューブ
・前記チューブの総表面積:1114cm
・25℃に保持
(混合ガス)
・混合ガス組成:モノシラン 10.3体積%
:水素 89.7体積%
(操作条件)
・供給ガス流量:前記混合ガスを約150sccm
・充填圧:0.2MPaG
・透過側圧力:−0.088MPaG(真空ポンプまたはバキュームジェネレータ等を利用)
・排出ガス流量:約100sccm
【0083】
(比較例1)
図1に示す炭素膜モジュールを用いて、連続式のガス分離を行なった。
【0084】
下記のような条件で炭素膜モジュールに混合ガスを連続式で供給して、未透過側及び透過側のガス組成をそれぞれ測定した。なお、体積濃度測定は、熱伝導度検出器を備えるガスクロマトグラフィー(GC−TCD)を使用した。結果を表1に示す。
(炭素膜モジュール)
・中空糸状炭素膜チューブ
・前記チューブの総表面積:1114cm
・25℃に保持
(混合ガス)
・混合ガス組成:モノシラン 10.3体積%
:水素 89.7体積%
(操作条件)
・供給ガス流量:前記混合ガスを約150sccm
・排出圧:0.2MPaG(流量計9ではなく背圧弁を使用)
・透過側圧力:−0.088MPaG(真空ポンプまたはバキュームジェネレータ等を利用)
・排出ガス流量:約100sccm
【0085】
(実施例2)
・供給流量を約200sccmとし、それ以外の条件を実施例1と同じ条件で、回分操作によるガス分離を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例3)
・供給流量を約100sccmとし、それ以外の条件を実施例1と同じ条件で、回分操作によるガス分離を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例4)
・充填圧を0.1MPaGとし、それ以外の条件を実施例1と同じ条件で、回分操作によるガス分離を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例5)
・実施例1の条件において、第2の過程を約4分間になるようにして回分操作によるガス分離を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示すように、実施例1〜5と比較例1とを比較すると、回分式のガス分離を行なった実施例1〜5では、連続式のガス分離を行なった比較例1よりも未透過ガス組成中のモノシラン濃度を高くすることができた。
【0091】
実施例1と実施例5を比較すると、第2の過程の時間を十分に取った実施例1の方が未透過ガス組成中のモノシラン濃度を高くすることができた。
【0092】
実施例1と実施例2、実施例3、実施例4を比較すると、どれも同程度に未透過ガス組成中のモノシラン濃度を高くすることができた。但し、未透過ガスの回収量および1サイクルの所要時間にそれぞれ違いが出た。所要時間は短く、回収量は多く、未透過ガス中のモノシラン濃度は高い条件が最も好ましい。しかし、所要時間と回収量はトレードオフの関係にあることも考慮して、各条件を最適化することが望ましい。
【0093】
上記結果の通り、連続式ガス分離による濃縮と回分式ガス分離による濃縮とを比較すれば、回分式ガス分離による濃縮の方が連続式ガス分離による濃縮より高い濃度に濃縮することができることを確認した。
また、回分式ガス分離の第1の過程の所要時間に応じて、第2の過程の所要時間を十分に取るようにガス分離の各条件を最適化することによって、さらに高い濃度に濃縮することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、分子ふるい作用を持つ気体分離膜を用いて半導体製造向けの水素化物系ガスを分離する装置、設備に適用することができる。特に、水素化物系ガス等の分子径の大きなガス成分と、水素やヘリウム等の分子径の小さなガス成分とを分離する装置、設備に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…炭素膜モジュール(分離膜モジュール)
2…炭素膜ユニット(分離膜ユニット)
2a…中空糸状炭素膜(気体分離膜)
3…ガス供給口
3a…開閉バルブ
4…透過ガス排出口
4a…開閉バルブ
5…未透過ガス排出口
5a…開閉バルブ
6…密閉容器
7…樹脂壁
8…掃引ガス供給口
8a…開閉バルブ
9…流量計
11…第1の空間
12…第2の空間
13…第3の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子ふるい作用を有する気体分離膜を用いて、分子径が3Å以下の希釈ガスと水素化物系ガスとの混合ガス中から前記希釈ガスを分離し、前記水素化物系ガスを濃縮するガス分離方法であって、
前記気体分離膜が収容された密閉容器の、当該気体分離膜の未透過側の空間と連通するように設けられた未透過ガス排出口を閉止し、当該気体分離膜の透過側の空間と連通するように設けられた透過ガス排出口を開放した状態で、ガス供給口を開放して前記密閉容器内に前記混合ガスを供給し、充圧する第1の過程と、
前記混合ガスの供給開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記ガス供給口を閉止して前記混合ガスの供給を停止し、当該状態を保持する第2の過程と、
前記保持状態の開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記未透過ガス排出口を開放して当該未透過ガス排出口から水素化物系ガスを回収する第3の過程と、
前記回収開始から所定時間が経過したとき又は前記密閉容器内が所定の圧力に到達したときに、前記未透過ガス排出口を閉止する第4の過程と、を備え、
前記第1〜第4の過程を連続的に繰り返すことを特徴とするガス分離方法。
【請求項2】
前記気体分離膜が、中空糸状又は管状の炭素膜であることを特徴とする請求項1に記載のガス分離方法。
【請求項3】
前記水素化物系ガスが、アルシン、ホスフィン、セレン化水素、モノシラン、モノゲルマンのうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−230035(P2011−230035A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101381(P2010−101381)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】