説明

ガス化溶融炉を用いた高効率発電方法及び装置

【課題】エネルギーロスを極力少なくして発電端効率を最大化することを可能にするガス化溶融炉を用いた発電方法の提供。
【解決手段】廃棄物を塊状化してガス化溶融炉1の上部空間の下部炉壁に設けた装入口から装入し、ガス化溶融炉1下部aに酸素濃度80%以上の高酸素濃度ガスを吹込んで廃棄物を燃焼させ、廃棄物の装入レベル以上の位置bに酸素含有ガスを吹き込んで発生ガスの部分燃焼を行い、発生ガス3の温度を500℃〜1000℃以下にし、該発生ガス3をそのまま又は減温塔3で冷却した後、耐熱性フィルターを用いた中温除塵装置4に導入して除塵し、除塵されたガスを中温のままガス炊きボイラー5で燃焼させて発電機6を用いて高い発電端効率で発電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物をガス化溶融炉で処理して得られる発生ガスを燃料として用いて発電するに際し、ガス中の腐食成分を事前に除去することにより、後段のガス焚きボイラーで高温、高圧蒸気を発生させ、高効率に発電する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、廃棄物処分場の不足などが顕在化しており、産業廃棄物あるいは一般廃棄物の多くは、発生したままの姿で、あるいは何らかの事前処理の上、焼却処分され減容化された後に埋立などの最終処分が行われる場合が多い。上記した焼却処分の方法としては様々な方法が挙げられるが、近年、焼却場における発生ガス中のダイオキシンなど有害物質の管理が問題となっており、高温酸化雰囲気で有害物を分解することが可能な処理方法が求められてきている。 また、廃棄物を処理する際に発生するエネルギーを有効活用するニーズが高まり、高効率発電に対するニーズが高い。
【0003】
このような高温処理が可能な廃棄物処理方法として、廃棄物を熱分解溶融炉に装入し、乾燥、予熱、熱分解、燃焼、溶融し、スラグ及びメタルとして取り出す廃棄物ガス化溶融処理方法がある。廃棄物をガス化溶融処理する技術として種々のものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、ガス化溶融炉のガス排出口の後にガス冷却設備及び除塵設備を設け、1000〜1400℃の排出ガスをガス冷却設備で120〜200℃に冷却した後、除塵設備で排出ガス中のダストを分離して、得られたガスを燃料として回収することが記載されている。しかしながら、この方法は、ガス化溶融炉から排出される生成ガスが1000℃以上と高温であり、この生成ガス温度を120〜200℃にまで低下させるためエネルギーの回収効率が低い。
【0005】
特許文献2には、廃棄物燃焼ガスをボイラで熱回収する際に、燃焼ガス中のダストに含まれる塩によってボイラーチューブが腐食されるのを防ぐために、廃棄物を部分酸化炉に供給して、空気あるいは蒸気や排ガスによって酸素濃度を制御された空気主体のガスによって不完全燃焼もしくは部分酸化させ、部分酸化炉出口での酸素換算濃度が−30〜−2%である可燃ガスを生成し、該可燃ガスを500〜800℃で高温除塵装置に導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下としてダスト中の塩の量を低減し、除塵後の可燃ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させ、燃焼したガスの熱をボイラで回収するようにした廃棄物の処理方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、廃棄物燃焼ガスをボイラで熱回収する際に、燃焼ガス中のダストに含まれる塩によってボイラーチューブが腐食されるのを防ぐために、廃棄物を部分酸化炉に供給して、て、空気あるいは蒸気や排ガスによって酸素濃度を制御された空気主体のガスによって不完全燃焼もしくは部分酸化させて炉出口での酸素換算濃度が−20〜1%である可燃ガスを生成し、該可燃ガスを250〜450℃で除塵装置に導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下としてダスト中の塩の量を低減し、除塵された該可燃ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させ、燃焼したガスの熱をボイラで回収するようにした廃棄物の処理方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、廃棄物燃焼ガスをボイラで熱回収する際に、燃焼ガス中のダストに含まれる塩によってボイラーチューブが腐食されるのを防ぐために、廃棄物を部分酸化炉に供給して、空気あるいは蒸気や排ガスによって酸素濃度を制御された空気主体のガスによって不完全燃焼もしくは部分酸化させて炉出口での酸素換算濃度が−20〜1%である可燃ガスを生成し、該可燃ガスを250〜450℃で除塵装置に導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下としてダスト中の塩の量を低減し、その後、該可燃ガスを湿式ガス処理装置に導入して該可燃ガス中の塩化水素濃度を20ppm以下にし、処理された該可燃ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させ、燃焼したガスの熱をボイラで回収するようにした廃棄物の処理方法が記載されている。
【0008】
特許文献5には、廃棄物を燃焼反応を伴う部分酸化炉にて、不完全燃焼、もしくは部分酸化させて炉出口での酸素換算濃度が−20〜1%である可燃ガスを生成し、該可燃ガスを450〜650℃で除塵装置に導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下とし、除塵された該可燃ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させることを特徴とする廃棄物の処理方法
【0009】
特許文献6には、廃棄物燃焼ガスをボイラで熱回収する際に、燃焼ガス中のダストに含まれる塩によってボイラーチューブが腐食されるのを防ぐために、廃棄物を部分酸化炉に供給して、て、空気あるいは蒸気や排ガスによって酸素濃度を制御された空気主体のガスによって不完全燃焼もしくは部分酸化させて炉出口での酸素換算濃度が−20〜1%である可燃ガスを生成し、該可燃ガスを450〜650℃で除塵装置に導入してダスト濃度を0.1g/Nm以下としてダスト中の塩の量を低減し、その後、該可燃ガスを湿式ガス処理装置に導入して該可燃ガス中の塩化水素濃度を20ppm以下にし、処理された該可燃ガスを燃焼炉にて高温で燃焼させ、燃焼したガスの熱をボイラで回収するようにした廃棄物の処理方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献2〜6に記載のものは、空気を用いて廃棄物を燃焼させる方式であるため発生ガス量が多くなり、エネルギー回収後の排ガス量が膨大となってエネルギーロスの極小化を図ることが困難である。さらにダスト量が多く、除塵装置の負荷が大きい。高頻度でのダスト払い落としが必要となり、ガスカロリーが低くなる。フィルターの寿命が短くなる。ガス量が増加するために除塵装置が大型化する。
また、特許文献1〜6記載の方法は、空気を炉底部のみに供給する方式であって、炉下部に廃棄物ガス化に必要な酸素を供給する一方で、炉上部に発生ガス温度制御・ガス改質に必要な酸素を供給するという方式を採用していないため、炉の操業安定が図れないという欠点がある。
【0011】
特許文献7には、従来の発電装置を備えた廃棄物熱分解処理設備においては、熱分解ガス中に含まれる塩化水素ガスによる廃熱ボイラの伝熱管の高温腐食を防止するために、前記伝熱管の表面温度を350℃以下に抑えるべく、燃焼室4aでの熱分解ガスの燃焼条件を過剰空気燃焼にして、空気の過剰分の冷却効果により、発生する燃焼ガスの温度を800〜900℃程度に維持して、廃熱ボイラの蒸気条件を、蒸気温度300℃、蒸気圧力2〜2.5MPa程度に低く抑えていることから、熱エネルギーの回収効率は極めて低いという欠点を解消するために、廃棄物熱分解溶融炉からの生成ガスを燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置からの燃焼排ガスにより蒸気を発生する蒸気発生装置と、前記蒸気発生装置からの蒸気によってタービンを駆動して発電する発電装置とを備えた廃棄物熱分解処理設備において、廃棄物熱分解溶融炉の後に燃焼ガスに消石灰粉末などの脱塩素剤を添加して燃焼ガス中の塩素化合物ガスを除去する脱塩素機構を設けて塩素化合物ガスを固体化合物として固定し、この固体化合物を含む燃焼ガスを高温集塵機に導入して固体化合物を除去し、以て、蒸気発生装置に供給する燃焼ガスの温度を1100〜1200℃程度に高め、発生蒸気温度を500℃程度に高めるようにすることが記載されている。
【0012】
しかしながら、特許文献7記載の方法は、脱塩剤を用いるためダスト濃度が高くなると共に、廃棄物をそのまま溶融炉の炉頂から炉内に装入するためダスト飛散も多くなるため、除塵装置を大容量のものとする必要があり、エネルギロスの極小化を達成することができない。また、特許文献7記載の方法は、空気を炉底部のみに供給する方式であって、炉下部に廃棄物ガス化に必要な酸素を供給する一方で炉上部に発生ガス温度制御・ガス改質に必要な酸素を供給するという方式を採用していないため、処理量を変更すると炉頂でのガス温度が変化してしまい、ひいてはガスに含まれる炭化水素成分も変化するため、除塵温度を500〜700℃の高温にしておかないと操業ができないという欠点があり、更に、除塵温度が500〜700℃のため、フィルター寿命が著しく短いという欠点がある。
【0013】
【特許文献1】国際公開第00/45090号パンフレット
【特許文献2】特開2001−334243号公報
【特許文献3】特開2000−161638号公報
【特許文献4】特開2000−161623号公報
【特許文献5】特開2000−161622号公報
【特許文献6】特開2000−161637号公報
【特許文献7】特開平10−103640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、廃棄物をガス化溶融処理し、その発生ガスによってボイラ発電をするに際して、エネルギーロスを極力少なくして発電端効率を最大化することを可能にするガス化溶融炉を用いた発電方法を提供することにある。さらに、ボイラ発電において高効率を達成するために、発生ガスをボイラーに導入する前に塩などの腐食成分を取り除く際の、除塵負荷を低減させ、安定操業が達成できるガス化溶融炉を用いた発電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は鋭意検討した結果、上記課題を解決するには、ガス化溶融炉の炉頂温度を可能な限り低くすること、具体的には500℃以上、1000℃未満に調節することによりボイラ発電における発電端効率を最大化することが可能であることと、塩などの腐食成分以外のダスト発生量を低減させたガス化溶融炉を用い、除塵負荷を低減させることにより、安定操業を達成できることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は次に記載するとおりの構成を有する。
【0016】
(1)廃棄物をガス化溶融炉でガス化溶融処理して得られる発生ガスをボイラー燃焼させて発電するガス化溶融炉を用いた発電方法において、該廃棄物を圧縮装置によって圧縮前の廃棄物の密度の2倍以上、20倍以下になるように圧縮された圧縮ブロックとし、該圧縮ブロックを該炉本体の上部空間部の下部炉壁に設けた装入口から炉内に落下させずに、もしくは、炉内での落下距離が3m以下となるように供給し、該ガス化溶融炉下部に酸素濃度80%以上の高酸素濃度ガスを吹込んで廃棄物を直接燃焼させ、発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満にし、該発生ガスをそのまま又は冷却した後、耐熱性フィルターを用いた中温除塵装置に導入して除塵し、除塵後のガスを中温のままボイラー燃焼して発電することを特徴とするガス化溶融炉を用いた発電方法。
(2)廃棄物の充填層より上の位置で酸素含有ガスを吹き込んで部分燃焼を行い、該酸素含有ガスの吹込み量を調節することによって、前記発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満に調節することを特徴とする上記(1)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(3)前記中温除塵装置への前記発生ガスの導入温度を250℃以上、500℃以下とすることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(4)前記ガス化溶融炉と前記中温除塵装置の間に、もしくは、ガス化溶融炉頂部の発生ガス流路に前記発生ガスの温度を低下させる装置を配設したことを特徴とする上記(1)〜(3)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【0017】
(5)ガス化溶融炉上部空間に水を噴霧する装置を配設したことを特徴とする上記(1)〜(4)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(6)前記発生ガスの温度を低下させる装置が水噴射式のガス冷却装置であるか、または、水冷壁/ボイラー式装置であるか、または、これらを併用した装置であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(7)炉内の廃棄物の層高レベルを計測および/または計算し、炉内での落下距離が3m以下となるように廃棄物の供給を制御することを特徴とする上記(1)〜(6)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(8)炉内の廃棄物の層高レベルが装入口を少なくとも部分的に覆う以上のレベルであることをプッシャー圧で確認しながらおよび/または層高レベルを計算し、廃棄物を炉内で落下させることなく供給することを特徴とする上記(1)〜(7)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(9)前記炉内の廃棄物の層高レベルの最高点が炉底より6m以下であることを特徴とする上記(1)〜(8)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【0018】
(10)炉の炉体側壁に電磁波の発信器と受信器とを設置して、炉内を透過する電磁波信号の強度から、炉内装入物の有無を判定して廃棄物の層高レベルを計測することを特徴とする上記(1)〜(9)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(11)前記炉内を透過する電磁波信号の強度から、炉内装入物の有無を判定して廃棄物の層高レベルを計測する場合の計測レベル位置が装入口レベル下3mのレベルから装入口レベルまでの位置であることを特徴とする上記(1)〜(10)に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
(12)廃棄物をガス化溶融処理するガス化溶融炉、ガス化溶融処理で得られる発生ガスからダストを除去する中温除塵装置、除塵後の発生ガスを燃焼させるボイラー及びボイラーによって発生した蒸気を用いて発電する発電機を備えてなる、ガス化溶融炉を用いた発電装置において、該ガス化溶融炉が、廃棄物を圧縮して圧縮前の廃棄物の密度の2倍以上、20倍以下に圧縮された圧縮ブロックとするための圧縮装置、該圧縮ブロックをガス化溶融炉の上部空間部の下部炉壁に設けた装入口から炉内に、炉内での落下距離が3m以下となるように廃棄物の供給量を制御して装入する手段及び該ガス化溶融炉下部に酸素濃度80%以上の高酸素濃度ガスを吹込む手段を有していることを特徴とする発電装置。
(13)前記ガス化溶融炉の上部空間に酸素含有ガスを吹込む手段を有することを特徴とする上記(12)に記載の発電装置。
(14)ガス化溶融処理で得られた発生ガスの温度を低下させる装置を更に設けたことを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の発電装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガス化溶融炉を用いる発電方法によれば、廃棄物をガス化溶融する際に得られ高温の発生ガスを用いて、エネルギーロスを極力少なくして発電端効率を最大化することができる。また、除塵負荷も小さいため安定操業が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ガス化溶融炉を用いた発電方法に関するものであるが、まず本発明の前提技術である廃棄物のガス化溶融処理方法の例を図1に基づいて説明する。
【0021】
この方式の基本的な構成をフローに沿って説明すると次の通りである。
ピットに集積された都市ごみ、産業廃棄物等の廃棄物は圧縮装置12で廃棄物の密度で2倍以上、20倍以下になるように圧縮された圧縮ブロック24とし、該圧縮ブロック24をガス化溶融炉本体1の上部空間で、発生ガス部分燃焼部より下の炉壁に設けた装入口から炉内に落下させずに、もしくは、炉内での落下距離が3m以下となるようにガス化溶融炉に送られる。ガス化溶融炉の下部(図1のa位置)には、ランスが配置され、このランスによって炉内に高濃度酸素ガス21が導入され、この高濃度酸素ガス21が廃棄物中の炭素をガス化し、一酸化炭素と二酸化炭素が生成する。また、高温水蒸気が存在するため、炭素と水蒸気とによる水性ガス反応が生じて、水素と一酸化炭素が生成される。更に、有機化合物(炭化水素など)も水蒸気と反応して、水素と一酸化炭素が生成する。 廃棄物の装入レベル以上の位置(図1のb位置)からは酸素含有ガス22が吹き込まれ、廃棄物から発生したガスを部分燃焼して発生ガス2として炉頂部から排出される。この時、b位置から供給される酸素含有ガス22の供給量を調整して発生ガス温度が500℃以上、1000℃未満となるようにする。
【0022】
一方、ガス化溶融炉下部で生成した溶融物はガス化溶融炉から均質化炉13へ流れ出る。この溶融物は主に溶融メタルおよび溶融スラグにより構成されるが、均質化炉13において十分な滞留時間をとることにより、比重分離される。溶融物は水砕システムに流れ落ちて、冷却固化され、メタル・スラグの混合物は、磁選によりメタルとスラグに分離される。回収されたメタル及びスラグは資源として利用することが可能である。
【0023】
次に本発明の発電方法のプロセスを図2を用いて説明する。
前記ガス化溶融炉1からの発生ガス2はそのまま耐熱性フィルターを用いた中温除塵装置4に供給するか、ガス化溶融炉1と中温除塵装置4との間に設けた減温塔3において発生ガス2に水を噴射する等して発生ガスの温度を低下させてから中温除塵装置4に供給する。発生ガス2を冷却するのは、中温除塵装置4の耐熱性を考慮してのことであるが、中温除塵装置4を出る発生ガスの温度は高い方が好ましいので、フィルター材の耐熱性に応じて冷却温度を設定する。
【0024】
中温除塵装置4でダストを除去された発生ガスはガス炊きボイラー5に供給されて燃焼し蒸気を発生する。発生した蒸気は蒸気タービン発電機6においてタービンを駆動して発電する。
中温除塵装置4で分離されたダストは飛灰DXN類揮発脱離分離装置11において飛灰中のダイオキシン類やその他の有機化合物を高温で揮発脱離し、排ガス中に移行させ、無害化された飛灰となって回収され、山元還元用の原料として利用される。
【0025】
ガス炊きボイラー5で発生した燃焼ガスは減温塔で温度を低下させた後、消石灰を添加して燃焼ガス中の塩素化合物ガスを固定化し、バグフィルター8に供給して脱塩残渣等の固形分を除去される。その後、再加熱器で加熱した後、触媒反応装置10において、有害ガスを除去した後、排ガスとして放出される。
【0026】
本発明においては、廃棄物を圧縮装置で圧縮前の廃棄物の密度の2倍以上、20倍以下になるように圧縮して圧縮ブロックとし、該圧縮ブロックを該炉本体の上部空間部の下部炉壁に設けた装入口から炉内に落下させずに、もしくは、炉内での落下距離が3m以下となるようにガス化溶融炉に供給する。
【0027】
圧縮ブロックとすることにより、該圧縮ブロックがガスシールとして機能し、ガス化溶融炉からCO等の有害ガスが廃棄物ピットに逆流するのを防ぐことができる。
また、廃棄物が圧縮ブロック化されているため、廃棄物を炉に装入する際に廃棄物がばらけてダストが飛散するのを防ぐことができる。このため、ダスト発生量が減少し、後段の中温除塵装置の負荷を低減することができる。さらに、廃棄物を圧縮ブロック化することにより、炉内の廃棄物充填層部の通気性が向上するので、ガスの吹抜け、チャンネリングを防止し、ダストの飛散量を低減できるばかりでなく、下からの高温ガスと廃棄物充填層間の熱交換を良好に保てるため、発生ガス温度の下限値を低下させることができる。
【0028】
ここで圧縮密度を2倍以上、20倍以下とし、かつ、落下距離が3m以下としたのは、圧縮密度を2倍以上、かつ、落下距離が3m以下の場合に、ガス化溶融炉から発生ガスに随伴されて排出されるダストの量が十分少ないからである。また、圧縮密度20倍以上ではその効果が飽和したため、20倍以下とした。
【0029】
本発明においては、燃焼補助剤としてコークスを使用せず、酸素濃度が容量比で80%以上の高酸素濃度ガスを用いる。これは、コークスは高価であるうえ、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出源となるため使用しないことが望ましいからである。
そして、本発明のガス化溶融炉においては、前記したようにコークスのような高発熱量の補助燃料を使用しないので、羽口前温度を高くして、スラグを溶融させるために酸素濃度が80%以上の高酸素濃度ガスを送風する。酸素濃度を80%以上とした理由は、これを下回る酸素濃度ではスラグを安定的に溶融させることが困難となるためである。
【0030】
本発明においては、炉下部に廃棄物の充填層を形成し、充填層下部で酸素濃度80%の高酸素濃度ガスを送風することにより廃棄物を部分燃焼してガス化する。この場合、廃棄物の供給量は充填層のレベルを測定し減少分のみを供給するため、基本的に、かつ、必然的に充填層下部からの高酸素濃度ガスの送風量は廃棄物をガス化するための相当量となる。従って充填層を通過するガス量は必然的に最少となる。
【0031】
燃焼補助剤として酸素濃度が80%以上の高酸素濃度ガスを用いることにより、空気を用いる場合に比べて充填層を通過するガス量を低減することができるため、充填層内のガス流を安定化することができ、ガスの吹抜けや荷下がりの不安定化を防止することが出来る。また、酸素が高濃度であるため燃焼効率が高まってガス同伴粒子が少なくなるため、除塵装置の負荷が小さくなり、これにより、除塵装置を小型化することができる。酸素濃度が80%より小さくなると、充填層を上昇するガス量が増加しガスの速度が大きくなるため、充填層でのガスの吹抜け、チャンネリングが起こりやすくなり、ひいては飛散するダスト量が増加し、炉頂温度を低下させることが出来なくなる。
【0032】
本発明においては、炉頂温度を必要以上に高めることなく、500℃以上、1000℃未満にすることにより、トータルのエネルギーロスを極小にすると共に、高分子量の炭化水素をガス状のまま、すなわち中温で除塵装置に導入するので、タールは発生ガスと共に除塵装置を通過してボイラー燃焼に持って行ける。これによりタールの潜熱をボイラーで回収でき、発電端効率を低下させることがない。また、除塵システムにタールが詰まるトラブルが発生することがない。
【0033】
炉頂温度が1000℃以上となると合成ガスの部分燃焼量が増加するためガスカロリーが低下し、結局、エネルギーロスが多くなる。また、炉頂部分からの放散熱が大きくなり、後段のボイラーでの熱回収量が減少し、最終的に発電端効率が低下する。
また、500℃以上としたのは、500℃未満の場合炭化水素の分解が不十分になり、後段の中温除塵温度でガス状を保てないからである。また、充填層高さが数メートル以下のガス化溶融炉では、発生ガス温度を500℃未満に一定に制御することが実質的に困難であったためである。
【0034】
ガス化溶融炉から排出された発生ガスはそのまま又は冷却した後、耐熱性のある材料をフィルター材とした中温除塵装置に導入して除塵する。除塵によりすすなどの炭素系のダスト、シリカやアルミナなどの灰分、NaCl、KClなどの塩分などの固形分が除去される。これにより、後段のボイラーにおいてボイラーチューブへのこれらのダストの付着が格段に少なくなり、熱回収効率が向上するばかりでなく、特に塩類が除去されるためボイラーの腐食を防止できることから、蒸気温度、圧力を高く設定でき、発電効率が向上する。
【0035】
本発明では、廃棄物の充填層より上の位置で酸素含有ガスを吹き込んで部分燃焼を行い、発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満に調節する。炉上部に吹き込む酸素含有ガスは専ら発生ガス温度を制御するために用いられるため、廃棄物処理量とは全く独立に発生ガス温度を調整することができる。すなわち、この酸素含有ガス量を減らすことによって温度を低下させることができ、酸素含有ガス量を増やすことによって温度を上昇させることができる。
【0036】
また、操業では不可避的に廃棄物の成分、熱量、供給量が変動するが、これらを原因とする発生ガス温度の変動を、該酸素含有ガス量で抑制し、実質的に一定値に制御することができるため、後段の中温除塵装置へのガス導入温度の制御を容易にすることができる。
【0037】
発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満に調節するため、充填層からのガスに含まれる分子量の比較的大きい高融点炭化水素成分を分解して、後段に設けられる除塵装置でのタール付着を防止することができる。 但し、充填層で吹抜け、流動化が起こっていると、ある温度より低下しなくなるので、温度制御の観点からは、充填層の吹き抜け、流動化を防止することが好ましい。
【0038】
本発明においては、廃棄物を充填層上端付近から装入するため、廃棄物装入位置での雰囲気温度は発生ガス温度ほどには高くない。このため雰囲気のガスは充填層で熱交換されてある程度低い温度のガスであるため、装入位置での急激なガス化を避けることができる。さらに、急激なガス化による発塵を抑制することができ、後段の除塵の負荷を低減することができる。
さらに、廃棄物を充填層上端付近から装入することにより、装入位置において加熱され、ガス化したガスは必ず炉上部のより高温な部分を通過するため、後段の除塵装置へ、分子量の比較的大きい高融点炭化水素成分が分解されたガスを供給することを担保することが出来る。
【0039】
中温除塵装置に導入される発生ガスの温度は250℃以上、500℃以下であることが好ましい。ガス導入温度が250℃未満であると、発生ガス温度との温度差が大きくなり、その分熱回収量が減少することになる。また発生ガス中に含まれる成分が温度低下によりタールとして中温除塵装置に付着し、中温除塵装置の圧力損失の上昇速度が大きくなるなどの問題が発生する。そこで、中温除塵装置へのガス導入温度は250℃以上とした。ガス導入温度が500℃を超えると中温除塵装置のフィルターがガス中の灰分により腐食を受けてフィルターの寿命が著しく短くなる。そこで、中温除塵装置へのガス導入温度は500℃以下とした。 また、本発明は中温除塵装置によってボイラーチューブの腐食成分であるNaClやKClなどの塩を除去することが必要なので、これらの塩が固体である温度範囲において成り立つ。
【0040】
但し、ガス導入温度が高ければ高いほど熱回収効率が良くなるので、500℃を超えるガスを処理しても侵食されないフィルター材が利用可能であれば、中温除塵装置へのガス導入温度が500℃を超えても良いことはいうまでもない。またフィルター材としては耐熱性及び耐腐食性の点からセラミックフィルターを用いることが好ましいが、耐熱性及び耐腐食性を有するものであれば材料は制限されない。
【0041】
該中温除塵装置への該発生ガスの導入温度を250℃以上、500℃以下に調整する具体的な方法は、図2に示したようにガス化溶融炉と中温除塵装置の間に、減温塔などの発生ガスの温度を低下させる装置を配設すること、もしくは、図3に示すようにガス化溶融炉頂部の発生ガス流路に発生ガスの温度を低下させるガス冷却装置25を配設することが、望ましい本発明の実施の形態である。これにより確実に該中温除塵装置への該発生ガスの導入温度を250℃以上、500℃以下に調整することができる。
【0042】
また別の発生ガス温度低下手段としては、図4に示すように、ガス化溶融炉上部空間に水噴霧装置26を設けてガス温度を低下させる方法がある。この様な装置を用いると、ガス冷却装置を別に設置するよりも装置全体がコンパクトになり、また、ガスを冷却する際に発生するダストの一部は炉内に落下するために、通常必要なダスト排出装置も不要となる。
【0043】
発生ガスの温度を低下させるための装置は特に制限されないが、例えば、水噴射式のガス冷却装置を用いることができる。水噴射式のガス冷却装置を用いると、水噴霧量により冷却装置出側のガス温度を調節することができ、発生ガス温度が変動した場合に有利である。また、冷却装置として水冷壁/ボイラー式装置を用いるとガスの顕熱を回収して有効利用できる。
【0044】
ここで水冷壁/ボイラー式装置とは発生ガスの熱を水冷壁などの熱交換器内の冷媒で回収する装置で、回収した熱は後段のボイラー−タービン式の発電装置において有効利用が可能である。さらに、水噴射式のガス冷却装置と水冷壁/ボイラー式装置を併用することにより、両者の利点を利用することができる。この場合ガス溶融炉炉頂上部空間での水噴霧と、ガス化溶融炉と中温除塵装置の間の水冷壁/ボイラー式の減温塔の組合せでもよいし、ガス化溶融炉と中温除塵装置の間の減温塔内に水冷壁/ボイラー式冷却装置と水噴霧の双方を設置してもよい。
【0045】
本発明においては、廃棄物の圧縮ブロックを炉本体の改質部より下の炉壁に設けた装入口から炉内に炉内での落下距離が3m以下となるように供給するか、又は、落下させることなく供給することにより炉内における廃棄物の飛散を防止する。
具体的には、次の(1)又は(2)のようにする。
【0046】
(1)炉内の充填層レベルが炉壁の装入口より3mを超えないように、充填層レベルを調整することにより、飛散を防止する。ここで、落下距離とは廃棄物が炉内に落下する直前の廃棄物の下端と廃棄物装入面位置との垂直方向距離をいう。
(2)炉内の充填層レベルの一部が装入口底部より上になるように、充填層レベルを調整することにより、飛散を防止する。
【0047】
上記のように密度及び落下距離を制御することにより、廃棄物が炉内装入時においても圧縮形状を維持することができるので、ブリッジの形成が少なくなるだけでなく、片寄りが少なくなり、吹き抜けが少なくなる。
充填層レベルの検出は次のようにして行うことができる。
a.充填層レベルを直接、マイクロ波などを用いたレベル計で検出する。
b.炉内挿入時にプッシャー圧で充填層レベルを感知する。
c.計算によって充填層レベルを求める。
【0048】
廃棄物を圧縮するための方法は、押出法によるバッチ圧縮とすることが好ましい。
スクリュー圧縮などの連続式の圧縮装置にすると、圧縮ブロックの大きさが小さく、圧縮ブロックの強度も弱くなる。圧縮ブロックの形態を大きくするためには、バッチ式の圧縮方法が好ましい。また、圧縮の形態を保持しながら、溶融炉に装入するには、そのまま押出して装入するのが良い。圧縮の方向と押出しの方向とが同方向であることにより、圧縮ブロックによるガスのシール性が向上する。
【0049】
また、この圧縮ブロックのサイズは高さが0.1m以上1m以下、幅は0.1m以上、好ましくは0.3m以上炉内幅以下が好ましく、長さは0.1m以上、1m以下が好ましい。
圧縮形状は矩形でなくても良いが、処理能力をあげるために大きくする場合は、平板状である方がよい。また、溶融炉への装入時の圧縮ブロックが大きくなりすぎるのは、通気性の面からみて好ましくない。
【0050】
圧縮ブロックの大きさが高さ0.1m未満であるとダストの飛散率が高くなる。また、圧縮ブロックの高さが1mを超えると圧縮ブロックの上部部分が装入時に解砕する。また、圧縮ブロックの幅が0.1m未満であるとダストの飛散率が高くなる。高さと異なり、幅は装入時の落下による解砕の問題が少ないため、0.3m以上がより好ましい。圧縮ブロックの幅が炉内直径より大きいと装入時に圧縮ブロックが解砕される。
【0051】
圧縮ブロックは、炉内に装入するまでにできるだけ形状が維持できるように、傾斜をつけて移動するのが好ましい。また、炉内の層高さと圧縮ブロックとのレベル差は少ないことが好ましい。レベルは連続的、あるいは、装入時間間隔以上の断続的計測が良いが、計算によってレベルを算出するのも可能である。レベルの計算は、例えば、全装入量(廃棄物+ガス量)−発生量(発生ガス量、発生水量、発生溶融物量)などで計算される滞留量を炉内滞留物密度と炉内面積からレベルの偏差を求める方法によっても良い。
【0052】
圧縮ブロックのガス化溶融炉への装入は、炉内の堆積層の上部と炉の発生ガス部分燃焼部との間の炉壁部分に装入口を設けて装入することが好ましい。炉の上部から投入すると落下距離が大きくなり、落下時に、圧縮によって形成されたブロックが解砕されやすくなるからである。
炉内の廃棄物の層高レベルの最高点は炉底より6m以下とすることが好ましい。これは、層高が高いとブリッジ(棚吊り)が起きる可能性が高くなるためである。層高が低いと短時間で溶融ガス化するため、解砕が少なくて済むし、充填層圧が低く押し潰れが少なく、解砕が少なくなる。
【0053】
図4は、廃棄物の圧縮ブロックが炉内において落下することがないようにした例を示したものである。図4に示すように、トンネル式加熱炉は炉の底面が炉の廃棄物装入口側に向かって下方に傾斜しており、また、炉内の充填層レベルの一部が装入口底部より上になるように充填層レベルが調整されているので、圧縮ブロックは落下することなく炉内に供給される。
【0054】
また、炉内の廃棄物の定常状態における層高レベルの最高点が炉底より6mを超えると、炉内のレベル管理位置にまで到達する非定常状態が定常状態に復帰するのが容易ではなくなる。さらに、堆積層が高くなると炭化、溶融した廃棄物による圧力損失の高い部分が長くなり、廃棄物の降下異常(棚吊り)、吹抜けの原因となり、ひいては圧縮ブロックの解砕、ダスト飛散量の増加につながる。
【0055】
前記のトンネル炉は炉内側落ち口で下り傾斜となるように形成しても良い。下り傾斜にすることで、装入時の落下による圧縮ブロックの解砕が防止できる。また、下り傾斜にすることで、圧縮ブロックの上部に空隙が空き、放射熱を受けやすくなるとともに、乾燥または熱分解によって生じたガスも流れやすくなる。
【0056】
本発明においては、前記したように、炉内での廃棄物の落下距離を3m以下とすることが必要である。
このため、廃棄物の炉内での堆積層の層高レベルをレベルセンサーを用いて検知し、圧縮物量を設定処理速度で割って算出された時間よりも所定時間経過した後に所定の層高レベルの検出が無い場合、圧縮ブロックを押し出す判断をして装入量を制御する。
また、レベルセンサーを設置しない場合においては、管理すべきレベル高になっているかどうかを計算し、同様の制御を行う。レベルの計算は、例えば、全装入量(廃棄物+ガス量)−発生量(発生ガス量、発生水量、発生溶融物量)などで計算される滞留量を炉内滞留物密度と炉内面積からレベルの偏差を求める方法によっても良い。
【0057】
ガス発生量は均一化することが好ましいので、装入速度も均一化することが好ましい。このため、廃棄物の圧縮ブロックの溶融炉への装入は、挿入口から段階的に押し出すことが好ましい。廃棄物の塊状物の複数個を一度に装入すると、発生するガス量の変動が大きくなる。
【0058】
装入速度を均一化するための方法について述べる。
堆積層の層高管理レベル(以下、SLと表す)を検知するレベルセンサーを用いて、層高レベルがSL以下になったことを検知(以下、SL検知という)した場合に、SL検知状態でなくなるまで、必要に応じ1回または複数回、装入を行うことを基本とする層高レベル管理方法において、装入速度を均一化するための方法の例について説明する。
設定廃棄物処理量W(kg/s)、プレス1回分の廃棄物量w(kg/回)とすると、平均装入インターバルt(sec/回)はwをWで除した値で定義される。前回の装入からの経過時間をT(sec)とするとき、次回装入タイミングをT=at〜at(a=0.1〜1、a=1〜10)であるようにする。
装入してすぐにSL検知or1回の装入ではSLを超えない場合でもT=atとなるまでは待って次回装入することにより、装入間隔をあけて、連続装入を防止する。また棚吊り等によりなかなかレベルが下がらず、T=atを超えてもSL検知がない場合でも1回装入する。その後さらにat(sec)SL検知がない場合1回装入、という繰り返す。こうすることにより、装入物の棚吊りが崩壊し、一気にレベルが下がっても次の連続装入を回避することができ、ひいてはガス発生量の均一化が図れる。
【0059】
本発明を実施するに際しては、ガス化溶融炉において、廃棄物装入部の位置における炉径よりも、上部の炉空間の炉径を大きくすることが好ましい。このようにすることにより、反応炉の上方での空塔速度が低下するので飛散する粒子量を低下させることができる。
【0060】
次に溶融炉内における装入物の層高レベルを検知する方法について具体的に述べる。
図6に本発明において用いることができる層高レベル検知装置を設けた炉体の断面部分略図を示した。図において、炉体31は耐火物32とこれを覆う炉体ケーシング(鉄皮)33とからなり、炉体側面の測定座34に設けた測定ノズル35に電磁波発信器36と電磁波受信器37とが対向して設けられている。電磁波としてはマイクロ波を用いることが好ましい。マイクロ波の出力は0.5kW以上の高出力のものがよい。好ましくは測定ノズル35内には、セラミックファイバ等の断熱耐火繊維材またはその成形物を充填して発信器及び受信器に炉内の熱の影響が及ばないようにし、使用しない測定座には、炉内ガスの漏洩防止のために蓋をしておく。また、必要に応じて窒素ガス又は空気によりパージして発信器及び受信器を冷却するようにしてもよい。
【0061】
上記した例は、発信器から発信され炉内を貫通してきたマイクロ波を受信器で受信する貫通型のものであるが、発信器と受信器とを一体化した反射型の送受信器を用い、炉壁に測定口を一箇所だけ設けて、この送受信器を配設して測定してもよい。
【0062】
図6には、電磁波受信器と電磁波送信器の組合せを炉体の縦方向に2段設けたものを示したが、これを3段以上を設けても良い。また、複数段設ける場合には、取付け位置の上限は装入物が最も高く堆積すると思われる高さが望ましく(朝顔下部もしくは朝顔下),下は主羽口上部が下限である。取付け位置は、その中間ならばどの高さでも、何段でもよい。
【0063】
図示した例においては、電磁波の発信器及び受信器の取付座部分の耐火物には開口を設けておらず、炉体の耐火物を介して電磁波を検知するようにしている。これは、開口部を設けると開口部に炉内の飛散物が付着し、堆積して測定が不能となるので、これを避けるためである。
【0064】
また、既に開口部が設けられている炉体の該開口部に発信器及び受信器を設ける場合には、この開口部に断熱耐火材等の詰め物を充填して、炉内の飛散物が付着・堆積しないようにする。上記のようにすることにより、長期間にわたって安定して層高を検知することができ、機器の長寿命化と保守作業の大幅な削減を図ることができる。
【0065】
電磁波の発信器としては高出力のものを用いることが好ましく、また、電磁波の受信器としては高感度のものを用いることが好ましい。発信器及び受信器の対の設置レベル(取付座の高さ)は、層高管理値に応じて決定するが、一箇所(一レベル)だけでなく、操業状況に応じた層高管理値の変更に対応するため、又は、複数点の検知を可能とするために、複数箇所(複数レベル)に設置することができる。
【0066】
電磁波としてマイクロ波を用いた場合については、熱遮断用のレンガの炉内側表面に溶融スラグが付着すると、マイクロ波の廃棄物装入レベルの検出値自体に信頼性が確保されない最大の原因となる。この信頼性を確保するために、図7に示した装置では、前記マイクロ波発信装置およびマイクロ波受信装置を溶融炉内の高温雰囲気から保護する熱遮断用のレンガを配設せず、マイクロ波送信装置の導波管の先端部を、溶融炉の炉体レンガの炉内側壁部まで伸延させた構造としている。
【0067】
炉壁は炉内レンガ47と鉄皮48とからなり、この炉壁に水冷管44を貫通させて設ける。水冷管44の炉内側端部には防熱レンガ49が設けられており、また、水冷管44の内側には導波管ガイドパイプ43が設けられている。この導波管ガイドパイプ43にはマイクロ波発信装置41から発信されるマイクロ波を導くための導波管42が摺動自在に嵌挿されている。マイクロ波発信装置41は、非測定時には図に示すメンテナンス位置にあり、測定時には図に示す測定位置にあるように移動可能に設けられている。
【0068】
そして、前記マイクロ波発信機41の導波管42の先端部に付着する溶融スラグを除去するために、マイクロ波発信用の導波管42の後端に連接されたマイクロ波発信装置41を、その測定位置から前進限位置まで50mm程度前進させることによって、この前記導波管の先端部に付着する溶融スラグが除去される。
【0069】
また、前記マイクロ波発信装置41の導波管42の先端部に付着する溶融スラグを除去する機能を補完し、併せて該導波管を冷却するために、マイクロ波発信装置41の導波管42に連接されたパージ用窒素ガス配管より、不活性ガスとしての窒素ガスでパージする。
【0070】
このように、マイクロ波発信装置を移動可能に設けたことと、水冷管、パージ用窒素ガス配管及び防熱レンガを設けたこととによってマイクロ波発信装置の冷却効果及び耐熱性が向上すると共に、粉塵やガスの侵入を防止することができる。
【0071】
レベルを検知する装置の他の例を図8に基づいて説明する。
一対のバーナーガス導入管を兼ねる電磁波導波管を熱遮蔽レンガからなる炉壁を貫通して設ける。電磁波発信装置と電磁波受信装置の一対は溶融炉装入口下方の炉壁に、互いに対向して配設される。なお図では、電磁波を水平に発信する場合を示したが、電磁波は必ずしも水平に発信する必要はなく、検出すべき装入物の堆積レベルの設定や設備の制約等に応じて適宜に設定すればよい。但し、電磁波の送信距離を短縮して検出精度を向上させるために、電磁波を水平に送信することが好ましい。
【0072】
燃焼バーナーは図示したような多重管構造のものを用いることが好ましく、多重管の内管を燃料ガス導入管兼電磁波導波管として用い、外管を空気又は酸素の導入管として用いる。また、外管は冷却水によって冷却することができる構造のものとする。そして、燃焼バーナーの内管の後段に電磁波発信器又は電磁波受信器に接続する。
上記のような構成とすることにより、バーナー炎によって、導波管先端部(炉内壁側)への溶融スラグ等の侵入・付着を防止することができ、先端詰まりの発生を防止することができる。
電磁波発信器及び電磁波受信器はメンテナンスを容易にするために、図示したように進退移動可能に設けてもよい。
【0073】
電磁波としてマイクロ波を用いる場合、マイクロ波の周波数は、8〜30GHzとすることが好ましい。このような周波数にすることにより、マイクロ波と火炎プラズマとの干渉による検知精度への影響がない。すなわち、バーナ火炎はプラズマであり、一般にプラズマはその種類に固有のプラズマ振動数を持ち、これより低い振動数の電磁波を遮蔽することが知られている。バーナ火炎プラズマの電子密度(ne)[cm−3]は10程度であり、これよりプラズマ振動数(fp)は、fp=9×10×ne1/2により計算でき、およそ90MHz程度となる。これに対し、マイクロ波として8〜30GHzというはるかに高い振動数のものを用いると、火炎による遮断等の問題は生じない。マイクロ波レベル計を用いてマイクロ波強度の火炎による減衰がどれほどあるかを実験により確認した結果、バーナ火炎の有無に依存しないほぼ一定(バーナ点火中の減衰はzeroではないが)のマイクロ波強度が確保できることが判明した。
【0074】
図8に示した導波管内に設けたガスシール機構は、具体的には栓であり、バーナーガスを導入するに際してバーナガス導入口とマイクロ波発信器又は受信器間にマイクロ波は透過させるがガスは遮断する機能を有している。この栓を設けることによって、バーナーガスがマイクロ波送信機又は受信器内に入ることを防止でき、発信器及び受信器内での可燃性ガスの爆発を防ぐことができる。栓の材料としては例えば合成樹脂を用いることができる。
【0075】
導波管中にバーナーガスを導入するに際しては、導波管周状に多数の小孔を空けてガス導入を確保するとともにマイクロ波の損失を少なくするようにする。マイクロ波の漏洩はマイクロ波の波長以上の開口部があれば発生するので、それによる損失を防ぐには、開口部をマイクロ波の波長より十分小さいものとする必要がある。
【0076】
マイクロ波発信器から発信されたマイクロ波をマイクロ波受信器で受信して、マイクロ波の減衰量を測定する。このとき、マイクロ波発信器から発信されたマイクロ波が溶融炉内に堆積した圧縮廃棄物を透過せずにマイクロ波受信器で受信された場合は、マイクロ波の減衰量は僅かである。一方、マイクロ波が圧縮廃棄物を透過してマイクロ波受信器で受信された場合には、マイクロ波の減衰量は圧縮廃棄物内の透過距離に応じて変化する。
【0077】
すなわち、マイクロ波が圧縮廃棄物内を透過する距離が長くなるほどマイクロ波の減衰量は大きくなる。そこで、しきい値をあらかじめ設定しておき、マイクロ波の減衰量の測定値としきい値とを比較して、減衰量の測定値がしきい値を超えたときに溶融炉内の圧縮廃棄物が所定の堆積レベルに到達したと判定する。
【0078】
上記のように、本発明においては、マイクロ波の減衰量の測定値としきい値とを比較するので、マイクロ波発信装置とマイクロ波受信装置とを一対使用するのみで圧縮廃棄物の堆積レベルを検出することができる。
【0079】
上記した例は、発信器から発信され炉内を貫通してきたマイクロ波を受信器で受信する貫通型のものであるが、発信器と受信器とを一体化した反射型の送受信器を用い、炉壁に測定口を一箇所だけ設けて、この送受信器を配設して測定してもよい。貫通型のものは、マイクロ波の経路が短いため、信号の減衰が少なく、また、ノイズを受けにくいという利点があるが、測定口を二箇所設ける必要がある。また反射型のものは、測定口が1個所で済むため、設置箇所の制約が貫通型に比べて少ないが、信号が炉内を往復するため、信号の減衰や、ノイズが多いという欠点がある。
【実施例】
【0080】
図5に廃棄物処理量250t/dの炉を用いて発電を行ったときの発電端効率を示す。処理した廃棄物は水分51%、低位発熱量9.2MJ/kgである。廃棄物の装入方法は圧縮密度10倍で圧縮ブロック化し、落下距離1mでガス化溶融炉内に装入した。廃棄物を燃焼させる高酸素濃度ガスおよび発生ガス温度を調整するための酸素含有ガスは、いずれも酸素濃度90%(容量比)、窒素濃度10%(容量比)のガスを用いた。中温除塵装置へのガス導入温度の調節は水噴霧式の減温塔を用いておこなった。また発電端効率は発電量を供給した廃棄物の発熱量で除した値をパーセント表示したものである。 発生ガス温度が低いほど、また、中温除塵装置へのガス導入温度が高いほど発電端効率が高いことがわかる。中温除塵装置へのガス導入温度が500℃を超えた場合の比較例では発電端効率は高いものの、中温除塵フィルターの劣化が早く、頻繁にフィルターを交換する必要が生じ、安定した操業が困難であった。また、該温度が250℃未満の比較例ではフィルターにタール分が付着し、頻繁にフィルターを交換または清掃する必要が生じ、この場合も安定した操業が困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の発電方法は廃棄物をガス化溶融処理して得られた発生ガスを燃料ガスとして発電を行い、他方で、スラグ、メタルを回収してこれを再資源化することができるので、環境保護及びエネルギー利用の点から優れた技術であり、その産業上の利用性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例を説明する図である。
【図2】廃棄物をガス化溶融処理する方法の一例を示す図である。
【図3】本発明における発生ガスを冷却する方法の一例を示す図である。
【図4】本発明における発生ガスを冷却する方法の一例を示す図である。
【図5】炉頂温度と除塵温度と発電端効率との関係を示す図である。
【図6】本発明において用いる層高レベルの計測方法を示す図である。
【図7】本発明において用いる層高レベルの計測方法を示す図である。
【図8】本発明において用いる層高レベルの計測方法を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ガス化溶融炉
2 発生ガス
3 減温塔
4 中温除塵装置
5 ガス炊きボイラー
6 蒸気タービン発電機
7 減温塔
8 バグフィルター
9 再加熱器
10 触媒反応装置
11 飛灰DXN類揮発脱離分解装置
12 圧縮装置
13 均質化炉
21 高酸素濃度ガス
22 酸素含有ガス
23 燃料
24 圧縮ブロック
25 ガス流路に設置したガス冷却装置
26 水噴霧装置
27 加熱炉
31 炉体
32 耐火物
33 炉体ケーシング(鉄皮)
34 測定座
35 測定ノズル
36 電磁波発信器
37 電磁波受信器
41 マイクロ波発信器
42 導波管
43 導波管ガイドパイプ
44 水冷管
45 ガスシール機構
46 ボール弁
47 炉内レンガ
48 鉄皮
49 防熱レンガ
50 導波管スラグ除去位置
51 測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をガス化溶融炉でガス化溶融処理して得られる発生ガスをボイラー燃焼させて発電するガス化溶融炉を用いた発電方法において、該廃棄物を圧縮装置によって圧縮前の廃棄物の密度の2倍以上、20倍以下になるように圧縮された圧縮ブロックとし、該圧縮ブロックを該炉本体の上部空間部の下部炉壁に設けた装入口から炉内に落下させずに、もしくは、炉内での落下距離が3m以下となるように供給し、該ガス化溶融炉下部に酸素濃度80%以上の高酸素濃度ガスを吹込んで廃棄物を直接燃焼させ、発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満にし、該発生ガスをそのまま又は冷却した後、耐熱性フィルターを用いた中温除塵装置に導入して除塵し、除塵後のガスを中温のままボイラー燃焼して発電することを特徴とするガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項2】
廃棄物の充填層より上の位置で酸素含有ガスを吹き込んで部分燃焼を行い、該酸素含有ガスの吹込み量を調節することによって、前記発生ガス温度を500℃以上、1000℃未満に調節することを特徴とする請求項1に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項3】
前記中温除塵装置への前記発生ガスの導入温度を250℃以上、500℃以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項4】
前記ガス化溶融炉と前記中温除塵装置の間に、もしくは、ガス化溶融炉頂部の発生ガス流路に前記発生ガスの温度を低下させる装置を配設したことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項5】
ガス化溶融炉上部空間に水を噴霧する装置を配設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項6】
前記発生ガスの温度を低下させる装置が水噴射式のガス冷却装置であるか、または、水冷壁/ボイラー式装置であるか、または、これらを併用した装置であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項7】
炉内の廃棄物の層高レベルを計測および/または計算し、炉内での落下距離が3m以下となるように廃棄物の供給を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項8】
炉内の廃棄物の層高レベルが装入口を少なくとも部分的に覆う以上のレベルであることをプッシャー圧で確認しながらおよび/または層高レベルを計算し、廃棄物を炉内で落下させることなく供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項9】
前記炉内の廃棄物の層高レベルの最高点が炉底より6m以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項10】
炉の炉体側壁に電磁波の発信器と受信器とを設置して、炉内を透過する電磁波信号の強度から、炉内装入物の有無を判定して廃棄物の層高レベルを計測することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項11】
前記炉内を透過する電磁波信号の強度から、炉内装入物の有無を判定して廃棄物の層高レベルを計測する場合の計測レベル位置が装入口レベル下3mのレベルから装入口レベルまでの位置であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガス化溶融炉を用いた発電方法。
【請求項12】
廃棄物をガス化溶融処理するガス化溶融炉、ガス化溶融処理で得られる発生ガスからダストを除去する中温除塵装置、除塵後の発生ガスを燃焼させるボイラー及びボイラーによって発生した蒸気を用いて発電する発電機を備えてなる、ガス化溶融炉を用いた発電装置において、該ガス化溶融炉が、廃棄物を圧縮して圧縮前の廃棄物の密度の2倍以上、20倍以下に圧縮された圧縮ブロックとするための圧縮装置、該圧縮ブロックをガス化溶融炉の上部空間部の下部炉壁に設けた装入口から炉内に、炉内での落下距離が3m以下となるように廃棄物の供給量を制御して装入する手段及び該ガス化溶融炉下部に酸素濃度80%以上の高酸素濃度ガスを吹込む手段を有していることを特徴とする発電装置。
【請求項13】
前記ガス化溶融炉の上部空間に酸素含有ガスを吹込む手段を有することを特徴とする請求項12に記載の発電装置。
【請求項14】
ガス化溶融処理で得られた発生ガスの温度を低下させる装置を更に設けたことを特徴とする請求項12又は13に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−284106(P2006−284106A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105811(P2005−105811)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】