説明

ガス又はガス混合気を検出する装置

ガス又はガス混合気を検出する装置は、SGFET(1)として形成された少なくとも1つの第1のガスセンサと、それに加えて、ルントシュトレーム−FET(2)として形成された、少なくとも1つの第2のガスセンサを有している。ガスセンサは、評価装置と接続されており、その評価装置は、ガス又はガス混合気を検出するために2つの種類のガスセンサの測定信号(22、23)を評価するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルントシュトレーム(Lundstroem)−FETとして形成された少なくとも1つのガスセンサを有する、ガス又はガス混合気を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを検出するこの種の装置は、DE4333875C2(特許文献1)から知られている。同装置は、ガスセンサとして、いわゆるルントシュトレーム電解効果トランジスタを有している。ルントシュトレーム−FETは、ガスセンシティブな層を有しており、それが電気的絶縁層を介して容量的にFETのチャネル領域に結合されている。ルントシュトレーム−FETの作用方法は、分裂した、或いは周囲から吸着された水素原子が、ガスセンシティブな層と絶縁層との間の境界面へ達し、そこで分極されて、FETのしきい電圧の変化をもたらすことにある。しかしその場合に、水素原子は、絶縁層へ達するためには、ガスセンシティブな層を通って拡散しなければならない、という欠点がある。従ってルントシュトレーム−FETは、まだ比較的大きい応答時間を有している。応答時間は、ルントシュトレーム−FETが加熱されることによって減少させることはできるが、それはかなりのエネルギ消費を必要とする。更に、ルントシュトレーム−FETも、水素とは異なるガスについても所定の感度を有している。
【0003】
特許文献1からは、サスペンデッドゲート電解効果トランジスタ(SGFET)の原理に従って構築された、ガスセンシティブな層を有するガスセンサを備えた、水素ガスを検出する装置も、既に知られており、そのガスセンシティブな層がエアギャップを介してソース領域とドレイン領域との間に配置されたチャネル領域に容量的に結合されている。ガスセンシティブな層は、水素ガスと接触した場合に、その仕事関数の変化によって反応し、それによって層の表面に電圧が誘導され、それがチャネル領域を介してソース領域とドレイン領域の間の流れを制御する。しかし、ガスセンシティブな層は、水素ガスの他にも、所定の他のガスに対しても敏感である。従って、このガスが発生することのできる環境においては、水素ガスを検出する際に不正確さがもたらされる可能性がある。これは、例えば、原動力としての水素燃料電池を備えた自動車の水素供給における漏れ箇所を検出する場合に問題である。水素ガスは、空気の酸素と接触した場合に高爆発性であるので、漏れがある場合にできる限り早期に認識して、それによって周囲空気内の臨界的な水素濃度を越える前に、水素供給を遮断し、かつ/又は車両のユーザーに警告できるようにしなければならない。しかし他方では、他のガスに対するガスセンサのクロス感度によって発生する誤警報は、いかなる場合でも避けなければならない。というのは、この種の誤警報は、水素供給の遮断を作動させ、従って自動車の駆動を止めてしまう可能性があるからである。
【0004】
【特許文献1】DE4333875C2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、高い精度と信頼性でガスを検出することを可能にする、冒頭で挙げた種類の装置を提供する、という課題がある。更に、少なくとも第1のガスと少なくとも1つの他のガスからなるガス混合気を簡単な方法で検出することを可能にする、冒頭で挙げた種類の装置を提供する、という課題がある。
【発明を解決するための手段】
【0006】
最初に挙げた課題は、装置が、ルントシュトレーム−FETとして形成された、少なくとも1つの第1のガスセンサに加えて、SGFETとして形成された少なくとも1つのガスセンサを有しており、かつ少なくとも1つのルントシュトレーム−FETと少なくとも1つのSGFETが評価装置と接続されており、その評価装置が、ガス又はガス混合気を検出するために2つの種類のガスセンサの測定信号を評価するように形成されていることによって、解決される。
【0007】
本発明の基礎となる認識は、ルントシュトレーム−FETとSGFETはガスに対して異なる検出特性を有しており、かつ一見不必要と思われる、2種類のガスセンサの組合せとこのガスセンサの異なる測定信号の評価によって、1種類のガスセンサしか持たない装置よりもずっと大きい精度でガスを検出することができる、ということである。特に、本発明に基づく装置は、検出すべきガスとは異なるガスに対してずっと小さいクロス感度を可能にする。というのは、SGFETとルントシュトレーム−FETは、ガスに対して異なる感度を有しているので、2種類のガスセンサの測定信号の比較によって、自動車の中での漏れ検査で実際に発生する場合において、測定信号が自動車の駆動に使用されるガス及び/又は少なくとも1つの他のガスによって誘起されたか、そして場合によってはどの範囲で誘起されたか、が認識可能である。
【0008】
本発明の好ましい実施形態においては、ルントシュトレーム−FETは半導体チップの基板上に第1のドレインと第1のソースを有しており、それらの間の第1のチャネル領域が形成されており、第1のガスセンシティブな層がそのチャネル領域に属しており、その層は検出すべきガスの濃度の変化にその仕事関数の変化によって反応し、かつ誘電層を介して容量的に第1のチャネル領域に結合されており、その場合にSGFETは基板上でルントシュトレーム−FETの側方隣りに第2のドレインと第2のソースを有しており、それらの間に第2のチャネル領域が形成されており、サスペンデッドゲートに配置されている第2のガスセンシティブな層がその第2のチャネル領域に属しており、第2のガスセンシティブな層は検出すべきガス及び/又はこのガスとは異なる、ルントシュトレーム−FETがクロス感度を有するガスの濃度の変化に、その仕事関数の変化によって反応し、かつエアギャップを介して容量的に第2のチャネル領域に結合されている。その場合に、評価装置は、クロス感度を補正するために、2つの種類のガスセンサの測定信号を評価するように、形成することができる。誘電層は、好ましくはSiO、Si、Al又はこれらの物質の混合酸化物からなる。
【0009】
本発明の好ましい形態において、少なくとも1つのSGFETの少なくとも第2のドレイン、第2のソース、第2のチャネル領域とゲート電極、少なくとも1つのルントシュトレーム−FET及び場合によっては評価装置が同一の半導体チップ上に集積されている。それによって、一方では、コンパクトで安価な装置が可能となり、他方では、異なる種類のガスセンサの空間的に密接した配置によって、個々のガスセンサに接触するガスが、同一の組成を有していることが保証される。更に、ガスセンサを半導体チップ内に集積することによって、個々のガスセンサが同一の温度を有することが達成される。それによって装置は、ガス検出におけるより大きい測定精度と信頼性を可能にする。
【0010】
好ましくは第1のガスセンシティブな層は、パラジウム及び/又はパラジウム合金からなり、第2のガスセンシティブな層はパラジウム及び/又は白金及び/又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなる。これらの材料によって、水素ガスに対して特に高い検出感度が達成される。アンモニア(NH)及び/又は二酸化窒素(NO)も、本発明に基づく装置によって測定することができる。
【0011】
本発明の形態において、サスペンデッドゲートは側方においてルントシュトレーム−FETの上まで延長されており、好ましくはこれを完全に覆っている。その場合に装置は、それ自体知られた半導体形成方法によって、特に簡単かつ安価に形成される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、評価装置に、好ましくは半導体チップ上に集積された、少なくとも1つの電気的抵抗素子が接続されており、その抵抗素子は、その電気的抵抗値が水素ガス濃度に依存する材料からなり、その場合に評価装置は、水素ガスを検出するために抵抗素子の測定信号を評価するように、形成されている。その場合に抵抗素子は、好ましくはパラジウム−ニッケル合金からなり、その特殊な電気抵抗は、抵抗素子の周囲の水素ガス濃度にほぼ比例して行動する。抵抗素子は、好ましくは薄い層として形成されている。それをゲート電極として、電解効果トランジスタ(FET)のチャネル領域上に配置することができる。抵抗素子は、約0.5%から100%の範囲の水素濃度を測定することを可能にする。評価装置内で、SGFET、ルントシュトレーム−FET及び抵抗素子の、従って3つの異なる種類のガスセンサの測定信号が、水素ガスを検出するため、ないしは水素濃度に対しての測定信号を生成するために評価されて、場合によっては互いに結合される。
【0013】
半導体チップ上に電気的ヒーターが集積されていると、効果的である。その場合にはルントシュトレーム−FETは、検出すべきガスの第2のガスセンシティブな層内への拡散を促進し、従ってルントシュトレーム−FETの測定信号の、ガス濃度の変化への反応時間を減少させるために、加熱することができる。ヒーターは、抵抗素子を加熱するためにも用いることができる。
【0014】
基板が、好ましくはその、ガスセンシティブな層とは逆の後ろ側に少なくとも1つの、好ましくは溝状の凹部を有しており、その凹部がヒーターに対して、ヒーターからの側方向への熱の伝導を減少させるように配置されていると、効果的である。凹部は、ヒーターないし半導体チップのヒーターを有する領域の回りにリング状又はフレーム状に広がることができる。しかしまた、凹部が平面的に形成されて、場合によっては基板の基面全体にわたって広がることも、考えられる。半導体チップを形成する場合に、まず、少なくとも1つのルントシュトレーム−FET、少なくとも1つのSGFET及び場合によっては評価装置が基板上に形成されて、その後基板が好ましくは後ろ側から、例えば、エッチングプロセスを用いて、領域的に除去される。凹部の領域において、基板の厚みは70μmより小さく、好ましくは50μmより小さくすることができる。凹部によって、半導体チップは一方では側方へのわずかな熱伝導を有し、しかし他方では凹部によって半導体チップの熱容量も減少される。
【0015】
本発明の好ましい形態において、半導体チップ内に、評価装置と接続された温度センサが集積されており、その場合に評価装置は、温度センサの測定信号に従ってガス検出が行われるように、形成されている。それによって特に、電解効果トランジスタのソース−ドレイン電流の温度依存性を補償することが可能であって、それは特に、少なくとも1つのガスセンサがMOSFETを有している場合に、効果的である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、評価装置は、2つの種類のガスセンサの差信号及び/又は和信号を形成し、その場合にガス検出が差信号及び/又は和信号に従って行われるように、形成されている。2種類のガスセンサがこのガスに対して異なるクロス感度を有している時、差信号を用いて、検出すべきガスとは異なるガスによって誘起された測定信号成分を求めることができる。
【0017】
評価装置は、ガスを検出する場合に微分信号の極性及び/又は絶対値を考慮するように、形成することができる。極性を用いて特に、2種類のガスセンサにおいて測定信号内に互いに逆方向へ向けられた変化をもたらしたガスによって誘起された、測定信号及び/又は測定信号の成分が定められる。
【0018】
評価装置が、2つの種類のガスセンサの測定信号から商信号を形成するように形成されており、かつガス検出が商信号に従って行われると、特に効果的である。その場合に差信号は、予め定められた値又は値領域に属したクロス感度ガスが存在することを確認するために、少なくとも1つの予め定められた値又は値領域と比較することができる。この種のガスを検出する場合に、クロス感度ガスに属した所定のガスセンサ種類のガスセンサの測定信号は、評価する場合に考慮できず、或いは減衰された形式でしか考慮できず、ガス検出ないしガス濃度の測定は主に或いは専ら、他のガスセンサ種類のガスセンサの測定信号を用いて実施される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、装置は切替装置によって作業状態とエネルギ節約状態との間で切り替え可能であって、その場合にエネルギ節約状態においてはヒーターと場合によってはルントシュトレーム−FETがオフにされており、かつその場合に評価装置は、エネルギ節約状態においてはガスを検出するために好ましくはSGFETの測定信号のみを評価するように、形成されている。自動車の水素供給における漏れを検出する装置において、作業状態とエネルギ節約状態との間の切替えは、自動車の駆動状態に従って行うことができる。その場合に作業状態は好ましくは、できる限り正確な漏れ認識を可能にするために、燃料電池がオンにされている場合に能動化され、エネルギ節約状態は、自動車のバッテリを大切にするために、燃料電池がオフにされている場合に能動化される。
【0020】
場合によっては特に、切替装置を、測定されたガス濃度が予め定められた比較値を上回った場合に、作業状態からエネルギ節約状態へ切り替え、測定されたガス濃度が予め定められた比較値を下回った場合に、場合によってはエネルギ節約状態から作業状態へ戻るように、形成することも可能である。その場合に、SGFETはルントシュトレーム−FETよりも高いガス濃度を測定できることが、前提とされている。予め定められた比較値は、好ましくは、ルントシュトレーム−FETによって最大測定することのできる、検出すべきガスの濃度とほぼ一致するように、選択されている。従ってガス濃度が高い場合に、ルントシュトレーム−FETの測定領域の制限による測定エラーが回避され、更に装置のエネルギ消費が減少される。
【0021】
評価装置が切替装置と次のように、即ち、エネルギ節約状態においてSGFETの測定信号内に検出すべきガスの存在について典型的な測定信号部分が発生した場合に切替装置を作業状態へ切り替え、かつ場合によっては、この種の測定信号成分がもはや検出されない場合に切替装置をエネルギ節約状態へ戻るように、制御接続されていると、効果的である。従ってSGFETがエネルギ節約状態において、検出すべきガスによってもたらされた疑いのある測定信号を検出した場合に、ヒーターと場合によってはルントシュトレーム−FETが元のところに切り替えられて、それによって次に2種類のガスセンサの測定信号を用いてガス濃度のより正確な測定を行うことができる。その場合にガスの許容できない高さの濃度が存在するという疑念が証明された場合に、場合によってはアラームを作動させ、かつ/場合によってはガス供給を遮断することができる。従って装置は、わずかなエネルギ消費にもかかわらず、特に水素ガスの、信頼できる正確なガス検出を可能にする。
【0022】
上述した課題は、冒頭で挙げた種類の、次のような装置によっても解決され、その装置においてはルントシュトレーム−FETが半導体チップの基板上に第1のドレインと第1のソースを有しており、それらの間に第1のチャネル領域が形成されており、ルントシュトレーム−FETによって検出すべきガスとは異なる第2のガスにセンシティブな第2の層が、その第1のチャネル領域に属しており、その第2の層は目標ガス濃度の変化にその仕事関数の変化によって反応し、かつエアギャップを介して容量的に第2のチャネル領域に結合されており、かつ評価装置は、少なくとも第1と第2のガスを含むガス混合気を検出するために、2つの種類のガスセンサの測定信号を評価するように、形成されている。
【0023】
その場合に第1と第2のガスは、火災が発生した場合に遊離するガスとすることができる。その場合に装置は、火災検出器として使用することができる。その場合に特に、複数の空間的に互いに離れた、それぞれ少なくとも1つのルントシュトレーム−FETとSGFETとを有する半導体チップが、中央の評価装置と接続されている。評価装置をアラーム発生器に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0025】
ガス、即ち、例えば、水素駆動装置を搭載した自動車内の、水素を検出する装置は、2種類のガスセンサ、即ちSGFET1とルントシュトレーム−FET2を有している。SGFET1とルントシュトレーム−FET2は、図面には詳しく図示されていない評価装置と接続されており、その評価装置は、2種類のガスセンサの測定信号を処理することによって、ガスセンサの周囲にある水素ガスの濃度を求めるように形成されている。
【0026】
図1から明らかなように、SGFET1とルントシュトレーム−FET2は、全体を符号4で示す半導体チップの基板3の上に集積されている。はっきりと認識できるように、基板3の表面に、第1の電荷担体タイプの槽状のゾーン、いわゆるウェル5、6が形成されている。
【0027】
図1の左半分に示す第1のウェル5内には、ルントシュトレーム−FET2のための第1のドレイン7と第1のソース8が配置されており、それらは、第2の電荷担体タイプの電荷担体によってドーピングされた領域によって形成されている。第1のドレイン7と第1のソース8の間に、第1のチャネル領域9が配置されており、その上に誘電層10が設けられており、その層の上に、パラジウム又はパラジウム合金からなる、第1のガスセンシティブな層11が設けられている。
【0028】
第1のガスセンシティブな層11の、誘電層10に隣接する境界面12は、誘電層10を介して容量的に第1のチャネル領域9に結合されている。第1のガスセンシティブな層11は、基準電位のための接続点と電気的に接続されている。第1のガスセンシティブな層11の露出した表面13に、水素が堆積して、層11を通して境界面12へ拡散することができる。
【0029】
第1のウェル5の側方隣りにおいて、基板3の表面に第2のウェル6が形成されており、その中にSGFET1のための第2のドレイン14と第2のソース15が配置されている。第2のドレイン14と第2のソース15の間に、第2のチャネル領域16が形成されており、その上に薄い絶縁層とその上にゲート電極17が設けられている。
【0030】
第2のチャネル領域16の、基板3とは逆の側において、チャネル領域16の上にブリッジ状にかかるサスペンデッドゲート18に、チャネル領域16に向いた第2のガスセンシティブな層19が配置されている。第2のガスセンシティブな層19は、パラジウム、白金及び/又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなり、水素ガス濃度の変化にその仕事関数の変化により反応する。ガスセンシティブな層19は、第2のチャネル領域16に向いた平坦側の表面20が、周囲へ向かって開放したエアギャップ21を介して容量的に第2のチャネル領域16に結合されている。ガスセンシティブな層19は、表面20とは逆の後ろ側22において、図面には詳しく図示されていない導体路を介して基準電位接続点と接続されており、その基準電位接続点に定められた電位が印加される。
【0031】
SGFET1のソース−ドレイン区間は、評価装置の第1の測定信号入力と、そしてルントシュトレーム−FET2のソース−ドレイン区間は評価装置の第2の測定信号入力と接続されている。評価装置内で、2つの異なる種類のガスセンサの測定信号が、まず、場合によっては存在する、特にガスセンサの幾何学的寸法の、製造誤差を補正するために、メモリーに格納されている固有値を用いて較正される。このようにして較正された測定信号が、互いに、かつ記憶されている基準値と比較されて、この比較の結果に従って評価装置の出力接続点に、ガスセンサの周囲に水素ガスが存在するか、を示すアラーム信号が生成される。
【0032】
図2から明らかなように、ガスセンサが水素ガスと接触した場合に、ルントシュトレーム−FET2の測定信号23がSGFET1の測定信号24よりも絶対値において大きくなる。その場合にルントシュトレーム−FET2の測定信号23とSGFET1の測定信号24からなる商は、約1:1.4になる。更に明らかなように、2つの種類のガスセンサの測定信号は、ほぼ同じ速さの応答行動を示す。図2には、水素ガスの濃度が破線で図示されている。図から明らかなように、水素ガス濃度の推移は、複数の矩形のパルスを有しており、それらのパルスはパルスポーズによって互いに隔てられており、そのパルスポーズ内では水素ガス濃度はほぼゼロに等しい。パルスポーズ内で、2種類のガスセンサの測定信号23、24はその都度下降し、その場合に下降の急峻性がその都度該当するパルスポーズの最初から始まってパルスポーズの最後へ向かって減少する。
【0033】
図3は、測定センサがアンモニアガスと接触した場合の、これらのガスセンサの測定信号推移を示している。図からはっきりとわかるように、ルントシュトレーム−FETの測定信号23は、SGFET1の測定信号24よりも小さい。ルントシュトレーム−FET2の測定信号23とSGFET1の測定信号24からなる商は、約2:1と3.3:1の間にある。従って測定信号23、24の商を用いて、ガスセンサが水素と接触しているか、或いは他のガスと接触しているか、が区別される。
【0034】
図4は、ガスセンサが炭化水素ガス、即ちCHと接触した場合の、ガスセンサの測定信号推移を示している。その場合に明らかなように、SGFET1の測定信号24は、実際には反応を示さない一方、CHによって基本的にルントシュトレーム−FET2の測定信号が変わる。更に明らかなように、ルントシュトレーム−FET2の測定信号23は、予め定められた時間枠内で一定のCH濃度と接触している間、まず最大値まで上昇し、その後、ルントシュトレーム−FET2がCHガスと接触する前に測定信号が有していた値よりも少し大きい値へ下降する。この例においても、ガスセンサの測定信号23、24を用いて、ガスセンサが水素ガスと接触していないか、が求められる。
【0035】
従ってガスを検出する装置は、SGFET1として形成された少なくとも1つの第1のガスセンサと、それに加えてルントシュトレーム−FET2として形成された少なくとも1つの第2のガスセンサを有している。これらのガスセンサは、評価装置と接続されており、その評価装置は、ガスを検出するために2つの種類のガスセンサの測定信号23、24を評価するように、形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】水素センサとしてルントシュトレーム−FETとSGFETがその上に集積されている、半導体チップを示す断面図である。
【図2】水素ガス濃度に従ってSGFETとルントシュトレーム−FETの測定信号を示すグラフであって、その場合に横軸上に時間tが時間で、縦軸上には左に仕事関数の変化ΔΦがeVで、右には水素ガスの濃度Cがppmで示されている。
【図3】図2と同様の表示であるが、縦軸上に水素ガス濃度の代わりにアンモニアガス濃度が記入されている。
【図4】図2と同様の表示であるが、縦軸上に水素ガス濃度の代わりにCHガス濃度が記入されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルントシュトレーム−FET(2)として形成された少なくとも1つのガスセンサを有する、ガス又はガス混合気を検出する装置において、
装置がルントシュトレーム−FET(2)に加えて、SGFET(1)として形成された少なくとも1つのガスセンサを有しており、
少なくとも1つのルントシュトレーム−FET(2)と少なくとも1つのSGFET(1)が、評価装置と接続されており、前記評価装置が、ガス又はガス混合気を検出するために2つの種類のガスセンサの測定信号(23,24)を評価するように形成されていることを特徴とするガス又はガス混合気を検出する装置。
【請求項2】
ルントシュトレーム−FET(2)が、半導体チップ(4)の基板(3)上に第1のドレイン(7)と第1のソース(8)を有しており、それらの間に第1のチャネル領域(9)が形成されており、第1のガスセンシティブな層(11)が前記チャネル領域に属してており、前記層が検出すべきガスの濃度の変化に、その仕事関数の変化によって反応し、かつ誘電層(10)を介して容量的に第1のチャネル領域(9)に結合されており、
SGFET(1)が基板(3)上のルントシュトレーム−FET(2)の側方隣りに第2のドレイン(14)と第2のソース(15)を有しており、それらの間に第2のチャネル領域(16)が形成されており、サスペンデッドゲート(17)に配置された第2のガスセンシティブな層(19)が前記第2のチャネル領域に属しており、前記層が検出すべきガス及び/又はこのガスとは異なる、ルントシュトレーム−FET(2)がそれに対してクロス感度を有するガスの濃度の変化に、その仕事関数の変化によって反応し、かつエアギャップ(21)を介して容量的に第2のチャネル領域(16)に結合されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
ガスが、水素ガス、アンモニア又は二酸化窒素であり、或いはガス混合気が水素ガス、アンモニア及び/又は二酸化窒素を含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つのSGFET(1)の少なくとも第2のドレイン(14)、第2のソース(15)、第2のチャネル領域(16)及びゲート電極(17)、少なくとも1つのルントシュトレーム−FET(2)及び場合によっては評価装置が、同一の半導体チップ(4)上に集積されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
第1のガスセンシティブな層(11)がパラジウム及び/又はパラジウム合金からなり、第2のガスセンシティブな層(19)がパラジウム及び/又は白金及び/又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
サスペンデッドゲート(18)が側方においてルントシュトレーム−FET(2)の上まで延長されており、好ましくはこれを完全に覆っていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
評価装置に、好ましくは半導体チップ(4)上に集積された、少なくとも1つの電気抵抗素子が接続されており、前記抵抗素子は、その電気的抵抗値が水素ガス濃度に依存する材料からなり、かつ評価装置が、水素ガスを検出するために、抵抗素子の測定信号を評価するように、形成されていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
半導体チップ(4)上に、電気的ヒーターが集積されていることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
基板(3)が、好ましくはその、センシティブな層(11,19)とは逆の後ろ側に、少なくとも1つの、好ましくは溝状の凹部を有しており、前記凹部がヒーターに対して、ヒーターからの熱の側方向への伝導を減少させるように、配置されていることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
半導体チップ(4)内へ、評価装置と接続された温度センサが集積されており、かつ評価装置が、温度センサの測定信号に従ってガス検出が行われるように、形成されていることを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
評価装置が、2種類のガスセンサの測定信号(23,24)の差信号及び/又は和信号を形成し、かつガス検出が、差信号及び/又は和信号に従って行われるように、形成されていることを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
評価装置が、微分信号の極性及び/又は絶対値に従ってガス検出が行われるように、形成されていることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
評価装置が、2種類のガスセンサの測定信号(23,24)から商信号を形成するように形成されており、かつガス検出が商信号に従って行われることを特徴とする請求項1ないし12いずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
装置が、切替装置を用いて作業状態とエネルギ節約状態との間で切り替え可能であって、エネルギ節約状態においてはヒーターと場合によってはルントシュトレーム−FET(2)がオフにされており、かつ評価装置は、エネルギ節約状態においてガスを検出するために好ましくはSGFET(1)の測定信号(24)のみを評価するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし13いずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
切替装置は、測定されたガス濃度が予め定められた比較値を上回った場合に、作業状態からエネルギ節約状態へ切り替えるように形成されており、かつ切替装置は、場合によっては、測定されたガス濃度が予め定められた比較値を下回った場合に、エネルギ節約状態から作業状態へ戻るように、形成されていることを特徴とする請求項1ないし14いずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
評価装置が切替装置と制御接続されており、それによって制御装置はエネルギ節約状態においてSGFET(1)の測定信号(24)内に、検出すべきガスの存在について典型的な測定信号部分が発生した場合に、切替装置を作業状態へ切り替え、場合によっては、この種の測定信号部分がもはや検出されない場合に、切替装置をエネルギ節約状態へ戻ることを特徴とする請求項1ないし15いずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
電気的及び/又は機械的エネルギを準備する、ガス駆動されるエネルギ生成装置、例えば、燃料電池及び/又は自動車内で、請求項1ないし16いずれか1項に記載の装置を駆動する方法であって、その場合にエネルギ生成装置が、電気的及び/又は機械的エネルギが生成される、第1の駆動状態と、エネルギ生成がオフにされる、第2の駆動状態へ移行され、かつその場合に装置がエネルギ生成装置の駆動状態に従って作業状態とエネルギ節約状態との間で切り替えられる、装置を駆動する方法。
【請求項18】
請求項1の上位概念に記載の装置であって、その場合にルントシュトレーム−FETが半導体チップの基板上に第1のドレインと第1のソースを有しており、それらの間に第1のチャネル領域が形成されており、第1のガスセンシティブな層が前記チャネル領域に属しており、前記層が第1のガスの濃度の変化にその仕事関数の変化によって反応し、かつ誘電層を介して容量的に第1のチャネル領域と結合されている、前記装置において、
装置が少なくとも1つのSGFETを有しており、前記SGFETが基板上でルントシュトレーム−FETの側方隣りに第2のドレインと第2のソースを有しており、それらの間に第2のチャネル領域が形成されており、ルントシュトレーム−FETによって検出すべきガスとは異なる第2のガスに対してセンシティブな第2の層が前記第2のチャネル領域に属しており、前記第2の層は目標ガス濃度の変化にその仕事関数の変化によって反応し、かつエアギャップを介して容量的に第2のチャネル領域に結合されており、かつ評価装置は、少なくとも第1と第2のガスを含むガス混合気を検出するために、2種類のガスセンサの信号(23,24)を評価するように形成されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−529722(P2007−529722A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503226(P2007−503226)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002283
【国際公開番号】WO2005/093399
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(305051211)ミクロナス ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】