説明

ガス検出装置

【課題】簡便な方法で精度よく感度補正を行う。
【解決手段】検出対象の気体中のエタノール濃度及び湿度に感度を有するアルコールセンサ24Aと、検出対象の気体の湿度に感度を有する湿度センサ24Bとを備えたガス検出装置で、アルコールセンサ24Aの検出値を対数変換した値を、エタノール濃度を対数変換した値と感度特性に応じた定量係数aとの積と、湿度を対数変換した値と感度特性に応じた定量係数bとの積との和、及び感度特性の変化に応じてa及びbを補正する補正係数αを用いて表す。補正係数αは、湿度センサ24Bの検出値の変化に対するアルコールセンサ24Aの検出値の変化の割合から算出され、補正係数αが、予め定めた値より小さい場合には、補正係数αを新たに算出された値に更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に係り、特に人間の呼気に含まれるエタノール等の検出対象ガスを検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコールセンサでドライバの呼気中のエタノール成分を検出して、所定値以上のエタノール成分(エタノール濃度)が検出された場合には、エンジン始動を停止することなどが行われている。このような場合のアルコールセンサとして、例えば、酸化物半導体式ガスセンサのように、検出対象のガス以外に湿度によっても出力が変化するガスセンサを用いる場合、ガスセンサの出力値を、感度特性に対応した定量係数(対象ガス濃度に対するガスセンサの出力値を示す検量線の傾きと切片)を用いて表すためには、少なくとも既知濃度の基準ガスとして、ガス濃度2水準、湿度2水準の組み合わせ計4条件の下でガスセンサの出力値を測定して定量係数を求める必要がある。
【0003】
また、ガスセンサは、使用期間や使用状況などによって検出感度が劣化してアルコール検出の精度が低下してしまうが、この感度劣化を補正するためには、再度上記4条件の下でガスセンサの出力値を測定し、新たに定量係数を算出しなおす必要がある。しかし、この方法では、手間もコストもかかって実用的ではない。
【0004】
そこで、センサ温度を高温側と低温側とで周期的に変更し、高温側でメタンを、低温側で二酸化炭素を検出するガスセンサにおいて、高温側の温度を中間温度へ低下させて空気中での抵抗値を測定し、中間温度での抵抗値と高温側での抵抗値との比が小さい場合に、センサが高感度化していると自己診断するガス検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、未飲酒の被検者の呼気を吹きかけたときのセンサ出力を正常時の出力として、測定100回単位でセンサ出力値の平均値(初期時濃度平均値)をとって記憶し、その後、同様に100回毎の平均値を取得して初期時濃度平均値と比較し、センサ出力値が初期時濃度平均値になるように感度補正を行なうアルコール検知システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−58214号公報
【特許文献2】特開2005−157599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のガス検出装置は、センサの高感度化の自己診断を行なうものであるが、センサ感度を補正することは考慮されていない。また、センサ温度を変更させたときのセンサの抵抗値を比較することによりセンサの高感度化を自己診断しているため、対象ガスの検出にセンサ温度の変更が不要な場合には、センサ感度の補正のためにセンサ温度を変更させるという処理が必要となって煩雑となる上に、センサへの不要な負担がかかる、という問題がある。
【0008】
また、特許文献2のアルコール検知システムでは、未飲酒の被検者の呼気を吹きかけたときのセンサ出力を正常時の出力として初期時濃度平均値をとっているが、未飲酒時の呼気に対するセンサ出力は、環境の湿度や被検者が測定前に摂取した飲食物などの不特定の物質の影響を受けるため、その平均値でセンサの感度補正を行っても十分な精度は得られない、という問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解消するためになされたもので、簡便な方法で精度よく感度補正を行うことができるガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のガス検出装置は、検出対象の気体中に含まれる検出対象ガス及び前記検出対象の気体の湿度に対して感度を有し、前記検出対象ガスの濃度に関連する物理量及び前記湿度に関連する物理量に対応した物理量を検出して検出値を出力するガス検出手段と、前記検出対象の気体の湿度に関連する物理量を検出して出力する湿度検出手段と、前記ガス検出手段の検出値を、前記検出対象ガスの濃度に関連する物理量と感度特性に応じた第1の係数との積と前記湿度に関連する物理量と感度特性に応じた第2の係数との積との和、及び感度特性の変化に応じて前記第1の係数及び第2の係数を補正する補正係数を用いて表すと共に、前記湿度検出手段で検出された前記湿度に関連する物理量を用いて前記検出対象ガスの濃度を算出する濃度算出手段と、前記湿度検出手段の検出値の変化に対する前記ガス検出手段の検出値の変化の割合から前記補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記補正係数算出手段で算出された補正係数が予め定めた値より小さい場合に、前記濃度算出手段で用いられる補正係数を、前記補正係数算出手段で算出された補正係数に更新する更新手段とを含んで構成されている。
【0011】
本発明のガス検出装置によれば、ガス検出手段が、検出対象の気体中に含まれる検出対象ガス及び検出対象の気体の湿度に対して感度を有し、検出対象ガスの濃度に関連する物理量及び湿度に関連する物理量に対応した物理量を検出して検出値を出力する。このガス検出手段の検出値は、感度特性の変化に応じて変化する。また、湿度検出手段が検出対象の気体の湿度に関連する物理量を検出して出力する。そして、濃度算出手段は、ガス検出手段の検出値を、検出対象ガスの濃度に関連する物理量と感度特性に応じた第1の係数との積と前記湿度に関連する物理量と感度特性に応じた第2の係数との積との和、及び感度特性の変化に応じて第1の係数及び第2の係数を補正する補正係数を用いて表すと共に、湿度検出手段で検出された湿度に関連する物理量を用いて検出対象ガスの濃度を算出する。この補正係数は、補正係数算出手段により、湿度検出手段の検出値の変化に対するガス検出手段の検出値の変化の割合から算出される。そして、更新手段が、補正係数算出手段で算出された補正係数が予め定めた値より小さい場合に、濃度算出手段で用いられる補正係数を、補正係数算出手段で算出された補正係数に更新する。
【0012】
このように、対象ガスの濃度を算出するために検出されたガス検出手段及び湿度検出手段の検出値から、ガス検出手段の感度特性の変化に応じて補正係数を算出することができるため、既知濃度の基準ガスを測定して係数を算出しなおさなくても、複数回の測定の平均値を用いて濃度補正する場合などに比べて、簡便な方法で精度よく感度補正を行うことができる。
【0013】
また、前記ガス検出手段の検出値を対数変換した値を、下記(1)式で表すことができる。
【0014】
【数1】

【0015】
ただし、Gはガス検出手段の検出値、αは補正係数、[Gas]は検出対象ガスの濃度に関連する物理量、[Humi]は湿度に関連する物理量、aは前記第1の係数、bは前記第2の係数、cは定数である。
【0016】
このように表すことにより、ガス検出手段の対象ガスに関する感度と湿度に対する感度とが同じような比率で変化するという性質を利用して補正係数αを設定することができ、簡便な方法で感度補正を行うことができる。
【0017】
また、前記補正係数を、下記(2)式により算出することができる。
【0018】
【数2】

【0019】
ただし、Gpeakは検出対象の気体として呼気が導入されたときのガス検出手段の検出値のピーク値、Gbaseは前記呼気が導入されていないときのガス検出手段の検出値、Hpeakは前記呼気が導入されたときの湿度検出手段の検出値のピーク値、Hbaseは前記呼気が導入されたときの湿度検出手段の検出値、dは定数である。
【0020】
このように、(2)式に基づいて、ガス検出手段及び湿度検出手段の検出値を用いて簡便に補正係数を算出することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、簡便な方法で精度よく感度補正を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態のエタノール濃度検出装置を運転席のステアリングコラムに取り付けた状態を示す概略図である。
【図2】本実施の形態を示す概略図である。
【図3】本実施の形態のエタノール濃度検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】エタノールガス濃度とアルコールセンサの検出値との関係を示す線図である。
【図5】本実施の形態のエタノール濃度検出装置における補正係数及びエタノール濃度算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、ドライバの呼気からアルコールの一種であるエタノールの濃度を検出するエタノール濃度検出装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るエタノール濃度検出装置10は、運転席に設けられたステアリングコラム12の、ドライバの呼気が到達可能な位置に取り付けられている。エタノール濃度検出装置10は、先端部に拡径した吸い込み口20Aが形成された細長円筒状の呼気導入管20を備えており、呼気導入管20の中間部の内部にはセンサ群24が取り付けられている。
【0025】
図2に示すように、呼気導入管20の内部であって、センサ群24より吸い込み口20A側には、ドライバの呼気を吸い込み口20Aから吸い込むために駆動される吸い込みファン22が設けられている。
【0026】
センサ群24は、呼気導入管20の中間部の内部に対向するように取り付けられた、アルコールセンサ24Aと湿度センサ24Bとで構成されている。
【0027】
アルコールセンサ24Aは、呼気導入管20内を流れる気体中に含まれるエタノールガスを検出するセンサで、例えば酸化物半導体式ガスセンサを用いることができる。アルコールセンサ24Aは、呼気導入管20内を流れる気体中に含まれるエタノールガスの濃度が高くなるに従って、レベルが高い検出信号を出力し、呼気導入管20内を流れる気体中に含まれるエタノールガスの濃度が低くなるに従って、レベルが低い検出信号を出力する。また、アルコールセンサ24Aは、エタノールガス以外に、呼気導入管20内を流れる気体の湿度に対しても感度を有している。
【0028】
湿度センサ24Bは、呼気導入管20内を流れる気体中の水蒸気の濃度で表される気体の湿度を検出するセンサである。湿度センサ24Bは、呼気導入管20内を流れる気体の湿度が高くなるに従って、レベルが高い検出信号を出力し、呼気導入管20内を流れる気体の湿度が低くなるに従って、レベルが低い検出信号を出力する。
【0029】
本実施の形態によれば、吸い込みファン22を駆動することにより、ドライバから吐き出された呼気は呼気導入管20の吸い込み口20Aから呼気導入管20内に吸入されると共に、呼気が空気と混合されることで任意に希釈され、センサ群24へ一定流速で到達する。そして、呼気は、センサ群24に接触した後、呼気導入管20の外に排出される。
【0030】
呼気がアルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bに接触することにより、アルコールセンサ24Aによって呼気を含む気体中のエタノールガスの濃度及び湿度に関連した検出値が検出されると共に、湿度センサ24Bによって呼気を含む気体の湿度に関連した検出値が検出される。アルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bで検出された検出値に基づいて、呼気中の検出対象ガスとしてのエタノールガスの濃度が検出される。
【0031】
図3に示すように、エタノール濃度検出装置10は、アルコールセンサ24A、湿度センサ24B、及び液晶ディスプレイ等の表示装置26に接続され、かつ、エタノールガスの濃度を検出するエタノール濃度検出器30を備えている。
【0032】
エタノール濃度検出器30は、アルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bの検出値に基づいて、アルコールセンサ24Aの感度特性に応じた定量係数を補正するための補正係数を算出する補正係数算出部32、補正係数算出部32で算出された補正係数を記憶する補正係数記憶部34、アルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bの検出値と補正係数記憶部34に記憶された補正係数とに基づいて、呼気中のエタノールガスの濃度を算出するエタノール濃度算出部36、及びエタノール濃度算出部36による算出結果を表示装置26に表示するように制御する表示制御部38を備えている。
【0033】
エタノール濃度検出器30は、エタノール濃度検出装置10全体の制御を司るCPU、後述する補正係数及びエタノール濃度算出処理プログラム等の各種プログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含むマイクロコンピュータで構成することができる。
【0034】
ここで、本実施の形態のエタノール濃度検出装置10における補正係数算出の原理について説明する。
【0035】
酸化物半導体式ガスセンサのように、検出対象ガスであるエタノールガスの濃度以外に湿度によっても検出値が変化するアルコールセンサ24Aの検出値Gを対数変換した値ln(G)とエタノール濃度[Gas]を対数変換した値ln[Gas]との関係は、図4に示すとおりである。このln(G)を、エタノール濃度[Gas]及び湿度に関連した物理量である水蒸気濃度[Humi]を対数変換した値により表すと(3)式となる。
【0036】
【数3】

【0037】
ただし、aはアルコールセンサ24Aのエタノールに対する感度に関連する定量係数、bはアルコールセンサ24Aの湿度に対する感度に関連する定量係数、及びcは定数である。定量係数a、b及び定数cは、アルコールセンサ24Aの感度特性を表す値であり、エタノールの濃度及び湿度が既知のガスに対して、少なくともエタノール濃度2水準及び湿度2水準の組み合わせの4条件について、アルコールセンサ24Aの検出値の計測を行って算出された値である。
【0038】
アルコールセンサ24Aの感度は、使用状態や使用期間により特性が変化する。通常、アルコールセンサ24Aのエタノールに対する感度((3)式における定量係数a)と湿度に対する感度((3)式における定量係数b)とは同じように特性が変化するため、(3)式におけるa、bは同じ比率で変化すると仮定することができる。そこで、アルコールセンサ24Aの感度劣化を示す補正係数αを用いて、上記(3)式を(1)式のように表す。
【0039】
【数4】

【0040】
ここで、補正係数αの初期値、すなわちアルコールセンサ24Aが感度劣化していない場合の補正係数αは1であり、初期状態において(1)式は上記(3)式と一致する。
【0041】
補正係数αは、呼気吹きかけによるアルコールセンサ24Aの検出値の変化により、次のように算出する。
【0042】
(1)式において、呼気吹きかけ前のアルコールセンサ24Aの検出値Gbase(ベース値)、及び呼気吹きかけ時のアルコールセンサ24Aの検出値のピーク値Gpeakを対数変換した値は、(4)及び(5)式で表される。
【0043】
【数5】

【0044】
ただし、[Gas]baseは、環境大気のエタノール濃度、[Humi]baseは、環境大気の水蒸気濃度、[Gas]peakは、呼気吹きかけによって変化したエタノール濃度のピーク値、及び[Humi]peakは、呼気吹きかけによって変化した水蒸気濃度のピーク値である。
【0045】
(5)式−(4)式により、補正係数αは(6)式のように算出される。
【0046】
【数6】

【0047】
ここで、呼気中にエタノールが含まれていなければ、
[Gas]peak−[Gas]base=0
であるので、(6)式は(7)式のように表される。
【0048】
【数7】

【0049】
ここで、水蒸気濃度[Humi]は,湿度センサ24Bによって検出される検出値を用いる。酸化物半導体式の湿度センサの場合、湿度センサ24Bの検出値Hを対数変換した値ln(H)は、(8)式となる。
【0050】
【数8】

【0051】
ただし、dは湿度センサ24Bの湿度に対する感度に関連する定量係数、及びeは定数である。
【0052】
(8)式において、呼気吹きかけ前の湿度センサ24Bの検出値Hbase(ベース値)、及び呼気吹きかけ時の湿度センサ24Bの検出値のピーク値Hpeakを対数変換した値は、環境大気の水蒸気濃度[Humi]base、及び呼気吹きかけによって変化した水蒸気濃度のピーク値[Humi]peakを用いて、(9)及び(10)式で表される。
【0053】
【数9】

【0054】
(9)(10)式より、(11)式が得られる。
【0055】
【数10】

【0056】
(11)式を(7)式に代入して、(2)式で表される補正係数αが得られる。
【0057】
【数11】

【0058】
(2)式より、補正係数αは呼気吹きかけ前後の湿度センサ24Bの検出値の変化と、アルコールセンサ24Aの検出値の変化との比率として表される。
【0059】
次に、図5を参照して、本実施の形態における補正係数及びエタノール濃度算出処理の処理ルーチンについて説明する。本ルーチンは、ROMに記憶された補正係数及びエタノール濃度算出プログラムをCPUが実行することにより行われる。
【0060】
ステップ100で、アルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bのヒータをオンし、2つのセンサの各々の検出値の取得を開始する。
【0061】
次に、ステップ102で、呼気導入管20に呼気が入力されたか否かを判断する。2つのセンサのいずれかの検出値が変化し始めた場合に、呼気が入力されたと判断する。また、導入口20Aに流速センサを設けるなどして、流速センサの検出結果により呼気が導入されたか否かを判断するようにしてもよい。呼気が入力された場合には、ステップ104へ進み、入力されない場合には、入力されるまで本ステップの判断を繰り返す。
【0062】
ステップ104で、取得したアルコールセンサ24A及び湿度センサ24Bの検出値から、アルコールセンサ24Aのベース値Gbase及びピーク値Gpeakと、湿度センサ24Bのベース値Hbase及びピーク値Hpeakとを得て、上記(2)式に代入して補正係数αを算出する。ここで算出される補正係数αをα’とする。
【0063】
次に、ステップ106で、補正係数α’が所定値より大きいか否かを判断する。ここでは、所定値として補正係数αの初期値αを用いる。呼気中にエタノール成分が含まれていなければ、アルコールセンサ24Aの検出値は呼気吹きかけ時の湿度変化によってのみ変化する。センサ感度が変わらなければ、(2)式で算出される補正係数αは、初期値αのままである。呼気中にエタノール成分が含まれている場合、(2)式においてln(Gpeak)の値が大きくなり、補正係数αは初期値αよりも大きな値として算出される。算出された補正係数α’が初期値αよりも大きい場合には、感度変化ではなく呼気中のエタノール濃度が変化したものであると判断して、そのままステップ110へ進む。
【0064】
一方、センサの感度劣化以外の理由で、補正係数α’が初期値αよりも小さい値をとることは通常ないため、補正係数α’が初期値αよりも小さい場合には、ステップ108へ進む。
【0065】
ステップ108で、上記(1)式のαを、新たに算出された補正係数α’に変更して記憶する。これにより、(1)式におけるαの値が更新される。
【0066】
次に、ステップ110で、上記(1)式に、アルコールセンサ24Aの検出値Gを対数変換した値ln(G)、湿度センサ24Bの検出値Hから求まる水蒸気濃度[Humi]を対数変換した値ln[Humi]を代入して、エタノール濃度[Gas]を算出する。なお、ln[Humi]は、湿度センサ24Bの検出値Hを(8)式に代入することにより求まる。
【0067】
次に、ステップ112で、算出結果を表示装置26に表示して処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態に係るエタノール濃度検出装置によれば、検出対象ガスに対する感度と湿度に対する感度とが同じように変化することに着目して補正係数を設定し、呼気吹きかけ前後のアルコールセンサ及び湿度センサの検出値を用いてその補正係数を算出するため、既知濃度の基準ガスとしてガス濃度2水準、湿度2水準の組み合わせ計4条件下におけるガスセンサ出力値を測定して定量係数を算出しなおさなくても、検出値の平均値などを利用して感度補正を行う場合に比べて、簡便な方法で精度よく補正係数を算出することができる。
【0069】
なお、上記の実施の形態では、補正係数αの算出((2)式)において、アルコールセンサ及び湿度センサのベース値及びピーク値を用いているが、必ずしもベース値及びピーク値である必要なく、呼気導入管内に導入された呼気がアルコールセンサ及び湿度センサに接触した時点以降の検出値であれば、この検出値の変化量または変化率を用いて上記と同様に補正係数αを算出することができる。
【0070】
また、上記の実施の形態では、算出された呼気中のエタノールガスの濃度を表示する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、算出したエタノールガス濃度と予め定めた閾値とを比較し、算出したエタノールガス濃度が閾値以上の場合にエタノールの濃度が高いと判定し、エンジンが始動できないようにする等の不正ができないように制御するようにしてもよい。
【0071】
また、上記の実施の形態では、ドライバの呼気からエタノールを検出する場合について説明したが、エタノール濃度検出装置を携帯可能に構成する等により、本発明をドライバ以外の人間の呼気からエタノールを検出する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 エタノール濃度検出装置
24A アルコールセンサ
24B 湿度センサ
26 表示装置
30 エタノール濃度検出器
32 補正係数算出部
34 補正係数記憶部
36 エタノール濃度算出部
38 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の気体中に含まれる検出対象ガス及び前記検出対象の水蒸気に対して感度を有し、前記検出対象ガスの濃度に関連する物理量及び前記湿度に関連する物理量に対応した物理量を検出して検出値を出力するガス検出手段と、
前記検出対象の気体の湿度に関連する物理量を検出して出力する湿度検出手段と、
前記ガス検出手段の検出値を、前記検出対象ガスの濃度に関連する物理量と感度特性に応じた第1の係数との積と前記湿度に関連する物理量と感度特性に応じた第2の係数との積との和、及び感度特性の変化に応じて前記第1の係数及び第2の係数を補正する補正係数を用いて表すと共に、前記湿度検出手段で検出された前記湿度に関連する物理量を用いて前記検出対象ガスの濃度を算出する濃度算出手段と、
前記湿度検出手段の検出値の変化に対する前記ガス検出手段の検出値の変化の割合から前記補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記補正係数算出手段で算出された補正係数が予め定めた値より小さい場合に、前記濃度算出手段で用いられる補正係数を、前記補正係数算出手段で算出された補正係数に更新する更新手段と、
を含むガス検出装置。
【請求項2】
前記ガス検出手段の検出値を、下記(1)式で表した請求項1記載のガス検出装置。
【数1】

ただし、Gはガス検出手段の検出値、αは補正係数、[Gas]は検出対象ガスの濃度に関連する物理量、[Humi]は湿度に関連する物理量、aは前記第1の係数、bは前記第2の係数、cは定数である。
【請求項3】
前記補正係数を、下記(2)式により算出する請求項1または請求項2記載のガス検出装置。
【数2】

ただし、Gpeakは検出対象の気体として呼気が導入されたときのガス検出手段の検出値のピーク値、Gbaseは前記呼気が導入されていないときのガス検出手段の検出値、Hpeakは前記呼気が導入されたときの湿度検出手段の検出値のピーク値、Hbaseは前記呼気が導入されたときの湿度検出手段の検出値、dは定数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175321(P2010−175321A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16588(P2009−16588)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】