説明

ガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法

【課題】一酸化炭素または二酸化炭素の濃度の測定精度の向上を図ったガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法を提供する。
【解決手段】測定対象ガスの通路を形成する導波管20内に、赤外光を照射する光源30と、一酸化炭素または二酸化炭素のうちのいずれか一方である特定ガスの赤外吸収帯に透過の窓を持つ第1フィルタ51と、第1フィルタ51を透過した透過光の光量を検出する第1センサ53と、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つ第2フィルタ52と、第2フィルタ52を透過した透過光の光量を検出する第2センサ54とを設け、第1センサ53と第2センサ54によって、第1検出値と第2検出値をそれぞれ検出し、第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、または、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値に基づいて、特定ガスの濃度を測定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素及び二酸化炭素が赤外線を吸収する性質を利用して一酸化炭素濃度または二酸化炭素濃度を測定するガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一酸化炭素及び二酸化炭素が赤外線を吸収する性質を利用して、一酸化炭素または二酸化炭素の濃度を測定するガス濃度測定装置が知られている。この装置の仕組みについて簡単に説明する。この装置は、導波管を備えており、導波管内に、赤外光を照射する光源と、光源から照射された赤外光を受光して受光量を検出するセンサと、光源とセンサとの間に備えられ、濃度を測定する対象である特定ガス(一酸化炭素または二酸化炭素)の赤外線吸収帯域に透過の窓を持つフィルタとが設けられている。このように構成される装置によれば、センサによる検出値が導波管内に存在する測定対象ガス中の特定ガスの濃度によって変化することから、特定ガスの濃度を測定することができる。
【0003】
ここで、上記センサの検出値は、周囲の温度や湿度などの環境条件等の外的要因によって誤差が生じてしまう。そこで、当該誤差をなくすために、上述した特定ガスの濃度を測定するためのセンサの他に、リファレンス用のセンサを設ける技術が知られている。この技術について簡単に説明する。この技術の場合には、特定ガスの赤外線吸収帯域に透過の窓を持つフィルタを透過した透過光の光量と、測定対象ガスに含まれる全てのガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つフィルタを透過した透過光の光量を、別々のセンサにてそれぞれ検出する。そして、それぞれのセンサにより得られた検出値の差分を算出することによって、各センサにおける外的要因によって生じる誤差を打ち消すことができる。
【0004】
このように誤差を打ち消すことができる理由について、図5を参照して説明する。図5は特定ガスのガス濃度と濃度測定用センサの出力信号及びリファレンス用センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【0005】
図5中、Vs1及びVs2は濃度測定用センサの出力信号のグラフであり、Vr1及びVr2はリファレンス用センサの出力信号のグラフである。また、Vs1とVr1はある環境下における出力信号のグラフであり、Vs2とVr2は、それとは異なる環境下における出力信号のグラフである。つまり、Vs1とVr1は同じ外的要因が作用している状況下での出力信号のグラフであり、Vs2とVr2も同じ外的要因が作用している状況下での出力信号のグラフであるが、Vs1とVr1において作用している外的要因とVs2とVr2において作用している外的要因は異なっている。
【0006】
このグラフから分かるように、外的要因が異なることによって、濃度測定用センサの出力信号は異なる。例えば、図示のように、ガス濃度N1においてはα1,ガス濃度N2においてはα3だけ、出力信号が異なる。また、リファレンス用センサの場合も同様に、外的要因が異なることによって、出力信号は異なる。例えば、図示のように、ガス濃度N1においてはα2,ガス濃度N2においてはα4だけ、出力信号が異なる。
【0007】
ここで、リファレンス用センサの場合には、物理的に、ガス濃度の影響は受けないので、α2とα4は同じ値となる。また、濃度測定用センサが外的要因により受ける影響とリファレンス用センサが外的要因により受ける影響は同じであることから、その影響によって生ずる出力信号の誤差はほぼ等しい。従って、α1とα2、及びα3とα4はほぼ等しくなる。結局、α1,α2,α3及びα4はいずれもほぼ等しくなる。
【0008】
以上のことから、濃度測定用センサにより得られる検出値とリファレンス用センサにより得られる検出値の差分を算出することによって、外的要因によって生じる誤差を打ち消すことができることが分かる。また、このように得られた検出値の差分と特定ガスの濃度は相関関係を有する。従って、上記差分から特定ガスの濃度を得ることができる。
【0009】
しかしながら、実際上は、上記のように得られる検出値の差分は、外的要因(温度,湿度,大気圧などに基づく)によって多少変化する。従って、従来、特定ガスの濃度をより正確に測定するために、例えば、特許文献1に示されているように、温度センサを設けて、温度の変化による検出値の差分の変化分だけ出力の補正を行うなどしていた。
【0010】
また、上述した図5に示すグラフは、温度や湿度などの環境がある一定条件の下で変化せず、外的要因が安定している条件の下における特定ガスのガス濃度と出力信号との関係を示すグラフである。この場合には、上記の通り、外的要因が異なることによって、濃度測定用センサの出力信号とリファレンス用センサの出力信号は異なるものの、各センサの出力信号の変化量はほぼ同じとなる。
【0011】
しかしながら、環境が変化して、外的要因が変化する条件の下においては、濃度測定用センサの出力信号の変化の仕方とリファレンス用センサの出力信号の変化の仕方が異なることが分かっている。そのため、外的要因が変化する条件の下では、濃度測定用センサにより得られる検出値とリファレンス用センサにより得られる検出値の差分を算出することによっても、外的要因によって生じる誤差を打ち消すことができず、測定値の誤差が大きくなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2004−239611
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡易な構成で、一酸化炭素または二酸化炭素の濃度の測定精度の向上を図ったガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0014】
すなわち、本発明のガス濃度測定装置は、
測定対象ガスの通路を形成する導波管と、
前記通路内に赤外光を照射する光源と、
該光源からの赤外光が照射される位置に設けられ、一酸化炭素または二酸化炭素のうちのいずれか一方である特定ガスの赤外吸収帯に透過の窓を持つ第1フィルタと、
第1フィルタを透過した透過光の光量を検出する第1センサと、
前記光源からの赤外光が照射される位置に設けられ、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つ第2フィルタと、
第2フィルタを透過した透過光の光量を検出する第2センサと、
第1センサにより検出された第1検出値と第2センサにより検出された第2検出値から測定対象ガス中の前記特定ガスの濃度を測定する測定手段と、
を備えたガス濃度測定装置において、
前記測定手段は、
第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、または、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値に基づいて、前記特定ガスの濃度を測定することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のガス濃度測定方法は、
測定対象ガスの通路を形成する導波管内に、
赤外光を照射する光源と、一酸化炭素または二酸化炭素のうちのいずれか一方である特定ガスの赤外吸収帯に透過の窓を持つ第1フィルタと、第1フィルタを透過した透過光の光量を検出する第1センサと、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つ第2フィルタと、第2フィルタを透過した透過光の光量を検出する第2センサとを設け、
第1センサにより検出された第1検出値と第2センサにより検出された第2検出値から前記通路内の測定対象ガス中の前記特定ガスの濃度を測定するガス濃度測定方法において、
第1センサと第2センサによって、第1検出値と第2検出値をそれぞれ検出するステップと、
第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、または、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値に基づいて、前記特定ガスの濃度を測定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法によれば、温度,湿度,大気圧などの環境が変化することにより外的要因が変化する状況下においても、簡易な構成で、かつ濃度の測定精度を高めることが可能となった。
【0017】
すなわち、外的要因が変化する状況下においては、外的要因を起因とする第1センサによる検出誤差と第2センサによる検出誤差は異なる値となる。そのため、これらの差分をとっても外的要因に基づく誤差を打ち消すことができない。しかしながら、本願発明者は、外的要因が変化する状況下において、第1センサによる検出誤差と第2センサによる検出誤差は、その変化が相対的な関係にあることを見出した。これに伴い、第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、及び、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値は、外的要因の変化に影響されないことを見出した。そして、これらの値は、測定対象ガス中の特定ガスの濃度に対して、概ね一義的に定まることを見出した。従って、これらの値に基づいて特定ガスの濃度を測定することで、温度などの各種外的要因の変化に基づいた補正をする必要もなく、より正確に濃度を測定することが分かった。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、簡易な構成で、一酸化炭素または二酸化炭素の濃度の測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例に係るガス濃度測定装置及びガス濃度測定方法について説明する。ガス濃度を測定する対象としては、一酸化炭素と二酸化炭素を挙げることができるが、以下の説明では、二酸化炭素の場合の例を説明する。なお、一酸化炭素の場合についても、赤外吸収帯域が異なるだけで、その他に関しては、二酸化炭素の場合と同一である。
【0021】
<ガス濃度測定装置>
図1を参照して、本発明の実施例に係るガス濃度測定装置の構成について説明する。図1は本発明の実施例に係るガス濃度測定装置の模式的断面図である。
【0022】
ガス濃度測定装置100は、略円筒形状のハウジング10と、ハウジング10の内周面に沿って嵌め込まれる円筒形状の導波管20と、導波管20の一端側に設けられる光源30と、光源30から照射される光を導波管20の他端側に向けて集光するリフレクタ40と、導波管20の他端側に設けられる赤外線検出器50とを備えている。
【0023】
二酸化炭素の赤外吸収は、4.26μm付近に中心波長を持つ帯域である。従って、光源30は、この帯域を含む赤外線を含む光を発生させるものを適用すればよい。好適な例としては、タングステンをフィラメントに用いたタングステンランプを挙げることができる。導波管20の内壁面とリフレクタ40の表面は、効率良く赤外光を反射するようにする必要があり、これらの面は、鏡面や光沢のある金属面により構成するのが望ましい。なお、導波管20やリフレクタ40の素材を光沢のある金属により構成しても良いし、表面のみを光沢のある金属面により構成しても良い。後者の場合には、光沢のある金属以外の素材により構成された本体の表面に、例えば、めっき,蒸着,スパッタリングによって、金,アルミニウム,ニッケルによって、表面にのみ光沢のある金属面を形成することができる。導波管20の具体例としては、銅製のパイプを用い、その内壁面を研磨したものに、ニッケルを下地として金を光沢めっきしたものを挙げることができる。
【0024】
また、ハウジング10と導波管20には、それぞれ複数の貫通孔11,21が設けられている。これら複数の貫通孔11,21によって、測定対象となるガスを、導波管20内に導くことができる。なお、導波管20の管内は、測定対象ガスの通路となる。
【0025】
赤外線検出器50は、第1フィルタ51と、第1フィルタ51を透過した透過光の光量を検出する第1センサ53と、第2フィルタ52と、第2フィルタ52を透過した透過光の光量を検出する第2センサ54とを備えている。第1フィルタ51と第2フィルタ52は、図示のように、光源30と対向した位置に設けられて、光源30からの赤外光が照射される位置に設けられている。そして、第1フィルタ51は、二酸化炭素の赤外吸収帯である4.2μmに透過の窓を持つ狭帯域フィルタである。また、第2フィルタ52は、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域である4.0μmに透過の窓を持つ狭帯域フィルタである。以上のように構成される赤外線検出器50の具体例としては、狭帯域フィルタ付サーモパイルを挙げることができる。
【0026】
なお、一酸化炭素の濃度を測定する場合には、第1フィルタ51を、一酸化炭素の赤外吸収帯である4.6μmに透過の窓を持つ狭帯域フィルタとすれば良い。
【0027】
<ガス濃度測定方法>
特に、図2〜図4を参照して、本実施例に係るガス濃度測定方法について説明する。図2は外的要因の変化と出力信号との関係を模式的に示したグラフである。図3はガス濃度と、第1センサの検出値を第2センサの検出値で割った値との関係を示すグラフである。図4はセンサの立ち上がり特性を示すグラフである。
【0028】
温度,湿度,大気圧などの環境が変化することにより外的要因が変化すると、第1センサ53により検出される検出値と第2センサ54により検出される検出値は変化する。そして、これらの変化の仕方は異なるので、背景技術の中でも説明した通り、これらの検出値の差分を算出しても、外的要因を起因とする誤差を打ち消すことはできない。
【0029】
ここで、外的要因が変化する状況下において、第1センサ53により検出される検出値と第2センサ54により検出される検出値は相対的に(ほぼ一定の比を維持しながら)変化することが見出された。この点について、図2を参照して説明する。図2は二酸化炭素の濃度が一定の下で、外的要因が変化している際の第1センサ53の出力信号と第2セン
サ54の出力信号が変化する様子を示したものである。なお、外的要因は温度,湿度,大気圧など様々な原因に影響される。従って、図2のグラフにおける横軸は具体的な数値により定量的に示されるものではない。図2のグラフの横軸は、何らかの影響で外的要因が一様に変化する場合を示している。また、図2のグラフ中、Vsは第1センサ53における外的要因に対する出力信号のグラフを示し、Vrは第2センサ54における外的要因に対する出力信号のグラフを示している。
【0030】
この図2のグラフに示すように、外的要因が変化すると、第1センサ53の出力信号と第2センサ54の出力信号は、ほぼ一定の傾きを持って直線的に変化する。つまり、外的要因がM1の場合において、第2センサ54の出力信号をX1,第1センサ53の出力信号から第2センサ54の出力信号を差し引いた値をX2とし、外的要因がM2の場合において、第2センサ54の出力信号をY1,第1センサ53の出力信号から第2センサ54の出力信号を差し引いた値をY2とすると、(X1+X2)/X1と(Y1+Y2)/Y1は、ほぼ等しくなる。
【0031】
従って、第1センサ53の出力信号を第2センサ54の出力信号で割った値は、外的要因の変化に殆ど影響されることのない値が得られる。そして、この値はガス濃度(二酸化炭素の濃度)に対して概ね一義的に定まる。それを示したのが、図3のグラフ(検量線)である。図3に示すように、ガス濃度と、第1センサ53の出力信号を第2センサ54の出力信号で割った値は相関関係を有する。従って、この関係を予め求めておき、その関係を関数にしたもの、あるいはテーブル化したものをCPUのROM等に記憶させておけば、第1センサ53により得られる出力信号と第2センサ54により得られる出力信号からガス濃度(二酸化炭素の濃度)を求めることができる。
【0032】
次に、より具体的なガス濃度の測定手順を説明する。
【0033】
まず、導波管20の管内に測定対象ガスを充填する。そして、第1センサ53により検出されたアナログ信号と第2センサ54により検出されたアナログ信号をそれぞれゲイン調整した後に、各々A/D変換器にてAD変換した値(以下、それぞれVs,Vrと称する)をCPUに送信する。そして、CPUにてVs/Vrを計算し、上記のように、ROM等に予め記憶されている関数またはテーブルから、測定対象ガス中の二酸化炭素濃度を導き出す。なお、具体的な出力方法としては、CPUのデジタル分解能(10bit〜16bitが適切)に応じて得られるデジタル換算されたビットデータをパラレルまたはシリアルデータとして出力する。
【0034】
ここで、Vs/Vrの計算は、ガス濃度測定装置100の内部で行うようにしても良いし、外部装置で行うようにしても良い。前者の場合には、ガス濃度測定装置100にA/D変換器及びCPUを設けておき、装置内部でAD変換及びVs/Vrの計算等を行う。また、後者の場合には、ガス濃度測定装置100においては、第1センサ53により検出されたアナログ信号と第2センサ54により検出されたアナログ信号をゲイン調整して、アナログデータのまま外部装置に送信する。そして、外部装置にてAD変換して、Vs/Vrの計算等を行う。
【0035】
以上のようにして得られたデジタルデータを、D/A変換器にて、ガス濃度(二酸化炭素濃度)に応じたリニアなアナログ電圧データとして出力した結果を示したのが、図4に示したグラフである。図4に示すグラフにおいては、二酸化炭素濃度が5%の場合におけるセンサの立ち上がり特性を示したものである。図4中、sは第1センサ53の出力値のグラフ、rは第2センサ54の出力値のグラフ、aは上記のような演算により得られて出力されるVs/Vrのグラフである。また、bは比較のために示した差分(Vr−Vsの絶対値)の出力データのグラフであり、tは参考のために示した赤外線検出器50内の温
度センサの出力値のグラフである。
【0036】
ガス濃度測定装置100の立ち上がり時(電源投入直後)においては、光源30の出力(赤外線の光量)が低く、かつ、センサの温度が低いため、検出感度が小さく、検出信号も小さくなる。従って、図4に示すように、第1センサ53の出力値、及び第2センサ54の出力値は、電源投入直後においては本来得られるべき出力値よりも小さな値となる。その後、時間の経過と共に、光源30の出力が安定し、センサ自体の発熱による温度上昇によって出力値は増加し、本来得られる値を出力するようになる。
【0037】
ここで、図4から分かるように、ガス濃度測定装置100の立ち上がり時のセンサ出力値が不安定な状態において、差分の出力データは大きな誤差を生じているのに対して、本実施例におけるVs/Vrの出力データは比較的誤差が小さい。
【0038】
<本実施例の優れた点>
以上のように、本実施例によれば、外的要因の変化に殆ど影響されることなく、特定ガス(一酸化炭素または二酸化炭素)の濃度を測定することができる。したがって、温度などの各種外的要因の変化に基づいた補正を必要とすることなく、より正確に特定ガスの濃度を測定することができる。また、上記のような補正を不要とすることで、ハードやソフトによる特別な補正機能を必要とすることなく、構成を簡易なもので実現できる。
【0039】
また、本実施例によれば、上記の通り、ガス濃度測定装置100の立ち上がり時のセンサ出力値が不安定な状態においてもVs/Vrの出力データは比較的誤差が小さく、立ち上がり特性にも優れている。このことは、急激な環境変化による外的要因の変化に対しても、測定誤差を小さくできることの裏づけともなる。
【0040】
なお、これまでの説明では、Vs/Vrから特定ガスの濃度を測定する場合について説明したが、その逆数であるVr/Vsと特定ガスの濃度も相関関係を有することは言うまでもなく、Vr/Vsから特定ガスの濃度を測定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガス濃度測定装置の模式的断面図である。
【図2】図2は外的要因の変化と出力信号との関係を模式的に示したグラフである。
【図3】図3はガス濃度と、第1センサの検出値を第2センサの検出値で割った値との関係を示すグラフである。
【図4】図4はセンサの立ち上がり特性を示すグラフである。
【図5】図5は特定ガスのガス濃度と濃度測定用センサの出力信号及びリファレンス用センサの出力信号との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10 ハウジング
11 貫通孔
20 導波管
21 貫通孔
30 光源
40 リフレクタ
50 赤外線検出器
51 第1フィルタ
52 第2フィルタ
53 第1センサ
54 第2センサ
100 ガス濃度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスの通路を形成する導波管と、
前記通路内に赤外光を照射する光源と、
該光源からの赤外光が照射される位置に設けられ、一酸化炭素または二酸化炭素のうちのいずれか一方である特定ガスの赤外吸収帯に透過の窓を持つ第1フィルタと、
第1フィルタを透過した透過光の光量を検出する第1センサと、
前記光源からの赤外光が照射される位置に設けられ、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つ第2フィルタと、
第2フィルタを透過した透過光の光量を検出する第2センサと、
第1センサにより検出された第1検出値と第2センサにより検出された第2検出値から測定対象ガス中の前記特定ガスの濃度を測定する測定手段と、
を備えたガス濃度測定装置において、
前記測定手段は、
第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、または、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値に基づいて、前記特定ガスの濃度を測定することを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
測定対象ガスの通路を形成する導波管内に、
赤外光を照射する光源と、一酸化炭素または二酸化炭素のうちのいずれか一方である特定ガスの赤外吸収帯に透過の窓を持つ第1フィルタと、第1フィルタを透過した透過光の光量を検出する第1センサと、測定対象ガスに含まれる全ての種類のガスの赤外吸収がない帯域に透過の窓を持つ第2フィルタと、第2フィルタを透過した透過光の光量を検出する第2センサとを設け、
第1センサにより検出された第1検出値と第2センサにより検出された第2検出値から前記通路内の測定対象ガス中の前記特定ガスの濃度を測定するガス濃度測定方法において、
第1センサと第2センサによって、第1検出値と第2検出値をそれぞれ検出するステップと、
第1検出値を第2検出値で割った値に相当する値、または、第2検出値を第1検出値で割った値に相当する値に基づいて、前記特定ガスの濃度を測定するステップと、
を備えることを特徴とするガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−82862(P2008−82862A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262701(P2006−262701)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(390022770)ネオプト株式会社 (4)
【Fターム(参考)】