説明

ガス濾過用の濾過材、濾過装置及び濾過材の製法

本発明は、家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調のために、空気のようなガスの濾過に用いられる、少なくとも1つの繊維ウェブを含有する濾過材であって、少なくとも1つの繊維ウェブが、異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなり、各繊維群の繊維が、50decitex以下、好ましくは、1decitex以上の番手を有するものである濾過材に関する。本発明は、さらに、濾過材の製法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調のために、空気のようなガスの濾過に用いられる濾過材、及びこの濾過材を含む濾過装置を提供することにある。
【0002】
本発明の他の目的は、前記装置を使用する濾過方法及び前記濾過材の製法を提供することにある。
【背景技術】
【0003】
従来技術による濾過材は、実質的に一定の直径を持つ混合した繊維からなる。
【0004】
また、濾過材は、フランス国特許公開第2,761,901号に記載されているように、繊維をカーディング処理することによって、又はノズルを通して熱可塑性重合体を紡糸することによっても得られる。
【0005】
その明細書によれば、当業者は、濾過材を製造するために使用したいと考える繊維の平均直径を選択している。
【0006】
1束の繊維の平均直径は、通常、その番手(decitexで表示される)によって特徴付けられる。
【0007】
一般論として、高い濾過効率を得ることがより強く望まれるほど、選択される繊維は、より細く、特に、5decitex未満の番手のものである。その結果、一般に、目詰まり許容量が小さくなる。
【0008】
逆に、大きい目詰まり許容量を持つ濾過材を得ることがより強く望まれるほど、「粗い」繊維、特に、5decitex以上の番手のものが選ばれる。しかし、結果としては、濾過効率が低くなる。
【0009】
これらの解決策が有する問題点は、高い濾過効率及び良好な目詰まり許容量を同時に有する濾過材を得ることの困難性に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の欠点を解消することにある。その結果として、本発明の目的は、高効率及び良好な目詰まり許容量を持つ濾過材を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調のために、空気のようなガスの濾過に用いられる、少なくとも1つの繊維ウェブを含有する濾過材であって、少なくとも1つの繊維ウェブが、異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなるものであることを特徴とする濾過材によって達成される。
【0012】
発明者らは、驚くべきことには、本発明による濾過材が、高効率及び良好な目詰まり許容量を同時に得ることを可能にするとの知見を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による濾過材の他の特徴によれば:
−各繊維群の繊維は、50decitex(dtex)以下、好ましくは、1decitex以上の番手を有する;
−平均直径を持つ2つの繊維群の番手は、1.5以上、好ましくは、1.6以上、又はさらに、2以上の係数で異なる;
−異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物は、より小さい平均直径を持つ繊維10〜90%、好ましくは、より小さい平均直径を持つ繊維25〜75%、特に、より小さい平均直径を持つ繊維実質的に50%からなる;
−繊維ウェブにおける繊維は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート又はポリアミド繊維のような熱可塑性繊維の群、アクリル繊維又は過酸化アクリル繊維の群から選ばれ、また、アラミド繊維の群、フェノール系繊維の群、フルオロカーボン繊維の群、ガラス繊維のような無機繊維の群、又は金属繊維の群からも選択される;
−繊維ウェブにおける繊維は長い繊維であり、カードウェブを形成するために、カーディング操作によって混合される;
−繊維ウェブにおける繊維は、38mm以上、好ましくは、120 mm以下の平均長さを有する;
−濾過材は、異なる平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなる繊維ウェブと並列に配置された第2の繊維ウェブ、及び2つの繊維ウェブの間に配置された活性粒子、特に、活性炭を含有する;
−第2のウェブにおける繊維の番手が、繊維混合物におけるウェブ繊維の最も小さい番手以下である。
【0014】
本発明は、上記濾過材を含むことを特徴とする濾過装置、詳述すれば、空気のようなガスの濾過を用いられる又は家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調に用いられる濾過装置にも関する。
【0015】
濾過装置は、一般に、柔軟な又は堅固な重合体のストリップからなるフレームを包含し、ここに濾過材が固着される。平均的な濾過装置は、通常、対をなす2つ又は4つの並列ストリップからなる。濾過材は、一般に、重合体のストリップに固着される前に、蛇腹式に折り返される。
【0016】
本発明は、空気のようなガスを濾過する方法であって、異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群からなるウェブ、第2の繊維ウェブ及び2つのウェブの間の活性粒子を包含する本発明による濾過装置を、空気流中に配置して、入来する空気流を、初めに、異なる平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群からなる繊維ウェブを通過させることを特徴とする濾過方法にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、空気のような気体の濾過に用いられる濾過材を製造する方法であって、少なくとも下記の連続する工程を包含する濾過材の製法にも関する:
−異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群からなり、その番手が、50decitex以下、好ましくは、1decitex以上である繊維を供給し;
−供給された繊維を混合し;
−混合物をカーディング装置に導入し;
−カーディング操作を行って、カードウェブを形成する。
【0018】
1具体例によれば、この製法は、異なった平均直径を持つ2つの繊維群の番手が、1.5以上、好ましくは、1.6以上、又はさらに、2以上の係数によって異なる繊維を使用する。
【0019】
1つの有利な特徴によれば、製法は、続いて、カードウェブの機械的圧密性を増大させるために、特に、水ジェットによって、繊維の水圧結合を行う工程を包含する。
【0020】
カーディング操作の間に、グリルを追加することも有利である。
【0021】
他の特徴によれば、製法は、続く成形、特に、カレンダ加工又はラミネーションの工程を包含し、その間に、前記カードウェブ及び第2のウェブを、2つのウェブを結合させるための形成装置に導入し、ここで、特に、カレンダ加工又はラミネーション操作の間に、2つのウェブの間に活性粒子、特に、活性炭を挿入する。
【0022】
他の詳細及び有利な特徴については、下記の好適な具体例(これに限定されない)の記載から明らかになるであろう。
【0023】
従来技術に従い(例1及び例2)及び本発明に従い(例3)、濾過材を使用して、トップ繊維ウェブ、ボトム繊維ウェブ及び2つの繊維ウェブの間の活性炭をからなる3つの結合フィルター(下記の特性を持つ)を調製した。
【0024】
【表1】

【0025】
使用した繊維を、上述のフランス国特許公開第2,761,901号の教示に従って、カーディング加工した。
【0026】
トップウェブの表面積あたりの質量は38g/m2である。
【0027】
ボトムウェブの表面積あたりの質量は40g/m2である。
【0028】
例1及び2は、本発明による例3(2つの繊維群を混合している)とは異なり、単一の繊維群でなる濾過材を使用する。
【0029】
活性炭を、接着剤によって、2つのウェブの間に保持している。
【0030】
同じように折り曲げた後、3つの濾過材を、ポリプロピレン製の2つの発泡ストリップ(5mm)に固着して、幅206 mm、長さ208.5 mm及び高さ30mmを持つ濾過装置を得た。
【0031】
ISO基準TS 11155-1によって規定されたようにして、濾過装置の特性を測定した。
【0032】
トップウェブを、空気流入口に配置する。使用するダストは、ISOFINE(A2ファインテストダスト−ISO 12103-1)と称されるSAEファインタイプのものである。
【0033】
下記の表は得られた結果を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
3つの例について行った測定では、圧力低下は、濾過材の繊維の種類によって、有意の影響を受けないことを示した(圧力低下の測定値の分布を約10%と見積もる)。
【0036】
公知の様式で、「粗い」繊維の濾過材(例2)の目詰まり許容量が、「細い」繊維の濾過材(例1)のものよりも非常に大きいことが観察される。
【0037】
驚くべきことには、「粗い」繊維及び「細い」繊維の混合物でなる濾過材(例3)の目詰まり許容量は、「粗い」繊維の濾過材(例2)のものに近似している。
【0038】
フィルターの特性を調べるため、フィルターの使用の異なった時点において、粒子スペクトル(μm)を関数として、平均効率(%)の変化についても測定を行った。
【0039】
ISOFINEダスト75mg/m3/hを含有する空気流180 m3/hを通過させる新しいフィルターの出口において圧力Poを測定し、特性圧力、特に、Po+125 Pa、Po+250 Paに関して、一定の負荷空気流量において、効力の経時変化を記録する。
【0040】
図1は、例1、2及び3の3つの例について、圧力Po+125 Paに関する粒子スペクトルを関数とする平均効率の変化を示す。
【0041】
変わらず、「細い」繊維の濾過材(例1)の平均効率が、「粗い」繊維の濾過材(例2)のものよりも非常に大きいことに注目すべきである。
【0042】
驚くべきことには、「粗い」及び「細い」繊維の混合物からなる本発明による濾過材(例3)が、「細い」繊維からなる濾過材(例1)のものと近似した平均効率を有することが理解される。
【0043】
このような挙動は、下記の表によって表されるように、繊維混合物からなる濾過材を持つフィルターの使用の各時点において観察される。粒径1μm(自動車において濾過されるべき最も多いダストを代表する)に関する効率の値を、圧力を関数として示す。
【0044】
【表3】

【0045】
このように、本発明によれば、平均効率が高く、同時に、高い目詰まり許容量をも有する濾過装置を得ることを可能にする注目すべき濾過材が得られる。
【0046】
本発明は、これらのタイプの具体例に限定されず、少なくとも1つのウェブが異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなるものである各種の濾過材及び濾過装置を包含するように、非限定的に解釈されなければならない
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】例1、2及び3の3つの例について、圧力Po+125 Paに関する粒子スペクトルを関数とする平均効率の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調のために、空気のようなガスの濾過に用いられる、少なくとも1つの繊維ウェブを含有する濾過材であって、少なくとも1つの繊維ウェブが、異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなるものであることを特徴とする、濾過材。
【請求項2】
各繊維群の繊維が、50decitex以下、好ましくは、1decitex以上の番手を有するものであることを特徴とする、請求項1記載の濾過材。
【請求項3】
平均直径の2つの繊維群の番手が、1.5以上、好ましくは、1.6以上、又はさらに、2以上の係数で異なるものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の濾過材。
【請求項4】
異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物が、より小さい平均直径を持つ繊維10〜90%、好ましくは、25〜75%、特に、実質的に50%からなるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の濾過材。
【請求項5】
繊維ウェブにおける繊維が、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート又はポリアミド繊維のような熱可塑性繊維の群、アクリル繊維又は過酸化アクリル繊維の群、アラミド繊維の群、フェノール系繊維の群、フルオロカーボン繊維の群、ガラス繊維のような無機繊維の群、又は金属繊維の群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の濾過材。
【請求項6】
繊維ウェブにおける繊維が、長い繊維であり、カードウェブを形成するために、カーディング操作によって混合されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の濾過材。
【請求項7】
繊維ウェブにおける繊維が、38mm以上、好ましくは、120 mm以上の平均長さを有するものであることを特徴とする、請求項6記載の濾過材。
【請求項8】
異なる平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなる繊維ウェブと平行に配置された第2の繊維ウェブ、及び2つの繊維ウェブの間に配置された活性粒子、特に、活性炭を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の濾過材。
【請求項9】
第2のウェブにおける繊維の番手が、繊維混合物におけるウェブ繊維の最も小さい番手以下であることを特徴とする、請求項8記載の濾過材。
【請求項10】
特に、家屋又は自動車の換気及び/又は加熱及び/又は空調のために、空気のようなガスの濾過に用いられる濾過装置であって、請求項1〜9のいずれかに記載の濾過材を含むことを特徴とする、濾過装置。
【請求項11】
空気のようなガスを濾過する方法であって、請求項8又は9に記載の濾過材を含む請求項10に記載の濾過装置を空気流内に導入するものであり、異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群の混合物からなる繊維ウェブを、空気流の入口に配置することを特徴とする、濾過法。
【請求項12】
空気のようなガスの濾過に用いられる濾過材を製造する方法であって、少なくとも、
−異なった平均直径を持つ少なくとも2つの繊維群からなり、その番手が、50decitex以下、好ましくは、1decitex以上である繊維を供給し;
−供給された繊維を混合し;
−混合物をカーディング装置に導入し;
−カーディング操作を行って、カードウェブを生成する
連続する工程を包含することを特徴とする、濾過材の製法。
【請求項13】
異なる平均直径を持つ2つの繊維群の番手が、1.5以上、好ましくは、1.6以上、又はさらに、2以上の係数で異なるものであることを特徴とする、請求項12記載の製法。
【請求項14】
さらに、カードウェブの機械的圧密性を増大させるため、特に、水ジェットによって、繊維の水圧結合を行う工程を包含することを特徴とする、請求項12又は13記載の製法。
【請求項15】
カーディング操作の間に、グリルを追加することを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の製法。
【請求項16】
さらに、成形、特に、カレンダ加工又はラミネーションの工程を包含し、その間に、前記カードウェブ及び第2のウェブを、2つのウェブを結合させるための形成装置に導入し、ここで、特に、カレンダ加工又はラミネーション操作の間に、2つのウェブの間に活性粒子、特に、活性炭を挿入する工程を包含することを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の製法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−515615(P2008−515615A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534057(P2007−534057)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050722
【国際公開番号】WO2006/035174
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(505223528)
【Fターム(参考)】