説明

ガス遮断装置

【課題】一過性の測定条件想定外の状態で生じるセンサ異常によるガス遮断を解除すること。
【解決手段】流量検出部11と、流量算出部12、異常流量判定部13と、弁駆動部14と、弁15と、復帰入力部16と、センサ異常判定部17と、センサ異常解除入力部18とを備え、センサ異常判定部17が一過性のセンサ異常を判断した時は弁閉信号C出力し弁15を遮断すると共に、センサ異常解除信号Fをセンサ異常解除入力部18に出力し、センサ異常解除入力部18が外部からのセンサ異常解除入力を受け付けると弁開信号Eを出力し弁15を復帰することで、一過性の測定条件想定外の状態で生じるセンサ異常によるガス遮断を解除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス遮断装置のセンサが異常判定しガスを遮断した時、ガスへの空気混入による一過性の異常の場合は異常を解除しガスを使用できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のガス遮断装置は、図3に示すようにガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号aを出力する流量検出部1と、前記流量検出部1の前記流量信号aを受け取ると流量bを算出する流量算出部2と、前記流量算出部2の前記流量bを受け取ると予め保持している判定値と比較し異常であれば弁閉信号cを出力する異常流量判定部3と、前記異常流量判定部3の前記弁閉信号cまたは復帰入力部8の弁開信号eあるいはセンサ異常判定部6の前記弁閉信号cを受け取ると弁駆動信号dを出力する弁駆動部4と、前記弁駆動部4の前記弁駆動信号dを受け取るとガス通路を開栓または閉栓する弁5と、前記流量検出部1の前記流量信号aが予め定められた異常条件に合致するかどうかの異常判定を実施し異常成立時にのみ前記弁閉信号cを出力する前記センサ異常判定部6と、前記流量算出部2の前記流量bを受け取ると前記流量bを積算して保持する積算部7と、外部より復帰入力を受け付けると前記弁開信号eを出力する前記復帰入力部8とから構成されていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3624642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では流量検出部1で検出した流量信号aに基づき、異常流量判定、センサ異常判定、積算を実施するようにしているので、流量信号aが現在使用しているガス種と異なる気体が不均一に混合(例えば、熱量転換時やガス遮断装置の設置・交換時の空気混入)し、不均一でガスの層が出来ると超音波の伝搬が均一になっている時と異なる伝わり方となるため測定条件想定外の流量を示す可能性がある。
【0004】
超音波式ガス遮断装置の流量計測は上流側から下流側と下流側から上流側とセンサの送受信を切替え、伝搬時間Tの差から流速を求める構成になっている。すなわち、発信側のセンサから出力された超音波を受信側では図4に示すような波形として取得し、Vのレベルを3波目が超えその後に初めてゼロクロスする時点を伝搬時間Tとして測定している。このため波形全体が適正な大きさでなければ異常な流速を算出することとなる。
【0005】
この適正な波形をつくるために波形の最大ピークをVH、VLの間に入るように都度ゲイン補正し、波形の3波目が常に初めてVのレベルを超えるようにしている。従って、ゲイン補正が想定外の変動(ゲインの上げ下げが追従できないくらい変化した場合や、上下限値に張り付いた場合等で適正な波形が得られないような場合)を必要とされたときに計測した流速が異常(例えば2波目や4波目で初めてVのレベルを超えた場合や、全ての波形のピークがVのレベルを超えない場合等)となる可能性がある。
【0006】
そこでゲイン補正が想定外となった時それを判定してセンサ異常としてガスを遮断し、安全性を鑑みその状態を保持するようにしていた。
【0007】
ただし、センサ異常の原因には装置の永続的な故障によるものとガスへの空気混入で生じる一過性のものとが含まれ、一過性の異常においてもガスを遮断状態を保持するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ガスと空気との混合で(例えば、熱量転換時やガス遮断装置の設置・交換時含めた遮断、復帰のタイミング)で生じた一過性のセンサ異常が原因で至る遮断状態を外部からの入力により弁復帰できる構成とし、設置現場でのメンテナンスにより再使用可能とすることができるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガス遮断装置は、センサ異常判定部が一過性の可能性のあるセンサ異常を判定するとセンサ異常解除信号をセンサ異常解除入力部に出力し、センサ異常解除入力部はそのタイミングで外部からの入力を受け取ると弁駆動部に弁開信号を出力し、遮断した弁を復帰するようにしたものである。
【0010】
これによってガスと空気との混合などによる一過性のセンサ異常により生じた弁の遮断状態を解除することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス遮断装置はセンサ異常の発生でガスを遮断し、センサ異常の原因により一過性の異常事象についてはガスの遮断を解除しガスの使用が可能となる。従って、異常発生の安全性を確保するとともに、設置現場でのメンテナンスでガスの再使用が可能となり利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する流量検出部と、前記流量検出部の前記流量信号を受け取ると流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部の前記流量を受け取ると予め保持している判定値と比較し異常であれば弁閉信号を出力する異常流量判定部と、前記異常流量判定部の前記弁閉信号または復帰入力部の弁開信号あるいはセンサ異常判定部の前記弁閉信号またはセンサ解除入力部の前記弁開信号を受け取ると弁駆動信号を出力する弁駆動部と、前記弁駆動部の前記弁駆動信号を受け取るとガス通路を開栓または閉栓する弁と、前記異常流量判定部が異常流量を判定した時外部より復帰入力を受け付けると前記弁開信号を出力する前記復帰入力部と、前記流量検出部の流量信号を受け流量信号の状況より装置の故障による定常的な異常かガスへの空気混入による一過的な可能性のある異常かを判定し、一過的な可能性のある異常の場合はセンサ異常解除信号を出力するセンサ異常判定部と、前記センサ異常判定部のセンサ異常解除信号を受け取ると有効となり、外部より異常解除入力を受け付け前記弁駆動部に弁開信号を出力するセンサ異常解除入力部とを備えることにより、流れるガスの異常な状態により生じるセンサ異常は異常解除が可能とすることができる。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明のセンサ異常判定部が、前記センサ異常解除入力部が異常解除入力を受け付けた後所定時間以内にセンサ異常が解消されないと判定した時、装置の故障による定常的な異常と判定しセンサ異常解除信号を出力しないようにしたことにより、流量信号の状態より一過的な可能性のある異常と区別ができない定常的な故障を判定し異常解除を不可能とすることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の機能ブロック図を示すものである。
【0016】
図1において、流量検出部11はガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号Aを出力する(例えば、ガス通路内に対向した超音波センサを取り付け超音波の伝播時間の違いからガス流量を検知する)。
【0017】
流量算出部12は流量検出部11の流量信号Aを受け取ると流量Bを算出する。
【0018】
異常流量判定部13は流量算出部12の流量Bを受け取ると予め保持している判定値(例えば、ガス遮断装置が許容している最大通過ガス流量でもよいし、少量のガス流量が継続して流れ続けて許容時間を超えた場合でもよい)と比較し異常であれば弁閉信号Cを出力する。
【0019】
弁駆動部14は異常流量判定部13の弁閉信号Cまたは復帰入力部16の弁開信号Eあるいはセンサ異常判定部18の弁閉信号Cを受け取ると弁駆動信号D(例えば、弁15を開栓または閉栓するように駆動させる信号)を出力する。
【0020】
弁15は弁駆動部14の弁駆動信号Dを受け取るとガス通路を開栓または閉栓する。
【0021】
復帰入力部16は外部より復帰入力(例えば、ボタンによる入力でも良いし、リードスイッチのような非接触のものでも良いし、通信電文による入力でも同等の効果が得られる)を受け付けると弁開信号Eを出力する。
【0022】
センサ異常判定部17は流量信号Aを受け取ると流量信号Aの持つ情報と予め保持している判定値と比較し流量信号Aが想定外の範囲になった時センサ異常と判定して弁閉信号Cを出力する。併せて流量信号Aの情報より装置の故障による定常的な異常かガスへの空気混入による一過的な可能性のある異常かを判定し、一過的な可能性のある異常の場合はセンサ異常解除信号Fを出力する。
【0023】
センサ異常解除入力部18はセンサ異常解除信号Fを受け取り、センサ異常解除信号Fを受け取り且つ外部より異常解除入力(ボタンによる入力でも良いし、リードスイッチのような非接触のものでも良いし、またそれらの同時入力でも良いし、通信電文による入力でも同等の効果が得られる)を受け付けると弁開信号Eを出力する。
【0024】
流量検出部11は超音波式の速度センサであり、流量計測は上流側から下流側と下流側から上流側とセンサの送受信を切替え、伝搬時間Tの差から流速を求め、固定されたガス流路の面積との積よりガスの流量を求める構成になっている。すなわち、発信側のセンサから出力された超音波を受信側では図4の波形図に示すような波形として取得し、Vのレベルを3波目が超えてその後に初めてゼロクロスする時点を伝搬時間Tとして測定している。
【0025】
例えば、センサ異常判定部17は発信側より超音波送信後所定時間以内に受信側で信号が検出されない状態が継続した時センサ異常を判定し、発生した異常がセンサの発信異常もしくは受信異常の故障が想定されるためセンサ異常解除信号Fは出力しない。
【0026】
また、熱量転換時やガス遮断装置の設置・交換時にガス配管中に空気が混入した場合、ガスと空気では図4に示す受信波形の波高値が異なる。伝搬時間Tの測定は受信波形の3波目がVレベルを超えたその後のゼロクロスまでの時間を基点に測定しているため波形全体が適正な大きさでなければ異常な流速を測定することとなるため、波形の最大ピークがVHからVLの間に入るよう都度ゲインを補正し、波形の3波目が常に初めてVのレベルを超えるようにしている。混入した空気中を超音波が通過したときの受信波形の波高値は小さくなるためゲインの調整値は大きくなる。センサ異常判定部17はゲインの調整値が所定値を超えることが所定時間継続した時センサ異常を判定し、発生した異常が空気の混入と想定されるためセンサ異常解除信号Fを出力する。
【0027】
以上のように構成されたガス遮断装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
まず、流量信号Aの情報が想定外の状態になった時センサ異常判定部17が異常を判定し弁閉信号Cを出力し弁駆動部14が弁15をガス遮断状態とする。またセンサ異常判定部17は発生した異常が空気の混入のような一過性の異常と判定した時はセンサ異常解除部18にセンサ異常解除信号Fを出力し、外部からの異常解除入力を有効としてセンサ異常解除部18より弁開信号Eを出力し弁駆動部14が弁15を復帰する。
【0029】
以上のように、本実施の形態においてはセンサ異常判定部18が、計測するガスの状態によってもたらせられる一過性の可能性がある異常を判別し、安全確保のため一度遮断した弁を復帰することができる。また明らかなセンサの故障については遮断を継続し弁の復帰を不可能にすることができる。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2におけるガス遮断装置のタイムチャートを示すものである。なお、実施の形態2は実施の形態1のガス遮断装置のセンサ異常判定部17に以下の特徴を付加したものである。
【0031】
図2において、センサ異常判定部17はゲイン調整値が閾値G1を所定時間越えた時点(t1)でセンサ異常を判定し、弁閉信号Cを出力して弁が遮断(閉)し、センサ異常解除信号Fを出力する。センサ異常解除入力部18は外部より異常解除入力を受け取った時点(t2)で弁開信号Eを出力して弁が復帰(開)する。併せて異常解除入力を受け取ったことをセンサ異常判定部17に出力(図1信号G)する。センサ異常判定部17は信号Gを受け取った時点(t2)から所定時間tのタイマをカウントし、tの間に流量信号Aのゲインが閾値G2(G1≧G2)を下回らない時センサ異常を判定し弁閉信号Cを出力して弁が遮断(閉)する。その際、センサ異常判定部17はセンサ異常解除信号Fを出力しない。
【0032】
以上のように構成されたガス遮断装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、空気中を超音波が通過した時と同様にセンサの発信部の何らかの故障により超音波信号の出力が小さいときゲイン調整値は大きくなる。すなわち一過性の異常と同様に装置の故障による定常的な故障においてもゲイン調整値が大きくなる事象が現れる。
【0033】
そこで、信号のゲイン調整値が閾値G1を超えた時点(t1)でガス配管中に空気が混合した一過性の可能性があるセンサ異常と判断しセンサ異常解除信号Fを出力し、外部入力によりセンサ異常解除可能な状態とする。センサ異常を解除し弁15を復帰した時点(t2)で所定時間tの間ゲイン調整値を更に監視し十分に大きい閾値G2を下回らないときは装置に起因する定常的なセンサ異常と判断(t3)する。t3時点ではセンサ異常解除信号Fを出力しないため外部入力によるセンサ異常解除ができなくなり弁15の遮断状態が継続する。
【0034】
以上のように、本実施の形態においてはセンサ異常判定部18がセンサ異常解除された後も同一要因の異常判定を行うことで、装置の故障による定常的な異常かガスの状態による一過性の異常かを精度良く判断することができる。
【0035】
実施の形態1、2おいてセンサ異常の発生でガスを遮断し安全性を確保するとともに、センサや計測回路が物理的に破損または故障しているような永続的なものと、一過性の異常な流量信号に基づく異常とを切り分けて一過性の異常な流量信号に基づく誤ったセンサ異常を設置現場でのメンテナンスで解除することでガスの再使用が可能となり利便性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかるガス遮断装置は一過性の異常な流量信号によるセンサ異常を設置現場でのメンテナンスにより解除することができる。従って、安全性を確保しつつ利便性を向上させることができるのでガスを水に置き換えれば、水道メータ等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の機能ブロック図
【図2】本発明の実施の形態2におけるガス遮断装置のタイムチャート
【図3】従来のガス遮断装置の機能ブロック図
【図4】受信波形を示す波形図
【符号の説明】
【0038】
11 流量検出部
12 流量算出部
13 異常流量判定部
14 弁駆動部
15 弁
16 復帰入力部
17 センサ異常判定部
18 センサ異常解除入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス通路内を通過するガス流量に対応して流量信号を出力する流量検出部と、前記流量検出部の前記流量信号を受け取ると流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部の前記流量を受け取ると予め保持している判定値と比較し異常であれば弁閉信号を出力する異常流量判定部と、前記異常流量判定部の前記弁閉信号または復帰入力部の弁開信号あるいはセンサ異常判定部の前記弁閉信号またはセンサ解除入力部の前記弁開信号を受け取ると弁駆動信号を出力する弁駆動部と、前記弁駆動部の前記弁駆動信号を受け取るとガス通路を開栓または閉栓する弁と、前記異常流量判定部が異常流量を判定した時外部より復帰入力を受け付けると前記弁開信号を出力する前記復帰入力部と、前記流量検出部の流量信号を受け流量信号の状況より装置の故障による定常的な異常かガスへの空気混入による一過的な可能性のある異常かを判定し、一過的な可能性のある異常の場合はセンサ異常解除信号を出力するセンサ異常判定部と、前記センサ異常判定部のセンサ異常解除信号を受け取ると有効となり、外部より異常解除入力を受け付け前記弁駆動部に弁開信号を出力するセンサ異常解除入力部とを備え、流れるガスの異常状態により生じるセンサ異常は異常解除が可能となることを特徴としたガス遮断装置。
【請求項2】
前記センサ異常判定部は、前記センサ異常解除入力部が異常解除入力を受け付けた後所定時間以内に同じセンサ異常が解消されないと判定した時、装置の故障による定常的な異常と判定しセンサ異常解除信号を出力しないことを特徴とした請求項1記載のガス遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−216725(P2010−216725A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64545(P2009−64545)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】