ガス除害装置
【課題】(1)小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、(2)低いランニングコストで稼動することができる、アンモニア分解装置を提供する。
【解決手段】 対をなす電極2,3、および該対をなす電極に挟まれる電解質1で構成される第1のMEAと、第1のMEAに隣接して、対をなす電極2,3、および該対をなす電極に挟まれる電解質1で構成される第2のMEAとを備え、第1のMEAと第2のMEAとが、アノード2,2を対向させて、気体を流す流路A1を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする。
【解決手段】 対をなす電極2,3、および該対をなす電極に挟まれる電解質1で構成される第1のMEAと、第1のMEAに隣接して、対をなす電極2,3、および該対をなす電極に挟まれる電解質1で構成される第2のMEAとを備え、第1のMEAと第2のMEAとが、アノード2,2を対向させて、気体を流す流路A1を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス除害装置であって、より具体的には、空気、廃ガス等に含まれる有害ガスを、効率よく、低圧損で分解することができる、ガス除害装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるが、ヒトには有害であるので、水中や大気中のアンモニアを分解する方法が、多く開示されてきた。たとえば、高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、噴霧状のアンモニア水を空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離して、次亜臭素酸溶液または硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法の開示もなされている(特許文献2)。また、アンモニア含有排水を触媒を用いて分解して、窒素と水とに分解する方法が提案されている(特許文献3)。アンモニア分解反応の触媒については、遷移金属成分を含む多孔質カーボン粒子、マンガン組成物、鉄−マンガン組成物(特許文献3)、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物(特許文献4)、アルミナ製3次元網状構造体に担持された白金(特許文献5)などが公表されている。上記の触媒を用いた化学反応によってアンモニアを分解する方法では、窒素酸化物NOxの生成を抑えることができる。さらに、触媒に二酸化マンガンを用いることによって、100℃以下で、より効率的にアンモニアの熱分解を促進する方法も提案されている(特許文献6、7)。
上記のように、多量のアンモニアの分解をするケースと異なり、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを主目的とする除害装置がある。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水分に有害ガスを吸収させる。有害成分を含む水分の処理は、所定の廃棄物処理施設において、上述の方法を含む別の方法で処理することができる。
また、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開昭53−11185号公報
【特許文献5】特開昭54−10269号公報
【特許文献6】特開2006−231223号公報
【特許文献7】特開2006−175376号公報
【特許文献8】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の中和剤などの薬液を用いる方法(特許文献1)、燃焼する方法(特許文献2)、触媒を用いた熱分解反応による方法(特許文献3〜7)などによれば、アンモニアの分解は可能である。スクラバーについても、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能である。しかし、上記の方法では、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメインテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。とくに構成部材について長期間にわたってメインテナンスフリーは許容されない。また、装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。水素酸素燃料電池型分解方式についても、ppmオーダーまで除害を徹底させると、燃料極において排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大→装置の大型化による圧力損失の抑制、が行われる。わが国では、装置の大型化は、実用上、大きな不利益をもたらす場合が多く、避ける必要がある。
【0005】
本発明は、(1)小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、(2)低いランニングコストで稼動することができる、ガス除害装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス除害装置は、気体中の化学成分を電気化学反応によって除害する。このガス除害装置は、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第1のMEAと、第1のMEAに隣接して、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第2のMEAとを備え、第1のMEAと第2のMEAとが、同じ極性の電極を対向させて、気体を流す流路を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、(E1)両側電極流路に、分解対象の化学成分(ガス)を含む気体を流して圧力損失の増大を防止しながら、予測以上の短流路で、極低レベルまで当該化学成分を電気化学反応で分解することができる。上記の同じ極性の電極は、アノードでもカソードでもよいが、両側電極流路には、分解対象の化学成分を含む気体が導入される。両側電極流路と反対側の電極には、第1および第2のMEAともに、電気化学反応にける相手側(逆極性)の電極での反応に与る気体(相手側気体)が流される。したがって相手側気体は両側電極の反対側(外側)に分かれて流される。上記のように、同じ極性の電極が1つの流路を挟んで両側電極流路を形成する構造を、「両側電極構造」と呼ぶ。これに対して、第1のMEAと第2のMEAとが極性を揃えて並行的に積層する構造を「片側電極構造」と呼ぶ。片側電極構造の第1および第2のMEAに、断面積を同じにして、同じ流速で、同じ流量の有害ガス含有気体を流した場合、両側電極構造のほうが、短い流路(分解反応生起長さ)で、目標とする極低濃度にすることができる。その流路の短縮分は、発電効率等に注意が集中する燃料電池分野の当業者の予測を超えるものである。このような現象が起きる理由については、本発明の実施の形態において考察する。なお、上記の電気化学反応の継続におけるランニングコストは、ガス除害装置を800℃程度に加熱するために要するヒータの電気代程度であり、メインテナンス費用などは不要である。このため従来のものに比較して、非常に低いランニングコストである。また、800℃程度の加熱、対をなす電極中の触媒、上記両側電極流路などにより、効率よく大きな流量の気体の除害ができるので、大がかりな装置は不要である。
【0008】
上記の対向する電極の集電体となる、連続気孔を有する金属多孔体が、両側電極流路を占めるように配置されることができる。これによれば、電気化学反応によって気体中の有害ガスを分解するとき、次の作用を得ることができる。(E2)流路に金属多孔体を配置することで、有害ガスを含む気体を通しながら素通りを防止して、当該気体の乱流状態を促進する。気体を層流にして通過させるよりも、乱流とすることで、当該気体が両側電極に接する機会、時間等を長くすることができる。これによって、電極単位面積当たりの電気化学反応効率を高めることができる。(E3)両側電極における電導性を確保して、有害化学成分の分解に伴う電荷(電子)授受を円滑化することができる。これによって、電荷の流れが電気化学反応のネックになることを防止することができる。なお、上記の金属多孔体は、両側電極流路だけでなく、対をなす逆極性の電極の流路にも、当該流路を占めるように配置されることができる。
【0009】
上記の金属多孔体が、金属めっき体であり、気孔率が95%以上であるものとすることができる。これによって金属粒子や金属繊維を圧粉成形して焼結したものよりも格段に良好な通気性を得ることができる。気孔率が95%未満では、圧力損失が大きくなり、ポンプ等による強制循環をするとエネルギー効率が低下し、またイオン導電材等に曲げ変形等を生じて好ましくない。気孔率の上限はとくに設けないが、気孔率0.98を超えると電気伝導性が低下して集電機能が低下する。
【0010】
上記の金属多孔体の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことができる。これによって、上記(E2)の作用を得ながら、圧力損失の増大を防止することができる。圧力損失の増大をより厳しく防止するには、600≦(x−0.3)yとするのがよい。(x−0.3)yの上限は、とくに設ける必要はないが、(E3)の作用を確保するために、たとえば3000を上限とすることができる。
【0011】
第1のMEAの両側電極流路と反対側に、および、第2のMEAの両側電極流路と反対側に、両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極において電気化学反応に関与する気体を流す逆極流路を、それぞれ備え、両側電極流路の断面積が、第1および第2のMEAの逆極流路の断面積の大きいほうと等しいか、または大きい、構成とすることができる。これによって、分解対象の化学成分を含む気体を、流量を高めながら圧力損失を軽減することができる。この場合、除害される化学成分は、極低レベルまで分解されて低濃度となるので(低濃度レベルでの分解反応が問題とされるので)、その電気化学反応で必要とされる相手側気体の量は少なくとも出口近くでは少量でよい。このため、有害化学成分を含む気体を流す両側電極流路の圧力損失の軽減を第一に考えて、全体の厚みをむやみに厚くしない条件を課すと、上記の構成が得られる。
【0012】
上記の第1のMEAおよび第2のMEAによって形成されるガス除害装置の組が、複数、積層され、隣り合う組同士、両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極が、対向して逆極流路を挟んでいるようにできる。これによって、部品点数を増やさず、簡単な構造のガス除害装置とすることができ、相手側気体の流通について圧力損失の低減を得ることができる。また、能率よく製造することができる。
【0013】
複数の積層された組のMEAの間に、絶縁仕切りシートを有しない構造とすることができる。これによって、部品点数の低減、ガス除害装置の薄肉化、圧力損失の低減などを得ることができる。
【0014】
両側電極流路にアンモニアを含む気体が導入され、対の相手側の電極の流路である逆極流路に、空気が導入されることができる。これによって、アンモニアを含む気体を効率よく、低いランニングコストで稼働させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス除害装置によれば、小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、低いランニングコストで稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるアンモニア分解装置の外観の斜視図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置の部分断面図である。
【図3】図2のアンモニア分解装置のMEAを含む拡大図である。
【図4】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】本実施の形態のアンモニア分解装置の流路での電気化学反応を示す図である。
【図7】並行的な積層構造のアンモニア分解装置の流路での電気化学反応を示す図である。
【図8】本実施の形態のアンモニア分解装置のカソード集電体およびアノード集電体のめっき多孔体を製造する方法を説明するための図である。
【図9】めっき多孔体に合金化処理を施す方法の具体例を示す図であり、(a)はアルミナイジングを、(b)はクロマイジングを示す図である。
【図10】図8の方法で製造したNiめっき多孔体の比表面積と孔径との関係を示す図である。
【図11】図1に示すアンモニア分解装置の2つのMEAを一組として、多組積層構造の部分を示す図である。
【図12】図11の多組積層構造における流路での電気化学反応を説明する図である。
【図13】並行的な積層構造を複数積み重ねたときの部分を示す図である。
【図14】図13の構造における流路での電気化学反応を説明する図である。
【図15】実施例において、アンモニア分解装置におけるアンモニア濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス除害装置であるアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、電気化学反応とくに燃料電池反応によってアンモニア含有気体中のアンモニアを分解する。燃料電池の燃料極(以下、アノードと記す)には、アンモニア含有気体が入口61から導入され、また空気極(以下、カソードと記す)には、空気が入口71から導入される。これから説明する電気化学反応によって、アンモニア含有気体中のアンモニアは、窒素と水とに分解されて、その他の気体とともに出口62から放出される。また、空気についても酸素が電気化学反応に関与して、残りの窒素等が出口72から放出される。アンモニアが分解された後、出口62から放出される気体中のアンモニア濃度はppm以下のオーダーに除害される。このように燃料に対応づけられる気体中の分解対象成分が、極低濃度レベルまで分解される点で、除害装置は、燃料電池と相違する。燃料電池では発電効率に注意が集中し、気体中の分解対象成分の濃度については、所定レベル以上あることを前提にしている。また、本実施の形態では、燃料に対応する気体中の成分が分解されるが、それに限定されず、たとえば空気に対応する気体が空気そのものではなく、他の成分(たとえばNOx)または当該成分を含む他の気体または空気中の、当該成分を分解するものであってもよい。このようなカソードに接する気体中の特定成分を分解する形態については、最後に表1において説明する。
図1において、図示しないアノードとアノード集電体を経て導電接続するアノード端子11aと、カソードとカソード集電体を経て導電接続するカソード端子12aとから、電力の取り出しが可能である。このアンモニア分解装置10は、実用的な電気化学反応速度を得るために、800℃程度に加熱される。カソード端子12aとアノード端子11aとから取り出した電力を、この加熱用のヒータに供給してもよい。カソード端子12aとアノード端子11aとの間に、どのような負荷を入れるにしろ、アンモニア分解の電気化学反応を生起させ、持続するためには、アノードで生成した電子が、アノード端子11aからカソード端子12aへと、負荷を伝って電導する必要がある。
【0018】
図2は、図1に示すアンモニア分解装置10の断面図である。金属多孔体のアノード集電体11が占める流路A1を挟んで、2つのMEAが配置されている。流路A1は、MEAの同じ極性の電極により、上下から挟まれるので、両側電極流路である。この両側電極流路A1には、入口61から導入されたアンモニア含有気体がアノード集電体11と接触しながら流れる。また、これら2つのMEAの外側、すなわちMEAの流路A1と反対側に、流路C1/2が配置されている。2つの流路C1/2には、入口71から導入された空気が、カソード集電体12と接触しながら流れる。アノード集電体11およびカソード集電体12は、それぞれが占める流路を流れる気体と接触して、気体の流れを乱流状態にして、気体をMEAの電極とよく接触させて電気化学反応が効率よく進行するようにする。アノード集電体11およびカソード集電体12は、同時に、アノード2およびカソード3と導電接触して、分解反応(電気化学反応)における電子の授受を円滑にする。このため、アノード集電体11およびカソード集電体12には、導電性および通気性が求められ、とくに通気性については圧力損失を生じにくいことが求められる。このような特性を備える、連続気孔を有する金属多孔体は、金属粒子や金属繊維の焼結体では得にくい。上記の特性を備える金属多孔体として、たとえば三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つものがあり、その典型材として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット®を用いることができる。電気化学反応および金属多孔体については、このあと詳細に説明する。
【0019】
図3は、図1のMEAおよび流路A1,C1/2を含む拡大した部分断面図である。金属多孔体であるアノード集電体12が占める流路A1を挟んで、2つのMEAが配置されることは、上述のとおりである。この流路A1にアンモニア含有気体が通され、アノード2と接触してアンモニアを分解する。また、2つのMEAの外側に位置する2つの流路C1/2はカソード集電体11に占められ、そこに空気を導入される。
つぎに、燃料電池を構成するMEAの内容について説明する。MEAは、電解質1と、それを挟むアノード2およびカソード3とで構成される。電解質1は、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子、電解液など、イオン導電性があれば何でもよい。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGMランタンガレート)などを用いるのがよい。
【0020】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、上記のSSZ、YSZ、SDC、LSGMなどを用いることができる。
【0021】
カソード3は、表面酸化されて酸化層を有するNi粒連鎖体31と、酸素イオン導電性のセラミックス32と、銀(Ag)33と、を主成分とする焼結体とする。酸素イオン導電性のセラミックス32として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。Ni粒連鎖体は、金属粒連鎖体の金属をNiとしたもので、製造が比較的容易であり、また既知である。また、Ni粒連鎖体の導電部(酸化層で被覆される金属部)は、Niのみでもよいし、NiにFeを含ませたものでもよい。
【0022】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の流体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード3に導入された空気の中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード3中のLSM32から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、図示しない負荷を経てカソード3に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード3との間に電位差が生じ、カソード3は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0023】
図4は、アノード2におけるアンモニア分解を説明するための図である。アノード2は、Ni粒連鎖体21aの表層に酸化層21bを有する酸化層付きNi粒連鎖体21と、酸素イオン導電性セラミックス22とを主成分とする焼結体である。気体中のアンモニアは、アノード集電体を経由してアノード2中の、酸素イオン導電性セラミックス22と、酸化層21bと、Ni粒連鎖体21aとが会合する位置において、電解質1を移動してきた酸素イオンO2−と反応して、分解される。分解の結果、窒素と水蒸気とになり、放出される。アノード集電体は、アンモニアを素通りしないようにしてアノードにおいて上記の電気化学反応を生じさせ、かつ、圧力損失を増大させないようにすることが重要である。
図5は、アノード2に、上記の酸素イオンO2−を供給するための電気化学反応を説明するための図である。アノード2で生じた電子は、外部回路または負荷を経由して供給され、金属めっき体の骨格である導電部12dからカソード3に到達する。カソード集電体12に導入された空気中の酸素は、連続気孔12hを通り気孔3hに入り、カソード3の、銀粒子33と、酸素イオン導電性セラミックス32と、酸化層31bと、Ni粒連鎖体31aとが会合する位置において、酸素イオンO2−となり、酸素イオン導電性セラミックス32中をアノード2へと移動する。
【0024】
(本発明の実施の形態のポイント)
本発明の実施の形態におけるアンモニア分解装置10のポイントは、2つのMEAのアノード2が、アンモニア含有気体の流路A1を挟んで、対面するように位置する点にある。図6に示すように、この配置においては、アンモニアは、流路A1を画する上壁でも下壁でも、これら壁がアノード2であるため、上下壁において、図4に示すように、電気化学反応を進行させ、分解する。なお、図6では、流路A1の高さ中央のアンモニアは流路A1を素通りするように見えるが、流路A1は金属多孔体8に占有されているので、そのようなことは極めて生じにくい。
図7は、比較のために示す構造であり、MEAの同じ面を同じ側にそろえて、並行的に積層した場合の流路A1/2を示す図である。このような流路は、片側電極流路である。このようにMEAを並行的に積層した構造では、図7に示す流路A1/2が2つあるとして、図6の流路A1と比較するのが妥当である。流路A1/2には、アンモニアが流れるが、図7の場合、アノード2である上壁でのみ分解して、下壁を構成する絶縁仕切りシート13では、分解せず、単に気体として接触する。MEAの電極の向きを揃えて並行的に積層する場合、電気的絶縁と、空気とアンモニア含有気体の隔絶とのために、1つのMEAおよびそれに付随する流路ごとに、絶縁仕切りシート13が必要となる。このような流路A1/2が2つある。
図6の流路A1が一つの場合と、図7の流路A1/2が2つの場合と比較すると、つぎのことが分かる。
(1)仮にアンモニアが多量にこれら流路に導入される場合、分解箇所(アノード2)の全面積は、両者、同じであり、分解されるアンモニアの総量は大差がない。このため、たとえば燃料電池の発電効率などを問題にする場合、両者は大差ない結果をもたらす。
(2)しかし、極低濃度、たとえばppmオーダーまでアンモニアを除害(分解)する場合、未反応のまま壁(絶縁仕切りシート13)に接触して流れるアンモニアの存在によって、MEAの所要長さは長いものになる。未反応のままの状態を許す壁があるからである。極低濃度まで除害するには、その壁から未反応のアンモニアを剥がして反対側の壁(アノード2)に接触させる必要がある。未反応のままの状態がある壁はないほうが、アンモニアをその壁の箇所を自由に通り抜けできるので、分解反応を停滞させずに済む。すなわち、流路A1のように、間隔は倍であるが上壁および下壁ともにアノード2とされ、ともに分解が進行する場合、未反応のまま壁に接触する箇所はないので、ppmオーダーまで分解するMEAの所要長さは短くなる。
(3)アンモニア含有気体を流す流路A1は、絶縁仕切りシート13を伴う2つの流路A1/2と比べて、絶縁仕切りシート13を配置する必要がないので、圧力損失が小さくしやすい。このため、圧力損失という面でも有利である。
上記(1)および(2)によって、極低濃度レベルまで有害成分を除害する装置において、両側電極構造は装置の小型化、とくに流路長の短縮に大きな効果を奏する。また、(3)圧力損失を抑制しやすい。
【0025】
次に、各部分の製造方法について説明するが、その最初に、このアンモニア分解装置10の耐久性について説明する。
(カソード側の耐久性):
このアンモニア分解装置10は、800℃程度に加熱されることは上述のとおりである。このとき、酸素が導入されるカソード3およびカソード集電体12における金属部分は、高温で酸化性雰囲気にさらされて、高温酸化が進行する。高温酸化が進行すると、多孔体が目詰まりを起こし、また他の不都合を生じるので、合金化などによって耐高温酸化性能を向上させる必要がある。
とくにカソード集電体12および金属粒連鎖体31は、通常、Niで形成するので、ある程度の耐高温酸化性能は有するが、より耐高温酸化性能を向上させる対策をとるのがよい。カソード集電体12および金属粒連鎖体31ともに、アノード側にも含まれるので、一緒に、説明し、とくに耐高温酸化性能が必要な場合には、その都度、説明する。
1.カソード集電体13およびアノード集電体12
これら集電体はめっきによって形成されるので、めっき多孔体またはNi多孔体と呼ぶ。図8は、めっき多孔体の製造方法の一例を示す図である。図8において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理と呼ばれる処理であるが、ポリウレタン発泡体のセル膜(気泡膜)を除去する公知の処理である。公知の除膜処理として、アルカリ濃厚溶液中にポリウレタン発泡体を浸漬して加水分解によりセル膜を溶解除去するアルカリ処理法や、浸透剤によってポリウレタン発泡体中に水を含浸させ、その水を100℃以上に加熱して水の体積膨張でセル膜を破壊する湿潤過熱法や、ポリウレタン発泡体を密封容器に収容し、前記密封容器に水素、酸素の混合等からなるガスを充填して爆破させることによりセル膜を破壊させる熱処理(爆発法)などがある。上記の除膜処理によって、ポリウレタン発泡体はセル膜のほとんどが除去され、ほぼ骨格のみとなる。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が気孔体の骨格となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成するのがよい。Niは、上記の低温域で耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、Niめっき多孔体とする。
より高温での耐酸化性能を得るためには、上述のように、Niめっき多孔体に対して合金化処理を施す。この合金化処理は、Cr、Al、その他の金属を外から表層に拡散導入することにより行われる。合金化を表層のみに止めて、合金化表層付きめっき多孔体とするのが普通であるが、中まで合金化する場合もある。
また、図8には示していないが、めっき液にニッケルイオンおよび他の金属イオンを溶解させて、めっき体をニッケル合金とすることができる。そのように、直接、合金めっき層を形成することで、ニッケル合金の骨格を形成してもよい。
【0026】
図9は、AlまたはCr添加処理の具体例を示す図である。図9(a)はアルミナイジング(Aluminizing)の具体例である。この方法では、Niめっき多孔体(図9(a)で「Me」で表示)を、Fe−Al合金粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに鋼製ケース内に埋め込む。次いで、ケースを密封して、その密封したケースを炉内に装入し、900℃〜1050℃に加熱する。これによってAl拡散浸透層を得ることができ、耐高温酸化性、耐摩耗性等を向上することができる。また、図9(b)はクロマイジング(Chromizing)の具体例である。この方法では、Niめっき多孔体(Me)を、Cr粉、Al2O3粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに、ケース内に埋め込む。ケース内にH2ガスまたはArガスを通しながら、炉内にて900℃〜1100℃に加熱することで、Cr拡散浸透層を得ることができる。このCr拡散浸透層も耐高温酸化性能を高めることができる。なお、図9では、アルミナイジングおよびクロマイジングともに、粉末法のみを示したが、気体法、溶融塩法など、既存の任意の方法を用いて、AlまたはCrを拡散浸透することができる。
【0027】
図8に示す方法で製造したNiめっき多孔体の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図10に示す。図10の小黒丸が実測値である。孔径0.45mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。(x−0.3)yの値が大きいと、カソード集電体12に導入される気体と接触して、カソード3へと気体を乱流状態で送り込む機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくする弊害(導電性の低下など)が生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
Niめっき多孔体では、気孔の大きさ、および、骨格の太さ(薄さ)を、それぞれ独立に調節することができる。このため、Niめっき多孔体は、十分な導電性、十分な乱流生成作用を得ながら、容易に圧力損失を低下させることができる。
【0028】
2.カソードおよびアノードの金属粒連鎖体21,31
金属粒連鎖体21,31は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21,31の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2またはカソード3に含まれる金属粒連鎖体21,31の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
上記のカソード3の金属粒連鎖体31は、たとえば低温域用のものとするのがよい。カソード集電体7と同様に、高温域用の金属粒連鎖体31は、図5に示すような、アルミナイジングまたはクロマイジングのような合金化処理を施すのがよい。すなわち、600℃〜950℃の高温域で使用するアンモニア分解装置10のカソード3に含まれるNi粒連鎖体31は、耐高温酸化性のために、CrまたはAl等の富化層を設けるのが好ましい。金属多孔体を構成する合金のめっき体を、直接、めっきにより形成してもよい。
【0029】
3.表面酸化
アノード2内のNi粒連鎖体21、ならびに高温域用および低温域用カソード3内のNi粒連鎖体31は、いずれも、電気化学反応を促進する触媒作用を高めるために、表面酸化されるのがよい。
表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
【0030】
4.焼結
アノード2またはカソード3に含まれるSSZ22またはLSM32の原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21,31と、SSZ22,LSZ32との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1000℃〜1600℃の範囲に、
30分〜180分間保持することで行う。
カソード3は、酸化層付き金属粒連鎖体31、LSM、Ag粒子33等の焼結体で構成される。Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。銀と、LSMとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
連鎖状金属粉末の表面酸化の時期は、上記の焼結体形成の前でもよいし後でもよい。
【0031】
(多組積層構造)
図11は、図1の2つのMEAを一組として、複数組が積層された多組積層構造の一部分を示す図である。図11の多組積層構造では、両側電極流路A1ではアンモニアが上壁および下壁のアノード2において分解することは、実施の形態1のものと同じであるが、空気(酸素)が導入される流路C1/2において、酸素が上壁および下壁のカソード3において分解する。すなわち流路C1/2も両側電極流路となり、図12に示すように、酸素は、両側電極流路C1/2の上壁および下壁のカソード3で反応して酸素イオンO2−になる。
これに対して、図13に示すような、極性を揃えてMEAを並行的に積層する方式での多組積層構造は、図14に示すように、片側電極流路C1/2において、上壁のカソード3において反応するが、一方の壁(下壁)を形成する絶縁仕切りシート13下壁のアノード2では酸素のまま壁に接触する。
【0032】
図11に示す構造では、両側電極流路C1/2の上壁は酸素イオンを上側の両側電極流路A1に面するアノード2に供給し、また下壁は下側の両側電極流路A1に面するアノード2に酸素イオンを供給する必要があるので、図12に説明する分解反応は生じないと不都合であるということもできる。しかし、図13の絶縁仕切りシート13で隔絶された片側電極構造と比べて、図11に示す両側電極構造は、無駄がない積層となっている。このため、空気についても圧力損失の低減をしやすくなる。
【0033】
(その他の実施の形態)
本発明のガス除害装置は、表1に示すすべての除害反応R1〜R7に用いることができる。上記実施の形態1は、反応R1について説明した。
【0034】
【表1】
【0035】
アンモニアの除害についていえば、その他にR2〜R4の反応が可能である。このうち反応R4は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の除害、NOxの除害もある。これらすべての電気化学反応について、上記の流路を挟んで対面するように、同じ極性の電極を配置することができる。これによって、(1)長期間にわたってメインテナンスフリーで、かつ低いランニングコストで稼動することができ、(2)小型で、有害ガスを無害レベルまで除害できる。
【実施例】
【0036】
次に、計算によって、流路に所定濃度のアンモニア含有気体を流したときの流路に沿う濃度変化を求めた。このアンモニア除害装置は、化合物半導体GaNなどを有機金属エピタキシー法などで成膜する際に生成するアンモニア含有気体を除害する。大気に放出可能なアンモニア濃度レベルは、法規制もあるが、通常はそれよりも低い濃度としてヒトが異臭を感じなくなる1ppm以下とする。計算によるシミュレーションでは、気体は、アンモニアと水素の混合気体であり、アンモニアと水素との比を、1:1とした。この混合気体を10SLM流して処理するとした。アンモニア分解装置10は、本発明例の場合、図11に示す多組積層構造を有し、両側電極流路A1を5層備える5組積層構造とした。比較例の場合、図13に示す積層構造を有し、片側電極流路A1/2を5層備える構造とした。アノードに到達したアンモニアは、100%分解すると仮定し、各流路の高さ(厚み)hを変えて、アンモニアのモル濃度を計算によって求めた。また、各流路には、10SLMの1/5が均等に配分されるとした。
【0037】
MEAの入口からの距離に応じて、減少するアンモニアモル濃度を、図15に示す。図15によれば、アンモニアモル濃度1ppm以下にするのに、高さhを6.0mmとした場合、両側電極では50mm弱の流路長により実現することができる。これに対して、片側電極では140mm程度の流路長が必要である。したがって、本発明例の両側電極構造では、片側電極構造に比べて、ppmオーダーに除害するMEA長さを飛躍的に短くすることができ、圧力損失を抑えながら、小型化を実現することができる。
【0038】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のガス除害装置によれば、(1)小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、(2)低いランニングコストで稼動することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 イオン導電性電解質(固体酸化物電解質)、2 アノード、3 カソード、3h 空隙、10 アンモニア分解装置、11 アノード集電体、11a アノード端子、12 カソード集電体、12a カソード端子、12d 導電部(金属めっき部)、12h 気孔、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、31 金属粒連鎖体、31a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、31b 酸化層、32 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、33 銀、61 アンモニア含有気体入口、62 出口、71 空気入口、72 出口、A1,A1/2 アンモニア含有気体流路、C1/2 空気流路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス除害装置であって、より具体的には、空気、廃ガス等に含まれる有害ガスを、効率よく、低圧損で分解することができる、ガス除害装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは農業や工業に不可欠の化合物であるが、ヒトには有害であるので、水中や大気中のアンモニアを分解する方法が、多く開示されてきた。たとえば、高濃度のアンモニアを含む水からアンモニアを分解除去するために、噴霧状のアンモニア水を空気流と接触させて空気中にアンモニアを分離して、次亜臭素酸溶液または硫酸と接触させる方法が提案されている(特許文献1)。また、上記と同じプロセスで空気中にアンモニアを分離して触媒により燃焼させる方法の開示もなされている(特許文献2)。また、アンモニア含有排水を触媒を用いて分解して、窒素と水とに分解する方法が提案されている(特許文献3)。アンモニア分解反応の触媒については、遷移金属成分を含む多孔質カーボン粒子、マンガン組成物、鉄−マンガン組成物(特許文献3)、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物(特許文献4)、アルミナ製3次元網状構造体に担持された白金(特許文献5)などが公表されている。上記の触媒を用いた化学反応によってアンモニアを分解する方法では、窒素酸化物NOxの生成を抑えることができる。さらに、触媒に二酸化マンガンを用いることによって、100℃以下で、より効率的にアンモニアの熱分解を促進する方法も提案されている(特許文献6、7)。
上記のように、多量のアンモニアの分解をするケースと異なり、廃ガス中の臭気成分であるアンモニア等を、ppmオーダーまで分解することを主目的とする除害装置がある。たとえば半導体製造装置の廃ガスには、アンモニア、水素等が含まれるのが普通であり、アンモニアの異臭を完全に除去するには、ppmオーダーにまで除害する必要がある。この目的のために、半導体製造装置の廃ガス放出の際にスクラバーを通して、薬品を含む水分に有害ガスを吸収させる。有害成分を含む水分の処理は、所定の廃棄物処理施設において、上述の方法を含む別の方法で処理することができる。
また、エネルギーや薬品等の投入なしに、安価なランニングコストを得るために、水素酸素燃料電池型分解方式を用いた、半導体製造装置の排気ガス処理の提案もされている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−31966号公報
【特許文献2】特開平7−116650号公報
【特許文献3】特開平11−347535号公報
【特許文献4】特開昭53−11185号公報
【特許文献5】特開昭54−10269号公報
【特許文献6】特開2006−231223号公報
【特許文献7】特開2006−175376号公報
【特許文献8】特開2003−45472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の中和剤などの薬液を用いる方法(特許文献1)、燃焼する方法(特許文献2)、触媒を用いた熱分解反応による方法(特許文献3〜7)などによれば、アンモニアの分解は可能である。スクラバーについても、アンモニア等の除害はppmオーダーまで可能である。しかし、上記の方法では、薬品や外部エネルギー(燃料)を必要とし、さらに触媒の定期的交換やメインテナンスを要し、ランニングコストが高いという問題がある。とくに構成部材について長期間にわたってメインテナンスフリーは許容されない。また、装置が大掛かりとなり、たとえば既存の設備に付加的に設ける場合に配置が難しい場合も生じる。水素酸素燃料電池型分解方式についても、ppmオーダーまで除害を徹底させると、燃料極において排気ガスの長い流路が必要となり、圧力損失の増大→装置の大型化による圧力損失の抑制、が行われる。わが国では、装置の大型化は、実用上、大きな不利益をもたらす場合が多く、避ける必要がある。
【0005】
本発明は、(1)小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、(2)低いランニングコストで稼動することができる、ガス除害装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス除害装置は、気体中の化学成分を電気化学反応によって除害する。このガス除害装置は、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第1のMEAと、第1のMEAに隣接して、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第2のMEAとを備え、第1のMEAと第2のMEAとが、同じ極性の電極を対向させて、気体を流す流路を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、(E1)両側電極流路に、分解対象の化学成分(ガス)を含む気体を流して圧力損失の増大を防止しながら、予測以上の短流路で、極低レベルまで当該化学成分を電気化学反応で分解することができる。上記の同じ極性の電極は、アノードでもカソードでもよいが、両側電極流路には、分解対象の化学成分を含む気体が導入される。両側電極流路と反対側の電極には、第1および第2のMEAともに、電気化学反応にける相手側(逆極性)の電極での反応に与る気体(相手側気体)が流される。したがって相手側気体は両側電極の反対側(外側)に分かれて流される。上記のように、同じ極性の電極が1つの流路を挟んで両側電極流路を形成する構造を、「両側電極構造」と呼ぶ。これに対して、第1のMEAと第2のMEAとが極性を揃えて並行的に積層する構造を「片側電極構造」と呼ぶ。片側電極構造の第1および第2のMEAに、断面積を同じにして、同じ流速で、同じ流量の有害ガス含有気体を流した場合、両側電極構造のほうが、短い流路(分解反応生起長さ)で、目標とする極低濃度にすることができる。その流路の短縮分は、発電効率等に注意が集中する燃料電池分野の当業者の予測を超えるものである。このような現象が起きる理由については、本発明の実施の形態において考察する。なお、上記の電気化学反応の継続におけるランニングコストは、ガス除害装置を800℃程度に加熱するために要するヒータの電気代程度であり、メインテナンス費用などは不要である。このため従来のものに比較して、非常に低いランニングコストである。また、800℃程度の加熱、対をなす電極中の触媒、上記両側電極流路などにより、効率よく大きな流量の気体の除害ができるので、大がかりな装置は不要である。
【0008】
上記の対向する電極の集電体となる、連続気孔を有する金属多孔体が、両側電極流路を占めるように配置されることができる。これによれば、電気化学反応によって気体中の有害ガスを分解するとき、次の作用を得ることができる。(E2)流路に金属多孔体を配置することで、有害ガスを含む気体を通しながら素通りを防止して、当該気体の乱流状態を促進する。気体を層流にして通過させるよりも、乱流とすることで、当該気体が両側電極に接する機会、時間等を長くすることができる。これによって、電極単位面積当たりの電気化学反応効率を高めることができる。(E3)両側電極における電導性を確保して、有害化学成分の分解に伴う電荷(電子)授受を円滑化することができる。これによって、電荷の流れが電気化学反応のネックになることを防止することができる。なお、上記の金属多孔体は、両側電極流路だけでなく、対をなす逆極性の電極の流路にも、当該流路を占めるように配置されることができる。
【0009】
上記の金属多孔体が、金属めっき体であり、気孔率が95%以上であるものとすることができる。これによって金属粒子や金属繊維を圧粉成形して焼結したものよりも格段に良好な通気性を得ることができる。気孔率が95%未満では、圧力損失が大きくなり、ポンプ等による強制循環をするとエネルギー効率が低下し、またイオン導電材等に曲げ変形等を生じて好ましくない。気孔率の上限はとくに設けないが、気孔率0.98を超えると電気伝導性が低下して集電機能が低下する。
【0010】
上記の金属多孔体の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことができる。これによって、上記(E2)の作用を得ながら、圧力損失の増大を防止することができる。圧力損失の増大をより厳しく防止するには、600≦(x−0.3)yとするのがよい。(x−0.3)yの上限は、とくに設ける必要はないが、(E3)の作用を確保するために、たとえば3000を上限とすることができる。
【0011】
第1のMEAの両側電極流路と反対側に、および、第2のMEAの両側電極流路と反対側に、両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極において電気化学反応に関与する気体を流す逆極流路を、それぞれ備え、両側電極流路の断面積が、第1および第2のMEAの逆極流路の断面積の大きいほうと等しいか、または大きい、構成とすることができる。これによって、分解対象の化学成分を含む気体を、流量を高めながら圧力損失を軽減することができる。この場合、除害される化学成分は、極低レベルまで分解されて低濃度となるので(低濃度レベルでの分解反応が問題とされるので)、その電気化学反応で必要とされる相手側気体の量は少なくとも出口近くでは少量でよい。このため、有害化学成分を含む気体を流す両側電極流路の圧力損失の軽減を第一に考えて、全体の厚みをむやみに厚くしない条件を課すと、上記の構成が得られる。
【0012】
上記の第1のMEAおよび第2のMEAによって形成されるガス除害装置の組が、複数、積層され、隣り合う組同士、両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極が、対向して逆極流路を挟んでいるようにできる。これによって、部品点数を増やさず、簡単な構造のガス除害装置とすることができ、相手側気体の流通について圧力損失の低減を得ることができる。また、能率よく製造することができる。
【0013】
複数の積層された組のMEAの間に、絶縁仕切りシートを有しない構造とすることができる。これによって、部品点数の低減、ガス除害装置の薄肉化、圧力損失の低減などを得ることができる。
【0014】
両側電極流路にアンモニアを含む気体が導入され、対の相手側の電極の流路である逆極流路に、空気が導入されることができる。これによって、アンモニアを含む気体を効率よく、低いランニングコストで稼働させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス除害装置によれば、小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、低いランニングコストで稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態におけるアンモニア分解装置の外観の斜視図である。
【図2】図1のアンモニア分解装置の部分断面図である。
【図3】図2のアンモニア分解装置のMEAを含む拡大図である。
【図4】アノードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図5】カソードでの電気化学反応を説明するための図である。
【図6】本実施の形態のアンモニア分解装置の流路での電気化学反応を示す図である。
【図7】並行的な積層構造のアンモニア分解装置の流路での電気化学反応を示す図である。
【図8】本実施の形態のアンモニア分解装置のカソード集電体およびアノード集電体のめっき多孔体を製造する方法を説明するための図である。
【図9】めっき多孔体に合金化処理を施す方法の具体例を示す図であり、(a)はアルミナイジングを、(b)はクロマイジングを示す図である。
【図10】図8の方法で製造したNiめっき多孔体の比表面積と孔径との関係を示す図である。
【図11】図1に示すアンモニア分解装置の2つのMEAを一組として、多組積層構造の部分を示す図である。
【図12】図11の多組積層構造における流路での電気化学反応を説明する図である。
【図13】並行的な積層構造を複数積み重ねたときの部分を示す図である。
【図14】図13の構造における流路での電気化学反応を説明する図である。
【図15】実施例において、アンモニア分解装置におけるアンモニア濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス除害装置であるアンモニア分解装置10を示す図である。このアンモニア分解装置10では、電気化学反応とくに燃料電池反応によってアンモニア含有気体中のアンモニアを分解する。燃料電池の燃料極(以下、アノードと記す)には、アンモニア含有気体が入口61から導入され、また空気極(以下、カソードと記す)には、空気が入口71から導入される。これから説明する電気化学反応によって、アンモニア含有気体中のアンモニアは、窒素と水とに分解されて、その他の気体とともに出口62から放出される。また、空気についても酸素が電気化学反応に関与して、残りの窒素等が出口72から放出される。アンモニアが分解された後、出口62から放出される気体中のアンモニア濃度はppm以下のオーダーに除害される。このように燃料に対応づけられる気体中の分解対象成分が、極低濃度レベルまで分解される点で、除害装置は、燃料電池と相違する。燃料電池では発電効率に注意が集中し、気体中の分解対象成分の濃度については、所定レベル以上あることを前提にしている。また、本実施の形態では、燃料に対応する気体中の成分が分解されるが、それに限定されず、たとえば空気に対応する気体が空気そのものではなく、他の成分(たとえばNOx)または当該成分を含む他の気体または空気中の、当該成分を分解するものであってもよい。このようなカソードに接する気体中の特定成分を分解する形態については、最後に表1において説明する。
図1において、図示しないアノードとアノード集電体を経て導電接続するアノード端子11aと、カソードとカソード集電体を経て導電接続するカソード端子12aとから、電力の取り出しが可能である。このアンモニア分解装置10は、実用的な電気化学反応速度を得るために、800℃程度に加熱される。カソード端子12aとアノード端子11aとから取り出した電力を、この加熱用のヒータに供給してもよい。カソード端子12aとアノード端子11aとの間に、どのような負荷を入れるにしろ、アンモニア分解の電気化学反応を生起させ、持続するためには、アノードで生成した電子が、アノード端子11aからカソード端子12aへと、負荷を伝って電導する必要がある。
【0018】
図2は、図1に示すアンモニア分解装置10の断面図である。金属多孔体のアノード集電体11が占める流路A1を挟んで、2つのMEAが配置されている。流路A1は、MEAの同じ極性の電極により、上下から挟まれるので、両側電極流路である。この両側電極流路A1には、入口61から導入されたアンモニア含有気体がアノード集電体11と接触しながら流れる。また、これら2つのMEAの外側、すなわちMEAの流路A1と反対側に、流路C1/2が配置されている。2つの流路C1/2には、入口71から導入された空気が、カソード集電体12と接触しながら流れる。アノード集電体11およびカソード集電体12は、それぞれが占める流路を流れる気体と接触して、気体の流れを乱流状態にして、気体をMEAの電極とよく接触させて電気化学反応が効率よく進行するようにする。アノード集電体11およびカソード集電体12は、同時に、アノード2およびカソード3と導電接触して、分解反応(電気化学反応)における電子の授受を円滑にする。このため、アノード集電体11およびカソード集電体12には、導電性および通気性が求められ、とくに通気性については圧力損失を生じにくいことが求められる。このような特性を備える、連続気孔を有する金属多孔体は、金属粒子や金属繊維の焼結体では得にくい。上記の特性を備える金属多孔体として、たとえば三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔を持つものがあり、その典型材として、たとえば住友電気工業(株)製のセルメット®を用いることができる。電気化学反応および金属多孔体については、このあと詳細に説明する。
【0019】
図3は、図1のMEAおよび流路A1,C1/2を含む拡大した部分断面図である。金属多孔体であるアノード集電体12が占める流路A1を挟んで、2つのMEAが配置されることは、上述のとおりである。この流路A1にアンモニア含有気体が通され、アノード2と接触してアンモニアを分解する。また、2つのMEAの外側に位置する2つの流路C1/2はカソード集電体11に占められ、そこに空気を導入される。
つぎに、燃料電池を構成するMEAの内容について説明する。MEAは、電解質1と、それを挟むアノード2およびカソード3とで構成される。電解質1は、固体酸化物、溶融炭酸塩、リン酸、固体高分子、電解液など、イオン導電性があれば何でもよい。固体酸化物は小型化でき、取り扱いが容易なので好ましい。固体酸化物としては、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、SDC(サマリウム安定化セリア)、LSGMランタンガレート)などを用いるのがよい。
【0020】
アノード2は、表面酸化されて酸化層を有する金属粒連鎖体21と、酸素イオン導電性のセラミックス22とを主成分とする焼結体とするのがよい。酸素イオン導電性のセラミックス22としては、上記のSSZ、YSZ、SDC、LSGMなどを用いることができる。
【0021】
カソード3は、表面酸化されて酸化層を有するNi粒連鎖体31と、酸素イオン導電性のセラミックス32と、銀(Ag)33と、を主成分とする焼結体とする。酸素イオン導電性のセラミックス32として、LSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)、SSC(サマリウムストロンチウムコバルタイト)などを用いるのがよい。Ni粒連鎖体は、金属粒連鎖体の金属をNiとしたもので、製造が比較的容易であり、また既知である。また、Ni粒連鎖体の導電部(酸化層で被覆される金属部)は、Niのみでもよいし、NiにFeを含ませたものでもよい。
【0022】
本実施の形態では、分解対象のガスはアンモニア(NH3)とし、酸素イオンを供給する気体は、空気すなわち酸素(O2)とする。アノード2に導入されたアンモニアは、2NH3+3O2−→N2+3H2O+6e−の反応(アノード反応)をする。反応後の流体であるN2+3H2Oはアノードから放出される。また、カソード3に導入された空気の中の酸素は、O2+2e−→2O2−の反応(カソード反応)をする。酸素イオンは、カソード3中のLSM32から固体電解質1を通って、アノード2に到達する。アノード2に到達した酸素イオンは、アンモニアと上記反応をして、アンモニアは分解される。分解されたアンモニアは、窒素ガスおよび水蒸気(H2O)となって、放出される。アノード2で生成した電子e−は、図示しない負荷を経てカソード3に向かって流れる。上記の反応の結果、アノード2とカソード3との間に電位差が生じ、カソード3は、アノード2よりも電位が高くなる。
【0023】
図4は、アノード2におけるアンモニア分解を説明するための図である。アノード2は、Ni粒連鎖体21aの表層に酸化層21bを有する酸化層付きNi粒連鎖体21と、酸素イオン導電性セラミックス22とを主成分とする焼結体である。気体中のアンモニアは、アノード集電体を経由してアノード2中の、酸素イオン導電性セラミックス22と、酸化層21bと、Ni粒連鎖体21aとが会合する位置において、電解質1を移動してきた酸素イオンO2−と反応して、分解される。分解の結果、窒素と水蒸気とになり、放出される。アノード集電体は、アンモニアを素通りしないようにしてアノードにおいて上記の電気化学反応を生じさせ、かつ、圧力損失を増大させないようにすることが重要である。
図5は、アノード2に、上記の酸素イオンO2−を供給するための電気化学反応を説明するための図である。アノード2で生じた電子は、外部回路または負荷を経由して供給され、金属めっき体の骨格である導電部12dからカソード3に到達する。カソード集電体12に導入された空気中の酸素は、連続気孔12hを通り気孔3hに入り、カソード3の、銀粒子33と、酸素イオン導電性セラミックス32と、酸化層31bと、Ni粒連鎖体31aとが会合する位置において、酸素イオンO2−となり、酸素イオン導電性セラミックス32中をアノード2へと移動する。
【0024】
(本発明の実施の形態のポイント)
本発明の実施の形態におけるアンモニア分解装置10のポイントは、2つのMEAのアノード2が、アンモニア含有気体の流路A1を挟んで、対面するように位置する点にある。図6に示すように、この配置においては、アンモニアは、流路A1を画する上壁でも下壁でも、これら壁がアノード2であるため、上下壁において、図4に示すように、電気化学反応を進行させ、分解する。なお、図6では、流路A1の高さ中央のアンモニアは流路A1を素通りするように見えるが、流路A1は金属多孔体8に占有されているので、そのようなことは極めて生じにくい。
図7は、比較のために示す構造であり、MEAの同じ面を同じ側にそろえて、並行的に積層した場合の流路A1/2を示す図である。このような流路は、片側電極流路である。このようにMEAを並行的に積層した構造では、図7に示す流路A1/2が2つあるとして、図6の流路A1と比較するのが妥当である。流路A1/2には、アンモニアが流れるが、図7の場合、アノード2である上壁でのみ分解して、下壁を構成する絶縁仕切りシート13では、分解せず、単に気体として接触する。MEAの電極の向きを揃えて並行的に積層する場合、電気的絶縁と、空気とアンモニア含有気体の隔絶とのために、1つのMEAおよびそれに付随する流路ごとに、絶縁仕切りシート13が必要となる。このような流路A1/2が2つある。
図6の流路A1が一つの場合と、図7の流路A1/2が2つの場合と比較すると、つぎのことが分かる。
(1)仮にアンモニアが多量にこれら流路に導入される場合、分解箇所(アノード2)の全面積は、両者、同じであり、分解されるアンモニアの総量は大差がない。このため、たとえば燃料電池の発電効率などを問題にする場合、両者は大差ない結果をもたらす。
(2)しかし、極低濃度、たとえばppmオーダーまでアンモニアを除害(分解)する場合、未反応のまま壁(絶縁仕切りシート13)に接触して流れるアンモニアの存在によって、MEAの所要長さは長いものになる。未反応のままの状態を許す壁があるからである。極低濃度まで除害するには、その壁から未反応のアンモニアを剥がして反対側の壁(アノード2)に接触させる必要がある。未反応のままの状態がある壁はないほうが、アンモニアをその壁の箇所を自由に通り抜けできるので、分解反応を停滞させずに済む。すなわち、流路A1のように、間隔は倍であるが上壁および下壁ともにアノード2とされ、ともに分解が進行する場合、未反応のまま壁に接触する箇所はないので、ppmオーダーまで分解するMEAの所要長さは短くなる。
(3)アンモニア含有気体を流す流路A1は、絶縁仕切りシート13を伴う2つの流路A1/2と比べて、絶縁仕切りシート13を配置する必要がないので、圧力損失が小さくしやすい。このため、圧力損失という面でも有利である。
上記(1)および(2)によって、極低濃度レベルまで有害成分を除害する装置において、両側電極構造は装置の小型化、とくに流路長の短縮に大きな効果を奏する。また、(3)圧力損失を抑制しやすい。
【0025】
次に、各部分の製造方法について説明するが、その最初に、このアンモニア分解装置10の耐久性について説明する。
(カソード側の耐久性):
このアンモニア分解装置10は、800℃程度に加熱されることは上述のとおりである。このとき、酸素が導入されるカソード3およびカソード集電体12における金属部分は、高温で酸化性雰囲気にさらされて、高温酸化が進行する。高温酸化が進行すると、多孔体が目詰まりを起こし、また他の不都合を生じるので、合金化などによって耐高温酸化性能を向上させる必要がある。
とくにカソード集電体12および金属粒連鎖体31は、通常、Niで形成するので、ある程度の耐高温酸化性能は有するが、より耐高温酸化性能を向上させる対策をとるのがよい。カソード集電体12および金属粒連鎖体31ともに、アノード側にも含まれるので、一緒に、説明し、とくに耐高温酸化性能が必要な場合には、その都度、説明する。
1.カソード集電体13およびアノード集電体12
これら集電体はめっきによって形成されるので、めっき多孔体またはNi多孔体と呼ぶ。図8は、めっき多孔体の製造方法の一例を示す図である。図8において、まずウレタン等の樹脂に発泡処理を施し発泡させたものを準備する。次いで、発泡した気孔を連続する気孔連続化処理を行う。気孔連続化処理は、除膜処理と呼ばれる処理であるが、ポリウレタン発泡体のセル膜(気泡膜)を除去する公知の処理である。公知の除膜処理として、アルカリ濃厚溶液中にポリウレタン発泡体を浸漬して加水分解によりセル膜を溶解除去するアルカリ処理法や、浸透剤によってポリウレタン発泡体中に水を含浸させ、その水を100℃以上に加熱して水の体積膨張でセル膜を破壊する湿潤過熱法や、ポリウレタン発泡体を密封容器に収容し、前記密封容器に水素、酸素の混合等からなるガスを充填して爆破させることによりセル膜を破壊させる熱処理(爆発法)などがある。上記の除膜処理によって、ポリウレタン発泡体はセル膜のほとんどが除去され、ほぼ骨格のみとなる。このあと、気孔内壁に、導電性炭素膜を付着させるか、または無電解めっき等により導電薄膜を形成する。次いで、電気めっきによって、金属めっき層を導電性炭素膜または導電薄膜上に形成する。この金属めっき層が気孔体の骨格となる。金属めっきはニッケルイオンを含むめっき液を用い、Niめっき層を形成するのがよい。Niは、上記の低温域で耐高温酸化性を有し、かつめっき層の形成が容易である。次いで、熱処理によって樹脂を消散させて、金属めっき層のみを残して、Niめっき多孔体とする。
より高温での耐酸化性能を得るためには、上述のように、Niめっき多孔体に対して合金化処理を施す。この合金化処理は、Cr、Al、その他の金属を外から表層に拡散導入することにより行われる。合金化を表層のみに止めて、合金化表層付きめっき多孔体とするのが普通であるが、中まで合金化する場合もある。
また、図8には示していないが、めっき液にニッケルイオンおよび他の金属イオンを溶解させて、めっき体をニッケル合金とすることができる。そのように、直接、合金めっき層を形成することで、ニッケル合金の骨格を形成してもよい。
【0026】
図9は、AlまたはCr添加処理の具体例を示す図である。図9(a)はアルミナイジング(Aluminizing)の具体例である。この方法では、Niめっき多孔体(図9(a)で「Me」で表示)を、Fe−Al合金粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに鋼製ケース内に埋め込む。次いで、ケースを密封して、その密封したケースを炉内に装入し、900℃〜1050℃に加熱する。これによってAl拡散浸透層を得ることができ、耐高温酸化性、耐摩耗性等を向上することができる。また、図9(b)はクロマイジング(Chromizing)の具体例である。この方法では、Niめっき多孔体(Me)を、Cr粉、Al2O3粉およびNH4Cl粉よりなる調合剤とともに、ケース内に埋め込む。ケース内にH2ガスまたはArガスを通しながら、炉内にて900℃〜1100℃に加熱することで、Cr拡散浸透層を得ることができる。このCr拡散浸透層も耐高温酸化性能を高めることができる。なお、図9では、アルミナイジングおよびクロマイジングともに、粉末法のみを示したが、気体法、溶融塩法など、既存の任意の方法を用いて、AlまたはCrを拡散浸透することができる。
【0027】
図8に示す方法で製造したNiめっき多孔体の、比表面積(y:m2/m3)と孔径(x:mm)との関係を図10に示す。図10の小黒丸が実測値である。孔径0.45mm〜3.2mmにわたって、上記の方法で製造することができる。実測値は、(x−0.3)y=400または600の双曲線に比して、同じ孔径において大きな比表面積を持つ。(x−0.3)yの値が大きいと、カソード集電体12に導入される気体と接触して、カソード3へと気体を乱流状態で送り込む機能を保持しながら、圧力損失を低くできる効果を生み出す。このため、400≦(x−0.3)y、とするのがよい。より好ましくは、600≦(x−0.3)y、とするのがよい。孔径をあまり大きくする弊害(導電性の低下など)が生じるおそれがあるので、上限は3000程度、より好ましくは2000程度とするのがよい。
Niめっき多孔体では、気孔の大きさ、および、骨格の太さ(薄さ)を、それぞれ独立に調節することができる。このため、Niめっき多孔体は、十分な導電性、十分な乱流生成作用を得ながら、容易に圧力損失を低下させることができる。
【0028】
2.カソードおよびアノードの金属粒連鎖体21,31
金属粒連鎖体21,31は、還元析出法によって製造するのがよい。この金属粒連鎖体21,31の還元析出法については、特開2004−332047号公報などに詳述されている。ここで紹介されている還元析出法は、還元剤として3価チタン(Ti)イオンを用いる方法であり、析出する金属粒(Ni粒など)は微量のTiを含む。このため、Ti含有量を定量分析することで、3価チタンイオンによる還元析出法で製造されたものと特定することができる。3価チタンイオンとともに存在する金属イオンを変えることで、所望の金属の粒を得ることができる。Niの場合はNiイオンを共存させる。Feイオンを微量加えると、微量Feを含むNi粒連鎖体が形成される。
また、連鎖体を形成するには、金属が強磁性金属であり、かつ所定のサイズ以上であることを要する。NiもFeも強磁性金属なので、金属粒連鎖体を容易に形成することができる。サイズについての要件は、強磁性金属が磁区を形成して、相互に磁力で結合し、その結合状態のまま金属の析出→金属層の成長が生じて、金属体として全体が一体になる過程で、必要である。所定サイズ以上の金属粒が磁力で結合した後も、金属の析出は続き、たとえば結合した金属粒の境界のネックは、金属粒の他の部分とともに、太く成長する。アノード2またはカソード3に含まれる金属粒連鎖体21,31の平均直径Dは5nm以上、500nm以下の範囲とするのがよい。また、平均長さLは0.5μm以上、1000μm以下の範囲とするのがよい。また、上記平均長さLと平均径Dとの比は3以上とするのがよい。ただし、これら範囲外の寸法を持つものであってもよい。
上記のカソード3の金属粒連鎖体31は、たとえば低温域用のものとするのがよい。カソード集電体7と同様に、高温域用の金属粒連鎖体31は、図5に示すような、アルミナイジングまたはクロマイジングのような合金化処理を施すのがよい。すなわち、600℃〜950℃の高温域で使用するアンモニア分解装置10のカソード3に含まれるNi粒連鎖体31は、耐高温酸化性のために、CrまたはAl等の富化層を設けるのが好ましい。金属多孔体を構成する合金のめっき体を、直接、めっきにより形成してもよい。
【0029】
3.表面酸化
アノード2内のNi粒連鎖体21、ならびに高温域用および低温域用カソード3内のNi粒連鎖体31は、いずれも、電気化学反応を促進する触媒作用を高めるために、表面酸化されるのがよい。
表面酸化処理は、(i)気相法による熱処理酸化、(ii)電解酸化、(iii)化学酸化の3種類が好適な手法である。(i)では大気中で500〜700℃にて1〜30分処理するのがよい。最も簡便な方法であるが、酸化膜厚の制御が難しい。(ii)では標準水素電極基準で3V程度に電位を印加し、陽極酸化することにより表面酸化を行うが、表面積に応じ電気量により酸化膜厚を制御できる特徴がある。しかし、大面積化した場合、均一に酸化膜をつけることは難しい手法である。(iii)では硝酸などの酸化剤を溶解した溶液に1〜5分程度浸漬することで表面酸化する。酸化膜厚は時間と温度、酸化剤の種類でコントロールできるが薬品の洗浄が手間となる。いずれの手法も好適であるが、(i)または(iii)がより好ましい。
望ましい酸化層の厚みは、1nm〜100nmであり、より好ましくは10nm〜50nmの範囲とする。ただし、この範囲外であってもかまわない。酸化皮膜が薄すぎると触媒機能が不十分となる。また、わずかな還元雰囲気でもメタライズされてしまう恐れがある。逆に酸化皮膜が厚すぎると触媒性は充分保たれるが、反面、界面での電子伝導性が損なわれ、発電性能が低下する。
【0030】
4.焼結
アノード2またはカソード3に含まれるSSZ22またはLSM32の原料粉末の平均径は0.5μm〜50μm程度とする。表面酸化された金属粒連鎖体21,31と、SSZ22,LSZ32との配合比は、mol比で0.1〜10の範囲とする。
焼結方法は、たとえば大気雰囲気中で、温度1000℃〜1600℃の範囲に、
30分〜180分間保持することで行う。
カソード3は、酸化層付き金属粒連鎖体31、LSM、Ag粒子33等の焼結体で構成される。Ag粒子の平均径は、10nm〜100nmとするのがよい。銀と、LSMとの配合比は、0.01〜10程度とするのがよい。
連鎖状金属粉末の表面酸化の時期は、上記の焼結体形成の前でもよいし後でもよい。
【0031】
(多組積層構造)
図11は、図1の2つのMEAを一組として、複数組が積層された多組積層構造の一部分を示す図である。図11の多組積層構造では、両側電極流路A1ではアンモニアが上壁および下壁のアノード2において分解することは、実施の形態1のものと同じであるが、空気(酸素)が導入される流路C1/2において、酸素が上壁および下壁のカソード3において分解する。すなわち流路C1/2も両側電極流路となり、図12に示すように、酸素は、両側電極流路C1/2の上壁および下壁のカソード3で反応して酸素イオンO2−になる。
これに対して、図13に示すような、極性を揃えてMEAを並行的に積層する方式での多組積層構造は、図14に示すように、片側電極流路C1/2において、上壁のカソード3において反応するが、一方の壁(下壁)を形成する絶縁仕切りシート13下壁のアノード2では酸素のまま壁に接触する。
【0032】
図11に示す構造では、両側電極流路C1/2の上壁は酸素イオンを上側の両側電極流路A1に面するアノード2に供給し、また下壁は下側の両側電極流路A1に面するアノード2に酸素イオンを供給する必要があるので、図12に説明する分解反応は生じないと不都合であるということもできる。しかし、図13の絶縁仕切りシート13で隔絶された片側電極構造と比べて、図11に示す両側電極構造は、無駄がない積層となっている。このため、空気についても圧力損失の低減をしやすくなる。
【0033】
(その他の実施の形態)
本発明のガス除害装置は、表1に示すすべての除害反応R1〜R7に用いることができる。上記実施の形態1は、反応R1について説明した。
【0034】
【表1】
【0035】
アンモニアの除害についていえば、その他にR2〜R4の反応が可能である。このうち反応R4は燃料電池反応ではなく電気分解反応であるが、電力の取り出しと投入との相違があるだけで、電気化学反応という点で、上記の実施の形態1と同じである。また、VOC(Volatile Organic Compounds)の除害、NOxの除害もある。これらすべての電気化学反応について、上記の流路を挟んで対面するように、同じ極性の電極を配置することができる。これによって、(1)長期間にわたってメインテナンスフリーで、かつ低いランニングコストで稼動することができ、(2)小型で、有害ガスを無害レベルまで除害できる。
【実施例】
【0036】
次に、計算によって、流路に所定濃度のアンモニア含有気体を流したときの流路に沿う濃度変化を求めた。このアンモニア除害装置は、化合物半導体GaNなどを有機金属エピタキシー法などで成膜する際に生成するアンモニア含有気体を除害する。大気に放出可能なアンモニア濃度レベルは、法規制もあるが、通常はそれよりも低い濃度としてヒトが異臭を感じなくなる1ppm以下とする。計算によるシミュレーションでは、気体は、アンモニアと水素の混合気体であり、アンモニアと水素との比を、1:1とした。この混合気体を10SLM流して処理するとした。アンモニア分解装置10は、本発明例の場合、図11に示す多組積層構造を有し、両側電極流路A1を5層備える5組積層構造とした。比較例の場合、図13に示す積層構造を有し、片側電極流路A1/2を5層備える構造とした。アノードに到達したアンモニアは、100%分解すると仮定し、各流路の高さ(厚み)hを変えて、アンモニアのモル濃度を計算によって求めた。また、各流路には、10SLMの1/5が均等に配分されるとした。
【0037】
MEAの入口からの距離に応じて、減少するアンモニアモル濃度を、図15に示す。図15によれば、アンモニアモル濃度1ppm以下にするのに、高さhを6.0mmとした場合、両側電極では50mm弱の流路長により実現することができる。これに対して、片側電極では140mm程度の流路長が必要である。したがって、本発明例の両側電極構造では、片側電極構造に比べて、ppmオーダーに除害するMEA長さを飛躍的に短くすることができ、圧力損失を抑えながら、小型化を実現することができる。
【0038】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のガス除害装置によれば、(1)小型で、効率よく、有害ガスを無害レベルまで除害でき、(2)低いランニングコストで稼動することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 イオン導電性電解質(固体酸化物電解質)、2 アノード、3 カソード、3h 空隙、10 アンモニア分解装置、11 アノード集電体、11a アノード端子、12 カソード集電体、12a カソード端子、12d 導電部(金属めっき部)、12h 気孔、21 金属粒連鎖体、21a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、21b 酸化層、22 アノードのイオン導電性セラミックス(SSZなど)、31 金属粒連鎖体、31a 金属粒連鎖体の芯部(金属部)、31b 酸化層、32 カソードのイオン導電性セラミックス(LSMなど)、33 銀、61 アンモニア含有気体入口、62 出口、71 空気入口、72 出口、A1,A1/2 アンモニア含有気体流路、C1/2 空気流路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の化学成分を電気化学反応によって除害する装置であって、
対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第1のMEA(Membrane Electrode Assembly)と、
前記第1のMEAに隣接して、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第2のMEAとを備え、
前記第1のMEAと第2のMEAとが、同じ極性の電極を対向させて、前記気体を流す流路を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする、ガス除害装置。
【請求項2】
前記対向する電極の集電体となる、連続気孔を有する金属多孔体が、前記両側電極流路を占めるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載のガス除害装置。
【請求項3】
前記金属多孔体が、金属めっき体であり、気孔率が95%以上であることを特徴とする、請求項2に記載のガス除害装置。
【請求項4】
前記金属多孔体の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことを特徴とする、請求項2または3に記載のガス除害装置。
【請求項5】
前記第1のMEAの前記両側電極流路と反対側に、および、前記第2のMEAの前記両側電極流路と反対側に、前記両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極において前記電気化学反応に関与する気体を流す逆極流路を、それぞれ備え、前記両側電極流路の断面積が、前記第1および第2のMEAの前記逆極流路の断面積の大きいほうと等しいか、または大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項6】
前記第1のMEAおよび第2のMEAによって形成されるガス除害装置の組が、複数、積層され、隣り合う組同士、前記両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極が、対向して前記逆極流路を挟んでいることを特徴とする、請求項5に記載のガス除害装置。
【請求項7】
前記複数の積層された組のMEAの間に、絶縁仕切りシートを有しないことを特徴とする、請求項6に記載のガス除害装置。
【請求項8】
前記両側電極流路にアンモニアを含む気体が導入され、前記対の相手側の電極の流路である逆極流路に、空気が導入されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項1】
気体中の化学成分を電気化学反応によって除害する装置であって、
対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第1のMEA(Membrane Electrode Assembly)と、
前記第1のMEAに隣接して、対をなす電極、および該対をなす電極に挟まれる電解質で構成される第2のMEAとを備え、
前記第1のMEAと第2のMEAとが、同じ極性の電極を対向させて、前記気体を流す流路を挟み、該流路を両側電極流路としていることを特徴とする、ガス除害装置。
【請求項2】
前記対向する電極の集電体となる、連続気孔を有する金属多孔体が、前記両側電極流路を占めるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載のガス除害装置。
【請求項3】
前記金属多孔体が、金属めっき体であり、気孔率が95%以上であることを特徴とする、請求項2に記載のガス除害装置。
【請求項4】
前記金属多孔体の、孔径をx(mm)、比表面積をy(m2/m3)とするとき、400≦(x−0.3)y、を満たすことを特徴とする、請求項2または3に記載のガス除害装置。
【請求項5】
前記第1のMEAの前記両側電極流路と反対側に、および、前記第2のMEAの前記両側電極流路と反対側に、前記両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極において前記電気化学反応に関与する気体を流す逆極流路を、それぞれ備え、前記両側電極流路の断面積が、前記第1および第2のMEAの前記逆極流路の断面積の大きいほうと等しいか、または大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【請求項6】
前記第1のMEAおよび第2のMEAによって形成されるガス除害装置の組が、複数、積層され、隣り合う組同士、前記両側電極流路を挟む電極と逆極性の電極が、対向して前記逆極流路を挟んでいることを特徴とする、請求項5に記載のガス除害装置。
【請求項7】
前記複数の積層された組のMEAの間に、絶縁仕切りシートを有しないことを特徴とする、請求項6に記載のガス除害装置。
【請求項8】
前記両側電極流路にアンモニアを含む気体が導入され、前記対の相手側の電極の流路である逆極流路に、空気が導入されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガス除害装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−247032(P2010−247032A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97491(P2009−97491)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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