説明

ガラス−樹脂積層体、およびそれを巻き取ったガラスロール、並びにガラスロールの製造方法

【課題】ガラスフィルムに樹脂フィルムを貼り合わせた後の反りを抑え、反りに起因する樹脂フィルムのしわや剥離を確実に防止することが可能なガラス−樹脂積層体、及びそれをロール状に巻き取ったガラスロール、並びにガラスロールの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス−樹脂積層体1は、厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルム2の少なくとも一方の面に、厚み1〜300μm、引張弾性率0.3GPa以上で、剥離可能な長尺状樹脂フィルム3が、長尺状ガラスフィルム2の短尺方向両側端21から食み出した状態で積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板や太陽電池のガラス基板等のデバイスのガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラス等に使用されるガラスフィルムを、樹脂フィルムに積層したガラス−樹脂積層体、該ガラス−樹脂積層体を巻き取ったガラスロール、及びガラスロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース化の観点からCRT型ディスプレイに替わり、近年は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、さらなる薄型化が要請されている。特に有機ELディスプレイには、折りたたみや巻き取ることによって持ち運びを容易にすると共に、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められている。また、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められているのはディスプレイには限られず、例えば、自動車の車体表面や建築物の屋根、柱や外壁等、曲面を有する物体の表面に太陽電池を形成したり、有機EL照明を形成したりすることができれば、その用途が広がることとなる。従って、これらデバイスに使用されるガラス基板やカバーガラスには、更なる薄板化と高い可撓性が要求される。また薄板化が進み、高い可撓性が付与されたガラスフィルムはリチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のガラス基板等のデバイスのガラス基板、有機EL照明のカバーガラス、医薬品パッケージや窓板ガラスの軽量化等への利用も期待される。
【0003】
有機ELディスプレイや有機EL照明などの有機ELデバイスに使用される発光体は、酸素等の気体が接触することにより劣化する。従って有機ELデバイスに使用される基板には高いガスバリア性が求められるため、ガラスを基板に使用することが期待されている。しかしながらガラス基板は、樹脂フィルムと異なり引張応力に弱いため可撓性が低く、ガラス基板を曲げることによりガラス基板表面に引張応力がかけられると破損に至り易い。ガラス基板に可撓性を付与するためには上述の薄板化を行う必要があり、下記特許文献1には、厚み200μm以下のガラスフィルムが提案されている。
【0004】
長尺状のガラスフィルムは、ロール状に巻き取って梱包、搬送できるという利点があるが、ガラスフィルムの破損を防止するためには、ガラスフィルム間に合紙を介在させたり、後工程で剥離可能な樹脂フィルムを貼り合わせることが必要である。例えば、特許文献2には、ガラスフィルムに剥離可能な樹脂フィルムを積層したガラス−樹脂積層体が提案されている。
【0005】
しかしながら特許文献2に記載されたガラス−樹脂積層体は、ガラスフィルムの一方の面に、張力を付与した状態で剥離可能な樹脂フィルムを貼り付けると、樹脂フィルム側に大きく反ることがあり、その結果、樹脂フィルムにしわが発生し、自ら剥離してしまうという現象が起こり、ガラスフィルムの破損を防止するという効果が十分に得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特開2001−097733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、長尺状ガラスフィルムに樹脂フィルムを貼り合わせた後の反りを抑え、反りに起因する樹脂フィルムのしわや剥離を確実に防止することが可能なガラス−樹脂積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μmで、引張弾性率0.3GPa以上の長尺状樹脂フィルムが、長尺状ガラスフィルムの短尺方向(幅方向)両側端から食み出した状態で剥離可能に積層されてなることを特徴とするガラス−樹脂積層体に関する。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、長尺状樹脂フィルムの粘着力が、1×10−3〜5×10−1N/10mmであることを特徴とする請求項1に記載のガラス−樹脂積層体に関する。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、長尺状ガラスフィルムの長さが1000mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス−樹脂積層体に関する。
【0011】
本願請求項4に係る発明は、長尺状ガラスフィルムの幅が5mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体に関する。
【0012】
本願請求項5に係る発明は、長尺状樹脂フィルムは、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から1mm以上食み出してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体に関する。
【0013】
本願請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体を巻き取ってなることを特徴とするガラスロールに関する。
【0014】
本願請求項7に係る発明は、厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μmで、引張弾性率0.3GPa以上の長尺状樹脂フィルムを、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で剥離可能に積層することによってガラス−樹脂積層体を作製した後、前記ガラス−樹脂積層体を巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法に関する。
【0015】
本願請求項8に係る発明は、長尺状樹脂フィルムに張力を付与した状態で、長尺状ガラスフィルムに積層することを特徴とする請求項7に記載のガラスロールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1に係る発明によれば、厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μm、引張弾性率0.3GPa以上で、剥離可能な長尺状樹脂フィルムが、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層されてなるため、ガラス−樹脂積層体の反りを抑えることができ、反りに起因する樹脂フィルムのしわや剥離を防止することができる。
【0017】
ガラス−樹脂積層体に反りが発生する原因は、ガラスフィルムの片面に、張力を付与した状態で樹脂フィルムを貼り合わすと、樹脂フィルムが元の形状に復元しようとする力が働くためであると考えられる。そしてガラス−樹脂積層体の反りが大きくなるほど、樹脂フィルムにしわが発生し、自ら剥離しやすくなる。
また長尺状ガラスフィルムと、長尺状樹脂フィルムを積層しながら巻き取る場合、両者の短尺方向両側端の位置にずれが発生しやすく、ガラスフィルムの一部が、樹脂フィルムで被覆されないことがある。このようなガラスフィルムは、樹脂フィルムで被覆されている部分と、被覆されていない部分との間で異なる応力が加わるため、形状が変化しやすくなり、ますます樹脂フィルムが剥離しやすくなる。
【0018】
しかしながら本願発明のガラス−樹脂積層体は、長尺状樹脂フィルムの引張弾性率が0.3GPa以上であるため、ガラスフィルムに貼り合わせた後に復元しようとする力が小さく、反りを最小限に抑えることができる。また長尺状樹脂フィルムが、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層されてなるため、ガラスフィルムの少なくとも1方の面全面を樹脂フィルムで被覆した状態にすることが可能であり、不均等な応力が加わることによる樹脂フィルムの剥離も抑えることができる。尚、本発明における引張弾性率は、温度23℃における値である。
【0019】
本願請求項2に係る発明によれば、長尺状樹脂シートの粘着力は、1×10−3〜5×10−1N/10mmであり、弱粘着性であるため、容易にガラスフィルムから剥離させることが可能となる。
【0020】
本願請求項3に係る発明によれば、長尺状ガラスフィルムの長さが1000mm以上であり、ガラスロールに巻き取ることが容易である。長尺状ガラスフィルムが長くなるほど、搬送性、取り扱い性が向上するため、1×10mm(10m)以上、5×10mm(50m)以上、さらには1×10mm(100m)以上とすることが好ましい。ただし生産効率(歩留まり)の点から、長尺状ガラスフィルムの長さは、1×10mm(10000m)以下とすることが好ましい。
【0021】
本願請求項4に係る発明によれば、長尺状ガラスフィルムの幅が5mm以上であり、各種ディスプレイ、電子デバイス、または太陽電池に使用することができる。長尺状ガラスフィルムの幅が大きくなるほど、大型化に適用しやすくなるため、100mm以上、300mm以上、600mm、さらには850mm以上とすることが好ましい。ただし生産効率(歩留まり)の点から、長尺状ガラスフィルムの幅は、3000mm以下とすることが好ましい。
【0022】
本願請求項5に係る発明によれば、長尺状樹脂フィルムは、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から1mm以上食み出してなるため、ガラスフィルムの全面を確実に保護することが可能である。
【0023】
本願請求項6に係る発明によれば、ガラス−樹脂積層体を巻き取ってなるガラスロールであり、ロール状に巻き取った回巻体とすることによって、梱包や搬送が容易となる。
【0024】
本願請求項7に係る発明によれば、厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μmで、引張弾性率0.3GPa以上で剥離可能な長尺状樹脂フィルムを、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層することによってガラス−樹脂積層体を作製した後、前記ガラス−樹脂積層体を巻き取るガラスロールの製造方法であることから、請求項1の発明と同様の効果が得られる。また長尺状ガラスフィルムと長尺状樹脂フィルムの幅が同一の場合、両者をロール状に巻き取る際、お互いの両側端を正確に合致させて貼り合わせることは殆ど不可能であるが、本願請求項7の発明では、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で、長尺状樹脂フィルムを積層するため、ガラスフィルムの少なくとも1方の面全面を樹脂フィルムで被覆することができる。
【0025】
本願請求項8に係る発明によれば、長尺状樹脂フィルムに張力を付与した状態で、長尺状ガラスフィルムに積層することから、貼り合わせ時のしわ等の発生を防止することができる。また長尺状樹脂フィルムを、ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層するため、樹脂フィルムの食み出し部を把持して張力を加えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガラス−樹脂積層体の説明図であって、(a)は平面図、(b)はA−A線断面図である。
【図2】ガラスフィルムの製造装置の説明図である。
【図3】本発明に係るガラスロールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るガラス−樹脂積層体、及びガラス−樹脂積層体を巻き取ったガラスロールの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
本発明に係るガラス−樹脂積層体1は、図1に示す通り、長尺状ガラスフィルム2の一方の面に、長尺状樹脂フィルム3が、長尺状ガラスフィルム2の短尺方向両側端から食み出した状態で積層されてなる構造を有している。
【0029】
ガラスフィルム2の材質としては、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等が使用できるが、無アルカリガラスが最も好ましい。その理由は、ガラスフィルム2にアルカリ成分が含有されていると、その表面層で陽イオンの置換が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となり、ガラスフィルム2を湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損する可能性があるからである。尚、ここで無アルカリガラスとは、アルカリ成分が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分が1000ppm以下のガラスのことである。本発明でのアルカリ成分の含有量は、好ましくはアルカリ成分が500ppm以下であり、より好ましくはアルカリ成分が300ppm以下である。
【0030】
ガラスフィルム2の厚みは、1〜300μmであり、より好ましくは5〜200μm、10〜100μm、20〜50μmである。ガラスフィルム2の厚みが小さくなるほど、強度が不足がちになり、ガラス−樹脂積層体1からガラスフィルム2を剥離する際に、ガラスフィルム2の破損を招き易くなる。一方、ガラスフィルム2の厚みが大きくなるほど、可撓性が悪くなり、ガラスロールとして巻き取ることが困難となり、また樹脂フィルム3を貼り合わせても、反りが起こりにくくなるため、引張弾性率の大きな樹脂フィルムを使用する必要性が小さくなる。
【0031】
本発明で使用されるガラスフィルム2は、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法等によって成形することができるが、図2に示すようなオーバーフローダウンドロー法によって成形することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、溶融ガラスからガラス板を成形する際にガラス板の両面が、成形部材と接触しない成形法であり、得られたガラス板の両面(透光面)には傷が生じ難く、研磨しなくても高い表面品位を得ることができるからである。
【0032】
図2において、断面が楔型の成形体4に供給された溶融ガラスが成形体4の両側面をそれぞれ下方へ流下し、下端部41で合流した直後のガラスリボンGは、一対の冷却ローラ5によって短尺方向の収縮が規制されながら下方へ引き伸ばされて所定の厚みまで薄くなる。次に、前記所定厚みに達したガラスリボンGを徐冷炉(アニーラ)で徐々に冷却し、アニーラローラ6などで下方に引っ張りながら、ガラスリボンGの熱歪を除き、所定寸法に切断して、ガラスフィルム2が成形される。
【0033】
樹脂フィルム3は、図1に示す通り、ガラスフィルム2の短尺方向両端縁から食み出して積層される。食み出し量は、ガラスフィルム2の短尺方向両側端21から、1mm〜200mmであることが好ましく、5〜100mm、5〜50mm、10〜40mmであることがより好ましい。この樹脂フィルム3の食み出し量が小さくなるほど、ガラスフィルム2と樹脂フィルム3を巻き取る際、ガラスフィルム2の全面に樹脂フィルム3を確実に被覆することが困難となる。一方、樹脂フィルム3の食み出し量が大きくなるほど、ガラス−樹脂積層体をハンドリングし難くなる。
【0034】
樹脂フィルム3の厚みは、1〜300μmであり、好ましくは10〜200μm、30〜100μmである。樹脂フィルム3の厚みが大きくなるほど、ガラス−樹脂積層体1の反りが大きくなる。一方、樹脂フィルム3の厚みが小さくなるほど、取り扱い性や強度が低下する。
【0035】
樹脂フィルム3の引張弾性率が大きいほど、ガラス−樹脂積層体1の反りが小さくなるため、0.3GPa以上、0.5GPa以上、1GPa以上、2GPa以上であることが好ましい。また、樹脂フィルムの引張弾性率は、ガラスフィルムのヤング率以下であることが好ましい。樹脂フィルム3の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、PEN、ポリプロピレン、ポリスチレン、高密度ポリエチレン、ポリシクロオレフィン等が使用できる。
【0036】
樹脂フィルム3の片面(上面)には、剥離可能な粘着層(図示省略)が形成され、その粘着力は、1×10−3〜5×10−1N/10mm、5×10−3〜3×10−1N/10mm、1×10−2〜1×10−1N/10mmであることが好ましい。これによって樹脂フィルム3が弱粘着性となるため、樹脂フィルム3をガラスフィルム2から容易に剥離(分離)することが可能である。粘着力が小さすぎると、十分な粘着性が得られなくなり、逆に大きすぎると、剥離し難くなる。尚、粘着層の材料、厚み等は、所望の特性が得られるように適宜選択すれば良い。
【0037】
本発明においては、ガラスフィルム2の樹脂フィルム3が積層されていない側の面にも、必要に応じて第2の樹脂フィルム(図示省略)を積層しても良い。これにより、ガラスフィルム2の全体を保護することが可能となる。
【0038】
第2の樹脂フィルムの幅は、樹脂フィルム3の幅と略同一あるいは、より大きくすれば良い。第2の樹脂フィルムには、粘着層を形成しても良いが、粘着層を形成せず、樹脂フィルム2の粘着力により剥離可能に接着させても良い。つまり樹脂フィルム2の食み出し部に、非粘着性の第2の樹脂フィルムの両側端を合わせ、樹脂フィルム2の粘着力によって、両者を貼り付けるようにしても良い。また第2の樹脂フィルムの材料としては、巻き取りが可能となるように可撓性を有する樹脂、例えば樹脂フィルム2と同様の樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
図3は、本発明に係るガラスロールの説明図である。
【0040】
本発明に係るガラスロール7は、上述したガラス−樹脂積層体1を巻き取ることによって形成される。このガラスロール7は、上記ガラス−樹脂積層体1の樹脂フィルム3の方を外側にして芯材上に巻き取ったものであり、樹脂フィルム3がガラスフィルム2の短尺方向両側端から食み出した状態で貼り合わせされており、その引っ張り弾性率が0.3GPa以上であるため、ガラスロール7からガラス−樹脂積層体1を引き出した後でも、反りが発生することがなく、樹脂フィルム3が、ガラスフィルム2から自ら剥離することはない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例と比較例に基づいて本発明を説明する。
【0042】
表1は、実施例(試料No.1)と、比較例(試料No.2、3)のガラス−樹脂積層体を示すものである。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の各試料は、次のとおり作製した。
【0045】
まずガラスフィルムとして、厚み50μm、幅300mm、長さ3000mmの無アルカリガラス(日本電気硝子株式会社製OA−10G)を準備した。また樹脂フィルムとして、表中に示す材質、厚みの樹脂フィルムを準備した。尚、PETは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PEはポリエチレン樹脂を意味し、各樹脂フィルムの一方の面には、厚み1μmで、粘着力が2.7×10−2N/10mmの粘着層が形成されている。
【0046】
次にガラスフィルムの一方の面に、ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で樹脂フィルムを貼り合わせながら、樹脂フィルムの方を外側にして、芯材(外径165mm、幅500mmの管状体)に巻き取ることによって、各試料(ガラス−樹脂積層体)をロール状に巻き取った。こうして得られたガラスロールの巻取張力は170Nであり、これを1時間放置した後、試料を引き出した。その後、各試料をロールに巻き取った方向とは逆の方向に湾曲させた時の剥離性(逆向き曲げ試験)と、平面上に載置した時の剥離性(平置き試験)を調べた。尚、逆向き曲げ試験では、外径85mmの塩ビ管の表面に試料を沿わせて湾曲させた。
【0047】
その結果、実施例である試料No.1のガラス−樹脂積層体は、全くしわや剥離が認められなかったが、比較例である試料No.2、3のガラス−樹脂積層体は、逆向き曲げ試験で試料を湾曲させた際に剥離した。また平置き試験で、試料を載置した直後から反った部分が存在し、短尺方向両側端から樹脂フィルムが剥離した後、数分で全幅に亘って剥離した。
【0048】
また試料No.1のガラス−樹脂積層体につき、樹脂フィルムの食み出し部を把持して、ガラスフィルムから引き剥がしたところ、ガラスフィルムが破損することなく、両者を容易に剥離(分離)することができた。
【0049】
以上のことから、試料No.1のガラス−樹脂積層体は、ロール状に巻き取った後でも樹脂フィルムが自ら剥離することはなく、フラットパネルディスプレイや太陽電池等の用途において、透明導電膜等の成膜処理、パターンニング、洗浄処理等、様々な電子デバイス製造関連処理を行う際のロール・トウ・ロール工程に容易に組み込むことができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のガラス−樹脂積層体は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、有機EL照明のカバーガラス、リチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のガラス基板等のデバイスのガラス基板、医薬品パッケージや窓板ガラスの軽量化等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス−樹脂積層体
2 ガラスフィルム
21 両側端
3 樹脂フィルム
4 成形体
5 冷却ローラ
6 アニーラローラ
7 ガラスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μm、引張弾性率0.3GPa以上で、剥離可能な長尺状樹脂フィルムが、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層されてなることを特徴とするガラス−樹脂積層体。
【請求項2】
長尺状樹脂フィルムの粘着力が、1×10−3〜5×10−1N/10mmであることを特徴とする請求項1に記載のガラス−樹脂積層体。
【請求項3】
長尺状ガラスフィルムの長さが1000mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス−樹脂積層体。
【請求項4】
長尺状ガラスフィルムの幅が5mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体。
【請求項5】
長尺状樹脂フィルムは、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から1mm以上食み出してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のガラス−樹脂積層体を巻き取ってなることを特徴とするガラスロール。
【請求項7】
厚み1〜300μmの長尺状ガラスフィルムの少なくとも一方の面に、厚み1〜300μm、引張弾性率0.3GPa以上で、剥離可能な長尺状樹脂フィルムを、長尺状ガラスフィルムの短尺方向両側端から食み出した状態で積層することによってガラス−樹脂積層体を作製した後、前記ガラス−樹脂積層体を巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項8】
長尺状樹脂フィルムに張力を付与した状態で、長尺状ガラスフィルムに積層することを特徴とする請求項7に記載のガラスロールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−51186(P2012−51186A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194724(P2010−194724)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】