説明

ガラスアンテナ及びその製造方法

【課題】ガラスを基板として利用した高利得で低損失なガラスアンテナを提供する。
【解決手段】2枚の板ガラス1a,1bを接着層1cを介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板1と、アンテナパターン2と、該アンテナパターン2の放射電波を反射するグランドパターン3とをそなえたガラスアンテナにおいて、該ガラス基板1の内部に、アンテナパターン2及び該グランドパターン3のいずれか一方又は双方を埋設し、さらに、前記2枚の板ガラス1a,1b及び接着層1cの少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターン2と対向する部分を、該アンテナパターン2と対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料1dに置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを基板に利用したガラスアンテナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両(移動体)には、高周波帯のGPS(Global Positioning System)用のアンテナや、衛星ディジタル放送用の衛星電波を受信するアンテナが搭載されることが多くなってきている。また、高速道路や有料道路の料金を自動的に徴収するETC(自動料金所システム)や、道路交通情報を提供するVICS(道路交通情報通信システム)の電波ビーコンに対しても電波の送受信を行なうアンテナが必要となってきている。このようなアンテナとしては、例えば、車両の窓ガラスを基板として利用してパッチアンテナ(平面アンテナ)を構成する技術が知られている。
【0003】
図11は従来の平面アンテナとしての自動車高周波用ガラスアンテナの構成を示す側面図であって、下記特許文献1の図5に相当する図である。この図11に示すガラスアンテナは、自動車の窓ガラス板110の一方(車外)の面にアンテナ導体120が形成されるとともに、窓ガラス板110の他方(車内)の面に少なくともアンテナ導体120の一部と対向して反射導体210が形成されて構成されている。
【0004】
ここで、アンテナ導体120は、円偏波信号であるGPS信号を良好に受信すべく窓ガラス板110の平面上において渦巻き状のアンテナパターンを有しており、その中心部の一端が給電部130に接続されている。当該アンテナパターンは、58mm×46mm、線幅1mm、渦巻き状のアンテナ導体120間の間隔5mmのサイズを有している。
また、反射導体210は、窓ガラス板110の平面上において、120mm×60mmのサイズを有し、絶縁箱150を窓ガラス板110に取り付けるための金具からなる脚部170、絶縁箱150に内蔵された増幅回路のグランド、当該増幅回路の出力を受信機(図示省略)に伝送するための同軸ケーブル180の外部導体によって、前記受信機のアースと電気的に接続されている。さらに、上記増幅回路の入力部と電気的に接続された給電部130から給電線が窓ガラス板110に設けられた孔220を通じてアンテナ導体120の一部と導電物質により接続されている。
【0005】
このような構成により、本自動車高周波用ガラスアンテナでは、アンテナ導体120から窓ガラス板110側へ放射された電波が反射導体210で反射されてアンテナ導体120(車外)へ向けて放射されるので、アンテナ利得が増大する。
次に、図12は従来の他の平面アンテナとしての車両用ガラスの構成を示す模式的側面図であって、下記特許文献2の図1に相当する図である。この図12に示す車両用ガラス500は、ガラス基板100の表面に太陽光の熱線遮蔽膜400が形成された、車両に装着されるガラスであって、熱線遮蔽膜400の形成領域以外の領域において、ガラス基板100を挟んで車内側アンテナ200と車外側アンテナ300が互いに向かい合って形成されて構成されている。これにより、電波を反射してしまう熱線遮蔽膜400を設けた車両用ガラスにおいても、FM波以上の高周波数の電波を送受することが可能となる。
【0006】
また、ガラス板に配線を印刷する技術として、下記特許文献3に記載された技術がある。この技術では、導体パターン材料として望ましい金属板上にガラス基板を重ね合わせ、ガラス基板の上方からYAGレーザ光を所望の導体パターンに応じた描画パターンで照射することにより、金属板を加熱溶融又は蒸発させてガラス基板に所望の導体パターンを熱転写させる。これにより、剥がれにくい安定な導体パターンを、薬品等を使用することなく、ガラス基板に印刷することが可能となる。そして、この技術の適用例として、車両のフロントガラスにFM放送受信用のアンテナ導体パターンを印刷形成することも開示されている。
【0007】
なお、アンテナに関する技術ではないが、電磁波の漏洩又は侵入を防止する技術として、下記特許文献4に記載された技術(電磁波シールド性フィルム)がある。この電磁波シールド性フィルムは、透明な基材フィルムの両面に、二次元線分パターンの金属導電層および二次元線分パターンの印刷層が基材フィルムを中心として対象構造となるように積層されたフィルム又は当該フィルムを複数重ね合わせた積層フィルムであって、金属導電層及び印刷層のパターンは全て実質的に同形で、かつ、基材フィルム上で位置的にも重なり合った(基材フィルムの表裏どちらから見ても金属導電層が印刷層で隠されている)構造を有している。このような構造により、良好な電磁波シールド特性を有するフィルムを実現することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平7−29916号公報
【特許文献2】特開平6−247746号公報
【特許文献3】特開平6−104551号公報
【特許文献4】特開平10−341093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2の技術のように、あるいは、上記特許文献3の技術を用いて、単純にガラス表面にアンテナを構成すると、ガラスの厚みに応じた損失によりアンテナ利得が低下する。即ち、通常の板ガラスは誘電損失が0.02前後と比較的大きいので、UHF帯以上の周波数では損失が大きくなり、ガラスの両表面にアンテナパターン(グランドパターン)を施すとそれに挟まれた部分のガラスの損失によって利得が低下する。
【0010】
また、特許文献4の技術を応用して、フィルムに導体パターンを形成してアンテナを構成する場合には線状のアンテナしか形成できず、反射板を利用するパッチアンテナのように高利得なアンテナを得ることは非常に困難である。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ガラスを基板として利用した高利得で低損失なガラスアンテナ及びその製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明のガラスアンテナの適用対象は、車両等の移動体に限られず、入出場ゲートシステムや商品盗難防止用のセキュリティシステム等にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)第1の案として、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みが、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄い、ガラスアンテナを用いることができる。
【0012】
(2)また、第2の案として、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分が除去されている、ガラスアンテナを用いることができる。
【0013】
(3)さらに、第3の案として、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の誘電損失が、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい、ガラスアンテナを用いることができる。
【0014】
(4)また、第4の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【0015】
(5)さらに、第5の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【0016】
(6)また、第6の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【0017】
(7)さらに、第7の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【0018】
(8)また、第8の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【0019】
(9)さらに、第9の案として、第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有する、ガラスアンテナの製造方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明によれば、ガラスの厚みを利用した反射板を利用できるパッチアンテナのような利得の高いアンテナを構成することができ、また、同じガラスの厚さで両表面にアンテナパターンを設けたアンテナよりも低損失なアンテナを実現することができる。
さらに、アンテナパターン及びグランドパターンの一方又は双方がガラス基板内に埋設されるので、埋設されたパターンを保護することもできる。
【0021】
また、アンテナパターン及びグランドパターンを同じ板ガラスの両面に形成する場合には、その製造工程において、アンテナパターン及びグランドパターンの位置合わせを高精度に行なうことが可能であり、所望の利得のガラスアンテナを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラスアンテナ(単体パッチアンテナ)の模式的斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るガラスアンテナ(アレイパッチアンテナ)の模式的斜視図である。
【図3】第1実施形態に係るガラスアンテナ(単体パッチアンテナ)の構造を分解して示す模式的側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るガラスアンテナの構成を分解して示す模式的側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図6】第3実施形態の変形例に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図8】第4実施形態の第1変形例に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図9】第4実施形態の第2変形例に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図である。
【図11】従来の平面アンテナとしての自動車高周波用ガラスアンテナの構成を示す側面図である。
【図12】従来の他の平面アンテナとしての車両用ガラスの構成を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔1〕第1実施形態の説明
意匠的な要素を重視して、ガラスにアンテナを構成する場合がある。
図1及び図2は本発明の第1実施形態に係るガラスアンテナの模式的斜視図で、図1に示すガラスアンテナは、ガラス基板1の一方の面にアンテナエレメント〔アンテナパターン(導体パターン)〕2を1つ形成した単体パッチアンテナとして構成され、図2に示すガラスアンテナは、ガラス基板1の一方の面にアンテナパターン2を複数(2つ)形成したアレイパッチアンテナとして構成されている。
【0024】
なお、このガラスアンテナは、送信アンテナ及び受信アンテナのいずれとしても使用できる。また、図1及び図2において、符号3はアンテナパターン2に対向して設けられてアンテナパターン2から放射される電波を反射する(あるいは、受信電波をアンテナパターン2へ反射する)反射板として機能するグランドパターン(導体パターン)を示し、符号4はアンテナパターン2への給電線(導体パターン)を示している。ただし、本実施形態において、ガラス基板1は、2枚の板ガラスを張り合わせた合わせガラスとして構成されており、上記グランドパターン3は、各板ガラスの貼り合わせ部分に設けられる。
【0025】
即ち、本実施形態のガラスアンテナ(単体パッチアンテナ)は、例えば図3に模式的に示すように、2枚の板ガラス1a,1bを有し、一方(第1)の板ガラス1aの一方の面1a−1にアンテナパターン2が形成されるとともに、他方の面1a−2に、アンテナパターン2の放射電波を反射する反射板としても機能するグランドパターン3が当該アンテナパターン2と対向する位置に形成され、この板ガラス1aのグランドパターン3の形成面1a−2を中間膜となる接着層1cを介して他方(第2)の板ガラス1bの一方の面と接着することにより、ガラス基板1の表面1a−2にアンテナパターン2を有するとともに、ガラス基板1内のアンテナパターン2と対向する位置にグランドパターン3が埋設されたアンテナ構造を有している。なお、以降においては、単体パッチアンテナとしての構造を前提として説明を行なうが、上記アレイパッチアンテナについても、アンテナパターン2を複数形成すべき点が主に異なるだけで、以降の説明と同様にして構成できる。
【0026】
ここで、ガラス基板1全体としての厚みは10mm程度であるのが好ましく、例えば、板ガラス1a,1bの厚みは5mm程度、中間膜1cの厚みは0.76mm程度であるのが好ましい。このように、ガラスには通常ある程度の厚みがあるため、反射板3を利用したパッチアンテナが構成可能となる。また、中間膜(接着層)1cには、例えば、ポリビニールブチラール等の接着性フィルムを用いることができる(以降の実施形態においても同様)。さらに、アンテナパターン2及びグランドパターン3は、それぞれ、銀印刷等の印刷技術により形成することができる。
【0027】
上記ガラスアンテナの製造方法について説明すると、例えば、まず第1工程として、板ガラス1aの一方の面1a−2に、グランドパターン3用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤(銀ペースト等、以下、同じ)を塗布し、乾燥、焼成を行なう。次いで、第2工程として、板ガラス1aの他方の面1a−1に、アンテナパターン2用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。そして、第3工程として、板ガラス1aのグランドパターン印刷面1a−2と、印刷を施していない板ガラス1bとを、中間膜1cを介して貼り合せる。
【0028】
これにより、上述した構造を有するガラスアンテナを製造することができる。なお、上記の第1工程及び第2工程の順序は逆でもよいし、同時、つまり、両面同時印刷によって一工程で行なうようにしてもよい。このようにすれば、製造期間の短縮化及び製造コストの低減を図ることができる。
以上のように、ガラス基板1を1枚ではなく、厚みが半分程度の2枚の板ガラス1a,1bの合わせガラスとし、一方の板ガラス1aの両面1a−1,1a−2に導体パターンであるアンテナパターン2及びグランドパターン3をそれぞれ形成することで、同じ厚さ(例えば、10mm程度)の1枚のガラス基板の両表面に導体パターンを形成する場合に比して、アンテナパターン2−グランドパターン3間に存在するガラス部分を少なくすることができる(つまり、誘電損失を少なくできる)ので、ガラスの厚みを利用して反射板3を利用可能なパッチアンテナのような高利得のアンテナを、従来よりも低損失で実現することができる。
【0029】
また、本例のガラスアンテナでは、グランドパターン3がガラス基板1の内部に埋設された構造になるので、グランドパターン3を保護することもできる。さらに、アンテナパターン2及びグランドパターン3が同じ板ガラス1aの両面に形成されるので、上記製造工程において、アンテナパターン2及びグランドパターン3の位置合わせを高精度に行なうことも可能である。したがって、所望の利得のガラスアンテナを容易に得ることができる。
【0030】
なお、板ガラス1a,1b,中間膜1cの厚みは上述した数値例に限定されるものではなく、適宜、変更可能である。また、板ガラス1aの厚みと板ガラス1bの厚みは同じでもよいし異なっていてもよい。ただし、ガラスによる誘電体損失を低減するために、アンテナパターン2とグランドパターン3との間の距離がなるべく小さくなるように、アンテナパターン2及びグランドパターン3を形成する側の板ガラス1aの厚みを必要な利得を確保できる範囲で薄くした方が好ましい。
【0031】
また、アンテナパターン2とグランドパターン3との間の誘電損失をさらに低減して低損失化を図るべく、アンテナパターン2とグランドパターン3とで挟まれた部分の板ガラス1aの厚みを薄くする、あるいは、その部分を除去して、セラミックやプラスチック、石英ガラス等の板ガラス1aよりも低損失な材料で置き換える(あるいは、そのままにしておく)ようにしてもよい。
【0032】
さらに、アンテナパターン2,グランドパターン3の形成箇所は、図1,図3に示す位置には限定されず、適宜、変更可能である(以降の実施形態においても同様)。
〔2〕第2実施形態の説明
図4は本発明の第2実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図で、この図4に示すガラスアンテナは、図3により上述したガラスアンテナに比して、板ガラス1aのアンテナパターン2の形成面1a−1に、中間膜となる接着層1cを介して板ガラス1bが接着されて、ガラス基板1が構成されている点が異なる。つまり、本例では、グランドパターン3ではなく、アンテナパターン2がガラス基板1内に埋設された状態となる。なお、この図4において、既述の符号と同一符号を付した部材は、特に断らない限り、既述の部材と同一若しくは同様の部材である。
【0033】
ここで、本例のガラスアンテナの製造方法について説明すると、例えば、第1工程として、まず、板ガラス1aの一方の面1a−2にグランドパターン3用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。次いで、第2工程として、板ガラス1aの他方の面1a−1にアンテナパターン2用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。そして、第3工程として、板ガラス1aのアンテナパターン印刷面1a−1と、印刷を施していない板ガラス1bとを、中間膜1cを介して貼り合せる。
【0034】
これにより、上述した構造を有するガラスアンテナを製造することができる。なお、本例においても、上記の第1工程及び第2工程の順序は逆でもよいし、同時、つまり、両面同時印刷によって一工程で行なうようにしてもよい。
このような構造にすることにより、アンテナパターン2の放射方向(アンテナパターン2の形成された面1a−1から垂直方向に離れる方向)に放射電界を集める効果が得られる。即ち、この場合は、アンテナパターン2が比誘電率の比較的大きい(約7)ガラス基板1内に埋設されるため、図3により上述した構造のガラスアンテナに比して、若干、誘電損失は大きくなるものの、放射電波の指向性を少し向上することができる。また、アンテナパターン2がガラス基板1内に埋設されるので、アンテナパターン2を保護することもできる。
【0035】
〔3〕第3実施形態の説明
図5は本発明の第3実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図で、この図5に示すガラスアンテナは、図4により上述した第2実施形態のアンテナ構造を基本として、アンテナパターン2の存在する部分だけ中間膜1cを取り除いて、その部分を誘電損失の少ないセラミックや、ポリプロピレン、プラスチック等の低損失材料1dで置き換えた構造になっている。なお、この図5においても、既述の符号と同一符号を付した部材は、既述のものと同一若しくは同様の部材である。
【0036】
ここで、本例におけるガラスアンテナの製造方法について説明すると、第1工程として、まず、板ガラス1aの一方の面1a−2にグランドパターン3用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。次いで、第2工程として、板ガラス1aの他方の面1a−1にアンテナパターン2用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。さらに、第3工程として、板ガラス1a,1bを貼り合せる中間膜1cのアンテナパターン2との接触部分をその形状に応じて一部切断し、その切断部分に低損失材料1dを埋め込む。そして、第4工程として、板ガラス1aのアンテナパターン印刷面1a−1と、印刷を施していない板ガラス1bとを、低損失材料1dを埋め込んだ中間膜1cを介して貼り合せる。
【0037】
これにより、図5に示すような構造を有するガラスアンテナを製造することができる。なお、上記の第1〜第3工程の順序は不問である。また、上記の第1及び第2工程は、同時、つまり、両面同時印刷によって一工程で行なうようにしてもよい。
本例のようなアンテナ構造とすることにより、アンテナパターン2の放射方向の誘電損失をさらに低減することができるので、第2実施形態よりも利得の低損失なガラスアンテナを実現することができる。なお、本例では、中間膜1cの一部(アンテナパターン2の存在する部分)を除去しているが、除去しないで当該部分の中間膜1cの厚みを他の部分よりも薄くして、薄くした分だけ上記低損失材料1dで置き換えた構造にしても、利得損失の低減を図ることができる。
【0038】
また、例えば図6に示すように、中間膜1cのみならず、板ガラス1bについても、少なくともアンテナパターン2と対向する部分の厚みを他の部分よりも薄くして(あるいは、除去して)、その部分をセラミックや、プラスチック、石英ガラスのような、板ガラス1bのもつ誘電損失よりも損失の少ない低損失材料1eで置き換えれば、さらなる利得の低損失化を図ることが可能である。なお、板ガラス1bについてのみ図6中に示すごとく低損失材料1eを用いるようにしてもよい。また、図5及び図6に示すアンテナ構造のいずれについても、除去あるいは薄くした部分は低損失材料1d,1eで置き換えずにそのままにしておいてもよい。
【0039】
〔4〕第4実施形態の説明
図7は本発明の第4実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図で、この図7に示すガラスアンテナは、2枚の板ガラス1a,1bを有し、一方の板ガラス1aの各面1a−1,1a−2のうちの一方の表面1a−2にアンテナパターン(導体パターン)2が形成されるとともに、他方の板ガラス1bの各面1b−1,1b−2のうちの一方の表面1b−1に反射板として機能するグランドパターン(導体パターン)3が各板ガラス1a,1bをガラス基板1として一体化したときにアンテナパターン2と対向する位置に形成され、これらの板ガラス1a,1bが、導体パターン2,3が互いに対向する向きで中間膜(接着層)1cを介して接着されることにより、ガラス基板1内にアンテナパターン2及びグランドパターン3が対向して埋設されたアンテナ構造を有している。なお、この図7においても、既述の符号と同一符号を付した部材は、特に断らない限り、既述の部材と同一若しくは同様の部材である。
【0040】
ここで、本例においても、板ガラス1a,1bの厚みは1枚のガラス基板1の厚みの半分程度(5mm程度)であるのが好ましいが、中間膜(接着層)1cの厚みについては、アンテナパターン2とグランドパターン3との間にグランドパターン3が反射板として機能するのに必要な分の距離を確保する必要があるので、それだけの厚みが必要であり、例えば、2,3mm程度であるのが好ましい。この場合、中間膜1cは、例えば、前記接着性フィルム(通常、1枚で0.76mm程度の厚みをもつ)を必要な厚み分だけ数枚重ねて構成すればよい。また、本例においても、アンテナパターン2及びグランドパターン3は、それぞれ、銀印刷等の印刷技術により形成することができる。
【0041】
本例のガラスアンテナの製造方法について説明すると、例えば、第1工程として、まず、板ガラス1aの一方の面1a−2にグランドパターン3用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。次いで、第2工程として、板ガラス1aの他方の面1a−1にアンテナパターン2用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。さらに、第3工程として、板ガラス1a,1bを貼り合せる中間膜1cのアンテナパターン2との接触部分をその形状に応じて一部切断し、その切断部分に低損失材料1dを埋め込む。
【0042】
次いで、第4工程として、板ガラス1bのアンテナパターン2に対応する部分の一部(又は全部)を除去し、そこに低損失材料1eを埋め込む。そして、第5工程として、板ガラス1bの低損失材料1eを埋め込んだ面と、板ガラス1aのアンテナパターン印刷面1a−1とを、低損失材料1dを埋め込んだ中間膜1cを介して貼り合せる。
以上のようにして、図6に示すような構造を有するガラスアンテナを製造することができる。なお、上記の第1〜第4工程の順序は不問である。また、上記の第1及び第2工程についても、同時、つまり、両面同時印刷によって一工程で行なうようにしてもよい。
【0043】
このようなアンテナ構造を採用することで、アンテナパターン2とグランドパターン3との間には板ガラス1a,1bよりも厚みの薄い中間膜1cのみが存在するので、既述のアンテナ構造に比して、アンテナパターン2とグランドパターン3との間の距離が短くなり、グランドパターン3による反射効果が向上して利得の向上を図ることができる。
また、本例においても、既述の第2実施形態のアンテナ構造と同様に、アンテナパターン2が中間膜1cと接する面1a−2に形成されてガラス基板1内に埋設された状態となるので、アンテナパターン2の放射方向(アンテナパターン2の形成された面1a−2の反対面1a−1から垂直方向に離れる方向)に放射電界を集める効果が得られる。即ち、この場合も、アンテナパターン2が比誘電率の比較的大きい(約7)ガラス基板1内に埋設されるため、若干、誘電損失は大きくなるものの、放射電波の指向性を少し向上することができる。
【0044】
また、導体パターンであるアンテナパターン2及びグランドパターン3の双方がガラス基板1内に埋設されるので、これらの導体パターン2,3の双方を保護することもできる。
なお、本例においても、図5により前述したアンテナ構造と同様に、例えば図8に示すように、アンテナパターン2と対向する部分の中間膜1cを取り除いて(あるいは薄くして)、その部分を誘電損失の少ないセラミックや、ポリプロピレン、プラスチック等の低損失材料1dで置き換えれば、さらに損失を低減することが可能であり、また、図6により前述したアンテナ構造と同様に、例えば図9に示すように、中間膜1cのみならず、板ガラス1aについても、少なくともアンテナパターン2と対向する部分の厚みを他の部分よりも薄くして(あるいは除去して)、その部分をセラミックや、プラスチック、石英ガラスのような、板ガラス1aのもつ誘電損失よりも損失の少ない低損失材料1eで置き換えれば、さらなる低損失化を図ることが可能である。
【0045】
ここで、本例においても、板ガラス1aについてのみ図9中に示すごとく低損失材料1eを用いるようにしてもよいし、また、図8及び図9に示すアンテナ構造のいずれについても、除去あるいは薄くした部分は低損失材料1d,1eで置き換えずにそのままにしておいてもよい。
〔5〕第5実施形態の説明
図10は本発明の第5実施形態に係るガラスアンテナの構造を分解して示す模式的側面図で、この図10に示すガラスアンテナは、2枚の板ガラス1a,1bを有し、一方の板ガラス1aの各面1a−1,1a−2のうちの一方の表面1a−1にアンテナパターン(導体パターン)2が形成されるとともに、他方の板ガラス1bの各面1b−1,1b−2のうちの一方の表面1b−1に反射板として機能するグランドパターン(導体パターン)3が各板ガラス1a,1bをガラス基板1として一体化したときにアンテナパターン2の裏側に相当する位置に形成され、これらの板ガラス1a,1bが、各面1a−2,1b−1が対向する向きで中間膜(接着層)1cを介して接着されることにより、ガラス基板1の表面1a−1にアンテナパターン2が形成されるとともに、ガラス基板1内にグランドパターン3が埋設されたアンテナ構造を有している。
【0046】
つまり、この図10に示すアンテナ構造は、図1により前述した第1実施形態のアンテナ構造において、板ガラス1aの一方の面(中間膜1cと接する面)1a−2に形成されていたグランドパターン3を、他方の板ガラス1bの中間膜1cと接する面1b−1に形成した構造に相当する。なお、図10においても、既述の符号と同一符号を付した部材は、特に断らない限り、既述の部材と同一若しくは同様の部材である。
【0047】
ここで、本例においても、第1実施形態と同様に、ガラス基板1全体としての厚みは10mm程度であるのが好ましいが、アンテナパターン2とグランドパターン3との間の距離をできるだけ短くした方がよいので、アンテナパターン2が形成される板ガラス1aの厚みの方を、グランドパターン3が形成される板ガラス1bの厚みよりも薄くした方が好ましい。なお、本例においても、中間膜(接着層)1cには、例えば、ポリビニールブチラール等の接着性フィルムを用いることができ、アンテナパターン2及びグランドパターン3は、それぞれ、銀印刷等の印刷技術により形成することができる。
【0048】
本例におけるガラスアンテナの製造方法について説明すると、例えば、第1工程として、まず、板ガラス1aの一方の面1a−1に、アンテナパターン2用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行なう。次いで、第2工程として、板ガラス1bの一方の面1b−1に、グランドパターン3用スクリーンメッシュ版を用いて印刷剤を塗布し、乾燥、焼成を行う。そして、第3工程として、板ガラス1aのアンテナパターン2を印刷していない面1a−2と、板ガラス1bのグランドパターン印刷面1b−1とを、中間膜1cを介して貼り合せる。
【0049】
これにより、上述した構造を有するガラスアンテナを製造することができる。なお、本例においても、上記の第1工程及び第2工程の順序は逆でもよいし、同時、つまり、両面同時印刷によって一工程で行なうようにしてもよい。
以上のように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、同じ厚さ(例えば、10mm程度)の1枚のガラス基板の両表面に導体パターンを形成する場合に比して、アンテナパターン2−グランドパターン3間に存在するガラス部分を少なくすることができる(つまり、誘電損失を少なくできる)ので、ガラスの厚みを利用して反射板3を利用可能なパッチアンテナのような高利得のアンテナを、従来よりも低損失で実現することができる。また、グランドパターン3がガラス基板1の内部に埋設された構造になるので、グランドパターン3を保護することもできる。
【0050】
なお、本例においても、アンテナパターン2とグランドパターン3との間の誘電損失をさらに低減して低損失化を図るべく、アンテナパターン2とグランドパターン3とで挟まれた部分の板ガラス1aや中間膜1cの厚みを薄くする、あるいは、その部分を除去して、セラミックやプラスチック、石英ガラス等の低損失材料で置き換える(あるいは、そのままにしておく)ようにしてもよい。
【0051】
その他、本発明は、上述した各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔6〕付記
(付記1)
ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設されていることを特徴とする、ガラスアンテナ。
【0052】
(付記2)
該ガラス基板の一方の面に、該アンテナパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該グランドパターンが埋設されていることを特徴とする、付記1記載のガラスアンテナ。
(付記3)
該ガラス基板が、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるとともに、
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、付記2記載のガラスアンテナ。
【0053】
(付記4)
該ガラス基板が、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるとともに、
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、付記2記載のガラスアンテナ。
【0054】
(付記5)
該ガラス基板の一方の面に、該グランドパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該アンテナパターンが埋設されていることを特徴とする、付記1記載のガラスアンテナ。
(付記6)
該ガラス基板が、2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるとともに、
該グランドパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該アンテナパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、付記5記載のガラスアンテナ。
【0055】
(付記7)
該接着層の少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部が該接着層のもつ誘電損失よりも低損失な材料により構成されたことを特徴とする、付記5又は6に記載のガラスアンテナ。
(付記8)
他方の上記板ガラスの少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部が当該板ガラスのもつ誘電損失よりも低損失な材料により構成されたことを特徴とする、付記5〜7のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【0056】
(付記9)
該アンテナパターン及び該グランドパターンが、該ガラス基板の内部において少なくとも前記放射電波を反射し得る反射距離をもつように対向して埋設されていることを特徴とする、付記1記載のガラスアンテナ。
(付記10)
該ガラス基板が、2枚の板ガラスを、少なくとも該反射距離の厚みを有する接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるとともに、
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の上記板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、付記9記載のガラスアンテナ。
【0057】
(付記11)
該接着層の少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部が該接着層のもつ誘電損失よりも低損失な材料により構成されたことを特徴とする、付記10記載のガラスアンテナ。
(付記12)
上記一方の板ガラスの少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部が当該板ガラスのもつ誘電損失よりも低損失な材料により構成されたことを特徴とする、付記10又は11に記載のガラスアンテナ。
【0058】
(付記13)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0059】
(付記14)
該接着層の少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部を除去し、その除去部分に該接着層のもつ誘電損失よりも低損失な材料を埋め込む工程を有することを特徴とする、付記13記載のガラスアンテナの製造方法。
(付記15)
上記第2の板ガラスの少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部を除去し、その除去部分に当該第2の板ガラスのもつ誘電損失よりも低損失な材料を埋め込む工程を有することを特徴とする、付記13又は14に記載のガラスアンテナの製造方法。
【0060】
(付記16)
該第1の板ガラスに該アンテナパターン及び該グランドパターンを両面同時印刷により形成することを特徴とする、付記13〜15のいずれか1項に記載のガラスアンテナの製造方法。
(付記17)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0061】
(付記18)
上記第1の板ガラスの上記一方の面と上記第2の板ガラスの上記一方の面とを貼り合わせる場合には、少なくとも前記放射電波を反射し得る反射距離の厚みを有する前記接着層により上記各板ガラスを張り合わせることを特徴とする、付記17記載のガラスアンテナの製造方法。
【0062】
(付記19)
該接着層の少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部を除去し、その除去部分に該接着層のもつ誘電損失よりも低損失な材料を埋め込む工程を有することを特徴とする、付記17又は18に記載のガラスアンテナの製造方法。
(付記20)
上記第1の板ガラスの少なくとも該アンテナパターンと対向する部分の一部又は全部を除去し、その除去部分に当該第1の板ガラスのもつ誘電損失よりも低損失な材料を埋め込む工程を有することを特徴とする、付記17〜19のいずれか1項に記載のガラスアンテナの製造方法。
【0063】
(付記21)
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みが、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄いことを特徴とする、ガラスアンテナ。
【0064】
(付記22)
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分が除去されていることを特徴とする、ガラスアンテナ。
【0065】
(付記23)
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の誘電損失が、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さいことを特徴とする、ガラスアンテナ。
【0066】
(付記24)
該ガラス基板の一方の面に、該アンテナパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該グランドパターンが埋設されていることを特徴とする、付記21〜23のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
(付記25)
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、付記24記載のガラスアンテナ。
【0067】
(付記26)
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、付記24記載のガラスアンテナ。
(付記27)
該ガラス基板の一方の面に、該グランドパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該アンテナパターンが埋設されていることを特徴とする、付記21〜23のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【0068】
(付記28)
該グランドパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該アンテナパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、付記27記載のガラスアンテナ。
(付記29)
該アンテナパターン及び該グランドパターンが、該ガラス基板の内部において少なくとも前記放射電波を反射し得る反射距離をもつように対向して埋設されていることを特徴とする、付記21〜23のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【0069】
(付記30)
該接着層が、少なくとも該反射距離の厚みを有し、
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の上記板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、付記29記載のガラスアンテナ。
【0070】
(付記31)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0071】
(付記32)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0072】
(付記33)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0073】
(付記34)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0074】
(付記35)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【0075】
(付記36)
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上詳述したように、本発明によれば、ガラスを基板に利用した従来よりも高利得で低損失なアンテナを実現することができるので、車両用GPSアンテナや入出場ゲートシステム、セキュリティシステムなど、無線電波を利用する技術分野において極めて有用と考えられる。
【符号の説明】
【0077】
1 ガラス基板
1a,1b 板ガラス
1a−1,1a−2 板ガラスの面
1b−1,1b−2 板ガラスの面
1d,1e 低損失材料
1c 中間膜(接着層)
2 アンテナパターン(導体パターン)
3 グランドパターン(導体パターン)
4 給電線(導体パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みが、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄いことを特徴とする、ガラスアンテナ。
【請求項2】
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分が除去されていることを特徴とする、ガラスアンテナ。
【請求項3】
2枚の板ガラスを接着層を介して貼り合わせた合わせガラス基板として構成されるガラス基板と、アンテナパターンと、該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンとをそなえたガラスアンテナであって、
該ガラス基板の内部に、アンテナパターン及び該グランドパターンのいずれか一方又は双方が埋設され、さらに、
前記2枚の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の誘電損失が、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さいことを特徴とする、ガラスアンテナ。
【請求項4】
該ガラス基板の一方の面に、該アンテナパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該グランドパターンが埋設されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【請求項5】
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、請求項4記載のガラスアンテナ。
【請求項6】
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、請求項4記載のガラスアンテナ。
【請求項7】
該ガラス基板の一方の面に、該グランドパターンが設けられるとともに、
該ガラス基板の内部に、該アンテナパターンが埋設されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【請求項8】
該グランドパターンが一方の上記板ガラスの接着面と反対面に設けられ、かつ、
該アンテナパターンが当該板ガラスの上記接着面に設けられていることを特徴とする、請求項7記載のガラスアンテナ。
【請求項9】
該アンテナパターン及び該グランドパターンが、該ガラス基板の内部において少なくとも前記放射電波を反射し得る反射距離をもつように対向して埋設されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスアンテナ。
【請求項10】
該接着層が、少なくとも該反射距離の厚みを有し、
該アンテナパターンが一方の上記板ガラスの接着面に設けられ、かつ、
該グランドパターンが他方の上記板ガラスの接着面に設けられていることを特徴とする、請求項9記載のガラスアンテナ。
【請求項11】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【請求項12】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【請求項13】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、当該第1の板ガラスの他方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、第2の板ガラスの一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【請求項14】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分の厚みを、該アンテナパターンと対向しない部分の厚みよりも薄くする工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【請求項15】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を除去する工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。
【請求項16】
第1の板ガラスの一方の面にアンテナパターンを形成するとともに、第2の板ガラスの一方の面に該アンテナパターンの放射電波を反射するグランドパターンを形成する工程と、
上記第1の板ガラスの上記一方の面、又は、上記他方の面と、上記第2の板ガラスの上記一方の面とを接着層により貼り合わせる工程と、
前記第1の板ガラス,前記第2の板ガラス及び接着層の少なくともいずれかにおいて、該アンテナパターンと対向する部分を、該アンテナパターンと対向しない部分の誘電損失よりも小さい誘電損失を有する材料に置き換える工程とを有することを特徴とする、ガラスアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−158035(P2010−158035A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18711(P2010−18711)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願2005−263996(P2005−263996)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】