説明

ガラススケール保持構造、及びガラススケールの保持方法

【課題】ガラススケールの取付け寸法の増大を回避し、脱着を可能にしながら相応の構造で簡便に且つ安定してガラススケールを保持することが可能となる。
【解決手段】ガラススケール保持構造において、ガラススケール116の幅W2よりも狭い幅W1で且つガラススケール116の測定軸方向(X方向)の長さL2より長く成形されるとともに、ガラススケール116の測定軸方向の両端から端部112Aがそれぞれ突出した状態でガラススケール116を固定する金属薄板112と、端部112Aにそれぞれに設けられるとともに、対象物SJに脱着可能に金属薄板112を保持させる貫通孔112B及びねじ118と、を備え、金属薄板112が対象物SJに保持される際には、ねじ118の対象物SJのねじ穴への螺合により金属薄板112に対して張力が付与されるとともに、金属薄板112の背面の全面が対象物SJに当接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラススケール保持構造、及びガラススケールの保持方法に係り、特に、ガラススケールを対象物に保持させるためのガラススケールの取付け寸法の増大を回避し、脱着を可能にしながら相応の構造で簡便に且つ安定してガラススケールを保持することが可能なガラススケール保持構造、及びガラススケールの保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアエンコーダなどに用いられるガラススケール16の保持には、図5に示す如く、対象物SJ(スケールホルダ)の表面に一端が固定された板ばねSPが用いられる。このため、ガラススケール16を対象物SJに簡単に保持させることが可能である。また、ガラススケール16は板ばねSPの押付力のみで保持されるので、ガラススケール16若しくは対象物SJに熱応力が生じても、その熱応力で生じるひずみを互いに干渉させずに板ばねSPで容易に逃がすことが可能である。しかし、図5に示すようにガラススケール16を保持するためには、最低限対象物SJにガラススケール16の幅W2より広い幅W3の取付け寸法を設ける必要がある。即ち、図5に示す構造では、ガラススケール16が小型であっても、取付け寸法が大きくなってしまう不具合が生じてしまう。
【0003】
そこで、取付け寸法を小さくするために、図6に示すスケール66の保持構造の適用が考えられる(特許文献1)。特許文献1では、スケール66が強力接着剤64で金属テープ62に固定され、金属テープ62を対象物SJに両面テープ68で貼付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、周囲温度や湿度の変化に対して安定性が低いプリント配線基板をスケール66に用いたときに金属テープ62の線膨張係数でスケール66の膨張を制御して安定させるためのものである。即ち、もともとスケール66がガラススケールである場合には、スケール自体の安定性が高いので、図6に示す構造とすることはスケールの保持構造を単に複雑にすることとなり意味がなく、相応の構造とは考えられない。
【0006】
そこで、スケールの保持構造の簡略化のために、ガラススケールを直接対象物に両面テープで貼付けることが考えられる。しかし、この場合には、ガラススケールの貼付けミスが発生すると、ガラススケールが薄くて両面テープが強力であるときには貼り直そうとしてもガラススケールをはがすことが困難となり、最悪ガラススケールを破損させるおそれが出てくる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、ガラススケールを対象物に保持させるためのガラススケールの取付け寸法の増大を回避し、脱着を可能にしながら相応の構造で簡便に且つ安定してガラススケールを保持することが可能なガラススケール保持構造、及びガラススケールの保持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、ガラススケールを対象物に保持させるガラススケール保持構造において、前記ガラススケールの幅以下の幅で且つ該ガラススケールの測定軸方向の長さより長く成形されるとともに、該ガラススケールの該測定軸方向の両端から自身の端部がそれぞれ突出した状態で該ガラススケールを固定する金属薄板と、該金属薄板の突出した端部にそれぞれに設けられるとともに、前記対象物に脱着可能に該金属薄板を保持させる固定機構と、を備え、該金属薄板が該対象物に保持される際には、該固定機構により該金属薄板に対して前記測定軸方向の張力を付与するとともに、該金属薄板の突出した端部を除く背面を一か所以上で該対象物に当接させたことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記ガラススケールと前記金属薄板との間に弾性層を更に設けるようにしたものである。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、前記金属薄板の少なくとも一方の突出した端部に設けられた前記固定機構に、前記測定軸方向に対して傾斜する傾斜面を備えるとともに前記対象物に固定される固定部材と、ねじの該固定部材への螺合状態で該傾斜面に沿った移動と固定とが可能とされるとともに前記金属薄板の突出した端部に固定される移動部材と、を備えるようにしたものである。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、前記金属薄板の幅方向における少なくとも一方の端部の厚みを該金属薄板の幅方向における中央部の厚みに比べて厚くするようにしたものである。
【0012】
本願の請求項5に係る発明は、ガラススケールを対象物に保持させるガラススケールの保持方法において、前記ガラススケールの幅以下の幅で且つ該ガラススケールの測定軸方向の長さより長く成形されるとともに、該ガラススケールの該測定軸方向の両端から自身の端部がそれぞれ突出した状態で該ガラススケールが固定された金属薄板を準備する工程と、該金属薄板の一方の突出した端部を前記対象物に脱着可能に取付ける工程と、該金属薄板に対して該測定軸方向に張力を付与し、且つ該金属薄板の突出した端部を除く背面が一か所以上で該対象物に当接されるように、該金属薄板のもう一方の突出した端部を該対象物に脱着可能に取付ける工程と、を含むようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラススケールを対象物に保持させるためのガラススケールの取付け寸法の増大を回避し、脱着を可能にしながら相応の構造で簡便に且つ安定してガラススケールを保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリニアエンコーダの概略斜視図
【図2】同じくガラススケール保持構造の概略模式図(上面図(A)、側面図(B))
【図3】本発明の第2実施形態に係るガラススケール保持構造の概略模式図
【図4】本発明の第1実施形態、第3実施形態に係るそれぞれの金属薄板の形状を示す模式図(A)、(B)
【図5】ガラススケールを板ばねで保持する従来技術を示す模式図
【図6】温度や湿度に不安定なスケールを保持する従来技術を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0016】
最初に、第1実施形態に係るリニアエンコーダの構成について、主に図1、図2を用いて説明する。
【0017】
リニアエンコーダ100は光電式であり、図1に示す如く、ガラススケール116と検出ヘッド138とを備える。このため、リニアエンコーダ100では、ガラススケール116に成形された光学格子で、検出ヘッド138に内蔵された光源(図示せず)から出射された光が変調され、その変調された光を検出ヘッド138に内蔵された受光素子(図示せず)で検出する。検出された光から検出ヘッド138に対するガラススケール116の測定軸方向(X方向)の変位が求められる。
【0018】
前記ガラススケール116は、図2(A)、(B)に示す如く、幅W2(Y方向の長さ)、測定軸方向(X方向)の長さL2、厚みT3(Z方向の長さ)を備えている。具体的に、本実施形態では、厚みT3は1〜5mm、長さL2は1m以下とされている。なお、ガラススケール116の素材は、汎用的に使用されるガラスとされているが、広い温度範囲でゼロ膨張特性を有し、耐熱衝撃性の高い低膨張ガラスなどであってもよい。
【0019】
ガラススケール116は、図2(B)に示す如く、弾性接着剤で成形された弾性層114(厚みT2)で金属薄板112に接着・固定されている(両面テープで固定することで弾性層を成形してもよい)。なお、本実施形態では、厚みT2は0.2〜0.5mmとされている。金属薄板112は、細長いテープ形状であり、その幅W1がガラススケール116の幅W2よりも狭く、且つその長さL1がガラススケール116の測定軸方向の長さL2より長く成形されている。本実施形態では、金属薄板112は例えば、鉄やアルミニウムを素材としている。また、金属薄板112の厚みT1は1mm以下とされているので、金属薄板112を容易に切断成形することができる。
【0020】
金属薄板112は、図2(A)、(B)に示す如く、ガラススケール116の測定軸方向の両端から端部112Aがそれぞれ突出した状態でガラススケール116を固定している。突出した端部112Aにはそれぞれ、貫通孔112Bが成形されている。2つの貫通孔112Bをねじ118の雄ねじ部118Aが貫通し、その雄ねじ部118Aがそれぞれ対象物SJに成形されたねじ穴に螺合され、金属薄板112が対象物SJに保持される。即ち、貫通孔112Bとねじ118とは、金属薄板112の突出した端部112Aにそれぞれに設けられるとともに、対象物SJに脱着可能に金属薄板112を保持する固定機構としての機能を備えている。なお、対象物SJの2つのねじ穴の間隔は、ねじ118がねじ穴に螺合されると金属薄板112に対して測定軸方向の張力を付与するように、2つの貫通孔112Bの間隔よりも長くされている。2つのねじ穴の間の対象物SJの表面は平坦である。このため、金属薄板112が対象物SJに保持された際には、金属薄板112の裏面の全面が測定軸方向で対象物SJに当接することとなる。
【0021】
次に、ガラススケール116を対象物SJに保持させる手順を、図2(A)、(B)に基づいて説明する。
【0022】
まず、ガラススケール116が固定された金属薄板112を準備する。ここで、金属薄板112の幅W1は、ガラススケール116の幅W2よりも狭い。このため、ガラススケール116への金属薄板112の接着・固定のための位置決め(ガラススケール116の幅W2から金属薄板112がはみ出ないようする位置決め)は容易に行うことができる。
【0023】
次に、金属薄板112の一方の突出した端部112Aを対象物SJに脱着可能に取付ける。即ち、金属薄板112の一方の端部112Aの貫通孔112Bに1つ目のねじ118の雄ねじ部118Aを貫通させ、対象物SJに成形されたねじ穴の一つに、その雄ねじ部118Aを螺合させる。
【0024】
次に、金属薄板112に対して測定軸方向に張力を付与し、且つ金属薄板112の背面の全面で対象物SJに当接するように、金属薄板112のもう一方の突出した端部112Aを対象物SJに脱着可能に取付ける。即ち、金属薄板112のもう一方の端部112Aの貫通孔112Bに2つ目のねじ118の雄ねじ部118Aを貫通させ、対象物SJに成形されたねじ穴のもう一つに、その雄ねじ部118Aを螺合させる。このとき、対象物SJの2つのねじ穴の間隔は、ねじ118がねじ穴に螺合されると金属薄板112に対して測定軸方向の張力を適切に付与するように、2つの貫通孔112Bの間隔よりも長くされている(この適切な張力は、金属薄板112に塑性変形を生じさせない程度の力とすることができる)。このため、2つ目のねじ118がねじ穴に螺合され、金属薄板112の背面の全面で対象物SJに当接される状態までくると、金属薄板112に対して測定軸方向の張力が安定した状態で付与される。
【0025】
図5に示す従来技術においては、前述のように板ばねSPを用いることで取付け寸法W3がガラススケール16の幅W2に比べて増大してしまっている。それだけではなく、板ばねSPを対象物SJに固定するためのタップTPを精度よく一定間隔(例えば75〜100mm)でガラススケール16の全長に亘り対象物SJに加工する必要があり、ガラススケール16を対象物SJに保持させるためにはその加工負担が大きく、コストアップの要因であった。
【0026】
これに対して、上述したように本実施形態においては、金属薄板112がガラススケール116の幅W2よりも狭い幅W1で且つガラススケール116の測定軸方向の長さL2より長く成形されている。そして、金属薄板112がガラススケール116の測定軸方向の両端から端部112Aがそれぞれ突出した状態でガラススケール116を固定している。このため、ガラススケール116の幅方向(Y方向)における取付け寸法の増大をなくして、ガラススケール116を対象物SJに保持させることができる。
【0027】
同時に、本実施形態においては、1〜5mmの厚みT3のガラススケール116が、0.2〜0.5mmの厚みT2の弾性層114を介して1mm以下の厚みT1の金属薄板112に固定されている。即ち、ガラススケール116の保持構造の厚み(ガラススケール116の厚みT3を除く)は、ガラススケール116の厚みT3に比べて、薄く構成することができる。
【0028】
ここで、特許文献1のスケール66の保持構造では、図6に示す如く、対象物SJとスケール66との間に金属テープ62と強力接着剤64と両面テープ68とが介在している。特許文献1では、金属テープ62でスケール66の膨張率を制御するという趣旨から、金属テープ62は相応の厚みを必要とする、即ち最低でもスケール66の厚みと同程度とする必要がある。これに対して、本実施形態においては、金属薄板112がそのような機能を備える必要がなく薄くでき、特許文献1のスケール66の保持構造に比べても、厚みの観点で取付け寸法の増大を回避し、小型化することが可能である。
【0029】
そして、本実施形態においては、金属薄板112の端部112Aにそれぞれ設けられた貫通孔112Bにねじ118が貫通されて、ねじ118がそれぞれ対象物SJのねじ穴に螺合される。このため、金属薄板112を対象物SJから容易に取り外すことができ、ガラススケール116を損傷させることなく、ガラススケール116の対象物SJへの保持のやり直しを容易に行うことができる。このため、ガラススケール116の位置の調整が可能となる。
【0030】
更に、本実施形態においては、金属薄板112が対象物SJに保持される際には、ねじ118のねじ穴への螺合により金属薄板112に対して測定軸方向の張力が付与されるとともに、金属薄板112の背面の全面で対象物SJに当接される。このため、ガラススケール116が外乱(振動)で共振すること(ガラススケール116が波打つような挙動をすること)を防止することができる。なお、金属薄板112に対する張力の付与は、対象物SJのねじ穴の間隔と2つの貫通孔112Bの間隔との正確な加工精度に依存させずに、単に金属薄板112を別の部材で測定軸方向に引っ張った状態で対象物SJに金属薄板112をねじ118で固定するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、2つのねじ118の対象物SJのねじ穴への螺合でガラススケール116の保持がなされる。即ち、対象物SJの加工負担も図5に示した従来技術に比べて少なく、低コストで且つ極めて簡便な手段でガラススケール116の保持を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態においては、ガラススケール116と金属薄板112との間に弾性層114を更に設けている。このため、仮に金属薄板112に付与される張力が大きく金属薄板112に大きなひずみが生じても、そのひずみがガラススケール116に伝わることを回避することができる。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、ガラススケール116を対象物SJに保持させるためのガラススケール116の取付け寸法の増大を回避し、脱着を可能にしながら相応の構造で簡便に且つ安定してガラススケール116を保持することが可能である。このため、本実施形態では、ガラススケールのサイズを小さくした場合には、顕著にそのガラススケールのサイズメリット(軽薄短小の特徴)を生かすことが可能となる。
【0034】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0035】
例えば、第1実施形態においては、貫通孔112Bとねじ118(と対象物SJのねじ穴)とで固定機構の機能を発揮していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3(A)、(B)に示す第2実施形態の如くであってもよい。なお、ここでは、第1実施形態と異なる固定機構220について説明し、それ以外の説明については重複を避けるため省略する。
【0036】
第2実施形態においては、図3(A)、(B)に示す如く、金属薄板212の一方の端部212Aに設けられた固定機構220は、固定部材222と移動部材224とを備える。固定部材222において、反金属薄板側に凹部222Aが設けられ、その凹部222Aの成形により測定軸方向に対して傾斜する傾斜面222Bが成形されている。そして、凹部222Aには傾斜面222Bと略平行にねじ穴222Dが成形されている。そして、凹部222Aの成形されていない固定部材222の部分には貫通孔222Cが成形され、その貫通孔222Cにねじ226が係合し、固定部材222が対象物SJに成形された凹部PTに固定される。
【0037】
一方、移動部材224において、金属薄板側に凹部224Aが設けられ、その凹部224Aの成形により測定軸方向に対して傾斜する傾斜面224Bが成形されている。なお、傾斜面222B、224Bの傾斜角度は同一とされ、互いに当接する状態とされる。そして、凹部222Aでは金属薄板212の端部212Aが固定されている。そして、凹部224Aの成形されていない移動部材224の部分には傾斜面224Bと略平行に貫通孔224Cが成形されている。その貫通孔224Cにねじ228が係合し、ねじ228の固定部材222(のねじ穴222D)への螺合状態で移動部材224の傾斜面222Bに沿った移動と固定とが可能とされている。なお、金属薄板212のもう一方の端部212Aには第1実施形態と同じく貫通孔が成形されて、端部212Aがねじ218で対象物SJに取付けられる。
【0038】
ガラススケール216を対象物SJに保持させる際には、金属薄板212の一方の端部212Aを第1実施形態と同じく、ねじ218で取付ける。そして、固定機構220のうちの固定部材222を対象物SJに取付けた後に、金属薄板212のもう一方の端部212Aに固定された移動部材224をねじ228で、固定部材222に固定する。なお、図3(B)で示す如く、凹部PTの形状はこの時点で金属薄板212の背面の全面で対象物SJに当接するようにされている。
【0039】
このため、本実施形態においては、第1実施形態と異なり、対象物SJのねじ穴間隔の精度に影響を受けることなく、容易且つ安定に金属薄板212に張力を付与することができる。なお、本実施形態においては、一方の端部212Aにのみ固定機構220を適用したが、金属薄板の両方の端部に適用してもよい。また、固定機構220が例えばテーパー形状を1軸或いは2軸方向でその傾斜面に備えることで、ガラススケール216の保持の際に1軸或いは2軸方向への位置決めを同時に行ってもよい。
【0040】
或いは、固定機構が、ねじを使わない構成でもよい。例えば金属薄板の一方の端部に伸縮可能なフック形状部材を設け、もう一方の端部にピンが嵌合可能な貫通孔を設ける。そして、対象物SJには前記フック形状部材で係合可能な第1凹部と前記ピンが嵌合可能な第2凹部とを設けておく。ガラススケールを対象物SJに保持させる際には、前記フック形状部材を対象物SJの第1凹部に係合させたうえで、前記ピンを金属薄板の貫通孔と対象物SJの第2凹部に嵌合させるようしてもよい(順序が逆でもよい)。その際には、フック形状部材の伸縮具合で、金属薄板に張力を付与することが可能となる。
【0041】
また、第1実施形態においては、図4(A)に示す如く、金属薄板112の厚みが幅方向(Y方向)で均一とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4(B)に示す第3実施形態の如くであってもよい。なお、ここでは、第1実施形態と異なる金属薄板312について説明し、それ以外の説明については重複を避けるため省略する。
【0042】
第3実施形態においては、金属薄板312の幅方向(Y方向)における両端部の厚みが金属薄板312の幅方向における中央部の厚みに比べて厚くされている(この際においても、その厚みT1は1mm以下とされている)。このため、金属薄板312は、高い剛性を備え、第1実施形態の金属薄板112に比べて屈曲しにくい。
【0043】
従って、本実施形態においては、ガラススケール316へ伝わる外乱(振動)を更に低減することができる。なお、本実施形態においては、金属薄板312の中央部よりも厚くされている部分312Cは、金属薄板312の成形当初において成形してもよい。或いは、当初の均一な厚みの金属薄板からその幅方向の端部を90度に曲げる、或いは完全に折り返して成形してもよい。また、本実施形態においては、金属薄板312の幅方向の両端部の厚みが金属薄板312の幅方向における中央部の厚みに比べて厚くされていたが、いずれか一方の端部だけが中央部の厚みに比べて厚くされていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、金属薄板の幅W1がガラススケールの幅W2よりも狭くされていたが、幅W1が幅W2以下であればよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、金属薄板の背面の全面で対象物に当接して対象物SJに保持されていたが、本発明はこれに限定されない。金属薄板の突出した端部を除く背面が一か所以上で該対象物に当接されていればよく、その際でも外乱(振動)で金属薄板が共振することを相応に防止することができる。
【0046】
また、上記実施形態においては、ガラススケールと金属薄板との間に弾性層が更に設けられていたが、本発明はこれに限定されずに、弾性層がなく、例えば、ガラススケールと金属薄板とが強力接着剤で固定されていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、金属薄板を対象物に保持させるのに2箇所の固定機構だけが用いられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば金属薄板を対象物に保持させる際に、単独では困難な固定補助手段を固定機構と併用してもよい。固定補助手段による固定方法としては、例えば、2つの固定機構の間の金属薄板の背面と対象物との当接する部分の一か所以上を軽い衝撃で外れる程度の瞬間接着剤の接着量で接着することなどを用いることができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、光電式のリニアエンコーダであったが、本発明はこれに限定されず、電磁誘導式や磁気式などであってもよく、ガラススケールが用いられればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特にガラススケールを有するリニアエンコーダに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
16、116、216、316…ガラススケール
62…金属テープ
64…強力接着剤
66…スケール
68…両面テープ
100…リニアエンコーダ
112、212、312…金属薄板
112A、212A…端部
114、214、314…弾性層
118、218、226、228…ねじ
138…検出ヘッド
220…固定機構
222…固定部材
224…移動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラススケールを対象物に保持させるガラススケール保持構造において、
前記ガラススケールの幅以下の幅で且つ該ガラススケールの測定軸方向の長さより長く成形されるとともに、該ガラススケールの該測定軸方向の両端から自身の端部がそれぞれ突出した状態で該ガラススケールを固定する金属薄板と、
該金属薄板の突出した端部にそれぞれに設けられるとともに、前記対象物に脱着可能に該金属薄板を保持させる固定機構と、を備え、
該金属薄板が該対象物に保持される際には、該固定機構により該金属薄板に対して前記測定軸方向の張力が付与されるとともに、該金属薄板の突出した端部を除く背面が一か所以上で該対象物に当接されることを特徴とするガラススケール保持構造。
【請求項2】
前記ガラススケールと前記金属薄板との間に弾性層が更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラススケール保持構造。
【請求項3】
前記金属薄板の少なくとも一方の突出した端部に設けられた前記固定機構は、前記測定軸方向に対して傾斜する傾斜面を備えるとともに前記対象物に固定される固定部材と、ねじの該固定部材への螺合状態で該傾斜面に沿った移動と固定とが可能とされるとともに前記金属薄板の突出した端部に固定される移動部材とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラススケール保持構造。
【請求項4】
前記金属薄板の幅方向における少なくとも一方の端部の厚みが該金属薄板の幅方向における中央部の厚みに比べて厚くされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラススケール保持構造。
【請求項5】
ガラススケールを対象物に保持させるガラススケールの保持方法において、
前記ガラススケールの幅以下の幅で且つ該ガラススケールの測定軸方向の長さより長く成形されるとともに、該ガラススケールの該測定軸方向の両端から自身の端部がそれぞれ突出した状態で該ガラススケールが固定された金属薄板を準備する工程と、
該金属薄板の一方の突出した端部を前記対象物に脱着可能に取付ける工程と、
該金属薄板に対して該測定軸方向に張力を付与し、且つ該金属薄板の突出した端部を除く背面が一か所以上で該対象物に当接されるように、該金属薄板のもう一方の突出した端部を該対象物に脱着可能に取付ける工程と、
を含むことを特徴とするガラススケールの保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7718(P2013−7718A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142025(P2011−142025)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】