説明

ガラスセラミックグリーンシートの製造方法

【課題】本発明は、ガラス粉末の粉砕時間を短縮しかつ安定させることができるガラスセラミックグリーンシートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のガラスセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス粉末を、有機溶剤、玉石と混合して所定粒径まで粉砕してスラリーを作製し、その後このスラリーをシート成形することからなるガラスセラミックグリーンシートの製造方法であって、前記粉砕を室温より高い温度で一定に保持した状態で行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される積層部品に用いられるガラスセラミックグリーンシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のガラスセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス粉末を所定の粒径まで湿式粉砕し、有機溶剤、バインダーを混合してスラリーを作製し、シート状に成形していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−73233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のガラスセラミックグリーンシートの製造方法においては、ガラス粉末を所定の粒径まで粉砕するのに時間がかかったり、粉砕する時の季節によって温度の影響を受け、粉砕にかかる時間が変化したりするという課題を有していた。
【0006】
本発明は、ガラス粉末の粉砕時間を短縮しかつ安定させることができるガラスセラミックグリーンシートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、ガラス粉末を、有機溶剤、玉石と混合して所定粒径まで粉砕してスラリーを作製し、その後このスラリーをシート成形することからなるガラスセラミックグリーンシートの製造方法であって、前記粉砕を20℃以上の温度で一定に保持した状態で行うようにしたもので、この製造方法によれば、粉砕時のスラリーの粘度を低くできるため、玉石の流動性が速くなり、これにより、ガラス粉末と玉石とが接触し易くなるため、粉砕時間を短縮でき、さらに、粉砕時のスラリーの粘度を季節によらず一定に保つことができるため、玉石の流動性も季節によらず安定し、これにより、粉砕にかかる時間が季節変動することを低減でき、また、スラリーの粘度が低いため、粉砕後に玉石とスラリーとを効率よく分離できるという作用効果が得られるものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、粉砕前のガラス粉末の粒径(φガラス)と玉石の粒径(φ玉石)の比(φ玉石/φガラス)が0.8〜1.3となるようにしたもので、この製造方法によれば、ガラス粉末と玉石の接触面積が広くなるため、粉砕効率を高めることができ、これにより、粉砕時間を短縮できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明のガラスセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス粉末の粉砕を20℃以上の温度で一定に保持した状態で行うようにしているため、粉砕時のスラリーの粘度を低くでき、これにより、玉石の流動性が速くなるため、ガラス粉末と玉石とが接触し易くなり、この結果、ガラス粉末の粉砕時間を短縮でき、さらに、粉砕時のスラリーの粘度を季節によらず一定に保つことができるため、玉石の流動性も季節によらず安定し、これにより、粉砕にかかる時間が季節変動することを低減でき、また、スラリーの粘度が低いことから、粉砕後に玉石とスラリーとを効率よく分離できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】粉砕日数とガラス粉末の粒度分布との関係について、本発明の粉砕方法と従来の粉砕方法を比較した図
【図2】温度を変えたときの粉砕日数とガラス粉末の粒度分布との関係を示す図
【図3】粉砕前のガラス粉末の粒径と玉石の粒径の比と、粉砕日数との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態におけるガラスセラミックグリーンシートの製造方法について説明する。
【0013】
まず、ホウケイ酸ガラス、SiO2−CaO−ZnO−MgO系ガラス等からなるガラス粉末と、ジルコニアからなる玉石、エステルとアルコールからなる有機溶剤等を、ボールミルに投入する。また、粉砕されたガラス粉末の微粉が再凝縮するのを防ぐためにポリビニルブチラールなどを主成分とするバインダーを入れてもよい。
【0014】
このとき、粉砕前のガラス粉末の平均粒径(D50)より小さい粒径の玉石を用いる。さらに、ボールミルの周囲の空気を20℃以上、好ましくは一年を通して工程内の室温より高い温度(30℃〜40℃程度)になるように熱処理して、少なくとも夏の通常の工程内の温度(冷房時)より高い状態にし、かつ一定の温度で保持する。なお、上記の温度より高くしてもよいが、作業者が作業するのに適した温度で、かつ有機溶剤の揮発しない温度にする必要がある。
【0015】
次に、ガラス粉末が所定の粒径になるまでボールミルを数日間、回転させる。その後、粉砕されたガラス粉末を有するスラリーと玉石を分離する。
【0016】
最後に、このスラリーをドクターブレード法により、帯状のPETフィルムからなる支持基体(積層時には剥がされる)の上面に均一な厚さになるように塗布し、その後、約70℃程度で乾燥して方形のガラスセラミックグリーンシートを作製する。
【0017】
そして、得られたガラスセラミックグリーンシートを用いて、コモンモードノイズフィルタ等の積層部品が作製される。
【0018】
上記したように本発明の一実施の形態におけるコモンモードノイズフィルタにおいては、ガラス粉末の粉砕を20℃以上の温度で一定に保持した状態で行うようにしているため、粉砕時のスラリーの粘度を低くでき、これにより、玉石の流動性が速くなるため、ガラス粉末と玉石とが接触し易くなり、この結果、粉砕時間を短縮できるという効果が得られるものである。
【0019】
また、スラリーの粘度が低いことから、粉砕後に玉石とスラリーとを効率よく分離できる。
【0020】
さらに、どの季節であっても、粉砕する際の温度が室温より高い状態に設定する、すなわち、一年を通して最も暑いときの室温より高い温度にしておけば、どの季節でも粉砕する際の温度を一定にすることができるため、粉砕時のスラリーの粘度を季節によらず一定に保つことができる。これにより、玉石の流動性も季節によらず安定させることができるため、粉砕にかかる時間が季節変動することを低減できる。
【0021】
そして、熱処理でのボールミルの周囲の空気を一定の温度で保持すれば、いつでも、所定の粒径まで粉砕できる時間を一定にすることができるため、回転を止めて粉砕状況を都度確認する必要はなく、生産性を向上させることができる。
【0022】
図1は、粉砕日数とガラス粉末の粒度分布との関係について、本発明の粉砕方法と従来の粉砕方法を比較した図である。
【0023】
このとき、本発明の粉砕方法では、室温より高い30℃で粉砕を行い、かつ粉砕前のガラス粉末の粒径3.8μmより小さい粒径3.0μmの玉石を用い、従来の粉砕方法では、温度処理を行わず、かつ粉砕前のガラス粉末の粒径3.8μmより大きい粒径5.0μmの玉石を用いた。
【0024】
図1から明らかなように、粉砕を室温より高い温度、かつ玉石粒径を粉砕前のガラス粉末の粒径より小さいと粉砕時間を短縮できることが分かる。
【0025】
図2は、温度を変えたときの粉砕日数とガラス粉末の粒度分布との関係を示す図である。
【0026】
なお、図2においては、粉砕前のガラス粉末の粒径を3.8μm、玉石の粒径を3.0μmとしている。
【0027】
図2から明らかなように、20℃以上で粉砕すれば粉砕時間を短縮できることが分かる。
【0028】
図3は、粉砕前のガラス粉末の粒径(φガラス)と玉石の粒径(φ玉石)の比(φ玉石/φガラス)と、粉砕日数との関係を示す図である。
【0029】
なお、図3においては、ガラス粉末の平均粒径(D50)が2.0μm、1.5μm、1.0μmとなるまでの日数を示し、また、粉砕前のガラス粉末の粒径を3.8μmとし、25℃で粉砕を行った。
【0030】
図3から明らかなように、粉砕前のガラス粉末の粒径(φガラス)と玉石の粒径(φ玉石)の比(φ玉石/φガラス)を0.8〜1.3、すなわち玉石の粒径を3.0μm〜5.0μmとすれば、粉砕時間を短縮できることが分かる。
【0031】
このとき、玉石の粒径を小さくしすぎると、玉石の自重が軽くなるため、ガラス粉末に衝突する時の衝撃が弱くなり、粉砕効率が低下してしまう。
【0032】
なお、粉砕時間が1週間を超えると粒径の変化はほとんど無くなり、9日後の粒径差は、ばらつきにすぎない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るガラスセラミックグリーンシートの製造方法は、ガラス粉末の粉砕時間を短縮しかつ安定させることができるという効果を有するものであり、特にデジタル機器やAV機器、情報通信端末等の各種電子機器に使用される積層部品に用いられるガラスセラミックグリーンシート等において有用となるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末を、有機溶剤、玉石と混合して所定粒径まで粉砕してスラリーを作製し、その後このスラリーをシート成形することからなるガラスセラミックグリーンシートの製造方法であって、前記粉砕を20℃以上の温度で一定に保持した状態で行うようにしたガラスセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】
粉砕前のガラス粉末の粒径(φガラス)と玉石の粒径(φ玉石)の比(φ玉石/φガラス)が0.8〜1.3となるようにした請求項1記載のガラスセラミックグリーンシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193064(P2012−193064A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57501(P2011−57501)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】