説明

ガラスフィルムの切断方法及びガラスロールの製造方法

【課題】破損を来たし易いガラスフィルムのハンドリング性の向上と、そのガラスフィルムの幅方向両端部の切断の容易化とを同時に達成する。
【解決手段】ガラスフィルムGの表裏両側の面の幅方向両端部の非有効部Gbを除く幅方向中央部の有効部Gaにのみ樹脂フィルム6を貼着した後、この樹脂フィルム6でガラスフィルムGの有効部Gaを保護した状態で、樹脂フィルム6が貼着されていないガラスフィルムGの非有効部Gbを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ってなるガラスロールの製造技術に関し、詳しくは、そのガラスロールの製造工程においてガラスフィルムの幅方向両端部を切断するための技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、省スペース化の観点から、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、近年では、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)が普及している。これらのFPD用のガラス基板においては、軽量化等の観点から、更なる薄板化が要請されている。特に、有機ELディスプレイには、折り畳みや巻き取ることによって持ち運びを容易にするとともに、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが期待されていることから、有機ELディスプレイ用のガラス基板には、高い可撓性を確保すべく、薄板化がより強く要請されているのが実情である。
【0003】
また、例えば、太陽電池や有機EL照明の分野においても、平面だけでなく曲面に使用可能となることが期待されている。これは、自動車の車体表面や建築物の屋根・柱・外壁などの曲面を有する物体の表面に、太陽電池や有機EL照明を形成することができれば、その用途や利便性が格段に広がることとなるためである。したがって、これらのデバイスに使用される基板やカバーガラスにも、高い可撓性を確保する観点から薄板化が要請されている。
【0004】
そこで、これらの薄板化の要請を受けて、例えば、特許文献1に開示されているように、200μmまで薄板化が進められたフィルム状の薄板ガラス(以下、フィルム状の薄板ガラスをガラスフィルムという。)が開発されるに至っている。
【0005】
しかしながら、薄板化が図られたガラスフィルムは、割れなどの破損が生じ易く、FPDや太陽電池等のデバイスのガラス基板等としてそのまま適用した場合には、透明電極等の膜付処理や洗浄処理などの各種製造関連処理において破損が生じるおそれがあり、ハンドリング性が非常に悪いという問題がある。
【0006】
そのため、例えば、特許文献2には、ガラスフィルムのハンドリング性を向上させることを目的として、ガラスフィルムの少なくとも一面全体に樹脂層を形成することが開示されている。このようにすれば、ガラスフィルムが樹脂層によって保護されるため、上述した種々の製造関連処理において、ガラスフィルム単独で処理を行う場合に比してハンドリング性が向上する。
【0007】
なお、同文献では、オーバーフローダウンドロー法によって連続成形される長尺なガラスフィルムに樹脂層を形成した後、その樹脂層が形成された長尺なガラスフィルムをその可撓性を利用して巻芯の回りにロール状に巻き取って収容するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】WO2009/057460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ガラスフィルムは、ダウンドロー法とフロート法のいずれか一方の方法によって成形されるのが通例である。これら2つの成形方法は、溶融ガラスを薄く引き延ばして板状に成形するものであり、その成形過程で溶融ガラスがある一定の幅よりも縮まらないように、溶融ガラスの幅方向両端部にローラ(ダウンドロー法ではエッジロール、フロート法ではトップロールと称される。)が押し当てられる点で共通している。そして、この共通点により、これらの成形方法によって成形されたガラスフィルムの幅方向両端部には、ローラの接触によって幅方向中央部に比して相対的に厚肉となった耳部と称される部分が形成されてしまう。
【0010】
この耳部は、相対的に厚肉で平坦度も悪いため、製品部分とはなり得ない。しかも、耳部が残存していると、ガラスフィルムをロール状に巻回して、ガラスロールの状態で収容する際に、巻取り半径が耳部の厚みにより不当に拡大してしまうという不具合も生じ得る。したがって、当該耳部は、最終的には切断して除去する必要がある。
【0011】
しかしながら、特許文献2に開示されているように、ガラスフィルムの少なくとも一方の面全体に樹脂層を形成した場合には、耳部が形成される幅方向両端部を切断することが極めて困難になる。
【0012】
すなわち、この場合には、切断すべきガラスフィルムの幅方向両端部も、樹脂層によって覆われてしまうため、ガラスフィルムと樹脂層とを同時に切断する必要が生じるが、靭性のある樹脂層をガラスフィルムと一緒に切断することは技術的にも困難となる。しかも、無理に樹脂層を切断しようとすると、樹脂層が接着しているガラスフィルムに過度な応力が作用して、製品となり得るガラスフィルムの幅方向中央部が破損するおそれがある。
【0013】
なお、このように樹脂層を全面に形成した場合に生じる問題は、耳部の切除に限らず、成形されたガラスフィルムの幅方向寸法を要求寸法に調整するために、幅方向両端部を切断する場合にも同様に生じ得るものである。
【0014】
本発明は、破損を来たし易いガラスフィルムのハンドリング性の向上と、そのガラスフィルムの幅方向両端部の切断の容易化とを同時に達成することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために創案された第1の発明は、ガラスフィルムの幅方向両端部を切断するガラスフィルムの切断方法であって、ガラスフィルムの表裏面の少なくとも一方側の面の幅方向両端部を除く幅方向中央部にのみ樹脂層を形成した状態で、前記樹脂層が形成されていないガラスフィルムの幅方向両端部を切断することに特徴づけられる。
【0016】
このような方法によれば、製品となり得るガラスフィルムの幅方向中央部が樹脂層によって確実に保護されることから、ガラスフィルムのハンドリング性の向上を図ることができる。
【0017】
更に、この樹脂層は、ガラスフィルムの幅方向中央部にのみ形成されていることから、ガラスフィルムの幅方向両端部は、樹脂層が形成されずにガラス面が露出した状態となっている。そのため、ガラスフィルムの幅方向両端部を切断する際に、樹脂層を切断する必要がなく、ガラス層のみを切断すれば足りる。したがって、製品となり得るガラスフィルムの幅方向中央部側にクラックが進展するなどの不具合を樹脂層によって防止しつつ、ガラスフィルムの幅方向両端部を簡単且つ確実に切断することができる。
【0018】
なお、以上のようにすれば、切断除去されるガラスフィルムの幅方向両端部に樹脂層を形成せずに済むので、樹脂層を節約できるという副次的な効果も享受し得る。
【0019】
上記課題を解決するために創案された第2の発明は、ガラスフィルムの幅方向両端部を切断する切断工程と、該幅方向両端部を切断したガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールとする巻取工程とを備えたガラスロールの製造方法において、前記切断工程の前に、ガラスフィルムの表裏面の少なくとも一方側の面の幅方向両端部を除く幅方向中央部にのみ樹脂層を形成する保護処理工程を設け、前記切断工程にて、ガラスフィルムの幅方向中央部を前記樹脂層で保護した状態で、前記樹脂層が形成されていないガラスフィルムの幅方向両端部を切断することに特徴づけられる。
【0020】
このような方法によれば、上述した第1の発明と同様の作用効果を享受しつつ、ガラスロールを安定的に製造することが可能となる。
【0021】
上記の方法において、前記樹脂層が、ガラスフィルムに樹脂フィルムを貼着することで形成されることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向中央部にのみ樹脂層を簡単且つ確実に形成することができる。
【0023】
上記の方法において、ガラスフィルムを連続的に搬送しながら、その搬送経路上で、前記保護処理工程、前記切断工程、及び前記巻取工程を含む工程を実行してもよい。
【0024】
このようにすれば、ガラスフィルムを搬送するだけで、ガラスフィルムに順々に各種工程が施されていることになるので、ガラスロールの製造効率を良好に維持することができる。
【0025】
上記の方法において、前記樹脂層が、ガラスフィルムの表裏面のうち、前記保護処理工程以後のガラスフィルムの搬送経路上に位置する搬送手段と接触する側の面に形成されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向中央部と搬送手段との間に、樹脂層が介在することになるので、ガラスフィルムの幅方向中央部に傷などの破損が生じ難くなるという利点がある。
【0027】
上記の方法において、前記切断工程で、前記樹脂層の幅方向両端面から両側方に離間した位置でガラスフィルムの幅方向両端部を切断して、切断後のガラスフィルムに前記樹脂層の幅方向両端面から食み出した食み出し部を形成し、前記巻取工程で、ガラスフィルムをロール状に巻き取る際に、ガラスフィルムの前記食み出し部を、前記樹脂層の幅方向両端面の側方空間を介して積層方向に離間させることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、ガラスロールの状態において、ガラスフィルムの食み出し部が、樹脂層の幅方向両端面の側方空間を介して積層方向に離間するため、ガラスフィルムを幾重に巻き取っても、ガラスフィルムの食み出し部が相互に圧接されることがない。したがって、切断面で構成される食み出し部の幅方向端面に過度な応力が作用することがなく、ガラスロールの状態でガラスフィルムが破損する事態を確実に低減することが可能となる。
【0029】
上記の方法において、ガラスフィルムが、フロート法又はダウンドロー法によって成形されたものであることが好ましい。なお、ダウンドロー法には、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法及びスロットダウンドロー法が含まれるものとする。
【0030】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向両端部に相対的に厚肉となる耳部が形成されるが、当該耳部は、上述のように、ガラスフィルムの幅方向中央部を樹脂層で保護すれば、問題なく切断除去することができる。したがって、耳部が形成されるというフロート法やダウンドロー法の欠点が問題なく解消されるので、これら2つの成形方法が有する短時間に大量のガラスフィルムを製造できるという利点を十分に発揮することができる。特に、ダウンドロー法に含まれるオーバーフローダウンドロー法で成形した場合には、当該利点に加えて、表面品位に優れたガラスフィルムを容易に成形できるという利点を享受し得るので好ましい。
【0031】
上記の方法において、前記切断工程前のガラスフィルムの幅方向中央部の厚みが、5〜300μmであることが好ましい。
【0032】
すなわち、ガラスフィルムの厚みは、5μm未満であると成形し難くなり、300μmを超えるとロール状に巻き取り難くなる。したがって、ガラスフィルムの厚みは、成形性と巻き取りの容易性を確保する観点からも、上記数値範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
以上のように本発明によれば、ガラスフィルムの幅方向両端部を除く幅方向中央部にのみ樹脂層が形成されるので、切断すべき幅方向両端部は樹脂層が形成されずにガラス面が露出した状態となる。そのため、ガラスフィルムの幅方向中央部を保護する樹脂層が、幅方向両端部の切断に悪影響を与えることがない。したがって、破損を来たし易いガラスフィルムのハンドリング性を樹脂層で向上させつつ、そのガラスフィルムの幅方向両端部の切断を容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラスロールの製造方法を体現するための製造装置を示す概略側面図である。
【図2】図1のA−A断面図であって、ガラスフィルムに樹脂層を形成した状態を示す図である。
【図3】図1のB−B断面図であって、ガラスロールの状態を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るガラスロールの製造方法を体現するための製造装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガラスロールの製造方法を体現するためのガラスロールの製造装置を示す概略側面図である。同図に示すように、この製造装置1は、オーバーフローダウンドロー法を実施するものであって、成形体2に溶融ガラスGmを供給すると共に、その溶融ガラスGmを成形体2から溢流させ且つ流下させつつ帯状のガラスフィルムGを製造するように構成されている。
【0037】
詳述すると、製造装置1は、成形体2の下方位置に次のような構成を上方から順に備えている。
【0038】
すなわち、成形体2の直下方には、成形体2から流下させたガラスフィルムGの幅方向両端部を表裏両側から挟持するエッジロール3が配置されており、このエッジロール3によってガラスフィルムGの幅方向に張力を付与して幅方向の収縮を防止している。
【0039】
エッジロール3の下方には、徐冷ゾーン4が設けられており、この徐冷ゾーン4中でガラスフィルムGが徐冷され、ガラスフィルムGから歪が取り除かれる。
【0040】
徐冷ゾーン4の下方には、樹脂層形成装置5が配置されている。この樹脂層形成装置5は、樹脂フィルム6が巻芯7の回りに巻回された樹脂フィルムロール8と、該樹脂フィルムロール8から樹脂フィルム6を引き出してガラスフィルムGに貼着する貼着ローラ9とを備えており、図2に示すように、耳部が形成されるガラスフィルムGの幅方向両端部(製品とならない非有効部)Gbを除外した幅方向中央部(製品となる厚みが一定の有効部)Gaにのみ樹脂フィルム6が貼着されるようになっている。なお、樹脂フィルム6は、ガラスフィルムGの有効部Gaから事後的に剥離可能に接着されていることが好ましい。
【0041】
樹脂フィルム6は、ガラスフィルムGの有効部Gaの表裏いずれか一方側の面に貼着されていればよいが、本実施形態では、ガラスフィルムGの有効部Gaの表裏両側の面に形成されるようになっている。なお、ガラスフィルムGの有効部Gaの表裏いずれか一方側の面にのみ樹脂フィルム6を貼着する場合には、後述する搬送ベルト12などの搬送手段が接触する側の面に樹脂フィルム6を貼着することが好ましい。
【0042】
樹脂層形成装置5によって、樹脂フィルム6が貼着されたガラスフィルムGは、変換ローラ10によって滑らかに湾曲して横方向に送られた後、切断装置11が配置された搬送ベルト12によって下方から支持される。
【0043】
切断装置11は、搬送ベルト12によって支持されたガラスフィルムGの非有効部Gbを切断するように構成されている。この切断装置11によるガラスフィルムGの非有効部Gbの切断方法は、曲げ応力による割断(例えば、スクライブ線を刻設して折り割る手法)であってもよいが、この実施形態では、熱応力を利用したレーザー割断が使用される。このようにレーザー割断を使用すると、オンラインでの切断が容易であり、且つ、切断面の強度を確保できるという利点がある。
【0044】
図2に示すように、切断装置11によるガラスフィルムGの非有効部Gbの切断位置Pは、ガラスフィルムGの有効部Gaに貼着された樹脂フィルム6の幅方向端面6aから幅方向外側方に僅かに離間した位置とされる。そのため、ガラスフィルムGの非有効部Gbを切断後に、ガラスフィルムGの有効部Gaの一部が、樹脂フィルム6の幅方向端面6aから食み出すようになっている。この有効部Gaの食み出し部の幅方向寸法は、例えば、10〜50mmとされる。
【0045】
そして、切断装置11によって切断されたガラスフィルムGの非有効部Gbは、下方に折り曲げられ、所定長さ毎に切断された後、自重で落下させて廃棄されるようになっている。一方、ガラスフィルムGの有効部Gaは、切断前と同様の姿勢で搬送ベルト12によって送られ、巻芯13の回りにロール状に順次巻回されて、ガラスロール14の状態で収容されるようになっている。
【0046】
以上のように構成されたガラスロール製造装置1によるガラスロールの製造手順を簡単に説明する。
【0047】
まず、図1に示すように、成形体2によって溶融ガラスGmからガラスフィルムGを成形する成形工程が行われた後、徐冷ゾーン4でガラスフィルムGから歪を取り除くアニール工程が行われる。
【0048】
次いで、アニール工程を経たガラスフィルムGには、樹脂層形成装置5によって樹脂フィルム6が貼着される保護処理工程が行われる。この保護処理工程では、図2に示すように、ガラスフィルムGの幅方向両端部の非有効部Gbを除く幅方向中央部の有効部Gaにのみ樹脂フィルム6が貼着される。このようにすれば、樹脂フィルム6により製品となる有効部Gaを確実に保護することができるので、ガラスフィルムGのハンドリング性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
ここで、本実施形態では、アニール工程以後に保護処理工程を実行するようになっているが、アニール工程中、すなわち、徐冷ゾーン4の中で保護処理工程を実行するようにしてもよい。なお、徐冷ゾーン4中で保護処理工程を実行する場合には、ガラスフィルムGの有効部Gaに貼着する樹脂フィルム6として、耐熱性を有するものを選択することが好ましい。
【0050】
保護処理工程で有効部Gaに樹脂フィルム6が貼着されたガラスフィルムGには、図1に示すように、切断装置11によって幅方向両端部の非有効部Gbを切断する切断工程が行われる。この際、保護処理工程において、ガラスフィルムGの有効部Gaにのみ樹脂フィルム6を貼着しているので、非有効部Gbには樹脂フィルム6が貼着されておらず、ガラス面が露出した状態となる。そのため、切断工程では、樹脂フィルム6とガラスフィルムGを同時に切断する必要はなく、ガラスフィルムGのみを切断すれば足りる。したがって、樹脂フィルム6でガラスフィルムGの有効部Gaを保護しつつ、ガラスフィルムGの非有効部Gbを簡単且つ確実に切断することができる。
【0051】
そして、このような切断工程を経た後、ガラスフィルムGの非有効部Gbは、下方に折り曲げられるとともに、所定長さに切断されて廃棄される。
【0052】
一方、非有効部Gbが切断除去されたガラスフィルムGの有効部Gaは、切断前と同じ姿勢のまま巻取工程へ送られるとともに、該巻取工程で巻芯13の回りにロール状に巻き取られ、ガラスロール14の状態で収容される。この際、必要に応じて、ガラスフィルムGの有効部Gaよりも幅広の緩衝材(例えば、紙や発泡樹脂製シート等)と、樹脂フィルム6が貼着されたガラスフィルムGの有効部Gaとを重ねた状態で巻き取って、ガラスロール14を製造するようにしてもよい。
【0053】
なお、ガラスフィルムGの有効部Gaを所定量まで巻き終えた場合には、樹脂層形成装置5による樹脂フィルム6の貼着を停止して、ガラスフィルムGの終端部のガラス面を幅方向に亘って露出させた後、当該露出部分を図示しない切断装置で幅方向に切断する。
【0054】
このようにして製造されたガラスロール14は、図3に示すように、巻芯13の回りに、幾重にも重ねられたガラスフィルムGの有効部Gaの相互間に、保護処理工程で貼着した樹脂フィルム6が介在した状態となる。したがって、樹脂フィルム6がスペーサとして機能し、ガラスフィルムGの有効部Ga同士が直接接触するのを防止することができる。
【0055】
また、同図に符号Xを付した拡大図に示すように、ガラスフィルムGの有効部Gaには、樹脂フィルム6の幅方向端面6aから幅方向外側方に食み出した食み出し部Ga1が形成されている。この食み出し部Ga1は、樹脂フィルム6の幅方向端面6aの側方空間Sを介して積層方向に相互に離間されている。そのため、ガラスフィルムGの有効部Gaを幾重に巻き取っても、食み出し部Ga1が相互に接触して圧接されることがない。したがって、切断面で構成される食み出し部Ga1の幅方向端面6aに過度な応力が作用することがなく、ガラスフィルムGの有効部Gaの破損の低減を確実に図ることが可能となる。
【0056】
図4は、本発明の第2実施形態に係るガラスロールの製造方法を体現するためのガラスロールの製造装置を示す概略側面図である。この第2実施形態に係る製造装置が、第1実施形態に係る製造装置と相違するところは、樹脂層形成装置5による樹脂層の形成方法にある。すなわち、第2実施形態に係る製造装置1の樹脂層形成装置5は、紫外線硬化樹脂15を供給するシートダイ16と、該シートダイ16によって供給される紫外線硬化樹脂15をガラスフィルムGの有効部Gaにのみ塗布する塗布ローラ17と、該塗布ローラ17によって塗布された紫外線硬化樹脂15を紫外線照射によって硬化させる紫外線照射装置18とを備えている。このようにすれば、予めフィルム状を呈さない樹脂からガラスフィルムGの有効部Gaに樹脂層を形成することができる。
【0057】
ここで、ガラスフィルムGの有効部Gaに樹脂層を形成する樹脂としては、紫外線硬化樹脂15に限られるものではなく、例えば、その他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などあってもよい。また、樹脂を塗布ローラ17で延伸して樹脂層を形成する代わりに、樹脂をスプレー塗布して樹脂層を形成するようにしてもよい。
【0058】
なお、上記の第1実施形態及び第2実施形態では、成形体2に連続するガラスフィルムGの耳部が形成された幅方向両端部Gbを切断する際に、ガラスフィルムGの有効部Gaのみに樹脂層を形成する場合を説明したが、ガラスロール14の状態で収容されたガラスフィルムGの幅方向寸法を調整するために、ロール・トゥ・ロール方式でガラスフィルムGの幅方向両端部(切断除去される非有効部)Gbを切断する場合にも同様に適用することができる。
【0059】
ガラスフィルムGは、無アルカリガラスであることが好ましい。ガラスフィルムGの厚みは、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmがより好ましく、20〜100μmが最も好ましい。これは、ガラスフィルムGの厚みが5μm未満であると成形性が悪化し、300μmを超えると可撓性が低下してロール状に巻き取り難くなるためである。
【0060】
樹脂フィルム6の樹脂原料は、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリアミド、セロファン、シリコーン樹脂等が利用できる。樹脂フィルム6の厚みは、3〜250μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。これは、樹脂フィルム6の厚みが3μm未満であると、ガラスフィルムGの保護効果が低減し、樹脂フィルム6の厚みが250μmを超えると、樹脂フィルム6の可撓性が悪化して、ガラスフィルムGに貼着したときにガラスフィルムGの可撓性を阻害するためである。
【符号の説明】
【0061】
1 製造装置
2 成形体
3 エッジロール
4 徐冷ゾーン
5 樹脂層形成装置
6 樹脂フィルム
11 切断装置
14 ガラスロール
G ガラスフィルム
Ga 有効部(幅方向中央部)
Ga1 食み出し部
Gb 非有効部(幅方向両端部)
Gm 溶融ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムの幅方向両端部を切断するガラスフィルムの切断方法であって、
ガラスフィルムの表裏面の少なくとも一方側の面の幅方向両端部を除く幅方向中央部にのみ樹脂層を形成した状態で、前記樹脂層が形成されていないガラスフィルムの幅方向両端部を切断することを特徴とするガラスフィルムの切断方法。
【請求項2】
ガラスフィルムの幅方向両端部を切断する切断工程と、該幅方向両端部を切断したガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールとする巻取工程とを備えたガラスロールの製造方法において、
前記切断工程の前に、ガラスフィルムの表裏面の少なくとも一方側の面の幅方向両端部を除く幅方向中央部にのみ樹脂層を形成する保護処理工程を設け、前記切断工程にて、ガラスフィルムの幅方向中央部を前記樹脂層で保護した状態で、前記樹脂層が形成されていないガラスフィルムの幅方向両端部を切断することを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層が、ガラスフィルムに樹脂フィルムを貼着することで形成されることを特徴とする請求項2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
長尺なガラスフィルムを連続的に搬送しながら、その搬送経路上で、前記保護処理工程、前記切断工程、及び前記巻取工程を含む工程を実行することを特徴とする請求項2又は3に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層が、ガラスフィルムの表裏面のうち、前記保護処理工程以後の搬送経路上に位置するガラスフィルム搬送手段と接触する側の面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記切断工程で、前記樹脂層の幅方向両端面から両側方に離間した位置でガラスフィルムの幅方向両端部を切断して、切断後のガラスフィルムに前記樹脂層の幅方向両端面から食み出した食み出し部を形成し、前記巻取工程で、ガラスフィルムをロール状に巻き取る際に、ガラスフィルムの前記食み出し部を、前記樹脂層の幅方向両端面の側方空間を介して積層方向に離間させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項7】
ガラスフィルムが、フロート法又はダウンドロー法によって成形されたものであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項8】
前記切断工程前のガラスフィルムの幅方向中央部の厚みが、5〜300μmであることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−207721(P2011−207721A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79021(P2010−79021)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】