説明

ガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体

【課題】軽量化を図りながら車外側及び車内側の両保持リップの不測の変形を抑制することができるガラスランチャンネルとそのガラスランチャンネル組立体を提供する。
【解決手段】ランチャンネル本体50は、基底部51と、車内側及び車外側の両側壁部52、53と、車内側及び車外側の両シールリップ62、65とを備える。車内側及び車外側の両側壁部52、53の外面には、窓枠20のラン装着部25に係合可能な車内側及び車外側の両保持リップ60、61が形成される。ランチャンネル本体50は、発泡された発泡ポリマー材料から形成される。車内側及び車外側の両保持リップ60、61の先端部分を含む少なくとも一部は、発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第2のポリマー材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両のフロントドアやリアドアに用いられるガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のフロントドアやリアドアに設けられる窓枠のラン装着部に装着されて窓板を昇降案内するガラスランチャンネルにおいては、その主体部をなすランチャンネル本体が、基底部と、車内側及び車外側の両側壁部と、窓板の両面にそれぞれ弾接可能な車内側及び車外側の両シールリップと、を備える。
また、車内側及び車外側の両側壁部の外面に、車体パネルに設けられた窓枠のラン装着部に係合可能な車外側保持リップと車内側保持リップとがそれぞれ形成された構造のものが知られている。
この種のガラスランチャンネルにおいて、軽量化を図るために、発泡ポリマー材料から形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ガラスランチャンネルは、押出成形によって形成されるのが一般的である。
また、二つのガラスランチャンネルの端部同士を接続体を介して一体連続状に接続するために、二つのガラスランチャンネルの端部同士を射出成形の成形型内にセットした後、成形型内に熱可塑性材料を射出して接続体を形成する。そして、接続体を形成すると同時にガラスランチャンネルの端部同士を接続体を介して接続し、ガラスランチャンネル組立体を製造する場合がある。
また、一つのガラスランチャンネルの端末部を成形型内にセットした後、成形型内に熱可塑性材料を射出してそのガラスランチャンネルの端末部に他部材を形成する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−120048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡ポリマー材料の押出成形品であるガラスランチャンネルは、非発泡のガラスランチャンネルに比べて軽量化の点で優れる反面、剛性の点で弱く劣る。
特に、車外側保持リップや車内側保持リップは他の部分と比べて肉厚が薄く形成されるため、これら車外側保持リップや車内側保持リップが他の部分と比べて変形しやすい。
例えば、図8に示すように、発泡ポリマー材料のガラスランチャンネル431の端部435を射出成形の成形型500、501内にセットした後、成形型500、501内に熱可塑性ポリマー材料442を射出して接続体(又は他部材)441を形成する際、ガラスランチャンネル431の端部435の車外側及び車内側保持リップ460、461が射出された熱可塑性ポリマー材料442の材料流圧を受けて不測に変形する場合がある。
この場合、図7に示すように、ガラスランチャンネル431の端部435の車外側及び車内側保持リップ460、461の端部460a、461aが変形したままの状態で接続体(又は他部材)441の端部441aに接合されることとなる。このため、車外側及び車内側保持リップ460、461の端部460a、461aと接続体(又は他部材)441の端部441aとの接合部分で剥がれたり、あるいはドアパネルの窓枠に対する係合力が低下したりする等の不具合が発生する恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、軽量化を図りながら車外側及び車内側の両保持リップの不測の変形を抑制することができるガラスランチャンネル及びガラスランチャンネル組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るガラスランチャンネルは、車両用ドアの窓枠のラン装着部に装着されて窓板の昇降動を案内する長尺状でポリマー材料からなるガラスランチャンネルであって、
前記ガラスランチャンネルの主体部をなすランチャンネル本体は、前記窓板の端面と対向する位置に設けられる基底部と、
前記基底部の幅方向両端からそれぞれ立ち上がる車内側及び車外側の両側壁部と、
前記両側壁部の開口側先端から前記基底部に向けてそれぞれ突出しかつ前記窓板の両面にそれぞれ弾接可能な車内側及び車外側の両シールリップと、
を備え、
前記車内側及び車外側の両側壁部の外面には、前記両側壁部から遠ざかる方向へそれぞれ突出して前記窓枠のラン装着部に係合可能な車内側及び車外側の両保持リップが形成され、
前記基底部と前記両側壁部とのうち、少なくとも一つの部分は、発泡された発泡ポリマー材料から形成され、
前記車内側及び車外側の両保持リップの先端部分を含む少なくとも一部は、前記発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第2のポリマー材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、ガラスランチャンネルの主体部をなすランチャンネル本体が発泡ポリマー材料から形成されているので、非発泡のポリマー材料から形成される場合と比べ軽量化を良好に図ることができる。
また、車内側及び車外側の両保持リップの先端部分を含む少なくとも一部は、第2のポリマー材料(発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していないポリマー材料)で形成される。このため、車内側及び車外側の両保持リップが発泡ポリマー材料から形成される場合と比べ所望とする形状に形成しやすくなる。
また、車内側及び車外側の両保持リップの先端部分を含む少なくとも一部は、第2のポリマー材料から形成されて剛性が高くなっている。このため、例えば前述の接続体を射出成形する際等でも車内側及び車外側の両保持リップの不測の変形を抑制することができる。
【0008】
請求項2に係るガラスランチャンネルは、請求項1に記載のガラスランチャンネルであって、
発泡ポリマー材料からなるランチャンネル本体は、発泡倍率が1.20〜1.80であることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、請求項1に記載の発明の効果に加え、ランチャンネル本体の発泡倍率を1.20〜1.80とすることによって軽量化の効果が大きい。
【0010】
請求項3に係るガラスランチャンネルは、請求項1又は2に記載のガラスランチャンネルであって、
車内側及び車外側の両保持リップのうち、少なくとも一方の全体が第2のポリマー材料で形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、第2のポリマー材料で全体が形成された保持リップはさらに剛性が高く不測の変形が生じ難くなる。
【0012】
請求項4に係るガラスランチャンネルは、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスランチャンネルであって、
両車内側及び車外側の両側壁部の開口側先端から車内側及び車外側の両シールリップとは逆に向けて突出する車内側及び車外側の両装飾部を有し、
前記車内側及び車外側の両装飾部のうち、少なくとも一方の装飾部の先端を含む部分は、ランチャンネル本体を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第3のポリマー材料で形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によると、請求項1〜3のいずれか一項の発明の効果に加え、車内側及び車外側の両装飾部のうち、少なくとも一方の装飾部の先端を含む部分は、第3のポリマー材料(発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していないポリマー材料)で形成されている。
このため、車内側及び車外側の両装飾部が発泡ポリマー材料から形成される場合と比べ所望とする形状に形成しやすくなる。
また、車内側及び車外側の両装飾部のうち、少なくとも一方の装飾部の先端を含む部分は、第3のポリマー材料から形成されて剛性が高くなっている。このため、車内側及び車外側の両装飾部の不測の変形を抑制することができる。
【0014】
請求項5に係るガラスランチャンネルは、請求項4に記載のガラスランチャンネルであって、
第2のポリマー材料と、第3のポリマー材料とは、同じポリマー材料であることを特徴とする。
【0015】
前記構成によると、請求項4に記載の発明の効果に加え、第2のポリマー材料と、第3のポリマー材料とは、同じポリマー材料であるから材料管理がしやすくなり、製造コストの低減に効果が大きい。
【0016】
請求項6に係るガラスランチャンネルは、請求項4に記載のガラスランチャンネルであって、
車内側及び車外側の両シールリップの窓板と接触する部位には、発泡ポリマー材料、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料よりも窓板やドアパネルに対する動摩擦係数が小さい低摩擦材料からなる車内側及び車外側の両低摩擦層がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0017】
前記構成によると、請求項4に記載の発明の効果に加え、車内側及び車外側の両シールリップの窓板と接触する部位に形成された低摩擦層によって、窓板の昇降時の摩擦力を低減することができる。この結果、窓板の昇降動作が円滑化する。
【0018】
請求項7に係るガラスランチャンネル組立体は、請求項1に記載のガラスランチャンネルが少なくとも二つ用いられ、
前記ガラスランチャンネル同士が接続体によって一体連続状に接合されて構成されていることを特徴とする。
【0019】
前記構成によると、少なくとも二つのガラスランチャンネル同士を接続体によって一体連続状に接合することによって、所望とする形状及び長さのガラスランチャンネル組立体が容易に得られる。
また、少なくとも二つのガラスランチャンネルの対向する端面の間に、接続体を射出成形することによって、各端面を強固に接合することも可能である。
また、車内側及び車外側の両保持リップの先端部分を含む少なくとも一部は、第2のポリマー材料から形成されて剛性が高くなっている。このため、車内側及び車外側の両保持リップの不測の変形を抑制することができる。
この結果、ガラスランチャンネルの端部を射出成形の成形型内にセットした後、成形型内に熱可塑性ポリマー材料を射出して接続体を形成する際、ガラスランチャンネルの端部の車内側及び車外側の両保持リップが熱可塑性ポリマー材料の材料流圧を受けて不測に変形する不具合を抑制することができる。ひいては、ガラスランチャンネルの対向する端面を接続体を介して良好に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例1に係るガラスランチャンネルを用いたガラスランチャンネル組立体がフロントドアの窓枠とリアドアの窓枠にそれぞれ装着された状態を簡略化して示す側面図である。
【図2】同じくガラスランチャンネル組立体を示す側面図である。
【図3】同じく図1のIII−III線に沿うガラスランチャンネルの横断面図である。
【図4】この発明の実施例2に係るガラスランチャンネルの横断面図である。
【図5】車内側保持リップの先端側表面に第2のポリマー材料で層状の補強層が形成された実施態様を示す説明図である。
【図6】車内側保持リップの先端部全体が第2のポリマー材料で形成されて補強された実施態様を示す説明図である。
【図7】従来の発泡ポリマー材料から形成されたガラスランチャンネルの車外側あるいは車内側保持リップの端部が変形したままの状態で接続体の端部に接合されたガラスランチャンネル組立体を示す斜視図である。
【図8】同じく射出成形の成形型内にセットされた発泡ポリマー材料製のガラスランチャンネルの端部の保持リップが材料流圧を受けて変形された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0022】
この発明の実施例1を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、車両用ドアとしてのフロントドア10を形成するドアパネル12には窓枠20が一体に形成されている。
窓枠20には、ドアパネル12を構成するアウターパネル13及びインナーパネル14によって開口側が狭く奥側が広い段差状をなすラン装着部25が形成されている(図3参照)。
【0023】
図1と図2に示すように、車両用ドアとしてのフロントドア10の窓枠20に装着されて窓板15の昇降動を案内するための長尺状でポリマー材料(熱可塑性エラストマー材料)からなる前側のガラスランチャンネル組立体30は、押出成形によって長尺状に形成された第1〜第4のガラスランチャンネル31、32、33、34と、射出成形によって形成された第1〜第3の接続体41、42、43と、を有している。
【0024】
第1のガラスランチャンネル31は、フロントドア10の上辺部及び前斜辺部に沿って装着される。
第1のガラスランチャンネル31の後端には、第1接続体(コーナ接続体)41によって第2のガラスランチャンネル32の上端が連結されている。第2のガラスランチャンネル32は、フロントドア10の後縦辺部に沿って装着される。
また、第1のガラスランチャンネル31の前端には、第2接続体(コーナ接続体)42によって第3のガラスランチャンネル33の上端が連結されている。第3のガラスランチャンネル33は、フロントドア10の前クオーターウインドウの後縁からドア内にわたる前縦枠部に沿って装着される。
また、第2のガラスランチャンネル32の下端はドア内に位置し、この下端には、第3接続体43によって第4のガラスランチャンネル34の上端が連結されている。第4のガラスランチャンネル34は、ドア内の後縦枠部に沿って装着される。
【0025】
前側のガラスランチャンネル組立体30を構成する第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34のうち、第1のガラスランチャンネル31は、図3に示すような断面形状をもつ押出成形品によって構成される。
第1ガラスランチャンネル31の主体部をなすランチャンネル本体50は、窓板15の端面と対向する位置に設けられる基底部51と、この基底部51の幅方向両端からそれぞれ立ち上りかつ窓板15の周縁部が昇降動可能な溝を構成する車外側の側壁部52と、車内側の側壁部53とを有する。また、ランチャンネル本体50は、両側壁部52、53の開口側先端の車外側連結部56及び車内側連結部57から基底部51に向けてそれぞれ突出し、かつ窓板15の両面にそれぞれ弾接可能な車外側シールリップ62及び車内側シールリップ65を有している。
さらに、ランチャンネル本体50は、その両側壁部52、53の開口側先端の車外側及び車内側の両連結部56、57から車外側及び車内側の両シールリップ62、65とは反対側に向けて突出しかつ両側壁部52、53に沿ってそれぞれ折返し状に形成された車外側装飾部67及び車内側装飾部68を備えている。
すなわち、車外側装飾部67と車外側シールリップ62との間、及び車内側装飾部68と車内側シールリップ65との間がそれぞれ車外側連結部56及び車内側連結部57で連結されている。
なお、各装飾部67、68及び各シールリップ62、65には、変位するときに変形の中心となる屈曲点(典型的には根元部近傍において最も薄い部分)がある。各連結部56、57は、各屈曲点を境界として各装飾部67、68及び各シールリップ62、65と一体化されている。
【0026】
また、ランチャンネル本体50は、発泡された発泡ポリマー材料から形成されている。
さらに、ランチャンネル本体50は、発泡倍率が1.20〜1.80であることが軽量化や充分な強度確保のために望ましい。
また、ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料には、熱可塑性エラストマー材料100重量部に対して熱膨張性カプセルが0.5〜2.0重量部配合されることが望ましい。
さらに、ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料には、熱可塑性エラストマー材料100重量部に対して熱膨張性カプセルが1.0重量部配合されることがより一層望ましい。
また、ランチャンネル本体50は、その内部の発泡セルが外気と連通していない独立気泡となっていることが望ましく、さらに、ランチャンネル本体50の内部の発泡セル同士が連通していない独立気泡となっていることがより一層望ましい。
また、ランチャンネル本体50は、比重が0.50〜0.80であることが望ましく、比重が0.55〜0.75であることがより一層望ましく、比重が0.65であることがさらに望ましい。
【0027】
また、ランチャンネル本体50の主成分となる熱可塑性エラストマー材料としては、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)と、PP(ポリプロピレン)とが混合され、これに可塑剤、着色剤等の添加物が配合されたものが用いられる。
また、熱膨張性カプセルは、例えば、熱膨張性マイクロカプセル(積水化学工業株式会社製、商品名アドバンセル、平均粒径22μm〜32μm、膨張開始温度160℃〜180℃、共に、カタログ値)が用いられる。
【0028】
図3に示すように、ランチャンネル本体50の車外側の側壁部52及び車内側の側壁部53の基底部51側の外面には、これら両側壁部52、53から遠ざかる方向へそれぞれ傾斜状して突出するリップ形状の車外側保持リップ60と車内側保持リップ61とが形成されている。そして、これら車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61は、窓枠20の車外側段差部13aと、車内側段差部14aにそれぞれ弾性的に係合して抜け止めをなす。
【0029】
また、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の先端部分を含む少なくとも一部は、ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料と同材質又は相溶性を有しかつ発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第2のポリマー材料で形成されている。
この実施例1においては、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61のそれぞれの全体が第2のポリマー材料で形成されている。
また、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61は、ランチャンネル本体50の押出成形と同時に共押出(二色成形)によって形成されている。
【0030】
また、ランチャンネル本体50において、車外側装飾部67の先端部から車外側の連結部56までの表面、及び車内側装飾部68の先端部から車内側の連結部57までの表面には、これら両表面をそれぞれ覆う車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aが形成されている。
車外側装飾部67の車外側被覆層67a及び車内側装飾部68の車内側被覆層68aは、ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第3のポリマー材料で形成されている。
また、この実施例1において、車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aは、車外側装飾部67及び車内側装飾部68の先端部を越えて裏面に折返し状に延びて形成されている。
また、車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aは、それぞれ車外側装飾部67及び車内側装飾部68から車外側の連結部56及び車内側の連結部57の表面の途中まで被覆していても良いが、各連結部56、57の全面を被覆していることが好ましい。
【0031】
また、この実施例1において、車外側シールリップ62及び車内側シールリップ65の窓板15に接触するそれぞれの面には、車外側及び車内側の両低摩擦層63、66が形成されている。両低摩擦層63、66は、ランチャンネル本体50と同材質又は相溶性を有しかつ発泡ポリマー材料(ランチャンネル本体50)、第2のポリマー材料(車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61)及び第3のポリマー材料(車外側被覆層67a及び車内側被覆層68a)よりも窓板15やドアパネル12に対する動摩擦係数が小さい低摩擦材料(熱可塑性エラストマー材料又は熱可塑性樹脂材料)からランチャンネル本体50の押出成形と同時に共押出によって形成されている。
また、車外側及び車内側の両低摩擦層63、66は、車外側及び車内側の両被覆層67a、68aと連続していることが望ましい。
なお、図3及び図4では、車外側及び車内側の両低摩擦層63、66と、車外側及び車内側の両被覆層67a、68aとの境界部分を明確化するために各層の厚さに差を設けて強調して表示している。
【0032】
また、この実施例1において、ランチャンネル本体50の車外側の側壁部52及び車内側の側壁部53の対向面及び基底部51の底面にもランチャンネル本体50よりも動摩擦係数が小さい低摩擦材料からなる低摩擦層52a、53a、51aがランチャンネル本体50の押出成形と同時に共押出(二色成形)によって形成されている。
【0033】
また、前側のガラスランチャンネル組立体30を構成する第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34のうち、第2、第3、第4の各ガラスランチャンネル32、33、34の主体部をなすランチャンネル本体は、横断面形状が異なる以外は、第1のガラスランチャンネル31の主体部をなすランチャンネル本体50と同様に構成される。
すなわち、第2、第3、第4の各ガラスランチャンネル32、33、34の主体部をなすランチャンネル本体も、熱可塑性エラストマー材料と熱膨張性カプセルとを含む発泡ポリマー材料から形成されると共に、熱膨張性カプセルの発泡膨張によって形成された無数の発泡セルを有している。
なお、第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34のうち、2以上のガラスランチャンネル、例えば、第2のガラスランチャンネル32と、第3のガラスランチャンネル33とが同じ横断面形状を有していてもよい。
【0034】
また、図1と図2に示すように、車両用ドアとしてのリアドア110の窓枠120に装着されて窓板115の昇降動を案内するための長尺状でポリマー材料(熱可塑性エラストマー材料)からなる後側のガラスランチャンネル組立体130は、押出成形によって長尺状に形成された第1〜5のガラスランチャンネル131、132、133、134、135と、射出成形によって形成された第1〜第4の接続体141、142、143、144と、を有している。
【0035】
第1のガラスランチャンネル131は、リアドア110の上辺部に沿って装着される。
第1のガラスランチャンネル131の後端には、第1接続体(コーナ接続体)141によって第2のガラスランチャンネル132の上端が連結されている。第2のガラスランチャンネル132は、リアドア110の後クオーターウインドウの後縁に沿って装着される。
また、第1のガラスランチャンネル131の前端には、第2接続体(コーナ接続体)142によって第3のガラスランチャンネル133の上端が連結されている。第3のガラスランチャンネル133は、リアドア110の前縦辺部に沿って装着される。
また、第2のガラスランチャンネル132の下端には、第3接続体143によって第4のガラスランチャンネル134の上端が連結されている。第4のガラスランチャンネル134は、ドア内の後縦枠部に沿って装着される。さらに、第3のガラスランチャンネル133の下端には、第4接続体144によって第5のガラスランチャンネル135の上端が連結されている。第5のガラスランチャンネル135は、ドア内の前縦枠部に沿って装着される。
【0036】
そして、この実施例1では、後側のガラスランチャンネル組立体130を構成する第1〜第5のガラスランチャンネル31〜35のうち、第1のガラスランチャンネル131は、前側のガラスランチャンネル組立体30の第1のガラスランチャンネル31と同一構造に形成されている(図3参照)。
また、後側のガラスランチャンネル組立体130を構成する第2〜第5のガラスランチャンネル132〜135の主体部をなすランチャンネル本体は、横断面形状が異なる以外は、第1のガラスランチャンネル131の主体部をなすランチャンネル本体と同様に構成される。
【0037】
この実施例1に係るガラスランチャンネルは上述したように構成される。
したがって、前側のガラスランチャンネル組立体30を構成する第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34及び後側のガラスランチャンネル組立体130を構成する第1〜第5のガラスランチャンネル131〜135の主体部をなすランチャンネル本体50が、熱可塑性エラストマー材料と熱膨張性カプセルとを含む発泡ポリマー材料から形成されるため、ゴム製のガラスランチャンネルと比較して軽量化を良好に図ることができる。
【0038】
また、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の先端部分を含む少なくとも一部は、第2のポリマー材料(ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していないポリマー材料)で形成される。
このため、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61が発泡ポリマー材料から形成される場合と比べ所望とする形状に形成しやすくなる。
また、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の先端部分を含む少なくとも一部は、第2のポリマー材料から形成されて剛性が高くなっている。このため、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の不測の変形を抑制することができる。
【0039】
また、第2のポリマー材料で車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の全体が形成される場合には、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61はさらに剛性が高くなり不測の変形がより生じ難くなる。
また、ランチャンネル本体50の発泡倍率を1.20〜1.80とすることによって軽量化の効果が大きい。
【0040】
また、上述したように、車外側装飾部67及び車内側装飾部68のうち、少なくとも一方の装飾部(この実施例1では両装飾部67、68)の先端を含む部分は、第3のポリマー材料(ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していないポリマー材料)で形成される。
すなわち、この実施例1においては、車外側装飾部67の先端部から車外側の連結部56までの表面、及び車内側装飾部68の先端部から車内側の連結部57までの表面に、これら両表面をそれぞれ覆う第3のポリマー材料から形成された車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aが設けられている。
このため、車外側装飾部67及び車内側装飾部68の全体が発泡ポリマー材料から形成される場合と比べ所望とする形状に形成しやすくなる。
また、車外側装飾部67及び車内側装飾部68は車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aによって剛性が高くなっているため、車外側装飾部67及び車内側装飾部68の不測の変形を抑制することができる。
【0041】
また、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61を形成する第2のポリマー材料と、車外側被覆層67a及び車内側被覆層68aを形成する第3のポリマー材料とは、同じポリマー材料にすることによって材料管理がしやすくなり、製造コストの低減に効果が大きい。
【0042】
また、この実施例1においては、上述したように、車外側シールリップ62及び車内側シールリップ65の窓板15に接触するそれぞれの面に、発泡ポリマー材料、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料よりも窓板15やドアパネル12に対する動摩擦係数が小さい低摩擦材料からなる車外側及び車内側の両低摩擦層63、66が形成されている。
そして、車外側及び車内側の両低摩擦層63、66によって、窓板15の昇降時の摩擦力を低減することができる。この結果、窓板15の昇降動作が円滑化する。
【0043】
また、この実施例1において、第2又は第3のポリマー材料は、ランチャンネル本体50を形成する発泡ポリマー材料よりも剛性が高く、ランチャンネル本体50の長手方向に沿って層や突条を形成している。これによって、ガラスランチャンネル組立体30の長手方向における剛性(曲がり難さ、直線性)を確保することができ、運搬作業や窓枠への取り付け作業等が容易となる。
【0044】
また、第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34同士を第1〜第3の接続体41〜43によって一体連続状に接合することによって、所望とする形状及び長さのガラスランチャンネル組立体30が容易に得られる。
また、第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34の対向する端面の間に、第1〜第3の接続体41〜43を射出成形することによって、各端面を強固に接合することも可能である。
【0045】
また、第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34の対向する端面を第1〜第3の接続体41〜43を射出成形して接続する際、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61が第2のポリマー材料から形成されて剛性が高くなっているため、車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61の不測の変形を抑制することができる。
すなわち、第1〜第4のガラスランチャンネル31〜34のうちの二つのガラスランチャンネル、例えば第1のガラスランチャンネル31と第2のガラスランチャンネル32との端部を射出成形の成形型内にセットした後、成形型内に熱可塑性ポリマー材料を射出して第1接続体41を形成する際、第1、第2のガラスランチャンネル31、32の端部の車外側保持リップ60及び車内側保持リップ61が熱可塑性ポリマー材料の材料流圧を受けて不測に変形する不具合を抑制することができる。ひいては、第1、第2のガラスランチャンネル31、32の対向する端面を第1接続体41を介して良好に接続することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、この発明の実施例2を図4にしたがって説明する。
図4に示すように、この実施例2においては、窓枠がサッシ形式の窓枠サッシによって形成される場合を例示するものであり、窓枠を構成する窓枠サッシ220は、車両用開閉ドア(フロントドア、リアドア等)のドアパネルとは別体に形成されて同ドアパネルに固着される。この窓枠サッシ220には、ラン装着凹部225が形成されている。
【0047】
ガラスランチャンネル組立体を構成する複数のガラスランチャンネルの一つであるガラスランチャンネル231は、実施例1と同様に、その主体部をなすランチャンネル本体250を有し、このランチャンネル本体250は、窓板(図示しない)の端面と対向する位置に設けられる基底部251と、車外側の側壁部252と、車内側の側壁部253と、これら両側壁部252、253の開口側先端の頂部連結部256、257から基底部251に向けてそれぞれ突出し、かつ窓板の両面に弾接可能な車外側シールリップ262と、車内側シールリップ265と、を有している。
【0048】
また、この実施例2においても、実施例1と同様にして、車外側保持リップ260及び車内側保持リップ261の先端部分を含む少なくとも一部(図4では各保持リップ全体)が、ランチャンネル本体250を形成する発泡ポリマー材料と同材質又は相溶性を有しかつ発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第2のポリマー材料で形成されている。
さらに、ランチャンネル本体250は、その両側壁部252、253の開口側先端の頂部連結部256、257から車外側及び車内側の両シールリップ262、265とは反対側に向けて突出して形成された車外側装飾部267及び車内側装飾部268と、を備えている。
【0049】
また、ランチャンネル本体250において、実施例1と同様にして車外側装飾部267の先端部から車外側の連結部256までの表面、及び車内側装飾部268の先端部から車内側の連結部257までの表面には、これら両表面をそれぞれ覆う車外側被覆層267a及び車内側被覆層268aが形成されている。
車外側装飾部267の車外側被覆層267a及び車内側装飾部268の車内側被覆層268aは、ランチャンネル本体250を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第3のポリマー材料で形成されている。
また、この実施例2においても、車外側被覆層267a及び車内側被覆層268a、車外側装飾部267及び車内側装飾部268の先端部を越えて裏面に折返し状に延びて形成されている。
【0050】
また、実施例1と同様、第2のポリマー材料と第3のポリマー材料とは、同じポリマー材料であることが材料管理等において望ましい。
【0051】
また、この実施例2においても、車外側及び車内側の両シールリップ262、265の窓板に接触するそれぞれの面には、ランチャンネル本体250と同材質又は相溶性を有しかつ発泡ポリマー材料(ランチャンネル本体250)、第2のポリマー材料(車外側保持リップ260及び車内側保持リップ261)及び第3のポリマー材料(車外側被覆層267a及び車内側被覆層268a)よりも窓板やドアパネルに対する動摩擦係数が小さい低摩擦材料からなる車外側及び車内側の両低摩擦層263、266がランチャンネル本体250の押出成形と同時に共押出によって形成されている。
また、車外側及び車内側の両低摩擦層263、266は、車外側及び車内側の両被覆層267a、268aと連続していることが望ましい。
さらに、両側壁部252、253の対向面及び基底部251の底面に対してもランチャンネル本体250よりも動摩擦係数の小さい低摩擦材料からなる低摩擦層252a、253a、251aがランチャンネル本体250の押出成形と同時に共押出によって形成されている。
さらに、基底部251の底外面には、ラン装着凹部225の底面に接触し、かつランチャンネル本体250よりも静摩擦係数の大きい非発泡(ソリッド)材料からなる高摩擦層269がランチャンネル本体250の押出成形と同時に共押出によって形成されている。
【0052】
また、ランチャンネル本体250は、実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー材料と熱膨張性カプセルとを含む発泡ポリマー材料から形成されると共に、熱膨張性カプセルの発泡膨張によって形成された無数の発泡セルを有している。
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様に構成されるため、その説明は省略する。
したがって、この実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0053】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することもできる。例えば、前記実施例1(実施例2)においては、車外側保持リップ60(260)及び車内側保持リップ61(261)のそれぞれの全体が第2のポリマー材料で形成される場合を例示したが、図5に示すように、車外側保持リップ60’(260’)の長さの1/2程度の先端側部分に第2のポリマー材料で層状の補強層60’aを形成して車外側保持リップ60’(260’)を補強してもよい。また、車内側保持リップにおいても同様である。
また、図6に示すように、車外側保持リップ60’(260’)の長さの1/2程度の先端側部分全体を第2のポリマー材料で形成し補強部60’b(260’b)を形成して車外側保持リップ60’(260’)を補強してもよい。また、車内側保持リップにおいても同様である。
【符号の説明】
【0054】
10 フロントドア(車両用ドア)
15 窓板
20 窓枠
31 第1のガラスランチャンネル(ガラスランチャンネル)
32 第2のガラスランチャンネル(ガラスランチャンネル)
33 第3のガラスランチャンネル(ガラスランチャンネル)
34 第4のガラスランチャンネル(ガラスランチャンネル)
41 第1接続体(接続体)
42 第2接続体(接続体)
43 第3接続体(接続体)
50 ランチャンネル本体
51 基底部
52 車外側の側壁部
53 車内側の側壁部
60 車外側保持リップ
61 車内側保持リップ
62 車外側シールリップ
65 車内側シールリップ
67 車外側装飾部
67a 車外側被覆層
68 車内側装飾部
68a 車内側被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの窓枠のラン装着部に装着されて窓板の昇降動を案内する長尺状でポリマー材料からなるガラスランチャンネルであって、
前記ガラスランチャンネルの主体部をなすランチャンネル本体は、前記窓板の端面と対向する位置に設けられる基底部と、
前記基底部の幅方向両端からそれぞれ立ち上がる車内側及び車外側の両側壁部と、
前記両側壁部の開口側先端から前記基底部に向けてそれぞれ突出しかつ前記窓板の両面にそれぞれ弾接可能な車内側及び車外側の両シールリップと、
を備え、
前記車内側及び車外側の両側壁部の外面には、前記両側壁部から遠ざかる方向へそれぞれ突出して前記窓枠のラン装着部に係合可能な車内側及び車外側の両保持リップが形成され、
前記基底部と前記両側壁部とのうち、少なくとも一つの部分は、発泡された発泡ポリマー材料から形成され、
前記車内側及び車外側の両保持リップの先端部分を含む少なくとも一部は、前記発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第2のポリマー材料で形成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスランチャンネルであって、
発泡ポリマー材料からなるランチャンネル本体は、発泡倍率が1.20〜1.80であることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラスランチャンネルであって、
車内側及び車外側の両保持リップのうち、少なくとも一方の全体が第2のポリマー材料で形成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスランチャンネルであって、
車内側及び車外側の両側壁部の開口側先端から車内側及び車外側の両シールリップとは逆に向けて突出する車内側及び車外側の両装飾部を有し、
前記車内側及び車外側の両装飾部のうち、少なくとも一方の装飾部の先端を含む部分は、ランチャンネル本体を形成する発泡ポリマー材料よりも発泡倍率が小さいか又は発泡していない第3のポリマー材料で形成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項5】
請求項4に記載のガラスランチャンネルであって、
第2のポリマー材料と、第3のポリマー材料とは、同じポリマー材料であることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項6】
請求項4に記載のガラスランチャンネルであって、
車内側及び車外側の両シールリップの窓板と接触する部位には、発泡ポリマー材料、第2のポリマー材料及び第3のポリマー材料よりも窓板やドアパネルに対する摩擦係数が小さい低摩擦材料からなる車内側及び車外側の両低摩擦層がそれぞれ形成されていることを特徴とするガラスランチャンネル。
【請求項7】
請求項1に記載のガラスランチャンネルが少なくとも二つ用いられ、
前記ガラスランチャンネル同士が接続体によって一体連続状に接合されて構成されていることを特徴とするガラスランチャンネル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−25376(P2012−25376A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293108(P2010−293108)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】