説明

ガラス基材プリプレグの製造方法及びガラス基材プリプレグ

【課題】 プリプレグの性能および積層板の外観に影響を与えず,シワのないガラス基材プリプレグの製造方法及びガラス基材プリプレグを提供すること。
【解決の手段】 積層成形後に厚みが0.05mm以下となるガラスクロスまたはガラスペーパーに樹脂を含浸し,その後,樹脂がBステージ(半硬化)に至るまで加熱乾燥するガラス基材プリプレグの製造方法において,加熱乾燥後にプリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より,20〜40℃低い温度となる様に設定したヒートロールまたは加熱ゾーンを配置し,接触または通過させ,ロール通過時に発生するプリプレグのシワを防止することを特徴とするガラス基材プリプレグの製造方法及びガラス基材プリプレグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子機器,電機機器,コンピュータ・通信機器等に用いられる積層板用プリプレグおよびガラス基材プリプレグの製造方法とその方法によって製造されるガラス基材プリプレグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ガラス基材プリプレグの製造は,ガラスクロスまたはガラスペーパーを樹脂ワニス中に通過させ,樹脂を基材に含浸させた後,乾燥炉内を通過させ,樹脂をBステージ(半硬化)状態にしている。この様な工程を経て製造されるプリプレグのシワ発生防止については,強制的にシワを伸ばすための弓型をしたエキスパンダーロール等の使用が広く知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プリント配線板の高多層化が進むにつれ,基材厚0.05mm以下の薄い銅張積層板や多層化接着用プリプレグが要求される。
積層成形後に厚さ0.05mm以下となる薄いガラスクロスまたはガラスペーパーを用い,プリプレグを塗工工程で製造する場合,樹脂含浸後の乾燥工程で樹脂の硬化が進み収縮が発生すると同時に,樹脂含浸後のプリプレグの自重により,ガラスクロスまたはガラスペーパーにテンションがかかり,基材が伸びやすく,蛇行が発生しやすい。
【0004】
また多層化接着用プリプレグは,内層回路のない銅箔エッチング部分を樹脂で埋め込むため,特に薄いプリプレグは,絶縁信頼性の観点から樹脂分60〜90%の高樹脂分で使用されることが多く,樹脂を含浸し,樹脂を加熱乾燥したプリプレグ中のガラスクロスやガラスペーパーは樹脂に拘束されやすい。
そのため,蛇行が発生した際,位置修正のために設置されているEPC(Edge Positioning Control)ロールで位置決め修正されるが,ガラス基材が樹脂に拘束されているため,EPCロールの前に設置されているロールとの接触時にシワが発生する課題がある。
【0005】
本発明は,シワのないプリプレグの製造方法とその方法によって製造されたプリプレグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の発明に関する。
<1> 積層成形後に厚みが0.05mm以下となるガラスクロスまたはガラスペーパーに樹脂を含浸し,その後,樹脂がBステージ(半硬化)に至るまで加熱乾燥するガラス基材プリプレグの製造方法において,加熱乾燥後にプリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より,20〜40℃低い温度となる様に設定したヒートロールまたは加熱ゾーンを配置し,接触または通過させ,ロール通過時に発生するプリプレグのシワを防止することを特徴とするガラス基材プリプレグの製造方法。
<2> <1>記載のガラス基材プリプレグの製造方法において,加熱乾燥後にプリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より,20〜40℃低い温度となる様に設定したヒートロールまたは加熱ゾーンを複数箇所に配置し,接触または通過させ,ロール通過時に発生するプリプレグのシワを防止することを特徴とするガラス基材プリプレグの製造方法。
<3> <1>または<2>に記載のガラス基材プリプレグの製造方法によって製造されたガラス基材プリプレグ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって,プリプレグの性能および積層板の外観に影響を与えず,シワのないプリプレグを製造する方法とその方法によって製造されたプリプレグを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のガラス基材プリプレグの製造方法は,基材へ樹脂を含浸,加熱乾燥させた後,ヒートロールまたは加熱ゾーンをEPCロールよりも前の位置に配置して,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度の直前まで加熱し軟化させ,樹脂によるガラス基材への拘束力を低減し,ロール通過時に発生するシワを防止することを特徴とする。
【0009】
プリプレグに用いる樹脂は,通常ガラス基材積層板製造に用いられる樹脂を適宜使用することができる。
【0010】
ガラス基材は,通常ガラス基材積層板製造に用いられるガラスクロス,ガラスペーパー等を使用することができる。
【0011】
プリプレグの加熱温度は,ロール通過時に発生するシワ防止の観点から樹脂の粘度が最も低くなる温度に達するまで加熱するのが望ましいが,樹脂硬化が進み,樹脂流れが小さくなる,硬化時間が短くなる,樹脂がロールに転写し粘着が発生する,積層板および多層化成形時に成形不良が発生する等の問題から樹脂の粘度が最も低くなる温度よりも20〜40℃低い温度範囲が好ましい。尚,加熱時間はプリプレグの製造速度に左右されるため,ヒートロールまたは加熱ゾーンの温度設定により,適宜,調整できるものである。
ヒートロールまたは加熱ゾーンは,EPCロールよりも前に設置し,位置決め修正による位置変更の影響を受けやすいロール手前に設置するのが好ましい。
【実施例】
【0012】
次に本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は実施例によって制限されるものではない。
【0013】
ブロム化エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製エピコート5040B80(商品名)を使用)90部(重量部,以下同じ),クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製,N−673−80M(商品名)を使用)10部,ジシアンヂアミド1.5部および2−エチル−4−メチルイミダゾール0.05部,メチルエチルケトン30部,エチレングリコールモノメチルエーテル20部を混合し,固形分69.6%の樹脂ワニスを調製した。
ガラス基材として,坪量25g/m2,幅510mm,厚さ0.039mmのガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社製:IPC名称#106)を用い,プリプレグの樹脂固形分(無機充填剤を含む)を75%に調整し,1.5m/分の速度で170℃の乾燥炉等を通過させて,3℃/分で昇温し粘度を連続測定した場合の樹脂の最低溶融粘度となる温度が120℃,プリプレグを150mm角のバイアスに切断し3枚重ね合わせたものを試料とし,160℃,1MPaにて10分間加熱加圧し,150角のサンプルのプレス前後における重量変化より算出した樹脂流れが15.6%,プリプレグを50mm角のバイアスに切断したものを全体の重量が約15gとなる様,複数枚重ね合わせ、160±1℃に保持された熱板間に挿入し,1MPaにて10秒間加圧し,その後,熱板を開放し,その熱板上にて,流れ出した樹脂が硬化するまでのゲルタイムが96秒のプリプレグを作成した。
同様に,ガラス基材として,坪量10g/m, 幅510mm,厚さ100μmのガラスペーパー(日本バイリーン株式会社製EPM−4010(商品名))を用い,プリプレグの樹脂固形分(無機充填剤を含む)を82%に調整し,1.5m/分の速度で170℃の乾燥炉等を通過させて樹脂最低溶融粘度時の温度が120℃,樹脂流れ12.3%,硬化時間110秒のプリプレグを作製した。
【0014】
(実施例1)
上記プリプレグ作製時に,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる時の温度より20℃低い100℃となる様に温度設定したヒートロールをEPCロール前に1ヶ所設置し,5秒間接触させて加熱処理したプリプレグを作製した。
【0015】
(実施例2)
上記プリプレグ作製時に,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる時の温度より40℃低い80℃となる様に温度設定したヒートロールをEPCロール前に1ヶ所設置し,5秒間接触させて加熱処理したプリプレグを作製した。
【0016】
(実施例3)
上記プリプレグ作製時に,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より20℃低い100℃となる様に温度設定したヒートロールをEPCロール前に2ヶ所設置し,それぞれ5秒間接触させて加熱処理したプリプレグを作製した。
【0017】
(実施例4)
上記で作製したプリプレグを縦510mm,横510mmの寸法に切断し,そのプリプレグ1枚を,それぞれ鏡板(材質SUS304)の上に厚さ35μmの銅箔を乗せ,その上にプリプレグを1枚乗せ,その上に厚さ35μmの銅箔を乗せ,更に鏡板を重ね,これを10回繰り返した構成品を熱板間に装填して積層温度185℃,圧力2.5MPaの条件で加熱,加圧を開始し,100分間加熱して,ガラスクロス基材品の厚さ0.05mm,ガラスペーパー基材品の厚さ0.04mmのガラス基材両面銅張積層板を作製した。
【0018】
(比較例1)
上記プリプレグ作製時に,乾燥後に加熱処理を行わず,プリプレグを作製した。
【0019】
(比較例2)
上記プリプレグ作製時に,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる時の温度より10℃低い110℃となる様に温度設定したヒートロールをEPCロール前に1ヶ所設置し,5秒間接触させて加熱処理したプリプレグを作製した。
【0020】
(比較例3)
上記プリプレグ作製時に,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる時の温度より10℃低い110℃となる様に温度設定したヒートロールをEPCロール前に2ヶ所設置し,5秒間接触させて加熱処理したプリプレグを作製した。
【0021】
(比較例4)
上記プリプレグ作製時に,乾燥後に加熱処理を行わず作成したプリプレグを縦510mm,横510mmの寸法に切断し,そのプリプレグ1枚を鏡板(材質SUS304)の上に厚さ35μmの銅箔を乗せ,その上にプリプレグを1枚乗せ,その上に厚さ35μmの銅箔を乗せ,更に鏡板を重ね,これを10回繰り返した構成品を熱板間に装填して積層温度185℃,圧力2.5MPaの条件で加熱,加圧を開始し,100分間加熱して,ガラスクロス基材品の厚さ0.05mm,ガラスペーパー基材の厚さ0.04mmのガラス基材両面銅張積層板を作製した。
【0022】
実施例と比較例で作製したプリプレグおよびガラス基材両面銅張積層板について、以下のようにして特性を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
(プリプレグ性能変化)
プリプレグ性能変化は,加熱処理前後の測定値より,その変化を算出した。
樹脂流れの試験条件は,プリプレグを150mm角のバイアスに切断し3枚重ね合わせたものを試料とし,160℃,1MPaにて10分間加熱加圧し,150角のサンプルのプレス前後における重量変化により算出を50mm角のバイアスに切断したものを全体の重量が約15gとなる様,した。硬化時間は,プリプレグ複数枚重ね合わせ160℃±1℃に保持された熱板間に挿入し,1MPaにて10秒間加圧し,その後,熱板を開放し,その熱板上にて,流れ出した樹脂が硬化するまでの時間を算出した。
【0024】
(ガラス基材両面銅張積層板の成型性)
ガラス基材両面銅張積層板の外観および銅を全面エッチングした後の外観を確認した。
【0025】
【表1】

【0026】
本実施例の製造方法は,ガラス基材へ樹脂を含浸,加熱乾燥させた後,ヒートロールまたは加熱ゾーンをEPCロールよりも前の位置に配置して,プリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度の直前まで加熱し軟化させ,樹脂によるガラス基材への拘束力を低減し,蛇行修正によりロール通過時に発生するシワを防止することが出来る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層成形後に厚みが0.05mm以下となるガラスクロスまたはガラスペーパーに樹脂を含浸し,その後,樹脂がBステージ(半硬化)に至るまで加熱乾燥するガラス基材プリプレグの製造方法において,加熱乾燥後にプリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より,20〜40℃低い温度となる様に設定したヒートロールまたは加熱ゾーンを配置し,接触または通過させ,ロール通過時に発生するプリプレグのシワを防止することを特徴とするガラス基材プリプレグの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のガラス基材プリプレグの製造方法において,加熱乾燥後にプリプレグ樹脂の粘度が最も低くなる温度より,20〜40℃低い温度となる様に設定したヒートロールまたは加熱ゾーンを複数箇所に配置し,接触または通過させ,ロール通過時に発生するプリプレグのシワを防止することを特徴とするガラス基材プリプレグの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガラス基材プリプレグの製造方法によって製造されたガラス基材プリプレグ。


【公開番号】特開2006−193586(P2006−193586A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5132(P2005−5132)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】