説明

ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法で製造されたガラス基板

【課題】ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法で製造されたガラス基板を提供する。
【解決手段】ガラス基板1にマスク2を設けて化学イオン強化処理を実施することにより、ガラス基板1の少なくとも一つの表面に支圧応力層パターンが設けられ、該パターンは該表面において、異なる支圧応力を備えた複数の局部領域を画定し、それは若干の高支圧応力領域と低支圧応力領域を包含し、低支圧応力領域によりこれら高支圧応力領域相互間が隔離設置される。該ガラス基板1の高支圧応力領域はガラスの抵抗性を増し、破裂とスクラッチ防止の機能を向上し、低支圧応力領域は加工性を保持し、ガラス基板1を切削、分割或いは研磨などの加工に便利なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法で製造されたガラス基板に係り、特に所定パターンのマスクを設けたガラス基板表面に化学イオン強化手段で支圧応力層パターンを形成し、該ガラス基板表面に強化した局部領域と非強化の局部領域を具備させる方法及び該方法により製造されたガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
強化ガラスは一種の予応力ガラスである。周知のガラス強化方式の主なものには二種類があり、一種類は熱強化方式、もう一種類は化学イオン強化方式である。
【0003】
そのうち、熱強化方式は、ガラス板をひずみ点以上でガラス軟化点以下の温度に加熱してから迅速にひずみ点以下の温度に冷却し、ガラス表面に支圧応力層を発生させて、ガラスの抵抗性を増す。化学イオン強化は、強化しようとするガラス板(たとえばナトリウムガラス)を溶融したガラス強化液(たとえばカリウム塩)中に浸漬させ、強化液中の大型イオン(たとえばカリウムイオン)にガラス板上の小型イオン(たとえばナトリウムイオン)を置換し、このような置換作用により、その引張り応力に抵抗する支圧応力層を予めガラス表面に設置することで、ガラス強化の目的を達成する。
【0004】
現在、どちらのガラス強化方式であっても、ガラス板の全部の表面に対して強化加工を実行しており、それは実益がないか或いは不必要なガラス表面部分も包含する。ただし、強化ガラスの支圧応力により、切削或いは分割の加工が更に困難となってしまい、特に、機械ツールを利用して強化層深さが約20μm以上、支圧応力が400MPa以上の強化ガラスを切削する時は、通常、コントロール不能の亀裂伝播を形成して、ガラスの破砕をもたらし、且つガラス板が順調に分割されても、特に、厚いガラス板ではエッジ品質が非常に悪くなる恐れがある。前述したように、強化後のガラスは加工性が悪くなり、ゆえにガラス板の切削、さん孔、或いは研磨等の関係する加工のほとんどは、強化処理前に実行されなければならず、そうでなければ、強化後のガラス板はさらに加工を行うことが難しく、この結果、強化ガラス板の各種パネル製造工程面での応用が厳重に縮限される。たとえば、パネル製造時には、ただ、個別ユニットを逐一生産する方式しか採用できず、すなわち、予めガラス基板を切削して個別ユニットが必要とする寸法規格の小板材とした後、これらの分割された小板材それぞれに対し、必要な回路の配置等のパネル生産工程を実行する必要がある。ただし、パネル工程は、精密性と複雑性を有するため、前述のように個別のユニットを逐一生産するパネル製造方式は、生産効率を下げ、且つガラス基板を分割してなる小寸法の板材は、パネル工程中のアライメント工程をますます困難とし、この結果、生産技術上のネックを形成するのみならず、製品不良率を下げることができなくなるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法で製造されたガラス基板を提供することを目的とし、それは、ガラス基板表面に所定パターンのマスクを形成し、さらに該ガラス基板に対して化学イオン強化工程を実行し、これにより該ガラス基板表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法により製造されたガラス基板であるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の発明の目的を達成するため、本発明の提供するガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法は、そのステップが以下のようであり、すなわち、(1)上表面或いは下表面の少なくとも一つが平坦面とされ、該平坦面に背向する表面が平坦面或いは非平坦面とされ、最も好ましくは、板体の厚さが5mmより小さいガラス基板を提供するステップ、(2)該ガラス基板の表面に複数のオープン領域とクローズ領域とを備えた所定パターンのマスクを形成するステップ、(3)前述のマスクを設けた該ガラス基板を溶融強化液を充満させた塩浴池中に浸漬させることで、イオン交換処理を実行し、該ガラス基板の表面層のイオンを同価或いは酸化状態の大型イオンに置換或いは交換させ、該ガラス基板のマスクにより遮蔽されていない領域の表面に支圧応力層を形成する該ガラス基板に対する化学イオン強化工程のステップ、(4)該ガラス基板の表面のマスクを除去し、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板を得るステップ。
【0007】
特に、前述のマスクは、耐酸食性及び摂氏380度以上の耐高温を備えた合成ゴム材料で製造され、上述の合成ゴム材料は、シリコン、多硫化物等より選択されるが、実際の材料範囲はこれらに限定されるわけではない。該マスクの設置方式は、溶融した合成ゴム材料を、型板印刷法、スリット式コーティング法、或いは毛細管コーティング法などの技術手段でガラス基板の表面に設けるほか、合成ゴム材料で製造した薄膜を貼り付ける等の手段も使用可能であり、それにより該ガラス基板表面にマスクパターンを形成できる。しかし、マスクの設置方式は以上の設置手段に限定されるわけではない。該ガラス基板表面に設置したマスクパターンは、加熱ベークの方式で、マスクの定型が促進されると共に基板表面における付着力がアップされる。
【0008】
特に、該ガラス基板の材料は、ナトリウムカルシウムケイ酸塩ガラスを選択できるが、当然実施の材料範囲はこれに制限されるわけではなく、たとえば、その他の各種の金属アルミニウムケイ酸塩ガラスも適用可能である。前述の強化液は、硝酸塩、硫酸塩或いは大型アルカリ金属イオンの塩化物の溶液のいずれか或いはその混合物とされるが、実施の材料範囲は前述の溶液に限られるわけではない。たとえば、前述のナトリウムカルシウムケイ酸塩ガラスに対して化学イオン強化工程を実行し、該強化液は硝酸カリウム溶液を採用可能である。
【0009】
実行可能な実施例では、該ガラス基板は上下の表面にそれぞれ均一な支圧応力層を備えた、該均一な支圧応力層の支圧応力層深さ範囲は約20μm以下とされる。
【0010】
本発明はまた、一種の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板を提供し、該ガラス基板の表面には所定の強化面と非強化面の局部領域が形成され、該ガラス基板の表面の強化面局部領域はガラス基板の抵抗性を増し、破裂或いは引っ掻き傷防止の性能がアップされ、非強化面の局部領域は加工性を保持して、ガラス基板を切削、分割及び研磨等の加工に便利なものとする。
【0011】
本発明によると、該表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板は本発明の製造方法により製造され得る。それは、ガラス基板の少なくとも一つの表面に支圧応力層パターンを備え、該パターンは、該表面において、異なる支圧応力を備えた複数の局部領域を画定する。実行可能な実施例において、該支圧応力層は低支圧応力領域により隔離された若干の高支圧応力領域を包含し、該高支圧応力領域と低支圧応力領域の間の支圧応力の差異値は100MPa以上とされるか、或いは支圧応力層深さの差異値が5μm以上とされる。そのうち、該低支圧応力領域の支圧応力値は400MPa以下、最も好ましくは0MPaに等しいか接近する。該高支圧応力領域の支圧応力範囲は100から800MPaとされるか、或いは該低支圧応力領域の支圧応力層の深さ範囲が約0〜20μmで、高支圧応力領域の支圧応力層の深さ範囲が約5〜90μmとされる。これにより、本発明のガラス基板は高支圧応力領域において高強度の局部領域を形成し、各種パネルの透明基板或いはカバー板を製造するのに供され得て、これら低支圧応力領域は優良な加工性を保持し、ガラス基板を強化処理した後に、ガラス基板の低支圧応力領域に対して切削、分割或いは研磨等の加工を行え、これにより、周知の強化ガラスのパネル工程への応用面での制限を克服して生産効率と品質歩留りのアップの目的を達成する。
【0012】
前述のガラス基板の上表面、下表面の少なくとも一方は平坦面とされ、該平坦面に背向する面は平坦面或いは非平坦面、たとえば凸面、凹面或いは凹凸面とされ、理想のガラス基板は平板ガラスが選択され、且つその板体厚さは5mmより小さい。該ガラス基板の材料は、ナトリウムカルシウムケイ酸塩ガラス、アルミニウムケイ酸塩ガラス等であるが、実施の材料はこれらに制限されるわけではない。
【0013】
通常の実施態様中、該ガラス基板は支圧応力層パターンが設けられた表面に背向する表面に、均一な支圧応力層が設けられ、これにより、ガラス基板の2表面の間の支圧応力の差異が過大となることによる反り変形が防止され、この均一な支圧応力層はほぼ前述の低支圧応力領域と同じく、その支圧応力層深さ範囲は約20μm以下とされる。
【0014】
本発明の別の実施可能な実施例中、該ガラス基板の上下表面には、支圧応力層パターンが設けられ、そのうち、該上下の表面の支圧応力層パターンは、相互に対応するように設置されるか或いは不対応に設置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は一種のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法で製造されたガラス基板を提供し、それは、ガラス基板表面に所定パターンのマスクを形成し、さらに該ガラス基板に対して化学イオン強化工程を実行し、これにより該ガラス基板表面に支圧応力層パターンを形成する方法及び該方法により製造されたガラス基板であり、本発明の方法により製造されたガラス基板は、抵抗性が増され、破砕とスクラッチ防止の性能が向上され、非強化面の局部領域により、加工性が保持され、切削、分割或いは研磨等の加工に便利とされている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のガラス基板とマスクの分離状態の立体表示図である。
【図2】本発明のガラス基板とマスクの組合せの立体表示図である。
【図3】本発明のガラス基板を塩浴池に設置する正面図であり、化学イオン強化工程中、挟持装置と往復式運動機構の運転を示す。
【図4】本発明の塩浴池の側面断面図である。
【図5】本発明のガラス基板の製品の立体図である。
【図6】本発明のガラス基板の製品の側面断面図である。
【図7】本発明の別のガラス基板の製品の側面断面図である。
【図8】本発明のさらに一種のガラス基板の製品の立体図である。
【図9】本発明のさらに一種のガラス基板の製品の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の技術内容、構造特徴、達成する目的を詳細に説明するため、以下に実施例を挙げ並びに図面を組み合わせて説明する。
【0018】
まず、ガラス基板1を用意する。該ガラス基板は比較的大面積の上表面或いは下表面図を有する。ガラス基板は必ずしも平面である必要はないが、少なくとも上表面或いは下表面の一つは平坦面とされる。該平坦面に背向する表面は、平坦面或いは非平坦面、たとえば凸面、凹面或いは凹凸面とされ得る。この実施例では、該ガラス基板材料は、ナトリウムカルシウム珪酸塩ガラスを採用し、その板体厚さは約1mmとされ、且つその上表面、下表面はいずれも平坦面の素ガラス板とされる。
【0019】
その後、図1、2に示されるように、ガラス基板1の上表面にマスク2が設置される。該マスクは所定パターンを備ええ、該パターンは、複数のオープン領域21とクローズ領域22が共同で構成する。該マスクのクローズ領域22部分は、緊密に該ガラス基板の表面に付着する。該マスクは、耐酸腐食特性を有し且つ摂氏380度の耐高温のシリコン材料とされ、それは型板印刷の技術手段を利用し、溶融したシリコンがガラス基板1の表面に印刷されることで、マスクパターンが形成される。該シリコン材料がガラス基板表面に設置された後、最も好ましくは、さらにガラス基板1を熱風炉中に入れて低温ベークを実行し、その後に常温(摂氏25度)まで徐々に降温し、これにより該マスクの定型を促進し、ならびに該マスク2の基板表面における付着力をアップする。
【0020】
前述のマスク設置の工程に続き、該ガラス基板1に対して化学イオン強化工程を実行する。すなわち、図3、4に示されるように、該ガラス基板1は挟持装置61に取付けられて、ガラス基板1の板体の上面と下面が露出状態とされ、該挟持装置は昇降可能に塩浴池62上方に設置され、該塩浴池内には温度範囲が摂氏380〜450度の溶融強化液63が容れられている。且つ該塩浴池内の強化液63の容量は、工程中に特定の液面高さを保持し、且つ該高さは少なくとも、化学イオン強化工程を行うガラス基板が完全に該強化液内に浸漬できるものとされる。この実施例では、前述のナトリウムカルシウム珪酸塩ガラスに対して化学イオン強化工程を実行し、該強化液には硝酸カリウム溶液を使用する。最も好ましくは、該塩浴池中に、循環濾過器64を設けて、工程中に強化液中に混雑する残り屑或いは塵粒を除去し、ならびに循環過程を利用して攪拌効果を発生し、強化液の均一度を増す。及び、該挟持装置61は一組の往復式運動機構65に枢接され、これにより該挟持装置61は上下左右方向の往復式移動可能とされる。化学イオン強化工程を実行する時、該挟持装置61はガラス基板1を挟持固定し、ならびに垂直直立態様で塩浴池62内の強化液63中に浸漬させ、同時に往復式運動機構65により該挟持装置61を駆動し、該ガラス基板に強化液63中で、その板面に平行な方向に沿って、上下及び又は左右方向の往復移動させ、これにより、化学イオン強化作用の均一度を増し、ならびに加工の効率をアップする。
【0021】
化学イオン強化工程中、ガラス基板1のマスクのオープン領域21の表面は、強化液63との間でイオン交換処理が実行され、ガラス表面層のナトリウムイオンが強化液中の同価のカリウムイオンに置換され、強化液中の大型イオン(カリウムイオン)がガラス基板上の小型イオン(ナトリウムイオン)に置換され、これにより、前述のオープン領域21のガラス基板表面に支圧応力層が形成され、ガラス強化の目的が達成され、クローズ領域22のガラス基板の表面はイオン交換処理は実行されないため、表面に支圧応力層は形成されず、ゆえにもとの加工性を保持する。
【0022】
通常、ガラス基板の強化液中に浸漬される時間は、約0.5時間から7時間である。イオン交換処理により形成される強化ガラスは、その支圧応力層深さ範囲が約10〜50μmであり、支圧応力層範囲は約200〜800MPaである。
【0023】
本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば分かるとおり、イオン交換処理において、上述の塩浴池の成分と温度、浸漬時間、塩浴池中の浸漬ガラスの個数、複数の塩浴池の使用、たとえばアニーリングの余分なステップ、洗浄等が、通常、ガラスの成分と必要な支圧応力層の深さ、表面の支圧応力数値等の因子に基づき、強化作業パラメータとして設定され得るが、パラメータはこれに限定されるわけではない。
【0024】
最後に、膜剥離加工工程により、ガラス基板1上のマスク2が剥離され、ガラス基板表面の支圧応力層パターンが出現する。その実施方式は、該ガラス基板表面のマスク2設置の部分に対して、膜剥離剤をスプレーするか軽量研磨し、マスクを順調にガラス基板表面より剥離除去し、さらに洗浄液(たとえば清水)でガラス基板の表面を洗浄する。
【0025】
前述の加工ステップを終えることで、すなわち、ガラス基板の表面に必要な支圧応力層パターンFが形成される(図5のとおり)。支圧応力層パターンが設置された局部領域の表面はガラス抵抗性がアップされて、破砕と引っ掻き傷防止の性能がアップされ、その他の局部領域表面は良好な加工性を保持し、ガラス基板が、切削、分割及び研磨等の加工が行いやすいものとされる。特に、ガラス基板の板体厚さが5mm以下の時、本発明の特色と長所が顕著に発揮される。
【0026】
また、上述の本発明の実施例中、該ガラス基板1は素ガラス板の選択使用のほか、予め強化処理されたガラス基板を採用することもでき、それは、板体の上下表面に、それぞれ均一な支圧応力層を形成し、該均一な支圧応力層の支圧応力層深さ範囲は約20μm以下とする。また、該マスク2をガラス基板1の上表面に置く時、ガラス基板の下表面に密封マスクを設置し、該下表面をすべてカバーするようにしてもよい。また、ガラス基板の下表面にマスクを設置せずに、該下表面を露出した状態とし、化学イオン強化工程中に、この露出した該下表面を強化液63とイオン交換処理し、ならびに均一な支圧応力層を備えたガラス表面を獲得するようにしてもよい。このほか、本発明のその他の応用方式によると、同一のマスクを備えたガラス基板に対して一回以上の化学イオン強化工程を実行することができ、また、一つのガラス基板に対して複数回の化学イオン強化工程を実行するが、毎回異なるマスクを配置し、ガラス基板上に必要な支圧応力層パターンを形成してもよい。
【0027】
さらに、図5、6に示されるように、本発明の前述の方法で製造したガラス基板は、ある実施例において、該ガラス基板1の表面に支圧応力層パターンFが形成され、該支圧応力層パターンF中に、若干の高支圧応力領域12と低支圧応力領域13が包含される。低支圧応力領域13は該高支圧応力領域12を相互に隔離する。これにより、該支圧応力層パターンFは該ガラス基板1の表面上で破砕と引っ掻き傷防止の高支圧応力領域12(すなわち強化領域)と、切削、分割及び研磨等の加工性を備えた低支圧応力領域13(すなわち非強化或いは低強化領域)を画定する。理想的には、該ガラス基板の表面の低支圧応力領域13は、その支圧応力層深さ範囲が約0〜20μmとされ、支圧応力値は400MPa以下とされる。該高支圧応力領域12の支圧応力層深さ範囲は約5〜90μmとされ、支圧応力層深さ範囲は約100〜800μmとされる。上述の実施例中、該ガラス基板の表面は、高支圧応力領域12と低支圧応力領域13に区分されるが、表面上の任意の二つの隣り合う領域の間の支圧応力値差異値は100MPa以上であるか、或いは支圧応力層深さの差異値が5μm以上とされる。
【0028】
周知の強化ガラスの応用方式とは異なり、本発明のガラス基板は、予めガラス強化工程を実行しても、その切削、分割及び研磨等の加工性を損なうことがない。たとえば、本発明のガラス基板は各種パネルの製造に応用され、パネル構造の関係回路及びデバイスをこれら高支圧応力領域12内の表面に製造し、その後、低支圧応力領域13に対して切削、分割及び研磨等の加工を行なうことができ、周知の強化ガラスのパネル応用工程方面での制限を克服し、生産効率と品質歩留りをアップする目的を達成する。
【0029】
理解できることは、前述の実施例中、該ガラス基板の上表面は支圧応力層パターンFを備えた、それに背向する下表面には均一な支圧応力層14が形成され(詳しくは図7のとおり)、これにより、ガラス基板の板体表面の支圧応力の差異が過大となることによる反りや変形を防止できる。通常は、該均一な支圧応力層14は前述の低支圧応力領域13と同じく、その支圧応力層深さ範囲が約20μm以下とされる。
【0030】
図8、9中には本発明の別の実施例が表示される。該ガラス基板は上下の表面それぞれに支圧応力層パターンF、F'が形成され、且つこれら上下表面の支圧応力層パターンは相互に対応するよう設置され、すなわち、ガラス基板の上表面の高支圧応力領域12は下表面の高支圧応力領域12'の位置と対応し、ガラス基板上表面の低支圧応力領域13は、下表面の低支圧応力領域13'の位置に対応する。これにより、ガラス基板板体の上下表面の支圧応力の平衡が保持されて、反り変形が防止されるほか、該ガラス基板の高支圧応力領域表面のガラス抵抗性が倍増され、その他の低支圧応力領域は良好な切削加工性を保持できる。
【0031】
以上述べたことは、本発明の実施例にすぎず、本発明の実施の範囲を限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲に基づきなし得る同等の変化と修飾は、いずれも本発明の権利のカバーする範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0032】
F、F' 支圧応力層パターン
1 ガラス基板
12、12' 高支圧応力領域
13、13' 低支圧応力領域
14 均一な支圧応力層
2 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、
a.ガラス基板を提供するステップ、
b.該ガラス基板の表面に複数のオープン領域とクローズ領域を包含する所定パターンのマスクを形成するステップ、
c.ガラス基板に対する化学イオン強化工程実行のステップであって、該マスクを設けた該ガラス基板を溶融強化液を充満した塩浴池中に浸漬させてイオン交換処理を実行し、該ガラス基板の表面層のイオンを同価或いは酸化状態の大型イオンに置換或いは交換し、該ガラス基板の該マスクに遮蔽されていない領域の表面に支圧応力層を形成するステップ、
d.該ガラス基板表面のマスクを除去し、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板を獲得するステップ、
を包含することを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項2】
請求項1記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該ガラス基板の材料は、ナトリウムカルシウムケイ酸塩ガラス或いはアルミニウム珪酸塩ガラスのいずれかとされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項3】
請求項1記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該ガラス基板の上下の表面の少なくとも一方は平坦面とされ、該平坦面に背向する表面は平坦面或いは非平坦面とされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項4】
請求項3記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該ガラス基板の板体厚さは5mmより小さいことを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項5】
請求項1記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該ガラス基板の上下の表面それぞれに均一な支圧応力層が形成され、該均一な支圧応力層の深さ範囲は20μm以下とされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項6】
請求項1記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該マスクは耐酸腐食性を備えた摂氏380度以上の耐高温の合成ゴム材料を使用することを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項7】
請求項6記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該合成ゴム材料はシリコンとされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項8】
請求項7記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該シリコンは型板印刷手段で該ガラス基板表面に設置されて該マスクを形成することを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項9】
請求項1記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該強化液は硝酸塩、硫酸塩或いは大型アルカリ金属イオンの塩化物の溶液のいずれか或いはその混合物とされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項10】
請求項9記載のガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法において、該強化液は硝酸カリウム溶液とされることを特徴とする、ガラス基板の表面に支圧応力層パターンを形成する方法。
【請求項11】
表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の少なくとも一つの表面に支圧応力層パターンを備え、該パターンは該表面にあって、複数の異なる支圧応力を備えた局部領域を画定し、該局部領域は高支圧応力領域と低支圧応力領域を包含し、該低支圧応力領域によりこれら高支圧応力領域が相互に隔離され、ならびに該高支圧応力領域と該低支圧応力領域の間の支圧応力差異値が100MPa以上とされることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項12】
請求項11記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該低支圧応力領域の支圧応力値は400MPa以下であることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項13】
請求項11記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該高支圧応力領域の支圧応力値は100〜800MPaであることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項14】
表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の少なくとも一つの表面に支圧応力層パターンを備え、該パターンは該表面にあって、複数の異なる支圧応力を備えた局部領域を画定し、該局部領域は高支圧応力領域と低支圧応力領域を包含し、該低支圧応力領域によりこれら高支圧応力領域が相互に隔離され、ならびに該高支圧応力領域と該低支圧応力領域が異なる支圧応力層深さを有し、且つ該高支圧応力領域と該低支圧応力領域の深さの差異値は5μm以上であることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項15】
請求項14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該低支圧応力領域の支圧応力層深さ範囲は0〜20μmとされることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項16】
請求項14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該高支圧応力領域の支圧応力層深さ範囲は5〜90μmとされることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項17】
請求項11又は14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の上下の表面の少なくとも一方は平坦面とされ、該平坦面に背向する表面は平坦面或いは非平坦面とされることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項18】
請求項17記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の上下の表面がいずれも平坦面とされ、且つその板体厚さが5mmより小さいことを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項19】
請求項11又は14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の材料は、ナトリウムカルシウムケイ酸塩ガラス、アルミニウムケイ酸塩ガラスより選択されることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項20】
請求項11又は14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の支圧応力層パターンが形成された表面に背向する表面に均一な支圧応力層が設置されたことを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項21】
請求項20記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該均一な支圧応力層の深さ範囲は20μm以下であることを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項22】
請求項11又は14記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該ガラス基板の上下の表面にそれぞれ支圧応力層パターンが形成されたことを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。
【請求項23】
請求項22記載の表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板において、該上下の表面の支圧応力層パターンは相互に対応するように設置されたことを特徴とする、表面に支圧応力層パターンを備えたガラス基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−100195(P2013−100195A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244429(P2011−244429)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(511018169)雅士晶業股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】