説明

ガラス基板収納装置

【課題】 搬送中に衝撃が加わっても、収納したガラス基板に損傷を与えることのないガラス基板収納装置を提供する。
【解決手段】 ガラス基板収納装置10は、底部13と側部12とを有し内部にガラス基板30を垂直方向に配置して収納する収納ボックス11と、収納ボックス11の開口11aを覆う蓋体20と、蓋体20の裏面に設けられ収納ボックス11内のガラス基板30を上方から押える押え板25とを備えている。押え板25は蓋体20の凹部22内に嵌合して固定され、凹部22内で動くことはない。押え板25にはガラス基板30の上縁30a全長に延びる保持溝27が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板を収納して搬送するガラス基板収納装置に係り、とりわけ搬送中においてガラス基板の損傷を防止することができるガラス基板収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネル、あるいはこれらの素材(以下、総称してガラス基板という)を搬送するため、収納ボックスと、収納ボックスを覆う蓋体からなるガラス基板収納装置が用いられている(特許文献1および2参照)。
【0003】
また収納ボックス内のガラス基材を押えるため、押え板が用いられている。この押え板は高分子ポリエチレン等からなり、蓋体の大きさより小さく、かつ2枚以上で構成され、面ファスナにより蓋体の裏面に固定されている。
【特許文献1】特許第3325385号
【特許文献2】特開2003−292087号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述のように蓋体の裏面に押え板が設けられているが、この押え板はガラス基板収納装置に落下や振動等の外部衝撃が加わった場合、面ファスナにより蓋体に固定されているためずれることがある。また押え板は一般に蓋体の裏面より小さく、かつ2枚以上で構成されているため、外部衝撃が加わったときに押え板のずれ方(位置、量)がそれぞれ異なり、その結果、収納ボックス内のガラス基板がずれたり、損傷したりするという問題がある。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、搬送中においてガラス基板に損傷を与えることのないガラス基板収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底部と、開口を形成する側部とを有し、複数の矩形状ガラス基板を垂直方向に配置して収納するとともに、底部と側部とにガラス基板を支持する支持溝が形成された収納ボックスと、収納ボックスの開口に装着され、側部の上端に係合するとともに内側に設けられた凹部を囲む枠体を有する蓋体と、蓋体の裏面に設けられ、収納ボックス内のガラス基板を上方から保持する押え板とを備え、押え板は蓋体の凹部内に嵌合して凹部内に固定され、押え板にガラス基板を保持する保持溝が形成されていることを特徴とするガラス基板収納装置である。
【0007】
本発明は、押え板は一枚板からなり、凹部内に嵌合することを特徴とするガラス基板収納装置である。
【0008】
本発明は、押え板は分割された複数板からなることを特徴とするガラス基板収納装置である。
【0009】
本発明は、押え板の保持溝は、ガラス基板の上縁全長に渡って延びていることを特徴とするガラス基板収納装置である。
【0010】
本発明は、蓋体の凹部内に第1面ファスナ材が設けられ、押え板に第1面ファスナ材と係合する第2面ファスナ材が設けられていることを特徴とするガラス基板収納装置である。
【0011】
本発明は、収納ボックスと蓋体はポリプロピレンまたはピオセランからなり、押え板は収納ボックスおよび蓋体より軟質の発泡ポリエチレンからなることを特徴とするガラス基板収納装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、ガラス基板をガラス基板収納装置内に収納して搬送する際、ガラス基板収納装置に対して衝撃が加わっても、ガラス基板を損傷させることはない。このためガラス基板を安全にかつ確実に搬送させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1乃至図4は、本発明によるガラス基板収納装置の一実施の形態を示す図である。
【0015】
図1乃至図3に示すように、ガラス基板収納装置10は、ガラスメーカー、カラーフィルターメーカー、およびデバイスメーカーの相互間においてガラス基板30を収納して搬送するものであり、ガラス基板30としては液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、およびこれらの素材が考えられる。
【0016】
またガラス基板30は、矩形状をなし、その大きさは例えば1250mm×1100mmとなっており、厚みは例えば0.6mmとなっている。
【0017】
上述のようなガラス基板収納装置10は、底部13と、開口11aを形成する側部12とを有し複数のガラス基板30を垂直方向に配置して収納する収納ボックス11と、収納ボックス11の開口11aに装着されるとともに、側部12の上端12bに係合する枠体21を有する蓋体20と、蓋体20の裏面に設けられ収納ボックス11内のガラス基板30を上方から保持する押え板25とを備えている。
【0018】
このうち、収納ボックス11の底部13には、ガラス基板30の下縁を支持する複数の支持溝13aが設けられ、収納ボックス11の側部12には、ガラス基板30の側縁を支持する複数の支持溝12aが設けられている。
【0019】
さらに収納ボックス11は側部12aによって形成された開口11aを有し、上述のように側部12aの上端12bに蓋体20の枠体21が係合して固定され、蓋体20によって収納ボックス11の開口11aが覆われる。
【0020】
ところで蓋体20の枠体21は蓋体20の周縁に沿って形成され、この枠体21の内側に凹部22が形成されている。この場合、蓋体20の裏面のうち、枠体21により囲まれた領域が凹部22となる。
【0021】
また蓋体20の裏面に設けられた押え板25は、収納ボックス11内のガラス基板30を上方から保持するものであり、押え板25のガラス基板30側の面には、ガラス基板30が進入するとともにこのガラス基板30を保持する複数の保持溝27が設けられている。押え板25は蓋体20の凹部22と略同一形状を有し、このため蓋体20の凹部22内に押え板25を密接した状態で嵌合することができる。押え板25は一枚板から形成されていることが好ましいが、互いに分割された二枚板あるいは三枚板からなっていてもよい。
【0022】
複数枚の板から押え板25を形成した場合も、押え板25は全体として蓋体20の凹部22内に嵌合して凹部22内において移動しないようになっている。
【0023】
さらに、蓋体20の凹部22内に嵌合された押え板25は複数の保持溝27を有しているが、この保持溝27はガラス基板30の上縁30aの全長に渡って連続して延びている。したがってガラス基板30の上縁30aの全長を押え板25の保持溝27によって、堅固に保持することができ、ガラス基板30の上縁30aにおいて保持溝27によって保持されない部分が生じることはない。
【0024】
上述のように押え板25は蓋体20の凹部22内に嵌合されているが、凹部22内面に固着された第1面ファスナ材23と、押え板22上面に固着された第2面ファスナ材26とによって押え板25は蓋体20の凹部22内に固定保持されている。このため蓋体20を収納ボックス11から取外した場合、押え板25を蓋体20とともに収納ボックス11から引離すことができる。
【0025】
次に各部材の材料について述べる。収納ボックス11および蓋体20は、例えばポリプロピレン製となっており、押え板25は収納ボックス11および蓋体20の双方に対して軟質となる発泡樹脂、例えば発泡ポリエチレンからなっている。なお、収納ボックス11および蓋体20をピオセランから形成してもよい。
【0026】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について以下説明する。
【0027】
まず、蓋体20および押え板25が収納ボックス11から取外された状態で、収納ボックス11内に複数のガラス基板30を収納保持する。この場合、ガラス基板30は底部13の保持溝13aおよび側部12の保持溝12bに係合される。
【0028】
次に、収納ボックス11内に収納されたガラス基板30上に押え板25を載置し、ガラス基板30の上縁30aを押え板25の保持溝27内に挿着する。
【0029】
次に収納ボックス11の側部12の上端12bに蓋体の枠体21を係合させて、収納ボックス11の開口11aを蓋体20により覆う。この場合、蓋体20の凹部22内に押え板25が嵌合し、押え板25は第1面ファスナ23と第2面ファスナ26とによって蓋体20内に固着される。
【0030】
複数のガラス基板30を収納したガラス基板収納装置10は、その後搬送される。搬送中にガラス基板収納装置10に対して衝撃が加わった場合でも、蓋体20の凹部22内で押え板25が移動することはない。このため押え板25の保持溝25aによって上縁30aが保持されたガラス基板30が収納ボックス11内で移動したり変形することはなく、ガラス基板30に損傷を与えることなく、安全にガラス基板30を収納して搬送することができる。
【0031】
ここで図4により、本願の比較例について説明する。図4に示す比較例のように、蓋体20の枠体21によって囲まれた凹部22内に2枚の押え板25を配置するとともに、これら押え板25が凹部22内で移動可能となっている場合、押え板25が蓋体20に面ファスナ材により固定されていても、ガラス基板収納装置に衝撃が加わると、押え板25が凹部22内をすべって移動することが考えられる。
【0032】
押え板25が移動すると、押え板25が凹部22内で傾斜し、これに伴なって押え板25の保持溝27も蓋体20に対して傾斜する。この結果保持溝27からガラス基板30の上縁30aに対して無理な力が加わってガラス基板30が破損することも考えられる。
【0033】
これに対して本願発明によれば、押え板25は蓋体20の凹部22内に嵌合して固定されているため、ガラス基板収納装置10に対して衝撃が加わっても、押え板25が凹部22内で移動したり、押え板25の保持溝27が蓋体20に対して傾斜することはない。
【0034】
さらに、押え板20の保持溝27は、ガラス基板30の上縁30aの全長に渡って延びているので、ガラス基板30の上縁30aの全長を保持溝27によって堅固に保持することができる。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、ガラス基板収納装置10内にガラス基板30を収納して搬送する場合、ガラス基板収納装置10に対して衝撃が加わってもガラス基板30を損傷させることなく、安全に搬送させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるガラス基板収納装置の蓋体を示す図。
【図2】本発明によるガラス基板収納装置の蓋体を示す部分側面図。
【図3】本発明によるガラス基板収納装置の蓋体を示す斜視図。
【図4】ガラス基板収納装置の比較例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
10 ガラス基板収納装置
11 収納ボックス
12 側部
12a 支持溝
12b 上端
13 底部
13a 支持溝
20 蓋体
21 枠体
22 凹部
23 第1面ファスナ
25 押え板
26 第2面ファスナ
27 保持溝
30 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、開口を形成する側部とを有し、複数の矩形状ガラス基板を垂直方向に配置して収納するとともに、底部と側部とにガラス基板を支持する支持溝が形成された収納ボックスと、
収納ボックスの開口に装着され、側部の上端に係合するとともに内側に設けられた凹部を囲む枠体を有する蓋体と、
蓋体の裏面に設けられ、収納ボックス内のガラス基板を上方から保持する押え板とを備え、
押え板は蓋体の凹部内に嵌合して凹部内に固定され、押え板にガラス基板を保持する保持溝が形成されていることを特徴とするガラス基板収納装置。
【請求項2】
押え板は一枚板からなり、凹部内に嵌合することを特徴とする請求項1記載のガラス基板収納装置。
【請求項3】
押え板は分割された複数板からなることを特徴とする請求項1記載のガラス基板収納装置。
【請求項4】
押え板の保持溝は、ガラス基板の上縁全長に渡って延びていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のガラス基板収納装置。
【請求項5】
蓋体の凹部内に第1面ファスナ材が設けられ、押え板に第1面ファスナ材と係合する第2面ファスナ材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のガラス基板収納装置。
【請求項6】
収納ボックスと蓋体はポリプロピレンまたはピオセランからなり、押え板は収納ボックスおよび蓋体より軟質の発泡ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のガラス基板収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−199351(P2006−199351A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14395(P2005−14395)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】