説明

ガラス微粒子合成用バーナ及びガラス微粒子堆積体の製造方法

【課題】光ファイバ母材の製造において良質なスート体を短時間で効率的に形成し、製造コストを低減できるガラス微粒子合成用バーナ及びガラス微粒子堆積体の製造方法を提供する。
【解決手段】
可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に原料ガスを供給することにより合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させるガラス微粒子合成用バーナにおいて、複数の小口径流路から噴出される助燃性ガスが原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように助燃性ガス噴出流路を配置する。また、補助助燃性ガス噴出流路の噴出端を、助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、原料ガスの噴出方向下流側に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材を製造する際に用いられるガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)及びこのバーナを用いたガラス微粒子堆積体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な光ファイバの製造方法として、気相軸付け法(VAD:Vapor-phase Axial Deposition)、外付け気相成長法(OVD:Outside Vapor Deposition)、内付け化学気相成長法(MCVD:Modified Chemical Vapor Deposition)などの気相合成法、又はこれらを組み合わせた方法が知られている。
【0003】
OVD法によるクラッド合成では、バーナにより、SiCl等の原料ガス、H等の可燃性ガス及び助燃性ガスであるOが供給され、酸水素火炎中で原料ガスが火炎加水分解反応することによりガラス微粒子が合成される。ターゲットロッドを軸中心に回転させながら、バーナとターゲットロッドを長手方向に相対移動させることで、ターゲットロッドの外周面にガラス微粒子(スート)が堆積され、スート体が形成される。
そして、形成されたスート体を高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化された光ファイバ母材が製造される。また、この光ファイバ母材を加熱して紡糸することにより、光ファイバが製造される。なお、ターゲットロッドには、例えばVAD法により作製されたコア母材が用いられる。
【0004】
上述したOVD法に用いられるバーナとしては、可燃性ガス噴出流路の中心に原料ガス噴出流路を配置し、この原料ガス噴出流路を取り囲むように、可燃性ガス流出路内に複数の小内径助燃性ガス噴出流路を環状に配置したバーナ(いわゆるマルチノズルバーナ、例えば特許文献1〜4)、或いはガス流出口が同心円状に配置されているいわゆる多重菅バーナが知られている(例えば特許文献5、6)。特に、特許文献2には、多重に環状配置された助燃性ガス噴出流路から噴出される助燃性ガスが、原料ガスの噴出軸上においてそれぞれ異なる焦点を結ぶようにすることにより、ガラス微粒子の堆積効率を向上させている(いわゆる多焦点型バーナ)。具体的には、外側に環状配置された助燃性ガス噴出流路からの助燃性ガスの焦点距離(原料ガス噴出端から焦点までの距離)が、内側に環状配置された助燃性ガス噴出流路からの助燃性ガスの焦点距離よりも長くなるようにしている。
また、特許文献6、7には、OVD法を利用して光ファイバ母材を製造する際に、ターゲットロッドの長手方向に複数のバーナを配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−29759号公報
【特許文献2】特開平5−323130号公報
【特許文献3】特開昭62−187135号公報
【特許文献4】特開平6−072733号公報
【特許文献5】特開昭61−183140号公報
【特許文献6】特開平9−132415号公報
【特許文献7】特開平3−228845号公報
【特許文献8】特開平10−158025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、光ファイバの需要が飛躍的に増加していることに伴い、より大型の光ファイバ母材をより短時間で製造し、低コスト化することが要求されている。
一般に、ガラス微粒子の堆積速度を向上させるためには、原料ガス噴出流路から大量の原料ガスを火炎内に噴出させ、効率よく反応させて堆積させる必要がある。原料ガスを大量に噴出する手法としては、例えば、原料ガス噴出流路の口径を拡大する方法と、原料ガスの流速を速くする手法が知られている。
【0007】
しかしながら、前者の手法では、原料ガス噴出流路の口径を拡大するに従い、原料ガス流の外縁部と中心部とでガラス微粒子の合成反応進行度合いの差が大きくなり、特に中心部におけるガラス微粒子の生成速度が遅くなる。原料ガス流の周囲から熱及び反応に必要な水分等が供給されることにより、原料ガス流の外縁部から中心部に向かってガラス微粒子の合成反応が進むためである。そして、このような不均一な粒子生成状態で原料ガス流がターゲットロッドに到達すると、ガラス微粒子の堆積効率が低下してしまう。
【0008】
一方、後者の手法では、原料ガスの流速を速くするに従い、原料ガスが火炎加水分解反応するための時間が十分確保できなくなる。そのため、原料ガス流全体でガラス微粒子の合成が不十分な状態のままターゲットロッドに到達することとなり、ガラス微粒子の堆積効率が大きく低下してしまう。この場合、原料ガス流の温度を上げることで、問題が解消されると考えられる。ただし、原料ガス流の温度を上げると、ガラス微粒子の合成反応が促進される一方で、生成されたガラス微粒子が揮発しやすくなってしまうため、原料ガス流の温度を適正な範囲に留める必要がある。
特許文献2に記載の多焦点型バーナでは、原料ガス噴出軸上において、助燃性ガスが複数の焦点を結ぶように噴出されるので、原料ガスが複数回にわたって高温となる焦点位置を通過する。したがって、原料ガスの温度を効率よく上げるのにより好適な構造といえる。しかしながら、焦点近傍で温度が上がる特性上、可燃性ガス中で多数の助燃性ガス流が集中して温度が上がり過ぎた場合には、焦点付近でガラス微粒子が急激に揮発して堆積効率が低下するという問題もある。
【0009】
つまり、より多くの原料ガスを均一に効率よく反応させ、ターゲットロッドへの堆積に好適なガラス微粒子を多量に合成するためには、原料ガス流の中心部と外縁部とで同程度のレベルで粒子化反応が進むように原料ガス流の断面積を小さくすること、原料ガス流に十分なHOを供給すること、原料ガス流を素速く昇温することに加えて、原料ガス流の外縁部で合成されるガラス微粒子が揮発しない適正な温度範囲で長時間保持する必要がある。
【0010】
また、特許文献6、7のように、ターゲットロッドの長手方向に複数のバーナを並べて配設する手法は、短時間でスート体を形成できるという点で有効である。しかしながら、個々のバーナ堆積能力のわずかな差異によりスート体及びこれを透明ガラス化した光ファイバ母材の外径変動が生じやすいという欠点がある。特許文献7では、堆積量検出機構(CCDカメラ)により外径変動を検出して修正するようにしているが、バーナの制御が複雑となる上、製造設備も複雑な構造となってしまう。
このように、従来の手法では、光ファイバ母材の大型化、低コスト化に応えることが困難となっている。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、光ファイバ母材の製造において良質なスート体を短時間で効率的に形成し、製造コストを低減できるガラス微粒子合成用バーナ及びガラス微粒子堆積体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状配置された複数の小口径流路からなり、この小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路を内包し、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路と、
前記可燃性ガス噴出流路の外側に同心円上に設けられ、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路とを備え、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させるガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記複数の小口径流路から噴出される助燃性ガスが前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路が配置され、
前記外側ガス噴出流路は助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路を備え、前記補助助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、前記原料ガスの噴出方向下流側に位置していることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状配置された複数の小口径流路からなり、この小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路を内包し、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路とを備え、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させるガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記助燃性ガス噴出流路が、多重環状構造を有し、
同一環状構造を構成する前記複数の小口径流路から噴出される助燃性ガスが前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路が配置され、
外側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端が、内側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、前記原料ガスの噴出方向下流側に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記多重環構造を構成するそれぞれの助燃性ガス噴出流路が、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で異なる複数の焦点を結ぶように配置され、
前記それぞれの助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記複数の焦点よりも上流側に位置していることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記多重環構造を構成するそれぞれの助燃性ガス噴出流路が、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で単一焦点を結ぶように配置され、
前記それぞれの助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記単一焦点よりも上流側に位置していることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記可燃性ガス噴出流路の外側に同心円上に設けられ、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路を備え、前記外側ガス噴出流路は助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記外側ガス噴出流路はシールガスを噴出するシールガス噴出流路を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記外側ガス噴出流路は、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、前記原料ガスの噴出軸上に向けてガスを噴出させることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記ガラス微粒子合成用バーナは、メインバーナとサブバーナとを有し、前記サブバーナに前記外側ガス噴出流路が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、開口端に向かって細くなるテーパ形状を有することを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項6から8の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、開口端に向かって細くなるテーパ部と、前記テーパ部に連続して開口端に向かって太くなる逆テーパ部を備えるくびれ形状を有することを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項6から10の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、空気を層状に噴出するエア噴出流路を備えており、
前記エア噴出流路は、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、前記原料ガスの噴出軸上に向けて前記空気を噴出させることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナを用いて、可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガス噴出流路から原料ガスを供給することによりガラス微粒子を合成し、合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法である。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法において、
内側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路から噴出させる助燃性ガスの速度を、外側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路から噴出させる助燃性ガスの速度よりも速くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、原料ガス流の温度を、生成されたガラス微粒子の揮発が顕著とならない適正な範囲で高温にすることができるので、良質なスート体を短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができることとなり、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るバーナの構成を示す図である。
【図2】OVD法によるスート形成工程の概略を示す図である。
【図3】比較例1で用いたバーナの構成を示す図である。
【図4】第1実施形態のバーナにおける助燃性ガス噴出端から補助助燃性ガス噴出端までの距離dLと堆積速度の関係について示す図である。
【図5】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図6】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図7】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図8】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図9】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図10】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図11】第1実施形態のバーナの変形例の構成を示す図である。
【図12】第2実施形態に係るバーナの構成を示す図である。
【図13】比較例2で用いたバーナの構成を示す図である。
【図14】第3実施形態に係るバーナの構成を示す図である。
【図15】第4実施形態に係るバーナの構成を示す図である。
【図16】比較例4で用いたバーナの構成を示す図である。
【図17】第5実施形態に係るバーナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の一例を示す図である。図1(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図1(b)には図1(a)におけるA−A断面を示している。
図1に示すように、バーナ10は、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11及び助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されて構成されている。バーナ10では、助燃性ガス噴出流路12、可燃性ガス噴出流路13からそれぞれ助燃性ガス、可燃性ガスを噴出させ、この助燃性ガス及び可燃性ガスからなる火炎中に原料ガスを供給することによりガラス微粒子を合成し、ターゲットロッドに堆積させる。
【0028】
原料ガス噴出流路11は、バーナ10の中心(可燃性ガス噴出流路13の中心)に配置されており、この原料ガス噴出流路11の外側に同心状にシールガス噴出流路16が配置されている。
【0029】
助燃性ガス噴出流路12は、原料ガス噴出流路11の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路で構成されている。また、助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスは、原料ガスの噴出軸AX上において焦点距離LF(例えば220mm)の地点Fで焦点を結ぶように傾斜して配置されている。
助燃性ガス噴出流路12の内径が小さいほど、少ないガス供給量で流速を速くすることができるが、内径が小さくなりすぎると流速を上げることが困難となる。一方で、助燃性ガス噴出流路12の内径が大きくなると適切な助燃性ガス流速を得る為には多量の助燃性ガスが必要となり非経済的である。これより、助燃性ガス噴出流路12の内径は0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmとする。
【0030】
可燃性ガス噴出流路13は、原料ガス噴出流路11及び助燃性ガス噴出流路12を内包する大口径流路で構成されている。可燃性ガス噴出流路13の内径は、可燃性ガスとしてHを使用する場合には25〜65mmとするのが望ましい。可燃性ガスと助燃性ガスの適切な流速差を得る為である。
【0031】
また、可燃性ガス噴出流路13の外側には、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを層状に噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が同心状に配置されており、その外側に保護フード17が配置されている。また、シールガス噴出流路14の噴出端と補助助燃性ガス噴出流路15の噴出端(補助助燃性ガス噴出端)15aは一致している。シールガスとしては、例えば、Ar、Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。なお、各噴出流路12〜16は、例えば石英ガラスやセラミックス等の耐熱性の高い材料で構成される。
【0032】
第1実施形態では、補助助燃性ガス噴出端15aは、助燃性ガス噴出流路12の噴出端(助燃性ガス噴出端)12aよりも、原料ガスの噴出方向下流側に位置している。
このように構成することで、原料ガス流の温度を、生成されたガラス微粒子が揮発し難い適正な範囲で高温にすることができるので、良質なスート体を短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができることとなり、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【0033】
図2は、第1実施形態のバーナ10を用いて、OVD法によりスート体を形成する工程について示した図である。本実施形態では、OVD法によりターゲットロッド2の外周面にスート体3を形成し、これを高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化して光ファイバ母材1を製造する。
【0034】
図2に示すように、OVD法では、バーナ10がターゲットロッド2の長手方向に往復移動可能に配置される。このバーナ10により、SiCl等の原料ガス、可燃性ガス(例えばH)、助燃性ガス(例えばO)及びシールガス(例えばN)が供給される。そして、可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎(例えば酸水素火炎)101中で原料ガスが火炎加水分解反応することによりガラス微粒子102が合成される。
ターゲットロッド2を軸中心に回転させながら、バーナ10を長手方向に往復移動させることで、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102が堆積され、スート体3が形成される。なお、ターゲットロッド2とバーナ10は相対移動すればよく、ターゲットロッド2を長手方向に往復移動させてもよい。そして、高温で加熱して脱水・焼結することにより、透明ガラス化された光ファイバ母材1が製造される。また、この光ファイバ母材1を加熱して線引きすることにより、光ファイバが製造される。なお、ターゲットロッド2には、例えばVAD法により作製されたコア母材が用いられる。
【0035】
[実施例1−1]
実施例1−1では、第1実施形態のバーナ10において、助燃性ガス噴出端12aから補助助燃性ガス噴出端15aまでの距離dLを200mmとした(原料ガスの噴出方向に200mm下流側)。なお、助燃性ガス噴出端12aは、原料ガス噴出流路11の噴出端とほぼ一致している。
このように設定したバーナ10を用いて、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。具体的には、バーナ10と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端11aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。そして、原料ガスをSiCl、可燃性ガスをH、助燃性ガスをOとして、ターゲットロッド2を回転させながらバーナ10を往復移動させ、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102を堆積させてスート体3を形成した。
【0036】
このとき、ターゲットロッド2の回転速度を100rpm、バーナ10のトラバース速度を2000mm/minとし、堆積時間は300minとした。また、原料ガス噴出流路11からは原料ガスSiClと助燃性ガスであるOを同量で混合して噴出させ、シールガス噴出流路16からは、シールガス噴出端(図1(a)のAの位置)における噴出端断面積と噴出量から、ガス温25℃として算出した流速が0.5m/sとなるようシールガス(N)を供給した。
【0037】
また、実施例1−1では、原料ガス噴出流路11の噴出端における流速(原料ガスの流速)を38m/s、助燃性ガス噴出流路12の噴出端12aにおける流速(助燃性ガスの流速)を32m/s、可燃性ガス噴出流路13の噴出端における流速(可燃性ガスの流速)を7m/s、補助助燃性ガス噴出流路15の噴出端15aにおける流速(補助助燃性ガスの流速)を9m/sとした。各噴出ガスの流速は、ガス温25℃としてガス供給量/噴出端の断面積により求まる。
そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例1−1に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0038】
[実施例1−2]
実施例1−2では、第1実施形態のバーナ10において、助燃性ガス噴出端12aから補助助燃性ガス噴出端15aまでの距離dLを300mmとした(原料ガスの噴出方向に300mm下流側)。
このように設定したバーナ10を用いて、実施例1−1と同様のスート形成条件により、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。特に、バーナ10と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端11aとターゲットロッド2表面との離間距離が430mmとなるように制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例1−2に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0039】
[比較例1−1]
図3は、比較例1−1、1−2で用いたバーナの構造を示す図である。
バーナ50は、図3に示すように、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路53内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路51及び助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路52が配置されて構成されている。
原料ガス噴出流路51は、バーナ50の中心(可燃性ガス噴出流路53の中心)に配置されており、この原料ガス噴出流路51の外側に同心状にシールガス噴出流路56が配置されている。
また、可燃性ガス噴出流路53の外側には、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として、シールガスを噴出するシールガス噴出流路54と助燃性ガスを層状に噴出する補助助燃性ガス噴出流路55が同心状に配置されており、その外側に保護フード57が配置されている。
【0040】
図3に示すバーナ50では、補助助燃性ガス噴出端55aが、助燃性ガス噴出端52aとほぼ同じ位置となっている点が、第1実施形態のバーナ10(図1参照)と異なる。比較例1−1では、助燃性ガス噴出端52aから補助助燃性ガス噴出端55aまでの距離dLを0mmとした。
このように設定したバーナ50を用いて、実施例1−1と同様のスート形成条件により、ターゲットロッド2にスート体を形成した。具体的には、バーナ50と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端51aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例1−1に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0041】
[比較例1−2]
比較例1−2では、比較例1−1と同様のバーナ50を用いて、ターゲットロッド2にスート体を形成した。具体的には、バーナ50と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端51aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。このとき、補助助燃性ガスの流速を0m/s(補助助燃性ガスの供給なし)とした。その他の条件は、実施例1−1と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例2に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
実施例1−1、1−2及び比較例1−1、1−2における堆積速度(g/min)の測定結果と、作製された光ファイバクラッド用透明ガラス体の増加重量と原料ガスの導入量から算出した堆積効率(%)を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1より、第1実施形態のバーナ10を用いることで、高い堆積効率を実現できることが確認された。すなわち、補助助燃性ガス噴出流路15の噴出端15aを、助燃性ガス噴出流路12の噴出端12aよりも、原料ガスの噴出方向に延出させることにより、堆積効率を向上させることができた。
比較例1−1における堆積効率及び堆積速度が実施例1−1、1−2より低いのは、可燃性ガスと補助助燃性ガスによる加熱が過剰となり、焦点近傍で温度が上がり過ぎてガラス微粒子が揮発したためと考えられる。
また、比較例1−2における堆積効率及び堆積速度が実施例1−1、1−2より低いのは、生成したガラス微粒子の揮発は抑制されているものの、補助助燃性ガスを噴出させなかったために、原料ガス流周りの火炎の変動が大きくなり、ガラス微粒子の合成と堆積が不安定になったためと考えられる。
【0044】
また、実施例1−1、実施例1−2において、燃焼に使用する水素ガス供給量、補助助燃性ガス供給量を10〜15%少なくしても、比較例1−1、1−2以上の効果(堆積効率及び堆積速度)を得られることが確認されている。
【0045】
図4は、第1実施形態のバーナ10における助燃性ガス噴出端12aから補助助燃性ガス噴出端15aまでの距離dLと堆積速度の関係について示す図である。
図4に示すように、助燃性ガス噴出端12aから補助助燃性ガス噴出端15aまでの距離dLを長くすることに伴い、堆積速度が速くなる。また、助燃性ガス噴出端12aから補助助燃性ガス噴出端15aまでの距離dLを100mm以上とすることにより、助燃性ガス噴出端12aと補助助燃性ガス噴出端15aをほぼ一致させた場合に比較して、堆積速度を10%以上向上させることができる。
【0046】
[第1実施形態の変形例1]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例1について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0047】
図5は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例1を示す図である。図5(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図5(b)には図5(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
【0048】
図5に示すように、バーナ10aは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5aとを備え、サブバーナ5aの外側に保護フード17が配置されている。
サブバーナ5aのシールガス噴出流路14は、シールガス噴出流路14から噴出されるシールガスが、原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶように、その先端部が傾斜した形状に形成されている。
このメインバーナ5とサブバーナ5a、保護フード17は、着脱可能に構成されており、メインバーナ5とサブバーナ5a、サブバーナ5aと保護フード17の嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5とサブバーナ5a、サブバーナ5aと保護フード17の間の気密性が保持でき、メインバーナ5とサブバーナ5a、サブバーナ5aと保護フード17の中心軸合わせを容易にできる。
【0049】
そして、メインバーナ5にサブバーナ5aを組み付けた状態で、サブバーナ5aのシールガス噴出流路14は、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、原料ガスの噴出軸AX上に向けてガスを噴出させるように構成されている。なお、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスは、原料ガス噴出流路11から噴出される原料ガスの噴出軸AX上の地点Fで焦点を結ぶように噴出される。
このように、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、サブバーナ5aからシールガスを噴出させることによって、バーナ10aの内側に空気が逆流して流入することを防ぐことができる。
このように空気が流入することを防ぐことで、バーナ10aにおける火炎温度が低下することを防ぎ、バーナ10aの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10aの内側に空気が流入することによるバーナ10a内でのガスの流れ、特にサブバーナ5aの補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスの流れが乱されることを防ぐことができ、バーナ先端焼けを防止することができる。
【0050】
また、メインバーナ5とサブバーナ5a、保護フード17が着脱可能であるので、サブバーナ5aあるいは保護フード17内にガラス微粒子が付着した場合もメインバーナ5からサブバーナ5a、保護フード17を取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5a、あるいは保護フード17内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。つまり、従来のようにメインバーナ部分を取り外すことが不要になるので、清掃後のメインバーナの位置出しが不要になり、メンテナンスの煩わしさが低減する。
また、特開2000−211937号公報に記載されている技術のように、バーナを超音波洗浄機で洗浄する場合、バーナ全体での清掃を行うことに比べて洗浄槽を小さくできるので、低コストでのメンテナンスが可能であり経済的である。
また、従来はバーナの劣化が進むと、バーナ全体を交換していたが、最も劣化し易いサブバーナ5a、保護フード17を着脱可能としたことで、サブバーナ5a、保護フード17のみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10aの性能を維持することができる。
【0051】
[第1実施形態の変形例2]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例2について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0052】
図6は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例2を示す図である。図6(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図6(b)には図6(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
【0053】
図6に示すように、バーナ10bは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5bとを備え、サブバーナ5bの外側に保護フード17が配置されている。なお、保護フード17を備えない構成であってもよい。
サブバーナ5bのシールガス噴出流路14は、シールガス噴出流路14から噴出されるシールガスが、原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶように、その先端部が傾斜した形状に形成されている。同様に、サブバーナ5bの補助助燃性ガス噴出流路15は、補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスが、原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶように、その先端部が傾斜した形状に形成されている。
このメインバーナ5とサブバーナ5b、保護フード17は、着脱可能に構成されており、メインバーナ5とサブバーナ5b、サブバーナ5bと保護フード17の嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5とサブバーナ5b、サブバーナ5bと保護フード17の間の気密性が保持でき、メインバーナ5とサブバーナ5b、サブバーナ5bと保護フード17の中心軸合わせを容易にできる。
【0054】
そして、メインバーナ5にサブバーナ5bを組み付けた状態で、サブバーナ5bのシールガス噴出流路14と補助助燃性ガス噴出流路15は、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、原料ガスの噴出軸AX上に向けてガスを噴出させるように構成されている。なお、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスは、原料ガス噴出流路11から噴出される原料ガスの噴出軸AX上の地点Fで焦点を結ぶように噴出される。
このように、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、サブバーナ5bのシールガス噴出流路14と補助助燃性ガス噴出流路15から、それぞれシールガスと助燃性ガスを噴出させることによって、バーナ10bの内側に空気が逆流して流入することを防ぐことができる。
【0055】
このようなメインバーナ5とサブバーナ5bを備えるバーナ10bであっても、バーナ10aと同様に、バーナ10bの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10bの内側に空気が流入することによるバーナ10b内でのガスの流れ、特にサブバーナ5bの補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスの流れが乱されることを防ぐことで、バーナ先端焼けを防止することができる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5b、保護フード17が着脱可能であるので、メインバーナ5からサブバーナ5b、保護フード17を取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5b、あるいは保護フード17内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5b、保護フード17を着脱可能としたことで、サブバーナ5b、保護フード17のみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10bの性能を維持することができる。
【0056】
[第1実施形態の変形例3]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例3について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0057】
図7は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例3を示す図である。図7(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図7(b)には図7(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
【0058】
図7に示すように、バーナ10cは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5cとを備え、サブバーナ5cの外側に保護フード17cが配置されている。
このサブバーナ5cのシールガス噴出流路14および補助助燃性ガス噴出流路15は、その噴出端に向かって細くなるテーパ形状を有しており、原料ガスの噴出軸AXに向かって傾斜している。
【0059】
なお、サブバーナ5cのシールガス噴出流路14および補助助燃性ガス噴出流路15は、原料ガスの噴出軸AXに沿って平行な円筒形状であってもよい。
例えば、図8に示すバーナ10gは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5gとを備え、サブバーナ5gの外側に保護フード17gが配置されている。
このサブバーナ5gのシールガス噴出流路14および補助助燃性ガス噴出流路15は、原料ガスの噴出軸AXに沿って平行な円筒形状を有している。
【0060】
また、サブバーナ5cの外側に設けられた保護フード17cは、シールガス噴出流路14から噴出されるシールガスと補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスが、それぞれ原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶように開口端が先細り、その先端部が傾斜したテーパ形状に形成されている。
特に、保護フード17cの先端部のテーパ角度は、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で原料ガスの噴出軸AX上に向けてガスを噴出させるように形成されている。
なお、この保護フード17cの先端部の焼け(バーナ先端焼け)を防止するうえで、保護フード17cの先端部の開口の内径は、メインバーナ5の可燃性ガス噴出流路13の外径とほぼ同じ(例えば、±10%以内)であることが好ましい。また、保護フード17cのサブバーナ5cの先端からの延出長さは、60mm以下であることが好ましい。
【0061】
また、保護フード17c(17g)の先端部が先細るテーパ角度θであって、メインバーナ5における原料ガス噴出流路11から噴出される原料ガスの噴出軸AXに対して、保護フード17cの先端部が成すテーパ角度θは、5度以上45度以下であることが好ましい。
具体的に、バーナ10c(10g)における保護フード17c(17g)内での火炎の乱れを抑えるためには、テーパ角度θが45度以下であることが好ましい。また、バーナ10cにおける保護フード17c内に外からの空気の流入を防ぐためには、テーパ角度θが5度以上であることが好ましい。
また、保護フード17cにおける最小径部の断面積は、先端の赤熱を防止するため、メインバーナ5の開口面積(つまり、可燃性ガス噴出流路13の断面積)の70%以上であることが好ましい。
このように、開口端の先端部に向けて先細るテーパ形状の保護フード17cを用いることで、保護フード17c内の圧力を上げ、空気の流入を防ぐことができるため、サブバーナ5cへのガラス微粒子の付着を抑制できる。さらに火炎の直進性が改善されるため、ターゲットに当たった火炎が均等に広がり、スート堆積面の温度分布の均一性が上がり、脈理が改善する効果もある。
【0062】
このメインバーナ5とサブバーナ5c、保護フード17cは、着脱可能に構成されており、メインバーナ5とサブバーナ5c、サブバーナ5cと保護フード17cの嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5とサブバーナ5c、サブバーナ5cと保護フード17cの間の気密性が保持でき、メインバーナ5とサブバーナ5c、サブバーナ5cと保護フード17cの中心軸合わせを容易にできる。
【0063】
そして、メインバーナ5にサブバーナ5c、保護フード17cを組み付けた状態で、サブバーナ5cのシールガス噴出流路14と補助助燃性ガス噴出流路15は保護フード17cによって、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、原料ガスの噴出軸AX上に向けてガスを噴出させるように構成されている。
このように、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、サブバーナ5cのシールガス噴出流路14と補助助燃性ガス噴出流路15から原料ガスの噴出軸AX上で焦点を結ぶように、それぞれシールガスと助燃性ガスを噴出させることによって、バーナ10cの内側に空気が逆流して流入することを防ぐことができる。
【0064】
このようなメインバーナ5とサブバーナ5cを備えるバーナ10cであっても、バーナ10aと同様に、バーナ10cの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10cの内側に空気が流入することによるバーナ10c内でのガスの流れ、特にサブバーナ5cの補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスの流れが乱されることを防ぐことで、バーナ先端焼けを防止することができる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5c、保護フード17cが着脱可能であるので、メインバーナ5からサブバーナ5c、保護フード17cを取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5c、あるいは保護フード17c内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5c、保護フード17cを着脱可能としたことで、サブバーナ5c、保護フード17cのみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10cの性能を維持することができる。
【0065】
[第1実施形態の変形例4]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例4について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0066】
図9は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例4を示す図である。図9(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図9(b)には図9(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
【0067】
図9に示すように、バーナ10dは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5dとを備え、サブバーナ5dの外側に空気を層状に噴出するエア噴出流路18を備える保護フード17が配置されている。
保護フード17のエア噴出流路18は、エア噴出流路18から噴出される空気が、原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶように、その先端部が傾斜した形状に形成されている。
このメインバーナ5とサブバーナ5d、保護フード17は、着脱可能に構成されており、メインバーナ5とサブバーナ5d、サブバーナ5dと保護フード17の嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5とサブバーナ5d、サブバーナ5dと保護フード17の間の気密性が保持でき、メインバーナ5とサブバーナ5d、サブバーナ5dと保護フード17の中心軸合わせを容易にできる。
【0068】
そして、メインバーナ5にサブバーナ5dおよび保護フード17を組み付けた状態で、保護フード17のエア噴出流路18は、メインバーナ5の助燃性ガス噴出流路12から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、原料ガスの噴出軸AX上に向けて空気を噴出させるように構成されている。
このように、メインバーナ5から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、保護フード17のエア噴出流路18から原料ガスの噴出軸AX上で焦点を結ぶように空気を噴出させることによって、バーナ10dの内側に空気が逆流して流入することを防ぐことができる。
【0069】
このようなメインバーナ5とサブバーナ5d、保護フード17を備えるバーナ10dであっても、バーナ10aと同様に、バーナ10dの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10dの内側に空気が流入することによるバーナ10d内でのガスの流れ、特にサブバーナ5dの補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスの流れが乱されることを防ぐことで、バーナ先端焼けを防止することができる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5d、保護フード17が着脱可能であるので、メインバーナ5からサブバーナ5d、保護フード17を取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5d、あるいは保護フード17内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5d、保護フード17を着脱可能としたことで、サブバーナ5d、保護フード17のみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10dの性能を維持することができる。
【0070】
[第1実施形態の変形例5]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例5について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0071】
図10は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例5を示す図である。図10(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図10(b)には図10(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0072】
図10に示すように、バーナ10fは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5fとを備え、サブバーナ5fの外側に保護フード17が配置されている。
このメインバーナ5とサブバーナ5f、保護フード17は、着脱可能に構成されており、メインバーナ5とサブバーナ5f、サブバーナ5fと保護フード17の嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5とサブバーナ5f、サブバーナ5fと保護フード17の間の気密性が保持でき、メインバーナ5とサブバーナ5f、サブバーナ5fと保護フード17の中心軸合わせを容易にできる。
【0073】
また、保護フード17の先端側の断面形状は、真円形であっても楕円形でもよく、その他の任意の形状であってもよい。
この保護フード17を備えたサブバーナ10fの先端側から、シールガスと助燃性ガスを噴出することで、バーナの先端を熱から保護することができ、バーナ先端焼けを防止することができる。それにより、ターゲット近傍までバーナを延長でき、火炎の直進性を確保できる。
【0074】
このようなメインバーナ5とサブバーナ5fを備えるバーナ10fであっても、バーナ10aと同様に、メインバーナ5とサブバーナ5f、保護フード17が着脱可能であるので、メインバーナ5からサブバーナ5f、保護フード17を取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5f、あるいは保護フード17内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5f、保護フード17を着脱可能としたことで、サブバーナ5f、保護フード17のみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10fの性能を維持することができる。
【0075】
[第1実施形態の変形例6]
次に、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナの変形例6について説明する。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0076】
図11は、第1実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の変形例6を示す図である。図11(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図11(b)には図11(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
なお、第1実施形態のバーナ10と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0077】
図11に示すように、バーナ10hは、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路13内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路11、シールガスを噴出するシールガス噴出流路16、助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路12が配置されているメインバーナ5と、可燃性ガス噴出流路13の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14と助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路15が、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路として同心状に配置されたサブバーナ5hとを備え、サブバーナ5hの外側に保護フード17hが配置されている。
このサブバーナ5hにおける保護フード17hは、開口端に向かって細くなるテーパ部171と、そのテーパ部171に連続して開口端に向かって太くなる逆テーパ部172を備えるくびれ形状を有している。
【0078】
保護フード17hが先細るテーパ部171のテーパ角度θであって、メインバーナ5における原料ガス噴出流路11から噴出される原料ガスの噴出軸AXに対して、保護フード17hのテーパ部171が成すテーパ角度θは、5度以上45度以下であることが好ましい。
具体的に、バーナ10hにおける保護フード17h内での火炎の乱れを抑えるためには、テーパ角度θが45度以下であることが好ましい。また、バーナ10hにおける保護フード17h内に外からの空気の流入を防ぐためには、テーパ角度θが5度以上であることが好ましい。
【0079】
また、保護フード17hにおけるテーパ部171に連続して開口端に向かって太くなる逆テーパ部172の逆テーパ角度θであって、メインバーナ5における原料ガス噴出流路11から噴出される原料ガスの噴出軸AXに対して、保護フード17hの逆テーパ部172が成すテーパ角度θは、45度以上90度未満であることが好ましい。
具体的に、バーナ10hにおける保護フード17hから、火炎を速やかに剥離・離間させるため45度以上90度未満であることが好ましい。
【0080】
さらに、保護フード17hにおける最小径部の断面積は、先端の赤熱を防止するため、メインバーナ5の開口面積(つまり、可燃性ガス噴出流路13の断面積)の70%以上100%以下であることが好ましい。また、保護フード17hにおける開口端の先端部の断面積は、火炎の乱れを抑えるため、最小径部の断面積に対し110%以上150%以下であることが好ましい。
【0081】
このようなメインバーナ5とサブバーナ5hを備えるバーナ10hであっても、バーナ10aと同様に、バーナ10hの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10hの内側に空気が流入することによるバーナ10h内でのガスの流れ、特にサブバーナ5hの補助助燃性ガス噴出流路15から噴出される助燃性ガスの流れが乱されることを防ぐことで、バーナ先端焼けを防止することができる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5h、保護フード17hが着脱可能であるので、メインバーナ5からサブバーナ5h、保護フード17hを取り外して、メインバーナ5、サブバーナ5h、あるいは保護フード17h内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5とサブバーナ5h、保護フード17hを着脱可能としたことで、サブバーナ5h、保護フード17hのみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10cの性能を維持することができる。
【0082】
[第2実施形態]
図12は、第2実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の一例を示す図である。図12(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図12(b)には図12(a)におけるA−A断面を示している。
図12に示すように、バーナ20は、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路23内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路21及び助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路22が配置されて構成されている。バーナ20では、助燃性ガス噴出流路22、可燃性ガス噴出流路23からそれぞれ助燃性ガス、可燃性ガスを噴出させ、この助燃性ガス及び可燃性ガスからなる火炎中に原料ガスを供給することによりガラス微粒子を合成し、ターゲットロッドに堆積させる。
【0083】
原料ガス噴出流路21は、バーナ20の中心(可燃性ガス噴出流路23の中心)に配置されており、この原料ガス噴出流路21の外側に同心状にシールガス噴出流路26が配置されている。
【0084】
助燃性ガス噴出流路22は、原料ガス噴出流路21の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路221と、第1助燃性ガス噴出流路221の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路222と、第2助燃性ガス噴出流路222の外側に等間隔で環状配置された12個の小口径流路からなる第3助燃性ガス噴出流路223とで構成された三重環構造となっている。
第1助燃性ガス噴出流路221は原料ガス噴出流路21及びシールガス噴出流路26を取り囲むように可燃性ガス噴出流路23内に配置され、第2助燃性ガス噴出流路222は第1助燃性ガス噴出流路221を取り囲むように可燃性ガス噴出流路23内に配置され、第3助燃性ガス噴出流路223は第2助燃性ガス噴出流路222を取り囲むように可燃性ガス噴出流路23内に配置されている。
【0085】
また、第1助燃性ガス噴出流路221から噴出される第1助燃性ガスは原料ガスの噴出軸AX上において焦点距離LF1(例えば165mm)の地点F1で焦点を結び、第2助燃性ガス噴出流路222から噴出される第2助燃性ガスは原料ガスの噴出軸AX上において焦点距離LF2(例えば190mm)の地点F2で焦点を結び、第3助燃性ガス噴出流路223から噴出される第3助燃性ガスは原料ガスの噴出軸AX上において焦点距離LF3(例えば210mm)の地点F3で焦点を結ぶように傾斜して配置されている。
第1助燃性ガス噴出流路221、第2助燃性ガス噴出流路222及び第3助燃性ガス噴出流路223を構成する小口径流路の内径は同一とされ、それぞれ別系統の供給路を通して助燃性ガスが供給される。したがって、それぞれのガス供給量を調整することで、噴出される助燃性ガスの流速は個別に制御される。
【0086】
助燃性ガス噴出流路22の内径が小さいほど、少ないガス供給量で流速を速くすることができるが、内径が小さくなりすぎると流速を上げることが困難となる。一方で、助燃性ガス噴出流路22の内径が大きくなると多量の助燃性ガスが必要となり非経済的である。これより、助燃性ガス噴出流路22の内径は0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmとする。
【0087】
可燃性ガス噴出流路23は、原料ガス噴出流路21及び助燃性ガス噴出流路22を内包する大口径流路で構成されている。可燃性ガス噴出流路23の内径は、可燃性ガスとしてHを使用する場合には25〜85mmとするのが望ましい。可燃性ガスと助燃性ガスの適切な流速差を得る為である。
【0088】
また、可燃性ガス噴出流路23の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路24が配置されており、その外側に保護フード27が配置されている。シールガスとしては、例えば、Ar、Nなどの不活性ガスが一般的に用いられる。なお、各噴出流路22〜26は、例えば石英ガラスやセラミックス等の耐熱性の高い材料で構成される。
【0089】
第2実施形態では、第2助燃性ガス流路222の噴出端(第2助燃性ガス噴出端)222aは、第1助燃性ガス流路221の噴出端(第1助燃性ガス噴出端)221aよりも、原料ガスの噴出方向下流側に位置している。また、第3助燃性ガス流路223の噴出端(第3助燃性ガス噴出端)223aは、第2助燃性ガス噴出端222aよりも、原料ガスの噴出方向下流側に位置している。
このように構成することで、原料ガス流の温度を、生成されたガラス微粒子が揮発しない適正な範囲で高温にすることができるので、良質なスート体を短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができることとなり、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【0090】
また、第2実施形態のバーナ20において、可燃性ガスとしてH、助燃性ガスとしてOを用いる場合、原料ガス流に近い内側における可燃性ガスと助燃性ガスの流速差を、外側における可燃性ガスと助燃性ガスの流速差より大きくするのが望ましい。これにより、可燃性ガスと助燃性ガス界面での燃焼で生成したHOが、SiClからなる原料ガス流に速やかに供給されてガラス微粒子(SiO)の合成反応を促進する一方で、原料ガス流の温度が上がりすぎるのを避けられるので、堆積効率が向上する。
【0091】
[実施例2−1]
実施例2−1では、第2実施形態のバーナ20において、第1助燃性ガス噴出端221aから第2助燃性ガス噴出端222aまでの距離dL1を25mmとし(原料ガスの噴出方向に25mm下流側)、第1助燃性ガス噴出端221aから第3助燃性ガス噴出端223aまでの距離dL2を65mmとした(原料ガスの噴出方向に65mm下流側)。なお、第1助燃性ガス噴出端221aは、原料ガス噴出端とほぼ一致している。
このように設定したバーナ20を用いて、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。具体的には、バーナ20と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端21aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。そして、原料ガスをSiCl、可燃性ガスをH、助燃性ガスをOとして、ターゲットロッド2を回転させながらバーナ20を往復移動させ、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102を堆積させてスート体3を形成した。このとき、ターゲットロッド2の回転速度を100rpm、バーナ20のトラバース速度を2000mm/minとし、堆積時間は300minとした。また、原料ガス噴出流路21からは原料ガスSiClと助燃性ガスであるOを同量で混合して噴出させ、シールガス噴出流路26からは、シールガス噴出端(図12(a)のAの位置)における噴出端断面積と噴出量から、ガス温25℃として算出した流速が0.5m/sとなるようシールガス(N)を供給した。
【0092】
また、実施例2−1では、原料ガス噴出流路21の噴出端における流速(原料ガスの流速)を40m/s、第1助燃性ガス噴出端221aにおける流速(第1助燃性ガスの流速)を36m/s、第2助燃性ガス噴出端222aにおける流速(第2助燃性ガスの流速)を32m/s、第3助燃性ガス噴出端223aにおける流速(第3助燃性ガスの流速)を32m/s、可燃性ガス噴出流路23の噴出端における流速(可燃性ガスの流速)を8m/sとした。各噴出ガスの流速は、ガス温25℃としてガス供給量/噴出端の断面積により求まる。
そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例2−1に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0093】
[実施例2−2]
実施例2−2では、第2実施形態のバーナ20において、第1助燃性ガス噴出端221aから第2助燃性ガス噴出端222aまでの距離dL1を25mmとし(原料ガスの噴出方向に25mm下流側)、第1助燃性ガス噴出端221aから第3助燃性ガス噴出端223aまでの距離dL2を160mmとした(原料ガスの噴出方向に160mm下流側)。第3助燃性ガス噴出端223aの位置が実施例2−1と異なる。
このように設定したバーナ20を用いて、実施例2−1と同様のスート形成条件により、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例2−2に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0094】
[比較例2]
図13は、比較例2で用いたバーナの構造を示す図である。
バーナ60は、図13に示すように、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路63内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路61及び助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路62が配置されて構成されている。
原料ガス噴出流路61は、バーナ60の中心(可燃性ガス噴出流路63の中心)に配置されており、この原料ガス噴出流路61の外側に同心状にシールガス噴出流路66が配置されている。
助燃性ガス噴出流路62は、原料ガス噴出流路61の外側に等間隔で環状配置された6個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路621と、第1助燃性ガス噴出流路621の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路622と、第2助燃性ガス噴出流路622の外側に等間隔で環状配置された12個の小口径流路からなる第3助燃性ガス噴出流路623とで構成された三重環構造となっている。
また、可燃性ガス噴出流路63の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路64が配置されており、その外側に保護フード67が配置されている。
【0095】
図13に示すバーナ60は、第2実施形態のバーナ20(図12参照)とほぼ同様であり、第2助燃性ガス噴出端622a及び第3助燃性ガス噴出端623aが、第1助燃性ガス噴出端621aとほぼ同じ位置となっている点が、バーナ20と異なる。
このように設定したバーナ60を用いて、実施例2−1と同様のスート形成条件により、ターゲットロッド2にスート体を形成した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例2に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0096】
実施例2−1、2−2及び比較例2における堆積速度(g/min)の測定結果と、作製された光ファイバクラッド用透明ガラス体の増加重量と原料ガスの導入量から算出した堆積効率(%)を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2より、第2実施形態のバーナ20を用いることで、高い堆積効率を実現できることが確認された。すなわち、外側に環状配置される助燃性ガス噴出流路の噴出端を、内側に環状配置される助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、原料ガスの噴出方向に延出させることにより、堆積効率を向上させることができた。
比較例2における堆積効率及び堆積速度が実施例2−1、2−2より低いのは、可燃性ガスと助燃性ガスによる加熱が過剰となり、焦点近傍で温度が上がり過ぎてガラス微粒子が揮発したためと考えられる。
【0099】
実施例2−2では、高い堆積効率が実現できているが、実施例2−1に比較すると若干低い。また、ガラス微粒子を堆積させた後の第3助燃性ガス噴出端223aを観察したところ、内面にガラス微粒子が付着していた。そこで、実施例2−2において、第3助燃性ガス噴出流路223の挙動を観察したところ、流速の速いガス流の影響により振動していることが確認された。なお、助燃性ガス噴出流路の強度にもよるが、石英ガラスで構成した場合には、長さが100mmを超えると振動が見受けられた。
つまり、第3助燃性ガス噴出端223aは焦点F1近傍に位置しており、第3助燃性ガス噴出流路223が振動することにより焦点F3近傍でガス流が乱れるため、堆積効率が実施例2−1より低下し、また生成されたガラス微粒子のごく一部が第3助燃性ガス噴出端223aの先端に付着したと考えられる。
これより、助燃性ガス噴出流路を複数の焦点を有する多重環構造とする場合、助燃性ガス噴出流路221〜223の噴出端221a〜223aが、焦点F1〜F3より上流側(最も上流側にある焦点F1までの距離(焦点距離LF1)の30〜70%程度、好ましくは50%程度)となるように配置するのが望ましい。
【0100】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の一例を示す図である。図14(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図14(b)には図14(a)におけるA−A断面を示している。図14において、第2実施形態のバーナ20の構成要素と同一又は対応する構成要素には30番台の符号を付し、重複する説明については省略する。
第3実施形態のバーナ30では、シールガス噴出流路34の外側に、層状の補助助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路35を設けている点が第2実施形態のバーナ20(図12参照)と異なる。その他の助燃性ガス噴出流路32の構成等はバーナ20と同様である。補助助燃性ガス噴出流路35は、噴出端35aが助燃性ガス噴出端321a、322a、323aよりも、原料ガスの噴出方向下流側(例えば原料ガス噴出端から180mm程度)に位置している。
【0101】
第3実施形態のバーナ30によれば、第2実施形態のバーナ20と同様に、原料ガス流の温度を、生成されたガラス微粒子が揮発しない適正な範囲で高温にすることができるので、良質なスート体を短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができることとなり、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
また、補助助燃性ガス噴出流路35を設けたことにより、原料ガス流周りの火炎の変動が抑えられ、バーナ火炎内でのガラス微粒子の合成と堆積が安定するので、さらに堆積効率を向上させることができる。
【0102】
[実施例3−1]
実施例3−1では、第3実施形態のバーナ30において、第1助燃性ガス噴出端321aから第2助燃性ガス噴出端322aまでの距離dL1を25mmとし(原料ガスの噴出方向に25mm下流側)、第1助燃性ガス噴出端321aから第3助燃性ガス噴出端323aまでの距離dL2を50mmとした(原料ガスの噴出方向に50mm下流側)。
このように設定したバーナ30を用いて、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。具体的には、バーナ30と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端11aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。そして、原料ガスをSiCl、可燃性ガスをH、助燃性ガスをOとして、ターゲットロッド2を回転させながらバーナ30を往復移動させ、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102を堆積させてスート体3を形成した。このとき、ターゲットロッド2の回転速度を100rpm、バーナ20のトラバース長を2000mmとし、堆積時間は300minとした。また、原料ガス噴出流路31からは原料ガスSiClと助燃性ガスであるOを同量で混合して噴出させ、シールガス噴出流路36からは、シールガス噴出流路36からは、シールガス噴出端(図14(a)のAの位置)における噴出端断面積と噴出量から、ガス温25℃として算出した流速が0.5m/sとなるようシールガス(N)を供給した。
【0103】
また、実施例3−1では、原料ガス噴出流路31の噴出端における流速(原料ガスの流速)を48m/s、第1助燃性ガス噴出端321aにおける流速(第1助燃性ガスの流速)を36m/s、第2助燃性ガス噴出端322aにおける流速(第2助燃性ガスの流速)を32m/s、第3助燃性ガス噴出端323aにおける流速(第3助燃性ガスの流速)を32m/s、可燃性ガス噴出流路33の噴出端における流速(可燃性ガスの流速)を10m/s、補助助燃性ガス噴出流路35の噴出端における流速(補助助燃性ガスの流速)を11m/sとした。各噴出ガスの流速は、ガス温25℃としてガス供給量/噴出端の断面積により求まる。
そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例3−1に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0104】
[実施例3−2]
実施例3−2では、実施例3−1と同様のバーナ30を用いて、ターゲットロッド2にスート体を形成した。このとき、第1〜第3助燃性ガスの流速を33m/sとし、その他の条件は実施例3−1と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例3−2に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0105】
[実施例3−3]
実施例3−3では、実施例3−1と同様のバーナ30を用いて、ターゲットロッド2にスート体を形成した。このとき、第1助燃性ガスの流速を32m/s、第2助燃性ガスの流速を36m/s、第3助燃性ガスの流速を36m/sとし、その他の条件は実施例3−1と同様とした。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例3−3に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0106】
実施例3−1〜3−3における堆積速度(g/min)の測定結果と、作製された光ファイバクラッド用透明ガラス体の増加重量と原料ガスの導入量から算出した堆積効率(%)を表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表3より、第3実施形態のバーナ30を用いることで、高い堆積効率を実現できることが確認された。すなわち、外側に環状配置される助燃性ガス噴出流路の噴出端を、内側に環状配置される助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、原料ガスの噴出方向に延出させることにより、堆積効率を向上させることができる。また、実施例2との比較より、補助助燃性ガス噴出流路35を設けることによる有効性が確認された。
また、助燃性ガス噴出流路32を多重環構造とする場合、内側の助燃性ガス速度を外側の助燃性ガス速度よりも速くすることで、より高い堆積効率を実現できることが確認された。なお、第2実施形態のバーナ20においても、同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0109】
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の一例を示す図である。図15(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図15(b)には図15(a)におけるA−A断面を示している。図15において、第2実施形態のバーナ20の構成要素と同一又は対応する構成要素には40番台の符号を付し、重複する説明については省略する。
第4実施形態のバーナ40では、第1助燃性ガス噴出流路421から噴出される第1助燃性ガス、第2助燃性ガス噴出流路422から噴出される第2助燃性ガス、第3助燃性ガス噴出流路423から噴出される第3助燃性ガスが、原料ガスの噴出軸AX上において焦点距離LF(例えば200mm)の地点Fで単一の焦点を結ぶように助燃性ガス噴出流路42が傾斜して配置されている点が第2実施形態のバーナ20と異なる。その他の構成についてはバーナ20と同様である。
【0110】
第4実施形態のバーナ40によれば、第2実施形態のバーナ20と同様に、原料ガス流の温度を、生成されたガラス微粒子が揮発を低減する適正な範囲で高温にすることができるので、良質なスート体を短時間で効率的に形成することができる。したがって、大型の光ファイバ母材をより短時間で製造することができることとなり、光ファイバ母材の製造コストを格段に低減することができる。
【0111】
[実施例4]
実施例4では、第4実施形態のバーナ40において、第1助燃性ガス噴出端421aから第2助燃性ガス噴出端422aまでの距離dL1を25mmとし(原料ガスの噴出方向に25mm下流側)、第1助燃性ガス噴出端421aから第3助燃性ガス噴出端423aまでの距離dL2を65mmとした(原料ガスの噴出方向に65mm下流側)。なお、第1助燃性ガス噴出端421aは、原料ガス噴出端とほぼ一致している。
このように設定したバーナ40を用いて、ターゲットロッド2にスート体3を形成した。具体的には、バーナ40と75mmφのターゲットロッド2を対向配置し、堆積中、原料ガス噴出端41aとターゲットロッド2表面との離間距離が300mmとなるように制御した。そして、原料ガスをSiCl、可燃性ガスをH、助燃性ガスをOとして、ターゲットロッド2を回転させながらバーナ40を往復移動させ、ターゲットロッド2の外周面にガラス微粒子102を堆積させてスート体3を形成した。このとき、ターゲットロッド2の回転速度を100rpm、バーナ40のトラバース速度を2000mm/minとし、堆積時間は300minとした。また、原料ガス噴出流路41からは原料ガスSiClと助燃性ガスであるOを同量で混合して噴出させ、シールガス噴出流路46からは、シールガス噴出端(図15(a)のAの位置)における噴出端断面積と噴出量から、ガス温25℃として算出した流速が0.5m/sとなるようシールガス(N)を供給した。
【0112】
また、実施例4では、原料ガス噴出流路41の噴出端における流速(原料ガスの流速)を45m/s、第1助燃性ガス噴出端421aにおける流速(第1助燃性ガスの流速)を35m/s、第2助燃性ガス噴出端422aにおける流速(第2助燃性ガスの流速)を31m/s、第3助燃性ガス噴出端423aにおける流速(第3助燃性ガスの流速)を22m/s、可燃性ガス噴出流路23の噴出端における流速(可燃性ガスの流速)を8m/sとした。各噴出ガスの流速は、ガス温25℃としてガス供給量/噴出端の断面積により求まる。
そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、実施例4−1に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0113】
[比較例4]
図16は、比較例4で用いたバーナの構造を示す図である。
バーナ70は、図16に示すように、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路73内に、原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路71及び助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路72が配置されて構成されている。
原料ガス噴出流路71は、バーナ70の中心(可燃性ガス噴出流路73の中心)に配置されており、この原料ガス噴出流路71の外側に同心状にシールガス噴出流路76が配置されている。
助燃性ガス噴出流路72は、原料ガス噴出流路71の外側に等間隔で環状配置された7個の小口径流路からなる第1助燃性ガス噴出流路721と、第1助燃性ガス噴出流路721の外側に等間隔で環状配置された8個の小口径流路からなる第2助燃性ガス噴出流路722と、第2助燃性ガス噴出流路722の外側に等間隔で環状配置された12個の小口径流路からなる第3助燃性ガス噴出流路723とで構成された三重環構造となっている。
また、可燃性ガス噴出流路73の外側には、シールガスを噴出するシールガス噴出流路74が配置されており、その外側に保護フード77が配置されている。
【0114】
図16に示すバーナ70は、第4実施形態のバーナ40(図15参照)とほぼ同様であり、第2助燃性ガス噴出端722a及び第3助燃性ガス噴出端723aが、第1助燃性ガス噴出端721aとほぼ同じ位置となっている点が、バーナ40と異なる。
このように設定したバーナ70を用いて、実施例4と同様のスート形成条件により、ターゲットロッド2にスート体を形成した。そして、高温で加熱して脱水・焼結することによりスート体3を透明ガラス化し、比較例4に係る光ファイバクラッド用透明ガラス体を作製した。
【0115】
実施例4及び比較例4における堆積速度(g/min)の測定結果と、作製された光ファイバクラッド用透明ガラス体の増加重量と原料ガスの導入量から算出した堆積効率(%)を表4に示す。
【0116】
【表4】

【0117】
表4より、第4実施形態のバーナ40を用いることで、高い堆積効率を実現できることが確認された。すなわち、多重環構造を構成するそれぞれの助燃性ガス噴出流路421,422,423を、原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で単一焦点を結ぶように配置する場合にも、外側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端を、内側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、原料ガスの噴出方向下流側に延出させ、さらに、それぞれの助燃性ガス噴出流路の噴出端を、単一焦点よりも上流側に位置させることで、堆積効率と堆積速度の向上を図ることができた。
【0118】
また、第4実施形態のバーナ40において、第3実施形態のように補助助燃性ガス噴出流路を設けることにより、さらに堆積効率と堆積速度の向上を図ることができる。この場合、補助助燃性ガス噴出流路を、噴出端が助燃性ガス噴出端421a、422a、423aよりも、原料ガスの噴出方向下流側に位置させるのが望ましい。
【0119】
[第5実施形態]
図17は、第5実施形態に係るガラス微粒子合成用バーナ(以下、バーナ)の一例を示す図である。図17(a)にはバーナの長手方向の断面を模式的に示しており、図17(b)には図17(a)におけるA−A線に沿った断面を示している。
なお、第2実施形態のバーナ20と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0120】
図17に示すように、バーナ10eは、バーナ20(図12参照)と同様の原料ガス噴出流路21、助燃性ガス噴出流路22(第1助燃性ガス噴出流路221、第2助燃性ガス噴出流路222、第3助燃性ガス噴出流路223)、可燃性ガス噴出流路23、シールガス噴出流路26を備えてなるメインバーナ5zと、可燃性ガス噴出流路23の外側に、シールガスを噴出するシールガス噴出流路14eが外側ガス噴出流路として同心状に配置されているサブバーナ5eを、備えている。
サブバーナ5eのシールガス噴出流路14eは、例えば、特開平7−144927号公報に記載されているスパイラルノズルの技術を適用してなる流路であって、メインバーナ5zの可燃性ガス噴出流路23に向かってある角度をもち、しかもシールガス噴出流路14eの円筒状の内壁の周方向にもある角度をもってシールガスを噴出するように構成されている。具体的には、シールガス噴出流路14eから噴出されるシールガスは、原料ガスの噴出軸AX上において焦点を結ぶようになっている。
このメインバーナ5zとサブバーナ5eは、着脱可能に構成されており、メインバーナ5zとサブバーナ5eの嵌合部分は、例えば、テーパ状の摺り合わせ嵌合構造になっている。このような嵌合構造によって、メインバーナ5zとサブバーナ5eの間の気密性が保持でき、メインバーナ5zとサブバーナ5eの中心軸合わせを容易にできる。
【0121】
そして、メインバーナ5zにサブバーナ5eを組み付けた状態で、サブバーナ5eのシールガス噴出流路14eは、メインバーナ5z助燃性ガス噴出流路22(221,222,223)から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、原料ガスの噴出軸AX上に向けてシールガスを噴出させるように構成されている。なお、メインバーナ5zの助燃性ガス噴出流路22から噴出される助燃性ガスは、原料ガス噴出流路21から噴出される原料ガスの噴出軸AX上の地点F(F1,F2,F3)で焦点を結ぶように噴出される。
このように、メインバーナ5zの助燃性ガス噴出流路22から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、サブバーナ5eのシールガス噴出流路14eからシールガスを噴出させることによって、バーナ10eの内側に空気が逆流して流入することを防ぐことができる。
【0122】
このようなメインバーナ5zとサブバーナ5eを備えるバーナ10eであっても、前述したバーナ10aと同様に、バーナ10eの火炎温度の低下に伴って起こるスート密度の低下を防ぐことができる。
また、バーナ10eの内側に空気が流入することによるバーナ10e内でのガスの流れが乱されることを防ぐことで、バーナ先端焼けを防止することができる。
また、メインバーナ5zとサブバーナ5eが着脱可能であるので、メインバーナ5zからサブバーナ5eを取り外して、メインバーナ5z、あるいはサブバーナ5e内に付着したガラス微粒子などを除去する清掃・メンテナンスを容易に行うことが可能になる。
また、メインバーナ5zとサブバーナ5eを着脱可能としたことで、サブバーナ5eのみを交換することが可能になり、比較的低コストでバーナ10eの性能を維持することができる。
【0123】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
第1実施形態では、助燃性ガス噴出流路を一重環構造とした場合について説明したが、助燃性ガス噴出流路を多重環構造とする場合にも本発明を適用できる。また、第2実施形態から第4実施形態では、助燃性ガス噴出流路を三重環構造とした場合について説明したが、助燃性ガス噴出流路を二重環構造とする場合にも本発明を適用できる。
また、ガラス微粒子堆積体の製造方法においては、実施形態のバーナ10(10a〜10h)、20、30、40をターゲットロッドの長手方向に複数台並べて配置するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 光ファイバ母材
2 ターゲットロッド
3 スート体
5、5z メインバーナ
5a〜5d サブバーナ
10a〜10d ガラス微粒子合成用バーナ
10 ガラス微粒子合成用バーナ
11 原料ガス噴出流路
12 助燃性ガス噴出流路
13 可燃性ガス噴出流路
14 シールガス噴出流路
14e シールガス噴出流路
15 補助助燃性ガス噴出流路
16 シールガス噴出流路
17 保護フード
17c、17g、17h 保護フード
171 テーパ部
172 逆テーパ部
18 エア噴出流路
20 ガラス微粒子合成用バーナ
21 原料ガス噴出流路
22 助燃性ガス噴出流路
221 第1助燃性ガス噴出流路
222 第2助燃性ガス噴出流路
223 第3助燃性ガス噴出流路
23 可燃性ガス噴出流路
24 シールガス噴出流路
26 シールガス噴出流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状配置された複数の小口径流路からなり、この小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路を内包し、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路と、
前記可燃性ガス噴出流路の外側に同心円上に設けられ、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路とを備え、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させるガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記複数の小口径流路から噴出される助燃性ガスが前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路が配置され、
前記外側ガス噴出流路は助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路を備え、前記補助助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、前記原料ガスの噴出方向下流側に位置していることを特徴とするガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項2】
原料ガスを噴出する原料ガス噴出流路と、
この原料ガス噴出流路を取り囲むように環状配置された複数の小口径流路からなり、この小口径流路から助燃性ガスを噴出する助燃性ガス噴出流路と、
前記原料ガス噴出流路及び前記助燃性ガス噴出流路を内包し、可燃性ガスを噴出する可燃性ガス噴出流路とを備え、
前記可燃性ガス及び前記助燃性ガスを噴出させ、この可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガスを供給することにより合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させるガラス微粒子合成用バーナにおいて、
前記助燃性ガス噴出流路が、多重環状構造を有し、
同一環状構造を構成する前記複数の小口径流路から噴出される助燃性ガスが前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路が配置され、
外側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端が、内側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路の噴出端よりも、前記原料ガスの噴出方向下流側に位置していることを特徴とするガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項3】
前記多重環構造を構成するそれぞれの助燃性ガス噴出流路が、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で異なる複数の焦点を結ぶように配置され、
前記それぞれの助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記複数の焦点よりも上流側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項4】
前記多重環構造を構成するそれぞれの助燃性ガス噴出流路が、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で単一焦点を結ぶように配置され、
前記それぞれの助燃性ガス噴出流路の噴出端が、前記単一焦点よりも上流側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項5】
前記可燃性ガス噴出流路の外側に同心円上に設けられ、ガスを層状に噴出する外側ガス噴出流路を備え、前記外側ガス噴出流路は助燃性ガスを噴出する補助助燃性ガス噴出流路を備えることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項6】
前記外側ガス噴出流路は、シールガスを噴出するシールガス噴出流路を備えることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項7】
前記外側ガス噴出流路は、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、前記原料ガスの噴出軸上に向けてガスを噴出させることを特徴とする請求項6に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項8】
前記ガラス微粒子合成用バーナは、メインバーナとサブバーナとを有し、前記サブバーナに前記外側ガス噴出流路が設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項9】
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、開口端に向かって細くなるテーパ形状を有することを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項10】
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、開口端に向かって細くなるテーパ部と、前記テーパ部に連続して開口端に向かって太くなる逆テーパ部を備えるくびれ形状を有することを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項11】
前記ガラス微粒子合成用バーナは、当該ガラス微粒子合成用バーナの先端部の外側に設けられた保護フードを備え、前記保護フードは、空気を層状に噴出するエア噴出流路を備えており、
前記エア噴出流路は、前記原料ガス噴出流路から噴出される原料ガスの噴出軸上で焦点を結ぶように前記助燃性ガス噴出流路から噴出される助燃性ガスの角度よりも大きな角度で、前記原料ガスの噴出軸上に向けて前記空気を噴出させることを特徴とする請求項6から10の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナ。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載のガラス微粒子合成用バーナを用いて、可燃性ガス及び助燃性ガスからなる火炎中に前記原料ガス噴出流路から原料ガスを供給することによりガラス微粒子を合成し、合成されたガラス微粒子をターゲットロッドに堆積させることを特徴とするガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項13】
内側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路から噴出させる助燃性ガスの速度を、外側の環状構造を構成する助燃性ガス噴出流路から噴出させる助燃性ガスの速度よりも速くすることを特徴とする請求項12に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−66998(P2012−66998A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182079(P2011−182079)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】