ガラス板の風冷強化装置
【課題】本発明は、ガラス板の風冷強化装置に係り、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことにある。
【解決手段】曲げ成形されたガラス板Gにエアを吹き付ける上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110を備え、両ノズル108,110によるエアの吹き付けにより該ガラス板Gを風冷強化するガラス板の風冷強化装置10において、ノズル108,110によりエアが吹き付けられるガラス板Gの、搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ形状に応じて、ノズル108,110の吹口の高さ位置を変更する。
【解決手段】曲げ成形されたガラス板Gにエアを吹き付ける上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110を備え、両ノズル108,110によるエアの吹き付けにより該ガラス板Gを風冷強化するガラス板の風冷強化装置10において、ノズル108,110によりエアが吹き付けられるガラス板Gの、搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ形状に応じて、ノズル108,110の吹口の高さ位置を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の風冷強化装置に係り、特に、加熱されたガラス板を曲げ成形した後に噴射手段からエアを吹き付けることによりそのガラス板を風冷強化するうえで好適なガラス板の風冷強化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板をローラコンベア上で搬送しつつ、曲げ成形可能な温度まで加熱されたガラス板を搬送方向に所望の曲率に曲げ成形した後に風冷強化する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、所望の曲率に曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備えている。この噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下にそれぞれ設けられており、ガラス板表面に上下それぞれからエアを吹き付ける。従って、上記の装置は、上下の噴射手段からガラス板にエアを吹き付けることにより、そのガラス板を風冷強化する。
【特許文献1】特開2001−2434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、自動車用のガラス板のデザインは複雑化し、ガラス板を一方向のみではなく、二方向に曲げ成形することが求められている。すなわち、搬送方向に加えて、搬送面上において搬送方向に直交する直交方向に曲がった湾曲ローラを用いるなどして直交方向にも曲げ成形する必要がある。ところで、特許文献1において、噴出手段は搬送ローラに接続された上下動フレームに接続されており、搬送ローラの上下動に応じて上下動する。つまり、上下に配置された噴出手段の先端の間隔と搬送ローラとの位置関係は一定しており、安定した冷却を可能にしている。ところが、下に凸状に直交方向に曲げ成形されたガラス板を風冷強化する際、直交方向に曲がっていないガラス板を風冷強化する場合と比べて、搬送ローラ中央部で接するガラス板の表面において、下側の噴出手段の先端までの距離が接近し、上側の噴出手段の先端までの距離が離れるという差が発生する。その結果、ガラス板表面と噴出手段とが離れ過ぎている部分において、そのガラス板の表面部分に風冷強化が適切に行われなくなり、適切な応力が形成されなくなるおそれがある。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、搬送ローラの上下動にリンクして噴出手段を上下動させているため、搬送方向にのみ曲がったガラス板と直交方向にも曲がったガラス板とを同じ装置で風冷強化するには適していなかった。つまり、搬送ローラの上下動は搬送方向の曲がりに沿って形成されているので、直交方向に曲がっている場合と、曲がっていない場合での調整ができない機構となっていた。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことが可能なガラス板の風冷強化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備え、前記噴射手段によるエアの吹き付けにより前記ガラス板を風冷強化するガラス板の風冷強化装置であって、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、前記噴射手段の吹口の位置を変更する吹口位置変更手段を備えるガラス板の風冷強化装置により達成される。
【0007】
この態様の発明において、噴射手段の吹口の位置は、ガラス板の曲げ形状に応じて変更される。かかる構成においては、ガラス板の曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0008】
尚、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の、搬送方向に直交する直交方向における前記曲げ曲率に応じて、前記噴射手段の吹口の高さ位置を変更することとすればよい。
【0009】
この態様の発明において、噴射手段の吹口の高さ位置は、ガラス板の搬送方向に直交する直交方向における曲げ曲率に応じて変更される。かかる構成においては、ガラス板の直交方向における曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその直交方向における曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0010】
また、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記吹口位置変更手段は、前記直交方向における前記曲げ曲率が所定値以上である場合に、前記噴射手段の吹口を、該所定値未満である場合に比して下降させることとしてもよい。
【0011】
この態様の発明において、噴射手段の吹口は、ガラス板の直交方向における曲げ曲率が所定値未満である場合には通常高さに位置する一方、その曲げ曲率が所定値以上である場合にはその通常高さよりも下降された高さに位置する。かかる構成によれば、ガラス板の直交方向における曲げ形状が異なっても、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離が大きく変化することはないので、ガラス板を風冷強化する能力を略一定に保つことが可能である。また、噴射手段の吹口の高さ位置が2段階にしか切り替わらないので、噴射手段の吹口の高さ位置を調整するのに複雑な機構は不要である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化を、簡素な構成でその直交方向における曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0012】
ところで、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記噴射手段は、ガラス板の搬送方向に複数並んで配置されると共に、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段ごとに、該噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて吹口の位置を変更することとすればよい。
【0013】
この態様の発明において、搬送方向に並んだ複数の噴射手段の吹口の位置はそれぞれ、対応するガラス板の曲げ形状に応じて変更される。かかる構成においては、噴射手段ごとに、ガラス板の曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0014】
更に、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下に配置されると共に、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、上下の前記噴射手段の吹口の位置を一体的に変更することとすればよい。
【0015】
この態様の発明において、上下の噴射手段の吹口の位置は、ガラス板の曲げ形状に応じて、両噴射手段を一体にして変更される。かかる構成においては、ガラス板の直交方向における曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。また、上下の噴射手段の吹口の位置を変更する変更機構を噴射手段ごとに設けることは不要である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0016】
尚、これらの発明において、「搬送方向に直交する直交方向における(前記)曲げ曲率」とは、ガラス板を搬送方向に平行な軸の回りに湾曲した形状にした際のその曲げ曲率のことをいう。すなわち、搬送方向に直交する直交方向に曲げ成形されたガラス板は、搬送方向に直交する方向に沿って平行に切断した断面が湾曲状になる。また、「上」及び「下」はそれぞれ、水平面に対して「上」又は「下」を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明に係るガラス板の風冷強化装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例であるガラス板Gの風冷強化装置10を備える曲げ成形ラインの斜視図を示す。また、図2は、ガラス板Gが曲げ成形される方向を表した図を示す。本実施例の曲げ成形ラインは、自動車や鉄道などの輸送機器や建物などに使用されるガラス板Gを、二方向(後述の搬送方向X及びその搬送方向Xに直交する直交方向Y)にそれぞれ曲げ成形して複曲面としたうえで、風冷強化装置10により風冷強化するシステムである。
【0020】
図1に示す如く、本実施例の曲げ成形ラインは、加熱炉12と、成形装置14と、風冷強化装置10と、を備えている。
【0021】
加熱炉12は、ヒータを有しており、そのヒータを用いてコンベアによって水平に搬送されるガラス板Gを加熱する。成形装置14は、ローラコンベア18,20を有しており、そのローラコンベア18,20によって搬送されるガラス板Gを曲げ成形する。ローラコンベア18,20は、ローラコンベア18が上流側に、ローラコンベア20が下流側に、それぞれ位置するように互いに隣接している。また、ローラコンベア20は、風冷強化装置10の上流に配置されている。
【0022】
また、風冷強化装置10は、ローラコンベア22及びそのローラコンベア22を挟んで上下に配置された吹口ヘッド24,26を有しており、そのローラコンベア22によって搬送されたガラス板Gをその吹口ヘッド24,26から吹き出されるエアにより風冷強化する。尚、風冷強化装置10の冷却能力は、ガラス板Gの素材や厚みに応じて適宜設定される。
【0023】
次に、本実施例の曲げ成形ラインにおいてガラス板Gが曲げ成形される工程の流れについて説明する。
【0024】
本実施例において、所定の形状に切り出された平板状のガラス板Gは、加熱炉12の入口においてコンベアの上流部に載置されて位置決めされた後、そのコンベアによって加熱炉12内に搬送される。そして、そのガラス板Gは、加熱炉12内の搬送中にヒータにより加熱され、加熱炉12の出口において成形装置14による曲げ成形可能な温度(例えば600℃〜700℃程度)まで加熱される。
【0025】
加熱炉12で加熱されたガラス板Gは、成形装置14に搬送され、成形装置14内の搬送中に、ローラコンベア18による曲げ成形動作によって搬送方向Xに曲げ成形されると共に、ローラコンベア20による曲げ成形動作によって搬送方向Xに曲げ成形されると共にその搬送方向Xに直交する水平な方向(以下、直交方向と称す)Yに曲げ成形される。
【0026】
成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gは、成形装置14の下流側に設置された風冷強化装置10内にローラコンベア22によって搬送される。そして、そのガラス板Gは、風冷強化装置10内の搬送中に吹口ヘッド24,26から吹き出されるエアによって風冷強化される。風冷強化装置10で風冷強化されたガラス板Gは、その出口からローラコンベアによって次工程の検査装置に向けて搬送される。
【0027】
次に、本実施例の成形装置14におけるローラコンベア18による曲げ成形の方法について説明する。図3は、本実施例の成形装置14の有するローラコンベア18によるガラス板Gの曲げ成形動作の遷移図を示す。尚、図3には、ローラコンベア18を横方向から見た際の図を示す。
【0028】
本実施例において、成形装置14のローラコンベア18は、ガラス板の搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yへ向けて軸が直線状に延在する複数の搬送ローラ30を有している。各搬送ローラ30は、ローラコンベア18のフレームに回転駆動可能に支持されており、軸方向位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。複数の搬送ローラ30は、ガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、ガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。尚、互いに隣り合う搬送ローラ30間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの搬送ローラ30で支えられるように設定されている。
【0029】
搬送ローラ30は、軸中心の回転駆動のみを行うものと、軸中心の回転駆動を行うと共に、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する上下方向Zに移動し得るものと、に分けられる。各搬送ローラ30の回転駆動は各々独立して行われると共に、各搬送ローラ30の上下動も各々独立して行われる。
【0030】
各搬送ローラ30にはそれぞれ、自搬送ローラ30を回転駆動するサーボモータが連結されている。各搬送ローラ30はそれぞれ独立して、対応するサーボモータの駆動により回転駆動される。
【0031】
また、各搬送ローラ30のうち上下動を行うものはそれぞれ、ローラコンベア18のフレームに上下方向Zに移動可能に支持されている。各搬送ローラ30の上下動は、固定フレームに対して上下移動可能な移動フレームの上下移動により実現される。固定フレームには、搬送ローラ30ごとに、搬送ローラ30を搬送方向に直交する上下方向に上下動させるためのサーボモータが固定されている。各サーボモータの軸は、対応の移動フレームに連結されている。各移動フレームはそれぞれ独立して、対応するサーボモータの駆動により上下方向に移動し、対応の搬送ローラ30を上下動させる。
【0032】
本実施例において、成形装置14は、コントローラ32を有している。コントローラ32は、光電センサなどを用いて成形装置14へのガラス板Gの進入を検知すると共に、パルスジェネレータなどを用いてその進入検知後におけるガラス板Gの搬送位置を算出する。そして、進入検知されたガラス板Gの型式が入力されると、予め記憶装置に記憶されているその型式のガラス板Gを搬送方向について所望の曲率に曲げ成形するために必要なデータに従って、上記の如く算出したガラス板Gの搬送位置に基づいて搬送ローラ30の上下動をそれぞれ制御すると共に、また、その搬送ローラ30の上下位置に合わせて搬送ローラ30の回転駆動をそれぞれ制御する。
【0033】
上記した構成において、ガラス板Gが成形装置14に搬送されていないときは、上下動を行い得る搬送ローラ30はすべて最上位置にあり、複数の搬送ローラ30により形成される搬送面は水平である(図3(A))。そして、ガラス板Gが成形装置14に搬送されてくると、搬送ローラ30の下降・上昇がそのガラス板Gの搬送を伴って上流側から順次行われる。この場合、搬送当初は、複数の搬送ローラ30が下降されて搬送面が下方に向けて凸状に湾曲し、その後は、複数の搬送ローラ30が下降・上昇を繰り返すことで搬送面の湾曲が搬送方向Xに移動する。そして、ガラス板Gの搬送が進行するに従って搬送ローラ30の下降量が多くなり、搬送面の湾曲面の曲率半径が小さくなる(図3(B)〜(E))。
【0034】
ローラコンベア18の搬送ローラ30が上下動して搬送面が湾曲すると、搬送されてくるガラス板Gは、その搬送ローラ30上を搬送方向Xに移動する際に、自重によりその搬送ローラ30の湾曲した面に沿って下方に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する。そして、ガラス板Gは、搬送が進行するに従って大きく下方に撓み、搬送方向Xに曲げ成形される。
【0035】
次に、本実施例の成形装置14におけるローラコンベア20による曲げ成形の方法について説明する。図4は、本実施例の成形装置14の有するローラコンベア20によるガラス板Gの曲げ成形動作を説明するための図を示す。
【0036】
本実施例において、成形装置14のローラコンベア20は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yへ向けて軸が直線状に延在するストレートローラ34と、ストレートローラ34の下流に隣接して配置され、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が下に凸状に湾曲する湾曲ローラ36と、を有している。ストレートローラ34及び湾曲ローラ36は、上記したローラコンベア18の搬送ローラ30に比べて剛性が高くなるように、その搬送ローラ30のものよりも大きな軸径(太さ)を有するように構成されている。ストレートローラ34及び湾曲ローラ36は、軸位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。
【0037】
ストレートローラ34は、複数設けられており、具体的には、ガラス板Gの搬送面を挟んで、上方に配設された一本の上方ストレートローラ34aと、下方に配設された二本の下方ストレートローラ34bと、を有している。また、湾曲ローラ36は、複数設けられており、具体的には、ガラス板Gの搬送面を挟んで、上方に配設された二本の上方湾曲ローラ36aと、下方に配設された二本の下方湾曲ローラ36bと、を有している。
【0038】
二本の下方ストレートローラ34b及び二本の下方湾曲ローラ36bは、他のローラコンベア18などと略同じ高さでガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、ガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。また、一本の上方ストレートローラ34a及び二本の上方湾曲ローラ36aは、上記した下方ローラ34b,36bの高さよりもガラス板Gの厚さ程度上方でガラス板の搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されている。尚、互いに隣り合う下方ローラ34b,36b間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの下方ローラ34b,36bで支えられるように設定されており、互いに隣り合う上方ローラ34a,36a間の搬送方向Xにおける間隔も同じ程度に設定されている。
【0039】
上方ストレートローラ34aと下方ストレートローラ34bとは互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されており、また、上方湾曲ローラ36aと下方湾曲ローラ36bとは互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されており、上方ローラ34a,36aと下方ローラ34b,36bとは、互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されている。
【0040】
上記した構成において、ガラス板Gが成形装置14の複数の搬送ローラ30の上下動によって自重により搬送方向Xに曲げ成形されると、次にまず、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された複数のストレートローラ34が回転用サーボモータの駆動によって回転駆動されることによりガラス板Gが搬送方向Xに移動(搬送)される。この搬送の際、それら上下のストレートローラ34は、搬送方向Xに曲げ成形されているガラス板Gの形状に合わせて上下動用サーボモータの駆動によって上下動されることにより、そのガラス板Gを挟み込みながらそのガラス板Gの所定箇所を搬送方向Xに曲げ成形する(三点曲げ)。従って、ガラス板Gは、ストレートローラ34上で搬送方向Xに移動される際に、上下のストレートローラ34に挟まれることにより搬送方向Xに曲げ成形される。
【0041】
また、ガラス板Gがストレートローラ34を通過すると、次に、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された複数の湾曲ローラ36が回転用サーボモータの駆動によって回転されることによりガラス板Gが搬送方向Xに移動(搬送)される。この搬送の際、それら上下の湾曲ローラ36は、ガラス板Gの形状に合わせて上下動用サーボモータの駆動によって上下動されると共に湾曲形成用サーボモータの駆動によって直交方向Yにおいて適当に湾曲されることにより、そのガラス板Gを挟み込みながらそのガラス板Gの所定箇所を搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形し、或いは、その直交方向Yへの曲げ成形に加えて更に搬送方向Xに曲げ成形する。従って、ガラス板Gは、湾曲ローラ36上で搬送方向Xに移動される際に、上下の湾曲ローラ36に挟まれることにより搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形され、或いは、更に同時に搬送方向Xにも曲げ成形される。
【0042】
次に、本実施例の風冷強化装置10の構成について説明する。図5は、本実施例の風冷強化装置10の全体構成を示す正面図を示す。図6は、本実施例の風冷強化装置10の要部構成を示す正面図を示す。図7は、本実施例の風冷強化装置10の要部構成を示す側面図を示す。また、図8は、本実施例の風冷強化装置10の各部の動作の遷移図を示す。
【0043】
本実施例において、風冷強化装置10のローラコンベア22は、複数の搬送ローラ40を有している。搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が下に凸状に湾曲し得るローラである。各搬送ローラ40は、ローラコンベア22のフレームに回転駆動可能にかつ上下方向に移動可能に支持されており、軸方向位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。複数の搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、曲げ成形されたガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。尚、互いに隣り合う搬送ローラ40間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの搬送ローラ40で支えられるように設定されている。
【0044】
各搬送ローラ40は、弾性的な可撓性材料により棒状に構成されたフレキシブルシャフト42を有している。このフレキシブルシャフト42には、複数のリングローラが挿通されている。搬送ローラ40のリングローラは、隣り合うもの同士が弾性的な筒状部材を介して連結されており、中空のローラ構造体を構成している。各搬送ローラ40の回転駆動は各々独立して行われると共に、各搬送ローラ40の上下動も各々独立して行われる。
【0045】
各搬送ローラ40にはそれぞれ、昇降装置50が取り付けられている。各昇降装置50は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する水平方向Yの側部それぞれにおいて、固定フレーム52に対して上下方向に移動自在に支持された移動フレーム54を有している。移動フレーム54の外側部には、ラック56が配設されている。ラック56には、搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延びる回転軸58に取り付けられたピニオン60が噛合されている。回転軸58は、直交方向Yの両端において回転可能に軸支されており、その一端には上下動用サーボモータ62の軸が連結されている。回転軸58は、上下動用サーボモータ62の駆動により回転される。
【0046】
回転軸58が上下動用サーボモータ62の駆動により回転されると、その回転運動はピニオン60とラック56との作用によりラック56の直線運動に変換される。この場合、移動フレーム54がそのラック56の直線運動に合わせて固定フレーム52に対して上下に移動されることで、搬送ローラ40が上下動される。
【0047】
また、各搬送ローラ40のリングローラにはそれぞれ、リングギヤ64が固定されている。リングギヤ64には、ギヤ66が噛合されている。ギヤ66には、自搬送ローラ40を回転駆動する回転用サーボモータ68の軸が連結されている。ギヤ66は、回転用サーボモータ68の駆動により回転され、その回転力をリングギヤ64に伝達する。かかる伝達が行われると、搬送ローラ40のリングローラがフレキシブルシャフト42を支軸として回転される。
【0048】
サーボモータ62,68には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。コントローラ32は、予め記憶されている記憶装置から、搬送中の型式のガラス板Gを成形装置14で曲げ成形された形状を維持しながら搬送するために必要なデータを読み出す。そして、そのデータに従って、各搬送ローラ40全体がそれぞれ曲げ成形されたガラス板Gの曲げ形状を維持すべく上下動されるように各上下動用サーボモータ62を駆動すると共に、各搬送ローラ40がそれぞれ適切な速度(具体的には、ガラス板Gとの接点における搬送方向成分が一定となる速度)で回転駆動されるように回転用サーボモータ68を駆動する。各搬送ローラ40はそれぞれ独立して、対応の上下動用サーボモータ62の駆動により上下動されると共に、対応の回転用サーボモータ68の駆動により回転駆動される。
【0049】
また、各搬送ローラ40にはそれぞれ、湾曲形成装置70が取り付けられている。湾曲形成装置70は、搬送ローラ40のフレキシブルシャフト42の両端それぞれに連結されている。湾曲形成装置70は、上記した移動フレーム54に取り付け固定された送りねじ部72を有している。送りねじ部72には、上下方向に移動自在に支持されたスライダ74が取り付けられている。送りねじ部72とスライダ74とは、ボルトとナットとの関係の如く螺合されている。
【0050】
スライダ74には、バー76を介してフレキシブルシャフト42が揺動自在に連結されている。フレキシブルシャフト42は、ピン78を支点にして、移動フレーム54に固定されたサポート板80に揺動自在に連結されている。従って、搬送ローラ40のフレキシブルシャフト42は、スライダ74の上下動によりその両端がピン78を支点として上方に押し上げられ又は下方に引っ張られることで、水平に対して角度を伴って下方に湾曲する。
【0051】
送りねじ部72には、ギヤ82が取り付けられており、このギヤ82には、ギヤ84が噛合されている。ギヤ84には、移動フレーム54に固定された湾曲形成用サーボモータ86の軸が連結されている。ギヤ84は、湾曲形成用サーボモータ86の駆動により回転され、その回転力をギヤ82を介して送りねじ部72に伝達する。かかる伝達が行われると、その回転運動は送りねじ部72とスライダ74との作用によりスライダ74の上下運動に変換されることで、フレキシブルシャフト42の両端が上方又は下方に移動され、搬送ローラ40がその両端の高さ位置に応じた角度を伴って下方に湾曲する。
【0052】
湾曲形成用サーボモータ86には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。コントローラ32は、予め記憶されている記憶装置から、搬送中の型式のガラス板Gを成形装置14で曲げ成形された形状を維持しながら搬送するために必要なデータを読み出す。そして、そのデータに従って、各搬送ローラ40全体がそれぞれ曲げ成形されたガラス板Gの曲げ形状を維持すべく所望の角度で下方に湾曲するように各湾曲形成用サーボモータ86を駆動する。すなわち、そのデータに従って、算出するガラス板Gの搬送位置に基づいて搬送ローラ40の湾曲の角度をそれぞれ制御する。各搬送ローラ40はそれぞれ独立して、対応の湾曲形成用サーボモータ86の駆動により直交方向Yにおいて下方に湾曲される。
【0053】
また、本実施例において、風冷強化装置10は、ローラコンベア22を挟んで上下に配置される、ブロアが設けられた上部ダクト100に連結される上部送風ボックス102、と、ブロアが設けられた下部ダクト104に連結される下部送風ボックス106と、を有している。各ブロアが駆動されると、その駆動により発生した冷却エアがダクト100,104を通じて送風ボックス102,106に供給される。
【0054】
上部送風ボックス102には、複数の上部吹口ヘッド24が連結されている。各上部吹口ヘッド24は、搬送方向Xにおいて隣接する2つの搬送ローラ40の中間に配設されている。各上部吹口ヘッド24は、搬送ローラ40の軸に沿って搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延在しており、その直交方向Yに並んだ複数のノズル108を有している。上部吹口ヘッド24の有する複数のノズル108は、同じヘッド24であれば、すべて同一の高さに位置している。
【0055】
また、下部送風ボックス106には、複数の下部吹口ヘッド26が連結されている。各下部吹口ヘッド26は、搬送方向Xにおいて隣接する2つの搬送ローラ40の中間に配設されている。各下部吹口ヘッド26は、搬送ローラ40の軸に沿って搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延在しており、その直交方向Yに並んだ複数のノズル110を有している。下部吹口ヘッド26の有する複数のノズル110は、同じヘッド26であれば、すべて同一の高さに位置している。
【0056】
送風ボックス102,106に供給された冷却エアは、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110からローラコンベア22に向けて吹き出される。これにより、ローラコンベア22によって搬送されるガラス板Gの上面及び下面がそれぞれ冷却される。
【0057】
上部吹口ヘッド24と下部吹口ヘッド26とはそれぞれ、上下移動自在に設けられており、隣接する搬送ローラ40の上下動に連動して上下動される。
【0058】
上部吹口ヘッド24は、ホルダ(上側支持フレーム)112により保持されている。ホルダ112の上部には、一対のスライドロッド114が垂直に立設されている。スライドロッド114は、スライドフレーム116に設けられたブッシュ118に摺動自在に支持されている。すなわち、ホルダ112は、スライドフレーム116に対して上下方向にスライド自在に支持されている。スライドロッド114の頂部には、ストッパ120が固着されている。
【0059】
スライドフレーム116の両端部には、ガイドブロック122が固着されている。ガイドブロック122は、固定フレーム124に配設されたガイドレール126に摺動自在に支持されている。すなわち、スライドフレーム116は、固定フレーム124に対して上下方向にスライド自在に支持されている。スライドフレーム116の両端上部にはそれぞれ、連接棒128を介してラックジャッキ130のラック132が連結されている。ラックジャッキ130は、ラック132に対して回転駆動されることによりそのラック132を上下方向に移動させる機能を有している。
【0060】
ラック132が上下方向に移動されると、スライドフレーム116が固定フレーム124に対して上下方向に移動される。スライドフレーム116が固定フレーム124に対して上昇すると、ストッパ120がブッシュ118の頂部に押されて、ホルダ112が引き上げられることで、上部吹口ヘッド24が上方に移動される。また、スライドフレーム116が固定フレーム124に対して下降すると、ホルダ112が下がることで、上部吹口ヘッド24が下方に移動される。この際、上部吹口ヘッド24の上下移動量は、ラックジャッキ130によるラック132の上下移動量に応じたものとなる。
【0061】
尚、上部吹口ヘッド24の内部は、複数(図5においては6つ)の空間に仕切られている。これらの各空間は、フレキシブルパイプ134を介して上部送風ボックス102に連通されている。フレキシブルパイプ134は、伸縮自在に構成されており、上部吹口ヘッド24の上下移動に応じて伸縮する。すなわち、上部送風ボックス102は、上部吹口ヘッド24が上下移動しても、上下移動することなく固定・維持されたままである。
【0062】
一方、下部吹口ヘッド26は、ホルダ(下側支持フレーム)140により保持されている。ホルダ140の両端部には、上下方向に延びる一対のシリンダ142のロッドが連結されている。各シリンダ142は、例えば油圧シリンダであって、断面L字状の連結アーム144に取り付けられている。シリンダ142は、常態では下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離(位置関係)を予め定めた通常距離(所定の位置関係)に維持させる機能を有している。連結アーム144は、移動フレーム54の内側面に取り付けられたガイドレール146上にスライドブロック148を介して上下方向にスライド自在に支持されている。連結アーム144が移動フレーム54に対して上下動されると、その連結アーム144の上下動に連動して下部吹口ヘッド26が上下動される。
【0063】
シリンダ142は、ロッドの長さを2段階に調整可能なシリンダである。シリンダ142には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。シリンダ142は、常態ではロッドの長さを通常長さとすることで、下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離を通常距離に維持させる一方、コントローラ32から指令があったときはロッドの長さを通常長さよりも短い長さとすることで、下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離を通常距離よりも短い距離に維持させる。
【0064】
尚、下部吹口ヘッド26の内部は、複数(図5においては3つ)の空間に仕切られている。これらの各空間は、フレキシブルパイプ156を介して下部送風ボックス106に連通されている。フレキシブルパイプ156は、伸縮自在に構成されており、下部吹口ヘッド26の上下移動に応じて伸縮する。すなわち、下部送風ボックス106は、下部吹口ヘッド26が上下移動しても、上下移動することなく固定・維持されたままである。
【0065】
また、移動フレーム54の両端の上端部近傍には、支軸160が取り付けられている。支軸160には、同軸上に円盤状の駒162が回転自在に支持されている。搬送方向Xに隣接する2つの移動フレーム54の支軸160の間には、揺動アーム164が配設されている。揺動アーム164は、その一方端が配設された2つの支軸160のうち一方側の支軸160に回転自在に支持されていると共に、その他方端が他方側の支軸160に取り付けられた駒162の上に載置されている。
【0066】
支軸160が取り付けられる移動フレーム54は、各搬送ローラ40それぞれに取り付けられた昇降装置50に取り付けられている。このため、支軸160は、対応の搬送ローラ40が上下動することによりその上下動に連動して上下移動する。上記した揺動アーム164は、支軸160が上下動することでその支軸160と搬送方向Xに隣接する支軸160との間に高度差が生じた場合に、その高度差に応じて傾斜して揺動する。
【0067】
下部吹口ヘッド26がシリンダ142を介して連結された連結アーム144の上端部は、揺動アーム164の中央部にピン166を介して連結されている。連結アーム144は、揺動アーム164が揺動することで、その揺動アーム164の傾斜量に応じて上下動される。
【0068】
従って、下部吹口ヘッド26は、シリンダ142の伸縮により連結アーム144に対して2段階に高さ調整されると共に、揺動アーム164の揺動に応じて連結アーム144が移動フレーム54に対して上下動することによりその上下動に連動して上下動されるものとなっている。
【0069】
更に、上部吹口ヘッド24側のホルダ112の両端部には、上下方向に延びる一対のシリンダ170のロッドが連結されている。各シリンダ170は、例えば油圧シリンダであって、上下方向に延びる従動アーム172に取り付けられている。シリンダ170は、常態では上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離(位置関係)を予め定めた通常距離(所定の位置関係)に維持させる機能を有している。
【0070】
従動アーム172の先端部(下端部)には、ローラ174が、搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延びる軸を中心にして回転自在に取り付けられている。ローラ174は、上記した揺動アーム164の中央部の上に載置されている。このため、従動アーム172は、揺動アーム164が揺動することにより、その揺動アーム164の傾斜量に応じて上下動される。従動アーム172が上下動されると、その従動アーム172の上下動に連動して上部吹口ヘッド24が上下動される。
【0071】
シリンダ170は、ロッドの長さを2段階に調整可能なシリンダである。シリンダ170には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。シリンダ170は、常態ではロッドの長さを通常長さとすることで、上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離を通常距離に維持させる一方、コントローラ32から指令があったときはロッドの長さを通常長さよりも短い長さとすることで、上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離を通常距離よりも短い距離に維持させる。
【0072】
このように、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26はそれぞれ、上下方向にスライド自在に支持されており、ローラコンベア22を構成する搬送ローラ40の上下動に連動して上下動される。この際、各ヘッド24,26の、搬送ローラ40の上下動に伴う上下の移動量は、搬送方向Xに互いに隣接する2つの搬送ローラ40の高さの差の半分となる。すなわち、連結アーム144及び従動アーム172はそれぞれ、揺動アーム164の中央部に連結されているため、搬送方向Xにおいて互いに隣接する2つの搬送ローラ40の高さに差が生じた場合に、その高さの差の半分だけ上下方向に移動することとなる。その結果、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26はそれぞれ、搬送方向Xにおいて互いに隣接する2つの搬送ローラ40の中間レベル位置に保たれることとなる。
【0073】
また、下部吹口ヘッド26は、シリンダ142の伸張時(非作動時)は、連結アーム144に対して比較的上方の位置(通常高さ位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行うが、シリンダ142の収縮時(作動時)は、連結アーム144に対して比較的下方の位置(低位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行う。
【0074】
また、上部吹口ヘッド24は、シリンダ170の伸張時(非作動時)は、従動アーム172に対して比較的上方の位置(通常高さ位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行うが、シリンダ170の収縮時(作動時)は、従動アーム172に対して比較的下方の位置(低位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行う。
【0075】
コントローラ32は、風冷強化装置10にガラス板Gが搬送される際、予め記憶されている記憶装置から、その型式のガラス板Gにエアを吹き付けるために必要なデータを読み出す。尚、このデータは、成形装置14で曲げ成形されるガラス板Gの曲げ曲率を含むものである。そして、コントローラ32は、その読み出したデータに従ってシリンダ142,170を制御して、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26を搬送ローラ40に対して曲げ成形されたガラス板Gにエアを吹き付けるための適切な高さ位置へ移動させる。
【0076】
尚、搬送方向Xに並んだ各上部吹口ヘッド24はそれぞれ独立して、対応のシリンダ170の伸縮によりその高さ位置が通常高さ位置と低位置とに選択的に調整されることとなっていると共に、搬送方向Xに並んだ各下部吹口ヘッド26はそれぞれ独立して、対応のシリンダ142の伸縮によりその高さ位置が通常高さ位置と低位置とに選択的に調整されることとなっている。
【0077】
本実施例の風冷強化装置10は、初期設定時、シリンダ142の高さ位置が調整されることで、下部吹口ヘッド26のノズル110がローラコンベア22の搬送面から所定距離離れた位置に配置される。下部吹口ヘッド26は、ノズル110がかかる位置に配置された状態で揺動アーム164の揺動に連動して上下動される。また初期設定時、ラックジャッキ130がラック132に対して回転駆動されてスライドフレーム116を所定の動作位置まで下降させる。スライドフレーム116が所定の動作位置まで下降されると、各ホルダ112が上下移動自在に支持されると共に、各従動アーム172のローラ174が揺動アーム164上に載置されることで、以後、各上部吹口ヘッド24が揺動アーム164の揺動に連動して上下動することが可能となる。
【0078】
上記した構成において、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送される前は、ローラコンベア22を構成する複数の搬送ローラ40は、搬送方向Xへの搬送面が平坦に形成されるようにすべて最上位位置に位置している。そして、この際、搬送方向Xに並んだ複数の上部吹口ヘッド24はすべて同じ高さ位置(上下方向における位置)に位置しており、また、搬送方向Xに並んだ複数の下部吹口ヘッド26はすべて同じ高さ位置に位置している(図8(A))。
【0079】
その後、成形装置14において搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送され、搬送ローラ40の回転駆動によりその風冷強化装置10内において搬送方向Xに搬送されると、複数の搬送ローラ40はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数の搬送ローラ40によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向X及び直交方向Yにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した搬送面が形成され、かつ、ガラス板Gの搬送に伴ってその下方へ湾曲した搬送面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように、最上位位置から下降し、その後に上昇する(図8(B)〜(D))。従って、本実施例において、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yに曲げ成形されたガラス板Gは、風冷強化装置10内においてその曲げ形状が維持されながら搬送されることが可能である。
【0080】
また、風冷強化装置10内において搬送ローラ40が上下移動されてガラス板Gが搬送方向Xに搬送されると、その搬送ローラ40の前後(すなわち上流側及び下流側)にそれぞれ配設されている上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が、その搬送ローラ40の上下動に連動して上下移動される。この際、吹口ヘッド24,26の上下動はそれぞれ、その前後(すなわち上流側及び下流側)それぞれの搬送ローラ40の中間レベルの位置に位置するように行われる。
【0081】
すなわち、複数の上部吹口ヘッド24はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数のヘッド24によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した湾曲面が形成され、かつ、その下方に湾曲した湾曲面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように下降し上昇すると共に、複数の下部吹口ヘッド26はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数のヘッド26によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した湾曲面が形成され、かつ、その下方に湾曲した湾曲面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように下降し上昇する(図8(B)〜(D))。
【0082】
ガラス板Gが風冷強化装置10内に搬送されてくると、ブロアが駆動されて、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110からガラス板Gへエアが吹き出される。従って、本実施例において、ガラス板Gは、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yに曲げ成形された後、風冷強化装置10内においてその曲げ形状が維持されながら搬送される過程において、ノズル108,110から吹き出されるエアによって風冷強化される。
【0083】
図9は、ガラスGの曲げ形状に起因した、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下動に伴う不都合を説明するための図を示す。図10は、本実施例の風冷強化装置10における上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下動を説明するための図を示す。また、図11は、本実施例の風冷強化装置10においてコントローラ32が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
【0084】
ところで、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gが搬送方向Xに曲げ成形されたもののみであれば、そのガラス板Gをその搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yを通る鉛直面に沿って切断した断面形状は水平となる(図9におけるガラスフラット時を参照)。このため、このときは、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が、そのヘッド24,26前後に配設されたガラス板Gを搬送する搬送ローラ40の高さ位置(尚、この高さ位置は、ガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率やガラス板G自体の搬送方向Xの位置に応じたものとなる。)に応じて、それらの搬送ローラ40の上下動に連動して互いに同じ量だけ上下動されれば、上部吹口ヘッド24のノズル108とガラス板Gの上面との距離(以下、上面距離と称す)、及び、下部吹口ヘッド26のノズル110とガラス板Gの下面との距離(以下、下面距離と称す)が、ガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率に関係なく共に均一にされ、また、その上面距離と下面距離とが互いに同じ距離L0にされる。
【0085】
しかし、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gは、搬送方向Xに曲げ成形されたものだけでなく、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにも曲げ成形されたものもある。この搬送方向Xにも直交方向Yにも曲げ成形されたガラス板Gは、その搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yを通る鉛直面に沿って切断した断面形状が下に凸状に湾曲したものとなる(図9におけるガラス湾曲時を参照)。
【0086】
このため、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を考慮することなく、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じてその搬送ローラ40の上下動に連動して互いに同じ量だけ上下動されるものとすると、その直交方向Yの両端部においては、上記した上面距離及び上記した下面距離がガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率に関係なく共に均一にされて、その上面距離と下面距離とが互いに同じ距離L0にされる一方、その直交方向Yの中央部においては、上面距離がガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて変化して、上面距離と下面距離とがその曲げ曲率に応じて異なるものとなる。尚、この際、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が大きいほど、直交方向Yの中央部における上面距離は大きくなる。
【0087】
このように、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて、上部吹口ヘッド24のノズル108とガラス板Gの上面との上面距離が変化し、上面距離と下面距離とが異なるものとなると、ガラス板Gの表面部分に適切な熱応力が形成されない事態が生じ得、冷却バランスが崩れて、風冷強化が適切に行われなくなり、形状が変形して不安定になるおそれがある。
【0088】
そこで、本実施例の風冷強化装置10においては、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26を、その前後の搬送ローラ40の高さの差に応じた位置に位置するように上下動させるだけでなく、その上下動を行う際に基準となる高さ位置を、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて通常高さ位置と低位置とに変更させる。すなわち、それらの上下動時の固定フレーム52に対する高さ位置を、その前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じて一律に定めるものではなく、その搬送ローラ40の高さ位置とガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率との双方に応じて定める。
【0089】
具体的には、コントローラ32は、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を判定する。この判定は、ライン作業者の操作によるガラス板Gの型式入力或いは製造上における自動的なガラス板Gの型式入力に基づいて行われる。そして、その曲げ曲率が所定値以上であるか否かを判別する(ステップ100)。尚、この所定値は、曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yの中央部の上面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離(すなわち、上部吹口ヘッド24の高さ位置が通常高さ位置である状態)では風冷強化が適切に行われなくなると判断される、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の最小値であり、予め定められている。
【0090】
風冷強化装置10において、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下方向における高さ位置は、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送される前は、最上位位置に位置する搬送ローラ40上に仮にガラス板Gが有るものとした際のそのガラス板Gの表面から両ヘッド24,26までの距離が等距離L0となるように、すなわち、そのガラス板Gの上下方向における位置が両ヘッド24,26の中間となるように初期設定されている。
【0091】
かかる状態から、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送されると、各搬送ローラ40はそれぞれ、そのガラス板Gの搬送方向Xにおける位置に応じて、そのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ形状に合致した角度でその直交方向Yにおいて下方に湾曲されつつ、そのガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致した量だけ上下動される。
【0092】
コントローラ32は、上記したステップ100における判定の結果、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満であるときは、シリンダ170及び142を共に非作動にして、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の基準となる上下方向における高さ位置を、その前後の搬送ローラ40上に位置するガラス板Gの直交方向Yにおける端部表面から両ヘッド24,26までの距離がほぼ等距離L0となるように、すなわち、そのガラス板Gの直交方向端部の上下方向位置が両ヘッド24,26のほぼ中間となるように通常高さ位置に設定する(ステップ102)。
【0093】
一方、コントローラ32は、上記したステップ100における判定の結果、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるときは、シリンダ170及び142を共に作動させて、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の基準となる上下方向における位置を、その前後の搬送ローラ40上に位置するガラス板Gの直交方向Yにおける端部表面から上部吹口ヘッド24までの距離がその端部表面から下部吹口ヘッド26までの距離よりも小さくなるように、すなわち、そのガラス板Gの直交方向端部の上下方向位置が両ヘッド24,26の中間よりも上方となるように低位置に設定する(ステップ104)。
【0094】
上記した構成によれば、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満で比較的小さい場合は、各上部吹口ヘッド24のノズル108及び各下部吹口ヘッド26のノズル110の基準となる高さ位置をそれぞれ比較的上方の通常高さ位置に設定し、その通常高さ位置を基準にして各ヘッド24,26の上下動を前後の搬送ローラ40の最上位位置からの上下動に合わせて実現させることができる。
【0095】
一方、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上で比較的大きい場合は、各上部吹口ヘッド24のノズル108及び各下部吹口ヘッド26のノズル110の基準となる高さ位置をそれぞれ比較的下方の低位置に設定し、その低位置を基準にして各ヘッド24,26の上下動を前後の搬送ローラ40の最上位位置からの上下動に合わせ実現させることができる。
【0096】
このように、搬送方向Xに並んだ複数の上部吹口ヘッド24及び複数の下部吹口ヘッド26ごとに、そのノズル108,110の高さ位置をその前後の搬送ローラ40の高さ位置とガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率との双方に応じて定める構成においては、その前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じて一律に定める構成(以下、対比構成と称す。)に比べて、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の変化に対するガラス板Gの表面とノズル108,110との距離の変動を小さく抑えることができる。
【0097】
具体的には、成形装置14で曲げ成形されるガラス板Gの所望形状が搬送方向Xにのみ曲げ成形されるものであり、直交方向Yで垂直に切断した際の断面形状が直線状であって、直交方向Yにおける曲げ曲率がゼロであるときは、対比構成と同様に、ガラス板Gの表面とノズル108,110との距離がガラス板Gの直交方向Yにおける位置によらず略一定値L0となる。また、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満であるときは、ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそれぞれ通常高さ位置に維持されるので、対比構成と同様に、ガラス板Gの表面とノズル108,110との距離が直交方向端部で略一定値L0となるが、直交方向中央部ではガラス板Gの表面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離が一定値L0よりも僅かに大きくなる。一方、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるときは、ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそれぞれ低位置に移行されるので、ガラス板Gの表面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離が直交方向中央部において対比構成に比べて小さくなる。
【0098】
このため、本実施例の風冷強化装置10によれば、直交方向Yにおける曲げ形状が異なるガラス板Gが順次搬送されてくるときにも、その搬送されてくる曲げ成形後のガラス板Gをそれぞれ、その表面とノズル108との距離が過大となる事態を発生させることなく、すなわち、その表面(特に直交方向中央部)とノズル108,110との距離を大きく変化させることなく風冷強化することができる。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、ガラス板Gを風冷強化する能力をガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の変化に対して大きく異ならせることなく略一定に保つことが可能であって、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化をその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0099】
また、本実施例の構成においては、風冷強化装置10内に搬送されるガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるか未満であるかが判別されると共に、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置がそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替わる。このため、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化をその直交方向における曲げ形状に対応して簡易かつ適切に行うことが可能となっている。
【0100】
また、本実施例の構成においては、風冷強化装置10の上部吹口ヘッド24と下部吹口ヘッド26とがリンク接続されて一体的に上下動されるものとしている。かかる構成においては、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26のノズル108,110の高さ位置を変更する変更機構をそれらヘッド24,26ごと或いはノズル108,110ごとに設けることは不要である。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0101】
更に、本実施例の構成においては、風冷強化装置10の搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されており、ヘッド24,26の上下動がその前後の搬送ローラ40と一体的にその上下動に連動して行われることとしている。かかる構成においては、両ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替わる機構を設けるうえで、両ヘッド24,26の高さ位置を調整する複雑な構成は不要である。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0102】
尚、上記の実施例においては、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110が特許請求の範囲に記載した「噴射手段」に相当していると共に、コントローラ32が、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率に応じてノズル108,110の吹口の上下動時に基準となる高さ位置を変更することにより特許請求の範囲に記載した「吹口位置変更手段」が実現されている。
【0103】
ところで、上記の実施例においては、上部吹口ヘッド24の直交方向Yに並んだ複数のノズル108をすべて同じ高さに位置させるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板Gが搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形されることを考慮して、直交方向Yの端部の位置を高くしかつ中央部の位置を低くして直交方向Yにおいて下方に湾曲するような形状としてもよい。
【0104】
また、同様に、下部吹口ヘッド26の直交方向Yに並んだ複数のノズル110をすべて同じ高さに位置させるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板Gが搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形されることを考慮して、直交方向Yの端部の位置を高くしかつ中央部の位置を低くして直交方向Yにおいて下方に湾曲するような形状としてもよい。
【0105】
また、これらの場合、直交方向Yに並んだ複数のノズル108,110の高さ位置を変更させる機構を設け、その高さ位置をガラス板Gの曲げ形状に合わせて変更させることとしてもよい。
【0106】
また、上記の実施例においては、風冷強化装置10の搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されており、ヘッド24,26の上下動がその前後の搬送ローラ40と一体的にその上下動に連動して行われることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されることなく、搬送ローラ40が上下動されてもヘッド24,26の上下動が行われないものとしてもよい。
【0107】
また、上記の実施例においては、風冷強化装置10内に搬送されるガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるか未満であるかを判別し、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置をそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替えることとしているが、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を多段階に判別し、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置をその曲げ曲率に応じてリニアに切り替えることとしてもよい。
【0108】
かかる変形例によれば、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ形状に関係なく、ノズル108,110とガラス板Gの表面(特に直交方向中央部)との距離を一定に保つことが可能となるので、ガラス板Gを風冷強化する能力をより一層一定に保つことが可能となる。
【0109】
また、上記の実施例においては、搬送ローラ40やヘッド24,26の上下動,湾曲を図5に示す如き昇降装置50や湾曲形成装置70などを用いて実現させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成により実現させることとしてもよい。
【0110】
また、上記の実施例においては、成形装置14でガラス板Gを下に凸状に湾曲させて曲げ成形することとし、ガラス板Gの搬送時に風冷強化装置10の搬送ローラ40を下に凸状に湾曲させることとしているが、逆に、成形装置14でガラス板Gを上に凸状に湾曲させて曲げ成形することとし、ガラス板Gの搬送時に風冷強化装置10の搬送ローラ40を上に凸状に湾曲させることとしてもよい。この場合、ローラコンベア20の湾曲ローラ36やローラコンベア22の搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が上に凸状に湾曲される。
【0111】
更に、上記の実施例においては、ガラス板Gの搬送方向への曲げ成形を、ローラコンベア18の搬送ローラ30を上下動させてガラス板Gの自重で行うと共に、更に、上下のストレートローラ34や湾曲ローラ36を上下動させてガラス板Gの挟み込みにより行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送ローラ30として湾曲ローラを用いたガラス板Gの自重のみにより行うこととしてもよいし、或いは、ローラ34,36を用いた若しくはローラ34のみを用いたガラス板Gの挟み込みのみにより行うこととしてもよい。
【0112】
また、プレス型でガラス板をプレスして搬送方向と搬送方向に直交する直交方向の2方向に曲げ成形するなどどのようなガラス板の曲げ成形方法でもよく、ガラス板を2方向に曲げ成形した後、ローラ搬送しながら風冷強化する場合に本願は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施例であるガラス板の風冷強化装置を備える曲げ成形ラインの斜視図である。
【図2】ガラス板Gが曲げ成形される方向を表した図である。
【図3】本実施例の曲げ成形ラインの成形装置の有するローラコンベアによるガラス板Gの搬送方向への曲げ成形動作の遷移図である。
【図4】本実施例の曲げ成形ラインの成形装置の有するローラコンベアによるガラス板Gの曲げ成形動作を説明するための図である。
【図5】本実施例の風冷強化装置の全体構成を示す正面図である。
【図6】本実施例の風冷強化装置の要部構成を示す正面図である。
【図7】本実施例の風冷強化装置の要部構成を示す側面図である。
【図8】本実施例の風冷強化装置の各部の動作の遷移図である。
【図9】ガラスGの曲げ形状に起因した、上部吹口ヘッド及び下部吹口ヘッドの上下動に伴う不都合を説明するための図である。
【図10】本実施例の風冷強化装置における上部吹口ヘッド及び下部吹口ヘッドの上下動を説明するための図である。
【図11】本実施例の風冷強化装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0114】
10 風冷強化装置
14 成形装置
22 ローラコンベア
24 上部吹口ヘッド
26 下部吹口ヘッド
32 コントローラ
40 搬送ローラ
108,110 ノズル
142,170 シリンダ
G ガラス板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の風冷強化装置に係り、特に、加熱されたガラス板を曲げ成形した後に噴射手段からエアを吹き付けることによりそのガラス板を風冷強化するうえで好適なガラス板の風冷強化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板をローラコンベア上で搬送しつつ、曲げ成形可能な温度まで加熱されたガラス板を搬送方向に所望の曲率に曲げ成形した後に風冷強化する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、所望の曲率に曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備えている。この噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下にそれぞれ設けられており、ガラス板表面に上下それぞれからエアを吹き付ける。従って、上記の装置は、上下の噴射手段からガラス板にエアを吹き付けることにより、そのガラス板を風冷強化する。
【特許文献1】特開2001−2434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、自動車用のガラス板のデザインは複雑化し、ガラス板を一方向のみではなく、二方向に曲げ成形することが求められている。すなわち、搬送方向に加えて、搬送面上において搬送方向に直交する直交方向に曲がった湾曲ローラを用いるなどして直交方向にも曲げ成形する必要がある。ところで、特許文献1において、噴出手段は搬送ローラに接続された上下動フレームに接続されており、搬送ローラの上下動に応じて上下動する。つまり、上下に配置された噴出手段の先端の間隔と搬送ローラとの位置関係は一定しており、安定した冷却を可能にしている。ところが、下に凸状に直交方向に曲げ成形されたガラス板を風冷強化する際、直交方向に曲がっていないガラス板を風冷強化する場合と比べて、搬送ローラ中央部で接するガラス板の表面において、下側の噴出手段の先端までの距離が接近し、上側の噴出手段の先端までの距離が離れるという差が発生する。その結果、ガラス板表面と噴出手段とが離れ過ぎている部分において、そのガラス板の表面部分に風冷強化が適切に行われなくなり、適切な応力が形成されなくなるおそれがある。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、搬送ローラの上下動にリンクして噴出手段を上下動させているため、搬送方向にのみ曲がったガラス板と直交方向にも曲がったガラス板とを同じ装置で風冷強化するには適していなかった。つまり、搬送ローラの上下動は搬送方向の曲がりに沿って形成されているので、直交方向に曲がっている場合と、曲がっていない場合での調整ができない機構となっていた。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことが可能なガラス板の風冷強化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備え、前記噴射手段によるエアの吹き付けにより前記ガラス板を風冷強化するガラス板の風冷強化装置であって、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、前記噴射手段の吹口の位置を変更する吹口位置変更手段を備えるガラス板の風冷強化装置により達成される。
【0007】
この態様の発明において、噴射手段の吹口の位置は、ガラス板の曲げ形状に応じて変更される。かかる構成においては、ガラス板の曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0008】
尚、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の、搬送方向に直交する直交方向における前記曲げ曲率に応じて、前記噴射手段の吹口の高さ位置を変更することとすればよい。
【0009】
この態様の発明において、噴射手段の吹口の高さ位置は、ガラス板の搬送方向に直交する直交方向における曲げ曲率に応じて変更される。かかる構成においては、ガラス板の直交方向における曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその直交方向における曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0010】
また、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記吹口位置変更手段は、前記直交方向における前記曲げ曲率が所定値以上である場合に、前記噴射手段の吹口を、該所定値未満である場合に比して下降させることとしてもよい。
【0011】
この態様の発明において、噴射手段の吹口は、ガラス板の直交方向における曲げ曲率が所定値未満である場合には通常高さに位置する一方、その曲げ曲率が所定値以上である場合にはその通常高さよりも下降された高さに位置する。かかる構成によれば、ガラス板の直交方向における曲げ形状が異なっても、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離が大きく変化することはないので、ガラス板を風冷強化する能力を略一定に保つことが可能である。また、噴射手段の吹口の高さ位置が2段階にしか切り替わらないので、噴射手段の吹口の高さ位置を調整するのに複雑な機構は不要である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化を、簡素な構成でその直交方向における曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0012】
ところで、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記噴射手段は、ガラス板の搬送方向に複数並んで配置されると共に、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段ごとに、該噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて吹口の位置を変更することとすればよい。
【0013】
この態様の発明において、搬送方向に並んだ複数の噴射手段の吹口の位置はそれぞれ、対応するガラス板の曲げ形状に応じて変更される。かかる構成においては、噴射手段ごとに、ガラス板の曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0014】
更に、上記したガラス板の風冷強化装置において、前記噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下に配置されると共に、前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、上下の前記噴射手段の吹口の位置を一体的に変更することとすればよい。
【0015】
この態様の発明において、上下の噴射手段の吹口の位置は、ガラス板の曲げ形状に応じて、両噴射手段を一体にして変更される。かかる構成においては、ガラス板の直交方向における曲げ形状に関係なく、噴射手段の吹口とガラス板表面との距離を一定に保つことが可能であるので、ガラス板を風冷強化する能力を一定に保つことが可能である。また、上下の噴射手段の吹口の位置を変更する変更機構を噴射手段ごとに設けることは不要である。従って、本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【0016】
尚、これらの発明において、「搬送方向に直交する直交方向における(前記)曲げ曲率」とは、ガラス板を搬送方向に平行な軸の回りに湾曲した形状にした際のその曲げ曲率のことをいう。すなわち、搬送方向に直交する直交方向に曲げ成形されたガラス板は、搬送方向に直交する方向に沿って平行に切断した断面が湾曲状になる。また、「上」及び「下」はそれぞれ、水平面に対して「上」又は「下」を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、曲げ成形されたガラス板の風冷強化をその曲げ形状に対応して適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明に係るガラス板の風冷強化装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例であるガラス板Gの風冷強化装置10を備える曲げ成形ラインの斜視図を示す。また、図2は、ガラス板Gが曲げ成形される方向を表した図を示す。本実施例の曲げ成形ラインは、自動車や鉄道などの輸送機器や建物などに使用されるガラス板Gを、二方向(後述の搬送方向X及びその搬送方向Xに直交する直交方向Y)にそれぞれ曲げ成形して複曲面としたうえで、風冷強化装置10により風冷強化するシステムである。
【0020】
図1に示す如く、本実施例の曲げ成形ラインは、加熱炉12と、成形装置14と、風冷強化装置10と、を備えている。
【0021】
加熱炉12は、ヒータを有しており、そのヒータを用いてコンベアによって水平に搬送されるガラス板Gを加熱する。成形装置14は、ローラコンベア18,20を有しており、そのローラコンベア18,20によって搬送されるガラス板Gを曲げ成形する。ローラコンベア18,20は、ローラコンベア18が上流側に、ローラコンベア20が下流側に、それぞれ位置するように互いに隣接している。また、ローラコンベア20は、風冷強化装置10の上流に配置されている。
【0022】
また、風冷強化装置10は、ローラコンベア22及びそのローラコンベア22を挟んで上下に配置された吹口ヘッド24,26を有しており、そのローラコンベア22によって搬送されたガラス板Gをその吹口ヘッド24,26から吹き出されるエアにより風冷強化する。尚、風冷強化装置10の冷却能力は、ガラス板Gの素材や厚みに応じて適宜設定される。
【0023】
次に、本実施例の曲げ成形ラインにおいてガラス板Gが曲げ成形される工程の流れについて説明する。
【0024】
本実施例において、所定の形状に切り出された平板状のガラス板Gは、加熱炉12の入口においてコンベアの上流部に載置されて位置決めされた後、そのコンベアによって加熱炉12内に搬送される。そして、そのガラス板Gは、加熱炉12内の搬送中にヒータにより加熱され、加熱炉12の出口において成形装置14による曲げ成形可能な温度(例えば600℃〜700℃程度)まで加熱される。
【0025】
加熱炉12で加熱されたガラス板Gは、成形装置14に搬送され、成形装置14内の搬送中に、ローラコンベア18による曲げ成形動作によって搬送方向Xに曲げ成形されると共に、ローラコンベア20による曲げ成形動作によって搬送方向Xに曲げ成形されると共にその搬送方向Xに直交する水平な方向(以下、直交方向と称す)Yに曲げ成形される。
【0026】
成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gは、成形装置14の下流側に設置された風冷強化装置10内にローラコンベア22によって搬送される。そして、そのガラス板Gは、風冷強化装置10内の搬送中に吹口ヘッド24,26から吹き出されるエアによって風冷強化される。風冷強化装置10で風冷強化されたガラス板Gは、その出口からローラコンベアによって次工程の検査装置に向けて搬送される。
【0027】
次に、本実施例の成形装置14におけるローラコンベア18による曲げ成形の方法について説明する。図3は、本実施例の成形装置14の有するローラコンベア18によるガラス板Gの曲げ成形動作の遷移図を示す。尚、図3には、ローラコンベア18を横方向から見た際の図を示す。
【0028】
本実施例において、成形装置14のローラコンベア18は、ガラス板の搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yへ向けて軸が直線状に延在する複数の搬送ローラ30を有している。各搬送ローラ30は、ローラコンベア18のフレームに回転駆動可能に支持されており、軸方向位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。複数の搬送ローラ30は、ガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、ガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。尚、互いに隣り合う搬送ローラ30間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの搬送ローラ30で支えられるように設定されている。
【0029】
搬送ローラ30は、軸中心の回転駆動のみを行うものと、軸中心の回転駆動を行うと共に、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する上下方向Zに移動し得るものと、に分けられる。各搬送ローラ30の回転駆動は各々独立して行われると共に、各搬送ローラ30の上下動も各々独立して行われる。
【0030】
各搬送ローラ30にはそれぞれ、自搬送ローラ30を回転駆動するサーボモータが連結されている。各搬送ローラ30はそれぞれ独立して、対応するサーボモータの駆動により回転駆動される。
【0031】
また、各搬送ローラ30のうち上下動を行うものはそれぞれ、ローラコンベア18のフレームに上下方向Zに移動可能に支持されている。各搬送ローラ30の上下動は、固定フレームに対して上下移動可能な移動フレームの上下移動により実現される。固定フレームには、搬送ローラ30ごとに、搬送ローラ30を搬送方向に直交する上下方向に上下動させるためのサーボモータが固定されている。各サーボモータの軸は、対応の移動フレームに連結されている。各移動フレームはそれぞれ独立して、対応するサーボモータの駆動により上下方向に移動し、対応の搬送ローラ30を上下動させる。
【0032】
本実施例において、成形装置14は、コントローラ32を有している。コントローラ32は、光電センサなどを用いて成形装置14へのガラス板Gの進入を検知すると共に、パルスジェネレータなどを用いてその進入検知後におけるガラス板Gの搬送位置を算出する。そして、進入検知されたガラス板Gの型式が入力されると、予め記憶装置に記憶されているその型式のガラス板Gを搬送方向について所望の曲率に曲げ成形するために必要なデータに従って、上記の如く算出したガラス板Gの搬送位置に基づいて搬送ローラ30の上下動をそれぞれ制御すると共に、また、その搬送ローラ30の上下位置に合わせて搬送ローラ30の回転駆動をそれぞれ制御する。
【0033】
上記した構成において、ガラス板Gが成形装置14に搬送されていないときは、上下動を行い得る搬送ローラ30はすべて最上位置にあり、複数の搬送ローラ30により形成される搬送面は水平である(図3(A))。そして、ガラス板Gが成形装置14に搬送されてくると、搬送ローラ30の下降・上昇がそのガラス板Gの搬送を伴って上流側から順次行われる。この場合、搬送当初は、複数の搬送ローラ30が下降されて搬送面が下方に向けて凸状に湾曲し、その後は、複数の搬送ローラ30が下降・上昇を繰り返すことで搬送面の湾曲が搬送方向Xに移動する。そして、ガラス板Gの搬送が進行するに従って搬送ローラ30の下降量が多くなり、搬送面の湾曲面の曲率半径が小さくなる(図3(B)〜(E))。
【0034】
ローラコンベア18の搬送ローラ30が上下動して搬送面が湾曲すると、搬送されてくるガラス板Gは、その搬送ローラ30上を搬送方向Xに移動する際に、自重によりその搬送ローラ30の湾曲した面に沿って下方に撓み、その湾曲面に沿った形状に変形する。そして、ガラス板Gは、搬送が進行するに従って大きく下方に撓み、搬送方向Xに曲げ成形される。
【0035】
次に、本実施例の成形装置14におけるローラコンベア20による曲げ成形の方法について説明する。図4は、本実施例の成形装置14の有するローラコンベア20によるガラス板Gの曲げ成形動作を説明するための図を示す。
【0036】
本実施例において、成形装置14のローラコンベア20は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yへ向けて軸が直線状に延在するストレートローラ34と、ストレートローラ34の下流に隣接して配置され、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が下に凸状に湾曲する湾曲ローラ36と、を有している。ストレートローラ34及び湾曲ローラ36は、上記したローラコンベア18の搬送ローラ30に比べて剛性が高くなるように、その搬送ローラ30のものよりも大きな軸径(太さ)を有するように構成されている。ストレートローラ34及び湾曲ローラ36は、軸位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。
【0037】
ストレートローラ34は、複数設けられており、具体的には、ガラス板Gの搬送面を挟んで、上方に配設された一本の上方ストレートローラ34aと、下方に配設された二本の下方ストレートローラ34bと、を有している。また、湾曲ローラ36は、複数設けられており、具体的には、ガラス板Gの搬送面を挟んで、上方に配設された二本の上方湾曲ローラ36aと、下方に配設された二本の下方湾曲ローラ36bと、を有している。
【0038】
二本の下方ストレートローラ34b及び二本の下方湾曲ローラ36bは、他のローラコンベア18などと略同じ高さでガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、ガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。また、一本の上方ストレートローラ34a及び二本の上方湾曲ローラ36aは、上記した下方ローラ34b,36bの高さよりもガラス板Gの厚さ程度上方でガラス板の搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されている。尚、互いに隣り合う下方ローラ34b,36b間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの下方ローラ34b,36bで支えられるように設定されており、互いに隣り合う上方ローラ34a,36a間の搬送方向Xにおける間隔も同じ程度に設定されている。
【0039】
上方ストレートローラ34aと下方ストレートローラ34bとは互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されており、また、上方湾曲ローラ36aと下方湾曲ローラ36bとは互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されており、上方ローラ34a,36aと下方ローラ34b,36bとは、互いにガラス板Gの搬送面を挟んで搬送方向Xに斜に配置されている。
【0040】
上記した構成において、ガラス板Gが成形装置14の複数の搬送ローラ30の上下動によって自重により搬送方向Xに曲げ成形されると、次にまず、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された複数のストレートローラ34が回転用サーボモータの駆動によって回転駆動されることによりガラス板Gが搬送方向Xに移動(搬送)される。この搬送の際、それら上下のストレートローラ34は、搬送方向Xに曲げ成形されているガラス板Gの形状に合わせて上下動用サーボモータの駆動によって上下動されることにより、そのガラス板Gを挟み込みながらそのガラス板Gの所定箇所を搬送方向Xに曲げ成形する(三点曲げ)。従って、ガラス板Gは、ストレートローラ34上で搬送方向Xに移動される際に、上下のストレートローラ34に挟まれることにより搬送方向Xに曲げ成形される。
【0041】
また、ガラス板Gがストレートローラ34を通過すると、次に、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された複数の湾曲ローラ36が回転用サーボモータの駆動によって回転されることによりガラス板Gが搬送方向Xに移動(搬送)される。この搬送の際、それら上下の湾曲ローラ36は、ガラス板Gの形状に合わせて上下動用サーボモータの駆動によって上下動されると共に湾曲形成用サーボモータの駆動によって直交方向Yにおいて適当に湾曲されることにより、そのガラス板Gを挟み込みながらそのガラス板Gの所定箇所を搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形し、或いは、その直交方向Yへの曲げ成形に加えて更に搬送方向Xに曲げ成形する。従って、ガラス板Gは、湾曲ローラ36上で搬送方向Xに移動される際に、上下の湾曲ローラ36に挟まれることにより搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形され、或いは、更に同時に搬送方向Xにも曲げ成形される。
【0042】
次に、本実施例の風冷強化装置10の構成について説明する。図5は、本実施例の風冷強化装置10の全体構成を示す正面図を示す。図6は、本実施例の風冷強化装置10の要部構成を示す正面図を示す。図7は、本実施例の風冷強化装置10の要部構成を示す側面図を示す。また、図8は、本実施例の風冷強化装置10の各部の動作の遷移図を示す。
【0043】
本実施例において、風冷強化装置10のローラコンベア22は、複数の搬送ローラ40を有している。搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が下に凸状に湾曲し得るローラである。各搬送ローラ40は、ローラコンベア22のフレームに回転駆動可能にかつ上下方向に移動可能に支持されており、軸方向位置に関係なく軸中心から同一の径を有するように形成されている。複数の搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに所定間隔を空けて並んで配置されており、曲げ成形されたガラス板Gを搬送方向Xに向けて搬送するための搬送面を形成している。尚、互いに隣り合う搬送ローラ40間の搬送方向Xにおける間隔は、例えば一つのガラス板Gが4つの搬送ローラ40で支えられるように設定されている。
【0044】
各搬送ローラ40は、弾性的な可撓性材料により棒状に構成されたフレキシブルシャフト42を有している。このフレキシブルシャフト42には、複数のリングローラが挿通されている。搬送ローラ40のリングローラは、隣り合うもの同士が弾性的な筒状部材を介して連結されており、中空のローラ構造体を構成している。各搬送ローラ40の回転駆動は各々独立して行われると共に、各搬送ローラ40の上下動も各々独立して行われる。
【0045】
各搬送ローラ40にはそれぞれ、昇降装置50が取り付けられている。各昇降装置50は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する水平方向Yの側部それぞれにおいて、固定フレーム52に対して上下方向に移動自在に支持された移動フレーム54を有している。移動フレーム54の外側部には、ラック56が配設されている。ラック56には、搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延びる回転軸58に取り付けられたピニオン60が噛合されている。回転軸58は、直交方向Yの両端において回転可能に軸支されており、その一端には上下動用サーボモータ62の軸が連結されている。回転軸58は、上下動用サーボモータ62の駆動により回転される。
【0046】
回転軸58が上下動用サーボモータ62の駆動により回転されると、その回転運動はピニオン60とラック56との作用によりラック56の直線運動に変換される。この場合、移動フレーム54がそのラック56の直線運動に合わせて固定フレーム52に対して上下に移動されることで、搬送ローラ40が上下動される。
【0047】
また、各搬送ローラ40のリングローラにはそれぞれ、リングギヤ64が固定されている。リングギヤ64には、ギヤ66が噛合されている。ギヤ66には、自搬送ローラ40を回転駆動する回転用サーボモータ68の軸が連結されている。ギヤ66は、回転用サーボモータ68の駆動により回転され、その回転力をリングギヤ64に伝達する。かかる伝達が行われると、搬送ローラ40のリングローラがフレキシブルシャフト42を支軸として回転される。
【0048】
サーボモータ62,68には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。コントローラ32は、予め記憶されている記憶装置から、搬送中の型式のガラス板Gを成形装置14で曲げ成形された形状を維持しながら搬送するために必要なデータを読み出す。そして、そのデータに従って、各搬送ローラ40全体がそれぞれ曲げ成形されたガラス板Gの曲げ形状を維持すべく上下動されるように各上下動用サーボモータ62を駆動すると共に、各搬送ローラ40がそれぞれ適切な速度(具体的には、ガラス板Gとの接点における搬送方向成分が一定となる速度)で回転駆動されるように回転用サーボモータ68を駆動する。各搬送ローラ40はそれぞれ独立して、対応の上下動用サーボモータ62の駆動により上下動されると共に、対応の回転用サーボモータ68の駆動により回転駆動される。
【0049】
また、各搬送ローラ40にはそれぞれ、湾曲形成装置70が取り付けられている。湾曲形成装置70は、搬送ローラ40のフレキシブルシャフト42の両端それぞれに連結されている。湾曲形成装置70は、上記した移動フレーム54に取り付け固定された送りねじ部72を有している。送りねじ部72には、上下方向に移動自在に支持されたスライダ74が取り付けられている。送りねじ部72とスライダ74とは、ボルトとナットとの関係の如く螺合されている。
【0050】
スライダ74には、バー76を介してフレキシブルシャフト42が揺動自在に連結されている。フレキシブルシャフト42は、ピン78を支点にして、移動フレーム54に固定されたサポート板80に揺動自在に連結されている。従って、搬送ローラ40のフレキシブルシャフト42は、スライダ74の上下動によりその両端がピン78を支点として上方に押し上げられ又は下方に引っ張られることで、水平に対して角度を伴って下方に湾曲する。
【0051】
送りねじ部72には、ギヤ82が取り付けられており、このギヤ82には、ギヤ84が噛合されている。ギヤ84には、移動フレーム54に固定された湾曲形成用サーボモータ86の軸が連結されている。ギヤ84は、湾曲形成用サーボモータ86の駆動により回転され、その回転力をギヤ82を介して送りねじ部72に伝達する。かかる伝達が行われると、その回転運動は送りねじ部72とスライダ74との作用によりスライダ74の上下運動に変換されることで、フレキシブルシャフト42の両端が上方又は下方に移動され、搬送ローラ40がその両端の高さ位置に応じた角度を伴って下方に湾曲する。
【0052】
湾曲形成用サーボモータ86には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。コントローラ32は、予め記憶されている記憶装置から、搬送中の型式のガラス板Gを成形装置14で曲げ成形された形状を維持しながら搬送するために必要なデータを読み出す。そして、そのデータに従って、各搬送ローラ40全体がそれぞれ曲げ成形されたガラス板Gの曲げ形状を維持すべく所望の角度で下方に湾曲するように各湾曲形成用サーボモータ86を駆動する。すなわち、そのデータに従って、算出するガラス板Gの搬送位置に基づいて搬送ローラ40の湾曲の角度をそれぞれ制御する。各搬送ローラ40はそれぞれ独立して、対応の湾曲形成用サーボモータ86の駆動により直交方向Yにおいて下方に湾曲される。
【0053】
また、本実施例において、風冷強化装置10は、ローラコンベア22を挟んで上下に配置される、ブロアが設けられた上部ダクト100に連結される上部送風ボックス102、と、ブロアが設けられた下部ダクト104に連結される下部送風ボックス106と、を有している。各ブロアが駆動されると、その駆動により発生した冷却エアがダクト100,104を通じて送風ボックス102,106に供給される。
【0054】
上部送風ボックス102には、複数の上部吹口ヘッド24が連結されている。各上部吹口ヘッド24は、搬送方向Xにおいて隣接する2つの搬送ローラ40の中間に配設されている。各上部吹口ヘッド24は、搬送ローラ40の軸に沿って搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延在しており、その直交方向Yに並んだ複数のノズル108を有している。上部吹口ヘッド24の有する複数のノズル108は、同じヘッド24であれば、すべて同一の高さに位置している。
【0055】
また、下部送風ボックス106には、複数の下部吹口ヘッド26が連結されている。各下部吹口ヘッド26は、搬送方向Xにおいて隣接する2つの搬送ローラ40の中間に配設されている。各下部吹口ヘッド26は、搬送ローラ40の軸に沿って搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延在しており、その直交方向Yに並んだ複数のノズル110を有している。下部吹口ヘッド26の有する複数のノズル110は、同じヘッド26であれば、すべて同一の高さに位置している。
【0056】
送風ボックス102,106に供給された冷却エアは、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110からローラコンベア22に向けて吹き出される。これにより、ローラコンベア22によって搬送されるガラス板Gの上面及び下面がそれぞれ冷却される。
【0057】
上部吹口ヘッド24と下部吹口ヘッド26とはそれぞれ、上下移動自在に設けられており、隣接する搬送ローラ40の上下動に連動して上下動される。
【0058】
上部吹口ヘッド24は、ホルダ(上側支持フレーム)112により保持されている。ホルダ112の上部には、一対のスライドロッド114が垂直に立設されている。スライドロッド114は、スライドフレーム116に設けられたブッシュ118に摺動自在に支持されている。すなわち、ホルダ112は、スライドフレーム116に対して上下方向にスライド自在に支持されている。スライドロッド114の頂部には、ストッパ120が固着されている。
【0059】
スライドフレーム116の両端部には、ガイドブロック122が固着されている。ガイドブロック122は、固定フレーム124に配設されたガイドレール126に摺動自在に支持されている。すなわち、スライドフレーム116は、固定フレーム124に対して上下方向にスライド自在に支持されている。スライドフレーム116の両端上部にはそれぞれ、連接棒128を介してラックジャッキ130のラック132が連結されている。ラックジャッキ130は、ラック132に対して回転駆動されることによりそのラック132を上下方向に移動させる機能を有している。
【0060】
ラック132が上下方向に移動されると、スライドフレーム116が固定フレーム124に対して上下方向に移動される。スライドフレーム116が固定フレーム124に対して上昇すると、ストッパ120がブッシュ118の頂部に押されて、ホルダ112が引き上げられることで、上部吹口ヘッド24が上方に移動される。また、スライドフレーム116が固定フレーム124に対して下降すると、ホルダ112が下がることで、上部吹口ヘッド24が下方に移動される。この際、上部吹口ヘッド24の上下移動量は、ラックジャッキ130によるラック132の上下移動量に応じたものとなる。
【0061】
尚、上部吹口ヘッド24の内部は、複数(図5においては6つ)の空間に仕切られている。これらの各空間は、フレキシブルパイプ134を介して上部送風ボックス102に連通されている。フレキシブルパイプ134は、伸縮自在に構成されており、上部吹口ヘッド24の上下移動に応じて伸縮する。すなわち、上部送風ボックス102は、上部吹口ヘッド24が上下移動しても、上下移動することなく固定・維持されたままである。
【0062】
一方、下部吹口ヘッド26は、ホルダ(下側支持フレーム)140により保持されている。ホルダ140の両端部には、上下方向に延びる一対のシリンダ142のロッドが連結されている。各シリンダ142は、例えば油圧シリンダであって、断面L字状の連結アーム144に取り付けられている。シリンダ142は、常態では下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離(位置関係)を予め定めた通常距離(所定の位置関係)に維持させる機能を有している。連結アーム144は、移動フレーム54の内側面に取り付けられたガイドレール146上にスライドブロック148を介して上下方向にスライド自在に支持されている。連結アーム144が移動フレーム54に対して上下動されると、その連結アーム144の上下動に連動して下部吹口ヘッド26が上下動される。
【0063】
シリンダ142は、ロッドの長さを2段階に調整可能なシリンダである。シリンダ142には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。シリンダ142は、常態ではロッドの長さを通常長さとすることで、下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離を通常距離に維持させる一方、コントローラ32から指令があったときはロッドの長さを通常長さよりも短い長さとすることで、下部吹口ヘッド26と連結アーム144との上下方向の距離を通常距離よりも短い距離に維持させる。
【0064】
尚、下部吹口ヘッド26の内部は、複数(図5においては3つ)の空間に仕切られている。これらの各空間は、フレキシブルパイプ156を介して下部送風ボックス106に連通されている。フレキシブルパイプ156は、伸縮自在に構成されており、下部吹口ヘッド26の上下移動に応じて伸縮する。すなわち、下部送風ボックス106は、下部吹口ヘッド26が上下移動しても、上下移動することなく固定・維持されたままである。
【0065】
また、移動フレーム54の両端の上端部近傍には、支軸160が取り付けられている。支軸160には、同軸上に円盤状の駒162が回転自在に支持されている。搬送方向Xに隣接する2つの移動フレーム54の支軸160の間には、揺動アーム164が配設されている。揺動アーム164は、その一方端が配設された2つの支軸160のうち一方側の支軸160に回転自在に支持されていると共に、その他方端が他方側の支軸160に取り付けられた駒162の上に載置されている。
【0066】
支軸160が取り付けられる移動フレーム54は、各搬送ローラ40それぞれに取り付けられた昇降装置50に取り付けられている。このため、支軸160は、対応の搬送ローラ40が上下動することによりその上下動に連動して上下移動する。上記した揺動アーム164は、支軸160が上下動することでその支軸160と搬送方向Xに隣接する支軸160との間に高度差が生じた場合に、その高度差に応じて傾斜して揺動する。
【0067】
下部吹口ヘッド26がシリンダ142を介して連結された連結アーム144の上端部は、揺動アーム164の中央部にピン166を介して連結されている。連結アーム144は、揺動アーム164が揺動することで、その揺動アーム164の傾斜量に応じて上下動される。
【0068】
従って、下部吹口ヘッド26は、シリンダ142の伸縮により連結アーム144に対して2段階に高さ調整されると共に、揺動アーム164の揺動に応じて連結アーム144が移動フレーム54に対して上下動することによりその上下動に連動して上下動されるものとなっている。
【0069】
更に、上部吹口ヘッド24側のホルダ112の両端部には、上下方向に延びる一対のシリンダ170のロッドが連結されている。各シリンダ170は、例えば油圧シリンダであって、上下方向に延びる従動アーム172に取り付けられている。シリンダ170は、常態では上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離(位置関係)を予め定めた通常距離(所定の位置関係)に維持させる機能を有している。
【0070】
従動アーム172の先端部(下端部)には、ローラ174が、搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yに延びる軸を中心にして回転自在に取り付けられている。ローラ174は、上記した揺動アーム164の中央部の上に載置されている。このため、従動アーム172は、揺動アーム164が揺動することにより、その揺動アーム164の傾斜量に応じて上下動される。従動アーム172が上下動されると、その従動アーム172の上下動に連動して上部吹口ヘッド24が上下動される。
【0071】
シリンダ170は、ロッドの長さを2段階に調整可能なシリンダである。シリンダ170には、上記したコントローラ32が電気的に接続されている。シリンダ170は、常態ではロッドの長さを通常長さとすることで、上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離を通常距離に維持させる一方、コントローラ32から指令があったときはロッドの長さを通常長さよりも短い長さとすることで、上部吹口ヘッド24と従動アーム172との上下方向の距離を通常距離よりも短い距離に維持させる。
【0072】
このように、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26はそれぞれ、上下方向にスライド自在に支持されており、ローラコンベア22を構成する搬送ローラ40の上下動に連動して上下動される。この際、各ヘッド24,26の、搬送ローラ40の上下動に伴う上下の移動量は、搬送方向Xに互いに隣接する2つの搬送ローラ40の高さの差の半分となる。すなわち、連結アーム144及び従動アーム172はそれぞれ、揺動アーム164の中央部に連結されているため、搬送方向Xにおいて互いに隣接する2つの搬送ローラ40の高さに差が生じた場合に、その高さの差の半分だけ上下方向に移動することとなる。その結果、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26はそれぞれ、搬送方向Xにおいて互いに隣接する2つの搬送ローラ40の中間レベル位置に保たれることとなる。
【0073】
また、下部吹口ヘッド26は、シリンダ142の伸張時(非作動時)は、連結アーム144に対して比較的上方の位置(通常高さ位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行うが、シリンダ142の収縮時(作動時)は、連結アーム144に対して比較的下方の位置(低位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行う。
【0074】
また、上部吹口ヘッド24は、シリンダ170の伸張時(非作動時)は、従動アーム172に対して比較的上方の位置(通常高さ位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行うが、シリンダ170の収縮時(作動時)は、従動アーム172に対して比較的下方の位置(低位置)に固定された状態で、上記の搬送ローラ40の上下動に連動した上下動を行う。
【0075】
コントローラ32は、風冷強化装置10にガラス板Gが搬送される際、予め記憶されている記憶装置から、その型式のガラス板Gにエアを吹き付けるために必要なデータを読み出す。尚、このデータは、成形装置14で曲げ成形されるガラス板Gの曲げ曲率を含むものである。そして、コントローラ32は、その読み出したデータに従ってシリンダ142,170を制御して、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26を搬送ローラ40に対して曲げ成形されたガラス板Gにエアを吹き付けるための適切な高さ位置へ移動させる。
【0076】
尚、搬送方向Xに並んだ各上部吹口ヘッド24はそれぞれ独立して、対応のシリンダ170の伸縮によりその高さ位置が通常高さ位置と低位置とに選択的に調整されることとなっていると共に、搬送方向Xに並んだ各下部吹口ヘッド26はそれぞれ独立して、対応のシリンダ142の伸縮によりその高さ位置が通常高さ位置と低位置とに選択的に調整されることとなっている。
【0077】
本実施例の風冷強化装置10は、初期設定時、シリンダ142の高さ位置が調整されることで、下部吹口ヘッド26のノズル110がローラコンベア22の搬送面から所定距離離れた位置に配置される。下部吹口ヘッド26は、ノズル110がかかる位置に配置された状態で揺動アーム164の揺動に連動して上下動される。また初期設定時、ラックジャッキ130がラック132に対して回転駆動されてスライドフレーム116を所定の動作位置まで下降させる。スライドフレーム116が所定の動作位置まで下降されると、各ホルダ112が上下移動自在に支持されると共に、各従動アーム172のローラ174が揺動アーム164上に載置されることで、以後、各上部吹口ヘッド24が揺動アーム164の揺動に連動して上下動することが可能となる。
【0078】
上記した構成において、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送される前は、ローラコンベア22を構成する複数の搬送ローラ40は、搬送方向Xへの搬送面が平坦に形成されるようにすべて最上位位置に位置している。そして、この際、搬送方向Xに並んだ複数の上部吹口ヘッド24はすべて同じ高さ位置(上下方向における位置)に位置しており、また、搬送方向Xに並んだ複数の下部吹口ヘッド26はすべて同じ高さ位置に位置している(図8(A))。
【0079】
その後、成形装置14において搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送され、搬送ローラ40の回転駆動によりその風冷強化装置10内において搬送方向Xに搬送されると、複数の搬送ローラ40はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数の搬送ローラ40によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向X及び直交方向Yにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した搬送面が形成され、かつ、ガラス板Gの搬送に伴ってその下方へ湾曲した搬送面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように、最上位位置から下降し、その後に上昇する(図8(B)〜(D))。従って、本実施例において、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yに曲げ成形されたガラス板Gは、風冷強化装置10内においてその曲げ形状が維持されながら搬送されることが可能である。
【0080】
また、風冷強化装置10内において搬送ローラ40が上下移動されてガラス板Gが搬送方向Xに搬送されると、その搬送ローラ40の前後(すなわち上流側及び下流側)にそれぞれ配設されている上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が、その搬送ローラ40の上下動に連動して上下移動される。この際、吹口ヘッド24,26の上下動はそれぞれ、その前後(すなわち上流側及び下流側)それぞれの搬送ローラ40の中間レベルの位置に位置するように行われる。
【0081】
すなわち、複数の上部吹口ヘッド24はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数のヘッド24によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した湾曲面が形成され、かつ、その下方に湾曲した湾曲面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように下降し上昇すると共に、複数の下部吹口ヘッド26はそれぞれ、搬送方向Xに並んだ複数のヘッド26によって、その曲げ成形されているガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致する下方に湾曲した湾曲面が形成され、かつ、その下方に湾曲した湾曲面が上流側から順次搬送方向Xへ進行されるように下降し上昇する(図8(B)〜(D))。
【0082】
ガラス板Gが風冷強化装置10内に搬送されてくると、ブロアが駆動されて、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110からガラス板Gへエアが吹き出される。従って、本実施例において、ガラス板Gは、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yに曲げ成形された後、風冷強化装置10内においてその曲げ形状が維持されながら搬送される過程において、ノズル108,110から吹き出されるエアによって風冷強化される。
【0083】
図9は、ガラスGの曲げ形状に起因した、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下動に伴う不都合を説明するための図を示す。図10は、本実施例の風冷強化装置10における上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下動を説明するための図を示す。また、図11は、本実施例の風冷強化装置10においてコントローラ32が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
【0084】
ところで、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gが搬送方向Xに曲げ成形されたもののみであれば、そのガラス板Gをその搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yを通る鉛直面に沿って切断した断面形状は水平となる(図9におけるガラスフラット時を参照)。このため、このときは、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が、そのヘッド24,26前後に配設されたガラス板Gを搬送する搬送ローラ40の高さ位置(尚、この高さ位置は、ガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率やガラス板G自体の搬送方向Xの位置に応じたものとなる。)に応じて、それらの搬送ローラ40の上下動に連動して互いに同じ量だけ上下動されれば、上部吹口ヘッド24のノズル108とガラス板Gの上面との距離(以下、上面距離と称す)、及び、下部吹口ヘッド26のノズル110とガラス板Gの下面との距離(以下、下面距離と称す)が、ガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率に関係なく共に均一にされ、また、その上面距離と下面距離とが互いに同じ距離L0にされる。
【0085】
しかし、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gは、搬送方向Xに曲げ成形されたものだけでなく、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにも曲げ成形されたものもある。この搬送方向Xにも直交方向Yにも曲げ成形されたガラス板Gは、その搬送方向Xに直交する水平な直交方向Yを通る鉛直面に沿って切断した断面形状が下に凸状に湾曲したものとなる(図9におけるガラス湾曲時を参照)。
【0086】
このため、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を考慮することなく、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26が前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じてその搬送ローラ40の上下動に連動して互いに同じ量だけ上下動されるものとすると、その直交方向Yの両端部においては、上記した上面距離及び上記した下面距離がガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ曲率に関係なく共に均一にされて、その上面距離と下面距離とが互いに同じ距離L0にされる一方、その直交方向Yの中央部においては、上面距離がガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて変化して、上面距離と下面距離とがその曲げ曲率に応じて異なるものとなる。尚、この際、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が大きいほど、直交方向Yの中央部における上面距離は大きくなる。
【0087】
このように、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて、上部吹口ヘッド24のノズル108とガラス板Gの上面との上面距離が変化し、上面距離と下面距離とが異なるものとなると、ガラス板Gの表面部分に適切な熱応力が形成されない事態が生じ得、冷却バランスが崩れて、風冷強化が適切に行われなくなり、形状が変形して不安定になるおそれがある。
【0088】
そこで、本実施例の風冷強化装置10においては、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26を、その前後の搬送ローラ40の高さの差に応じた位置に位置するように上下動させるだけでなく、その上下動を行う際に基準となる高さ位置を、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて通常高さ位置と低位置とに変更させる。すなわち、それらの上下動時の固定フレーム52に対する高さ位置を、その前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じて一律に定めるものではなく、その搬送ローラ40の高さ位置とガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率との双方に応じて定める。
【0089】
具体的には、コントローラ32は、風冷強化装置10に搬送されるガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を判定する。この判定は、ライン作業者の操作によるガラス板Gの型式入力或いは製造上における自動的なガラス板Gの型式入力に基づいて行われる。そして、その曲げ曲率が所定値以上であるか否かを判別する(ステップ100)。尚、この所定値は、曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yの中央部の上面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離(すなわち、上部吹口ヘッド24の高さ位置が通常高さ位置である状態)では風冷強化が適切に行われなくなると判断される、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の最小値であり、予め定められている。
【0090】
風冷強化装置10において、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の上下方向における高さ位置は、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送される前は、最上位位置に位置する搬送ローラ40上に仮にガラス板Gが有るものとした際のそのガラス板Gの表面から両ヘッド24,26までの距離が等距離L0となるように、すなわち、そのガラス板Gの上下方向における位置が両ヘッド24,26の中間となるように初期設定されている。
【0091】
かかる状態から、成形装置14で搬送方向X及び直交方向Yの双方で曲げ成形されたガラス板Gが風冷強化装置10に搬送されると、各搬送ローラ40はそれぞれ、そのガラス板Gの搬送方向Xにおける位置に応じて、そのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ形状に合致した角度でその直交方向Yにおいて下方に湾曲されつつ、そのガラス板Gの搬送方向Xにおける曲げ形状に合致した量だけ上下動される。
【0092】
コントローラ32は、上記したステップ100における判定の結果、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満であるときは、シリンダ170及び142を共に非作動にして、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の基準となる上下方向における高さ位置を、その前後の搬送ローラ40上に位置するガラス板Gの直交方向Yにおける端部表面から両ヘッド24,26までの距離がほぼ等距離L0となるように、すなわち、そのガラス板Gの直交方向端部の上下方向位置が両ヘッド24,26のほぼ中間となるように通常高さ位置に設定する(ステップ102)。
【0093】
一方、コントローラ32は、上記したステップ100における判定の結果、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるときは、シリンダ170及び142を共に作動させて、上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26の基準となる上下方向における位置を、その前後の搬送ローラ40上に位置するガラス板Gの直交方向Yにおける端部表面から上部吹口ヘッド24までの距離がその端部表面から下部吹口ヘッド26までの距離よりも小さくなるように、すなわち、そのガラス板Gの直交方向端部の上下方向位置が両ヘッド24,26の中間よりも上方となるように低位置に設定する(ステップ104)。
【0094】
上記した構成によれば、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満で比較的小さい場合は、各上部吹口ヘッド24のノズル108及び各下部吹口ヘッド26のノズル110の基準となる高さ位置をそれぞれ比較的上方の通常高さ位置に設定し、その通常高さ位置を基準にして各ヘッド24,26の上下動を前後の搬送ローラ40の最上位位置からの上下動に合わせて実現させることができる。
【0095】
一方、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上で比較的大きい場合は、各上部吹口ヘッド24のノズル108及び各下部吹口ヘッド26のノズル110の基準となる高さ位置をそれぞれ比較的下方の低位置に設定し、その低位置を基準にして各ヘッド24,26の上下動を前後の搬送ローラ40の最上位位置からの上下動に合わせ実現させることができる。
【0096】
このように、搬送方向Xに並んだ複数の上部吹口ヘッド24及び複数の下部吹口ヘッド26ごとに、そのノズル108,110の高さ位置をその前後の搬送ローラ40の高さ位置とガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率との双方に応じて定める構成においては、その前後の搬送ローラ40の高さ位置に応じて一律に定める構成(以下、対比構成と称す。)に比べて、成形装置14で曲げ成形されたガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の変化に対するガラス板Gの表面とノズル108,110との距離の変動を小さく抑えることができる。
【0097】
具体的には、成形装置14で曲げ成形されるガラス板Gの所望形状が搬送方向Xにのみ曲げ成形されるものであり、直交方向Yで垂直に切断した際の断面形状が直線状であって、直交方向Yにおける曲げ曲率がゼロであるときは、対比構成と同様に、ガラス板Gの表面とノズル108,110との距離がガラス板Gの直交方向Yにおける位置によらず略一定値L0となる。また、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値未満であるときは、ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそれぞれ通常高さ位置に維持されるので、対比構成と同様に、ガラス板Gの表面とノズル108,110との距離が直交方向端部で略一定値L0となるが、直交方向中央部ではガラス板Gの表面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離が一定値L0よりも僅かに大きくなる。一方、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるときは、ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそれぞれ低位置に移行されるので、ガラス板Gの表面と上部吹口ヘッド24のノズル108との距離が直交方向中央部において対比構成に比べて小さくなる。
【0098】
このため、本実施例の風冷強化装置10によれば、直交方向Yにおける曲げ形状が異なるガラス板Gが順次搬送されてくるときにも、その搬送されてくる曲げ成形後のガラス板Gをそれぞれ、その表面とノズル108との距離が過大となる事態を発生させることなく、すなわち、その表面(特に直交方向中央部)とノズル108,110との距離を大きく変化させることなく風冷強化することができる。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、ガラス板Gを風冷強化する能力をガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率の変化に対して大きく異ならせることなく略一定に保つことが可能であって、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化をその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0099】
また、本実施例の構成においては、風冷強化装置10内に搬送されるガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるか未満であるかが判別されると共に、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置がそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替わる。このため、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化をその直交方向における曲げ形状に対応して簡易かつ適切に行うことが可能となっている。
【0100】
また、本実施例の構成においては、風冷強化装置10の上部吹口ヘッド24と下部吹口ヘッド26とがリンク接続されて一体的に上下動されるものとしている。かかる構成においては、ガラス板Gの搬送面を挟んで上下に配設された上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26のノズル108,110の高さ位置を変更する変更機構をそれらヘッド24,26ごと或いはノズル108,110ごとに設けることは不要である。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0101】
更に、本実施例の構成においては、風冷強化装置10の搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されており、ヘッド24,26の上下動がその前後の搬送ローラ40と一体的にその上下動に連動して行われることとしている。かかる構成においては、両ヘッド24,26の基準となる高さ位置がそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替わる機構を設けるうえで、両ヘッド24,26の高さ位置を調整する複雑な構成は不要である。従って、本実施例の風冷強化装置10によれば、曲げ成形されたガラス板Gの風冷強化を、簡素な構成でその曲げ形状(具体的には、その搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率)に対応して適切に行うことが可能となっている。
【0102】
尚、上記の実施例においては、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110が特許請求の範囲に記載した「噴射手段」に相当していると共に、コントローラ32が、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率に応じてノズル108,110の吹口の上下動時に基準となる高さ位置を変更することにより特許請求の範囲に記載した「吹口位置変更手段」が実現されている。
【0103】
ところで、上記の実施例においては、上部吹口ヘッド24の直交方向Yに並んだ複数のノズル108をすべて同じ高さに位置させるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板Gが搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形されることを考慮して、直交方向Yの端部の位置を高くしかつ中央部の位置を低くして直交方向Yにおいて下方に湾曲するような形状としてもよい。
【0104】
また、同様に、下部吹口ヘッド26の直交方向Yに並んだ複数のノズル110をすべて同じ高さに位置させるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス板Gが搬送方向Xに直交する直交方向Yに曲げ成形されることを考慮して、直交方向Yの端部の位置を高くしかつ中央部の位置を低くして直交方向Yにおいて下方に湾曲するような形状としてもよい。
【0105】
また、これらの場合、直交方向Yに並んだ複数のノズル108,110の高さ位置を変更させる機構を設け、その高さ位置をガラス板Gの曲げ形状に合わせて変更させることとしてもよい。
【0106】
また、上記の実施例においては、風冷強化装置10の搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されており、ヘッド24,26の上下動がその前後の搬送ローラ40と一体的にその上下動に連動して行われることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送ローラ40と上部吹口ヘッド24及び下部吹口ヘッド26とがリンク接続されることなく、搬送ローラ40が上下動されてもヘッド24,26の上下動が行われないものとしてもよい。
【0107】
また、上記の実施例においては、風冷強化装置10内に搬送されるガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおける曲げ曲率が所定値以上であるか未満であるかを判別し、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置をそのガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率に応じて2段階に切り替えることとしているが、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ曲率を多段階に判別し、上部吹口ヘッド24のノズル108及び下部吹口ヘッド26のノズル110の上下動時に基準となる高さ位置をその曲げ曲率に応じてリニアに切り替えることとしてもよい。
【0108】
かかる変形例によれば、ガラス板Gの直交方向Yにおける曲げ形状に関係なく、ノズル108,110とガラス板Gの表面(特に直交方向中央部)との距離を一定に保つことが可能となるので、ガラス板Gを風冷強化する能力をより一層一定に保つことが可能となる。
【0109】
また、上記の実施例においては、搬送ローラ40やヘッド24,26の上下動,湾曲を図5に示す如き昇降装置50や湾曲形成装置70などを用いて実現させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成により実現させることとしてもよい。
【0110】
また、上記の実施例においては、成形装置14でガラス板Gを下に凸状に湾曲させて曲げ成形することとし、ガラス板Gの搬送時に風冷強化装置10の搬送ローラ40を下に凸状に湾曲させることとしているが、逆に、成形装置14でガラス板Gを上に凸状に湾曲させて曲げ成形することとし、ガラス板Gの搬送時に風冷強化装置10の搬送ローラ40を上に凸状に湾曲させることとしてもよい。この場合、ローラコンベア20の湾曲ローラ36やローラコンベア22の搬送ローラ40は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する直交方向Yにおいて軸が上に凸状に湾曲される。
【0111】
更に、上記の実施例においては、ガラス板Gの搬送方向への曲げ成形を、ローラコンベア18の搬送ローラ30を上下動させてガラス板Gの自重で行うと共に、更に、上下のストレートローラ34や湾曲ローラ36を上下動させてガラス板Gの挟み込みにより行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送ローラ30として湾曲ローラを用いたガラス板Gの自重のみにより行うこととしてもよいし、或いは、ローラ34,36を用いた若しくはローラ34のみを用いたガラス板Gの挟み込みのみにより行うこととしてもよい。
【0112】
また、プレス型でガラス板をプレスして搬送方向と搬送方向に直交する直交方向の2方向に曲げ成形するなどどのようなガラス板の曲げ成形方法でもよく、ガラス板を2方向に曲げ成形した後、ローラ搬送しながら風冷強化する場合に本願は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施例であるガラス板の風冷強化装置を備える曲げ成形ラインの斜視図である。
【図2】ガラス板Gが曲げ成形される方向を表した図である。
【図3】本実施例の曲げ成形ラインの成形装置の有するローラコンベアによるガラス板Gの搬送方向への曲げ成形動作の遷移図である。
【図4】本実施例の曲げ成形ラインの成形装置の有するローラコンベアによるガラス板Gの曲げ成形動作を説明するための図である。
【図5】本実施例の風冷強化装置の全体構成を示す正面図である。
【図6】本実施例の風冷強化装置の要部構成を示す正面図である。
【図7】本実施例の風冷強化装置の要部構成を示す側面図である。
【図8】本実施例の風冷強化装置の各部の動作の遷移図である。
【図9】ガラスGの曲げ形状に起因した、上部吹口ヘッド及び下部吹口ヘッドの上下動に伴う不都合を説明するための図である。
【図10】本実施例の風冷強化装置における上部吹口ヘッド及び下部吹口ヘッドの上下動を説明するための図である。
【図11】本実施例の風冷強化装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0114】
10 風冷強化装置
14 成形装置
22 ローラコンベア
24 上部吹口ヘッド
26 下部吹口ヘッド
32 コントローラ
40 搬送ローラ
108,110 ノズル
142,170 シリンダ
G ガラス板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備え、前記噴射手段によるエアの吹き付けにより前記ガラス板を風冷強化するガラス板の風冷強化装置であって、
前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、前記噴射手段の吹口の位置を変更する吹口位置変更手段を備えることを特徴とするガラス板の風冷強化装置。
【請求項2】
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の、搬送方向に直交する直交方向における前記曲げ曲率に応じて、前記噴射手段の吹口の高さ位置を変更する請求項1記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項3】
前記吹口位置変更手段は、前記直交方向における前記曲げ曲率が所定値以上である場合に、前記噴射手段の吹口を、該所定値未満である場合に比して下降させる請求項2記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項4】
前記噴射手段は、ガラス板の搬送方向に複数並んで配置されると共に、
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段ごとに、該噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて吹口の位置を変更する請求項1から3の何れか一項記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項5】
前記噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下に配置されると共に、
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、上下の前記噴射手段の吹口の位置を一体的に変更する請求項1から4の何れか一項記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項1】
曲げ成形されたガラス板にエアを吹き付ける噴射手段を備え、前記噴射手段によるエアの吹き付けにより前記ガラス板を風冷強化するガラス板の風冷強化装置であって、
前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、前記噴射手段の吹口の位置を変更する吹口位置変更手段を備えることを特徴とするガラス板の風冷強化装置。
【請求項2】
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の、搬送方向に直交する直交方向における前記曲げ曲率に応じて、前記噴射手段の吹口の高さ位置を変更する請求項1記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項3】
前記吹口位置変更手段は、前記直交方向における前記曲げ曲率が所定値以上である場合に、前記噴射手段の吹口を、該所定値未満である場合に比して下降させる請求項2記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項4】
前記噴射手段は、ガラス板の搬送方向に複数並んで配置されると共に、
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段ごとに、該噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて吹口の位置を変更する請求項1から3の何れか一項記載のガラス板の風冷強化装置。
【請求項5】
前記噴射手段は、ガラス板の搬送面を挟んで上下に配置されると共に、
前記吹口位置変更手段は、前記噴射手段によりエアが吹き付けられる前記ガラス板の曲げ形状に応じて、上下の前記噴射手段の吹口の位置を一体的に変更する請求項1から4の何れか一項記載のガラス板の風冷強化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−221043(P2009−221043A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66701(P2008−66701)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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