説明

ガラス管及びその製造方法

【課題】水素分離材料の支持体として好適に使用できるシリカ系多孔質体を提供すること、特に、良好なガス透過性能を有しながら耐衝撃性が向上したガラス管を提供すること。
【解決手段】ガラス管10は、その平均気孔率が40%以上70%以下であり、少なくとも長手方向の一部の軸方向に垂直な断面における気孔率が内周側から外周側に向かって傾斜を有するとともに最内層気孔率が最外層気孔率よりも高くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス管およびその製造方法に係り、特に燃料改質等により生成した水素を含む混合ガスから水素を高純度に分離するための水素分離材料の支持体として好適なガラス管とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素エネルギー社会実現のために、水素製造技術や水素利用インフラ整備についての研究開発が進められるなか、自動車用燃料電池、家庭用定置型燃料電池、水素ステーション、そして将来的には大型の化学プラントなどで使用される高純度水素は、今後大きな需要が見込まれ、その製造には更なる高効率化が求められている。
【0003】
現在、水素の製造は、炭化水素燃料を700℃程度の温度で水蒸気改質(CH+HO→CO+3H)した後、さらに数百度程度でCO変成(CO+HO→CO+H)する方法が価格競争力の点から広く利用されている。これらの反応を経て得られたガスの成分には、水素の他に二酸化炭素や一酸化炭素、さらには未反応の炭化水素や水が含まれる。近年、家庭への普及が始まった固体高分子型燃料電池システムでは、低コスト化を実現するために水素の高純度化は行わず、水素濃度60%程度の混合ガスをそのまま燃料電池の燃料極に供給しているが、燃料極の触媒を被毒する一酸化炭素については、供給前に二酸化炭素に酸化し(CO+1/2O→CO)、その濃度を10ppm未満まで除去している。しかしながら、混合ガスを用いる燃料電池は、純水素燃料電池と比較して発電効率が低いため、さらに純度の高い水素を省スペースで安価に製造する技術が求められている。また、自動車用燃料電池には、上記CO濃度の制限に加えて、99.99%以上の水素を供給する必要があり、安価な高純度水素を大量に製造する技術が求められている。
【0004】
水素を含む混合ガスから高純度水素を取り出す方法としては、吸収法、深冷分離法、吸着法、膜分離法などが挙げられるが、膜分離法は高効率で小型化が容易であるという特徴を有している。また、水蒸気改質を行う反応容器内に水素分離膜を挿入したメンブレンリアクターを構成することにより、改質反応によって生成した水素を連続的に反応雰囲気から引き抜き、500℃程度の温度でも改質反応とCO変成反応を同時に促進させ、効率良く高純度水素を製造することが可能となる。さらに、メンブレンリアクターではCO変成に使用される白金等の高価な貴金属触媒も不要となり、コストの低減や設備の小型化が可能となる。なお、水素分離膜を通過した水素ガスの純度は水素分離膜の性能に依存するが、用途に応じてさらにCO除去や高純度化が必要な場合でも、これらの工程にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【0005】
以上説明したように、水素分離膜を用いた水素製造の有利さを背景に、いくつかの水素分離膜が提案されている。例えば、非特許文献1にはパラジウム合金膜をジルコニア多孔質基材で支持した水素分離膜が記載されている。この水素分離膜においては、水素はパラジウム合金に原子として溶解し、その濃度勾配で拡散して純水素のみを透過させる方法によって水素を分離するため、原理的に高純度の水素を得ることができる。非特許文献2にはシリカガラス膜をアルミナ系多孔質基材で支持した水素分離膜が記載されている。この水素分離膜は、シリカガラス膜が水素分子のみを通す大きさ(0.3nm)の孔を有していることを利用し、水素分子を選択的に透過させる分子ふるい機能により水素を分離するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発シンポジウム平成20年度要旨集「高耐久性メンブレン型LPガス改質装置の開発」
【非特許文献2】独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率高温水素分離膜の開発」(事後評価)分科会議事録(平成19年7月30日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本発明者等は、シリカ系多孔質体を支持体とする水素分離材料をPCT/JP2010/072201(平成22年12月10日出願)にて提案している。かかる水素分離材料はシリカガラス膜を水素分離膜として機能させ、当該シリカガラス膜と熱膨張率が近いシリカ系多孔質体をその支持体としており、これにより、熱衝撃に強く、水素分離特性に優れた水素分離膜を実現している。また、当該先願では、シリカ系多孔質支持体の製法の一例としてCVD法による製造例を記載している。かかる製法は、CVD法によりロッドの周囲にガラス微粒子を堆積し、これをガス透過性能に優れる程度に(即ち高い気孔率を有するように)焼結させ、その後ロッドを引抜くことによってシリカ系多孔質支持体を円筒状のガラス管として構成したものである。
【0008】
しかしながら、本発明者等は上記水素分離材料を更に改良すべく、特にシリカ系多孔質支持体について鋭意検討を行っていた所、水素分離材料として好適なガス透過性を有する、即ち気孔率が高いシリカ系多孔質体は耐衝撃性が低く、流通過程において外部衝撃によって破損する頻度が高いことを知見するに至った。
【0009】
そこで本発明は、水素分離材料の支持体として好適に使用できるシリカ系多孔質体を提供することをその目的とし、特に、良好なガス透過性能を有しながら耐衝撃性が向上したガラス管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記先願に記載されたCVD法によるガラス管の製造工程における堆積・焼結条件を工夫することによって、良好なガス透過性能を有しながら耐衝撃性を向上させたガラス管を製造することが可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のガラス管は、多孔質シリカからなるガラス管であって、平均気孔率が40%以上70%以下であり、少なくとも長手方向の一部の軸方向に垂直な断面における気孔率が内周側から外周側に向かって傾斜を有するとともに、最内層気孔率が最外層気孔率よりも高いことを特徴とする。
【0011】
また、上記ガラス管を製造するための本発明のガラス管の製造方法は、ロッドの周囲にCVD法によりガラス微粒子を複数層堆積させ、ガラス微粒子堆積後にロッドを引き抜くことにより多孔質ガラスからなるガラス管を製造する方法であって、前記ガラス微粒子堆積時の堆積温度をロッド側から外周方向に向かって高くすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のガラス管の製造方法の別の好適形態は、最内層の堆積温度を1200℃以下とし、その後堆積温度を上げることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のガラス管の製造方法の別の好適形態は、前記ロッドの熱膨張係数が4×10−7/K以上5×10−6/K以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のガラス管の製造方法の別の好適形態は、前記ロッドをテーパ状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガラス管は、その少なくとも長手方向の一部の軸方向に垂直な断面において、耐衝撃性が得られるようにガラス管の外表面近傍の気孔率を低くし、その一方で、良好なガス透過性を維持するために最内層の気孔率が相対的に高く構成されている。したがって本発明によれば、良好なガス透過性能を有しながら耐衝撃性が向上した、水素分離材料の支持体として好適に使用できるガラス管を提供することができる。
また本発明の上記ガラス管を製造するための方法は製造上の利点をも有する。水素分離材料用途のガラス管の製造過程では、光ファイバ用途などのガラス管の製造過程と異なり、ガス透過性を制御すべく気孔率を堆積工程時から低めに調整する必要があり、これによりガラス微粒子の堆積温度が他の用途のガラス管製造での堆積温度と比較して高温となる。光ファイバ用途などのガラス管製造では、ロッドの引き抜きを容易にする目的で予めロッドの表面にカーボンや窒化物等を塗布しておくことが行なわれるが、この方法では、堆積温度が高い水素分離材料用途のガラス管の製法においてはロッドの周囲に予め塗布しておいたカーボン等の塗布材が燃焼してしまうため、塗布材の効果が得られず、ロッドの材質によっては、ロッドとガラスとの間に融着が生じる場合がある。また、ロッドの材質によっては、ロッドが割れてしまう可能性もある。これに対し、本発明のガラス管の製造方法は、ガラス微粒子堆積時の堆積温度をロッド側から外周方向に向かって高くするとともに、ガラスの外表面近傍の堆積温度を耐衝撃性が得られる程度の気孔率とすべく高温で行い、これに相対してロッド近傍に堆積されるガラス微粒子の堆積温度を低温とするため、ガラス堆積体とロッドとの融着やロッドの割れが抑制され、その後のロッド引抜き作業が顕著に容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のガラス管の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明のガラス管の製造方法の一実施形態である堆積工程(a)および(b)、引抜き工程(c)を説明する図である。
【図3】本発明のガラス管の長手方向中央部の横断面における気孔率分布の一例を示す図である。
【図4】実施例1〜3、比較例1の各々の堆積工程時の、堆積層の厚さ(尚、ここで言う「堆積層の厚さ」は、最内層のガラス管中心孔側端部からの距離である)に対する堆積温度を示した温度プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のガラス管及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のガラス管の一例を示す模式図である。ガラス管10は略円柱形状であり、その中心には長手方向に延びる略円形断面の中心孔11を有する。
ガラス管10の外径Tは2mm〜50mm、内径(中心孔11の径)Pは1.6mm〜48mm、長さLは200mm〜400mm程度である。中心孔11の一方の端部11aは塞がれていることが望ましい。また、管の表面積を大きくするため、外径Tおよび内径Pを長手方向に周期的に変化させても良く、機械的強度を補強するため厚さを部分的に変化させることもできる。ガラス管10の肉厚は例えば0.2〜5mmであり、0.5〜3mmであることがより好ましい。
【0019】
ガラス管10は、その平均気孔率は40%以上70%以下であり、少なくとも長手方向の一部(好ましくは長手方向全体)の軸方向に垂直な横断面において、気孔率が内周側から外周側に向かって傾斜を有するとともに最内層Lにおける気孔率(最内層気孔率)が最外層Lにおける気孔率(最外層気孔率)よりも高くなるように形成されている。
ここでいう最内層Lおよび最外層Lとは、後述するガラス管10の製造方法においても説明するが、ガラス微粒子堆積に際して、ガラス微粒子を供給するバーナー21をロッド20の軸方向にトラバースした場合、またはガラス微粒子を供給するバーナー21を固定してロッド20を軸方向にトラバースした場合の何れかにおける「一回のトラバースで堆積された堆積層」であって、ロッド20の最近傍の堆積層が最内層L、ロッド20から最も離れた位置の堆積層が最外層Lである。
また「気孔率」は、単位体積当たりの空気容積が占める割合として算出でき、堆積させる条件によって一堆積層内の長手方向でもその分布は変化する。「平均気孔率」は製造したガラス管全体の体積に空気容積が占める割合、「最内層気孔率」と「最外層気孔率」は、それぞれ最内層Lおよび最外層Lの体積に空気容積が占める割合として算出できる。なお、層の気孔率は、ガラス管の断面X線CT像を撮影することにより、相対的に大小を比較することができる。より詳しくは、樹脂で空孔部を充填したガラス管の断面に対して適切な倍率でSEM像を撮影し、その画像を二値化することにより求めることができる。適切な倍率とは、半径方向のすべての断面を複数個所に分割し、各部位における局所的な気孔率を上記方法で求めた場合に、それらの気孔率の平均値と平均気孔率が2%以内となる倍率である。なお、精度良く局所的な気孔率を評価するためには、クロスセクションポリッシャーなどを用い、断面の平坦度をできるだけ高くすることが好ましい。
以下、ガラス管10の製造方法の実施形態の一例について説明する。
【0020】
図2はガラス管10の製造方法の実施形態の一例を示す模式図であり、(a)および(b)は、ガラス管10の製造方法に係る堆積工程を説明する図であり、(c)は、ロッドの引抜き工程を説明する図である。尚、図2(a)と(b)はいずれも堆積工程を示したもので堆積経過((a)→(b))を説明する模式図である。
図2(a)および(b)において、ロッド20は、先端部が下になるようにして鉛直に配置される。また、軸方向を水平に配置する形としても良い。ロッド20の素材としては、アルミナ、ガラス、耐火性セラミクス、カーボンなどを用いることができる。ロッド20は固定された後、中心軸を中心として回転される。そして、外付けCVD法(OVD法)により、ロッド20の側方に配置されたバーナー21により、ロッド20の外周にガラス微粒子が堆積される。ガラス微粒子には、所望する機械特性や耐水蒸気性に応じて、希土類元素、4B族元素、Al、Ga、又はこれらの2種以上の元素を組合せて添加することができる。例えばガラス管10を水素分離材料の支持体として炭化水素燃料の水蒸気改質に用いる場合、500℃以上の水蒸気に必然的に接触するため、上記のような他成分を導入することにより耐水蒸気性能を向上させることができる。
【0021】
このガラス微粒子堆積に際して、バーナー21をロッド20の軸方向にトラバースする。尚、図2ではバーナー21をロッド20の軸方向にトラバースした形態を示しているが、バーナー21を固定してロッド20を軸方向にトラバースする方法であってもよい。このトラバースの回数毎に供給原料の種類やガスの供給量を異ならせることによって、軸方向に直交する任意の横断面において、内周側から外周側方向に気孔率の傾斜を有するとともに最内層気孔率よりも最外層の気孔率を低く調整することが可能となる。これにより、ロッド20の外周に堆積されるガラス微粒子は、径方向に所定の気孔率や組成の分布を有することになる。また、ロッド20の先端部にもガラス微粒子を堆積させることで、先端が閉じたガラス管とすることができる。
【0022】
ガラス管10は、シリカガラス微粒子を堆積させた後にその平均気孔率が40%以上70%以下の範囲になるようにシリカガラス微粒子を加熱焼結し緻密化させてもよいが、かかる方法では気孔率分布の制御が困難である。従って、本発明の製造方法では、シリカガラス微粒子を堆積させる温度を調整しながらその気孔率を制御する方法を採用する。かかる方法により、シリカガラス微粒子の堆積温度を最内層Lから最外層Lに向かって高くすることで気孔率分布を高精度で制御することが可能となる。
この場合、最内層Lの堆積温度は1200℃以下、最内層Lより外周側の層は1200℃以上1700℃以下の温度範囲内で調整することが望ましい。堆積温度が1700℃を超えると気孔率が小さくなりすぎ、水素分離材料として適用できる程度のガス透過性が得られない場合がある。
【0023】
上記の方法により得られるガラス管10は、最内層気孔率が最外層気孔率よりも大きい構成である。かかる構成により、平均気孔率は40%以上70%以下とガス透過性に適した範囲でありながら、外部衝撃による影響を最も受ける最外層Lの耐衝撃性を向上させることが可能となる。また、ガラス管10は、最内層気孔率を小さくすることで、平均気孔率を調整することができる。このように、最内層Lと最外層Lの間において、肉厚方向に気孔率が傾斜を有することで、ガス透過性と耐衝撃性とを両立することが可能となる。
【0024】
本発明においては、ガラス管10の軸方向に直交する任意の横断面における最内層Lから最外層Lまでの気孔率分布(1層内の気孔率を平均化して層ごとに分布化したもの)は、最外層気孔率が最内層気孔率よりも低く且つ最外層Lと最内層Lの間に傾斜があればよい。例えば、図3に示すように直線状((a)参照)、曲線状((b)参照)のいずれであってもよく、一部の内部層気孔率が最外層気孔率よりも小さく、一部の内部層気孔率が最内層気孔率よりも大きくなっていてもよい((c)参照)。
【0025】
次に堆積工程の後の引抜き工程を図2(c)で説明する。図2(c)では、堆積・焼結されたガラス管10からロッド20が引き抜かれる。引抜きにより形成される中心孔11は、貫通しておらず、下端側(先端側)11aが塞がれていて、上端側のみが開口している(図1参照)。
【0026】
上記堆積工程において、特に、熱膨張係数の高いロッドを使用する場合には、ロッド20の近傍のシリカガラス微粒子の堆積温度を1200℃以下とすることが好ましい。熱膨張係数の高いロッドでは、堆積温度が1200℃以上であると、ロッドが割れてしまう可能性がある。また、この温度とすることで、ロッド20とガラス管10との融着が殆ど生じることはなくなるため、堆積工程後のロッド20の引抜きを顕著に容易なものとすることができる。さらに、予めロッド20の表面にカーボンや窒化物等を塗布しておくことにより、引抜きは容易となる。
【0027】
また、上記した堆積温度に調整することができれば必要ではないが、より引抜き工程を容易にするという観点から考えると、ロッド20はテーパ状であればさらに好ましい。例えば、その外径傾斜率を0.2〜2.0mm/1000mmとすることが好ましく、0.5〜1.5mm/1000mmとすることがより好ましい。
【0028】
また、上記した堆積温度に調整することができれば必要ではないが、ロッド20が熱膨張率4×10−7/K以上5×10−6/K以下の材質であればさらに好ましい。ロッド20の熱膨張率がこの範囲外では堆積工程中においてバーナー21が接近する度にロッド20とガラス管10の間に熱歪が生じ、ガラス管10が損傷する虞がある。また、熱膨張率を上記範囲とすることで熱衝撃によるロッド20の損傷を防止することができる。
さらにロッド20は、例えばガラスとの親和性が低い窒化珪素等の非酸化物を材質とするロッドであることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明に係る実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
外付けCVD法により、最大外径16mm(外径傾斜率1.5mm/1000mm)、線熱膨張係数5.7×10−7/℃のシリカガラスロッドの表面に、堆積温度を図4のように変化させながらシリカガラス多孔質体を堆積させた後、前記ロッドを引抜くことにより外径18.0〜18.4mm、肉厚1.5mm、長さ250mm、平均気孔率63%の一端封じ多孔質シリカガラス管を作製した。この多孔質シリカガラス管の長手方向中央部における最内層気孔率は、最外層気孔率よりも大きくなっていることを確認した。
【0031】
(実施例2)
外付けCVD法により、最大外径16mm(外径傾斜率1.5mm/1000mm)、線熱膨張係数7.2×10−6/℃のアルミナロッドの表面に、堆積温度を図4のように変化させながらシリカガラス多孔質体を堆積させた後、前記ロッドを引抜くことにより外径18.0〜18.4mm、肉厚1.4mm、長さ250mm、平均気孔率65%の一端封じ多孔質シリカガラス管を作製した。この多孔質シリカガラス管の長手方向中央部における最内層気孔率は、最外層気孔率よりも大きくなっていることを確認した。
【0032】
(実施例3)
外付けCVD法により、最大外径17mm(外径傾斜率1.0mm/1000mm)の線熱膨張係数2.6×10−6/℃の窒化珪素ロッドの表面に、堆積温度を図4のように変化させながらシリカガラス多孔質体を堆積させた後、前記ロッドを引抜くことにより外径19.5〜19.8mm、肉厚1.5mm、長さ250mm、平均気孔率46%の一端封じ多孔質シリカガラス管を作製した。この多孔質シリカガラス管の長手方向中央部における最内層気孔率は、最外層気孔率よりも大きくなっていることを確認した。
【0033】
(比較例1)
外付けCVD法により、最大外径16mm(外径傾斜率1.5mm/1000mm)の線熱膨張係数5.7×10−7/℃のシリカガラスロッドの表面に、堆積温度を図4のように変化させながらシリカガラス多孔質体を堆積させた後、前記ロッドを引抜くことにより外径18.0〜18.4mm、肉厚1.4mm、長さ250mm、平均気孔率65%の一端封じ多孔質シリカガラス管を作製することを試みたが、前記ロッドと多孔質シリカガラス管は融着し、引抜くことができなかった。この多孔質シリカガラス管の長手方向中央部における最内層気孔率は、最外層気孔率よりも小さくなっていることを確認した。
【0034】
上記実施例1〜3で得られた多孔質シリカガラス管の長手方向中央部における最内層気孔率は、いずれも最外層気孔率よりも大きく、多孔質シリカガラス管の外表面近傍の気孔率が低い為、耐衝撃性が向上していることが明らかである。また、ガス透過性能に優れる良好な平均気孔率を保持していることから水素分離材料に適用することが可能である。
一方、比較例1で作製を試みた多孔質シリカガラス管は、ガス透過性には問題ないものと推測されるものの、ロッドとガラス管とが融着してしまい、作製することができなかった。
【符号の説明】
【0035】
10:ガラス管、20:ロッド、21:バーナー、11:中心孔、11a:中心孔11の下端側(先端側)、P:内径、T:外径、L:最外層、L:最内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカからなるガラス管であって、
平均気孔率が40%以上70%以下であり、少なくとも長手方向の一部の軸方向に垂直な断面における気孔率が内周側から外周側に向かって傾斜を有するとともに、最内層気孔率が最外層気孔率よりも高いことを特徴とするガラス管。
【請求項2】
ロッドの周囲にCVD法によりガラス微粒子を複数層堆積させ、ガラス微粒子堆積後にロッドを引き抜くことにより多孔質ガラスからなるガラス管を製造する方法であって、
前記ガラス微粒子堆積時の堆積温度をロッド側から外周方向に向かって高くすることを特徴とする請求項1記載のガラス管の製造方法。
【請求項3】
最内層の堆積温度を1200℃以下とし、その後堆積温度を上げることを特徴とする請求項2記載のガラス管の製造方法。
【請求項4】
前記ロッドの熱膨張係数が4×10−7/K以上5×10−6/K以下であることを特徴とする請求項2または3記載のガラス管の製造方法。
【請求項5】
前記ロッドをテーパ状とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のガラス管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214367(P2012−214367A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64744(P2012−64744)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】